以下、図面を参照して本発明の好ましい実施について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る軌陸作業車1であり、タイヤ車輪(道路走行用車輪)11を備えて運転キャビン12から走行運転が可能なトラック式の走行体10と、走行体10に設けられた旋回台20と、旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持されたブーム(伸縮ブーム)30と、ブーム30の先端部に取付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
旋回台20は運転キャビン12の後方位置に上下軸まわり回動自在に取付けられている。走行体10の内部にはブーム旋回モータ(油圧モータ)23が設けられており、このブーム旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。ブーム30は基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に構成されており、内部に設けられたブーム伸縮シリンダ(油圧シリンダ)31の伸縮作動により各ブーム30a,30b,30cを相対的に移動させてブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20の支柱21との間にはブーム起伏シリンダ(油圧シリンダ)24が跨設されており、このブーム起伏シリンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を起伏動させることができる。
ブーム30の(先端部ブーム30cの)先端部には作業台支持金具32が設けられている。この作業台支持金具32はブーム30の先端部に下端部が枢支された垂直部32aと、この垂直部32aの上部から水平に延びた水平部32bとからなっており、垂直部32aが図示しないレベリング機構によりブーム30の起伏角度によらず常に垂直姿勢が保持されることにより、水平部32bの上面が常時水平姿勢となるようになっている。
作業台支持金具32における水平部32bの上面には作業台旋回プレート33が回動自在に設けられており、作業台40はこの作業台旋回プレート33の上面側に取付けられている。作業台40は作業台旋回プレート33に固定された床部41と、床部41の周囲から上方に延びて設けられた乗員保護柵42とを有して構成されている。作業台支持金具32における水平部32bの上面(作業台旋回プレート33の内部)には作業台旋回モータ(油圧モータ)43が設けられており、この作業台旋回モータ43を回転作動させることにより作業台旋回プレート33を作業台支持金具32に対して旋回させて、作業台40全体を旋回動させることができる。ここで、上記のように作業台支持金具32の水平部32bはレベリング機構によって常時水平姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床部41はブーム30の起伏角度によらず常時水平姿勢に保持される。
作業台40には上部操作装置45が設けられており、ここにはブーム操作レバー46と作業台旋回レバー47とが備えられている(図2参照)。ブーム操作レバー46は前後及び左右方向への傾動操作と軸回り左右方向への捻り操作が可能であり、ブーム操作レバー46の前後方向への傾動操作により出力された操作信号はブーム30の起伏操作信号として、ブーム操作レバー46の左右方向への傾動操作により出力された操作信号はブーム30の伸縮操作信号として、またブーム操作レバー46の軸回り左右方向への捻り操作により出力された操作信号はブーム30の旋回操作信号として、それぞれ走行体10内に設けられたコントローラ50に入力される。また、作業台旋回レバー47は左右方向への傾動操作が可能であり、作業台旋回レバー47の左右方向への傾動操作により出力された操作信号は作業台40の旋回操作信号としてコントローラ50に入力される。
図2に示すように、ブーム旋回モータ23には旋回モータ操作バルブ23v経由で、ブーム起伏シリンダ24にはブーム起伏シリンダ操作バルブ24v経由で、ブーム伸縮シリンダ31にはブーム伸縮シリンダ操作バルブ31v経由で、作業台旋回モータ43には作業台旋回モータ操作バルブ43v経由で、走行体10に設けられた油圧ポンプPより吐出された圧油が供給されるようになっている。ブーム旋回モータ操作バルブ23v、ブーム起伏シリンダ操作バルブ24v及びブーム伸縮シリンダ操作バルブ31vはいずれも電磁比例式の方向流量制御バルブであり、コントローラ50は上部操作装置45に備えられたブーム操作レバー46の操作により出力された上記操作信号に基づいてブーム旋回モータ操作バルブ23v、ブーム起伏シリンダ操作バルブ24v及びブーム伸縮シリンダ操作バルブ31vの各スプール(図示せず)を駆動するため、ブーム旋回モータ23、ブーム起伏シリンダ24及びブーム伸縮シリンダ31はそれぞれブーム操作レバー46の各方向への操作状態に応じた方向及び速度で作動する。作業台旋回モータ操作バルブ43vも電磁比例式の方向流量制御バルブであり、コントローラ50は、上部操作装置45に備えられた作業台旋回レバー47の操作により出力された操作信号に基づいて作業台旋回モータ操作バルブ43vのスプール(図示せず)を駆動するため、作業台旋回モータ43は作業台旋回レバー47の操作状態に応じた方向及び速度で作動する。
このような構成により、作業台40に搭乗した作業者は、ブーム操作レバー46を操作してブーム30を旋回、起伏及び伸縮作動させ、或いは作業台旋回レバー47を操作して作業台40を旋回作動させることで、自身が搭乗する作業台40を所望の位置に移動させることができる。なお、走行体10の前後左右4箇所にはアウトリガジャッキ14が設けられており、作業前に各アウトリガジャッキ14を下方へ張出して(伸長作動して)接地状態にすれば走行体10を安定的に支持させることができ、走行体10に作用する大きな転倒モーメントに抗して安全に作業を行うことが可能となる。
走行体10の中央下部には走行体10を軌道(鉄道レール)R上に載せ替えしたうえで走行体10を軌道R上において走行させるための軌道走行装置60が設けられている。この軌道走行装置60は、図3〜図6に示すように、走行体10の左右下部を走行体10の前後方向に延びて設けられた左右2本のメインフレーム13の中央部(前後のタイヤ車輪11の間)に左右の懸架体61を介して水平姿勢で懸架されるリング状のベース62と、このベース62の下方においてベース62に対して(すなわち走行体10に対して)回転自在に設けられ、走行体10を道路と軌道Rとの間で載せ替えるときに走行体10を下方から支持して走行体10の方向転換を行わせる転車台63と、転車台63に対して上下揺動自在に設けられた2つの鉄輪支持アーム64と、これら鉄輪支持アーム64のそれぞれに対して2輪ずつ設けられた計4輪の軌道走行用の鉄輪65と、転車台63をベース62に対して回転作動させる転車台駆動モータ(油圧モータ)71(図1及び図2参照)と、2つの鉄輪支持アーム64それぞれを転車台63に対して上下揺動作動させる2つのアーム揺動シリンダ(油圧シリンダ)72と、2つの鉄輪支持アーム64それぞれに取付けられて鉄輪65を回転駆動する2つの鉄輪駆動モータ(油圧モータ)73とを有して構成されている。ここで、2つの鉄輪支持アーム64とこれら鉄輪支持アーム64を上下揺動させる2本のアーム揺動シリンダ72とは、転車台63に設けられて鉄輪65を支持するとともに、この鉄輪65の張出し格納を行う鉄輪張出し格納機構を構成する。
ベース62をメインフレーム13に懸架する左右の懸架体61はベース62の中心軸AX(この中心軸AXは垂直方向に延びる)を挟んで対向するように取付けられており、各懸架体61はベース62の上面に取付けられて水平側方(走行体10の左右方向)に延びた水平部61aと、水平部61aの上面に上方に延びて設けられた箱状の垂直部61bと、左右の垂直部61bそれぞれの上部に走行体10の前後方向に並設されるとともに、左右のメインフレーム13の上部に固定されたサブフレーム15の側面に固定された複数のブラケット61c(図8参照)とからなっている。各懸架体61の水平部61aとベース62、各懸架体61の水平部61aと垂直部61b、及び各ブラケット61cとサブフレーム15の側面とはそれぞれ溶接結合されている。また、各懸架体61の垂直部61bと各ブラケット61cとは、それぞれ図示しないボルトによって結合されている。なお、図3〜図5では左右の懸架体61のブラケット61c及びサブフレーム15の図示は省略している。
メインフレーム13は図3、図4及び図8に示すように断面「コ」の字状を有しており、各懸架体61の水平部61aの上面、垂直部61bの内側面及びサブフレーム15の下面が形成するスペース内に挿通されている(メインフレーム13の下部フランジ13aはその下方に位置する懸架体61の水平部61aの上面と対向し、メインフレーム13の上部フランジ13bはその上方に位置するサブブーム15の下面と対向する)。このため、ベース62は左右の懸架体61及びサブフレーム15を介してメインフレーム13に懸架される。
転車台63はベース62の中心軸AXと同心かつベース62に対して回転自在に設けられている。この転車台63の内部には図示しない内歯ギヤが取付けられており、この内歯ギヤはベース62に固定された転車台駆動モータ71により図示しない減速歯車機構を介して駆動されるようになっている。このため転車台63は、転車台駆動モータ71を回転させることにより、中心軸AXを水平回転軸として、左右いずれの方向へも水平回転させることが可能である。
転車台63の外周部において、水平回転軸(中心軸AX)を挟んで対向する位置にはアーム支持ブラケット63a(図5参照)が外方向に延びて設けられており、これらアーム支持ブラケット63aには鉄輪支持アーム64の一端側が揺動支持軸64a(図5及び図6参照)により上下揺動自在に支持されている。ここで、以下、説明の便宜上、これらアーム支持ブラケット63aが延びる方向を転車台63の前後方向と定義し、水平回転軸(中心軸AX)を通って転車台63の前後方向に延びる軸を転車台63の前後中心軸TLとする(図7(B)参照)。
各鉄輪支持アーム64の他端側には鉄輪支持シャフト64b(図5及び図6参照)が支承されており、各鉄輪支持シャフト64bの両端部それぞれには鉄輪65が固定されている。各鉄輪65は鉄輪支持シャフト64bに固定されて鉄輪支持シャフト64bの延びる方向に延びた円筒部65aと、この円筒部65aの根元側(鉄輪支持アーム64に近い側)の周囲から半径方向外方に延びて設けられたフランジ部65bとを有している。
各鉄輪支持アーム64の中央部上面側には対向する2つのシリンダ支持部64c(図5参照)が上方に突出して延びて設けられており、ここにはアーム揺動シリンダ72を構成するシリンダ部72aの中央部左右両側から水平方向に延びて設けられたトラニオン軸72c(図5及び図6参照)が支持されている。また、転車台63の前後それぞれに設けられたアーム支持ブラケット63aの中央部上面側にはシリンダ枢支部63b(図5参照)が外方に突出して延びて設けられており、ここにはアーム揺動シリンダ72を構成するロッド部72bの端部が枢支ピン72d(図5参照)によって枢支されている。このためアーム揺動シリンダ72を伸縮作動させることにより鉄輪支持アーム64を上下方向に揺動させることができ、これにより鉄輪65の格納及び張出し作動を行うことができる。なお、アーム揺動シリンダ72が全縮した状態(鉄輪支持アーム64が最も上方に揺動した状態)で鉄輪65は上方位置に格納され(格納状態。図3及び図8(A)参照)、アーム揺動シリンダ72が全伸した状態(鉄輪支持アーム64が最も下方に揺動した状態)で鉄輪65は下方位置に張出される(張出し状態。図4及び図8(V)参照)。
鉄輪駆動モータ73は図6に示すように各鉄輪支持アーム64の下面に回転軸(図示せず)を鉄輪支持シャフト64bに対して平行にする姿勢で固定されている。各鉄輪駆動モータ73の回転動力は鉄輪駆動モータ73に隣接して設けられたギヤボックス74(図6参照)内のギヤを介して鉄輪支持シャフト64bに伝達されるようになっている。従って、鉄輪駆動モータ73を回転駆動させることにより鉄輪支持シャフト64bの両端に設けられた2つの鉄輪65を同方向かつ同速度で回転させることができる。
走行体10の後部には下部操作装置80が設けられており、ここには転車台駆動モータ71の作動操作(転車台63の操作)を行うための転車台操作レバー81と、アーム揺動シリンダ72の作動操作(鉄輪支持アーム64の上下揺動操作)を行うためのアーム操作レバー82と、走行体回転スイッチ83(左方進行と右方進行の選択が可能)と、退線スイッチ84(載線時同方向退線と載線時逆方向退線の選択が可能)が備えられている(図2参照)。また、走行体10内には転車台63の走行体10に対する回転角φ(°)(転車台63の前後中心軸TLが走行体の10の前後中心軸BLに対してなす偏角。図7(B)参照)を検出する回転角検出器91が設けられており(図2参照)、この回転角検出器91により検出された転車台63の走行体10に対する回転角φの情報はコントローラ50に入力されるようになっている。なお、回転角検出器91は転車台63の走行体10に対する回転角φとして、常に180°よりも小さい方の値を採択するものとする(例えば、転車台63の走行体10に対する回転角φが30°又は150°である場合には30°の方を採択し、0°又は180°である場合には0°の方を採択する。従って検出される回転角φは常に0°から90°までの間の角度となる)。
運転キャビン12内にはPTO操作レバー16と、軌道走行スイッチ85とが設けられている(図2参照)。PTO操作レバー16は、走行体10に備えられてタイヤ車輪11を駆動するエンジンEG(図3及び図4も参照)の動力の全部又は一部を取出すパワーテイクオフ機構PTO(図2参照)のオンオフ切換えを行うためのものであり、PTO操作レバー16がオンにされているときにはコントローラ50がパワーテイクオフ機構PTOをオンする。これによりエンジンEGの動力の全部又は一部が取出されて油圧ポンプPが駆動され、作業台40の移動等が可能となる。軌道走行スイッチ85は、軌道走行を始める際に運転キャビン12内の図示しないアクセルペダルを踏み込むことによって(アクセルペダルの踏み込み量は図2に示すスロットル開度センサ86によって検出される)鉄輪駆動モータ73を駆動できるようにするものである。軌道走行スイッチ85は2つの走行可能位置(前進及び後進)と走行不能位置(中立)とのいずれかを選択可能であり、エンジンEGと繋がる図示しないトランスミッションをニュートラルにし(トランスミッションのシフトポジションは図2に示すシフトポジションセンサ87により検出される)、かつPTO操作レバー16をオンにした状態で軌道走行スイッチ85により走行可能位置を選択すると、コントローラ50は図示しないポテンショメータによって検出されるアクセルペダルの踏み込み量に応じて鉄輪駆動モータ73を作動させる(詳細は後述)。一方、軌道走行スイッチ85により走行不能位置を選択したときには、コントローラ50はアクセルペダルが踏み込まれていても鉄輪駆動モータ73を作動させない。
図2に示すように、転車台駆動モータ71には転車台駆動モータ操作バルブ71v経由で、前後のアーム揺動シリンダ72それぞれにはアーム揺動シリンダ操作バルブ72v経由で、前後の鉄輪駆動モータ73それぞれには鉄輪駆動モータ操作バルブ73v経由で、走行体10に設けられた前述の油圧ポンプPより吐出された圧油が供給される。転車台駆動モータ操作バルブ71v及びアーム揺動シリンダ操作バルブ72vはいずれも電磁比例式の方向流量制御バルブであり、コントローラ50は転車台操作レバー81の操作により出力された操作信号に基づいて転車台駆動モータ操作バルブ71vのスプール(図示せず)を駆動し、アーム操作レバー82の操作により出力された操作信号に基づいてアーム揺動シリンダ操作バルブ72vのスプール(図示せず)を駆動する。これにより転車台駆動モータ71は転車台操作レバー81の操作状態に応じた方向及び速度で作動し、2つのアーム揺動シリンダ72はアーム操作レバー82の操作状態に応じた方向及び速度で作動する。また、鉄輪駆動モータ操作バルブ73vも電磁比例式の方向流量制御バルブであり、コントローラ50はシフトポジションセンサ87によりトランスミッションがニュートラルになっており、かつPTO操作レバー16がオンになっている状態において、軌道走行スイッチ85により走行可能位置が選択されているときには、スロットル開度センサ86により検出されるアクセルペダルの踏み込み量に応じて鉄輪駆動モータ操作バルブ73vのスプール(図示せず)を駆動する。これにより鉄輪駆動モータ73はアクセルペダルの踏み込み量に応じた速度で作動する。なお、軌道走行スイッチ85により前進走行が選択されているときには2つの鉄輪駆動モータ73は走行体10が前進する方向に駆動され、軌道走行スイッチ85により後進走行が選択されているときには2つの鉄輪駆動モータ73は走行体10が後進する方向に駆動される。
このような構成により、作業者は、転車台操作レバー81を操作し、転車台駆動モータ71を作動させることによって転車台63を走行体10に対して回転作動させることができ、アーム操作レバー82を操作し、アーム揺動シリンダ72を作動させることによって鉄輪支持アーム64を上下に揺動(鉄輪65を昇降)させることができる。ここで、アーム揺動シリンダ72の全伸及び全縮状態はそれぞれ図示しないシリンダ全伸検出器とシリンダ全縮検出器(これら両検出器は、例えば、アーム揺動シリンダ72を駆動する油圧回路中に設けられた圧力スイッチ等から構成される)によって検出され、これら両検出器からの検出情報はコントローラ50に入力されるようになっている。
次に、この軌陸作業車1を用いて軌道R上での高所作業、例えばトロリ線の保守点検作業を行う手順について説明する。このような高所作業を行うには、先ず作業者が運転キャビン12内から道路走行運転を行って軌陸作業車1を作業現場最寄りの踏切へ移動させる。ここで、軌陸作業車1を道路走行移動させるときには、鉄輪65の回転軸である鉄輪支持シャフト64bが走行体10の前後中心軸BLとほぼ平行に位置するように転車台63が走行体10に対して回転され(このとき転車台63の前後中心軸TLは走行体10の前後中心軸BLに対してほぼ直交することになるので、回転角検出器91により検出される転車台63の走行体10に対する回転角φはほぼ90°となる)、アーム揺動シリンダ72は全縮状態にされて鉄輪支持アーム64は上方に揺動され、鉄輪65は格納状態(上方位置に格納された状態)にされる(図3参照)。また、これにより鉄輪65は走行体10を前後方向に延びて設けられた左右2本のメインフレーム13の外側であり、走行体10の左右方向の幅(車幅)内に収まる領域内に位置するようになる。なお、ブーム30は全縮状態で後方に倒伏された格納状態にされる(図1において実線で示すブーム30及び作業台40参照)。
軌陸作業車1を踏切内に進入させたら、軌陸作業車1を軌道R上に載線させる。軌陸作業車1を軌道R上へ載線させるには、先ず、前後のタイヤ車輪11により2本の軌道Rを跨ぐ位置に走行体10を停車させる(図7(A)参照。このときの鉄輪65の位置については図8(A)参照)。続いて運転キャビン12内からPTO操作レバー16の操作を行ってパワーテイクオフ機構PTOをオンにし、油圧ポンプPを駆動して鉄輪65の張出し作業を行うことができるようにする。なお、ここでは軌陸作業車1は走行体10の前後中心軸BLが軌道Rの延びる方向に沿う軸RLに対して角度θ(°)をなすように踏切内に進入したものとする(図7(A)参照)。
パワーテイクオフ機構PTOをオンにしたら、作業者は続いて下部操作装置80からアーム操作レバー82の操作を行って、前後の鉄輪支持アーム64がそれぞれほぼ水平姿勢となるようにする(図7(B)参照。このときの鉄輪65の位置については図8(B)参照)。これにより転車台63はアーム揺動シリンダ72が走行体10と干渉したり鉄輪65が地面又は軌道Rと接触したりしない状態で走行体10に対して回転させることが可能となる。なお、前後の鉄輪支持アーム64がほぼ水平姿勢になった状態は、鉄輪支持アーム64の揺動角を検出するポテンショメータ又は鉄輪支持アーム64がほぼ水平姿勢になったときにオン又はオフとなるリミットスイッチからの検出情報、或いはタイマにより計測されるアーム操作レバー82の操作開始時点からの経過時間等によって、作業者が正確に把握できるようになっていることが好ましい。
続いて作業者は、下部操作装置80から転車台操作レバー81の操作を行って転車台駆動モータ71を作動させ、転車台63を走行体10に対して回転させることによって、転車台63の前後中心軸TLが軌道Rの延びる方向に沿う軸RL(図7(B)参照)と一致し、かつ4つの鉄輪65(の円筒部65a)が軌道Rの直上に位置するようにする(図7(C)参照)。このとき必要があれば、運転キャビン12内から運転操作を行って走行体10を前後方向に移動させる。
上記作業により4つの鉄輪65が軌道Rの直上に位置したら、下部操作装置80からアーム操作レバー82の操作を行ってアーム揺動シリンダ72を伸張作動させ、4つの鉄輪65(の円筒部65a)を軌道Rに接触させる(図7(D)参照)。
4つの鉄輪65を軌道Rに接触させたら、作業者は続いて下部操作装置80からアーム操作レバー82の操作を行って、アーム揺動シリンダ72を全伸状態まで伸張作動させる。これにより4つの鉄輪65は張出し状態となって4つのタイヤ車輪11は道路上から離れ、走行体10は4つの鉄輪65によって押し上げられて軌道R上に支持される(図7(E)参照。このときの鉄輪65の位置については図8(C)参照)。
このように鉄輪65が張出し状態となって走行体10が4つの鉄輪65のみによって軌道R上に支持されたら、作業者は下部操作装置80から走行体回転スイッチ83(左方進行と右方進行の選択が可能)の操作を行う。コントローラ50は、走行体回転スイッチ83による左方進行の選択操作信号を受けたときには走行体10が転車台63に対して左回りに回転するように転車台駆動モータ71を作動させ、右方進行の選択操作信号を受けたときには走行体10が右回りに回転するように転車台駆動モータ71を作動させる。そして、いずれの場合においても回転角検出器91により検出される転車台63の走行体10に対する回転角φの値が0°になったときに転車台駆動モータ71の作動を停止させる。これにより走行体10の前方(運転キャビン12が設けられている側)が作業者の所望する方向を向くようになり、軌陸作業車1は道路上から軌道R上に載せ替えられた状態となる(図7(F)及び図4参照)。なお、この作業において、鉄輪65によって走行体10が持ち上げ支持された後、走行体10が転車台63に対して回転されて回転角φの値が0°になるまでの間に走行体10が転車台63に対して回転した方向とその回転角(=θ)の値はコントローラ50の記憶部51に記憶され、その情報は後述する自動退線時において利用される。
このようにして軌陸作業車1が道路上から軌道R上に載せ替えられたら、作業者は運転キャビン12内から軌道走行操作を行い(この軌道走行操作は、前述のように、トランスミッションをニュートラル、PTO操作レバー16をオンにし、軌道走行スイッチ85により走行可能位置を選択した状態でアクセルペダルを踏み込むことによって行う)、転車台63の前後に配設された2つの鉄輪駆動モータ73を作動させて4つの鉄輪65を同方向かつ同速度で回転させ、軌道R上を走行移動する。作業現場に到着したら、作業者は走行体10より作業台40に搭乗し、上部操作装置45からブーム30を旋回、起伏、伸縮作動させ、或いは作業台40を水平旋回作動させて作業台40の移動を行い(図1において二点鎖線で示すブーム30及び作業台40参照)、所要の作業(ここではトロリ線の点検作業)を行う。なお、この作業を始める前にはアウトリガジャッキ14を張出して走行体10の安定度を高めるようにする。そして、作業が終わったら上部操作装置45からブーム操作レバー46と作業台旋回レバー47の操作を行ってブーム30を格納状態にする。
作業終了後は運転キャビン12内から軌道走行操作を行って軌道R上を走行し、踏切のあるところまで移動して退線することになるが、この退線には、作業現場からそのまま前進走行して最寄りの踏切から退線する方法と、作業終了後に走行体10の前後を反転してから軌道走行し、載線時と同じ踏切から退線する方法とがある。
作業現場からそのまま前進走行して最寄りの踏切から退線しようとする場合には、先ず、軌陸作業車1を作業現場からそのまま前進走行させて最寄りの踏切内で停車させた後(図7(F)参照)、下部操作装置80から転車台操作レバー81の操作を行って転車台駆動モータ71を作動させ、走行体10を転車台63に対して回転させることによって、走行体10の前方が退線後に道路走行しようとする方向に向くようにする(図7(E)参照)。
走行体10が進行方向を向いたら、作業者は下部操作装置80からアーム操作レバー82の操作を行って、鉄輪支持アーム64がほぼ水平姿勢となるようにする(図7(C)参照)。この間、4つのタイヤ車輪11は道路上に接触し、(図7(D)参照)、その後4つの鉄輪65は軌道Rから離間して、走行体10は道路上に下ろされた状態となる。また、これにより転車台63は走行体10に対して回転させることが可能な状態となる。なお、鉄輪65の格納時においても、前後の鉄輪支持アーム64がほぼ水平姿勢になった状態は、鉄輪支持アーム64の揺動角を検出するポテンショメータからの検出情報等によって、作業者が正確に把握できるようになっていることが好ましい。
鉄輪支持アーム64がほぼ水平姿勢となる位置でアーム揺動シリンダ72の収縮作動を停止させたら、続いて作業者は下部操作装置80から走行体回転スイッチ83の操作を行う。コントローラ50は、走行体回転スイッチ83の操作信号を受けたときには転車台駆動モータ71を作動させる。このとき回転角検出器91により検出されている転車台63の走行体10に対する回転角が90°でない場合には検出される回転角が90°に増大するように転車台駆動モータ71を作動させ、検出される回転角が90°になったところで転車台駆動モータ71の作動を停止させる。これにより転車台63はその前後中心軸TLが走行体10の前後中心軸BLとほぼ直交する姿勢となり、鉄輪65の回転軸である鉄輪支持シャフト64bは走行体10の前後中心軸BLとほぼ平行な姿勢になる(図7(B)参照)。
コントローラ50は、上記のように、鉄輪65の回転軸(鉄輪支持シャフト64b)が走行体10の前後中心軸BLとほぼ平行に姿勢となるように転車台駆動モータ71を作動させたら、続いてアーム揺動シリンダ72を全縮状態まで収縮させる。これにより鉄輪65は上方位置に格納されるとともに、走行体10のメインフレーム13の左右外側に位置する状態となり(図7(A)及び図3参照)、軌陸作業車1は道路走行が可能となる。
一方、軌道R上での作業終了後、走行体10の前後を反転してから軌道走行し、載線時と同じ踏切から退線しようとする場合には、作業者は先ず、下部操作装置80から転車台操作レバー81の操作を行って転車台63を走行体10に対して(走行体10を転車台63に対して)180°回転させる(別途設けたスイッチを操作することにより自動で走行体10が転車台63に対して180°回転する構成としてもよい)。これにより、走行体10の前後が反転されるので、その後は運転キャビン12内から軌道走行操作を行って軌道走行し、載線時と同じ踏切内で停車させる。なお、走行体10の前後が反転したことは図示しない反転検出器により検出されるようになっており、コントローラ50はこの反転検出器からの検出情報に基づいて、走行体10から行う軌道走行操作と実際の走行体の10走行方向(鉄輪65の駆動方向)とを合致させるようになっている。
軌陸作業車1を載線時と同じ踏切内で停車させたら、作業者は、下部操作装置80から退線スイッチ84(載線時同方向退線と載線時逆方向退線の選択が可能)の操作を行う。コントローラ50は、退線スイッチ84による載線時同方向退線の操作信号を受けたときには、走行体10が転車台63に対して載線時と同方向に角度180°−θだけ回転するように転車台駆動モータ71を作動させる。一方、コントローラ50は、退線スイッチ84による載線時逆方向退線の操作信号を受けたときには、走行体10が転車台63に対して載線時とは逆方向に角度θだけ回転するように転車台駆動モータ71を作動させる。これにより走行体10の前方が作業者の所望する方向を向くようになる。
コントローラ50は、上記のように転車台駆動モータ71を作動させたら、続いて図示しない鉄輪支持アーム64の揺動角を検出するポテンショメータによる検出情報等に基づいて鉄輪支持アーム64がほぼ水平姿勢となるようにする。この間、4つのタイヤ車輪11は道路上に接触し、4つの鉄輪65は軌道Rから離間して、走行体10は道路上に下ろされた状態となる。また、これにより転車台63は走行体10に対して回転させることが可能な状態となる。続いてコントローラ50は転車台駆動モータ71を作動させる。このとき回転角検出器91により検出されている転車台63の走行体10に対する回転角が90°でない場合には検出される回転角が90°に増大するように転車台駆動モータ71を作動させ、検出される回転角が90°になったところで転車台駆動モータ71の作動を停止させる。これにより転車台63はその前後中心軸TLが走行体10の前後中心軸BLと直交する姿勢となり、鉄輪65の回転軸である鉄輪支持シャフト64bは走行体10の前後中心軸BLとほぼ平行に位置する。
コントローラ50は、上記のように、鉄輪65の回転軸(鉄輪支持シャフト64b)が走行体10の前後中心軸BLとほぼ平行に位置する状態となるように転車台駆動モータ71を作動させたら、続いてアーム揺動シリンダ72を全縮状態まで収縮させる。これにより鉄輪65は上方位置に格納されるとともに、鉄輪65が走行体10のメインフレーム13の左右外側に位置する状態となり(図3参照)、軌陸作業車1は道路走行が可能となる。
このように本実施形態に示した軌陸作業車1では、軌道走行用の鉄輪65が、走行体10を道路と軌道との間で載せ替えるときに走行体10を下方から支持して走行体10の方向転換を行わせる転車台63に取付けられているため、走行体10を道路上から軌道上に載せ替え移動させる載線時には、転車台63を回転させて鉄輪65が軌道上に載るようにした状態で鉄輪65を張出し、その後走行10体の方向転換を行う(走行体10を転車台63に対して回転させる)だけでよいので、熟練者でなくても容易に載線作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。また、従来のように載線時(及び退線時)に2本の軌道の間に掛け渡して用いる車両移動装置を軌道上に設置(及び軌道上から撤去)する必要がないので、この面からも作業効率を向上させることができる。
また、本実施形態に示した軌陸作業車1では、転車台63が前後のタイヤ車輪11の間に配置され、鉄輪張出し格納機構が、転車台63の水平回転軸(中心軸AX)を挟んで対向する2箇所に上下揺動自在に設けられた鉄輪支持アーム64と、鉄輪支持アーム64を上下揺動させて鉄輪65を昇降移動させるアクチュエータ(アーム揺動シリンダ72)とから構成されており、走行体10の道路走行時には鉄輪65の回転軸(鉄輪支持シャフト64b)が走行体10の前後中心軸BLとほぼ平行に位置するように転車台63が走行体10に対して回転され、2つの鉄輪支持アーム64は上記アクチュエータによって上方に揺動されて、鉄輪65が上方位置に格納されるようになっているので、鉄輪65を容易に格納させることができるレイアウトとなっている。更に、走行体10の道路走行時には、鉄輪65は走行体10の内部を前後方向に延びて設けられた左右2本のメインフレーム13の外側に位置するようになっているので、より一層鉄輪65の格納が容易になるとともに、鉄輪65をより上方に格納することができるので、最低地上高を高くすることが可能である。
また、本実施形態に示した軌陸作業車1では、転車台63を走行体10に対して水平回転させるアクチュエータである転車台駆動モータ71を備え、転車台63がこの転車台駆動モータ71によって走行体10に対して回転されるようになっているので、走行体10の方向転換を手動で(走行体10を手で押して)行う従来タイプのものよりも迅速かつ容易に行うことが可能である。
また、本実施形態に示した軌陸作業車1では、軌道上の走行体10を道路上に退線させるときに退線スイッチ84が操作されると、コントローラ50は転車台駆動モータ71を作動させて走行体10を転車台63に対して所定角度だけ回転させた後、鉄輪張出し格納機構(を構成するアーム揺動シリンダ72)を作動させて鉄輪65を上方位置に格納させることにより軌道上の走行体10を自動で道路上に載せ替え移動させるようになっており、走行体10を退線させる作業を退線スイッチ84の操作のみで行うことができるので、作業効率を向上させることができる。しかも、走行体10の道路上から軌道上への載線時、鉄輪張出し格納機構(を構成するアーム揺動シリンダ72)により鉄輪65を張出させて走行体10を鉄輪65のみによって支持させた後、転車台63を回転させて走行体10の前後方向(走行体10の前後中心軸BL)が軌道の延びる方向(軌道Rの延びる方向に沿う軸RL)に一致するように走行体10の方向転換を行ったときの転車台63の回転角θを検出して記憶しておき、コントローラ50は、その記憶された転車台63の回転角θに基づいて上記所定角度を決定するようになっているので、載線した場所(踏切)と同じ場所で退線するときの作業効率を向上させることができる。なお、退線スイッチ84は運転キャビン12内にも設けられていることが好ましく、このような構成とすることにより、軌道走行をしてきた軌陸作業車1から作業者が下りることなく、迅速に退線作業を実施することが可能となる。
なお、上述の実施形態では、自動退線時にコントローラ50が走行体10を転車台63に対して回転させる角度は、走行体10の道路上から軌道上への載線時、鉄輪張出し格納機構より鉄輪65を張出させた後、転車台63を回転させて走行体10の方向転換を行ったときの転車台63の回転角θであるとしていたが、自動退線時に走行体10を転車台63に対して回転させる角度を作業者が任意に、又は予め設定された離散的な複数の角度(例えば30°、45°、60°及び90°)の中から選択的に(走行体10を回転させる方向も併せて)設定できるようにしてもよい。
また、上述の軌陸作業車1では、各鉄輪支持アーム64に支持された2つの鉄輪65は1本の鉄輪支持シャフト64bによって支持されているため、鉄輪がそれぞれ別個のシャフトによって支持される構成に比べて部品点数の少ない低コストな構成であるのみならず、軌道走行中における横ぶれの少ない、安定した走行が可能な構成となっている。
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述のものに限定されない。例えば、上記実施形態においては、転車台63を走行体10に対して水平回転させるアクチュエータ(転車台駆動モータ71)を備えていたが、このようなアクチュエータを備えず、手動で転車台63或いは走行体10を押すことにより、転車台63を走行体10に対して、或いは走行体10を転車台63に対して回転させる構成になっていてもよい。このような構成であっても、走行体10を道路上から軌道上に載せ替え移動させる載線時に、転車台63を回転させて鉄輪65が軌道上に載るようにした状態で鉄輪65を張出し、その後走行体10の方向転換を行う(走行体10を転車台63に対して回転させる)だけでよいため作業効率が向上するという効果は変わるものではない。しかし、上述の実施形態のように、転車台63を走行体10に対して水平回転させるアクチュエータを備えているのであれば、走行体10を軌道上から道路上に下ろす退線作業を自動で行わせることが可能になるという利点がある。
また、上述の実施形態では、鉄輪張出し格納機構は2つの鉄輪支持アーム64とこれら鉄輪支持アーム64を上下揺動させる2本のアーム揺動シリンダ72とから構成されていたが、鉄輪張出し格納機構は、転車台63に設けられて鉄輪65を支持するとともに、走行体10の道路走行時にはタイヤ車輪11のみが接地するように鉄輪65を上方位置に格納させ、走行体10の軌道走行時には鉄輪65が軌道に接するように鉄輪65を下方位置に張出させる構成を有していればよいのであって、上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、鉄輪(を支持する部材)を上下方向に垂直昇降移動させる構成を有していても構わない。また、上述の実施形態では、鉄輪駆動モータ73の作動操作はアクセルペダルの踏み込みによって行うようになっていたが、別途設けた鉄輪駆動操作手段(例えばレバー)の操作によって行うことができるようにしてもよい。また、上述の実施形態では、サブフレーム15にブラケット61cを固定する構成であったが、サブフレーム15を備えずに荷台のみを架装するタイプの走行体においては、メインフレーム13の側面にブラケット61cを固定し、このブラケット61cと水平部61aとをボルト結合するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、載線後の軌陸作業車は走行体が鉄輪のみで支持され、道路走行用車輪(タイヤ車輪11)を浮かした状態で鉄輪のみによって駆動されて軌道走行する構成であったが、載線後の走行体が鉄輪のみならず道路走行用車輪によっても支持され、道路走行用車輪の駆動力によって軌道走行する構成であってもよい。このような構成を採る場合には、鉄輪を駆動するアクチュエータ(上述の実施形態では鉄輪駆動モータ73がこれに相当する)は不要となる。