JP4663186B2 - ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維およびその繊維を含有してなる繊維製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性プラスチックであるポリ乳酸を溶融紡糸法により繊維化する技術は知られており、特に、L−乳酸の含量の高いポリ−L−乳酸は、結晶性で融点が170〜180℃と、生分解性を有する熱可塑性プラスチックの中では比較的融点が高いために、衣料用あるいは産業用繊維として広く用いることできると考えられる。
【0003】
しかしながら、たとえば衣料用繊維として用いた場合、これを汎用のポリエステルやポリアミド等の合成繊維と同じようにアイロン掛けを行おうとすると、繊維が溶けることはなくても風合いが硬くなるという大きな問題点を有している。そのために、ポリ乳酸繊維からなる布帛にアイロン掛けを行うに際しては、特別に低い温度設定と細心の注意が必要とされ、衣料分野への展開が著しく制限されるという大きな問題点がある。
【0004】
また、織編物や不織布の製造・加工工程においては、熱処理ゾーンあるいは熱ロールを通す際に著しく収縮したり、ロールに絡みつく等のトラブルが生じやすい。
【0005】
ところで、ポリ乳酸からなり融点がさらに高いものとして、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が立体特異的に結合したポリ乳酸ステレオコンプレックスとその繊維が知られている。例えば、特開昭63−264913号公報には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のブレンド物から紡糸・延伸することにより製造したポリ乳酸繊維が開示されている。
【0006】
特開昭63−241024号公報には、ポリ(S−ラクチド)の部分と結合されたポリ(R−ラクチド)の部分からなり、その際に少なくとも1つの上記部分が共重合体の一部であるポリラクチド組成物が開示されている。
【0007】
また、特開平4−501109号公報には、ポリ(S−ラクチド)セグメントで相互嵌合されたポリ(R−ラクチド)セグメントを有してなる重合体組成物で、生物学的活性部分が保持されているドラッグ・デリバリー用の糸やデバイスが開示されている。
【0008】
さらに、特開2000−17163号公報には、ポリ−L−乳酸を主成分とする非晶性ポリマーとポリ−D−乳酸を主成分とする非晶性ポリマーを溶融ブレンドすることにより得られるポリ乳酸ステレオコンプレックス組成物が開示されている。
【0009】
上記した既に開示されているポリ乳酸ステレオコンプレックスの融点は、通常のポリ−L−乳酸よりも10〜60℃高い。しかし、これらは、融点が高いステレオコンプレックス繊維といえども、必ずしも既述のアイロン掛け特性は改善されるものではなく、実際に融点が従来のポリ−L−乳酸繊維よりも30℃以上高いにもかかわらず風合いがやはり硬くなることが観察されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するものであって、ポリ乳酸系繊維からなる織編物、不織布等の繊維製品の製造・加工工程で良好に熱処理を施すことが可能であり、また、ポリ乳酸系繊維からなる繊維製品にアイロン掛けする際に、風合いが硬化することがないようなポリ乳酸系繊維およびそれからなる繊維製品を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するために、ポリ乳酸系繊維のアイロン掛け時における風合いの硬化原因の徹底的究明と対策について、鋭意検討を行った。
【0012】
本発明者は、ポリ乳酸系繊維のアイロン掛け時等における風合いの硬化原因を究明する過程で、ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維において、まず高温結晶融解相の存在比率を高めることが重要であり、かつ、ポリ乳酸系繊維が熱処理により硬化する現象は、高温結晶融解相の融解開始温度と密接な関係があることを見出した。そして、ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維における高温結晶融解相の存在比率を特定範囲とし、かつ、高温結晶融解相の融解開始温度を特定温度とすることにより、課題を達成することができたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系重合体からなり、該重合体がステレオコンプレックスを形成しており、該重合体の高温結晶融解相が結晶相全体の90%以上を占め、かつ高温結晶融解相の融解開始温度が190℃以上であり、沸騰水における熱水収縮率が5%以下である耐熱性に優れたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を製造するに際し、前記ステレオコンプレックスを形成する重合体を紡糸することにより得られた繊維を延伸した後に、160〜190℃で熱セットを行うことを特徴とするポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維の製造方法を要旨とするものである。
【0014】
また、本発明は、前述の製造方法で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を含有してなることを特徴とする繊維製品を要旨とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維は、ポリ乳酸系重合体からなる繊維であって、該重合体がステレオコンプレックスを形成している。
【0016】
本発明において、ステレオコンプレックスを形成しているポリ乳酸系重合体は、L−乳酸を主成分とするポリ−L−乳酸と、D−乳酸を主成分とするポリ−D−乳酸とから構成される。
【0017】
ここで、L−乳酸を主成分とするポリ−L−乳酸とは、L−乳酸70〜100モル%とD−乳酸またはD−乳酸以外の共重合物0〜30モル%とから構成されるものであり、一方、D−乳酸を主成分とするポリ−D−乳酸とは、D−乳酸70〜100モル%とL−乳酸またはL−乳酸以外の共重合物0〜30モル%とから構成されているものをいう。
【0018】
また、D,L−乳酸以外の共重合モノマー成分としては、乳酸モノマーあるいはラクチドと共重合が可能なオキシ酸、ラクトン、ジカルボン酸、多価アルコール等を挙げることができる。また、これら成分から構成され、かつエステル結合形成性の官能基を有する各種ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等も挙げられる。
【0019】
次に、ポリ乳酸系重合体が形成しているステレオコンプレックスについて説明する。ポリ−L−乳酸は左巻きらせん構造を有するのに対し、ポリ−D−乳酸は右巻きらせん構造を有するところから、これらが分子レベルで均一に混合すると、2成分間に立体特異的な結合が生じ、ポリ−L−乳酸あるいはポリ−D−乳酸単独の場合に形成される結晶構造よりも緊密かつ強固な結晶構造を形成する。この結晶構造をステレオコンプレックスという。このステレオコンプレックスの形成により、ポリ乳酸系重合体の融点が高くなり、熱収縮率も低くなる。
【0020】
ポリ乳酸系重合体におけるステレオコンプレックスは、上記L−乳酸を主成分とするポリ−L−乳酸とD−乳酸を主成分とするポリ−D−乳酸を溶液状態あるいは溶融状態で混合して、これら2成分間に立体特異的な結合を生じさせることにより形成することができる。例えば、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をそれぞれ塩化メチレン、クロロホルム、塩化エタン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ブチロラクトン、トリオキサン等の溶剤に溶解して混合・攪拌後、溶剤を加熱・減圧下で除くことにより形成することができる。また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のチップをそれぞれ2軸エクストルーダーで混合溶融・混練することにより形成することができる。これら2成分の混合比率は、L−乳酸単位とD−乳酸単位が実質的に1対1になるように配合することが望ましい。
【0021】
本発明の繊維を構成するステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体は、示差走査熱分析を行った際にある特性を示すものであり、すなわち、高温結晶融解相が結晶相全体の90%以上を占め、かつ高温結晶融解相の融解開始温度が190℃以上である。
【0022】
図1に、本発明のステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体からなる繊維を、示差走査熱分析(DSC:Differntial Scanning Calorimetrey)を行った際の融解吸熱曲線(DSC曲線)を示す。融解吸熱曲線(a)において、吸熱ピークの熱量(結晶融解熱量)は、重合体の結晶相の量の多少を示し、この吸熱量は、図の斜線部の面積で表される。
【0023】
ステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体においては、構成する重合体成分種あるいは組成比、並びにそのステレオコンプレックスの調製条件、および形成状態に応じて、通常は少なくとも2つの吸熱ピークを示し、2つの結晶相が存在することを示す。1つは、ポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸のような個々のポリマー成分に固有の融点である165〜180℃に観測される低温結晶融解相(X)で、もう一つは、ステレオコンプレックスの形成に伴い認められる190〜230℃の高温結晶融解相(Y)である。
【0024】
高温結晶融解相および低温結晶融解相の相対的比率は、それぞれの結晶融解熱量の大きさ、すなわち、融解吸熱曲線(a)の2つの吸熱ピークで表される面積の大きさから算出することができる。したがって、結晶相全体に対する高温結晶融解相の比率は、下記式により求められる。
結晶相全体に対する高温結晶融解相の比率(%)=Y×100/(Y+X)
上式において、Y:高温結晶融解相の吸熱ピークで表される面積、X:低温結晶融解相の吸熱ピークで表される面積とする。
【0025】
結晶相全体に対する高温結晶融解相の比率が90%未満であると、この繊維からなる繊維製品にアイロン掛けを行った際に、繊維が軟化し一部融解を始めることがあり、繊維製品の風合いが硬くなり好ましくない。また、この繊維を用いて織編物や不織布等を製造・加工する際に、熱処理ゾーンや熱ロールを通す等の熱処理を行った際に、繊維が収縮したり、また、熱ロールに絡みついたりするというトラブルが生じやすくなるため、本発明の目的を達成することができず好ましくない。
【0026】
次に高温結晶融解相の融解開始温度についてであるが、これは、高温融解結晶相の吸熱ピークの開始(onset)温度であり、吸熱ピークの低温側のDSC曲線の傾きが最大の点で引いた接線と低温側のベースラインを高温側に延長した直線とが交差する点の温度をいう。より具体的には、パーキンエルマー社製パイリス(pyris)1を用い、昇温速度20℃/分で自動計測した場合に表示されるonset温度である。
【0027】
本発明の繊維を構成するステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体の高温結晶融解相の融解開始温度が、190℃未満であると、この繊維からなる繊維製品にアイロン掛けを行った際に、繊維が軟化し一部融解を始めることがあり、繊維製品の風合いが硬くなり好ましくない。また、この繊維を用いて織編物や不織布等を製造・加工する際に、熱処理ゾーンや熱ロールを通す等の熱処理を行った際に、繊維が収縮したり、また、熱ロールに絡みついたりするというトラブルが生じやすくなる。
【0028】
本発明においては、繊維を構成するステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体の高温結晶融解相の融解開始温度が、190℃以上であるが、好ましくは210℃以上である。
【0029】
なお、本発明の繊維を構成するポリ乳酸系重合体において、結晶相全体に対する高温結晶融解相の比率が100%であり、融解開始温度が190℃以上である高温結晶融解相のみからなるものであってもよい。
【0030】
本発明のポリ乳酸系重合体からなる繊維の熱水収縮率は、5%以下であることが必要である。熱水収縮率が5%を超えると、このような熱水収縮率の高い繊維を用いて、織編物や不織布等の繊維製品とする場合、加工工程で繊維が収縮して、風合いが劣るものとなったり、また、繊維製品とした後、アイロン掛けを行う際、特にスチームを付与してアイロン掛けを行う際に、その熱により繊維が収縮することにより、繊維製品の組織・構造の適度な遊び(目ずれ)を失ってドレープ性等が低下し、風合いが硬くなる。
【0031】
本発明の熱水収縮率は、沸騰水(100℃)中に50mmの長さの繊維を15分間浸せきし、浸漬後の長さ(N(mm))を測定し、下記式により算出する。
【0032】
熱水収縮率(%)=((50−N)/50)×100
【0033】
上記した本発明のステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体からなる繊維は、次のようにして得ることができる。
【0034】
ステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体において、結晶相全体に対する高温結晶融解相の比率は、構成対裳体であるL−乳酸とD−乳酸の組成比により、また、ステレオコンプレックスの調製・形成条件に依存する。L−乳酸とD−乳酸との組成比を1対1に近くし、また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を溶液状態あるいは溶融状態で分子レベルで均一に混合させることにより高温結晶融解相の比率を高めることができる。
【0035】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を溶液状態あるいは溶融状態で混合する、あるいは、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のチップをそれぞれ2軸エクストルーダーで混合溶融・混練することによりステレオコンプレックスを形成させ、その後、溶融紡糸あるいは、溶剤紡糸により繊維を形成する。
【0036】
次いで、得られた繊維に、高温結晶融解相の融解開始温度よりも低い温度で、かつ結晶化を促進する温度域、すなわち160℃〜190℃で熱セットする。この熱セットにより結晶化を促進させて、高温結晶融解相の比率を高め、高温結晶融解相の融解開始温度を向上させ、かつ沸騰水における熱水収縮率を抑えることができる。この熱セットは、ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維の延伸後に行う。このような高温で熱セットを行うことは、ステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体が、190〜230℃のような高温の結晶融点を有するため可能であり、従来の単なるポリ−L−乳酸のような融点が170℃程度のものでは不可能なことであった。
【0037】
上記本発明のポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維は、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、ショートカットファイバー、ステープル等の形態で用いることができる。
【0038】
また、ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維はその断面形態が丸断面であっても異型断面であっても良いし中空であっても非中空でもよい。さらに、その繊度は特に限定されるものでなく、用途による要求特性により決めればよいが、0.5〜200デシテックス程度のものとする。また、繊維の形態は、捲縮を付与したものであってもよい。クッション材等の用途には、重合度や共重合率の異なる2種のステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体からなるコンジュゲートタイプの立体捲縮を有するものが好ましい。ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維には、通常のポリエステル繊維用の乾式不織布用油剤、湿式不織布用油剤あるいは紡績用油剤を付与しても特に滑りの良いシリコン系あるいは非シリコン系の易滑性油剤を付与してもよい。
【0039】
また、本発明の繊維製品は、上記繊維からなる、織物、編物、網物、紡績糸、組み紐、ショートカットファイバーを水中に分散して抄造した湿式抄造シート、スパンボンド不織布、短繊維であるステープルをカード機等で開繊してステープルが堆積してなるウエブ、前記ウエブをニードリング加工,スパンレース加工を施して繊維同士が交絡してなる短繊維不織布、前記ウエブを熱エンボス装置,熱圧着装置,熱風処理装置等を用いた熱処理を施して、繊維同士を熱接着させた熱接着不織布等である。
【0040】
短繊維不織布をクッション材やフィルターとして用いる場合には、厚さ5mm以上とするのが好ましい。厚さの上限は、特に限定しないが、製造設備、製造コスト、使い易さの点から150mm程度が好ましい。また、クッション材の密度は、0.01g/cm3以上とするのが好ましい。不織布の厚さと密度を規制するには、ニードリング加工によるパンチ密度を適宜選択することや、(融点−5)℃程度の温度で熱圧縮することが挙げられる。
【0041】
繊維製品は、ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維のみからなるものであってもよいが、ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維と、木綿、毛、麻等の天然繊維、レーヨン、溶剤紡糸セルロール繊維等の再生繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維等とを混合して、混紡糸、混繊糸、混織編物、混綿不織布等とすることができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0043】
実施例1〜2、比較例1〜5
L−乳酸を主成分とする数平均分子量が72,000のポリ乳酸(L−乳酸単位:98.8%、D−乳酸単位:1.2%)と、D−乳酸を主成分とする数平均分子量が68,000のポリ乳酸(L−乳酸単位:1.4%、D−乳酸単位:98.6%)とを、2軸エクストルーダーを用い200〜230℃で約10分間溶融混練後、水中にストランド状に押し出しカッティングすることによりチップを作製した。
【0044】
次に、このチップを用いて225℃で紡糸速度3000m/分.で溶融紡糸して繊維を得、表1に示す温度下、延伸倍率で延伸を行い、表1に示す温度で仮撚り加工を施した。次いで、実施例1、実施例2については、165℃で熱セットを行った。
【0045】
得られた実施例1〜2、比較例1〜5の各種ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維の熱特性(高温結晶融解相比率、高温結晶融解相の融解開始温度、高温結晶融解相の融点)、製糸条件および下記方法にて評価したアイロン特性について、表1に示す。
【0046】
(熱特性)
パーキンエルマー社製パイリス(pyris)1を用い、昇温速度20℃/分で自動計測した場合のDSC曲線より求めた。
【0047】
(アイロン特性)
得られた実施例1〜2、比較例1〜5の各種ポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を、84デシテックス/36フィラメントのマルチフィラメントとし、このマルチフィラメントを用いて、針数270本の筒編機で製編して筒編サンプルを作成した。得られた筒編サンプル全体が均一に湿るように水を散布し、表面温度180℃に設定したアイロンにてアイロン掛けを施した後の風合いを、5人のパネラーにより以下の基準で評価した。
A:風合いの硬化もなく極めて良好である。
B:ほとんど風合いの硬化がなく、良好である。
C:明らかに風合いの硬化が認められる。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例6
L−乳酸を主体とするポリ乳酸(L−乳酸単位:99モル%、D−乳酸単位:1モル%、融点169℃、相対粘度(フェノールと四塩化エタンの等質量混合物を溶媒とし、試料濃度0.5g/dl、温度20℃で測定):1.885)からなるチップと、D−乳酸を主体とするポリ乳酸(L−乳酸単位:1モル%、D−乳酸単位:99モル%、融点168℃、相対粘度:1.901)からなるチップとを等質量混合し、攪拌しながら減圧乾燥した。
【0050】
得られた混合チップを通常の溶融紡糸装置を使用し、紡糸温度を235℃、総吐出量を313g/分として溶融紡糸した。紡出糸条を冷却した後引取速度1000m/分で引き取って未延伸繊維糸条を得た。得られた糸条を集束し、11万デシテックスのトウにして、延伸倍率2.9、延伸温度80℃で延伸し、160℃のヒートドラムで熱セットしてから、押し込み式クリンパを使用して捲縮を付与した後、長さ51mmに切断して、高温結晶融解相の比率99%、高温結晶融解相の融解開始温度206℃、高温結晶融解相の融点218℃、単糸繊度4.4デシテックス、熱水収縮率1.8%のポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を得た。
【0051】
得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を梳綿機に通した後、クロスラツパーで積層して目付120g/m2のウエブとした。さらにこのウエブに対し192パンチ/cm2 のパンチ密度でニードリング加工を行なって、厚さ2mmの実施例6の不織布を得た。
【0052】
得られた不織布を30cm×30cmに裁断し、これに表面温度170℃に設定したアイロンにてアイロン掛けを行ったところ、アイロン特性はAであり、風合いは良好であった。
【0053】
実施例7
実施例6において、L−乳酸を主体とするポリ乳酸(L−乳酸単位:95.5モル%、D−乳酸単位:4.5モル%、融点154℃、相対粘度:1.827)からなるチップと、D−乳酸を主体とするポリ乳酸(L−乳酸単位:6モル%、D−乳酸単位:94モル%、融点151℃、相対粘度:1.873)からなるチップとを等質量混合したこと以外は実施例6と同様にしてポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を作成した。
【0054】
得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維は、高温結晶融解相の比率92%、高温結晶融解相の融解開始温度196℃、融点205℃、単糸繊度4.4デシテックス、熱水収縮率2.6%であった。
【0055】
また、実施例6と同様して不織布を作成し、得られた不織布を実施例6と同様にしてアイロン掛けを行ったところ、アイロン特性はAであり、風合いは良好であった。
【0056】
実施例8
実施例6においてウエブの目付を50g/m2とし、ニードリング加工を行うことなく、200℃でエンボス加工したこと以外は実施例6と同様にして実施した。
【0057】
また、得られた不織布を実施例6と同様にしてアイロン掛けを行ったところ、アイロン特性はAであり、アイロン掛け後の風合いは良好であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明のポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維は、繊維を構成する重合体が、高温結晶融解相の存在比率が高く、かつ、高温結晶融解相の融解開始温度が190℃以上のもので、かつ沸騰水における熱水収縮率が5%以下であるので、この繊維からなる繊維製品にアイロン掛けを行う際に、アイロンの設定温度やアイロンの掛け方に細心の注意を払わなくともよく、また、設定温度180℃でアイロン掛けを行っても風合いが硬化することない。
【0059】
また、この繊維からなる織編物や不織布等の繊維製品における製造・加工工程で良好に熱処理を施すことが可能である。
【0060】
また、上記のような熱特性を有するものであるので、本発明のポリ乳酸ステレオコンプレクス繊維と他の天然繊維や合成繊維と混合して繊維製品を得ようとした際でも、良好に加工工程等で熱処理を施すことができ、また、得られた繊維製品に良好に180℃でアイロン掛けを行うことができる。
【0061】
したがって、熱に対して細心の注意を要しないため、本発明のポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維は、様々な分野に使用することが可能となり、繊維製品の一例である不織布の分野においては、アイロン掛けを行う衣料用芯地、高温の媒体を濾過するフィルター、高温洗濯や乾燥を行う肩パット、家具用詰め綿やベッド,敷布団,座布団,マット,炎天下や走行時エンジン廻りで温度の上昇する自動車・車両シート用クッション等のクッション材,天井材,パネル材,吸音材,防振材等に良好に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステレオコンプレックスを形成してなるポリ乳酸系重合体からなる繊維の融解吸熱曲線(DSC曲線)の例を示す。
【符号の説明】
a:融解吸熱曲線
X:低温結晶融解相
Y:高温結晶融解相
Claims (3)
- ポリ乳酸系重合体からなり、該重合体がステレオコンプレックスを形成しており、該重合体の高温結晶融解相が結晶相全体の90%以上を占め、かつ高温結晶融解相の融解開始温度が190℃以上であり、沸騰水における熱水収縮率が5%以下である耐熱性に優れたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を製造するに際し、前記ステレオコンプレックスを形成する重合体を紡糸することにより得られた繊維を延伸した後に、160〜190℃で熱セットを行うことを特徴とするポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維の製造方法。
- L−乳酸を主成分とするポリ−L−乳酸と、D−乳酸を主成分とするポリ−D−乳酸とから構成されているポリ乳酸系重合体を用いることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維を含有してなることを特徴とする繊維製品。
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JPH0781204B2 (ja) * | 1987-04-21 | 1995-08-30 | 株式会社バイオマテリアルユニバ−ス | ポリ乳酸繊維 |
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- 2001-09-28 JP JP2001301514A patent/JP4663186B2/ja not_active Expired - Lifetime
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