JP4668327B2 - 印刷用塗工紙 - Google Patents

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Description

本発明は、剛度および印刷特性に優れた印刷用塗工紙に関する。
近年、印刷用紙は、チラシ、カタログ、パンフレット、ダイレクトメールなどの広告・宣伝を目的とした商業印刷分野での需要が年々高まっており、その生産量が着実に伸びている。このような商業印刷分野においては、消費者に内容を視覚的に強く伝達できるよう、写真や図案が多用され、さらにカラー印刷されることが多いため、印刷品質に優れた塗工紙が要望される。
一方で、省資源、輸送および郵送コストなどの点からコストダウンを図るため、紙のユーザーからは、印刷用塗工紙の軽量化、特に低坪量品への強い要望がある。また、商業印刷分野においては、商品情報が消費者に伝達されれば宣伝・広告媒体としての目的が達せられるため、印刷用紙自体は安価であることが求められる。
このような状況の中、近年、薄物コート紙や徴塗工紙の生産量の伸び率が大きい。しかし、優れた印刷品質と軽量化という二つの要望は相反するものであり、原紙坪量および塗工量を多くすると優れた印刷品質が得られるものの、高価となり、軽量・低価格の要望にそぐわない。そこで、低坪量、低塗工量のいわゆる低級グレードの塗工紙において、より上位グレードの印刷品質を備える塗工紙を実現する技術が求められていた。
一般に印刷用塗工紙に重要な品質として、白色度、不透明度、白紙光沢度、印刷光沢度がある。さらに、低塗工量の薄物塗工紙では、白紙面感や印刷面感といった品質が求められ、また、裏抜けしにくいことも重要である。裏抜け(print through)とは、印刷面の裏面(裏抜け面)に印刷面が透けて見える現象をいい、低塗工量の薄物塗工紙では、不透明度が低下するために裏抜けし易く、その改善が重要課題である。
また、軽量化によって印刷用紙の剛度が低下すると、印刷時に用紙の角が折れ曲がる耳折れ(ドッグイヤー)といった問題が発生することがある。耳折れが起きると印刷速度を落とさざるを得ず、印刷の作業効率が著しく低下するため、耳折れを防止することも印刷用塗工紙に強く求められる。したがって、低坪量の印刷用塗工紙において、剛度を維持することは非常に重要である。
さらに、低坪量の印刷用塗工紙においては、印刷用紙の表面強度を確保することも大きな技術課題である。すなわち、軽量化によって塗工量が少なくなると、印刷時に必要な表面強度が確保できず、印刷時にパイリングや塗工紙表面がムケるトラブルなどが生じることがある。特にオフセット印刷では、比較的タックの強いインキが使用されるのでパイリングが生じやすく、低坪量品であっても印刷用塗工紙の表面強度を維持する必要がある。
一般に、塗工紙を軽量化する場合、原紙を低坪量化する方法と、塗工層を低塗工量化する方法がある。原紙を低坪量とすれば、紙厚が薄くなるため裏抜けしやくなり、剛度が低下するためオフセット輪転印刷などにおいて耳折れトラブルが発生しやすくなる。一方、塗工層を低塗工量とすれば、塗工層の原紙被覆性が悪化するために白色度や印刷面感などが悪化し、また、表面強度が低下するといった課題がある。
また、薄物塗工紙を、1000m/分以上などの高速の操業速度で製造する場合、原紙坪量を低くすると断紙が発生し、操業性が大きく低下することがある。そのため、例えば坪量50g/m以下の薄物塗工紙では、断紙を防ぐために塗工量を低くする必要が生じ、片面あたり3〜7g/mの薄い塗工層を設ける場合が多い。しかし、上述したように塗工量を少なくすると、白色度や印刷面感が低下してしまい、商業印刷物として十分な品質を確保することが難しくなる。
このような状況の中、優れた品質を備えた軽量印刷用塗工紙を実現するため、パルプ、填料、顔料、それらの組み合わせといった材料面、操業条件などの操業面、抄紙装置や塗工装置などの装置面などから、様々な検討が加えられている。近年、カルシウムアルミネートモノカーボネート(3CaO・Al・11HO)の安価な合成法が開発され、新規な塗工紙用顔料として、粒子径が0.5〜1.5μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートをA2グレードの塗工紙に用いると、白色度および不透明度が向上することが報告されている(特許文献1)。
特開2008−196056号公報
上述したように、優れた印刷品質を有する印刷用塗工紙を開発すべく、様々な面から検討が行われ、種々の材料が提案されている。しかし、顔料塗工層を構成する顔料について白色度や不透明度に関する検討はされるものの、顔料塗工層を構成する顔料によって薄物塗工紙の剛度や表面強度を維持することに関する検討はあまりない。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、印刷用塗工紙、特に薄物の印刷用塗工紙において、優れた剛度(こわさ)と印刷品質を備えた印刷用塗工紙を提供することである。特に本発明の課題は、高白色でありながら不透明度が高く、裏抜け等の印刷品質に優れ、また、剛度や表面強度が高い印刷用塗工紙を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために顔料塗工層を構成する顔料について種々検討を行った結果、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層の顔料として配合すると、剛度が高く、印刷品質に優れた印刷用塗工紙が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明に関する。
(1)原紙と顔料塗工層を有する印刷用塗工紙であって、顔料塗工層が、平均粒子径が2〜15μmであるカルシウムアルミネートモノカーボネートを含んでなる、上記印刷用塗工紙。
(2) 前記カルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒子径が2〜10μmである、(1)に記載の印刷用塗工紙。
(3) 坪量が30〜60g/mである、(1)または(2)に記載の印刷用塗工紙。
本発明によれば、優れた剛度と印刷品質を備えた印刷用塗工紙を得ることができる。特に本発明の印刷用塗工紙は、低坪量でありながら、剛度や表面強度が高く、白色度、不透明度、裏抜けなどの印刷品質に優れる。
本発明は、原紙と顔料塗工層を有する印刷用塗工紙に関し、顔料塗工層を構成する顔料として平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを用いる。
印刷用塗工紙
本発明の印刷用塗工紙は、各種印刷用途に好適に用いることができ、例えば、オフセット印刷などの平版印刷、グラビア印刷などの凹版印刷、凸版印刷などの印刷方式で使用することができる。本発明の印刷用塗工紙は剛度や裏抜けに優れるため、A3コート紙などの低坪量印刷用塗工紙として好適であり、チラシ、カタログなどの商業印刷物に用いられる印刷用塗工紙として特に好適である。
本発明の印刷用塗工紙の坪量は特に限定されないが、本発明によれば低坪量でも高い剛度と表面強度が得られるため、30〜60g/mが好ましく、30〜50g/mがより好ましく、40〜50g/mがさらに好ましい。また、本発明の印刷用塗工紙のISO曲げこわさは、特に限定されず、印刷機や印刷速度などの使用状況などに応じて適宜決定することができるが、1つの態様として、マシン方向(Machine Direction:MD)における曲げこわさは、30〜80μN・m/mが好ましく、50〜80μN・m/mがより好ましく、60〜70μN・m/mがさらに好ましい。
カルシウムアルミネートモノカーボネート
本発明の印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層に含む。カルシウムアルミネートモノカーボネート(以下、モノカーボネートともいう)は、3CaO・Alの組成を有する結晶性物質であり、水分子と水和した状態で得られる。モノカーボネートは、層状構造を有し、カオリンなどと同様の六角板状の一次粒子からなり、一般に消石灰と水酸化アルミニウムから合成される。
本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒径(体積基準)は2〜15μmであり、このような粒径のモノカーボネートを用いることによって、優れた剛度と表面強度を有し、印刷適性にも優れた印刷用塗工紙を得ることができる。モノカーボネートの平均粒径が2μm未満であると、顔料塗工層の光沢性は良化するものの、剛度や表面強度が低下する。一方、モノカーボネートの平均粒径が15μmを超えると、顔料塗工層の平滑性が低下し、良好な印刷面を得ることが難しくなる。白紙光沢度や印刷光沢度を考慮すると、本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒径(体積基準)は2〜10μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。ここで、本発明で規定する粒径とは、レーザー回折法によって測定した体積基準の平均粒子径であり、例えば、MALVERN Instruments社のMastersizerなどのレーザー回折式粒度分布測定器などを用いて測定することができる。その他、顔料の粒径は、沈降法によって測定することもでき、例えば、Micromeritics社のSedigraphなどを用いることができる。
本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートの配合量は、用途などに応じて適宜決定すればよく、特に制限されないが、顔料塗工層を構成する顔料100重量部のうち5重量部以上であることが好ましく、カルシウムアルミニウムモノカーボネートのみを顔料として用いて顔料塗工層を形成させることもできる。好ましい態様において、カルシウムアルミネートモノカーボネートの配合量は10〜50重量部であり、より好ましくは10〜40重量部である。このような量であると顔料塗工時の作業性などに悪影響を与えることなく、剛度や表面強度などに優れた本発明の印刷用塗工紙を得ることができる。
本発明において平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層に配合すると、優れた剛度や表面強度を有し、印刷品質に優れた印刷用塗工紙が得られる理由の詳細は明らかでなく、本発明はこれに拘束されるものではないが、本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートはカオリンや炭酸カルシウムなどの顔料と比べて比重が低いため、カルシウムアルミネートモノカーボネートを配合すると嵩高な顔料塗工層が形成されるため、剛度が向上するものと推測される。また、本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートは比較的規則的な板状形状を有しており、このような顔料を顔料塗工層に配合することによって塗工層の表面強度が向上し、また、平均粒子径を2μm以上とすることによって顔料塗工層から顔料が脱落しにくくなり、印刷時のパイリングやムケが少なくなるものと推測される。
本発明のカルシウムアルミニウムモノカーボネートは、市販品を用いても、合成したものを用いてもよい。モノカーボネートは、サチンホワイト(3CaO・Al・3CaSO)と同様にセメント硬化物中に生成することが知られている。粒径形状は、モノカーボネートが層状構造を有する六角板状であるのに対し、サチンホワイトは針状であり、塗工紙用顔料として用いると紙面上で平坦に配向しやすいとされる。カルシウムアルミニウムモノカーボネートの合成は、公知の方法により行うことができ、例えば、無水カルシウムアルミネートを水中で炭酸カルシウムと反応させる方法(大門他、「3CaO・Al2O3-CaSO4・2H2O-CaCO3-Na2SO4-H2O系水和物の合成」『無機マテリアル』196頁、vol.4、1997年)、水酸化アルミニウムを摩砕処理などによりメカノケミカル的に消石灰および炭酸カルシウムと水の存在下で反応させる方法(特開2008−37664号公報参照)などを挙げることができる。なお、本発明に用いられる粒子径2μm〜15μmのモノカーボネートは、特開2008−37664号公報記載の方法で合成する場合、水酸化アルミニウムの摩砕時間を短くし反応終了までの時間を長くすることによって合成することができる。
原紙
本発明に使用する原紙は特に制限されず、上質紙や中質紙、再生紙等の一般的な用紙を使用することができ、酸性紙であっても中性紙であってもよい。本発明の原紙の坪量は特に制限されないが、カーボネートを配合した本発明の塗工紙は裏抜けしにくく、表面強度も高いため、25〜55g/mが好ましく、30〜50g/mがより好ましく、35〜45g/mがさらに好ましい。
本発明の原紙に使用するパルプは、特に限定されるものではないが、例えば、機械パルプ(MP)、再生パルプ、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、印刷用紙の抄紙原料として一般的に使用されているものを好適に使用することができ、適宜、これらの1種類または2種類以上を配合して使用される。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。その他にも、一般的な木材パルプに加えて、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維などを使用することができる。
本発明の原紙に使用する填料は、特に限定されるものではないが、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイトなどの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。特に、本発明においては、安価でかつ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを填料として使用することが好ましい。また、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)などの複合填料も使用可能である。酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。填料の配合量としては、原紙総重量あたり、5〜25重量%含有することが好ましい。
本発明においては、パルプ、填料の他に、原紙の製造に一般的に使用される製紙用薬品を適宜使用することができる。例えば、本発明において内添サイズ剤として、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などのサイズ剤を使用することができる。その他にも、紙力増強剤、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、染料、pH制御剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、紫外線防止剤、退色防止剤、スライムコントロール剤などの抄紙用内添薬品を、目的に応じて適宜添加することができる。
顔料塗工層
本発明の印刷用塗工紙は、原紙上に顔料塗工層を備える。本発明の顔料塗工層は、顔料とバインダーを含んでなり、公知の方法により原紙上に設けることができる。本発明の顔料塗工層は、原紙の片面または両面に設けられ、単層であっても2層以上設けてもよい。
本発明において、顔料塗工層の塗工量は特に制限されないが、本発明のカーボネートは
低塗工量においてもその効果を発揮することができるため、片面あたり2〜10g/mであることが好ましく、2〜8g/mであることがより好ましく、3〜6g/mであることがさらに好ましい。
本発明の印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカーボネートが顔料塗工層に含まれていれば、他の顔料を含んでいてもよい。本発明の塗工層に用いる顔料としては、これに限定されないが、例えば、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料を、モノカーボネートと併用することができる。
一般に顔料塗工層には、顔料の他に各種バインダーが使用されるが、本発明においても種々のバインダーを使用することができる。本発明の塗工層に用いる接着剤としては、例えば、スチレン・ブタジェン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジェン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシェチルェーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメテルセルロース、ヒドロキシェチルセルロース等のセルロース誘導体などのバインダーから、1種以上を適宜選択して使用することができる。接着剤の配合量としては、顔料100重量部に対して5〜50重量部程度であり、好ましくは10〜30重量部である。
また、本発明の顔料塗工層には、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤、印刷適性向上剤など、顔料塗工液に一般的に配合される各種助剤を適宜使用することができる。
本発明において、原紙上に塗工層を設ける装置は特に制限されず、例えば、2ロールサイズプレスコータやゲートロールコータ及びブレードメタリングサイズプレスコータ、ロッドメタリングサイズプレスコータ、及びシムサイザー等のフィルム転写型ロールコータ、フラデットニップ/ブレードコータ、ジェットファウンテン/ブレードコータ、及びショートドウェルタイムアプルケート式コータの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコータ、カーテンコータ、及びダイコータ等の公知のコータを用いて塗工することができる。また、操業効率を高めるため、オンラインのコーターを用いることも可能である。
コーターによって塗工された塗工層の乾燥には、一般的なドライヤを用いることができ、加熱熱風エアドライヤ、加熱シリンダ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等、各種の方式のドライヤを、単独であるいは組み合せて用いることができる。乾燥状態が用紙のカールに影響を及ぼすため、本発明においては表裏の乾燥バランスをコントロールすることのできる装置を用いることが好ましい。
本発明においては、このようにして得られた塗工紙の顔料塗工層を、平滑度などを高めるため表面処理することも可能である。カレンダー処理は、コート紙の平滑化処理に通常使用されるスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等を用いて行なえばよく、また、これらを併用してもよい。印面品質及び印刷作業性のバランスを良好にする観点から、特に高温ホットソフトカレンダー処理することが好ましい。
以下に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本明細書において部および%は、特記しない限り重量基準であり、重量部および重量%は、それぞれ固形分重量部および固形分重量%を示す。
評価方法
本発明における各種評価方法の詳細は以下のとおりである。
(1)平均粒子径
Mastersizer2000(MALVERN Instruments社製、レーザー法)及びSedigraph(Micromeritics社製、沈降法)により測定した。
(2)坪量・紙厚
坪量はJIS P8124に準じて測定し、紙厚はJIS P8118に準じて測定した。
(3)ISO曲げこわさ
ISO 2493に準じて、L&W Bending Tester(Lorentzen&Wettre社製)で、曲げ角度が15度の曲げこわさを測定した。
(4)ISO白色度
拡散照明方式によるISO白色度(JIS P8148)を測定した。
(5)ISO不透明度
ISO不透明度(JIS P8149)を測定した。
(6)印刷光沢度
ローランド枚葉印刷機(4色)を用いて、枚葉印刷用インキ(東洋インキ製)を使用して印刷速度8000枚/時で墨→藍→紅→黄の順で印刷し、得られた印刷物(藍単色、藍紅2色、藍紅黄3色ベタ印刷部)の表面をJIS P−8142に従い角度75度にてそれぞれ印刷光沢度を測定し、その平均値を算出した。
(7)裏抜け
ローランド枚葉印刷機(4色)を用いて、枚葉印刷用インキ(東洋インキ製)を使用して印刷速度8000枚/時で墨→藍→紅→黄の順で印刷し、得られた印刷物の裏抜け具合を目視評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎=非常に良好、○=良好、△=やや劣る、×=劣る
(8)ドライピック表面強度評価
ローランド社製の枚葉印刷機R202にてA3サイズのサンプルに藍色インキを単色ベタ印刷後、表面に現れるパルプ繊維の剥離数を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
・○:パルプ繊維剥離の発生がほとんど認められなかった
・△:パルプ繊維剥離が少量発生していた
・×:パルプ繊維剥離が多く発生していた
[実施例1]
<モノカーボネートの合成>
モノカーボネートとして、平均粒子径が8.1μmと1.0μmのモノカーボネート(古手川産業製)を使用した。平均粒子径8.1μmのモノカーボネートは、特開2008−37664号公報に記載されたように水酸化アルミニウムを摩砕処理し、メカノケミカル的に消石灰および炭酸カルシウムと水の存在下で反応させることによって合成したが、水酸化アルミニウムの摩砕時間を短くし、反応終了までの時間を長くした。平均粒子径1.0μmのモノカーボネートは特開2008−37664号公報記載の方法で合成された。
<原紙の製造>
原紙を構成するパルプ組成を、KP40重量%、GP10重量%、TMP10重量%及びDIP42重量%とし、内添の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:2.2μm)を11重量%含有させて、ポリアクリルアミド系紙力剤0.03重量%、及び定着剤として硫酸バンド0.8重量%を添加して、紙料を調成した。
この紙料をツインワイヤー抄紙機にて1200m/分で抄造し、坪量41g/mの原紙を得た。
<塗工液の調製>
微粒カオリン(レーザー法による平均粒子径0.22μm、ハイドラグロス・Imerys社製)30重量部、エンジニアードカオリン(レーザー法による平均粒子径3.56μm、、Contour1500・Imerys社製)30重量部、平均粒子径8.1μmのモノカーボネート30重量部、及びルチル型の二酸化チタン10重量部からなる顔料を、ポリアクリル酸ソーダ分散剤0.2重量部を配合した水に加えてセリエミキサーで分散して、固形分濃度が55重量%の顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに、スチレン・ブタジェン共重合体ラテックス(Lx:NP100B・JSR社製など)を9重量部、ヒドロキシェチルェーテル化デンプン(M210:隅田化学製)を7.5重量部、印刷適性向上剤(SPI106N:星光PMC社製)を0.5重量部、滑材(SN231SP:サンノプコ社製)を0.5重量部、黒色染料(SAブラックA035:御国色素製)を150ppm加え、さらに水を加えて固形分濃度が55重量%の顔料塗工液を得た。
<塗工紙の調製>
前記した原紙の両面に、片面あたりの塗工量が3.5g/mになるように、それぞれ1200m/分の塗工速度でショートデュエル型のブレードコータを用いて上記の塗工液を塗工し、スキャッフドライヤーを通過させた後、シリンダードライヤーにて紙中水分が5.5%になるように乾燥した。
<カレンダー処理>
次いで、オンラインのソフトニップカレンダを用いて表面処理を行い、印刷用塗工紙を製造した。ソフトカレンダーは、金属ロール温度が150℃、弾性ロールのショアーD硬度が85、通紙速度が1200m/分、線圧が200kN/m、カレンダーニップ数が4ニップの条件で表面処理を行った。
[比較例1]
平均粒子径が8.1μmのモノカーボネートに代えて、平均粒子径が1.0μmのモノカーボネートを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
平均粒子径が8.1μmのモノカーボネートを配合せず、微粒カオリンを30重量部増配とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
平均粒子径が8.1μmのモノカーボネートを配合せず、2級カオリン(レーザー法による平均粒子径1.50μm、KCS・Imerys社製)を30重量部配合した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
[比較例4]
平均粒子径が8.1μmのモノカーボネートを配合せず、エンジニアードカオリン(Contour1500・Imerys社製)を30重量部増配した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
Figure 0004668327
表1に評価結果を示す。表1から明らかなように、実施例1の本発明の塗工紙は、不透明度、剛度(曲げこわさ)、裏抜け、ドライピック強度、白色度、印刷光沢度など、すべの面で優れており、オフセット印刷などの印刷用塗工紙として良好であることが確認された。
粒径の異なるカーボネートを用いた実施例1(平均粒径:8.1μm)と比較例1(平均粒径:1.0μm)を比較すると、実施例1は、比較例1と比較して光沢が若干劣るものの、曲げこわさやドライピック強度が有意に高いことが確認され、本発明の印刷用塗工紙は印刷時の耳折れやパイリングが生じにくい。
また、実施例1の印刷用塗工紙は、カーボネートと同じ板状顔料であるカオリンを用いた比較例2・3と比較して、特に曲げこわさ(剛度)、裏抜け、ドライピック強度(表面強度)に優れていた。このように、本発明の比較的粒径の大きいカーボネートを顔料として用いることによって、印刷用塗工紙の剛度や裏抜け、顔料塗工層の表面強度を改善できることが確認された。

Claims (3)

  1. 原紙と顔料塗工層を有する印刷用塗工紙であって、
    顔料塗工層に顔料100重量部に対して5〜50重量部の接着剤が配合され、当該顔料が、平均粒子径が2〜15μmであるカルシウムアルミネートモノカーボネートを含んでなる、上記印刷用塗工紙。
  2. 前記カルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒子径が2〜10μmである、請求項1に記載の印刷用塗工紙。
  3. 坪量が30〜60g/mである、請求項1または2に記載の印刷用塗工紙。
JP2009086180A 2009-03-31 2009-03-31 印刷用塗工紙 Expired - Fee Related JP4668327B2 (ja)

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