上記した従来の護岸は、全く自由度のない単一な法面勾配で直線河道となってしまうため、画一的な河岸、河床を形成してしまい、河川が本来有している多様な自然環境の形成に対して有効な機能を持つに至ってない。
またこの護岸に用いる法面用ブロックは、これにより構築する法面の縦方向に決められた傾斜角の均一な護岸の法面勾配が河川の流れ方向において一定であることを前提条件とすることで一体性を確保できる構造であるため、構築後の護岸に外力により変位が生じた場合、法面用ブロック相互の一体性が確保できず崩壊に繋がる危険性が高かった。
さらに、上記した法面用ブロックにて構築される護岸にあっては、基盤上に所定の法面勾配にて表面が直線状に構築されるようになっていて、各法面用ブロックの重量は各ブロックを介して上記基盤コンクリートにて支持するようになっていることにより、仮に上記基盤コンクリートの周囲が洗掘されて、これの姿勢に変化が生じると護岸全体が崩壊してしまうことになる。
また、上記したように護岸は法面勾配に沿って全く自由度のない一直線状に構築されているため、設計水量を越える出水による溢水にて護岸の天端部の背面側に洗掘が生じて、護岸の背後の土砂が流出したような場合には、これを追随して変形することができず護岸全体が崩壊してしまうことがあった。
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、積み込み姿勢から相互間において変位を可能にした法面用ブロック、基礎用ブロックを用いて背面土圧や背面水圧に対して、仮に予想以上の外力が不均一に発生したときには各ブロック相互が多少変位して、これらの転倒、崩落現象を防止でき、さらに仮に、基礎工部や天端部に洗掘が発生しても、これに追随して変形されて洗掘による崩壊及び、その後の洗掘の進行を防止できるようにした護岸を築くことができ、また擁壁としても背後からの圧力によるせり出し現象を防止できるようにした法面壁及びこれに用いる法面用ブロック、基礎用ブロックを提供することを目的とするものである。
上記した目的を達成するために、本発明に係る法面壁は、本体の後側面と前側面を相互に接触状態で上下方向に滑動可能にした基礎用ブロックを、後側面を法面側へ向けて基礎部に敷設し、基礎部の最も後側に位置する基礎用ブロックの後側面に、本体の法面の縦方向の両側面を積み重ね接触状態で法面の前後方向に滑動可能にし、本体の前側部に法面を構成する前面板を、また本体の後側部に控え部となる背面板を、法面の縦方向上側が広くなる角度方向に向けて設けた法面用ブロックの上記本体の下側面を接触して積み重ね、この最下段の法面用ブロックの上側に他の法面用ブロックを、相互の本体の上側面と下側面とを接触して順次積み重ね、上記各基礎用ブロックの相互、各法面用ブロックの相互、さらに最も後側に位置する基礎用ブロックと、これに接触する最下段の法面用ブロックの相互を、相互に可動可能に連結し、さらに、上記法面用ブロックの前面板と、背面板より狭くした本体の両側に胴込め材を、背面板の背面側に裏込め材を充填した構成になっている。
そして上記した法面壁において、基礎用ブロックが、本体の側面形状の重心位置より上側で、かつ後側面側の位置と、上記重心位置より下側で、かつ前側面側の位置に本体を貫通する連結孔を設けてなり、また法面用ブロックが、側面形状の重心位置より上側で、かつ本体の法面の縦方向の上側面側の位置と、上記重心位置より下側で、かつ本体の法面の縦方向の下側面側の位置に本体を貫通する連結孔を設けてなり、上記基礎用ブロック及び法面用ブロックの法面の縦方向に隣接するものの連結孔の相互を連結金具にて連結し、またこの法面の縦方向に連結されたブロック列相互を横方向連結部材にて連結した構成になっている。
また、上記法面壁に用いる法面用ブロックは、本体の法面の縦方向の両側面を積み重ね接触状態で法面の前後方向に滑動可能にし、本体の前側部に法面を構成する前面板を、また本体の後側部に控え部となる背面板を、法面の縦方向上側が広くなる角度方向に向けて設けた構成に、また側面形状の重心位置より上側で、かつ本体の法面の縦方向の上側面側の位置と、重心位置より下側で、かつ本体の法面の縦方向の下側面側の位置に本体を貫通する連結孔を設け、本体の幅を前面板と背面板の幅より狭くした構成に、さらに前面板に対して所定角度で対向している背面板が、上記前面板に対して、前面板の下端部からの前面板に対する垂線にその一部が交差する位置あるいはこの垂線から下側へはずれて交差しない位置のいずれかの位置に配置されている構成になっている。
また、上記法面壁に用いる基礎用ブロックは、本体の後側と前側の両側面が接触状態で上下方向の滑動可能にした構成に、また本体の側面形状の重心位置より上側で、かつ後面側の位置と、上記重心位置より下側で、かつ前側面側の位置に本体を貫通する連結孔を設けた構成になっている。
本発明において、請求項1に記載された法面壁にあっては、法面壁の基礎部に、本体の後側面と前側面とを接触状態で上下方向に滑動可能にした基礎用ブロックを敷設したことにより、この基礎用ブロックは河床の低下に対して転倒に対する抵抗性を維持しながら追随して移動することができる。
そしてこの基礎用ブロックの後側面に、最下段の法面用ブロックの法面の縦方向の下側面を接触させて法面用ブロックを積み重ねたことにより、基礎用ブロックの移動に追随して法面用ブロックが移動することができる。
また、最下段の法面用ブロックが基礎用ブロックに対して前後方向に滑動可能に接触され、及びこの最下段の法面用ブロックに積み重ねられる法面用ブロックの相互が前後方向に滑動可能に接触されることにより、この法面用ブロックの積み重ね角度を、下段側では法面の基準傾斜より緩やかに、中間部では基準傾斜に沿う急傾斜に、天端部では天端形状に沿わせて緩やかに後退させる等、法面の縦方向の傾斜角度を変えることができる。
さらに本発明の請求項2に記載の法面壁にあっては、基礎用ブロックの相互が後側面側で、かつ基礎用ブロックの重心位置より上側位置と前側面側で、かつ基礎用ブロックの重心位置より下側位置とが連結金具にて連結されることにより、この基礎用ブロックを敷設した河床が洗掘されたときに、前側の基礎用ブロックはこれの後側がずり落ちるように変位されて前側への転倒、脱落現象が生じることがなくなり、上記河床の洗掘に追随してその後の洗掘の進行を防ぐことができる。
このように、基礎用ブロックは河床の洗掘を受けても前側へ転倒することなく、このときに受ける外力が基礎用ブロックの沈下や斜面滑動力に転換されて基礎用ブロック相互の一体性を確保できる。
特に基礎用ブロック及び法面用ブロックの相互は、前後方向に滑動可能に接触していること、及び、前側の基礎用ブロックの重心位置より上側で、かつ後側面側と、後側の基礎用ブロックの重心位置より下側で、かつ前側面側とが連結金具にて連結され、法面用ブロックの下側のブロックの重心位置より高い位置と、上側のブロックの重心位置より低い位置にてこの法面用ブロックの相互が連結金具にて連結されていることにより、ブロック相互の噛み合わせ効果が大きく向上できると共に、背面土圧や背面水圧に対して一体となって抵抗して、仮に予想以上の外力が不均一に発生して各ブロックにおいて多少変位が発生しても、転倒、脱落現象の防止に有効である。
そしてこの発明によれば、法面に沿う姿勢の前面板に対して背面板が下方に、かつ水平に近い姿勢で配置されることにより、この背面板に胴込め材及び裏込め材からの鉛直荷重が多く伝達され、また洪水終了時に発生する内部の縦方向への排水時に発生する流体力などを受けて安定性を増加させることができる。
また、各法面用ブロックの背面板は土中において階段状に位置されることにより、この各背面板による法面方向のせん断抵抗が大きくなり、土圧の軽減を図ることができる。また、ブロック内部と背面土側の水位差を少なくして残留水圧の発生を軽減できる。
さらに、安定に有効な鉛直力を多く受ける背面板を前面板に対してより下方に配置されることにより、各法面用ブロックの法面壁の前面側への転倒に対しての抵抗力を向上することができる。
また、河床等の基礎部に敷設される基礎用ブロックにあっては、重心位置より上の位置と、同ブロックに隣接するブロックには重心位置より下の位置にて連結されるため、河床の洗掘を受けても河床の先端側に位置する基礎用ブロックは前方側へ転倒することなく、上記洗掘に従って沈下や斜面滑動されて一体性を確保することができる。そしてこの前端側に位置する基礎用ブロックの後側に隣接する基礎用ブロック、あるいは法面用ブロックに発生した引張り力は下方に伝達されて、これらのブロックは上記前端側の基礎用ブロックと同様に転倒することなく沈下や斜面滑動しても一体性が確保される。
この動作は法面用ブロックにも伝播され、この法面用ブロックも同様の引張り力が伝播されることになり、各法面用ブロックは背面側へ転倒される力に変換されて前面側への転倒を防ぐ滑動力として法面壁の上部に伝播され、法面壁全体としての一体性が確保される。
本発明に係る法面壁にあっては、洪水後において壁内に流入した水は、胴込め材、裏込め材が下方に連続していて透水性及び排水性が高いため、内部を循環して同じ隙間から流出することがなく、また洪水の発生で土砂等が混入した河川水の浸入で隙間内部にこの土砂が堆積し、その後仮に流されても再度堆積することが可能である。
法面壁の基礎部前面に洗掘を受ける場合は、一列ごとに斜面方向に滑動する可能性があるが、その際、壁体背面が粗面となり滑動抵抗を増加させ、このときの若干の移動後に、各ブロックは連結金具にて法面の縦方向に引張り力として伝達され、これ以上の滑動が防止される。また、上記各列は横方向に連結部材にて連結されていることにより、一列だけが大きく移動されることがない。一方、天端側に洗掘を受けた場合は、滑動や沈下を起こすが、連結金具により逆方向に引張り力として伝達され、これ以上の滑動が防止される。
このようにして、洪水を繰り返し受けても、全体として概ね安定した一体性が確保されるが、結果的に各ブロックは各々異なった変位を生じることにより、全体として多様な地形の護岸あるいは擁壁へと変化していく。また、現状の地形に合わせ、法面の縦方向及び横方向に前面勾配を変化させ、また基礎用ブロックの位置や、法面用ブロックの位置を変化させるなど、施工時から多様な形状を作り変化をもった護岸工を施工でき、また背後からの圧力によるせり出し現象を防止できる護岸工や擁壁工を施工できる。
そして上記法面壁に用いるための請求項3に記載された法面用ブロックにあっては、法面の縦方向に積み重ねられる法面用ブロックの相互が、前後方向に移動可動となり、法面の前後方向に自由度を有して、しかも安定した状態で積み重ねることができる。
さらにこの法面用ブロックにあっては、法面を構成する前面板に対して控え部を構成する背面板とが法面の縦方向上方が広くなる角度方向に向けて設けられていることにより、控え部となる背面板が法面を構成する前面板の後側下方に位置され、前面板と背面板との間に充填される胴込め材と背面板による荷重は背後に充填する裏込め材に支持されて安定性について有効に作用させることができる。
また、請求項4に記載された法面用ブロックにあっては、本体の法面の縦方向の上側面側に設けた連結孔が側面形状の重心位置より上側に、また本体の法面の縦方向の下側面側に設けた連結孔が上記重心位置より下側にそれぞれ設けられていることにより、本体を法面の縦方向に積み重ねて、これの隣接するもの相互の連結孔を連結金具にて連結した状態及び、背面板が前面板に対してより下側に配置されることにより、各法面用ブロックの前側への転倒に対しての抵抗性を持たせることができる。
さらに、請求項5に記載された法面用ブロックにあっては、控え部となる背面板が法面を構成する前面板の後側の下方に位置させることができ、背面板に作用する胴込め材と裏込め材によるアンカー作用をより一層大きくすることができる。
一方、請求項6に記載された基礎用ブロックは、請求項3に記載の法面用ブロックと同様に、法面の縦方向に並べられる基礎用ブロックの相互が、上下方向に移動可能となり、河床の変形に対する自由度を有して、しかも安定した状態で並べることができる。
請求項7に記載された基礎用ブロックにあっては、本体の法面の縦方向上側面側に設けた連結孔が本体の側面形状の重心位置より上側に、また法面の縦方向下側面側に設けた連結孔が上記重心位置より下側にそれぞれ設けられていることにより、河床の洗掘等による低下に追随して転倒に対する抵抗性を維持しながら変形することができる。
本発明に用いる法面用ブロックの第1の実施例を図1から図7にて説明する。図1はその正面側から見た斜視図、図2は背面側から見た斜視図、図3は側面図、図4は正面図、図5は背面図、図6は平面図、図7は底面図である。
法面用ブロック1は、この法面用ブロック1を河岸の法面の縦方向に積み重ねた状態で、これの法面を構成する前面板2と、控え部を構成する背面板3と、この両面板2,3を連結する本体4とからなり、これらはコンクリートにて一体成形されている。前面板2と背面板3は、図3にて示した側面形状において所定の角度α、例えば50度をなして対向されていて、前面板2に対する背面板3の位置は、前面板2の下端から前面板2に対する垂線sに一部が交差する位置となっている。なお、この背面板3の上記位置は図3に鎖線にて示すように、本体4を長くして上記垂線sと交差しない下側になるようにしてもよい。また、上記角度αは90度より小さい角度で、前面板2と背面板3とが法面方向上側が広くなり所定間隔をあけて対向する姿勢となる角度にする。
前面板2の正面形状は、法面の縦方向の上側端縁を緩円弧状にした略四角形になっている。また背面板3も同様に四角形で、かつ4隅が面取りされている。この前面板2と背面板3の横方向の大きさである幅は略同一になっている。なお、この背面板3の形状は四角形に限るものではなく、例えば円形、楕円形であってもよい。そして本体4は、前面板2の幅の略1/2〜1/5の幅(例えば10〜50cm)となっていて、両面板2,3の幅方向の中央に配置されていて、この本体4の両側が前面板2と背面板3との間で大きな空間となっている。
本体4の図3にて示される側面形状は、前面板2の縦方向の一方である上側端縁より少し高い位置に連なる上側面5aは凸円弧状に、また前面板2の縦方向の他方である下側端部に連なる下側面5bは凹円弧状になっており、かつこの両円弧は略同一半径となっている。なお、この両面5a,5bの円弧は必ずしも同一でなくてもよく、どちらか一方の半径が大きくてもよい。
上記本体4には、法面用ブロック1の側面形状の重心G1より上側で、かつ上側面5aに近い位置と、上記重心G1より下側で、かつ下側面5bに近い位置のそれぞれに本体4の幅方向に貫通する2つの連結孔6a,6bが設けてある。そしてその一方、例えば下側の連結孔6bは上下方向に長くした長孔となっている。
次に、本発明に用いる基礎用ブロックの第1の実施例を図8から図12にて説明する。図8はその前面側から見た斜視図、図9は後面側から見た斜視図、図10は側面図、図11は前面図、図12は後面図である。
基礎用ブロック7は、上記した法面用ブロック1にて構築される法面の基礎部に敷設されるものであって、これの側面形状において、本体8の上下面が平面状になっており、前側面8bは垂直状に、またこれの後側面8aは凸円弧状になっており、この後側面8aの円弧は、上記法面用ブロック1の本体4の両側面5a,5bの円弧と略同一(同一でなくてもよい)になっている。なお本体8の幅は、上記した法面用ブロック1の前面板2と同じ幅になっている。そしてこれの上面は下面に対して法面の前側へ向けて傾斜されている。
この基礎用ブロック7は上下面が平面状になっており、これの後側面8aは凸円弧状に、また前側面8bは垂直状になっている。そしてこれの後側面8aと前側面8bのそれぞれは、幅方向両側からえぐられて幅方向中央にリブ9a,9bが作成されており、この各リブ9a,9bに連結孔10a,10bが幅方向に貫通して設けてある。そして図10に示すように、この連結孔10a,10bのうち、後側面8a側の連結孔10aは本体8の重心G2より上側に、また前側面8b側の連結孔10bは本体8の重心G2より下側に位置されている。そして連結孔10a,10bの形状は、丸穴もしくは長穴及び円弧方向に長い長孔とすることが可能である。なお、上記リブ9a,9bの厚さは、上記法面用ブロック1の本体4の厚さと略同一にしてある。
上記法面用ブロック1及び基礎用ブロック7のそれぞれの連結孔6a,6b,10a,10bのそれぞれのブロックの上下の側面5a,5b及び後側、前側の側面8a,8bからの位置は略同一になっている。
上記法面用ブロック1と基礎用ブロック7とを用いて構築される護岸について、図13から図15に基づいて説明する。図13は法面の縦断側面図、図14は護岸の一部を示す正面図、図15は連結金具を示す分解斜視図である。
まず、河岸の法面11の基端となる河床の基礎及び根固め部に複数(少なくとも1個)の基礎用ブロック7をこれの後側面8aを法面側に向けて河床より低くして並べて敷設する。このとき、隣接する一方のブロックの後側面8aの凸円弧面と、他方の前側面8bの垂直面を接触させる。そして隣接する一方のブロックの後側面8a側の連結孔10aと他方のブロックの前側面8b側の連結孔10bとを連結金具12にて連結する。
この連結金具12は、例えば図15に示すようになっていて、上記法面の縦方向に隣接する法面用ブロック1及び河床より低くして並べた基礎用ブロック7のそれぞれの両連結孔6a,6b,10a,10bの隣接するもの相互の間隔と略同一の間隔で、本体4及びリブ9a,9bの厚さより長くした2本のボルト13a,13bを両連結孔6a,6b,10a,10bに挿入後、連結板14を挿入してナット15,15にて結合するようになっている。
ついで、複数敷設した最後端側の基礎用ブロック7の後側面8aに最下端の法面用ブロック1を、これの本体4の法面の縦方向の下側面5bを噛み合わせて重ねる。このときの両ブロック1,7の噛み合わせは円弧面で行われることにより、基礎用ブロック7に対する法面用ブロック1の法面の基準面Aの角度に対する角度は任意にとることができる。そしてこの最下部の法面用ブロック1を法面の基準面Aの角度に対して同等もしくは緩やかな角度に設置する。そしてこの法面用ブロック1の下側面側の連結孔6bと基礎用ブロック7の後面側の連結孔10aとに上記連結金具12を挿入して両ブロック1,7を連結する。
ついで、上記最下部の法面用ブロック1の上側に、他の法面用ブロック1を順次、それぞれの本体4の上側面5aと下側面5bの円弧面を噛み合わせて積み重ねると共に、下側の法面用ブロック1の上側の連結孔6aと上側の法面用ブロック1の下側の連結孔6bとを連結金具12にて連結する。
このときにおいて、法面の縦方向中間部の法面用ブロック1の積み重ね姿勢は、上記法面の基準面Aと略平行になるようにする。そして天端部においては後方へ傾斜させることもできる。
またこのときにおいて、各法面用ブロック1の積み重ね作業と平行して各法面用ブロック1の本体4の両側で、前面板2と背面板3の間の空間内に胴込め材16を、及び各法面用ブロック1の背後に裏込め材17を充填していく。
上記のようにして基礎用ブロック7と法面用ブロック1とによる護岸ブロック列が法面の縦方向に構築される。そしてこの護岸ブロック列を図14に示すように河川の流れ方向(横方向)に多数列敷設し、各隣接する護岸ブロック列を連結部材18にて連結して護岸が構築される。
上記のように構築される護岸は、各法面用ブロック1の本体4の相互の円弧面にて当接していて、下側の法面用ブロック1に対して上側の法面用ブロック1を、前後方向に滑動できることにより、この法面用ブロック1にて構築される護岸の法面傾斜を、基端部を緩やかに、中間部を急に、さらに天端部を緩やかにする等、法面の傾斜角を変えることができる。
また、各法面用ブロック1は法面の傾斜に沿う姿勢の前面板2に対して背面板3が水平に近い姿勢となるため、胴込め材16の重量が背面板3の上面に作用され、これと共に背面板3の下面が裏込め材17に支持されることにより、各法面用ブロック1は胴込め材16と裏込め材17にて安定した状態で保持される。
また、護岸の基礎部及び根固め部において、これの先端側の基礎用ブロック7の後側面8a側の連結孔10aと、これの後側に設置する基礎用ブロック7の前側面8b側の連結孔10bとが連結金具12にて連結され、かつ上記後側の連結孔10aが重心位置より高くなっており、前側の連結孔10bが重心位置より低くなっていることにより、前側の基礎用ブロック7を設置した河床部分が洗掘された場合には、この前側の基礎用ブロック7は、これの後側が、後側の基礎用ブロック7の前側面に沿ってずり落ちるように変位して前側へ転倒することがない。そしてこの基礎用ブロック7の変位は、沈下や斜面滑動力に転換されて隣接するもの相互での一体性を確保できる。
上記基礎用ブロック7の姿勢変化に応じて法面用ブロック1にも、連結金具12により同様の引張り力が伝達されるが、この引張り力が法面用ブロック1を背面側へ転倒させる力に変換されて、各法面用ブロック1の前側への転倒が防がれて滑動力として上部へ伝達されて一体性が確保される。
この護岸においては、法面を構成する各法面用ブロック1の法面の縦方向相互間の前面板間に隙間が構成されること、及び前面板2と背面板3の間の空間に胴込め材16が充填されていることにより、護岸内に流入した水は内部を循環して同じ隙間から流出することがなく、また洪水の発生で土砂等が混入した河川水の浸入で隙間内部に土砂等が堆積し、その後仮に流されても再度堆積される。
また法面の縦方向の各ブロック列において、基礎用ブロック7の前側や、天端部分の背後に洗掘が生じて、1列ごとに下方へ滑動することがあるが、若干の移動後に連結金具12及び連結部材18による引張り力が法面の縦方向に及び横方向に伝播されてこれ以上の滑動が防止される。
特に上記構成の護岸において、予定外の出水により、この護岸の上側まで溢水し、この天端部分から法面用ブロック1の背面側が洗掘されたときの法面用ブロックの挙動を以下に説明する。
護岸の背面側が洗掘されると、この部分における上側の法面用ブロック1が胴込め材16の自重により下側の法面用ブロック1の背面側へ移動する。そしてこれの移動は、連結金具12の余裕範囲にわたって行われ、その後この連結金具12にて移動が制限されて移動が終了して相互の姿勢は安定する。
図16は本発明に用いる法面用ブロックの第2の実施例の形態を示すものである。
すなわち上記図1から図7に示した実施の形態では、法面用ブロック1及び基礎用ブロック7の法面の縦方向の両側を円弧状にし、法面の縦方向に隣接する各ブロック相互がこの円弧面にて接触するようにしたが図16に示すように、例えば法面用ブロック1aの本体4aの法面の縦方向の両側を折れ線形状にした。
この場合、法面の縦方向の上側面5cは凸状折れ線状に、法面の縦方向の下側面5dは凹状折れ線状にし、その折れ線角度β1,β2は、β1>β2で、下側面5dの角度β2が上側面5cの角度より小さくなっている。この実施の形態ではβ1は130度、β2は115度である。
図17は上記法面用ブロック1aを法面の縦方向に積み重ねた状態を示すもので、この場合、上記角度β1,β2が異なる角度であり、かつβ1>β2であることにより、両ブロックの接触は2個所の線接触となり、従って図17に示すように、下側の法面用ブロック1aに対して上側の法面用ブロック1aが背面側に移動できる。そして図18に示すように、両接触面が面接触となった状態でブロックの移動が終了される。
上記の説明は、法面用ブロック1aについてであるが、これは基礎用ブロックにおいても同様であり、これの後側面及び前側面の接触面のそれぞれの折れ線角度β1,β2をβ1>β2の折れ線状に形成する。
上記した法面用ブロック1,1aの実施の形態では、前面板2と背面板3とを連結する本体4,4aは両面板2,3の中央部の1個所に配置した構成を示したが、この両面板2,3の幅が広い場合、例えば上記した実施の形態で示したものに対して2倍の幅にした場合には、図19、図20に示した法面用ブロック1bのように、前面板2aと背面板3aの幅方向両端側から、全幅寸法の略1/4の位置の2個所に本体4,4aを配置する。
このように幅方向の大きさを大きくすることにより、大型化による施工性の向上を図ることができると共に、本体4,4aが複数あることにより図21に示した「いも積み」のほかに、図22に示すように各ブロックを千鳥状に積む「布積み」が可能となる。
上記「布積み」は、図22に示すようにブロック正面から見て左右に交互にずらして施工するため、法面方向の目地が通らないことから、法面壁(擁壁)としての一体性を高くすることができる。
また、法面壁が流水による洗掘を受けない条件では、ブロックが沈下することが考えにくいことから、上下のブロックを連結するための連結金具12の使用を必要としない。
図23から図25は本発明に用いる法面用ブロックの第3の実施例を示すもので、この第3の実施例では、図1から図6にて示した実施例に対して法面用ブロック1cの背面板3bの後端部の幅方向両側に下方へ突出する突起19,19が設けてある。
この実施例によれば、この法面用ブロック1cを図13に示すように法面の縦方向に積み重ねたときに、突起19,19にて裏込め材17をつかみ込むことができ、背面板3bの突起と裏込め材とのせん断抵抗力を助長することができる。また、この法面用ブロック1cを積み重ねる際に、この突起19,19が裏込め材17上に突き当たることにより、前面板2の傾斜を法面の基準面Aに近い姿勢で積み重ねることができ、前面板2の上記基準面に対する整姿作業を容易にすることができる。
図26から図28は本発明に用いる法面用ブロックの第4の実施例を示すもので、図26は背面側から見た斜視図、図27は背面図、図28は一部破断して示す側面図である。この第4の実施例での法面用ブロック1dは、図1から図6に示した実施例に対して、本体4bに、この本体4bの法面の縦方向に貫通穴20が設けてある。
この実施例によれば、この法面用ブロック1dを図29に示すように法面の縦方向に積み重ねたときに、各法面用ブロック1dの貫通穴20に縦方向連結線21を貫挿し、その上側端を最上部の法面用ブロック1d、あるいは天端部材に連結し、最下端を基礎用ブロックaを貫通させて、これの前側面部に沿わせた鉄筋等に連続する。
なお、この実施例において、各法面用ブロック1dには本体4bの上記貫通穴20から外れる位置に、これの厚さ方向に貫通穴22が設けてあり、この貫通穴22を利用して図30に示すように横方向連結線23にて連結するようにしている。なおこの場合も、各横方向連結線23の端部は抜け止め用としての鉄筋等にねじり結合する。
また、この実施例に用いる上記基礎用ブロックは、基礎用ブロックの第2の実施例であり、これは図31から図33に示すようになっていて、この基礎用ブロック7aの幅方向中間に前後方向に、上記縦方向連結線21が貫挿する貫通穴24が設けてある。
なおこの実施例にあっては、図29において、基礎用ブロック7aを河床に沿って複数配置してもよく、この場合には、上記縦方向連結線21を各基礎用ブロック7aを貫通し、これの最前端の基礎用ブロック7aに連結する。
次に、本発明に用いる法面用ブロックの第5の実施例を図34から図36に基づいて説明する。図34は正面側から見た斜視図、図35は背面側から見た斜視図、図36は側面図である。なお、この説明において図1から図6に示した第1の実施例と同一構成の部材は、これと同一の符号を示して説明を省略した。
この実施例における法面用ブロック1eの本体4cの側面形状は、前面板2の縦方向の一方である上側端縁より少し高い位置から背面板3の後側端とを結ぶ上側面5eと、前面板2の縦方向の他方である下側端部に連なる下側面5fのそれぞれは直線状になっている。なお、その一例として両側面5e,5fは平行になっている。
また、上記法面用ブロックの第5の実施例にて示した法面用ブロック1eと共に用いる基礎用ブロックは、例えば図8から図12にて基礎用ブロックとして示した基礎用ブロック7が用いられる。
上記第5の実施例にて示した法面用ブロック1eと基礎用ブロック7とを用いて構成される護岸について図37に基づいて説明する。なお、このときの護岸構成は図13、図14にて示した実施例と略同一である。
すなわち、まず河岸の基礎部及び根固め部に複数(少なくとも1個)の基礎用ブロック7をこれの後側面8aを法面側へ向けて河床より低くしてそれぞれの前後の側面を当接して並べて敷設する。そして隣接する相互の基礎用ブロック7を相互の連結孔10a,10bに挿入した連結金具12にて連結する。
ついで、最後端側の基礎用ブロック7の後端面8aに最下端の法面用ブロック1eを、これの本体4cの法面方向の下側面5fを当接して重ねる。このとき、基礎用ブロック7の後側面8aが円弧状になっているのに対して、法面用ブロック1bの本体4cの下側面5fが直線状になっていることにより、基礎用ブロック7に対する法面用ブロック1eの法面の基準面に対する角度は任意にとることができる。そしてこの法面用ブロック1eの下側面側の連結孔6bと基礎用ブロック7の後面側の連結孔10aとに連結金具12を挿入して両ブロック1b,7を連結する。
ついで、上記最下部の法面用ブロック1eの上側に、他の法面用ブロック1eを順次、それぞれの本体4cの上側面5eと下側面5fとを当接させて積み重ねると共に、それぞれの隣接する法面用ブロック1b,1bの法面の縦方向の上下の連結孔6a,6bに連結金具12を挿入してブロック相互を連結する。また、図14に示すように、横方向に隣接する法面用ブロック1eの相互を連結部材にて連結する。
このときにおいて、各法面用ブロック1eの積み重ね作業と平行して、図13に示した実施例と同様に各法面用ブロック1eの本体4cの両側で、前面板2と背面板3の間の空間内に胴込め材を、及び各法面用ブロック1eの背後に裏込め材を充填していく。
上記のように構築される護岸は、各法面用ブロック1eの本体4cの相互の直線状面に当接していて、下側の法面用ブロック1eに対して上側の法面用ブロック1eを、上記本体4c相互の接触面に沿って滑動することができることにより、下側の法面用ブロック1eに対して上側の法面用ブロック1eを斜め前後方向に移動することができ、これにより法面用ブロック1eを積み重ねて構築する護岸の傾斜角を変えることができる。
このようにして構築された護岸は、図13、図14にて示した護岸と略同一の機能を有するものである。
なお、図38から図41は基礎用ブロックの第3の実施例を示すもので、この実施例における基礎用ブロック7bは、これの後側面8cと前側面8dのそれぞれの幅方向中央に凹部25a,25bを設け、それぞれの凹部にリング26a,26bを突設した構成になっていて、この相互のリング26a,26bを連結金具12にて連結するようになっている。上記両リング26a,26bは図41に示すように、ブロック内に埋め込まれた1本の鉄筋にて構成されている。