JP4668935B2 - 農産物・園芸産物の鮮度保持剤および鮮度保持方法 - Google Patents

農産物・園芸産物の鮮度保持剤および鮮度保持方法 Download PDF

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Description

本発明は、農産物・園芸産物(以下単に[農園芸産物]という)用鮮度保持剤および農園芸産物の鮮度保持方法に関する。さらに詳しくは、輸送中または貯蔵中に起こる変色や柔軟化などの自動劣化を効果的かつ持続的に遅延させ、農園芸産物の保存性を高め、品質低下を予防するのにも有効な、安全性の高い農園芸産物の鮮度保持剤の提供を目的とする。
従来から、野菜、果実、花卉などの農園芸産物の鮮度保持技術が、これらの市場への供給効率を高める必要性から種々検討され、例えば、低温貯蔵、ガス濃度の調整と冷蔵を組み合わせて貯蔵するCA(Controlled Atmosphere)貯蔵、フィルムによる包装貯蔵などが開発されてきた。しかしながら、前二者は貯蔵のための経費が嵩むという理由から導入が困難な場合が多く、いまだ実用的な方法とは言い難い。また、上記のフィルムによる包装貯蔵は、MA(Modified Atmosphere)包装とも呼ばれ、簡易なCA効果を狙ったものであるが、本格的なCA貯蔵とは異なり、フィルム自体のガス透過性のみに頼る方法であり、過大の期待はできない。
比較的安価に農園芸産物の鮮度を保持する手段として、様々な鮮度保持剤の使用が考えられている。元来、農園芸産物の鮮度保持は、農園芸産物の鮮度劣化の原因とされるエチレンの除去が最も有効な手段とされている。従って、従来の鮮度保持剤の大部分はエチレンの除去を目的としたものであるが、より広範な条件下で有効な農園芸産物の鮮度保持を実現するためには、単なるエチレンの除去能のみならず、農園芸産物の品質劣化の原因である汚染菌を安全かつ有効に駆逐できる性能を併せ持つ鮮度保持剤が必要である。
比較的新しいタイプの鮮度保持剤の中には、炭酸ガスを発生する鮮度保持剤があり、その効果が注目されている。炭酸ガスは被鮮度保持物雰囲気の酸素ガスを置換したり、鮮度劣化の原因物質であるエチレンの作用を抑えたりする効果が知られている。
また、炭酸ガスと酸素ガスが共存する場合は、炭酸ガスのほうが酸素ガスより重いので、容器やチャンバーの底に置かれた被鮮度保持物周辺に炭酸ガスの層を形成し、被鮮度保持物と酸素ガスとの接触を妨げ、酸素による鮮度劣化を防ぐブランケット効果も知られている。炭酸ガスのこれらの作用を利用し、野菜や果実を輸送したり保管する際に、輸送車や貯蔵庫の空間部分を炭酸ガスで充満させ、鮮度劣化を鈍化させる試みが行なわれて来た。
前記のMA包装もこれらの炭酸ガスの効果を利用した鮮度保持を狙ったものであるが、炭酸ガス発生を非鮮度保持物の呼吸のみに頼る方法であることから、迅速なガス濃度変化が起こりにくく、鮮度劣化防止に最適なガス濃度環境を構築しにくいという欠点があった。そこで、炭酸ガスを発生する鮮度保持剤の利用が考えられたが、従来の炭酸ガス発生剤は、原理としては炭酸塩または炭酸水素塩と酸とを混合し炭酸ガスを発生させるものであるが、炭酸ガス発生性の入浴剤のメカニズムを応用しているため、固体酸としてフマル酸をはじめとする水溶性の有機酸が用いられ、それ故、炭酸ガスの発生が急激に起こり直ちに終了してしまうので、鮮度保持効果が長続きしないという欠点があった。
また、アセチルサリチル酸やサリチル酸などのフェノール性酸を酸として用いる例も見受けられるが、これらは劇薬に相当する急性毒性値(LD50値)を示したり、遺伝毒性の指標である変異原性が陽性であったりして、農園芸産物、特に食品と共存させて使用する鮮度保持剤としては十分な安全性を具備しているとは言い難い。
冷蔵保存の場合は、冷蔵自体が鮮度保持のためのものであり、冷蔵により比較的長期間保持された農産物の鮮度をさらに維持するためには、効果の長続きする炭酸ガス発生剤が必須になる。従って、従来の炭酸ガス発生剤を鮮度保持効果の持続的発現が求められる冷蔵用の鮮度保持剤として用いることはできなかった。特に、冷蔵条件下での農産物のシェルフライフを伸ばすために、野菜や果実の冷蔵包装用、冷蔵梱包用素材(ポリ袋やダンボール箱など)に付随して用いられ、または冷蔵庫の野菜室などに設置され、炭酸ガスを徐々に発生させて鮮度劣化を持続的に防ぎ、しかも安全性の極めて高い冷蔵用鮮度保持剤の成功例は見られなかった。
従って本発明の目的は上記の欠点を克服し、炭酸ガスを少量づつ持続的に発生させ、農園芸産物の周辺雰囲気のエチレン濃度を持続的に抑えることができ、しかも天然物を素材とした高度な安全性を具備した信頼性の高い農園芸産物の鮮度保持剤を提供することである。
本発明は、上記の目的を達成すべく鋭意研究の結果、酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩との混合物を鮮度保持剤として用いることにより、上記の如き従来技術の問題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩とを含有することを特徴とする農園芸産物の鮮度保持剤を提供する。
上記本発明においては、酸性成分含有天然香辛料の酸性成分が、農園芸産物から発生する水分の存在下で炭酸水素塩と反応して徐々に炭酸ガスを発生させる酸であること;炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であること;および酸性成分含有天然香辛料が、桂皮、ハイビスカス、フェンネル、陳皮、レモンパウダー、タイム、レモングラス、クローブ、セージ、ヨモギ、オレガノおよび安息香から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記本発明においては、酸性成分含有天然香辛料が、ハイビスカス、オレガノ、または桂皮とハイビスカスとの混合物であり、炭酸水素塩が重曹であり、上記天然香辛料の含有量が、重曹100質量部に対して50〜500質量部であること;桂皮とハイビスカスとの混合割合が、ハイビスカス100質量部に対して桂皮が100〜400質量部であること;およびタブレット状に成形されていることが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の鮮度保持剤を、農園芸産物と同一雰囲気中に共存させ、農園芸産物から発生する水分の存在下で徐々に炭酸ガスを発生させることを特徴とする農園芸産物の鮮度保持方法を提供する。該方法においては、農園芸産物100質量部に対して1〜20質量部の前記鮮度保持剤を使用することが好ましい。
本発明によれば、酸成分含有天然香辛料と炭酸水素塩との混合物を農園芸産物の鮮度保持剤として使用し、炭酸ガスを徐々に発生させ、農園芸産物存在雰囲気のエチレン濃度を低減化することにより、極めて有効に、しかも極めて安全に農園芸産物に対する鮮度保持効果を発現できる。
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明において用いられる酸性成分含有天然香辛料とは、天然物由来の香辛料の内、酢酸、クエン酸、マロン酸、ロスマリン酸などの揮発性有機酸を含有するもの、または水と混じることにより生じた酸性の水溶液が炭酸水素塩と反応して炭酸ガスを生ずる性質を有するものをいう。
上記酸性成分含有天然香辛料としては、ハイビスカス、ジャスミン、タイム、フェンネル、レモングラス、陳皮、ジンジャー、セージ、ヨモギ、オレガノ、ローズマリー、柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリンなど)の粉末、桂皮(シナモン、カシア)、安息香(ベンゾイン・シャム、ベンゾイン・スマトラ)、クローブなどが挙げられるが、ハイビスカス、オレガノが特に好ましい。また、桂皮、安息香、クローブ、ジンジャー、タイム、セージ、オレガノなどは抗菌効果を有するので、黴や細菌の汚染による農園芸産物の品質劣化を阻止できる。
本発明において好ましい酸性成分含有香辛料としては、ハイビスカスが挙げられる。本発明で鮮度保持剤として使用されるハイビスカスは、アオイ科ハイビスカスまたはフヨウ(Hibiscus)属植物の萼、茎、葉などを乾燥調製したもので、精油を含む。特に抗酸化力を有するアントシアニン系色素や有機酸類を含む萼の部分が好適に用いられる。ハイビスカス属植物のうちHibiscus sabdariffa L.、Hibiscus cannabinus L.、Hibiscus rosa-sinensis L.、Hibiscus mutabilis L.、Hibiscus syriacus L.、Hibiscus coccineus(Medicus) Walt.、Hibiscus hamabo Sieb. Et Zucc.、Hibiscus tiliaceus L.などの学名が採用されている植物が好適に用いられるが、Hibiscus sabdariffa L.(ロゼル)、Hibiscus cannabinus L.(ケナフ)、Hibiscus rosa-sinensis L.(ブッソウゲ)などが特に好適に用いられる。
ハイビスカス中の酸性成分としては、ヒドロキシクエン酸、クエン酸、ハイビスカス酸、リンゴ酸、マロン酸などの有機酸が挙げられる。ハイビスカスが炭酸水素塩と混合されこれに水分が加わると、ハイビスカス中の酸成分と炭酸水素塩が反応し、徐々に炭酸ガスを発生するものと思われる。
本発明において別の好ましい酸性成分含有天然香辛料としては、オレガノが挙げられる。本発明で鮮度保持剤として使用されるオレガノは、シソ科ハナハッカ(Origanum)属植物の葉を乾燥調製したもので、精油を含む。和名は花薄荷で、観賞用種やハイブリッド種など様々な種があるが、これらも本発明で鮮度保持剤として使用されるオレガノに含まれる。特にOriganum vulgareやOriganum compactum、Origanum majorum、Origanum rotundifolium、Origanum pulchellumなどの学名が採用されている植物が好適に用いられる。オレガノ中の酸性成分としては、酢酸、カルバクロール酸、ロスマリン酸、タンニン酸などが挙げられる。オレガノが炭酸水素塩と混合されこれに水分が加わると、オレガノ中の酸性分と炭酸水素塩が反応し、徐々に炭酸ガスを発生するものと思われる。
本発明において用いられる別の酸性成分含有天然香辛料にも、それぞれ特有の酸性成分が含まれる。例えば、フェンネルにはアニス酸が、陳皮にはクエン酸が、タイムにはロスマリン酸やタンニン酸が、クローブには酢酸が、セージにはフェノール酸が、ヨモギにはパルミチン酸やオレイン酸やリノール酸が、オレガノには酢酸やロスマリン酸が、安息香には安息香酸や桂皮酸が、桂皮には桂皮酸が、レモンパウダーにはクエン酸が、ジンジャーには有機酸が含まれる。
本発明において特に好ましい酸性成分含有天然香辛料として、上記のハイビスカスと桂皮との混合物が挙げられる。ハイビスカスは、その中に上記のように豊富な有機酸成分が含有されているのに加えて、主体が乾燥萼であり、他の天然香辛料素材に比較して薄い製品形状になっているので、水とのアクセシビリティが良好であり、炭酸水素塩と反応して容易に炭酸ガスを発生させるキャパシティーを備えており、本発明の酸性成分含有天然香辛料としては最も優れているものの一つである。
また、桂皮は、その中に桂皮酸やメリロット酸などの酸性成分の他、抗菌・防黴性(特開平5−117125号公報)や緑色保持作用(特開平10−117679号公報、特開平10−117680号公報)を有する物質が含有されており、炭酸ガスによる鮮度保持作用のみならず、素材成分そのものによる鮮度保持効果も期待できる。したがって、酸性成分含有天然香辛料としてハイビスカスと桂皮との混合物を用いれば、エチレン濃度低減効果、抗菌・防黴効果、緑色保持効果の3つの効果を同時に発現できる、非常に優れた鮮度保持剤を提供できる。
上記のハイビスカスと桂皮との混合物に用いられる桂皮は、クスノキ科ニッケイ(Cinnamomum)属植物の樹皮を乾燥調製したもので、精油を含む。別称としてシナモン、桂枝、肉桂、ニッキ、カシアなどが使用される場合もある。特にCinnamomum cassia BlumeやCinnamomum obutusifolium Nees、Cinnamomum loureirii Nees、Cinnamomum zeylanicum Ness in Wellなどの学名が採用されている植物が好適に用いられる。産地別としては中国産桂皮、ベトナム産桂皮、インドネシア産桂皮、セイロン産桂皮などが用いられるが、ベトナム産桂皮が特に好適に用いられる。
本発明で用いられる炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられる。上記の炭酸水素塩は、それぞれ単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。また、食品添加物である炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどは安全性の面からも好ましい。
農園芸産物の鮮度保持について説明する。農園芸産物の鮮度保持の有効手段としては、第一に農園芸産物の周辺雰囲気における低エチレン濃度の維持、第二に農園芸産物の汚染菌に対する予防的措置、第三に農園芸産物の緑色度の保持が挙げられる。エチレンは植物の老化ホルモンとして知られており、農園芸産物の鮮度劣化は、農園芸産物自身が発生するエチレンに起因すると考えられるから、農園芸産物の鮮度劣化を遅延させるためには何らかの方法により農園芸産物の周辺雰囲気のエチレン濃度を低く抑えることが必要である。また、農園芸産物の鮮度劣化に付随して起こる汚染菌の発生や緑色度の低下は、農園芸産物の商品価値を著しく下落させる。
本発明者は、上記の観点から種々の天然香辛料について検討した結果、天然香辛料中の酸性成分が、農園芸産物から発生する水分の存在下に炭酸水素塩と徐々に反応し、炭酸ガスを少しずつ、長期間放出することを見出した。この持続的な炭酸ガスの発生が、農園芸産物の周辺雰囲気のエチレン濃度を抑えるとともに、炭酸ガスおよび酸性成分含有天然香辛料自身の持つ抗菌・防黴作用により、農園芸産物に対する汚染菌の発生防止効果も発揮される。また、天然香辛料として桂皮や安息香(ベンゾインスマトラ)を用いれば農園芸産物の緑色度も保持される。
本発明の鮮度保持剤における炭酸ガスの発生に関しては、基本的には水系における天然香辛料中の酸成分と炭酸水素塩とからの炭酸ガス発生反応を利用したものであるが、酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩との混合物を、農園芸産物の周辺雰囲気に共存させることにより、農園芸産物より発散した水蒸気またはその結露水が上記混合物と接触し、これらの水分により炭酸ガスが徐々に発生する。
炭酸ガスは一般に、農園芸産物に対してエチレンとは相反する作用を示すことが知られている。これは、炭酸ガスが農園芸産物の呼吸を抑制することや、エチレンと炭酸ガスとは、その化学構造上類似していることから、炭酸ガスがエチレンのアナログとしてエチレンの作用を拮抗的に阻害することなどが原因と考えられている。
炭酸ガスは上記のエチレン発生抑制効果に加えて、抗菌効果や防黴効果なども知られており、これらの効果の総合効果として、収穫した農園芸産物を炭酸ガス中に貯蔵すると、それらの貯蔵期間を延長することができる。
また、酸性成分含有天然香辛料として桂皮を用いた場合は、成分中に含まれる桂皮酸またはその誘導体の蒸気もエチレン合成酵素の活性を阻害し、エチレンの発生を抑制し、さらに抗菌、防黴作用をも発揮するので、他の酸性成分豊富な天然香辛料と混合すれば、重曹との反応により生じた炭酸ガスのエチレン濃度低減効果や抗菌効果と相俟って顕著な鮮度保持特性を示すものと考えられる。
本発明の鮮度保持剤の使用形態は特に制限されないが、上記の酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩とは、必要に応じて種々の添加剤や抗菌剤、防黴剤などとともに粉体、顆粒状、タブレット状、ブロック状、スティック状などとし、或いは適当な担体に担持して使用される。本発明の鮮度保持剤の使用量は特に限定されないが、目安としては、農園芸産物の種類によって差異はあるが、農園芸産物100質量部に対して1〜20質量部程度である。また、酸性成分含有天然香辛料の種類により炭酸水素塩と該香辛料との混合比は任意に決定できるが、炭酸水素塩:酸性成分含有天然香辛料との質量比が1:0.5〜1:5の範囲の時に好ましい鮮度保持効果が発現される。特に炭酸水素塩として重曹を、酸性成分含有天然香辛料としてハイビスカスを用いた場合は、重曹:ハイビスカスの質量比が1:0.5〜1:5の範囲の時に好ましい鮮度保持効果が発現される。また、炭酸水素塩として重曹を、酸性成分含有天然香辛料としてオレガノを用いた場合は、重曹:オレガノの質量比が1:0.5〜1:5の範囲の時に好ましい鮮度保持効果が発現される。
さらに、炭酸水素塩として重曹を、酸性成分含有天然香辛料としてハイビスカスと桂皮との混合物を用いた場合は、重曹:ハイビスカスと桂皮との混合物の質量比が1:2〜1:5の範囲の時に好ましい鮮度保持効果が発現される。この時、ハイビスカスと桂皮との混合物は、ハイビスカス:桂皮の質量比が1:1〜1:4の範囲の時に好ましい鮮度保持効果が発現される。
農園芸産物の鮮度を保つためには、農園芸産物と本発明の鮮度保持剤とを同一雰囲気中に共存させることが必要である。農園芸産物と鮮度保持剤の共存の態様も特に制限されず、例えば、ポリ袋に両者を入れる、或いはダンボール箱に直接入れられた農園芸産物と鮮度保持剤とをコンテナ中で共存させるなどの態様が挙げられる。いずれの共存の態様においても、本発明の鮮度保持剤の使用量は特に限定されない。
このようにして、本発明の鮮度保持剤を野菜、果実、花卉などの農園芸産物に作用させると、酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩とから生じた炭酸ガスの持つエチレン濃度低減効果により、農園芸産物の鮮度劣化の遅延が実現されるとともに、炭酸ガスの持つ抗菌および防黴性も有効に作用し、汚染菌や悪臭の発生も抑制される。さらに、酸性成分含有天然香辛料として桂皮や安息香(ベンゾインスマトラ)を用いれば、上記の効果に加えて桂皮自身のエチレン濃度低減効果、抗菌防黴効果、緑色保持効果など発現され、総じて顕著な鮮度保持効果が発揮される。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1
新鮮な林檎(むつ)片25gを入れた150ml容ねじ口瓶のそれぞれに、キムワイプ(登録商標)(十條キンバリー社製実験用ペーパー)に包んだ天然香辛料(ハイビスカス粉末(エジプト産)、クローブ粉末)2.5gと炭酸水素ナトリウム(重曹)2.5gとの混合物および対照品として重曹2.5gを入れた後、瓶の口をパラフィルム(商品名:American National Can製)で密閉した。これらの瓶を25℃にて放置し、3日後に各ねじ口瓶中の炭酸ガス濃度を炭酸ガス濃度計(「CheckMate」 PBI Dansensor社製)にて、エチレン濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。コントロールとしてキムワイプのみを封入したねじ口瓶中の炭酸ガス濃度およびエチレン濃度も測定した。以上の結果を表1に示す。表1の結果より、本発明の鮮度保持剤は、新鮮な林檎が存在している雰囲気の炭酸ガス濃度を増加させ、エチレン濃度を低減させる効果を有することが明らかになった。
Figure 0004668935
実施例2
新鮮な林檎(むつ)片25gを入れた150ml容ねじ口瓶のそれぞれに、キムワイプ(十條キンバリー社製実験用ペーパー)に包んだハイビスカス粉末と炭酸水素ナトリウム(重曹)との混合物4種(それぞれ3g、表2参照)および対照品として重曹3gを入れた後、瓶の口をパラフィルム(商品名:American National Can製)で密閉した。これらの瓶を25℃にて放置し、1日後および5日後に各ねじ口瓶中のエチレン濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。コントロールとしてキムワイプのみを封入したねじ口瓶中のエチレン濃度も測定した。以上の結果を表2に示す。表2の結果より、本発明の鮮度保持剤であるハイビスカスと重曹との混合物は、新鮮な林檎が存在している雰囲気のエチレン濃度を低減させる効果を有することが明らかになった。
Figure 0004668935
実施例3
新鮮な林檎(むつ)片25gを入れた150ml容ねじ口瓶のそれぞれに、キムワイプ(十條キンバリー社製実験用ペーパー)に包んだ桂皮粉末(ベトナム産)、ハイビスカス粉末(エジプト産)、重曹との混合物4種(表3参照)を入れた後、瓶の口をパラフィルム(商品名:American National Can製)で密閉した。これらの瓶を25℃にて放置し、1日後、および3日後に各ねじ口瓶中のエチレン濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。コントロールとしてキムワイプのみを封入したねじ口瓶中のエチレン濃度も測定した。以上の結果を表3に示す。表3の結果より、本発明の鮮度保持剤である桂皮、ハイビスカス、重曹との混合物は、新鮮な林檎が存在している雰囲気のエチレン濃度を低減させる効果を有することが明らかになった。
Figure 0004668935
実施例4
新鮮な林檎(むつ)片25gを入れた150ml容ねじ口瓶のそれぞれに、キムワイプ(十條キンバリー社製実験用ペーパー)に包んだ天然香辛料(レモングラス粉末、陳皮粉末、フェンネル粉末、タイム粉末、ジンジャー粉末、セージ粉末)2.0gと重曹1.0gとの混合物を入れた後、瓶の口をパラフィルム(商品名:American National Can製)で密閉した。これらの瓶を25℃にて放置し、1日後および5日後に各ねじ口瓶中のエチレン濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。コントロールとしてキムワイプのみを封入したねじ口瓶中のエチレン濃度も測定した。以上の結果を表4に示す。表4の結果より、本発明の鮮度保持剤である本実施例で供試した天然香辛料と重曹との混合物は、新鮮な林檎が存在している雰囲気のエチレン濃度を低減させる効果を有することが明らかになった。
Figure 0004668935
実施例5
新鮮な林檎(むつ)片25gを入れた150ml容ねじ口瓶のそれぞれに、キムワイプ(十條キンバリー社製実験用ペーパー)に包んだ天然香辛料(よもぎ、オレガノ、セージ、レモンパウダー)1.5gと重曹1.0gとの混合物を入れた後、瓶の口をパラフィルム(商品名:American National Can製)で密閉した。また、重曹1.0gをキムワイプに包み、これに安息香(ベンゾインスマトラ、ガイア・エヌピー(株))2滴(0.4ml)を添加した試料を、上記の林檎入りねじ口瓶に入れ、他の試料同様に瓶の口をパラフィルムで密閉した。これらの瓶を25℃にて放置し、1日後および5日後に各ねじ口瓶中のエチレン濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。コントロールとしてキムワイプのみを封入したねじ口瓶中のエチレン濃度も測定した。以上の結果を表5に示す。表5の結果より、本発明の鮮度保持剤である本実施例で供試した天然香辛料と重曹との混合物(特にオレガノと重曹との混合物)は、新鮮な林檎が存在している雰囲気のエチレン濃度を低減させる効果を有することが明らかになった。
Figure 0004668935
本発明によれば、酸成分含有天然香辛料と炭酸水素塩との混合物を農園芸産物の鮮度保持剤として使用し、炭酸ガスを徐々に発生させ、農園芸産物存在雰囲気のエチレン濃度を低減化することにより、極めて有効に、しかも極めて安全に農園芸産物に対する鮮度保持効果を発現できる。

Claims (8)

  1. 酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩である炭酸水素ナトリウム(重曹)とを含有し、酸性成分含有天然香辛料がハイビスカスであり、重曹100質量部に対してハイビスカスを50〜200質量部含有することを特徴とする農産物・園芸作物の鮮度保持剤。
  2. 重曹100質量部に対してハイビスカスを200質量部含有する請求項1に記載の鮮度保持剤。
  3. 酸性成分含有天然香辛料として桂皮をさらに含有し、桂皮とハイビスカスの混合割合が、ハイビスカス100質量部に対して桂皮が100〜400質量部である請求項1又は2に記載の鮮度保持剤。
  4. 酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩である炭酸水素ナトリウム(重曹)とを含有し、酸性成分含有天然香辛料が、ヨモギ、オレガノ又はセージのいずれかであり、重曹100質量部に対して、ヨモギ、オレガノ又はセージのいずれかを150質量部含有することを特徴とする農産物・園芸作物の鮮度保持剤。
  5. 酸性成分含有天然香辛料と炭酸水素塩である炭酸水素ナトリウム(重曹)とを含有し、酸性成分含有天然香辛料が安息香であり、重曹1.0gに対して安息香を0.4ml含有することを特徴とする農産物・園芸作物の鮮度保持剤。
  6. タブレット状に成形されている請求項1〜のいずれか1項に記載の鮮度保持剤。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の鮮度保持剤を、農産物・園芸産物と同一雰囲気中に共存させ、農産物・園芸産物から発生する水分の存在下で徐々に炭酸ガスを発生させることを特徴とする農産物・園芸産物の鮮度保持方法。
  8. 農産物・園芸産物100質量部に対して1〜20質量部の鮮度保持剤を使用する請求項に記載の鮮度保持方法。
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