JP4663585B2 - 逆止弁 - Google Patents

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本発明は、車両空調装置に使用される可変容量圧縮機に装着される逆止弁に関するものである。
車両空調装置に使用される可変容量圧縮機に装着される逆止弁であって、有底筒状の弁体と、一端が流体入口を形成し他端が弁体の底壁外面に正対する弁座形成面に開口する弁孔と、弁体を摺動可能に収容し弁体底壁外面と弁座形成面との間に形成される筒状空間に連通する複数の流体出口が周側壁に形成された弁ハウジングと、弁体を弁座形成面へ向けて付勢するバネとを備え、弁体に働く上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じて開度が変化し、前記差圧が所定値以下になると閉弁する逆止弁が特許文献1、2に開示されている。
特許文献1、2の逆止弁は、冷房不要時(圧縮機最小吐出容量時)に車両空調装置への冷媒循環を遮断するものである。
特開平10−205446 特開平11−315785
逆止弁の開弁差圧は、圧縮機が最小吐出容量で運転されている時の吐出圧力と吸入圧力との差圧以上に通常設定されており、当該差圧は0.06〜0.1MPaである。開弁後には前記開弁差圧以上の圧力損失が逆止弁で発生し、圧縮機の性能悪化を招いている。
開弁後の圧力損失を小さくするのに逆止弁の弁体を閉弁方向へ付勢するバネのバネ定数を小さくするのが有効であるが、バネ定数を小さくするためにバネ長を大きくすると、逆止弁の軸長が長くなる。
逆止弁の閉弁時に、弁体の底壁外面と弁座との当接部は、当該当接部の外周縁近傍で、すなわち弁座の外周縁近傍でシールされている。従来の逆止弁では、弁座形成面全体が閉弁時に弁体底壁に当接する弁座を形成していたので、シール長が大きく閉弁時に漏れが発生する危険性が大きい。
0.06〜0.1MPaの開弁差圧を実現するために比較的大きなバネ付勢力を必用とするが、バネ付勢力が大きいと、弁体が弁座を叩く力が大きくなり、弁体と弁座との当接面が磨耗し閉弁時に漏れが発生する危険性が大きい。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、有底筒状の弁体と、一端が流体入口を形成し他端が弁体の底壁外面に正対する弁座形成面に開口する弁孔と、弁体を摺動可能に収容し弁体底壁外面と弁座形成面との間に形成される筒状空間に連通する複数の流体出口が周側壁に形成された弁ハウジングと、弁体を弁座形成面へ向けて付勢するバネとを備え、弁体に働く上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じて開度が変化し、前記差圧が所定値以下になると閉弁する逆止弁であって、従来の逆止弁が抱えていた問題点が解決された逆止弁を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、有底筒状の弁体と、一端が流体入口を形成し他端が弁体の底壁外面に正対する弁座形成面に開口する弁孔と、弁体を摺動可能に収容し弁体底壁外面と弁座形成面との間に形成される筒状空間に連通する複数の流体出口が周側壁に形成された弁ハウジングと、弁体を弁座形成面へ向けて付勢するバネとを備え、弁体に働く上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じて開度が変化し、前記差圧が所定値以下になると閉弁する逆止弁であって、弁座形成面の弁孔他端を取り巻く狭幅の環状部位が弁体の底壁外面に当接する弁座を形成し、弁体底壁外面が弁座に当接した時、弁座を除く弁座形成面と弁体底壁外面との間に隙間が形成されて当該隙間に下流側圧力が導入され、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時に弁孔他端と弁体の底壁外面との間に形成される環状流路面積をS1、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時の流体出口の総開口面積をS2とした時、S1>S2であり、開弁後の作動差圧が閉弁状態から開弁する際の開弁差圧よりも小さくなるように弁孔径及び流体出口の形状が設定されていることを特徴とする逆止弁を提供する。
本発明に係る逆止弁においては、弁座は弁孔の他端を取り巻く狭幅の環状面であり、弁体底壁外面が弁座に当接した時、弁体底壁外面の弁座を除く弁座形成面に対峙する部位には下流側圧力が作用するので、閉弁時に上流側圧力が作用するのは、弁体底壁外面の弁孔に対峙する部位と当該部位を取り巻く狭幅の環状部位のみである。従って、上流側圧力が閉弁時に弁体に印加する開弁方向の付勢力は特許文献1、2の逆止弁に比べて小さく、弁体を弁座形成面へ向けて付勢するバネとして、開弁差圧が従来と同じであっても、特許文献1、2の逆止弁に比べて付勢力が小さなバネを使用することができる。この結果、弁体が弁座を叩く力が従来に比べて小さくなり、弁体と弁座との当接面の磨耗が抑制され、閉弁時に漏れが発生する危険性が従来に比べて減少する。また、弁座形成面全体が閉弁時に弁体底壁に当接する弁座を形成していた従来の逆止弁にくらべて閉弁時のシール長が短いので、閉弁時に漏れが発生する危険性が従来に比べ減少する。
本発明においては、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時に弁孔他端と弁体の底壁外面との間に形成される環状流路面積をS1、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時の流体出口の総開口面積をS2とした時、S1>S2であり、開弁後の作動差圧が閉弁状態から開弁する際の開弁差圧よりも小さくなるように弁孔径及び流体出口の形状が設定されている。
S1>S2であれば、流体出口が流量を規制するので、開弁後には弁体の底壁外面全体に上流側圧力が作用する。この結果、開弁後の逆止弁の作動差圧を従来に比べて低くすることが可能になり、逆止弁で発生する圧力損失を従来に比べて低減させ、開弁後の圧縮機性能の悪化を防止することが可能になる。開弁後の作動差圧が閉弁状態から開弁する際の開弁差圧よりも小さくなるので、運転中の圧縮機性能が改善される。
本発明の好ましい態様においては、弁座の外周縁が囲む面積をS3、弁体の底壁外面の面積をS4とした時、S3/S4≦0.5である。
上記構成によれば、逆止弁の開弁後の作動差圧が開弁差圧の半分以下となり、開弁後の圧力損失が従来に比べて大幅に低減し、圧縮機性能が従来に比べて大幅に改善される。
本発明の好ましい態様においては、弁体底壁外面が弁座に当接した時に、弁座を除く弁座形成面と弁体底壁外面との間に形成された隙間が、弁体底壁外面と流体出口とで規定される開口を介して流体出口よりも下流側の空間に連通する。
上記構成によれば、弁体底壁外面が弁座に当接した時、弁体底壁外面の弁座を除く弁座形成面に対峙する部位に下流側圧力が確実に作用する。
本発明の好ましい態様においては、弁座は弁座形成面から弁体へ向けて突出する環状突起の端面である。
本発明の好ましい態様においては、弁体の底壁外面に環状突起が形成され、前記環状突起の端面に当接する弁座形成面の環状部位が弁座を形成する。
上記構成によれば、弁体底壁外面が弁座に当接した時に、弁体底壁外面と弁座を除く弁座形成面との間に隙間が確実に形成される。
本発明においては、上記何れかの逆止弁が吐出通路に配設されたクラッチレス可変容量圧縮機を提供する。
クラッチを介することなく外部駆動源に接続されたクラッチレス可変容量圧縮機の吐出通路に本発明に係る逆止弁を配設すると、冷房不要時に最小容量で圧縮機が運転されている時に車両空調装置への冷媒循環を確実に遮断することができ、且つ冷房時に運転中の圧縮機の性能悪化を招かない。
本発明に係る逆止弁においては、弁座は弁孔の他端を取り巻く狭幅の環状面であり、弁体底壁外面が弁座に当接した時、弁体底壁外面の弁座を除く弁座形成面に対峙する部位には下流側圧力が作用するので、閉弁時に上流側圧力が作用するのは、弁体底壁外面の弁孔に対峙する部位と当該部位を取り巻く狭幅の環状部位のみである。従って、上流側圧力が閉弁時に弁体に印加する開弁方向の付勢力は特許文献1、2の逆止弁に比べて小さく、弁体を弁座形成面へ向けて付勢するバネとして、開弁差圧が従来と同じであっても、特許文献1、2の逆止弁に比べて付勢力が小さなバネを使用することができる。この結果、弁体が弁座を叩く力が従来に比べて小さくなり、弁体と弁座との当接面の磨耗が抑制され、閉弁時に漏れが発生する危険性が従来に比べて減少する。また、弁座形成面全体が閉弁時に弁体底壁に当接する弁座を形成していた従来の逆止弁にくらべて閉弁時のシール長が短いので、閉弁時に漏れが発生する危険性が従来に比べ減少する。
本発明においては、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時に弁孔他端と弁体の底壁外面との間に形成される環状流路面積をS1、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時の流体出口の総開口面積をS2とした時、S1>S2であり、開弁後の作動差圧が閉弁状態から開弁する際の開弁差圧よりも小さくなるように弁孔径及び流体出口の形状が設定されている。
S1>S2であれば、流体出口が流量を規制するので、開弁後には弁体の底壁外面全体に上流側圧力が作用する。この結果、開弁後の逆止弁の作動差圧を従来に比べて低くすることが可能になり、逆止弁で発生する圧力損失を従来に比べて低減させ、開弁後の圧縮機性能の悪化を防止することが可能になる。開弁後の作動差圧が閉弁状態から開弁する際の開弁差圧よりも小さくなるので、運転中の圧縮機性能が改善される。
本発明の実施例に係る逆止弁を説明する。
図1に示すように、可変容量斜板式圧縮機100は、複数のシリンダボア101aを備えたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられたフロントハウジング102と、バルブプレート103を介してシリンダブロック101の他端に設けられたリアハウジング104とを備えている。
シリンダブロック101とフロントハウジング102とによって画成されるクランク室105内を横断して、駆動軸106が配設されている。駆動軸106は斜板107に挿通されている。斜板107は、駆動軸106に固定されたロータ108と連結部109を介して結合し、駆動軸106により傾角可変に支持されている。ロータ108と斜板107との間に、斜板107を最小傾角へ向けて付勢するコイルバネ110が配設されている。斜板107を挟んでコイルバネ110の反対側に、最小傾角状態にある斜板107を傾角増加方向へ向けて付勢するコイルバネ111が配設されている。
駆動軸106の一端はフロントハウジング102のボス部102aを貫通してハウジング外まで延在しており、電磁クラッチを介することなく、図示しない動力伝達装置を介して図示しない車両エンジンに直結している。駆動軸106とボス部102aとの間に軸封装置112が配設されている。
駆動軸106は、ベアリング113、114、115、116によりラジアル方向及びスラスト方向に支持されている。
シリンダボア101a内に、ピストン117が配設され、ピストン117の一端部の窪み117a内に収容された一対のシュー118が斜板107の外周部を相対摺動可能に挟持している。駆動軸106の回転は、斜板107とシュー118とを介してピストン117の往復動に変換される。
リアハウジング104には、吸入室119と吐出室120とが形成されている。吸入室119は、バルブプレート103に形成された連通孔103aと図示しない吸入弁とを介してシリンダボア101aに連通し、吐出室120は図示しない吐出弁とバルブプレート103に形成された連通孔103bとを介してシリンダボア101aに連通している。吸入室119は吸入ポート104aを介して図示しない車両空調装置の蒸発器に接続している。
フロントハウジング102、シリンダブロック101、バルブプレート103、リアハウジング104は、協働して、駆動軸106、ロータ108、連結部109、斜板107、シュー118、ピストン117、シリンダボア101a、吸入弁、吐出弁等で形成される圧縮機構を収容するハウジングを形成している。
シリンダブロック101の外側にマフラ121が配設されている。マフラ121は、シリンダブロック101とは別体の有底筒状の蓋部材122を、シリンダブロック101の外面に立設した筒状壁101bにシール部材を介して接合することにより、形成されている。蓋部材122に、吐出ポート122aが形成されている。吐出ポート122aは図示しない車両空調装置の凝縮器に接続している。
マフラ121を吐出室120に連通させる連通路123が、シリンダブロック101とバルブプレート103とリアハウジング104とに亙って形成されている。マフラ121と連通路123とは、吐出室120と吐出ポート122aとの間で延在する吐出通路を形成しており、マフラ121は当該吐出通路の途上に配設された拡張空間を形成している。
フロントハウジング102、シリンダブロック101、バルブプレート103、リアハウジング104は図示しないガスケットを介して隣接し、複数の通しボルトを用いて一体に組付けられている。
マフラ121の入口を開閉する逆止弁200がマフラ121内に配設されている。
図2、3に示すように、逆止弁200は、有底筒状の弁体201と、弁座形成体202とを備えている。弁座形成体202は、弁体201の底壁外面201aに正対する弁座形成面202aと、一端が流体入口を形成し他端が弁座形成面202aに開口する弁孔202bとを有している。弁座形成面202aの弁孔他端を取り巻く狭幅の環状部位が、弁体201へ向けて突出し、当該環状突起の端面が閉弁時に弁体201の底壁外面に当接する弁座202cを形成している。逆止弁200は更に、弁体201を弁座形成面202aへ向けて付勢するバネ203と、弁座形成体202に嵌合固定されて弁体201を摺動可能に収容すると共にバネ203を収容する有頂筒状の弁ハウジング204とを備えている。弁ハウジング204の周側壁には、弁体201の底壁外面と弁座形成面202aとの間に形成される円筒状空間に連通する複数の流体出口204aが形成され、弁ハウジング204の頂壁には小径孔204bが形成されている。弁孔202bの一端が形成する流体入口は連通路123のマフラ側端部に対峙しており、複数の流体出口孔204aは、周方向に互いに間隔を隔てて配設されて、マフラ121に対峙している。弁体201の底壁外面が弁座202cに当接した時に、弁座202cを除く弁座形成面202aと弁体201の底壁外面との間に形成された隙間206が、流体出口204aの弁座形成面202aに近接する部位204aaを介して、流体出口204aよりも下流側のマフラ内部空間に連通する。
弁座形成体202はフランジ部202dを有している。フランジ部202dと弁ハウジング204の嵌合固定部に形成されたフランジ部204cとに挟まれた周溝にOリング205が収容されている。フランジ部202dが連通路123のマフラ側端部に形成された拡径部に嵌入し、且つ蓋部材122の解放端の一部が形成する押え部122bと連通路123のマフラ側端部に形成された拡径部の段部とでフランジ部202dとフランジ部204cとが挟持されることにより、逆止弁200はシリンダブロック101に固定されている。
図4に示すように、流体出口204aは、弁座202c側端部を頂点の一つとする弁座202c側に凸の三角形と、三角形の底辺を一辺とする矩形とを組み合わせた形状を有している。
弁体201の底壁外面が弁座202cから所定リフト量L離間した時に弁座202cに開口する弁孔202bの他端と弁体201の底壁外面との間に形成される環状流路面積をS1(S1=πdL d:弁孔径、L:リフト量)とし、弁体201の底壁外面が弁座202cから所定リフト量L離間した時の流体出口204aの総開口面積をS2(S2=SL1+SL2+SL3+・・・+SLn)とした時、S1>S2になるように部材の形状寸法が設定されており、弁座202cの外周縁が囲む面積をS3、弁体201の底壁外面の面積をS4とした時、S3/S4≦0.5となるように部材の形状寸法が設定されている。
リアハウジング104に容量制御弁300が取り付けられている。容量制御弁300は、吐出室120とクランク室105との間の連通路124の開度を調整し、クランク室105への吐出冷媒ガスの導入量を制御する。クランク室105内の冷媒ガスは、ベアリング115、116と駆動軸106との間の隙間と、シリンダブロック101に形成された空間125と、バルブプレート103に形成されたオリフィス孔103cとを介して吸入室119へ流入する。
容量制御弁300により、クランク室105の内圧を可変制御して、可変容量斜板式圧縮機100の吐出容量を可変制御し、連通路126を介して容量制御弁300の感圧室へ導入される吸入室119の内圧を所定値に維持することができる。容量制御弁300は、外部信号に基づいて内蔵するソレノイドへの通電量を調整し、吸入室119の内圧が所定値になるように、可変容量斜板式圧縮機100の吐出容量を可変制御し、また内蔵するソレノイドへの通電をOFFすることにより連通路124を強制開放して、可変容量斜板式圧縮機100の吐出容量を最小に制御する。
逆止弁200の作動を説明する。
車両エンジン作動状態で車両空調装置非作動の場合、容量制御弁300のソレノイドには電流は流れず、連通路124は強制開放され、可変容量斜板式圧縮機100の吐出容量は最小になっている。バネ203に付勢された弁体201が弁座202cに当接して弁孔202bを閉じており、逆止弁200はマフラ121の入口を閉じている。従って、車両エンジンに直結した可変容量斜板式圧縮機100は最小吐出容量で運転されているが、車両空調装置への冷媒循環は遮断されている。この結果、不要な空調が行なわれる事態の発生が防止される。
最小吐出容量でシリンダボア101aから吐出室120へ吐出された冷媒ガスは、容量制御弁300を含む吐出室120とクランク室105との間の連通路124と、クランク室105と、ベアリング115、116と駆動軸106との間の隙間と、空間125と、オリフィス孔103cと、吸入室119と、連通孔103aとを通ってシリンダボア101aに戻る内部循環回路を循環する。
車両空調装置を作動させると、容量制御弁300のソレノイドに電流が流れ、連通路124が遮断される。クランク室105の内圧が低下して吸入室119の内圧と同等になり、斜板107の傾角が増加し、ピストン117のストロークが増加する。吐出室120の内圧が増加し、逆止弁の弁体201に働く上流側圧力と下流側圧力との差圧が所定値を超えると、弁体201が弁座202cから離座して弁孔202bを開放し、逆止弁200はマフラ121の入口を開放する。吐出室120が連通路123と逆止弁200とを介してマフラ121に連通し、冷媒ガスは吐出ポート122aを通って車両空調装置へ循環する。
逆止弁200の開弁時には、弁体201に働く上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じて、逆止弁200の開度、すなわち流体出口204aの総開口面積S2が変化する。
外部信号に基づいて容量制御弁300のソレノイドへの通電量が適正に制御され、可変容量斜板式圧縮機100の吐出容量が適正に制御される。
逆止弁200においては、弁座202cは弁孔202bの他端を取り巻く狭幅の環状面であり、弁体201の底壁外面が弁座202cに当接した時に、弁体201の底壁外面の弁座202cを除く弁座形成面202aに対峙する部位には流体出口204aの弁座形成面202aに近接する部位204aaを介して下流側圧力が作用するので、閉弁時に上流側圧力が作用するのは、弁体201の底壁外面の弁孔202bに対峙する部位と当該部位を取り巻く弁座202cに対峙する狭幅の環状部位のみである。従って、上流側圧力が閉弁時に弁体201に印加する開弁方向の付勢力は特許文献1、2の逆止弁に比べて小さく、弁体201を弁座形成面202aへ向けて付勢するバネ203として、開弁差圧が従来と同じであっても、特許文献1、2の逆止弁に比べて付勢力が小さなバネを使用することができる。この結果、弁体201が弁座202cを叩く力が従来に比べて小さくなり、弁体201と弁座202cとの当接面の磨耗が抑制され、閉弁時に漏れが発生する危険性が従来に比べて減少する。また、弁座形成面全体が閉弁時に弁体底壁に当接する弁座を形成していた従来の逆止弁に比べて閉弁時のシール長が短いので、閉弁時に漏れが発生する危険性が従来に比べ減少する。
逆止弁200においては、弁体201の底壁外面が弁座202cから所定リフト量L離間した時に弁座202cに開口する弁孔202bの他端と弁体201の底壁外面との間に形成される環状流路面積をS1とし、弁体201の底壁外面が弁座202cから所定リフト量L離間した時の流体出口204aの総開口面積をS2とした時、S1>S2になるように部材の形状寸法が設定されているので、開弁時に流体出口204aで流量が規制される。この結果、開弁後は弁体201の底壁外面全体に上流側圧力が作用するので、逆止弁200の作動差圧△P2は△P2=(f+k・L)/S4と考えて良い。ここで、fは閉弁時のバネ203の付勢力であり、kはバネ203のバネ定数であり、Lは弁体201のリフト量であり、S4は弁体201の底壁外面の面積である。逆止弁200の開弁差圧△P1は△P1=f/S3と考えて良い。ここでS3は閉弁時に弁体201の底壁外面が上流側圧力を受圧する受圧面積であり、弁座202cの外周縁が囲む面積である。従来の逆止弁の作動差圧△P2’は△P2’=(f+k・L)/S3であり、S4>S3なので、△P2=(f+k・L)/S4<(f+k・L)/S3=△P2’となり、逆止弁200で発生する圧力損失を従来に比べて低減させ、開弁後の圧縮機性能の悪化を防止することが可能になる。
逆止弁200においては、弁座202cの外周縁が囲む面積をS3、弁体201の底壁外面の面積をS4とした時、S3/S4≦0.5となるように部材の形状寸法が設定されていので、△P2=(f+k・L)/S4<(f+k・L)/(2・S3)=△P1/2+k・L/(2・S3)となる。バネ203のバネ定数kを小さな値にするとk・L/(2・S3)が無視可能な小さな値になる。この結果、△P2<△P1/2、すなわち開弁後の逆止弁200の作動差圧△P2は開弁差圧△P1の1/2以下となり、開弁後の逆止弁200の圧力損失が従来に比べて大幅に低減し、運転中の圧縮機性能が従来に比べて大幅に改善される。
逆止弁200においては、弁体201の底壁外面が弁座202cに当接した時、弁座202cを除く弁座形成面202aと弁体201の底壁外面との間に形成された隙間206が、流体出口204aの弁座形成面202aに近接する部位204aaを介して、流体出口204aよりも下流側のマフラ内部空間に連通するので、弁体201の底壁外面が弁座202cに当接した時に、弁体201の底壁外面の弁座202cを除く弁座形成面202aに対峙する部位に下流側圧力が確実に作用する。
逆止弁200においては、弁座形成面202aの弁孔他端を取り巻く狭幅の環状部位が、弁201体へ向けて突出し、当該環状突起の端面が閉弁時に弁体201の底壁外面に当接する弁座202cを形成しているので、弁体201の底壁外面が弁座202cに当接した時に、弁体201の底壁外面と弁座202cを除く弁座形成面202aとの間に隙間206が確実に形成される。
弁座形成面202aの弁孔他端を取り巻く狭幅の環状部位を、弁201体へ向けて突出させ、当該環状突起の端面を閉弁時に弁体201の底壁外面に当接する弁座202cとするのに代えて、図5に示すように、弁体201の底壁外面201aに環状突起201bを形成し、環状突起201bの端面に当接する弁座形成面202aの環状部位を弁座202cとしても良い。弁座形成面202aの弁孔他端を取り巻く狭幅の環状部位を、弁201体へ向けて突出させ、当該環状突起の端面を閉弁時に弁体201の底壁外面に当接する弁座202cとする場合と同様の作用効果が得られる。
弁体201、弁座形成体202、弁ハウジング204の断面形状は円形に限定されない。
流体出口204aの形状は、S2<S1の関係を満足するものであれば、どのようなものでも良い。
弁孔202bの弁座202cとの繋ぎ部を斜めにカットし或いはR加工しても良い。
弁体201の底壁外面或いは弁座202cに斜面を形成して弁体201と弁座202cとの接触状態を面接触から線接触に変更しても良い。
弁体201、弁座形成体202、弁ハウジング204の素材として、アルミニウム、黄銅、ステンレス鋼等の金属、樹脂を利用可能である。弁体201と弁座形成体202とを異種材料としても良い。
本発明に係る逆止弁は、ベーン式圧縮機、スクロール式圧縮機、揺動板式圧縮機等、圧縮機全般に利用可能である。またクラッチを備える可変容量圧縮機や、モータ駆動の可変容量圧縮機にも利用可能である。
本発明に係る逆止弁を、可変容量圧縮機の吸入通路に配設し、或いは冷凍回路の途上に配設することも可能である。
本発明に係る逆止弁は、冷媒として現状のR134aに代えて、CO2やR152aを使用する圧縮機にも利用可能である。
本発明に係る逆止弁は、車両空調装置以外の冷凍装置に使用される圧縮機にも利用可能である。
本発明の実施例に係る逆止弁を備える可変容量斜板式圧縮機の断面図である。 図1の部分拡大図である。 本発明の実施例に係る逆止弁の断面図である。(a)は開弁状態を示し、(b)は閉弁状態を示す。(c)は(b)の部分拡大図である。 本発明の実施例に係る逆止弁の開弁時の、弁孔他端と弁体の底壁外面との間に形成される環状流路面積S1と、流体出口の総開口面積S2との関係を示す図である。(a)は環状流路面積S1を説明する弁体の斜視図であり、(b)は流体出口の総開口面積S2を説明する弁ハウジングの側面図であり、(c)はS1とS2の関係を示す線図である。 本発明の他の実施例に係る逆止弁の断面図である。
符号の説明
100 可変容量斜板式圧縮機
105 クランク室
106 駆動軸
107 斜板
117 ピストン
119 吸入室
120 吐出室
200 逆止弁
300 容量制御弁

Claims (6)

  1. 有底筒状の弁体と、一端が流体入口を形成し他端が弁体の底壁外面に正対する弁座形成面に開口する弁孔と、弁体を摺動可能に収容し弁体底壁外面と弁座形成面との間に形成される筒状空間に連通する複数の流体出口が周側壁に形成された弁ハウジングと、弁体を弁座形成面へ向けて付勢するバネとを備え、弁体に働く上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じて開度が変化し、前記差圧が所定値以下になると閉弁する逆止弁であって、弁座形成面の弁孔他端を取り巻く狭幅の環状部位が弁体の底壁外面に当接する弁座を形成し、弁体底壁外面が弁座に当接した時、弁座を除く弁座形成面と弁体底壁外面との間に隙間が形成されて当該隙間に下流側圧力が導入され、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時に弁孔他端と弁体の底壁外面との間に形成される環状流路面積をS1、弁体の底壁外面が弁座から所定リフト量離間した時の流体出口の総開口面積をS2とした時、S1>S2であり、開弁後の作動差圧が閉弁状態から開弁する際の開弁差圧よりも小さくなるように弁孔径及び流体出口の形状が設定されていることを特徴とする逆止弁。
  2. 弁座の外周縁が囲む面積をS3、弁体の底壁外面の面積をS4とした時、S3/S4≦0.5であることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
  3. 弁体底壁外面が弁座に当接した時に、弁座を除く弁座形成面と弁体底壁外面との間に形成された隙間が、弁体底壁外面と流体出口とで規定される開口を介して流体出口よりも下流側の空間に連通することを特徴とする請求項1又は2に記載の逆止弁。
  4. 弁座は弁座形成面から弁体へ向けて突出する環状突起の端面であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の逆止弁。
  5. 弁体の底壁外面に環状突起が形成され、前記環状突起の端面に当接する弁座形成面の環状部位が弁座を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の逆止弁。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の逆止弁が吐出通路に配設されていることを特徴とするクラッチレス可変容量圧縮機。
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