JP4674436B2 - 噴流式はんだ付け装置 - Google Patents

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プリント基板に抵抗、コンデンサなどの電子部品をはんだ付けする際には、噴流式のはんだ付け装置が用いられる(特許文献1、2参照)。図6に噴流式のはんだ付け装置の概略図を示す。
はんだ槽100には、パネルヒーター110が取り付けられており、はんだ槽内の温度をはんだの融点以上にまで加熱する。
はんだ槽内には、噴流装置(番号付けせず)が沈められている。噴流装置は、L字型に加工され、一方にノズル210を、他方にはんだ吸込み口202を配したダクト200からなる噴流装置本体部(番号付けせず)と、モーター240とシャフト230とポンプインペラー220とから成る噴流装置ポンプ部(番号付けせず)とで構成される。
なお、ダクト200には、噴流装置全体をはんだ槽から引き上げる際に、ダクト200内に残ったはんだを抜くためにはんだ抜取孔204が開けられている。
次に噴流式半田付け装置の動作を説明する。はんだ槽100に投入されたはんだは、パネルヒーター110によって融点以上に加熱され溶融する。
ポンプインペラー220は、モーター240によって回転駆動されており、はんだ吸込み口202に負圧を発生させる。溶融して液体状態になったはんだは、このときの負圧によってはんだ吸込み口202からダクト200内に吸込まれる。
吸込まれたはんだは、ダクト200内を通って、ノズル210に達し、噴水の様に排出される。
排出されたはんだが流れ落ちる部分で、はんだ付けしたい基板300を通過させる。このとき、流れるはんだの流速と同じ速度で基板300を通過させることで、はんだ付けしたい部分に不必要な力をかけることなくはんだ付けすることができる。すなわち、静止した状態の溶融はんだに、基板を浸したのと同じ状態を得ることができる。
以上が噴流式半田付け装置の動作説明である。
ところで、上記に示した特許文献1や2の時期には、はんだ付け装置に用いられていたのは、鉛はんだと呼ばれるものが主であった。鉛はんだとは、錫(Sn)と鉛(Pb)の合金である。錫と鉛の組成比を調整することで、融点を調整することができ、主として183℃の場合が多く使われる。鉛はんだは、低い温度で融けるため、電子部品とプリント基板の接続には従来から用いられてきた。
しかし近年は、鉛はんだを用いた電子機器を廃棄した際に析出する鉛が、環境を汚染するとして社会的に問題視されるようになった。そのため、鉛を使用しない鉛フリーはんだが開発され、実用される局面が広がっている(特許文献3、4参照)。
鉛フリーはんだは、錫(Sn)と銅(Cu)を主成分とするものが一般的となっている。そして、融点の調整や耐久性の向上のために、銀(Ag)やビスマス(Bi)等の金属が添加される(特許文献3、4参照)。
例えば、錫(Sn)99.3重量%、銅(Cu)0.7重量%のものや、錫(Sn)96.5重量%、銀(Ag)3重量%、銅(Cu)0.5重量%のものがある。鉛フリーはんだは、鉛が析出することがないので、環境に対する汚染の心配はない。しかし、融点は鉛はんだが183℃であるのに対して、例えばSn−Ag−Cuのものは220℃と高くなってしまう。
特開平2−63678号公報 特開平2−80169号公報 特開平9−94687号公報 特開平9−94688号公報
噴流式のはんだ付け槽は、耐久性および価格の点から、ステンレス鋼(以後「SUS材」と記載する。)で作られる。特にクロム(Cr)18重量%、ニッケル8重量%、(残部は鉄)からなるNi系ステンレスであるSUS304は、伸びが大きく引っ張り強さも高く、機械的強度も高いため、よく利用される。このようなはんだ付け槽では、使用されるはんだが鉛はんだの場合は、はんだ槽に対して問題を発生させることはなかった。
しかしながら、鉛フリーはんだになると、SUS304からなるはんだ槽は、侵食され、ひどい場合ははんだ槽に孔が開いてしまうという問題が生じていた。また、噴流装置の侵食、特にポンプインペラーの侵食は、噴流効率を低下させる。
図7には、鉛フリーはんだを噴流式はんだ付け装置で用いた場合に、侵食が著しい箇所を示す。はんだ吸込み口202やはんだ抜き取孔204の下方部分のはんだ槽100の壁面(AおよびB部分)、およびポンプインペラー220とその周囲のダクト200部分(C部分)の侵食が特に著しかった。これらの部分は、溶融されたはんだの発散源(吸込みまたは吐き出しの源)の近傍であり、溶融はんだの対流に常にさらされている部分である。
この侵食された部分は、はんだによって「ぬれ」が生じており、その断面を調べると、母材であるSUS304とはんだの間に反応層が確認された。つまり、鉛フリーはんだはSUS304との界面で反応し、一体化していた。
なお、「ぬれ」もしくは「ぬれ性」とは、母材に対する親和性の程度を表す指標である。例えば母材Xに対して液体Yを塗った時に、母材X上で液体Yがはじくことなく、均一に塗ることができる場合は、「ぬれ性が高い」という。塗布や接着の分野では、重要な指標の一つである。定性的な比較方法としては、接触角の測定などが知られている。
鉛フリーはんだをSUS304からなるはんだ槽で使用した場合の、侵食の原因は、まだ特定されてはいない。しかし、上記の事実より、SUS304の母材と反応したはんだ部分が、はんだ槽内の対流によって運び去られることで、侵食が進行すると考えられる。
特に、はんだの対流が激しい、ダクトの入り口に浸食が集中している点が、この仮説を支持する根拠となる。はんだ抜き取り孔の部分では、ダクト内をはんだの強い流れがあることから、この孔からはんだの流れが発生し、孔の下部分の侵食を進行させたと考えられる。
もちろん鉛フリーはんだの溶融温度が、従来の鉛はんだより高いために、侵食の進行を増長させることになっているということも原因の一端であると考えられる。
上記課題に鑑み、本発明では、鉛を使用しない鉛フリーはんだが投入されるはんだ槽と、前記はんだ槽内の温度をはんだの融点以上に加熱するパネルヒーターと、前記はんだ槽内に配置されかつ一方に配したはんだ吸込み口から溶融したはんだを吸込むとともに他方に配したノズルから溶融したはんだを排出するダクトを有する噴流装置本体部とを備えた噴流式はんだ付け装置であって、前記はんだ槽内において、前記ダクトのはんだ吸込み口と前記はんだ槽の底面との間に、前記はんだ槽の底面に接触しないように中敷を配したことを特徴とする
本発明で提供する材料によって鉛フリーはんだを用いる場合のはんだ槽を作成すれば、鉛フリーはんだによるはんだ槽の侵食を低減させることができる。
また、本発明で提供する中敷によってはんだ槽内のはんだの対流が直接半田槽の壁面に衝突することがなくなり、侵食の進行を遅らせることができる。
図1には、噴流式はんだ付け装置を示す。はんだ槽15は、従来のSUS304ではなく、SUS316を用いている。後述する実験によって鉛フリーはんだに対してはSUS316がSUS304より、侵食に対して対抗力を有することがわかった。従って、はんだ槽15の材質をSUS304からSUS316に変更することで、好適な鉛フリーはんだの噴流式はんだ付け装置のはんだ槽を得ることができる。SUS316は、SUS304と同じNi系ステンレス鋼(オーステナイト系)であり、SUS304同様、伸びがあり機械強度が高いため、はんだ槽の材料として適している。ただし、SUS316はクロム(Cr)18重量%、ニッケル(Ni)12重量%、モリブデン(Mo)2.5%重量%、残りは鉄(Fe)という組成になっており、SUS304と比較すると、モリブデン(Mo)が添加されている。このモリブデンの添加が鉛フリーはんだに対するぬれ性を低下させる要因になっていると考えられる。
なお、ダクト20、ノズル21、ポンプインペラー22、シャフト23についてもSUS316へ材質を変更することで、耐久性が向上することは言うまでも無い。特に、肉厚が薄くなるダクトや、激しい対流にさらされるポンプインペラーをSUS316にすることは、噴流式はんだ付け装置自体の耐久性向上に効果がある。
次に鉛フリーはんだに侵食されにくい材料を確認するための実験について述べる。図2にはそのための実験の様子を示す。はんだ槽100の材質はSUS304を用いた。はんだ槽100にはパネルヒーター110を取付てあり、はんだ槽内の温度を上昇させることができる。はんだ槽には鉛フリーはんだを入れ、融点以上となる250℃に加熱して液体状態に溶融した。この溶融はんだの中にモーター240につながった、シャフトとポンプインペラーを沈めた。シャフト230とポンプインペラー220は、SUS304であり、シャフト23とポンプインペラー22は、SUS316である。
モーターで毎分500回転の回転をポンプインペラーに与え、2000時間後の外観を観察した。
その結果、SUS304のポンプインペラーには、激しい浸食とぬれが認められた。これに対してSUS316では、顕微鏡観察による微小の侵食はあったものの、目視レベルにおいて侵食やはんだのぬれは認められなかった。
同様の実験をSUS316の表面を窒化処理した場合についても行ってみたが、この場合は、微小な侵食跡さえ確認できなかった。
はんだの「ぬれ」性を定量的に比較するのは困難である。しかし、上記の確認実験にそって、表面に10mm以上のぬれ部分が存在しない程度であれば、鉛フリーはんだ用のはんだ槽の材質として数年の使用に耐える。すなわち、噴流式はんだ付け装置におけるはんだ槽やダクト、ポンプインペラーなどをSUS316や表面窒化処理を施したSUS316で作成すれば、鉛フリーはんだによる侵食を低減もしくは抑制することができる。
したがって、本明細書で「ぬれない」、「ぬれが生じない」とは、上記確認試験によって表面に10mm以上のぬれ部分が存在しないこととする。
図3に本発明の実施の形態による噴流式はんだ付け装置を示す。本実施の形態では、はんだ槽100は、SUS304であるが、ダクトのはんだ吸込み口202とはんだ槽100の底面との間に中敷45を配した点が特徴である。
中敷45は鉛フリーはんだに侵食されにくい、SUS316を用いた。もちろん図1で示した表面窒化処理を行ったSUS316を用いてもよいことはいうまでもない。また、中敷45は取付具52によってダクト200に固定されている。このようにすることで、中敷45は、はんだ槽の底面に直接ふれることを防止できる。中敷45がはんだ槽と接触していると、その部分ではんだ槽と接着してしまい、中敷を取り出せなくなる。
このように中敷を配することで、はんだ吸込み口202の近傍で生じる溶融はんだの対流がはんだ槽に直接当たることがなく、はんだ槽の浸食の進行を抑圧することができる。これは、図7で示した、はんだの対流が直接当たる部分ではんだ槽の浸食が激しいという点を考慮したものである。
同様の理由で、はんだ抜き取り孔204の近傍のはんだ槽底面の侵食も抑圧することができる。
なお、ここでは、はんだの吸込み口ははんだ槽の底面を向いている場合について説明を行ったが、半田の吸込み口がはんだ槽の壁面に向いていた場合は、中敷は壁面に沿って、はんだ吸込み口と壁面の間に配するのが好適となる。
図4には、取付具54によって中敷45を取り付けた場合を示している。取付具54は中敷をダクトとは別に保持している。従って、図3と比較して図4の場合は、中敷とダクトが別々になっている。図3の場合は、ダクトと中敷を合算した重量を持ち上げる必要があったが、図4の場合であれば、取り出し時にそれほど重たくならない。
図4の場合も中敷は直接はんだ槽の底面に接触させないようにする。
図5に本実施の形態に関る噴流式はんだ付け装置を示す。本実施の形態では、中敷47は従来とおりのSUS304である。従って、はんだ吸込み口202や、はんだ抜き取り孔204の近傍の中敷は鉛フリーはんだによって侵食される。しかし、侵食の進行はほぼ一定に進行するため、中敷の厚さがわかっていれば、どれくらいの期間で交換しなければならないかを予め知ることができる。そこで、取り出して、交換しやすいように配したのが本実施の形態である。
このようにすることで、交換の手間はかかるものの、より安価なSUS304の中敷を従来の噴流式はんだ付け装置に配するだけで、装置全体の使用可能期間を延ばすことができる。
なお、材料については、SUS304以外の材料を用いてもよい。
噴流式はんだ付け装置を示す図 鉛フリーはんだに侵食されにくい、材料を確認する実験の模式図 本発明の実施の形態による噴流式はんだ付け装置を示す図 本発明の別の実施の形態による噴流式はんだ付け装置を示す図 本発明の別の実施の形態による噴流式はんだ付け装置を示す図 従来の噴流式はんだ付け装置を示す図 鉛フリーはんだによる侵食の著しい箇所を示す図
15 はんだ槽
20 ダクト
21 ノズル
22 ポンプインペラー
23 シャフト
110 パネルヒーター
202 はんだ吸込み口

Claims (1)

  1. 鉛を使用しない鉛フリーはんだが投入されるはんだ槽と、前記はんだ槽内の温度をはんだの融点以上に加熱するパネルヒーターと、前記はんだ槽内に配置されかつ一方に配したはんだ吸込み口から溶融したはんだを吸込むとともに他方に配したノズルから溶融したはんだを排出するダクトを有する噴流装置本体部とを備えた噴流式はんだ付け装置であって、前記はんだ槽内において、前記ダクトのはんだ吸込み口と前記はんだ槽の底面との間に、前記はんだ槽の底面に接触しないように中敷を配したことを特徴とする噴流式はんだ付け装置。
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