JP4671005B2 - 一酸化炭素の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はギ酸メチルを分解して一酸化炭素を製造する方法に関する。一酸化炭素は、C1化学、あるいはカルボニル化反応等の原料として重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
工業的な一酸化炭素製造法としては、重質油の部分酸化法、LPG改質法、コークスの部分酸化法等が知られているが、一酸化炭素のみを取り出したり、不純物を除去する場合には、分離工程が必要となる。例えば、ガス製造工程の後に、吸着、吸収、深冷分離等のガス精製工程を必要とし装置が複雑となる。また、中小規模のユーザーではコークス法の採用でしか対応できず、原料の脱硫処理、不燃物の残査処理等の問題を有することから、この規模での新規製造法の開発が期待されていた。
【0003】
これに対して、(1)式で示すようにギ酸メチルを分解して一酸化炭素を得る方法がある。
HCOOCH3 → CO + CH3OH (1)
ギ酸メチルはC1化学の主原料の一つであるメタノールの脱水素誘導体として安価に製造され、液体で輸送できることから、高価な設備を用いることなしに、低温で容易に一酸化炭素が得られる原料として注目されている。
【0004】
従来ギ酸メチルを分解し、一酸化炭素を製造する方法としては、(A)担持されたアルカリ土類金属酸化物からなる固体触媒を用いて200℃〜500℃の温度で気相熱分解する方法(米国特許第3812210号)、(B)活性炭を触媒とし200℃〜500℃の温度で気相熱分解する方法(特開昭52−36609号)、(C)メタノールと共存するギ酸メチルを用いて、ナトリウムメチラートを触媒として17.2MPa以下の圧力および35〜200℃の温度で液相下熱分解する方法(米国特許第3716619号)等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ギ酸メチルを分解して一酸化炭素を製造する方法のうち、(A)および(B)の方法は気相下で200℃以上の温度で行なわれるが、蒸発熱等が必要となり、熱エネルギー的に不利であるだけでなく不純物の副生が避けられない。一方、(C)の方法は液相下の反応で条件的には温和な点で優れているが、強塩基性のナトリウムメチラートを触媒として使用するため、その取り扱いが難しい。すなわちナトリウムメチラートは水分により水酸化ナトリウム、さらにはギ酸ナトリウム等の不純物が副生し触媒が損失するだけでなく、二酸化炭素により反応系に不溶性の塩類が析出し、装置の運転に支障をきたすことさえある。
ナトリウムメチラートの取り扱い時に、二酸化炭素や水に触れる等により失活し、その再生は容易でない。また、皮膚への刺激が非常に強いためその取り扱いには細心の注意を要する。
【0006】
本発明の目的は、ギ酸メチルを分解して一酸化炭素を製造する際に、取り扱いが容易であり、温和な条件で高純度の一酸化炭素を得る触媒を開発し、工業的に優位な一酸化炭素の製造法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の如き課題を解決すべく、液相でギ酸メチルを分解して一酸化炭素を製造する方法について鋭意研究を重ねた結果、炭酸セシウムを触媒として用いることにより、取り扱いが容易であり、温度の低い温和な条件で一酸化炭素を製造しうることを見出し本発明に到達した。
即ち本発明は、炭酸セシウム触媒の存在下、液相下でギ酸メチルを分解することを特徴とする一酸化炭素の製造法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における原料ギ酸メチルは工業用グレード単品をそのまま使用できる。その際、原料ギ酸メチル中にメタノールを含有していても差し支えない。一方、原料ギ酸メチル中の水分は(2)式および(3)式の反応により二酸化炭素あるいは水素を副生するので、使用に先だって乾燥剤を用いる等して、水分を極力少なくすることが好ましい。
HCOOCH3+H2O → HCOOH +CH3OH (2)
HCOOH → CO2+H2 (3)
【0009】
本発明では、触媒として炭酸セシウムを用いる。炭酸セシウムは、強塩基性のナトリウムメチラートを触媒として用いる場合と比べ、二酸化炭素と反応しないため空気中の二酸化炭素によってナトリウムメチラートのように失活することもない。また、吸湿しても100℃以上で乾燥して使用すればよく、空気中で容易に取り扱うことができる。また、皮膚への刺激が強くないので、工業的にも取り扱いが容易である。
メタノールを含有するギ酸メチルを使用すると炭酸セシウムを容易に均一溶解できるので、メタノールを含有するギ酸メチル原料液を反応器に供給することが好適である。該原料液中のメタノールは必要な炭酸セシウムを充分に溶解できる濃度であれば良く、通常は0.5〜80重量%の範囲である。
本発明でメタノールを含有するギ酸メチルを用いる場合には、ギ酸メチルのみを選択的に分解して一酸化炭素を製造することができる。
【0010】
ギ酸メチルと触媒炭酸セシウムのモル比は、好ましくは100:0.01〜100:10であり、より好ましくは100:0.1〜100:5である。
ギ酸メチル分解の反応温度は、100℃からギ酸メチルの臨界温度未満の範囲であり、好ましくは120〜200℃である。反応温度が低すぎる場合には十分な液相分解反応速度が得られない。反応温度が高い方が分解速度が増し、170℃以上では実用上好適な分解速度が得られる。反応温度が高過ぎる場合には副反応が起こり易くなる。
反応圧力は、反応器内で安定した液相を保つ必要から、反応温度におけるギ酸メチルの蒸気圧以上の反応圧力が望ましい。反応圧力とギ酸メチルの蒸気圧との差は、ギ酸メチルを分解して、得られる一酸化炭素で補うことができる。
【0011】
本発明に従う反応方式は、ギ酸メチルを含有する原料と触媒溶液が接触して生成ガスが得られるものであれば反応器の形状、原料の供給方法、生成ガスの採取方法等に特に制限はなく、回分方式および流通方式でのいずれも可能である。
例えば次のような方式で行うことができる。
(1)反応器に予めギ酸メチルを含有する原料および炭酸セシウムを仕込んだ後加熱して閉鎖系で反応を行い、この間原料液成分、生成ガスを系外へ出さず、反応終了後反応器を冷却してから生成ガスを得る方法。
(2)反応器に予めギ酸メチルを含有する原料および炭酸セシウムを仕込んで温度を上げて反応を行い、気相部の凝縮成分を冷却し、反応した生成ガスを連続あるいは断続的に系外に抜き出す方法。
(3)反応器に予めギ酸メチルを含有する原料および炭酸セシウムを仕込んで反応を行い、気相部の凝縮成分を冷却し、反応した生成ガスを系外に抜き出しつつ、反応器に原料ギ酸メチルを供給する方法。
(4)反応器に予めギ酸メチルを含有する原料および炭酸セシウムを仕込んで反応を行い、気相部の凝縮成分の一部を冷却するか、または全く冷却しないで反応液、生成ガスを系外に抜き出しつつ、反応器に原料ギ酸メチルを供給する方法。
(5)反応器に予めギ酸メチルを含有する原料および炭酸セシウムを仕込んで反応を行い、気相部の凝縮成分の一部を冷却するか、または全く冷却しないで反応液、生成ガスを系外に抜き出しつつ、反応器に触媒炭酸セシウムを溶解した原料ギ酸メチルを供給する方法。
【0012】
本発明で得られた一酸化炭素には微量の未反応ギ酸メチル等が含まれているので、必要に応じて精製することでより高純度の一酸化炭素を得ることができる。
【0013】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例で制限されるものではない。
【0014】
実施例1
内容積100mlのステレンス製オートクレーブに炭酸セシウム3.41mmol、ギ酸メチル326mmolを充填した。オートクレーブの内部を窒素ガスで十分に置換した後、振とうしながら反応温度120℃に加熱し、2時間振とう反応の後、オートクレーブを水中で冷却した。オートクレーブの内部ガスを徐々にパージし、ガス量を計量すると共に組成を分析した。その結果、ギ酸メチル反応率は52.5%、一酸化炭素収率は52.1%であり、生成ガス中一酸化炭素濃度は99.8%であった。
【0015】
比較例1
炭酸カリウム5.43mmol、ギ酸メチル326mmolを充填し、実施例1と同一条件で反応を試みた。その結果、2時間では、ガスの発生はほとんど見られなかった。
【0016】
比較例1はセシウムと周期率表で同族のカリウムを使用した場合であるが、触媒効果がほとんど見られなかった。これに対し炭酸セシウムを用いた実施例1の場合、ギ酸メチルの分解活性が顕著に高い。
【0017】
実施例2〜7
内部攪拌装置を有する内容積500mlのステレンス製オートクレーブを使用し、ギ酸メチル/メタノールのモル比0.66〜1.49に変えたそれぞれの混合溶液に、ギ酸メチルに対して炭酸セシウムを2.5〜5wt%混合し、均一状態の原料液を調製した。この原料を用い、反応圧力、反応温度、原料濃度、LHSVを変えて流通反応を行った。結果を表1に示す。尚、LHSVとは、単位反応液容積(m3)当りのメタノール含有ギ酸メチル液供給量(m3/hr)である。
メタノールを含んだギ酸メチル原料溶液に、炭酸セシウムが容易に溶けて均一状態となり、ポンプで供給する際の取り扱いも容易であった。
【0018】
【表1】
Figure 0004671005
【0019】
【発明の効果】
本発明の炭酸セシウム触媒は取り扱いが容易であり、温和な条件でギ酸メチルを分解して高純度の一酸化炭素を得ることができる。また、例えば反応温度180℃、反応圧力9MPa-Gの条件で、99%以上の純度を有する高圧の一酸化炭素が得られ、工業的に有利に一酸化炭素を製造できるので本発明の意義は大きい。

Claims (2)

  1. 炭酸セシウム触媒の存在下、液相下、反応温度120〜200℃(ただし、200℃を除く)でギ酸メチルを分解することを特徴とする一酸化炭素の製造法。
  2. 炭酸セシウムを、メタノールを含有するギ酸メチルに溶解して反応器に供給する請求項1に記載の一酸化炭素の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS5632315A (en) * 1979-08-17 1981-04-01 Mitsubishi Gas Chem Co Inc Manufacture of carbon monoxide
JPS5688801A (en) * 1979-10-27 1981-07-18 Mitsubishi Gas Chem Co Inc Separating and obtaining method of hydrogen and carbon monoxide
JPS56125212A (en) * 1980-03-03 1981-10-01 Mitsubishi Gas Chem Co Inc Production of carbon monoxide

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