本発明は、エンジンを備えて走行可能な車体にエンジンの回転駆動力を用いて作動する作業装置を備える高所作業車の安全装置に関する。
建設作業等を行うための高所作業車は一般に走行可能な車体上にブームや作業台といった作業装置が設けられ、高所作業を行うときには車体が不安定にならないようにジャッキ装置を張り出して車体を持ち上げ支持した上で、作業台に搭乗する作業者がブームを作動させて作業台を所望高所位置に移動させて作業を行うようになっている。
ところが車両の移動と高所作業とを頻繁に繰り返すような架空線の配線作業等を行う場合は、上記のような高所作業車ではジャッキ装置の張り出し・格納および作業台の高所位置への移動・格納を繰り返す必要があるので車両の移動が不便で作業効率が悪いという問題があった。このためこのような高所作業車には、特許文献1から特許文献4に記載されているように、ブームと作業台との間に上下に屈伸動可能な屈伸アームを装備し、この屈伸アームだけを屈伸させて作業台を所定の作業位置に移動させて、ジャッキ装置を張り出すことなく車体を低速走行させながら配線作業等の高所作業が可能なように構成されているものがある。
このような高所作業車においては、車体に搭載された車体走行用のエンジンの回転駆動力をPTO(パワーテイクオフ)機構により取り出して油圧ポンプを駆動させ、油圧ポンプからの油圧により作業装置に備えられた油圧シリンダや油圧モータ等を作動させて作業装置を作動させるように構成されている。このPTO機構は、例えば高所作業車の運転キャビンに配設されたPTOスイッチによりオン・オフの切り替え操作が可能であり、PTOスイッチをオンの側(作業状態の側)に切り替えてPTO機構を動力取り出し状態にさせると、運転キャビンに設けられたアクセルペダルの操作または作業台に設けられ屈伸アーム等の作動を操作するための操作装置の操作に応じてエンジンのアクセル制御がされて、作業装置が作動される。
上記のようなPTO機構を装備する高所作業車のPTOスイッチがオンの側にあるときに、作業者が誤ってアクセルペダルを強く踏み込んでエンジンの回転数が高くなった場合に、PTO機構や油圧ポンプがアクセルペダルの操作に応じた高速回転で回転駆動されて、PTO機構や油圧ポンプを損傷させるおそれがある。このため、高所作業車の走行中は、通常はPTOスイッチをオフの側にしなければならなかった。
特開2003−012286号公報
特開2002−211890号公報
特開2002−211889号公報
特開2002−205898号公報
ところで屈伸アームを装備する高所作業車を用いて車体を走行させながら架空線の配線作業等を行うときに、作業者が高所作業を行い易いように屈伸アームを屈伸動させて作業台の高さの調節をすることが必要な場合があり、このとき油圧ポンプを駆動させて屈伸アームを屈伸動させるには、PTOスイッチをオンの側に切り替えて動力取り出し状態にする必要がある。
しかしながら、上記のような理由で高所作業車の走行中にはPTOスイッチはオフの状態でなければならず、作業者が屈伸アームを屈伸動させて作業台の高さを調節するには、一旦高所作業車の走行を中断させてなければならなかった。その上、作業台の位置を調整した後に高所作業車を走行させながら作業を行うには再びPTOスイッチをオフの側に切り替えなければならず、このようなスイッチの切り替え操作と車体の走行・停止の繰り返しにより高所作業の作業効率が低下する、という問題があり、高所作業を効率よく行うためにPTOスイッチをオンの側の状態にしてエンジンの回転数を抑えたまま高所作業車を走行させる要望があった。
さらに、ジャッキ装置を車体から張り出させていたり作業台を高所位置へ移動させていたりといった、作業装置が作業姿勢にあるような場合には、高所作業車を目的とする作業現場に安全に移動させるために、高所作業車の移動速度を抑える必要性があった。
以上のような問題に鑑みて、本発明では作業装置を作動させて高所作業を行うときにエンジンの回転制御をすることで、作業装置にエンジンの駆動力を伝える伝達機構等を保護し、また安全に高所作業を行うことができる高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る高所作業車の安全装置は、エンジンの駆動力を用いて走行可能な車両と、エンジンの駆動力を取り出すパワーテイクオフ機構(例えば、実施形態におけるPTO機構25)と、車両の車体上に配設されてパワーテイクオフ機構により取り出されるエンジンの駆動力を用いて作動される作業装置(例えば、実施形態における旋回台4、ブーム5、屈伸アーム7、作業台10およびジャッキ装置31)と、パワーテイクオフ機構をオン・オフ作動させるための操作をするパワーテイクオフ作動手段(例えば、実施形態におけるPTOスイッチ21)と、エンジンのアクセル操作を行うアクセル操作手段(例えば、実施形態におけるアクセルペダル22)と、アクセル操作手段の操作に応じてエンジンの回転を制御するエンジン制御手段(例えば、実施形態におけるコントロールユニット40)と、エンジンの回転数を検出するエンジン回転検出手段(例えば、実施形態におけるエンジン回転センサ24)とを有して構成される。その上で、上記エンジン制御手段は、パワーテイクオフ作動手段がオン作動操作された場合に、アクセル操作手段の操作量に応じてエンジンの回転数を制御するとともに、エンジン回転検出手段により検出されるエンジンの回転数が予め設定した上限値を超えないようにエンジンの回転を制御する。
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業装置が車体上に起伏動・伸縮動・旋回動自在に枢結されたブームを有して構成され、車体上に取り付けられブームを載置させて格納するためのブーム受けと、ブームがブーム受けに載置されて格納されているか否かを検出するブーム格納検出手段(例えば、実施形態におけるブーム格納検出器26)とを有し、ブーム格納検出手段によりブームの未格納な状態が検出されている場合に、アクセル操作手段によるアクセル操作に拘らずエンジンの回転数が予め設定した上限値を超えないようにエンジン制御手段がエンジンの回転を制御する。
さらに、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業装置が車体の前後左右に配設された車体下方に伸縮自在な複数のアウトリガジャッキとアウトリガジャッキのそれぞれの下端に設けられた車両の走行方向に回転可能なローラとから構成されローラを接地させた状態で車体を支持するジャッキ装置を有して構成され、ジャッキ装置の接地状態を検出するジャッキ接地検出手段(例えば、実施形態におけるジャッキ接地検出器27)を有し、その上で、ジャッキ接地検出手段によりジャッキ装置の接地状態が検出されている場合に、アクセル操作手段によるアクセル操作に拘らずエンジンの回転数が予め設定した上限値を超えないようにエンジン制御手段がエンジンの回転を制御するように構成してもよい。
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業装置が車体の前後左右に配設され車体を持ち上げ支持するジャッキ装置を有して構成され、ジャッキ装置により車体を持ち上げ支持した状態で高所作業を行う停止作業モードとジャッキ装置を車体に格納した状態で車両を走行させながら高所作業を行う走行作業モードとを選択する操作をする作業モード選択手段(例えば、実施形態における作業モード選択スイッチ28)を有し、作業モード選択手段が走行作業モードの側に選択されている場合に、アクセル操作手段によるアクセル操作に拘らずエンジンの回転数が予め設定した上限値を超えないようにエンジン制御手段がエンジンの回転を制御するように構成してもよい。
上記構成の高所作業車の安全装置によれば、例えば屈伸アームを屈伸動させるためにPTOスイッチをオン操作してエンジンの駆動力の取り出し状態にあるときに、作業者が誤ってアクセルペダルを必要以上に踏み込んでもエンジンの回転数が予め設定した上限値を超えないように制御されているので、上限値を超えたエンジンの駆動力によりPTO機構や油圧ポンプが高速回転することがなく、これらが損傷することを防止できる。そして、エンジンの回転数が上限値以下に抑えられているので車体が急加速することはなく、作業台に搭乗して高所作業を行う作業者の安全性を確保することができる。
また、上記のようにエンジンの回転数を抑えて車体を走行させながら屈伸アーム等の作業装置を作動させることができるので、作業台の位置を作業者にとって最適な位置に調整するために、PTOスイッチの切り替え操作や、車体の走行・停止の繰り返しといった煩雑な操作を行う必要がなく、作業効率を高くすることができる。
さらに、PTOスイッチをオン操作した場合だけではなく、ブームのブーム受けへの未格納な状態が検出されている場合や、車両の走行方向に回転可能なローラを有するジャッキ装置の接地が検出されている場合を条件としてエンジンの回転数を制御することで、作業装置が作業姿勢にあるような場合であっても高所作業車を安全に移動させることができる。また、車両を走行させながら高所作業を行う走行作業モードが選択されていることを条件としてエンジンの回転数を制御することもでき、このような方法により作業車を低速走行させることで、作業車を走行させながら高所作業を行う作業者の安全性を確保することができる。
ここで、本発明に係る高所作業車の安全装置の好ましい実施形態について、図1から図10を参照しながら詳細に説明する。
まず、当該安全装置の第1の実施の形態について図1から図6を用いて説明する。図1に当該安全装置を装備した高所作業車の一例を示す。図1に示すように、この高所作業車1は車体の前方に運転キャビン2aを有し、前後輪3a,3bで走行可能なトラックシャーシをベースに構成される。運転キャビン2aの後方の車体2上には、上方に突出して水平旋回可能に旋回台4が取り付けられており、この旋回台4の下部に設けられた旋回モータ51により駆動される。旋回台4の上部に基端部が枢結されてブーム5が取り付けられており、ブーム5は旋回台4とブーム5の下面との間に張り渡された起伏シリンダ52を伸縮動させることにより起伏動される。またブーム5は、基端ブーム5aと先端ブーム5cとを入れ子式に組み合わせて構成されており、ブーム5に内蔵された伸縮シリンダ53をブーム5の長手軸方向に伸縮動させることにより基端ブーム5aに対して先端ブーム5cを伸縮動可能に構成されている。
車体2の前後左右の四箇所には、車体左右への拡幅および下方に伸縮自在なジャッキ装置31が設けられて、高所作業を行うときには車体2の後部に設けられたジャッキ装置31の張り出しおよび格納操作を行うための下部操作装置11bを操作してジャッキ装置31を車体2の左右に拡幅および下方に張り出し伸長させて車体2を安定に持ち上げ支持できるようになっている。
図2に示すように、先端ブーム5cの先端部にブーム5の起伏角度面内で上下に揺動可能にレベリングリンク6が枢結され、このレベリングリンク6は、先端ブーム5cとレベリングリンク6との間に張り渡されたレベリングシリンダ58により上下に揺動される。レベリングシリンダ58は、ブーム5を起伏動させたときにブーム5の起伏動と連動してレベリングリンク6がブーム5の起伏角度と同一の角度で起伏動するように構成されている。このため、ブーム5の起伏角度の如何に拘わらず、レベリングリンク6は車体2に対して常に一定の角度姿勢を維持するように制御される。
また、レベリングリンク6にはブーム5の起伏角度面内で上下に揺動可能に屈伸アーム7が枢結されている。屈伸アーム7はレベリングリンク6と屈伸アーム7との間に設けられた屈伸シリンダ54を伸縮動させることにより第1リンク部材12および第2リンク部材13を介して揺動され、レベリングリンク6に対して屈伸アーム7が上下に屈伸動される。
屈伸アーム7の先端部には上下に揺動可能に垂直ポスト部材8が取り付けられており、この垂直ポスト部材8から上方に突出するポスト部8aに作業台ブラケット9を介して旋回動(首振動)可能に作業台10が取り付けられている。また屈伸アーム7の基端部および先端部には、第1スプロケット14aと第2スプロケット14bとが回動自在に軸支され、各スプロケット14a,14bにチェーン15が巻き掛けられてチェーン伝達機構が形成されている。
また第1スプロケット14aの回動軸はレベリングリンク6に固定され、第2スプロケット14bの回動軸は垂直ポスト部材8にそれぞれ固定されている。そして屈伸シリンダ54が伸縮作動して屈伸アーム7が屈伸動すると、チェーン伝達機構によって屈伸アーム7の屈伸角度と同一の角度で垂直ポスト部材8が上下に揺動され、垂直ポスト部材8は屈伸アーム7の屈伸角度に拘らずレベリングリンク6に対して常時一定の角度姿勢に保持される。
このため、垂直ポスト部材8はブーム5の起伏角度や屈伸アーム7の屈伸角度に拘らず車体2に対して常時一定の角度姿勢、すなわちポスト部8aが常時鉛直方向を向くように揺動制御され、作業台10はブーム5の起伏角度および屈伸アーム7の屈伸角度の如何に拘わらず常時水平な状態に保持される。またポスト部8aには車体2に設けられた図示しないバッテリにより駆動される首振りモータ55が取り付けられており、このモータ55を駆動させることにより作業台10をポスト部8aの周りに旋回動(首振動)させることができるようになっている。
作業台10にはブーム5の起伏動等および屈伸アーム7を屈伸動させるための操作を行うための上部操作装置11aが配設されており、作業台10に搭乗する作業者は上部操作装置11aの操作レバーを操作することによってブーム5を自由に起伏動、旋回動、伸縮動させ、屈伸アーム7を屈伸動させて作業台10を所望もしくは任意の高所位置に移動させることができるように構成されている。
ブーム5を旋回動させる旋回モータ51、起伏動させる起伏シリンダ52、伸縮動させる伸縮シリンダ53および屈伸アーム7を屈伸動させる屈伸シリンダ54の作動は、上部操作装置11aからの操作信号に基いて、車体2に配設されたエンジンENGの駆動力を伝達させて駆動する後述する油圧ポンプPから吐出する作動油の給排制御をすることにより行われる。この給排制御は油圧ユニット50内の旋回コントロールバルブ、起伏コントロールバルブ、伸縮コントロールバルブおよび屈伸コントロールバルブからなる図示しない各コントロールバルブの開度を制御することで行われる。
このように構成された高所作業車1における動力伝達機構について以下に説明する。図3および図4に示すように、アクセルペダル22の踏み込み量に応じたエンジンENGの回転数の制御をコントロールユニット40により行い、エンジンENGの駆動力をトランスミッションTMを介して走行装置60に伝達させて車体2を走行させるとともに、屈伸アーム7等の作業装置を作動させるときにはエンジンENGの駆動力を後述するPTO(パワーテイクオフ)機構25を介して油圧ユニット50にも伝達させている。
エンジンENGの駆動力はトランスミッションTM内の図示しないクラッチを介してプロペラシャフトPSに伝わり、さらに図示しないディファレンシャル機構および図示しない左右のドライブシャフトを介して左右の後輪3bに伝達され、高所作業車1を走行させる。また、トランスミッションTMはいわゆるマニュアル・トランスミッションであり、運転キャビン2a内の図示しないクラッチペダルを踏み込んでシフトレバー26を操作することでニュートラル(中立状態)、Low、2ndあるいは後進等の各速度段に設定できる。
エンジンENGにはエンジンENGの駆動力を取り出し状態または切り離し状態にすることが可能で、取り出した駆動力を油圧ユニット50に伝達するためのPTO機構25が設けられている。PTO機構25には例えば電磁クラッチ25aが内蔵されており、運転キャビン2aに設けられオン・オフの切り替え操作が可能なPTOスイッチ21をオン操作して電磁クラッチを係合させエンジンENGの駆動力を油圧ユニット50に伝達させるように構成されている。この油圧ユニット50は、車体2上に構成された屈伸アーム7等の作業装置に作動油を供給する油圧供給源であり、油圧ユニット50内の油圧ポンプPから吐出する作動油によって屈伸シリンダ54等の作動制御が行われる。
運転キャビン2a内に配設されたアクセルペダル22はポテンショメータ22aを装備し、当該ポテンショメータによりアクセルペダル22の踏み込み量に応じたアクセル信号をコントロールユニット40に出力してエンジンENGのスロットル開度制御や燃料供給制御を行い、エンジン制御回路43によりエンジンENGの回転数を変化させる。また、作業台10に設けられた上部操作装置11aにおけるアクセルスイッチ23も同様にポテンショメータ23aを装備しており、屈伸アーム7等の作業装置の作動操作をするときにはアクセルスイッチ23の操作に応じたアクセル信号をコントロールユニット40に出力してエンジンENGのスロットル開度制御や燃料供給制御を行い、エンジン制御回路43によりエンジンENGの回転数を変化させる。エンジンENGにはエンジンENGの回転数を検出してコントロールユニット40に検出信号を出力するエンジン回転センサ24が設けられている。
また、PTOスイッチ21をオン操作したときに、アクセルペダル22を大きく踏み込んでも予め設定した上限値をエンジンENGの回転数が超えないようにエンジンENGの回転数の制御を行う必要があるため、高所作業車1には以下に示すようなエンジンENGの回転数の制御を行うための安全装置70が設けられている。
図3に示すように、安全装置70におけるコントロールユニット40は、エンジンENGの回転駆動が可能なエンジンENGの回転数の上限値をエンジン許容回転数としてこれを予め設定して記憶させる上限値記憶回路41と、エンジン回転センサ24により検出されたエンジンENGの回転数と上限値記憶回路41に記憶されたエンジン許容回転数とを比較してエンジンENGが検出された回転数で回転駆動が可能かどうかを判定する判定回路42と、アクセルペダル22からのアクセル信号に拘らず、判定回路42による判定に基いてエンジンENGのスロットル開度制御や燃料供給制御を行うことで、エンジンENGの回転数が上限値を超えるのを規制するエンジン制御回路43とを有している。
PTOスイッチ21をオン操作したとき、すなわちエンジンENGの駆動力が油圧ユニット50側への取り出し状態になっているときには、PTOスイッチ21がコントロールユニット40に操作信号を出力する。コントロールユニット40がPTOスイッチ21からの操作信号を受信すると、エンジンENGの回転数が上限値を超えようとした場合は、アクセルペダル22を大きく踏み込んでもエンジンENGの回転数が当該上限値を超えないようにコントロールユニット40によりエンジンENGの回転数が制御される。
このため、PTOスイッチ21がオン操作されることでエンジンENGの駆動力が油圧ユニット50に伝達されて動力取り出し状態(作業状態)になっている場合は、エンジンENGの回転数を低回転に抑えて車体2を走行させるとともに屈伸アーム7等の作業装置を作動させて高所作業を行うことができる。
次に、本発明に係る高所作業車の安全装置70を用いた高所作業の一例について図5および図6を用いて説明する。高所作業車1の通常の走行状態においては、PTOスイッチ21はオフの状態で、運転キャビン2a内の図示しない運転手がトランスミッションTMのシフトレバー26を走行可能な各走行段に設定する。このときエンジンENGの駆動力は油圧ユニット50に伝達されずに屈伸アーム7等の作業装置に対して切り離されている。
作業現場において、高所作業車1の走行を停止させた状態でジャッキ装置31を張り出して車体2を持ち上げ支持し、屈伸アーム7等を作動させて高所作業を行うときは、トランスミッションTMのシフトレバー26をニュートラルな状態(中立状態)に操作してエンジンENGの駆動力を走行装置60に対して切り離し状態にした上で、PTOスイッチ21をオン操作する。そして、下部操作装置11bを操作してジャッキ装置31の張り出しを行ったり、作業台10に搭乗している作業者が作業台10上のアクセルスイッチ23を含む操作装置11を操作して屈伸アーム7を起仰等させる作業を行う。屈伸アーム7の起仰等の操作を終えた後は、PTOスイッチ21を再びオフの側に操作して作業装置に対してエンジンENGの駆動力を切り離した状態にして高所作業を行う。
一方、図6に示すように高所作業車1を走行させながら高所作業を行うには、高所作業車1が作業現場に到着した後に作業者Hは作業台10に搭乗し、ジャッキ装置31が張り出されて接地していない状態(車体2に格納された状態)で、運転キャビン2a内の図示しない運転手が高所作業車1を操舵して低速走行させる。このとき運転手が運転キャビン2aに設けられたPTOスイッチ21をオン操作して、エンジンENGの駆動力を油圧ユニット50に伝達させることで屈伸アーム7等の作業装置を作動させることが可能な動力取り出し状態にする。
作業者Hは作業台10に設けられたアクセルスイッチ23を含む操作装置11を操作して屈伸アーム7を起仰させ、図の鎖線で示すような架空線D近傍の所望高所位置まで作業台10を移動させる。そしてPTOスイッチ21はオン作動の側にしたまま高所作業車1を低速走行させながら高所作業を開始する。
このときエンジンENGの駆動力の取り出し状態になっているので、作業者Hは高所作業を続けながら屈伸アーム7を屈伸動させ作業者Hの作業が行い易いような所望の位置に作業台10を移動させて作業台10の高さを調整することができる。またこのとき運転手が誤ってアクセルペダル22を大きく踏み込んでもエンジン制御回路43によってエンジンENGの回転数が上限値以下に抑えられているので車体2が急加速することはなく、作業者Hの安全が確保される。
ここで、本発明に係る高所作業車の安全装置の第2の実施の形態について図7から図10を参照して説明する。本実施例においては、第1の実施の形態と相違する部分を中心に説明する。
図7に本実施例に係る安全装置を備えた高所作業車の一例を示している。この高所作業車100は、運転キャビン2aと走行用前後輪3a,3bを有するトラック車両をベースとして構成され、後輪3bを駆動させることで走行可能である。
この車両の車体2上に図示しない旋回モータにより駆動されて水平旋回自在となった旋回台4が配設され、旋回台4には起伏シリンダ52により起伏自在となったブーム5が枢結されている。ブーム5は、旋回台5に枢結された基端ブーム5a内に中間ブーム5bおよび先端ブーム5cを入れ子式に組み合わされて構成され、図示しない内蔵の伸縮シリンダにより全体が伸縮自在となっている。以下、旋回モータ、起伏シリンダ52および伸縮シリンダを合わせて「ブームアクチュエータ54」、と称して説明する。先端ブーム5cの先端部には上下方向に揺動自在に支持部材35が取り付けられ、この支持部材35の上に首振り装置36を介して作業台10が水平旋回(首振動)自在に取り付けられている。なお、先端ブーム5cと支持部材35との間にはレベリング装置(図示せず)が配設されており、このレベリング装置によりブーム5の起伏に拘わらず作業台10が常に水平に保持される。また、車体2上にはブーム5が全縮状態に載置されて格納されるためのブーム受け20が設けられている。
作業台10には、作業台10に搭乗した作業者が高所作業を行うときに作業台10の移動操作をするための上部操作装置11aが設けられている。上部操作装置11aのブーム操作レバーを操作すると当該操作レバーから操作信号が出力され、旋回台4の旋回動、ブーム5の起伏および伸縮動、作業台10の首振動を行わせて作業台10を所望もしくは任意の位置に移動させ、高所作業を行うことができる。また、車体2の後端部には、後述するジャッキ装置31の作動操作をするための下部操作装置11bが設けられている。下部操作装置11bの操作レバーを操作すると当該操作レバーから操作信号が出力され、ジャッキ装置31を車体2の下方に張り出させて接地させた状態で高所作業を行うことができる。
このようにして高所作業を行うときに、前後輪3a,3bのみによっては車体2を安定支持するのが難しいため、車体2の前後左右の四箇所にジャッキ装置31が設けられている。ここで、図8を合わせて参照して、車体2の左側前部に配設されたジャッキ装置31を例に、ジャッキ装置31周辺を詳しく説明する。図8に示すように、このジャッキ装置31は、車体2の左右方向に延設されたアウトリガボックス2bに向かって伸縮自在に挿入されたアウトリガビーム32と、アウトリガビーム32の先端にアウトリガビーム32に対して垂直に取り付けられたアウトリガジャッキ33とから構成されている。車体2とアウトリガビーム32の内側先端との間にはアウトリガシリンダ34が取り付けられており、このアウトリガシリンダ34の伸縮作動によってアウトリガビーム32の全体が伸縮動される。なお、このアウトリガシリンダ34のピストンロッド34aの先端はアウトリガビーム32の先端内側に枢結され、シリンダチューブ34bの基端側は、ここでは図示していないが車体2に枢結されている。
また、アウトリガジャッキ33は、アウトリガビーム32の先端に車体2の下方に向かって延びて取り付けられ下面が開口した四角柱状の中空ボックス部材からなるアウターポスト16と、このアウターポスト16にこのアウターポスト16の下方に向かって伸縮自在に挿入された四角柱状の中空ボックス部材からなるインナーポスト17とから構成され、さらに、インナーポスト17の下端に車両進行方向に回転自在なローラ18が取り付けられている。
アウターポスト16の内側上部とインナーポスト17の内側下部との間にはジャッキシリンダ19が取り付けられていて、このジャッキシリンダ19のピストンロッド(図示せず)の先端はインナーポスト17の下端内側に枢結されており、シリンダチューブ19bの上端はアウターポスト16の上端内側に枢結されている。また、インナーポスト17の下端にはローラ支持ブラケット17aが接合されており、ローラ支持ブラケット17aによりローラ18が回転自在に支持される。
このように構成されたアウトリガジャッキ33は、車体2に設けられた図示しない油圧ポンプからの作動油がアウトリガシリンダ34に供給されてこれが伸縮作動すると、アウトリガビーム32が車体2に対して伸縮動し、アウトリガジャッキ33が車体2に対して張出方向(図中に矢印Hで示す方向)もしくは引込方向に移動される。一方、ジャッキシリンダ19に同じく油圧ポンプからの作動油が供給されてこれが伸縮作動すると、インナーポスト17がアウターポスト16に対して上下方向に伸縮動する。そして、高所作業時には、車体2の前後左右四箇所のアウトリガビーム32を車体2の側方へ(矢印H方向へ)伸長させた状態でジャッキシリンダ19により四箇所のインナーポスト17を車体2の下方へ伸長させ、さらに、ローラ18を接地させることで、車体2の前後左右四箇所のアウトリガジャッキ33により車体2を安定支持することができる。
以上のように構成されたジャッキ装置31およびブーム5の作動制御は、図9に示すように、ブームアクチュエータ54、アウトリガシリンダ34およびジャッキシリンダ19にそれぞれ対応して設けられた油圧ユニット50内の各制御バルブ51,52,53が、車体2に配設されたエンジンの駆動力が伝達されて駆動することが可能な油圧ポンプPから吐出する作動油を給排制御することで行われる。
そして、アウトリガシリンダ34およびジャッキシリンダ19に対応する各制御バルブ52,53による作動油の給排制御は、車体2の後端部に設けられた下部操作装置11bの操作レバーを操作することによって行われる。すなわち、この下部操作装置11bの操作レバーを操作すると下部操作装置11bから操作信号が出力され、下部操作装置11bからの操作信号に基いて、制御バルブ51,52の作動制御をそれぞれ行い、アウトリガビーム32の車体側方への伸縮作動およびアウトリガジャッキ33の車体下方への伸縮作動をさせることができる。
一方、作業台10に備えられた上部操作装置11aの操作レバーを操作すると上部操作装置11aから操作信号が出力され、上部操作装置11aからの操作信号に基いて制御バルブ51の作動制御を行い、ブーム5の起伏動、旋回動、伸縮動をさせることができる。
また、図9に示すように、本実施例に係る安全装置80は、ブーム受け20に設けられブーム5が全縮状態にブーム受け20に載置されて格納されたことを検出して検出信号を出力するブーム格納検出器26、前後左右四箇所の各ジャッキ装置31の各々に設けられ各ローラ18が地面に接地したか否かを検出して検出信号を出力するジャッキ接地検出器27、後述するようにローラ18の代わりに接地板を取り付けて作業を行う場合に、作業モードを車両を停止させた状態でジャッキ装置31を張り出して作業を行う停止作業モードとジャッキ装置31を張り出さずに車両を低速走行させながら作業を行う走行作業モードとに切り替える操作をする作業モード選択スイッチ28のほか、第1の実施の形態と同様に上限値記憶回路41と、判定回路42と、エンジン制御回路43とからなるコントロールユニット40を有して構成される。
図10に示すように、ブーム受け20に設けられたブーム格納検出器26は、例えば、リミットスイッチで構成される。図10(a)に示すように、当該リミットスイッチのスイッチ部26aは、ブーム5がブーム受け20に載置されて格納された状態ではブーム5の下面に当接して押圧され、ブーム5がブーム受け20に載置されて格納された状態を示すオフ信号としての検出信号をコントロールユニット40に向けて出力する。一方、図10(b)に示すように、ブーム5がブーム受け20から浮上した状態では、リミットスイッチのスイッチ部26aは、ブーム5の下面からの押圧から解放されて上昇し、ブーム5がブーム受け20から浮上した状態を示すオン信号としての検出信号をコントロールユニット40に向けて出力する。
以上のように構成された安全装置80を装備した高所作業車100においては、ブーム5等を作動させて高所作業を行うために上部操作装置11aの操作レバーを操作してブーム5をブーム受け20から浮上させた状態では、ブーム5がブーム受け20から浮上した状態を示すオン信号としての検出信号が、ブーム格納検出器26からコントロールユニット40に向けて出力される。
そして、コントロールユニット40がブーム格納検出器26からの当該オン信号としての検出信号を受信している状態では、アクセルペダル22を大きく踏み込んでもエンジンENGの回転数が上限値記憶回路41に予め設定されて記憶された上限値を超えないように、コントロールユニット40によりエンジンENGの回転数が制御される。このため、ブーム5がブーム受け20から浮上している状態では、エンジンENGの回転数が低回転に抑えられ、車両を低速走行させながら安全に移動させることができる。
なお、エンジンENGの回転数の制御をブーム5が格納されているか否かの判断によるものには限らず、他の方法で行ってもよい。例えば、各ジャッキ装置31に設けられたローラ18が接地しているか否かの判断をする方法によりエンジンENGの回転数の制御を行ってもよい。
このような方法の場合においては、ジャッキ装置31を車体2の下方へ伸長させて車両を低速走行させた状態でブーム5等を作動させて高所作業を行うため、各ジャッキ装置31に設けられたローラ18を全て接地されたときに、ジャッキ接地検出器27からコントロールユニット40に向けて、全てのローラ18が接地されたことを示す検出信号が出力される。
そして、コントロールユニット40がジャッキ接地検出器27からの当該検出信号を受信するとアクセルペダル22を大きく踏み込んでもエンジンENGの回転数が上限値記憶回路41に予め設定されて記憶された上限値を超えないように、コントロールユニット40によりエンジンENGの回転数が制御される。このため、ローラ18が接地されている場合にはエンジンENGの回転数が低回転に抑えられ、車両を低速走行させることによって安全に移動させながら高所作業を行うことができる。
また、上記実施例では、アウトリガジャッキ33の下部に車両進行方向に回転自在なローラ18を有する高所作業車について説明したが、本発明に係る安全装置を装備した高所作業車は、ローラ18の代わりに各アウトリガジャッキ33の下部に取り付けられアウトリガジャッキ33を接地させたときの接地面圧を減少させるための接地板を有して構成される高所作業車であってもよい。
このように構成された高所作業車の場合においては、例えば、作業モード選択スイッチ28が走行モードの側に選択されていることをコントロールユニット40が判断したときに、エンジンENGの回転数の制御を行ってもよい。この作業モード選択スイッチ28は、運転キャビン2a内もしくは下部操作装置11bに設けられ、ブーム5等の作業装置を作動させて高所作業を行う場合に、車両を停止させた上でジャッキ装置31を張出接地させ車体2を持ち上げ支持した状態で高所作業を行う停止作業モードと、ジャッキ装置31を伸長させることなく車両を低速走行させながら高所作業を行う走行作業モードとに切り替える切替操作可能なスイッチである。
ジャッキ装置31を伸長させることなく車体2に格納させた状態で車両を低速走行させて高所作業を行うため、作業モード選択スイッチ28を走行作業モードの側に操作したときには、作業モード選択スイッチ28からコントロールユニット40に向けて走行作業モードの側に選択されたことを示す選択信号が出力される。
そして、コントロールユニット40が作業モード選択スイッチ28からの当該選択信号を受信すると、アクセルペダル22を大きく踏み込んでもエンジンENGの回転数が上限値記憶回路41に予め設定されて記憶された上限値を超えないように、コントロールユニット40によりエンジンENGの回転数が制御される。このため、作業モード選択スイッチ28が走行モードの側に選択されている場合には、エンジンENGの回転数が低回転に抑えられて車両が低速走行し、作業装置を作動させる作業者は安全に高所作業を行うことができる。
本発明に係る高所作業車の安全装置を備える高所作業車の斜視図である。
上記高所作業車のブームの先端部の構造を示す側断面図である。
上記高所作業車の作動制御を示すブロック図である。
上記高所作業車におけるエンジンの動力伝達機構を示すブロック図である。
上記高所作業車におけるエンジンの動力伝達機構の操作内容を示す図表である。
上記高所作業車を用いた高所作業を例示する説明図である。
本発明に係る高所作業車の安全装置を備える第2の実施の形態における高所作業車の正面図である。
上記高所作業車に配設されたジャッキ装置を部分的に断面して示す側面図である。
上記高所作業車の第2の実施の形態における作動制御を示すブロック図である。
上記高所作業車に設けられたブーム格納検出器の一例を示す図で、(a)はブームがブーム受けに載置されて格納された状態を、(b)はブームがブーム受けから浮上した状態を示す図である。
符号の説明
1 高所作業車(車両)
2 車体
4 旋回台(作業装置)
5 ブーム(作業装置)
5a 基端ブーム(作業装置)
5b 中間ブーム(作業装置)
5c 先端ブーム(作業装置)
7 屈伸アーム(作業装置)
10 作業台(作業装置)
18 ローラ(ジャッキ装置)
20 ブーム受け
21 PTOスイッチ(パワーテイクオフ作動手段)
22 アクセルペダル(アクセル操作手段)
24 エンジン回転センサ(エンジン回転検出手段)
25 PTO機構(パワーテイクオフ機構)
26 ブーム格納検出器(ブーム格納検出手段)
27 ジャッキ接地検出器(ジャッキ接地検出手段)
28 作業モード選択スイッチ(作業モード選択手段)
31 ジャッキ装置(作業装置)
32 アウトリガビーム(ジャッキ装置)
33 アウトリガジャッキ(ジャッキ装置)
40 コントロールユニット(制御手段)
43 エンジン制御回路(エンジン制御手段)
70 安全装置
80 安全装置
100 高所作業車(車両)
ENG エンジン