JP4674459B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、正極と負極とをセパレータを介して巻回した巻回電極体を備えた非水電解質二次電池に関する。
電子機器の小型化に伴い、高エネルギー密度を有する電池の開発が要求されている。この要求に応える電池として、リチウムの析出・溶解反応を利用したリチウム金属二次電池がある。しかし、リチウム金属二次電池では充電時に負極上にリチウムがデンドライト析出し不活性化するため、サイクル寿命が短いという問題ある。
このサイクル寿命を改善したものとしては、リチウムイオン二次電池が製品化されている。リチウムイオン二次電池の負極には、黒鉛層間へのリチウムのインターカレーション反応を利用した黒鉛材料、あるいは細孔中へのリチウムの吸蔵・放出作用を応用した炭素質材料などの負極活物質が用いられている。そのため、リチウムイオン二次電池では、リチウムがデンドライト析出せず、サイクル寿命が長い。また、黒鉛材料あるいは炭素質材料は空気中で安定であるので、工業的に生産する上でもメリットが大きい。
しかし、インターカレーションによる負極容量は第1ステージ黒鉛層間化合物の組成C6 Liに規定されるように上限が存在する。また、炭素質材料の微小な細孔構造を制御することは工業的に困難であると共に炭素質材料の比重の低下をもたらし、単位体積当たりの負極容量ひいては単位体積当たりの電池容量向上の有効な手段とはなり得ない。
そこで最近では、更なる高容量化を図るために、ある種のリチウム合金が電気化学的かつ可逆的に生成および分解することを応用した材料が広く研究されてきた。このような材料としては、例えば、リチウム−アルミニウム合金が広く研究され、特許文献1にはケイ素合金が報告されている。
米国特許第4950566号明細書
しかしながら、これらの材料は、充放電による膨張・収縮が炭素材料に比べて大きいので、従来と同様に電池を設計すると、負極が膨張して電池缶に当たり折れ曲がってしまったり、負極の幅がセパレータの幅を超えてしまい、内部短絡を生ずる場合があるという問題があった。これは、充電状態での高温保存時において特に顕著であり、改善が望まれていた。
本発明はかかる問題に鑑みてなされたもので、その目的は、内部短絡を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することにある。
本発明による非水電解質二次電池は、電池缶の装填部に、正極と負極とをセパレータを介して巻回した巻回電極体を備え、この巻回電極体と電池缶との間には、巻回軸方向において巻回電極体を挟むように一対の絶縁板が配置されており、負極は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含有し、装填部の数1で表される巻回軸方向における隙間Zは、負極の膨張により増加する幅よりも広く、1.9mm以上2.5mm以下の範囲内であり、セパレータの巻回軸方向における幅は負極の幅よりも広く、その差は2.0mm以上3.5mm以下の範囲内のものである。
(数1)
Z=X−Y−(a+b)
(式中、Zは装填部の隙間、Xは巻回軸方向における装填部の高さ、Yは巻回軸方向における負極の幅、aおよびbは巻回軸方向における一対の絶縁板のそれぞれの厚みである。)
本発明の非水電解質二次電池によれば、装填部の隙間Zを負極の膨張により増加する幅よりも広い1.9mm以上とすると共に、セパレータの幅を負極の幅よりも2.0mm以上広くするようにしたので、充放電に伴い大きく膨張・収縮する負極活物質を用いても、負極の膨張により負極の幅がセパレータの幅を超えたり、負極が電池缶に接触して折れ曲がることを抑制することができる。よって、内部短絡の発生を抑制することができ、信頼性を向上させることができる。また、装填部の隙間Zを2.5mm以下とすると共に、セパレータの幅を負極の幅よりも3.5mm以下の範囲内で広くするようにしたので、高容量という負極活物質の特性を損なうことなく、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一本実施の形態に係る二次電池の断面構成を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の装填部11Aに、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11と巻回電極体20との間には、巻回電極体20を巻回軸方向において挟むように一対の絶縁板12, 13がそれぞれ配置されている。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面または片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物,金属セレン化物あるいは金属酸化物など、またはリチウムを含有するリチウム含有化合物が挙げられる。
中でも、リチウム含有化合物は、高電圧および高エネルギー密度を得ることができるものがあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が挙げられ、特にコバルト(Co),ニッケルおよびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧を得ることができるからである。その化学式は、例えば、Lis MIO2 あるいはLit MIIPO4 で表される。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属元素を表す。sおよびtの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦s≦1.10、0.05≦t≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(Lis CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lis NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lis Ni1-u Cou 2 (u<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 4 )などが挙げられる。中でも、ニッケルを含む複合酸化物が好ましい。高い容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性も得ることができるからである。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-v Mnv PO4 (v<1))が挙げられる。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面または片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅(Cu)箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む負極材料を含有している。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えばリチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム,ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などが挙げられる。
中でも、この負極材料としては、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。具体的には、例えば、ケイ素の単体,合金,あるいは化合物、またはスズの単体,合金,あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン(Ti),ゲルマニウム,ビスマス,アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
中でも、この負極材料としては、スズと、コバルトと、炭素とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素,鉄,ニッケル,クロム,インジウム,ニオブ(Nb),ゲルマニウム,チタン,モリブデン(Mo),アルミニウム,リン(P),ガリウムまたはビスマスが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
なお、このCoSnC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このCoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
負極活物質層12は、更に、他の負極活物質を含んでいてもよく、また、導電剤,結着剤あるいは粘度調整剤などの充電に寄与しない他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、天然黒鉛,人造黒鉛,難黒鉛化炭素あるいは易黒鉛化炭素などの炭素材料が挙げられる。導電剤としては、黒鉛繊維,金属繊維あるいは金属粉末などが挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物、またはスチレンブタジエンゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴムなどが挙げられる。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23を構成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂が挙げられる。
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソール−2−オン、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル、フルオロベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−シクロヘキシルベンゼン、あるいはエチレンスルフィトなどの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
電解質塩としては、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、LiN(CF3 SO2 2 、LiN(C2 5 SO2 2 、LiC(CF3 SO2 3 、LiB(C6 5 4 、LiB(C2 4 2 、LiCF3 SO3 、LiCH3 SO3 、LiCl、あるいはLiBrなどのリチウム塩が挙げられる。電解質塩は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
また、この二次電池は、図1に示したように、装填部11Aの数1で表される巻回軸方向における隙間Zが、1.9mm以上2.5mm以下の範囲内とされている。負極活物質として上述した負極材料を用いた場合、充放電に伴い負極22が大きく膨張・収縮するので、隙間Zが狭いと、負極22の膨張により負極22が電池缶11に接触して折れ曲がり、内部短絡が生じやすくなるからである。また、隙間Zが広すぎると、電池内に充填できる負極活物質の量が少なくなるので、上述した負極材料の高容量という特徴を活かすことができないからである。
(数1)
Z=X−Y−(a+b)
(式中、Zは装填部11Aの隙間、Xは巻回軸方向における装填部11Aの高さ、Yは巻回軸方向における負極22の幅、aおよびbは巻回軸方向における一対の絶縁板12,13のそれぞれの厚みである。)
なお、巻回軸方向における装填部11Aの高さXは、絶縁板13が接触する電池缶11の底部11Bから絶縁板12が接触する電池缶11のかしめ部11Cの端部までの長さである。
更に、この二次電池は、セパレータ23の巻回軸方向における幅Wが負極22の幅Yよりも大きくなっており、その差W−Yは2.0mm以上3.5mm以下の範囲内とされている。セパレータ23の幅Wが狭いと、負極22の膨張により負極22の幅Yがセパレータ23の幅Wを超えて、内部短絡が生じやすくなるからである。また、セパレータ23の幅Wが広すぎると、電池内に充填できる負極活物質の量が少なくなり、上述した負極材料の高容量という特徴を活かすことができないからである。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極集電体21Aに正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質の粉末と導電剤と結着剤とを混合して正極合剤を調製したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとし、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。また、例えば、正極21と同様にして、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成し負極22を作製する。
次いで、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。続いて、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。この充放電に伴い負極22は大きく膨張・収縮するが、装填部11Aの隙間Zおよびセパレータ23の幅Wが所定の範囲内とされているので、内部短絡が抑制される。
このように本実施の形態によれば、装填部11Aの隙間Zを1.9mm以上とすると共に、セパレータ23の幅Wを負極22の幅Yよりも2.0mm以上広くするようにしたので、負極活物質として、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料を用いても、負極22の膨張により負極22の幅Yがセパレータ23の幅Wを超えたり、負極22が電池缶11に接触して折れ曲がることなどを抑制することができる。よって、内部短絡の発生を抑制することができ、信頼性を向上させることができる。また、装填部11Aの隙間Zを2.5mm以下とすると共に、セパレータ23の幅Wを負極22の幅Yよりも3.5mm以下の範囲内で広くするようにしたので、高容量という負極活物質の特性を損なうことなく、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1〜5)
図1に示したような円筒型の二次電池を作製した。
まず、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を用意し、このリチウムコバルト複合酸化物粉末91質量部と、導電剤であるグラファイト(ロンザ製KS−15)6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製したのち、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを作製した。次いで、正極合剤スラリーをアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に塗布し乾燥させたのち圧縮成型して正極活物質層21Bを形成することにより帯状の正極21を作製した。
一方、負極活物質としてCoSnC含有材料を作製した。まず、原料としてコバルト粉末とスズ粉末と炭素粉末とを用意し、コバルト粉末とスズ粉末とを合金化してコバルト・スズ合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。続いて、この混合物を遊星ボールミルを用いてメカノケミカル反応を利用して合成し、CoSnC含有材料を得た。
得られたCoSnC含有材料について組成の分析を行ったところ、コバルトの含有量は29.3質量%、スズの含有量は49.9質量%、炭素の含有量は19.8質量%であった。なお、炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、コバルトおよびスズの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、得られたCoSnC含有材料についてX線回折を行ったところ、回折角2θ=20°〜50°の間に、回折角2θが1.0°以上の広い半値幅を有する回折ピークが観察された。更に、このCoSnC含有材料についてXPSを行ったところ、CoSnC含有材料中におけるC1sのピークは284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、CoSnC含有材料中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
次いで、このCoSnC含有材料粉末80質量部と、導電剤および負極活物質であるグラファイト(ロンザ製KS−15)11質量部およびアセチレンブラック1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合して負極合剤を調製したのち、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーを作製した。続いて、負極合剤スラリーを銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に塗布し乾燥させたのち圧縮成型して負極活物質層22Bを形成することにより帯状の負極22を作製した。負極22の幅Yは実施例1〜5で変化させ、装填部11Aの隙間Zを変化させた。具体的には、実施例1では装填部11Aの隙間Zが1.9mmとなるようにし、実施例2,4,5では2.3mmとなるようにし、実施例3では2.5mmとなるようにした。
次に、微多孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ23を用意し、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、巻回電極体20を作製した。セパレータ23の幅Wは負極22の幅よりも広くなるようにし、その差W−Yを実施例1〜5で変化させた。具体的には、実施例1〜3では差W−Yが2.6mmとなるようにし、実施例4では2.0mmとなるようにし、実施例5では3.5mmとなるようにした。
続いて、巻回電極体20を絶縁板12, 13で挟んで電池缶11に収納し、電解液を注入した。電解液は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン20質量%と、炭酸エチレン20質量%と、炭酸ジメチル45質量%と、電解質塩であるLiPF6 15質量%とを混合して調製した。そののち、ガスケット17を介して電池缶11をかしめることにより、安全弁機構15、熱感抵抗素子16および電池蓋14を固定し、二次電池を得た。
また、実施例1〜5に対する比較例1〜4として、装填部11Aの隙間Zおよびセパレータの幅と負極の幅との差W−Yを変化させたことを除き、他は実施例1〜5と同様にして二次電池を作製した。具体的には、比較例1では装填部11Aの隙間Zを1.7mm、差W−Yを2.6mm、比較例2では装填部11Aの隙間Zを2.7mm、差W−Yを2.6mm、比較例3では装填部11Aの隙間Zを2.3mm、差W−Yを1.8mm、比較例4では装填部11Aの隙間Zを2.3mm、差W−Yを3.7mmとした。
作製した実施例1〜5および比較例1〜4の二次電池について、充放電を行い初回放電容量を求めた。充放電は、23℃の環境中において、電流値1C、上限電圧4.2Vの定電流定電圧充電を行ったのち、電流値1Cの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行った。なお、1Cは電池容量を1時間で放電しきる電流値である。また、高温保存特性として、各実施例ごとに10個の電池を用意し、60℃の恒温槽中において、電流値1C、上限電圧4.2Vの定電流定電圧充電を800時間連続して行い、安全弁機構15が作動した個数を調べた。それらの結果を表1,2に示す。
Figure 0004674459
Figure 0004674459
表1,2に示したように、装填部11Aの隙間Zを1.9mm以上2.5mm以下、セパレータ23の幅Wと負極22の幅Yとの差W−Yを2.0mm以上3.5mm以下とした実施例1〜5によれば、放電容量および短絡発生率について共に優れた結果が得られた。これに対して、装填部11Aの隙間Zが狭い比較例1およびセパレータ23の幅Wと負極22の幅Yとの差W−Yが小さい比較例3では、短絡が発生した。また、装填部11Aの隙間Zが広い比較例2およびセパレータ23の幅Wと負極22の幅Yとの差W−Yが大きい比較例4では、放電容量が低かった。
すなわち、装填部11Aの隙間Zを1.9mm以上2.5mm以下、セパレータ23の幅Wと負極22の幅Yとの差W−Yを2.0mm以上3.5mm以下とすれば、負極活物質として、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極材料を用いても、短絡の発生を抑制しつつ、高容量化を図ることができることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。その際、負極には、上記実施の形態で説明した負極活物質、例えばスズまたはケイ素を構成元素として含む物質を同様にして用いることができる。
更に、上記実施の形態および実施例では、円筒型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は角型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
符号の説明
11…電池缶、11A…装填部、11B…底部、11C…かしめ部、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

Claims (3)

  1. 電池缶の装填部に、正極と負極とをセパレータを介して巻回した巻回電極体を備え、
    前記巻回電極体と前記電池缶との間には、巻回軸方向において前記巻回電極体を挟むように一対の絶縁板が配置されており、
    前記負極は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含有し、
    前記装填部の数1で表される巻回軸方向における隙間Zは、前記負極の膨張により増加する幅よりも広く、1.9mm以上2.5mm以下の範囲内であり、
    前記セパレータの巻回軸方向における幅は前記負極の幅よりも広く、その差は2.0mm以上3.5mm以下の範囲内である
    非水電解質二次電池。
    (数1)
    Z=X−Y−(a+b)
    (式中、Zは装填部の隙間、Xは巻回軸方向における装填部の高さ、Yは巻回軸方向における負極の幅、aおよびbは巻回軸方向における一対の絶縁板のそれぞれの厚みである。)
  2. 前記負極は、前記負極活物質として、スズ(Sn)およびケイ素(Si)のうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料を含有する請求項1記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記負極は、前記負極活物質として、スズとコバルト(Co)と炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であると共にスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下である材料を含有し、
    前記負極活物質のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、1.0°以上である、
    請求項1記載の非水電解質二次電池。
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