以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<血圧計の外観>
図3は本実施形態による血圧計1及びカフ帯2の外観を表す図である。
図3において、10は血圧計本体の筐体であり、内部には電気的に血圧計1を動作させるための電気回路を搭載した基板およびカフ(後述する大カフ(大きい容量の空気袋)22と小カフ23(小さい容量の空気袋)からなる)2にエアーを送ったりカフ2から排気するための配管(後述する)が収められている。11は表示部であり、そこには最高及び最低血圧値、脈拍、測定モード等が表示される。12は電源ON/OFFスイッチであり、13はモードスイッチである。本実施形態の血圧計1のモードには、後で詳述するが、測定モードとしてノーマルモード、スローモード、聴診モードの複数(3つ)のモードが設けられている。14は排気スイッチであり、ここを押下することにより、強制的に大カフ22内のエアーを排気することができるようになっている。15は送気球(加圧ゴム気球)であり、これを握る・離すの動作を繰り返すことにより、筐体10内部の配管を経由してカフ帯2にエアーを送り込むものである。
送気球15からのエアーは、コネクタ部16に接続されたチューブ18及び19を経由してカフ2に送り込まれる。18は大カフ22にエアーを送り込むためのチューブ(大カフ用チューブ)であり、19は小カフ23にエアーを送り込むためのチューブ(小カフ用チューブ)である。
17はチューブホルダであり、それ以降カフ2に向かって一体となっている大カフ用チューブ18と小カフ用チューブ19とが分離しないようにするためのものである。また、コネクタ部16とチューブホルダ17との間で、小カフ用チューブ19を撓ませる(余裕を持たせる)ことにより、小カフ用チューブ19がコネクタ部16から抜けにくくなるようにしている。つまり、小カフ用チューブ19に余裕を持たせている分、チューブを引き回したり、多少無理な方向に大カフ用チューブ18が抜けない程度に引っ張っても小カフ用チューブ19がコネクタ部16から外れてしまうことを防止できるのである。
なお、カフ2はカフカバー21で覆われており、中には天然ゴム,合成ゴム,エラストマー等の可撓性材料で形成された大カフ22とポリウレタン等の可撓性材料で形成された(a)小カフ23が入っている。
<カフの構成>
図4は、カフ2の構成を示す図である。図4Aは全体構造を、図4Bは大カフ22と小カフ23の構造を示す図である。図4Aに示されるように、カフ2は、外面に面ファスナー(不図示)が設けられたカフカバー21とそれに覆われている大カフ22と小カフ23で構成されている。なお、カフ2は取替え、消毒等が可能で、その場合、大カフ22,小カフ23をカフ2の開口部2aから容易に取り出したり、挿入したりすることを容易にするために、大カフ22にテーパー部22bを有する突起部22aを設けている。この突起部22aはカフ2に挿入された状態で開口部2aの位置と対応するようになっている。また、逆入れ防止のために突起部22aは大カフ22の長手方向で中央から所定ずれた位置(L4>L5)に設けている。
大カフ22には、前述のように大カフ用チューブ18を介してエアーが送られて加圧される。大カフ22が加圧され膨らむことによって、カフ帯2が巻かれた被測定者の腕を止血する。また、小カフ23にも、小カフ用チューブ19を介してエアーが送られて加圧される。大カフ22のエアーが排気により減圧され、血流が再開したときには、エアーが入った小カフ23内の圧力に変動が起こり、この変動に対応した脈波が後述の圧力センサ92(図14参照)によって検出される。また、大カフ22と小カフ23との間には図示しないPET製背面板が設けられており、小カフ23内の微妙な圧力変動をも検出できるように工夫されている。つまり、膨らんだ状態の大カフ22には弾力性があるため、大カフ22に小カフ23を直接取り付けてしまうと小カフ23内の圧力変動があってもそれを検出できない可能性があり、このような状態を防止するためである。小カフ用チューブ19をそれよりも外径の大きい大カフ用チューブ18に対して弛ませて捻るようにして小カフ22に接続することで、カフ2からの取出し、カフ2への挿入の際に小カフ用チューブ19の抜け防止の効果がある。また、弛みを捻りで吸収させることで、カフ2からの取出し、カフ2への挿入の際の小カフ用チューブ19の引っかかりの防止の効果がある。
また、面ファスナーによって看護師により患者(被検者)の上腕にしっかり固定できるようになっている。このリング26は必ずしも必要ない。カフ帯2が大きくなると巻いたり固定したりするのがより困難になるために設けられるものである。
24はチューブ側コネクタであり、本体側のコネクタ部16に接続される。また、25は強制排気弁であり、カフサイズが大きいとき(例えば、L、LLサイズ(カフサイズについては後述する))に設けられる。カフサイズが大きいときには必然的に大カフ22が大きくなるが、充分加圧した状態から減圧するには時間がかかり、急激に大カフ22からエアーを抜きたいときにこの強制排気弁25を開くことによって短時間にエアーを抜くことができる。
本実施形態では、異なる複数のサイズのカフが用意されている。小さい方から順にSS、S、M、L、LLである。
SSサイズのカフについて、例えば、カフカバー21の横長L1&幅W1は(345±5mm,100±4mm)、大カフ22の横長L2&幅W2は(130±10mm,80±5mm)、小カフ23の横長L3&幅W3は(30±1mm,20±1mm)である。
Sサイズのカフについて、例えば、カフカバー21の横長L1&幅W1は(435±5mm,130±4mm)、大カフ22の横長L2&幅W2は(170±10mm,110±5mm)、小カフ23の横長L3&幅W3は(40±1mm,25±1mm)である。
Mサイズのカフについて、例えば、カフカバー21の横長L1&幅W1は(520±5mm,150±4mm)、大カフ22の横長L2&幅W2は(240±10mm,130±5mm)、小カフ23の横長L3&幅W3は(60±1mm,30±1mm)である。
Lサイズのカフについて、例えば、カフカバー21の横長L1&幅W1は(640±5mm,190±4mm)、大カフ22の横長L2&幅W2は(320±10mm,170±5mm)、小カフ23の横長L3&幅W3は(80±1mm,40±1mm)である。
LLサイズのカフについて、例えば、カフカバー21の横長L1&幅W1は(220±4mm,830±5mm)、大カフ22の横長L2&幅W2は(420±10mm,200±5mm)、小カフ23の横長L3&幅W3は(100±1mm,50±1mm)である。
<血圧計本体の内部構造>
図5は、血圧計本体10の内部構造を示す図である。
図5において、31はマニュホールド、32はマニュホールド分岐部、33は大カフ用導通管、34はバイパス管(小カフ用導通管)、35導通管分岐部、36は圧力センサー導通管、37は屈曲防止用コイル、38は電磁弁、39はかしめリングである。161は大カフ用導通管33と大カフ用チューブ18とを接続するための大カフ用雄コネクタ、162は小カフ用導通管34と小カフ用チューブ19とを接続するための小カフ用雌コネクタである。大カフ用雄コネクタ161と小カフ用雌コネクタ162とは一体成形されており、コネクタ部16を形成している。
送気球15から送られたエアーはマニュホールド31を通過し、大カフ用導通管33を介して大カフ用雄コネクタ161から排出される。大カフ用雄コネクタ161から排出されたエアーは大カフ用チューブ18内を通過して大カフ22に送られる。これにより大カフ22が加圧されることになる。
また、送気球15から送られたエアーの一部はマニュホールド分岐部32からバイパス管34に入り、そこを介して小カフ用雌コネクタ162から排出される。小カフ用雌コネクタ162から排出されたエアーは小カフ用チューブ19内を通過して小カフ23に送られる。これにより小カフ23が加圧されることになる。
導通管分岐部35から分岐している圧力センサー導通管36は、送気され、バイパス管34から分岐したエアーの一部を圧力センサ(図14のブロック図における92)に送り込むと共に、測定中に脈波で変動した小カフ23の圧力によって押し出されたエアーを圧力センサーに送り込むために設けられているものである。なお、圧力センサー導通管36の内部には屈曲防止用コイルバネ(屈曲防止用部材)37が設けられている。これは、圧力センサー導通管36が曲げられたときに折れてしまい、管が閉塞してしまうのを防止する機能を有している。
なお、このバイパス管34は、例えばオレフィン系エラストマーよりなり、内径が0.4mm程度で、両端の内部にはステンレス製等の剛性を有する金属性の同じ内径の0.4mmの細径パイプがもうけられており、両端接続部でもつぶれることなく内径が維持できるように補強されている。電磁弁38は、送気球15によって送気されている間は閉じてエアーがカフ2に充分に送り込まれるようにし、加圧された大カフ22からエアーを排気して減圧する場合には開くように制御される(小カフ22からも排気されるが大カフ21に比べてその容量は極めて少ない)。電磁弁38の開閉制御等については後述する。
<コネクタ部16の構造>
図6乃至8はカフチューブ18及び19と血圧計本体1との接続部分を詳細に示す図であり、図6はコネクタ部16を示し、図7は血圧計本体1における接続部の構造を示し、図8はコネクタ部16を血圧計本体1に収めた状態でカフチューブとの接続部分(カフチューブ接続前)を上から見た状態を示している。また、図9は、大カフ用チューブ側コネクタ24の拡大図である。
図6において、161は大カフ用雄コネクタ、162は小カフ用雌コネクタである。163は小カフ用導通管接続部、164は圧力センサー導通管接続部、165は大カフ用導通管接続部である。また、166は板状部であり、これによって大カフ用雄コネクタ161と小カフ用雌コネクタ162とが一体となっている。さらに、167は小カフ用雌コネクタ162の凹部に収められたOリングである。
図7において、71は小カフ用雌コネクタ162の収納部、72は小カフ用雌コネクタ側にある板状部166の収納部、73は大カフ用コネクタ側にある板状部166の収納部である。また、本体側接続部には、チューブ側コネクタ24を係止させるための溝(係止部)74が設けられている。そして、溝74が形成されたため、突起部75も形成されている。
コネクタ部16の板状部166は、図7の収納部72及び73に収まり、コネクタ部16が血圧計本体1内でずれたり、ガタツキが起きないように位置決めされている。また、円柱形の小カフ用雌コネクタ162が小カフ用雌コネクタ収納部71に収められる。このようにコネクタ部16の形状に合わせた収納部を血圧計本体1の筐体に設けることにより、コネクタ部16のガタツキを防止でき、カフチューブとの接続も安定的に行うことができる。
また、図8に示されるように、血圧計本体1の上筐体と下筐体をはめ合わせると、本体側接続部分が形成される。大カフ用雄コネクタ161はその頭の部分が多少血圧計本体1から突出するようになっている(突出の様子については図9参照)。また、凸部75は、チューブ側コネクタ24が小カフ用雌コネクタ162に接続される部分の周囲を囲むように縁を形成することになる。
さらに、図9に示されるように、チューブ側コネクタ24は、小カフ23内で変化した空気圧を本体側に伝えるための先端部241とチューブ側コネクタ24自身を本体側接続部に固定するための弾性部242及び弾性部242の先端に設けられた突起部243とを備えている。弾性部242は、先端部241を取り囲むよう形成された外壁部244の一部に切り欠きを円周方向に複数個設けて構成されている。そして、チューブ側コネクタ24が小カフ用雌コネクタ162に接続されるときには、板バネ243が溝74に嵌り、突起部243と本体側の凸部75とが係止することによってチューブ側コネクタ24が抜けにくくなるようにしている。
また、前述のように、小カフ用雌コネクタ162の凹部にはOリング167が収められているので、先端部241と小カフ用雌コネクタ162との間にできる隙間をなくし、空気漏れを防止することができるようになっている。
なお、チューブ側コネクタ24の突起部243が血圧計本体1の溝部74に嵌るときには、板バネ突起部243で規定される径が本体側凸部75で規定される径よりも大きいので、弾性部242の反発力によってクリック感が生じるようになっている。このクリック感によって使用者はチューブ側コネクタ24が血圧計本体1に接続されたことを容易に認識することができる。
<送気球15と血圧計本体筐体10との接続部の構造>
(構造の第1の具体例)
図10は、送気球15と血圧計本体筐体10との接続部の構造を示す図である。図10Aは筐体10に送気球15を装着したときの様子を示し、図10Bは筐体10から取り外したときの送気球15を示し、図10Cは送気球コネクタの拡大断面図である。
図10Aにおいて、101は送気球コネクタ、102a,102bはOリング、103はメッシュ状のダストフィルタ、104はフィルタキャップである。小さい径のOリング102aは径方向でのシール作用、大きい径のOリング102bは軸方向で圧縮される(潰される)ことによるゆるみ止め作用があり、2つのOリング102a,102bを設けることで2つの作用効果が得られる。
図10Bに示されるように、送気球コネクタ101にはねじ山1014が設けられており、送気球15の装着は、それをマニュホールド31に対して回し入れることによって行われる。
送気球コネクタ101はゴム製の送気球15に挿入部1010からフランジ部1012まで挿入される。送気球コネクタ101には拡径段差部1011が設けられており、これがゴム製の送気球15の挿入口付近で抵抗となって抜けにくくなっている。また、かしめリング39(図10A参照)によって送気球15の挿入部付近を外から締めることによって、送気球コネクタ101が送気球15からより抜けにくくしている。つまり、送気球コネクタ101の拡径段差部1011及びかしめリング39によって内側と外側から送気球15と送気球コネクタ71を固定しているのである。
また、送気球コネクタ101の外周には凹部1013が形成されている。ここには、図10Aで示されるように、例えばゴム製のOリング102a,102bが取り付けられ、送気球15をマニュホールド31に回し入れられたときにシールされるようになる。また、Oリング102bは、回し入れられたときの緩み防止作用を果たす。
さらに、送気球コネクタ101は、フィルタ装着部1015を有しており、ここにはダストフィルタ103が取り付けられたフィルタキャップ104が装着される。このダストフィルタ103によって血圧計1内の各導通管33、34及び36や電磁バルブ38、カフ帯2につながる各チューブ18及び19等に塵が入り込むのを防止することができる。つまり、塵によって各管が詰まったり、電磁バルブ38や圧力センサー92に誤動作が発生することを防止できる。なお、1020は逆止弁である。
(構造の第2の具体例)
図11及び図12は、送気球15と血圧計本体筐体10との接続部の構造の第2の具体例を示す図であって、特に図11は第2の具体例に係る送気球コネクタ101の構造を示し、図12は第2の具体例に係るワンウェイクラッチリング1201を示している。
第1の具体例では、送気球コネクタ101の凹部1013にOリング102bを取り付けるようにしたが、第2の具体例では、Oリング102bの代わりにワンウェイクラッチリング1201(図12参照)を取り付けるようにしている。
図12A及びBに示されるように、ワンウェイクラッチリング1201の下表面には、等間隔に例えば12個の台形状切り欠き部1202が設けられている。切り欠き部1202(Yで示される部分)の拡大図たる図12Cに示されるように、切り欠き部1202における台形の一方の端部の角度は略直角であるのに対し、もう一方の端部は傾斜を有し、その傾斜角度は所定の角度θ(例えば15〜30°)をなしている。また、ワンウェイクラッチリング1202の上表面には弾性体リング1203(例えば、発泡ゴムリング、スポンジリングやゴムリング等)が貼着されている。弾性体リング1203の作用については後述する。
一方、図11に示されるように、送気球コネクタ101のフランジ部1012には等間隔に例えば4個の台形状凸部1102が設けられている。X部分拡大図たる図11Bに示されるように、凸部における台形の一方の端部の角度は略直角であるのに大使、もう一方の端部は傾斜を有し、その傾斜角度は所定の角度θ(例えば15〜30°)、つまり切り欠き部1202の角度θと同じ角度をなしている。従って、台形状凸部1102と台形状切り欠き部1202はぴったりと嵌リ合うような関係にある。
上述のような構成を有するワンウェイクラッチリング1201は、送気球コネクタ101の段差部1103に嵌められる。そして、ワンウェイクラッチリング1202における台形状切り欠き部1202と送気球コネクタ101における台形状凸部1102が嵌り合った状態で、送気球15はマニュホールド31に回し入れられる。送気球15がマニュホールド31にきつく締まる状態に近づくと、マニュホールド31の内部側面にワンウェイクラッチリング1201の弾性体リング1203が接触し、それらの摩擦によって弾性体リング1203の回転が抑えられる。その一方で、送気球15は回し入れられているので、送気球コネクタ101の台形状凸部1102の傾斜部1103は、ワンウェイクラッチリング1201の台形状切り欠き部1202の傾斜部1204を乗り越えて「カチカチ」という音を立てるようになる。送気球15が最後までマニュホールド31に回し入れられると、弾性体リング1203が潰れるため、ワンウェイクラッチリング1203の空転も無くなり、送気球15は血圧計本体1にしっかりと固定されることになる。
<表示部11の詳細>
図13は、血圧計1の表示部11の詳細を示す図である。
図13において、110は最高血圧の表示、111は最低血圧の表示、112は脈拍の表示、113は脈波信号の表示、114は前回値の表示、115は排気中の表示、116は加圧不足の表示、117は過加圧の表示、118は選択中のモードについての表示である。
最高血圧表示110は、加圧及び減圧中にあっては瞬時圧を表示し、最終的に最高血圧の表示である。最低血圧表示111は最終的に決定された最低血圧の表示である。そして、例えば、最低血圧が80と決定された場合、それまでと同じスピードで排気し減圧しても動作として無駄なので、圧力値60から急速に排気するように電磁弁36が制御される。その急速排気中には、排気中表示115が点滅する。また、この排気中表示115は、前述のように、排気スイッチ14を押下することによっても点滅する。その際には強制的に電磁弁は解放され、急速に排気するように制御される。急速排気の場合の排気スピードは通常減圧時の倍以上のスピードとなっている。また、脈拍表示112は、測定された脈拍値を表示する。前回値表示は電源スイッチ12を押下して血圧計を立ち上げると点滅又は点灯し、前回に測定した最高及び最低血圧値、脈拍値が最高血圧表示110、最低血圧表示111、脈拍表示112のところにそれぞれの値が表示される。そして、しばらくすると又は送気球15によって送気が開始されるとそれらの表示が消滅し、前回値表示の点灯/点滅も消滅する。なお、加圧中の圧力は一瞬大きくなる(瞬時圧が大きくなる)場合があり、生の瞬時圧データを表示部に表示すると、使用者が加圧充分と誤認する可能性がある。そのため、本実施形態では生の瞬時圧データを表示部に表示するのではなく、敢えて鈍らせた圧力データを表示部(最高血圧表示110)に表示することにより使用者の誤認を防止するようにしている。
脈波信号表示113は検出された脈波信号の大きさを示す表示であり、その大きさをバー状に表示するものとなっている。普通の脈を持つ被測定者の場合には、バーがリズミカルに左右に増加したり減少したりするが、不整脈を持つ被測定者の場合には、そのバー表示がリズミカルな動きとはならない。このように脈波信号表示113を設けることによって、視覚的に被測定者が不整脈の持ち主であるか否かを判断することができて非常に便利である。
加圧不足表示116が点灯又は点滅しているときには、カフ2内の圧力が測定するのに十分なレベルにまで達していないことを意味し、使用者に送気球による送気を促すようにしている。過加圧表示117が点灯又は点滅しているときには、カフ2内の圧力が所定圧以上(例えば320mmHg以上)になっていることを意味し、使用者はこれを見て加圧動作を止めるように促されることになる。
選択モード表示118は、モードスイッチ13によって選択されたモードが何かを示すものである。モードは「ノーマル」「スロー」「聴診」のうちどのモードが選択されているかを表示している。本実施形態では、その表示は、血圧計本体カバーにプリントされたモード表示の上の「▼」マークが点灯又は点滅することによってなされている。
このモード選択によって、排気(減圧)スピードを変えることができるようになっている。「ノーマル」モードが選択されると、排気スピードは例えば5±αmmHg/秒と設定される。このモードでは排気スピードが比較的速いので測定時間を比較的短くできるという利点がある。その一方で圧力変化測定の刻みが大きいことになるので、脈拍が安定した人を測定する場合には特に問題はないが、不整脈の人の血圧を測定する場合には、脈が抜けやすいので測定誤差が大きくなる可能性がある。そこで、本実施形態では、「スロー」モードを設けており、このモードが選択された場合には排気スピードを「ノーマル」モード時の略半分付近、例えば2.0〜2.5mmHg/秒に設定している。このように「スロー」モードでは通常よりゆっくり減圧することにより詳細に圧力変化を見ることができるので、脈が抜けやすい不整脈の人の測定がより正確に行うことができる。さらに、「聴診」モードは聴診器を使ってマニュアルで測定するモードであるが、この場合も「通常」モードの略半分程度の排気スピード、例えば2.0〜3.0mmHg/秒に設定される。
本実施形態では前述の通り、カフサイズがSSからLLまで用意されているが、排気スピードはこのカフサイズに影響されないようにすることが重要である。そのため、カフサイズが大きい程、毎秒排気される空気の容量が大きくなるように電磁バルブ38の開閉が制御(フィードバック制御)される。
なお、図示はしていないが、モードスイッチ13を押しながら電源スイッチ12を押し、その状態でさらにモードスイッチ13を約1秒以上押しつづけると、測定回数表示に切り換わる。このとき、最高血圧表示110には測定回数表示であることを示す表示が表示され、最低血圧表示111には測定回数が表示される。測定回数としては、100の位以上を表す数値のみを表示し、10の位以下については表示しないようにしてもよい。
<血圧計の制御系回路ブロック図>
図14は、血圧計1の制御系回路ブロック図を示す図である。
図14において、91は回路全体を制御するための制御部(例えば、CPU)であり、92はカフ2(大カフ22及び小カフ23)の圧力を検知するための圧力センサーである。93は制御プログラムや各種データを予め格納しているROMであり、94は演算結果や測定結果を一時的に格納するRAMである。95は電磁バルブ38を制御部91からの制御信号に従って駆動させるための駆動部であり、96は所定の警告をするブザーである。97は電池電源であり、98はその電池電源をコントロールするための電源コントロール部である。
まず、使用者によって電源スイッチ12が押下され、モードスイッチ13によってモードが選択される。電源スイッチ12の押下及びモード選択による表示部11の表示動作については前述の通りである。
送気球15からのエアーは、前述のように、マニュホールド31を通り、マニュホールド分岐部32、大カフ用導通管33、大カフ用チューブ18を介して大カフ22に送り込まれる。また、送気球からのエアーの一部は、パイパス管34、導通管分岐部35及び小カフ用チューブ19を介して小カフ23にも供給される。
さらに、導通管分岐部35で分岐したエアーは、圧力センサ導通管36を介して圧力センサー92に供給される。このとき(加圧時)に圧力センサー92によって検知される圧力の変動値は、測定時(減圧時)の圧力の変動値に比べて非常に大きい。そのため、検知圧力の変動値が所定値以上である場合には、制御部91は、現在加圧中であると判断して駆動部95に電磁バルブ38を閉めるように指示する制御信号を出力する。この制御信号を受信した駆動部95は、電磁バルブ38を閉めてエアーが電磁バルブ38から漏れないようにする。なお、送気球15と圧力センサー92とは、前述のように大カフ用導通管33よりも細いパイパス管34でつながれているので、急激な圧力変化を鈍らせるという効果がある。つまり、急激に圧力が上がると、表示部11に圧力値が大きく表示されてしまい、使用者が充分な加圧であると誤解する危険がある。従って、圧力変化を鈍らせることによって使用者の上記誤解を防止することができる。
ブザー96は、血圧計本体に電源を入れて表示部がONとなったとき、モードスイッチ13によるモード切替のとき、血圧値が決定したとき、及びエラーが発生したとき等に音を発するようになっている。
使用者は表示部11の最大血圧値表示に示される値を見て、大カフ22及び小カフ23が測定するのに充分に加圧されたかを判断し、充分であると判断すれば送気球15からのエアー供給を止める。このとき圧力センサー92は、所定期間内に圧力変動値(上昇値)は略ゼロ若しくは減圧状態になるのを検知する。すると、制御部91は駆動部95に対して電磁バルブ38を開くように指示する制御信号を出力し、その制御信号を受信した駆動部95は電磁バルブ38を減圧スピードが所定値になるように開く。そして血圧計の動作は加圧モードから測定モードに移行する。
測定モードに入ると、最高血圧値及び最低血圧値はROM93に格納されている測定プログラムに従って測定される。血圧値等の決定動作については図17のフローチャートを用いて詳述するので、ここでは概要を述べるに留めることとする。
大カフ22に供給されたエアーが減圧に従って徐々に外に排気されると、ある時点で阻血されていた血液が流れ始める。そして、その血流開始によって小カフ23内に圧力変化を生じさせる。その圧力変化が圧力センサー92によって検知され、脈波信号の立ち上がり検出ポイントとされる。また、その後の脈波検出に対する圧力値も測定値としてRAM94に順次格納される。立ち上がり検出ポイントの圧力値や順次格納された圧力値は、後述のように最高血圧値及び最低血圧値を決定するために用いられる。
また、脈拍値は、所定期間における拍数を検出し、それを60秒間に換算することによって決定される。
<最高及び最低血圧値決定動作>
図15乃至17を用いて最高及び最低血圧値を決定する動作について説明する。ここで、図15は減圧時の圧力変動を示すグラフ、図16は減圧時の圧力変動の実測値と予測値を示すグラフ、図17は最高血圧及び最低血圧を決定する動作を説明するためのフローチャートである。
図17のフローチャートにおいて、ステップS101では、減圧時の圧力値(DC波形)が測定される。この減圧時の圧力値は図15のグラフの特性で表される。このグラフ中、急激に圧力値が変化している所があるが、それは最低血圧値決定し所定時間経過後に急速に排気させたときの変化を示している。測定された各圧力値はRAM94に一時的に格納される。また、送気が終わった時点をt=0としている。
ステップS102では、減圧時の測定圧力に含まれる振動成分(変動値:AC成分)が抽出され、その抽出された値がRAM93に格納される。なお、振動成分は、圧力値をフィルタリングすることによって抽出される。抽出された振動成分をグラフに表すと図15のようになる。
そして、ステップS103では、ステップS102で得られた振動特性に基づいて第1の最高血圧値候補ポイント(第1SYS)を取得する。減圧開始からの所定期間は、大カフ21によって被測定者の腕は阻血されているため振動成分は非常に少ない。そして大カフ21内の圧力の減少に従って血流が再開すると、最初に急激に立ち上がるポイントがある(図15の第1SYS)。この立ち上がりポイントの実測振幅値と予測振幅値との差d1(ただし、実測振幅値>予測振幅値)が最大脈波振幅値の所定の比率内(例えば5〜15%)に含まれる場合には、このポイントに対応する血圧値(DC値)が第1の最高血圧値候補とされる。15%以内としたのは、それ以上だと異常値である可能性が高いからである。なお、予測振幅値は、図16に示されるように、時間的に前のポイント(例えば3つ前までのポイント)から予測される値である。また、ここで「候補」としたのは、被測定者が不整脈を持っていた場合等には脈波に乱れがあるので、必ずしも最初の立ち上がりポイントにおける圧力値が最高血圧値を示すとは限らないからである。従って、本実施形態では、他の方法によって得られた候補値をも考慮することとしているわけである。
ステップS104では、ステップS102で得られた振動特性に基づいて第2の最高血圧値候補ポイント(第2SYS)を取得する。第2SYSは、最大脈波振幅値から見て急激に立下るポイントであって、図16のグラフにおいて、実測振幅値と予測振幅値との差d2(ただし、実測振幅値>予測振幅値)が最大脈波振幅値ポイントから見て最初に最大脈波振幅値の5〜15%の範囲内に入るポイントとされる。15%以内とした理由は上述の通りである。そして、その第2SYSに対応する血圧値(DC値)が第2の最高血圧値候補とされる。
次にステップS105では、第3の最高血圧値候補ポイント(統計的SYS)が取得される。この統計的SYSは最大脈波振幅値の所定割合に当たるポイントであり、これは経験的な確からしさが根拠となっている。従って、この統計的SYSは、立ち上がりポイントが複数ありどこが確からしいかが不明な場合に有効なものである。
続いてステップS106では、第1SYSに対応する第1の最大血圧値候補と第2SYSに対応する第2の最大血圧値候補との差異が所定値(mmHg)以内であった場合には処理はステップS107に移行し、そこでは第1の最高血圧値候補が最高血圧値として決定される。
差異が所定範囲外であった場合には処理はステップS108に移行し、例えば第1乃至第3の最大血圧値候補の平均値を最高血圧値として決定される。なお、3つの値を重み付けるようにしてもよい。
さらに、ステップS109では、最低血圧値が算出される。図15からも分かるように、エンベロープは最大脈波振幅値ポイントから徐々に小さくなるが、最大脈波振幅値の所定割合になったポイントが最低血圧値を示すポイント(DIA)とされ、それに対応する血圧値(DC値)が最低血圧値と決定される。なお、最低血圧値決定の演算は、最大血圧値決定の後に実行する必要は必ずしも無く、それよりも前でもよいし、並行して行ってもよい。
以上のように求められた最高及び最低血圧値は、表示部11に表示される。
なお、ここでは、第1の最高血圧値候補と第2の最高血圧値候補との差異が所定範囲外であった場合には、第1乃至第3の候補値の平均値を最高血圧値としているが、第1及び第3の候補値の平均値、又は第3の候補値を最高血圧値としても良い。また、第1の最高血圧値候補と第2の最高血圧値候補との差異が所定範囲内にあるか否かに関係なく、第1及び第3の候補値の平均値を最高血圧値としても良い。さらに、第1及び第2の候補値を求め、それらの平均値を最高血圧値としても良い。
また、本実施形態では基本的に減圧時に複数の立ち上がりポイントを検出して最高血圧値の候補として最終的に最高血圧値を求めているが、これに限らず、加圧時に図17のフローチャートに示されたアルゴリズムを用いて最高血圧値および最低血圧値を決定しても良い。つまり、減圧時の圧力変動特性は図15のようになるが、図23に示された加圧(昇圧)時の圧力変動特性を求めて複数の最高血圧値候補(図中第1SYS、第2SYS等)を検出して同じアルゴリズムによって最高血圧値を取得するようする。
<電磁バルブ38の構成及び動作>
本実施形態で用いられる電磁バルブ38の構成及び動作について図18乃至22を用いて説明する。なお、電磁バルブ38の開閉動作はPWM制御されている。
図18は、本実施形態で用いられる電磁バルブ38の構成を示す図である。図18において、381はゴム弁、382は第1のプランジャー、383はプランジャー受け、384はスペーサー、385は第2のプランジャーをそれぞれ示している。
ゴム弁381は、第1のプランジャーよりもS分のスペースだけ突出している。このゴム弁381は、例えば加圧時に、プランジャー受け383の流路を塞ぐことによってバルブ38からの空気漏れをなくすようにしている。また、ゴム弁381は、例えば減圧時に、プランジャー受け383から離れて流路を開放し、排気をするようにしている。プランジャー受け383と第1及び第2のプランジャー382、385は、伝導性のある金属により形成されている。電磁バルブ38の両端には電圧が掛けられているので、金属製のプランジャー382とプランジャー受け383との間には電磁力が働き、その印加電圧が大きくなればなるほど(例えば、1.2Vから最大1.7又は1.8V)その電磁力の大きさは大きくなる。
図19は、電磁バルブ38が正常に開閉動作をしたときのヒステリシス特性を示すグラフである。図19のグラフにおいて、横軸は電磁バルブ38に印加される電圧を示し(PWM制御を行っているので、%で表示されている)、縦軸はバルブの開放ストローク(満開時を「0」としている)を示している。また、図19において、曲線L1は電磁バルブ38を閉じる時のヒステリシスを、曲線L2は同バルブを開く時のヒステリシスを示している。
電磁バルブ38が満開状態から徐々に電圧を印加する(曲線L1参照)と、PWMが約40%になる点から徐々に電磁バルブ38が閉じ始める。そして、ポイントP1(PWMが約50%付近)に到達すると流路がゴム弁381によって閉じられる(開放ストロークが約−195μm付近)。この時点ではまだ完全にはゴム弁381は閉じられてはおらず、空気は抜ける状態になっている。さらに電圧が印加され続けられると、弾性のあるゴム弁がつぶされることによって流路が完全に密閉される。完全密閉状態(ポイントP2)時のストロークは約−340μmとなっている。
完全密閉状態(P2)から電磁バルブ38を開放させる場合(曲線L2)、印加電圧を徐々に下げていく。印加電圧の低下に従って、つぶされたゴム弁381は本来の形状に戻り、制御領域の右端E1に進入するとゴム弁381とプランジャー受け383との隙間から空気が抜けるようになる。つまり電磁バルブ38が半開きの状態となっており、印加電圧(PWM)が落ちるとそれに伴って隙間から抜ける空気量が増加していく。そして、ポイントP3(PWMが約44%で、開放ストロークが約−200μm)で電磁バルブ38が完全に開く。本実施形態では減圧スピードが5mmHg/秒に制御されるが、この制御は図19における制御領域内で実行される。
ここで、制御領域とはE1とE2で挟まれる領域であり、減圧スピード5mmHg/秒によって排気が制御される領域である。また、制御領域に対応する電圧を電磁弁制御電圧(本実施形態では例えば、略0.6〜略1.0V:PWMで略50%〜略64%)ということとする。制御領域に進入する開始の時点(PWM=E1)は、直ぐには減圧スピードが5mmHg/秒には到達しないが、それに向けての制御が始まった時点であり、排気が開始される。そして印加電圧が下げられることによってゴム弁381が開いていくが、減圧スピードが5mmHg/秒に到達するとそれを保つように印加電圧が制御される。減圧が進めば、カフ2内の圧力も下がるため、ゴム弁の開き具合も大きくなるということである。制御領域の左端(PWM=E2)に到達すると、減圧スピードを5mmHg/秒に維持する制御は終了し、急速排気を実行する。このときのカフ2の圧力は例えば20〜30mmHgに設定されている。
ポイントP1−P2間、及びP2−P3間における電磁バルブ38を閉状態に保つ力は、印加電圧によって第1のプランジャー382とプランジャー受け383との間の電磁力である。従って、ポイントP2−P3間の開放ストロークの変化は緩やかであるのに対し、開放後(ポイントP3後)は電磁力による影響が無くなるので開放ストロークの変化は急激になっているのである。
以上のように、本実施形態では、印加電圧によって開閉動作が制御される電磁バルブを用いているので、送気球15による送気時(加圧時)には速やかに電磁バルブ38を閉じることができ、排気時(減圧時)には前述のモードに応じて安定的にカフ2内の空気を排気することができる。
しかしながら、以上のように安定的に開閉動作を行うためには、図18に示されるように、ゴム弁381及び第1のプランジャー382が水平に保たれた状態でY方向の動きをなすことが重要となってくる。従って、図20に示されるように電磁バルブ38が傾いてしまう(起こりやすい)と第1のプランジャー382とプランジャー受け383とが接触し、両金属間に生じた電磁力によって両金属が固着してしまい、本来開放されるべき電圧を印加しても(ポイントP3)電磁バルブ38が開放されないという弊害が発生してしまう。
図21は、そのような傾いた状態で電磁バルブ38を閉じたときのヒステリシス特性を示す図である。
電磁バルブ38が満開状態から徐々に電圧を印加する(曲線L3参照)と、PWMが約40%になる点から電磁バルブ38が閉じ始める。そして、ポイントP4(PWMが約55%付近)に到達すると流路が斜めに傾いたゴム弁381(図20参照)によって閉じられる(開放ストロークが約−230μm付近)。さらに電圧が印加され続けられると、弾性のあるゴム弁がつぶされることによって流路が完全に密閉されようになるが、完全密閉状態(ポイントP2)に至るまでの間のポイントP5において第1のプランジャー382とプランジャー受け383とが接触し、かつ印加電圧によって生じた電磁力によって両者が吸着される。そして吸着状態のまま密閉状態であるポイントP2に到達する。このときのストロークは図19と同様約−340μmとなっている。
完全密閉状態(P2)から電磁バルブ38を開放させる場合(曲線L4)、印加電圧を徐々に下げていく。印加電圧の低下に従って、つぶされたゴム弁381は本来の形状に戻ることになるが、この状態でも第1のプランジャー382とプランジャー受け383は電磁力によって固着したままであり、ポイントP6(PWMが約48%で、開放ストロークが約−300μm)で金属接触が開放される。つまりポイントP6に至るまでは、電圧が制御領域に入ったとしても電磁力による固着の影響によりほとんどゴム弁381のストロークに変化がない。そして、ポイントP6を過ぎると、第1のプランジャー382とプランジャー受け383との固着が解け、急激にゴム弁381が開く。その影響によりヒステリシスL4に急激な変化があるのである。ポイントP6を過ぎると、電磁バルブ38が半開きの状態になり、隙間から空気が抜け始める。さらに印加電圧が下げられることによって傾斜した電磁バルブ38がポイントP7(PWMが約43%、ストロークが約−220μm)で完全に開くことになる。
なお、ポイントP4−P5−P2間、及びP2−P6間における電磁バルブ38を閉状態に保つ力は、図19の場合と同様、印加電圧によって第1のプランジャー382とプランジャー受け383との間における電磁力である。従って、ポイントP2−P6間のストロークの変化は緩やかである。これに対し、金属接触が開放された後(ポイントP6後)では、その時点での印加電圧(PWM)は本来、ゴム弁381が徐々に開放されていくはずであるので、急激にストロークの変化が起こり、ポイントP7で完全にゴム弁381が開放されることになるのである。
このように、金属固着が発生すると、急激にゴム弁381が開き始める(P6)ので、減圧スピードを略5mmHg/秒に保つことが困難である。図21で示されるように、実際に、制御領域に入ってからポイントP6までのゴム弁381のストロークに変化が無く、ほとんど空気が抜けていないことが分かる。
そして、金属固着が起こらない通常の電磁バルブ38の開閉動作時には、ゴム弁381を閉じる時のPWMと開く時のPWMとの差は約6%であるのに対して、金属固着が発生した場合にはPWMの差は約12%となっている。このような金属固着があると前述のように急激なバルブの開閉動作が起こってしまうので、カフ帯2内の空気を安定的に排気(減圧)することができなくなってしまうという欠点がある。常に電磁バルブ38を水平に出し入れすることができれば問題は解決するわけであるが、その制御は非常に困難である。
そこで、本実施形態の改良案では、図22に示すように、電磁バルブ38の第1のプランジャー382において接触の可能性ある部分386をカットして円周方向のほぼ全体をテーパー状にする。このように第1のプランジャー382が傾くことによってプランジャー受け383に接触する可能性のある部分386をテーパー状にすることによって、第1のプランジャー382とプランジャー受け383との間にある程度のスペースを確保することができるので、多少電磁バルブ38が傾いていたとしても金属接触を防止することができる。なお、このテーパー状にカットする部分(386)の角度φは、略5度から略8度までの間に設定すると、傾斜の影響を抑えることができると共に、第1のプランジャー382とプランジャー受け383との間の電磁力を弱めすぎないという点において非常に有効である。ただし、この範囲に限定されるわけではなく、多少なりともテーパー状にすれば傾斜に対してはある程度有効である。
このように、第1のプランジャー381をテーパー状にすれば、ゴム弁381が傾斜したとしても、ヒステリシスは図19に示されるような特性になるので、減圧スピードの制御を安定的に実行することが可能となる。