JP4666640B2 - 透光性酸化マグネシウム焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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(1)LiF、NaF等のフッ化物を添加してホットプレスする方法(例えば非特許文献1:G.D.Miles et al, Trans.Brit.Ceram.Soc. 66 319(1967))、
(2)MgO粉末を有機溶媒に分散し、再仮焼して焼結性を改善する方法(例えば特許文献1:特開昭51-80313)等が挙げられる。また焼結助剤を添加する方法としては、
(3)溶液状のアルミニウム化合物を添加する方法(特許文献2:特開昭59-50068)、
(4)SiO2と微量のB2O3を添加する方法(特許文献3:特開2000-281428)、
(5)酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化ゲルマニウムを0.01〜0.5wt%添加し、不活性雰囲気で焼成する方法(特許文献4:特開昭48-2883)等が開示されている。
(2)の手法では、充分な透光性の焼結体を得ることは非常に困難であると共に、MgOの緻密化を促進する有機溶剤の役割が未解明であり、粉末の製造履歴によっては有機溶媒の添加効果が発現しない場合がある。
(4)の手法では、B2O3が微量であってもマグネシアの高温での機械的強度を低下させる上、低融点物である硼素化合物によって焼成炉が激しく汚染されるという欠点がある。
(5)の手法においては、1700℃以上という比較的高温で焼成しているにもかかわらず、透光性も全透過率で80%程度であり、理論透過率(≒88%)には遠く及ばないという欠点がある。またこれら焼結助剤を添加する方法では、比表面積は記載されていないため詳細は不明であるが、非常に微細なマグネシア粉末を用いている。粉体の粒子径が小さくなるほど焼結活性は高くなるが、粒子間の摩擦力が大きくなり、均一な組織の成形体を作製することは難しくなる。また収縮が大きくなり、亀裂が発生しやすくなる等の欠点がある。
G.D.Miles et al, Trans.Brit.Ceram.Soc. 66 319(1967)
なお製造工程を管理すると、Sc含有量やAl含有量は成形体の段階から焼結体まで変わらないようにでき、他の不純物の含有量も成形体から焼結体までの過程で増さないようにできる。
実施例1
濃度0.4M(mol・dm-3)の高純度塩化マグネシウム溶液5Lを濃度0.4M(mol・dm-3)の炭酸ナトリウム溶液5Lに100ml/minの速さで滴下し、35℃で1日間養生を行った。養生後、濾過及び超純水を用いた水洗を数回繰り返した後、150℃の乾燥機に入れて1日間乾燥した。得られた塩基性炭酸マグネシウムをアルミナ製坩堝に入れ、1200℃で15時間仮焼することにより、比表面積10m2/gの高純度酸化マグネシウム原料粉末を作製した。
Sc及びAl添加量の異なるマグネシア成形体(成形密度は59%以上)を種々作製し、実施例1と同様に焼成して得た焼結体の添加剤含有量、平均粒子径、500nmでの直線透過率を求めた結果を表1に示す。この結果より、Sc含有量が30wtppm以下、若しくは2000wtppm以上では透過率85%以上の焼結体は得られないことが判る。またSc含有量が上記範囲内であったとしても、Al含有量が5wtppm未満、若しくは100wtppmを超えると同様であることが判る。
Sc含有量 Al含有量 平均粒子径 直線透過率
/wtppm /wtppm /μm /%
実施例2 32 8 7.0 85.0
実施例3 98 21 7.6 85.1
実施例4 490 52 10.2 85.4
実施例5 970 12 10.8 85.6
実施例6 970 98 13.1 86.2
実施例7 1950 21 16.0 85.3
比較例1 0 3 5.3 48.3
比較例2 16 94 8.1 65.4
比較例3 490 3 8.4 82.7
比較例4 970 110 13.5 78.7
比較例5 2080 52 16.8 77.9
比較例6 2080 110 18.3 64.5
純度99.9%以上のマグネシア原料粉末5gをアルミナ製乳鉢に入れ、原料に対してSc換算で1500wtppm相当のSc2O3微粉末及び、Al換算で40wtppm相当のAl2O3微粉末を添加し、混合、粉砕を行った。この粉末をφ15mmの金型に入れ、10MPaの圧力で一次成形を行った後、CIP成形により成形密度58.8%の成形体を作製した。この成形体を種々異なる焼成温度により、水素雰囲気中で5時間焼成を行った後、実施例1と同じ条件でHIP処理を行った。一次焼成温度及び一次焼結密度、HIP処理後の焼結体の平均粒子径と直線透過率を表2に示す。この結果より、一次焼成温度が1250℃以上で焼結密度が94%以上となり、HIP処理後に平均粒子径1μm以上20μm以下で、透過率85%以上の焼結体が得られる。しかし一次焼成温度が1250℃未満の場合、焼結密度は94%以下となり、HIP処理による気孔の除去が困難となって、透光性の焼結体は得られない。一方、一次焼成温度が1600℃を超える場合、焼結密度は94%以上となるが、結晶内部に気孔を含んだまま粒成長し、透過率が低下することが判る。
一次焼成温度 一次焼結密度 平均粒子径 直線透過率
/℃ /% /μm /%
実施例8 1250 94.6 1.9 85.1
実施例9 1350 96.9 5.6 85.6
実施例10 1450 98.5 10.2 86.2
実施例11 1550 99.3 15.9 85.7
実施例12 1600 99.5 18.8 85.4
比較例7 1225 93.2 1.5 ―
比較例8 1625 99.6 21.0 82.1
比較例9 1700 99.7 28.2 52.3
実施例1と同様にして高純度酸化マグネシウム原料粉末を作製した。この原料粉末に、原料に対してSc換算で500wtppm相当のSc2O3微粉末及び、Al換算で70wtppm相当のAl2O3微粉末を添加し、混合、粉砕を行った後に異なる圧力でCIP成形を行うことにより、成形密度の異なる成形体を作製した(比較例10〜12、実施例13)。また実施例1と同様の手順により、混合時間の異なるアルコールスラリーを調整し、成形密度の異なる成形体を作製した(実施例14〜16)。この成形体を大気中1350℃で3時間焼成した後、Arガス中1400℃、196MPaの圧力下で2時間保持してHIP処理を行った。成形密度と、焼結体の直線透過率を表3に示す。比較例10では、緻密に焼結している部分と焼結がほとんど進んでおらず気泡が残留している部分とが任意に連なった構造となっており、平均的な組織及び透過率の測定は不可能であった。成形密度の向上に伴い組織は次第に均一になり、これに伴い透過率も向上している。表3の結果より、透過率85%以上の透光性に優れた焼結体を得るためには、その成形密度が58%以上必要であることが判る。
成形密度/% 平均粒子径/μm 直線透過率/%
実施例13 58.5 9.3 85.4
実施例14 59.9 10.6 85.7
実施例15 61.3 11.2 86.2
実施例16 62.6 11.5 86.4
比較例10 49.0 ― ―
比較例11 52.6 5.6 40.8
比較例12 57.4 7.9 75.7
実施例8と同様にして成形、一次焼成した焼結体を、種々の温度、圧力、時間でHIP処理を施した。それぞれの平均粒子径と直線透過率を表4に示す。これらの結果より、処理温度1200℃以上1600℃以下及び、処理圧力49MPa以上196MPa以下の範囲外でHIP処理を行っても、その効果が発揮されないことが判る。更にHIP温度が高すぎる場合には、雰囲気焼成の場合と同様、Scの析出や異常粒成長を生じるため、逆に透過率は低下してしまうことが判る。
温度/℃×時間 圧力 平均粒子径 直線透過率
/hr /MPa /μm /%
実施例17 1200×1 196 1.7 85.0
実施例18 1250×1 196 2.1 85.1
実施例19 1250×2 49 2.5 85.3
実施例20 1300×0.5 196 4.1 85.5
実施例21 1450×0.5 196 10.8 85.6
実施例22 1450×2 98 11.9 86.0
実施例23 1600×0.5 196 18.6 86.4
実施例24 1600×0.5 98 18.1 86.2
実施例25 1600×2 49 19.2 86.4
比較例13 1150×1 196 1.4 69.2
比較例14 1300×1 40 3.7 81.8
比較例15 1600×1 40 18.7 82.5
比較例16 1650×1 196 23.8 75.1
比較例17 1700×0.5 196 30.5 64.6
Claims (2)
- Sc含有量が30wtppm以上2000wtppm以下、Al含有量が5wtppm以上100wtppm以下、Sc2O3とAl2O3とを除く純度が99.9%以上で、焼結体の平均粒子径は1μm以上20μm以下で、波長500nmから6.5μmの領域に渡っての直線透過率が1mm厚みで85%以上である、ことを特徴とする透光性酸化マグネシウム焼結体。
- Sc2O3とAl2O3とを除く純度が99.9%以上で、比表面積3〜15m2/gの酸化マグネシウム粉末とバインダーを用いて、成形密度が理論密度比58%以上、Sc含有量が30wtppm以上2000wtppm以下、Al含有量が5wtppm以上100wtppm以下の成形体を作製し、これを熱処理してバインダーを除去した後に、
還元雰囲気中、真空中もしくは大気中で、1250℃以上1600℃以下で、理論密度比94%以上となるように一次焼成し、
更にこの後、1200℃以上1600℃以下の温度及び49MPaから196MPaの圧力で、熱間静水加圧処理を施すことにより、
Sc含有量が30wtppm以上2000wtppm以下、Al含有量が5wtppm以上100wtppm以下、焼結体の平均粒子径は1μm以上20μm以下で、波長500nmから6.5μmの領域に渡っての直線透過率が1mm厚みで85%以上の焼結体とすることを特徴とする、透光性酸化マグネシウム焼結体の製造方法。
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