JP4666187B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に油圧駆動式の可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの空燃比制御に関する。
車両等に搭載されるエンジンにおいて、出力性能及び燃費性能を向上させるために、吸排気弁の開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング機構の採用が増加している。可変バルブタイミング機構は、例えばカムシャフトに備えられたベーン式のカム位相可変機構に圧油を給排して作動させ、カムの位相を進角あるいは遅角させる油圧駆動式が広く採用されている。このような油圧駆動式の可変バルブタイミング機構では、作動油温が低温状態である場合には、良好に作動できなくなる虞があるので作動規制せざるを得ない。そして、作動油温(エンジンの油温)は直接検出し難いので、作動油温の代わりにエンジンの冷却水温に基づいて、可変バルブタイミング機構を作動規制するか否かを判定することが行われている。
しかしながら、エンジンの構造上、作動油は冷却水と比較して熱し難く冷め難い状況下にある。したがって、例えば冷態始動時のように冷却水及び作動油の温度が低温状態から上昇する場合には、作動油に対して冷却水の温度の上昇スピードが早く、実際には作動油温が十分に上昇していないのに、冷却水温が上昇して可変バルブタイミング機構の作動を容認させてしまう虞がある。
そこで、このような問題を解決すべく、冷却水温と吸気温との差が所定値以上である場合には、可変バルブタイミング機構の作動を規制するか否かを判定するための冷却水温の閾値を変更する技術が開発されている(特許文献1)。
特開2002−349300号公報
上記特許文献1では、冷態始動時に可変バルブタイミング機構の誤作動を防止することが可能となる。しかしながら、エンジン停止から数時間経過した後にエンジンを再始動するような状況では、冷却水温が低下しているものの作動油温が高く維持されている場合がある。このような場合には、可変バルブタイミング機構が正常に作動可能であるにも拘わらず、冷却水温に基づいて可変バルブタイミング機構が作動規制されてしまう。可変バルブタイミング機構を備えたエンジンでは、通常、エンジン始動時には、排気性能を向上させるべく、可変バルブタイミング機構の作動を前提として、吸気の空燃比がリーンとなるように制御されている。しかしながら、上記のように可変バルブタイミング機構が規制されてしまうと、始動時の空燃比が許容以上に希薄となり、エンジンの始動が不安定となる虞がある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、エンジン始動時において可変バルブタイミング機構の作動規制時に、始動安定性を確保できるエンジンの制御装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、油圧駆動式の可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの制御装置において、エンジンの冷却水温を検出する水温検出手段と、吸気温を検出する吸気温検出手段と、エンジン始動時に水温検出手段により検出した冷却水温が、吸気温検出手段により検出した吸気温より所定値以上大きい場合に、エンジンが冷態始動したと判定し可変バルブタイミング機構を作動規制する規制手段と、エンジン始動時に検出した前記冷却水温が所定範囲内でありかつ規制手段によりエンジンが冷態始動したと判定され可変バルブタイミング機構が作動規制された場合に、エンジン始動時の空燃比を可変バルブタイミング機構が作動規制されない場合に設定される通常空燃比よりリッチにする制御手段とを備え、所定範囲は、エンジンの始動前の状態に拘わらず冷却水温度から推定される可変バルブタイミング機構の作動油温が作動保障温度以上となる第1の温度と、エンジンの始動前の状態に拘わらず作動油温が作動保障温度より低くなる第2の温度との間であることを特徴とする。
本発明の請求項1のエンジンの制御装置によれば、吸気温より所定値以上大きい場合には、可変バルブタイミング機構の作動が規制されるので、例えば冷態始動時のようにエンジンの冷却水温と油温との差が大きい場合に可変バルブタイミング機構の誤作動を防止することができる。
そして、始動時の冷却水温が所定範囲内でありかつ吸気温より所定値以上大きく可変バルブタイミング機構の作動が規制されたときに、空燃比を通常空燃比よりリッチにするので、エンジンの始動安定性を確保することができる。
また、冷却水温が第1の温度より高い場合には、エンジンの始動前の状態に拘わらず可変バルブタイミング機構の作動油温が作動保証温度以上となるので、可変バルブタイミング機構の規制が不要となる。したがって、制御手段により空燃比を通常空燃比よりリッチにする必要がなくなるので、燃費の低下を抑制することができる。
さらに、冷却水温が第2の温度より低い場合には、エンジンの始動前の状態に拘わらず可変バルブタイミング機構の作動油温が作動保証温度より低くなるので、常に空燃比をリッチ化することで、始動安定性を確保するための制御を確実にすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る制御装置を備えたエンジン1の概略構成図である。
図1に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、気筒毎に燃焼室3と連通する吸気ポート4及び排気ポート5が形成されているとともに、燃焼室3と吸気ポート4との間を開閉する吸気弁6、燃焼室3と排気ポート5との間を開閉する排気弁7が設けられている。吸気弁6及び排気弁7は、カムシャフト8、9により、エンジン1の回転駆動に伴って駆動される。
また、シリンダヘッド2には、吸気ポート4に連通するように吸気マニホールド11の一端が接続されているとともに、排気ポート5に連通するように排気マニホールド12の一端が接続されている。吸気マニホールド11の他端にはスロットル弁13を介して吸気導入用の吸気管15が接続されている。
更に、シリンダヘッド2には、電磁式の燃料噴射弁20が設けられており、該燃料噴射弁20は図示しない燃料タンクから供給された燃料を吸気ポート4内に噴射する機能を有する。
排気マニホールド12の他端には、排気管21が接続されており、この排気管21には三元触媒等の排気浄化触媒22を介してマフラー(図示せず)が接続されている。
エンジン1には、可変バルブタイミング機構が備えられている。可変バルブタイミング機構は、カムシャフト8、9の一端部に、ベーン式のカム位相可変機構30、31を備え、このカム位相可変機構30、31に圧油を給排することでカムの回転位置(位相)を進角あるいは遅角させて、吸気弁6及び排気弁7の開閉時期を可変制御する。
また、吸気マニホールド11には、吸気温を検出する吸気温センサ40が備えられている。エンジン1の冷却水の経路には、冷却水温を検出する水温センサ41が備えられている。
ECU(電子コントロールユニット:制御手段)50は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。ECU50の入力側には、図示しないアクセル開度センサやクランク角センサ等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。
一方、ECU50の出力側には、燃料噴射弁20やスロットル弁13の他に点火コイルを介した点火プラグ43等の各種出力デバイスが接続されており、これら各種出力デバイスには各種センサ類からの検出情報に基づきECU50において演算された燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期等がそれぞれ出力される。これにより、適正なタイミングでスロットル弁13が開閉操作されるとともに、吸気に適正量の燃料が適正なタイミングで噴射され、筒内に適正な空燃比の混合気が流入して、適正なタイミングで火花点火が実施される。また、ECU50は、可変バルブタイミング機構の制御部を備え、上記各種センサから入力した検出情報に基づき吸気弁6及び排気弁7の開閉時期を演算し、カム位相可変機構30、31を作動制御する。
ECU50は、特に、エンジン始動時において水温センサ41により検出した冷却水温(始動時水温CRWT)に基づいて、カム位相可変機構30、31の作動規制制御を行う(規制手段)。以下、図2及び図3を用いてカム位相可変機構30、31の作動規制制御について説明する。
図2は、始動時水温CRWTと推定油温との関係を示すマップである。図3は、始動時吸気温CRATと始動時水温CRWTとに基づくカム位相可変機構30、31の作動規制判定に用いられるマップである。
図2に示すように、始動時水温CRWTから推定油温(カム位相可変機構30、31の作動油温)が求められる。ECU50は、始動水温CRWTが制御許可上限水温PREWTH(第1の温度)より高い場合には、カム位相可変機構30、31の作動を常に許可する。制御許可上限水温PREWTHは、エンジン始動前の状態、例えば始動前のエンジンの停止時間に拘わらず、推定油温がカム位相可変機構30、31の作動が保証される作動保証温度To(例えば−10℃)以上となる冷却水の温度である(例えば35℃)。
また、ECU50は、始動時水温CRWTが制御許可下限水温PREWTL(第2の温度)より低い場合には、カム位相可変機構30、31を常に作動規制する。制御許可下限水温PREWTLは、エンジン始動前の状態に拘わらず推定油温が作動保証温度Toより常に低くなる冷却水の温度である(例えば−10℃)。
更に、ECU50は、図3に示すように、始動時水温CRWTが制御許可下限水温PREWTLと制御許可上限水温PREWTHとの間では、始動時水温CRWTから始動時吸気温CRATを減算した差が所定値T1以上である場合(図中斜線部)には、カム位相可変機構30、31を作動規制する。所定値T1は、冷却水温の検出のバラツキを考慮して例えば5度程度に設定すればよい。
図4は、エンジン始動時の空燃比設定要領を示すフローチャートである。本ルーチンは、エンジン1の始動時、詳しくはイグニッションスイッチのオン時にその都度実行される。
イグニッションスイッチをオンにして本ルーチンがスタートすると、まずステップS10では、水温センサ41により水温を始動時水温CRWTとして読み込む。また、吸気温センサ40により吸気温を始動時吸気温CRATとして読み込む。そして、ステップS20に進む。
ステップS20では、ステップS10で読み込んだ始動時水温CRWTから始動時吸気温CRATを減算し、その差が所定値T1以上であるか否かを判別する。CRWT−CRAT≧T1である場合には、ステップS30に進む。
ステップS30では、ステップS10で読み込んだ始動時水温CRWTが所定範囲内であるか、詳しくは制御許可下限水温PREWTL(第2の温度)以上かつ制御許可上限水温PREWH(第1の温度)以下であるか否かを判別する。PREWTL≦CRWT≦PREWHである場合には、ステップS40に進む。なお、ステップS20及びS30は、上述したカム位相可変機構30、31の作動規制が行われるか否かを判別するものである。
ステップS40では、エンジンを始動させる。そして、ステップS50に進む。
ステップS50では、吸気の空燃比をカム位相可変機構30、31の作動を前提として設定される通常空燃比PWに対してリッチ側に補正した値である空燃比PREPWに設定する。なお、空燃比のリッチ側への補正は、例えば燃料噴射量を増量補正するように燃料噴射弁43を制御したり、吸気量が絞られるようにスロットル弁13を制御したりして行えばよい。そしてステップS60に進む。
ステップS60では、空燃比をPREPWからPWに徐々に増加するように制御する。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS20においてCRWT−CRAT≧T1でない場合、またはステップS30においてPREWTL≦CRWT≦PREWHでない場合には、ステップS70に進む。
ステップS70では、空燃比を通常空燃比PWに設定する。そして、本ルーチンを終了する。
以上の制御により、本実施形態のECU50では、図3中斜線部に示すように、始動時水温CRWTと始動時吸気温CRATとの差がT1以上であり、かつ始動時水温CRWTが制御許可下限水温PREWTLと制御許可上限水温PREWTHとの間である場合に、カム位相可変機構30、31の作動が規制されるが、これとともに空燃比を通常空燃比PWからリッチ側に補正した空燃比PREPWに変更する。始動時水温CRWTと始動時吸気温CRATとの差がT1以上である場合、例えば、エンジン停止してから数時間経過後に始動した場合のように、冷却水温が完全に気温まで低下していない状態で始動した場合には、作動油温が高く維持されている可能性があり、このような場合では始動時水温CRWTと始動時吸気温CRATとの差に基づいてカム位相可変機構30、31が作動規制されてしまう。しかしながら、本実施形態では、カム位相可変機構30、31が作動規制されても、空燃比をリッチ側に補正することで、空燃比がリーンとなり過ぎることなく、始動安定性を確保することができる。
また、始動時水温CRWTが制御許可下限水温PREWTLより低い場合には、カム位相可変機構30、31が正常に作動できなくなる虞のある領域であるが、カム位相可変機構30、31の作動規制を前提にした空燃比とすることで、空燃比の制御を容易かつ確実にすることができる。また、始動時水温CRWTが制御許可上限水温PREWTHより高い場合には、エンジン始動前の状態に拘わらず作動油温がカム位相可変機構30、31の作動保証温度To以上となるので、カム位相可変機構30、31の作動が許容され、空燃比のリッチ側への補正を行う必要がなくなる。そして、本実施形態では、始動時水温CRWTが制御許可下限水温PREWTLと制御許可上限水温PREWTHとの間でのみ、始動時時水温CRWTと始動時吸気温CRATとの差に基づく空燃比のリッチ側への補正を行うことで、不要な空燃比のリッチ側への補正を抑制し、排気性能及び燃費性能を確保することができる。
なお、本実施形態では、CRWT−CRAT≧T1かつPREWTL≦CRWT≦PREWHである場合にカム位相可変機構30、31を作動規制し、該作動規制時に空燃比をリッチ側に補正しているが、本願発明はこれに限定するものではない。例えば、CRWT−CRAT≧Tである場合にカム位相可変機構30、31を作動規制し、該作動規制時にPREWTL≦CRWT≦PREWHとなった時点で空燃比をリッチ側に補正するものも本願発明に含まれる。このように、カム位相可変機構30、31の作動規制時に、始動時水温CRWTが制御許可下限水温PREWTLと制御許可上限水温PREWTHとの間である場合に空燃比をリッチ側に補正することで、カム位相可変機構30、31の作動規制時における始動安定性を確保することができる。
本発明に係る制御装置を備えたエンジンの概略構成図である。 始動時水温と推定油温との関係を示すマップである。 始動時吸気温と始動時水温とに基づくカム位相可変機構の作動規制判定用のマップである。 エンジン始動時の空燃比設定要領を示すフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン
13 スロットル弁
30、31 カム位相可変機構
40 吸気温センサ
41 水温センサ
43 燃料噴射弁
50 ECU

Claims (1)

  1. 油圧駆動式の可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの制御装置において、
    エンジンの冷却水温を検出する水温検出手段と、
    吸気温を検出する吸気温検出手段と、
    エンジン始動時に前記水温検出手段により検出した冷却水温が、前記吸気温検出手段により検出した吸気温より所定値以上大きい場合に、前記エンジンが冷態始動したと判定し前記可変バルブタイミング機構を作動規制する規制手段と、
    エンジン始動時に検出した前記冷却水温が所定範囲内でありかつ前記規制手段により前記エンジンが冷態始動したと判定され前記可変バルブタイミング機構が作動規制された場合に、エンジン始動時の空燃比を前記可変バルブタイミング機構が作動規制されない場合に設定される通常空燃比よりリッチにする制御手段とを備え
    前記所定範囲は、前記エンジンの始動前の状態に拘わらず前記冷却水温度から推定される前記可変バルブタイミング機構の作動油温が作動保障温度以上となる第1の温度と、前記エンジンの始動前の状態に拘わらず前記作動油温が前記作動保障温度より低くなる第2の温度との間であることを特徴とするエンジンの制御装置。
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