JP4661608B2 - 液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器 - Google Patents

液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器に関する。
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置の光変調手段として用いられる液晶装置は、一対の基板間の周縁部にシール材が配設され、その中央部に液晶が封止されて構成されている。その一対の基板の内面側には液晶に電圧を印加する電極が形成され、これら電極の内面側には非選択電圧印加時において液晶分子の配向を制御する配向膜が形成されている。このような構成によって液晶装置は、非選択電圧印加時と選択電圧印加時との液晶分子の配向変化に基づいて光源光を変調し、画像光を作製するようになっている。
ところで、前述した配向膜としては、側鎖アルキル基を付加したポリイミド等からなる高分子膜の表面に、ラビング処理を施したものが一般に用いられている。ラビング処理とは、柔らかい布からなるローラで高分子膜の表面を所定方向に擦ることにより、高分子を所定方向に配向させるものである。その配向性高分子と液晶分子との分子間相互作用により、配向性高分子に沿って液晶分子が配置されるので、非選択電圧印加時の液晶分子を所定方向に配向させることができるようになっている。また、側鎖アルキル基により、液晶分子にプレチルトを与えることができるようになっている。
しかしながら、このような有機配向膜を備えた液晶装置をプロジェクタの光変調手段として採用した場合、光源から照射される強い光や熱によって配向膜が次第に分解されるおそれがある。そして、長期間の使用後には、液晶分子を所望のプレチルト角に配列することができなくなるなど液晶分子の配向制御機能が低下し、液晶プロジェクタの表示品質が低下してしまうおそれがある。そこで、耐光性および耐熱性に優れた無機材料からなる配向膜の使用が提案されており、このような無機配向膜の製造方法としては、例えば斜方蒸着法による酸化珪素(SiO)膜の成膜が知られている(例えば、特許文献1又は2参照)。
特開昭55−142315号公報 特開昭59−188621号公報
上記特許文献1又は2に開示されたような斜方蒸着法により成膜された配向膜は、アモルファスの無機配向膜であって、無機配向膜の表面には分極した水酸基が多数存在しており、この水酸基が光照射によりF含有液晶から生成したFラジカルと反応して、フッ酸が生成する。このフッ酸は配向膜を腐蝕して、配向膜の表面形状が変化させる問題が生じる場合がある。また、このフッ酸は液晶の劣化も促進する。問題が生じる場合がある。また、このような液晶の劣化や配向膜の劣化は、当然に液晶装置の誤作動や表示不具合の一因となり、当該液晶装置の信頼性を低下させる要因となっている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、無機配向膜を備えた液晶装置において、当該配向膜の劣化や液晶の劣化を防止ないし抑制することで、信頼性の高い液晶装置を提供することを目的としている。また、本発明はそのような液晶装置の好適な製造方法について提供するとともに、該液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の液晶装置は、一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶装置であって、前記一対の基板の少なくとも一方の前記液晶層側には珪素酸化物からなる無機配向膜が設けられており、前記無機配向膜は、アモルファスの珪素酸化物からなる第1配向膜と、前記第1配向膜上に形成され結晶粒径2nm以下に結晶化された珪素酸化物からなる第2配向膜と、からなることを特徴とする。
本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶装置の製造方法であって、前記一対の基板の少なくとも一方の基板の作成工程において、基材上にアモルファスの珪素酸化物からなる無機材料膜を成膜する成膜工程と、前記無機材料膜にレーザー光を照射して、当該無機材料膜の表層部分のみを選択的に結晶化させ、アモルファスの珪素酸化物からなる第1配向膜と、前記第1配向膜上に形成され結晶粒径2nm以下に結晶化された珪素酸化物からなる第2配向膜とからなる無機配向膜を形成するレーザー光照射工程と、を含むことを特徴とする。
このような液晶装置によると、配向膜の劣化及び液晶の劣化を防止ないし抑制することが可能となる。具体的には、無機配向膜の表層をナノ結晶粒子層で構成しているため、当該結晶化された配向膜はフッ酸との反応がアモルファスの配向膜より遅い。また、表層において水酸基も少なくなる。したがって配向膜の表面形状変化の所要時間と液晶劣化の所要時間が長くなる。その結果、当該液晶装置の信頼性を向上させることが可能となるのである。また、本発明の液晶装置は、無機配向膜を用いているため耐湿性や耐光性は非常に優れたものとなっている。
上記液晶装置において、前記ナノ結晶粒子層は、粒径2nm以下のナノ結晶粒子からなるものとすることができる。ナノ結晶粒子の粒径が2nmを超えると、結晶界面で屈折が生じ、当該液晶装置の光学特性を低下させる場合がある。また、無機配向膜を結晶化させる際に、例えばレーザー光照射を行う場合には、粒径を大きくするために過度のレーザー光照射が必要となり、該過度のレーザー光照射は下地層(例えばITO等の電極)に対して悪影響(例えば抵抗率増大等)を及ぼす可能性があるため好ましくない。
また、上記液晶装置において、前記無機配向膜のうち、当該無機配向膜の膜厚の60%〜90%の厚さの表層が前記ナノ結晶粒子層であるものとすることができる。60%未満のものは実質的に製造が困難となる場合がある他、フッ酸腐蝕抑制効果を十分に実現できない場合がある。また、90%を超えると、結晶化の際に下地層(例えばITO等の電極)に対して特性低下(例えば抵抗率増大)等の悪影響を及ぼす場合がある。
なお、無機配向膜は例えば珪素酸化物の斜方蒸着膜で構成することができる。このような珪素酸化物からなる配向膜は、水を吸着することで当該珪素酸化物と水が反応してSiOHを生成し、劣化に繋がる場合がある。さらに生成したSiOHが液晶に溶け出し液晶層の光学特性を低下させる場合もあるため、本発明のようなナノ結晶粒子層を形成する効果が一層大きくなる。
次に、上記課題を解決するために、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶装置の製造方法であって、前記一対の基板の少なくとも一方の基板の作成工程において、基材上にアモルファスの無機材料膜を成膜する成膜工程と、前記無機材料膜にレーザー光を照射して、当該無機材料膜の表層にナノ結晶粒子層を形成するレーザー光照射工程と、を含むことを特徴とする。
このような方法によって、上記本発明の液晶装置を好適に製造することが可能となる。特に、レーザー光照射による結晶化工程は、加熱を伴わないため下地層に対して特性低下等の悪影響を及ぼすことがない。具体的には、例えば下地層にITO等の電極が配設された場合には抵抗率の増大を防止ないし抑制することができ、また下地層にTFT等のスイッチング素子が配設された場合には素子の破壊を防止ないし抑制することができるようになる。
上記製造方法において、前記成膜工程は無機材料(特にSiO)の斜方蒸着法を成膜法として採用することができる。これにより液晶分子にプレチルトを付与した状態で当該液晶分子を配向させることが可能となる。また、ラビング処理も必要ないため、ラビング筋等が視認される等の不具合も生じ難いものとなる。
また、上記製造方法において、前記レーザー光照射工程において、1パルス0.01J/cm〜0.25J/cmのエネルギー強度を有するレーザー光を照射するものとすることができる。このようなレーザー光照射により無機材料膜の表層を好適にナノ結晶化することができるようになる。なお、レーザーエネルギーは0.05J/cm〜0.15J/cm程度とすることが好ましい。レーザーエネルギーが0.01J/cm未満の場合は、結晶化が不十分となる場合があり、またレーザーエネルギーが0.25J/cm)を超えると、下地層の特性劣化を生じる場合がある。特に下地層としてITO等の電極を用いた場合には、当該電極の抵抗率が低下する不具合が生じる場合がある。
次に、上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、上述した本発明に係る液晶装置、あるいは上述した製造方法を用いて得られた液晶装置を備えることを特徴とする。このような電子機器は、配向膜劣化又は液晶劣化に起因する品質低下が確実に防止された液晶装置を備えているので、非常に信頼性の高いものとなる。
(液晶装置)
以下、本発明を詳しく説明する。まず、本発明における液晶装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態となる液晶装置60の概略構成を説明するためのTFTアレイ基板の平面図、図2は、液晶装置60の等価回路図、図3は、液晶装置の画素構成を示す説明図、図4は、液晶装置の断面構造の説明図であり、図3のA−A’線における矢視側断面図である。また、図5は、液晶装置60の一製造工程を示す説明図である。
図4に示すように本実施形態の液晶装置60は、互いに対向する一対の基板10、20間に液晶50を挟持してなるもので、一対の基板10、20の内面側(液晶層側)に無機配向膜16、22が設けられたものである。そして、特にこれら無機配向膜16、22の表層がナノ結晶粒子からなるナノ結晶粒子層として構成されていることを特徴としている。
液晶装置60の概略構成を説明すると、図1に示すように一対の基板10、20のうちの一方であるTFTアレイ基板(基板)10の中央には、画像作製領域101が形成されている。この画像作製領域101の周縁部にはシール材19が配設されており、これによって画像作製領域101には液晶50(図4参照)が封入されている。この液晶50は、TFTアレイ基板10上に液晶が直接塗布されて形成されたもので、シール材19には液晶の注入口が設けられていない、いわゆる封口レス構造となっているが、注入口を設けたシール材19を採用してもよい。このシール材19の外側には、後述する走査線に走査信号を供給する走査線駆動素子110と、後述するデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動素子120とが実装されている。これら駆動素子110、120から、TFTアレイ基板10の端部の接続端子79にかけて、配線76が引き廻されている。
一方、TFTアレイ基板10に貼り合わされる対向基板20(図4参照)には、共通電極21(図4参照)が形成されている。この共通電極21は、画像作製領域101のほぼ全域に形成されたもので、その四隅には基板間導通部70が設けられている。この基板間導通部70からは、接続端子79にかけて配線78が引き廻されている。
そして、外部から入力された各種信号が、接続端子79を介して画像作製領域101に供給されることにより、液晶装置が駆動されるようになっている。
液晶装置の前記画像作製領域101には、図2の等価回路図に示すように、これを構成すべく複数のドットがマトリクス状に配置されており、これら各ドットには、それぞれ画素電極9が形成されている。また、その画素電極9には、該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30が接続されている。また、このTFT素子30のソースにはデータ線6aが接続されている。各データ線6aには、前述したデータ線駆動素子から画像信号S1、S2、…、Snが供給されるようになっている。
また、TFT素子30のゲートには走査線3aが接続されている。走査線3aには、前述した走査線駆動素子から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。一方、TFT素子30のドレインには画素電極9が接続されている。そして、走査線3aから供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンにすると、データ線6aから供給された画像信号S1、S2、…、Snが、画素電極9を介して各ドットの液晶に所定のタイミングで書き込まれるようになっている。
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極9と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極9と容量線3bとの間に蓄積容量17が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光源光が変調されて、画像光が作製されるようになっている。
また、本実施形態の液晶装置では、図3の画素構成説明図に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITOという)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(破線9aによりその輪郭を示す)が、マトリクス状に配列形成されている。さらに、画素電極9の縦横の境界に沿って、データ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。本実施形態では、各画素電極9の形成された矩形領域がドットであり、マトリクス状に配置されたドットごとに表示を行うことが可能な構造になっている。
TFT素子30は、ポリシリコン膜等からなる半導体層1aを中心として形成されている。半導体層1aのソース領域(後述)には、コンタクトホール5を介して、データ線6aが接続されている。また、半導体層1aのドレイン領域(後述)には、コンタクトホール8を介して、画素電極9が接続されている。一方、半導体層1aにおける走査線3aとの対向部分には、チャネル領域1a’が形成されている。
また、この液晶装置は、図4の断面構造説明図に示すように、TFTアレイ基板10と、これに対向配置された対向基板20と、これらの間に挟持された液晶50とを主体として構成されている。TFTアレイ基板10は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体10A、およびその内側に形成されたTFT素子30や画素電極9、配向膜16などを主体として構成されている。一方の対向基板20は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20A、およびその内側に形成された共通電極21や配向膜22などを主体として構成されている。
TFTアレイ基板10の表面には、第1遮光膜11aおよび第1層間絶縁膜12が形成されている。そして、第1層間絶縁膜12の表面に半導体層1aが形成され、この半導体層1aを中心としてTFT素子30が形成されている。半導体層1aにおける走査線3aとの対向部分にはチャネル領域1a’が形成され、その両側にソース領域およびドレイン領域が形成されている。このTFT素子30はLDD(Lightly Doped Drain)構造を採用しているため、ソース領域およびドレイン領域に、それぞれ不純物濃度が相対的に高い高濃度領域と、相対的に低い低濃度領域(LDD領域)とが形成されている。すなわち、ソース領域には低濃度ソース領域1bと高濃度ソース領域1dとが形成され、ドレイン領域には低濃度ドレイン領域1cと高濃度ドレイン領域1eとが形成されている。
半導体層1aの表面には、ゲート絶縁膜2が形成されている。そして、ゲート絶縁膜2の表面に走査線3aが形成されて、チャネル領域1a’との対向部分がゲート電極を構成している。また、ゲート絶縁膜2および走査線3aの表面には、第2層間絶縁膜4が形成されている。そして、第2層間絶縁膜4の表面にデータ線6aが形成され、第2層間絶縁膜4に形成されたコンタクトホール5を介して、そのデータ線6aが高濃度ソース領域1dに接続されている。さらに、第2層間絶縁膜4およびデータ線6aの表面には、第3層間絶縁膜7が形成されている。そして、第3層間絶縁膜7の表面に画素電極9が形成され、第2層間絶縁膜4および第3層間絶縁膜7に形成されたコンタクトホール8を介して、その画素電極9が高濃度ドレイン領域1eに接続されている。さらに、画素電極9を覆うように無機配向膜16が形成され、非選択電圧印加時における液晶分子の配向が規制されるようになっている。
なお、本実施形態では、半導体層1aを延設して第1蓄積容量電極1fが形成されている。また、ゲート絶縁膜2を延設して誘電体膜が形成され、その表面に容量線3bが配置されて第2蓄積容量電極が形成されている。これらにより、前述した蓄積容量17が構成されている。また、TFT素子30の形成領域に対応する基板本体10Aの表面に、第1遮光膜11aが形成されている。第1遮光膜11aは、液晶装置に入射した光が、半導体層1aのチャネル領域1a’、低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1cに侵入することを防止するものである。
一方、対向基板20における基板本体20Aの表面には、第2遮光膜23が形成されている。第2遮光膜23は、液晶装置に入射した光が半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1c等に侵入するのを防止するものであり、平面視において半導体層1aと重なる領域に設けられている。また対向基板20の表面には、ほぼ全面にわたってITO等の導電体からなる共通電極21が形成されている。さらに、共通電極21の表面には無機配向膜22が形成され、非選択電圧印加時における液晶分子の配向が規制されるようになっている。
ここで、TFTアレイ基板10側の無機配向膜16、及び対向基板20側の無機配向膜22は、共に本発明の特徴的な構成要素となっている。すなわち、本発明においてこれら無機配向膜16、22は、前述したようにその表層がナノ結晶粒子からなるナノ結晶粒子層として構成されていることを特徴としている。この無機配向膜16,22の具体的構成について、配向膜16,22の断面構成が模式的に示された図5(c)を参照しつつ説明する。
図5(c)に示すように、無機配向膜16(22)は、配線や素子(図示略)等を形成した基板10A(20A)上に配設された電極9(21)上に形成されている。ここで、無機配向膜16(22)は、結晶質の異なる第1配向膜16a(22a)及び第2配向膜16b(22b)から構成されている。
第1配向膜16a(22a)は、アモルファスの珪素酸化物からなり、膜厚20nm〜200nm程度で構成されている。一方、当該無機配向膜16(22)の表層側(液晶層側)に配設された第2配向膜16b(22b)は、珪素酸化物のナノ結晶粒子で構成されたナノ結晶粒子層であって、膜厚12nm〜180nm程度で構成されている。なお、ナノ結晶粒子の粒径は2nm以下とされている。ナノ結晶粒子の粒径が2nmを超えると、結晶界面で屈折が生じ、当該液晶装置の光学特性を低下させる場合があるからである。また、アモルファスの無機材料膜を成膜した後、その表層を結晶化させて当該無機配向膜16(22)を形成するものとした場合に、例えば結晶化に際してレーザー光照射を行う場合には、2nm以上の粒径を確保するためには過度のレーザー光照射が必要となり、該過度のレーザー光照射は下地層(例えばITO等の電極)に対して悪影響(例えば抵抗率増大等)を及ぼす可能性があるため好ましくない。
このように本実施形態では、無機配向膜16(22)を珪素酸化物のアモルファス層からなる第1配向膜16a(22a)と同じく珪素酸化物のナノ結晶粒子層からなる第2配向膜16b(22b)で形成したが、珪素酸化物としては例えばSiOやSiO等とすることができる。また、珪素酸化物以外にもAl、ZnO、MgOやITO等の金属酸化物等により当該無機配向膜16(22)を構成することができ、この場合も、アモルファス層からなる第1配向膜16a(22a)と、ナノ結晶粒子層からなる第2配向膜16b(22b)とから構成することができる。
なお、両基板10、20の外側には、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素をドープした材料等からなる偏光板18、28が配置されている。なお、各偏光板18、28は、サファイヤガラスや水晶等の高熱伝導率材料からなる支持基板上に装着して、液晶装置60から離間配置することもできる。各偏光板18、28は、その吸収軸方向の直線偏光を吸収し、透過軸方向の直線偏光を透過する機能を有する。TFTアレイ基板10側の偏光板18は、その透過軸が配向膜16の配向規制方向と略一致するように配置され、対向基板20側の偏光板28は、その透過軸が配向膜22の配向規制方向と略一致するように配置されている。
液晶装置60は、対向基板20を光源側に向けて配置される。その光源光のうち偏光板28の透過軸と一致する直線偏光のみが偏光板28を透過して液晶装置60に入射する。非選択電圧印加時の液晶装置60では、基板に対して水平配向した液晶分子が液晶50の厚さ方向に約90°ねじれたらせん状に積層配置されている。そのため、液晶装置60に入射した直線偏光は、約90°旋光されて液晶装置60から出射する。この直線偏光は、偏光板18の透過軸と一致するため、偏光板18を透過する。したがって、非選択電圧印加時の液晶装置60では白表示が行われるようになっている(ノーマリーホワイトモード)。
また、選択電圧印加時の液晶装置60では、液晶分子が基板に対して垂直配向している。そのため、液晶装置60に入射した直線偏光は、旋光されることなく液晶装置60から出射する。この直線偏光は、偏光板18の透過軸と直交するため、偏光板18を透過しない。したがって、選択電圧印加時の液晶装置60では黒表示が行われるようになっている。
以上のような構成の液晶装置60は、配向膜16(22)が無機酸化物からなるため耐光性及び耐熱性に優れたものとなる。また、そのような無機配向膜16(22)の少なくとも表層をナノ結晶粒子層16b(22b)で構成しているため、当該結晶化された配向膜の表層は非常に安定で、他の化合物との吸着や反応が生じ難くなっている。具体的には、当該配向膜16(22)の表層において水酸基は存在しないため、配向膜が水等の極性基をもつ化合物を吸着することはなく、また無機配向膜自身が水等と反応することも生じない。その結果、そのような吸着物による当該配向膜16(22)の劣化や液晶の劣化が生じないこととなり、これにより当該液晶装置の信頼性が向上されている。
次に、液晶装置60の製造方法について図5及び図6を参照しつつ説明する。ただし、当該製造方法は配向膜16(22)の形成方法に特徴があるため、その他の素子や電極の形成方法は詳細な説明を省略する場合があるものとする。なお、図5は液晶装置60の製造工程のうちの基板作成工程を示す説明図、図6は配向膜の形成装置及び形成方法について模式的に示す説明図である。
まず、TFTアレイ基板10を作成する。
ここでは、ガラス等からなる透光性の基板10Aを用意し、これに第1遮光膜11a、第1層間絶縁膜12、半導体層1a、各種配線3a,3b,6a、絶縁膜4,7等を公知の方法で形成する。続いて、該半導体層1aや各種配線3a、絶縁膜7等を含む基板10A上に、スパッタ法若しくは蒸着法によりITOを成膜し、続いてマスクエッチングにより当該ITO膜をマトリクス状にパターニングして画素電極9とする。
その後、画素電極9上に配向膜16を形成する。ここでは、まず図5(a)に示すようにアモルファス層からなる無機材料膜(後に第1配向膜となる)16aを形成する(無機材料膜形成工程)。具体的には、配向性能を付与するべく無機材料のSiOを斜方蒸着法により画素電極9上に厚さ20nm〜200nmに成膜するものとしている。
次に、図5(b)に示すように、形成した無機材料膜16aに対してレーザー光Lを照射して当該無機材料膜16aの表層をナノ結晶化させる(レーザー光照射工程)。具体的には、エキシマレーザー光を、1パルスあたり0.05J/cm〜0.15J/cmとして照射するものしている。このような照射条件により、図5(c)に示すように、無機材料膜16aの表層の12nm〜180nmが粒径2nm以下にナノ結晶粒子化され、ナノ結晶粒子層(第2配向膜)16bが形成されることとなる。
以上の工程を経て、TFTアレイ基板10が作成される。なお、上記のようなレーザー光照射条件によれば、結晶化が不十分となることもなく、また下地のITOの抵抗率増大等の特性劣化を生じることもなくなる。また、無機配向膜16の形成には、配向性能を付与することができるのであれば、斜方蒸着法の他、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタ法等のスパッタ法、ゾルゲル法、自己組織化成膜法などを採用することができる。
一方、TFTアレイ基板10とは別に対向基板20を作成する。
ここでは、まずガラス等からなる透光性の基板20Aを用意し、これに遮光膜23をクロム等の遮光性材料を用いて所定パターンに形成する。そして、基板20Aの全面にITOをスパッタ法若しくは蒸着法により成膜して対向電極21とする。
その後、対向電極21上に配向膜22を形成する。ここでは、上記配向膜16と同様に、図5に示した無機材料膜形成工程及びレーザー光照射工程を経て、下層側(電極側)がアモルファス層(第1配向膜)22a、上層側(液晶層側)がナノ結晶粒子層(第2配向膜)22bよりなる無機配向膜22を形成するものとしている。以上のような方法により対向基板20が作成される。
そして、上述したTFTアレイ基板10に矩形枠状のシール材19を描画するとともに、当該シール材19で囲まれた領域の内側に液晶を滴下させ、さらに上記作成した対向基板20をシール材19を介して貼り合わせ、所定の配線等を接続して本実施の形態の液晶装置100を得るものとしている。
このような方法によれば、上記実施形態の液晶装置60を好適に製造することが可能となる。特に、レーザー光照射による結晶化工程は、加熱を伴わないため下地層の電極9(21)に対して抵抗率増大等の不具合を引き起こすことがない。また、下地層にTFTを備えたTFTアレイ基板10側では、当該TFTの破壊を防止ないし抑制することができるようになる。
なお、図6(a)は、斜方蒸着法による成膜を行う成膜装置の一例としての、蒸着装置503である。この蒸着装置503には、無機材料の蒸気流を発生させる蒸着源512と、無機材料膜形成前の前記基板10(20)を保持する保持機構514とが備えられている。この蒸着装置503において基板10(20)は、蒸着源512と基板10(20)の基板面重心位置とを結ぶ基準線X1と、基板10(20)の被成膜面と垂直に交わる直線X2とのなす角θ0が所定値となるように、保持機構514によって保持されている。したがって、図6(a)及び図6(b)において矢印Y1によって示される方向(蒸着源512で発生された無機材料の進行方向、すなわち無機材料が飛ぶ方向)と、基板10(20)において膜が形成される基板面(被成膜面)とのなす角度θ1は、角度θ0を変化させることによって調整可能となっている。なお、この角度θ1は、配向膜16(22)において配向制御を行うための表面形状効果が得られるように、柱状構造物を基板面上に配列させるための所定値に設定されている。ただし、本実施形態では斜方蒸着を行うことから、角度θ1は90°未満となっている。
このような蒸着装置によって斜方蒸着を行うと、図6(b)中矢印で示すように、蒸着源512から昇華した無機材料が基板10(20)に対して略一定の入射角度(傾斜角度)で連続入射する。そうすると、基板10(20)には無機材料が斜め柱状に堆積し、これによって無機材料(珪素酸化物)の柱状構造体が形成される。そして、この柱状構造体が基板10(20)の表面に無数に形成されることにより、配向性を有した無機材料膜が形成されることとなる。このように柱状構造体が所定の傾斜角度で形成され、これによって最終的に無機配向膜16(22)が形成されると、液晶装置60では、柱状構造体に沿って液晶分子が配向することにより、液晶分子にプレチルト角が付与される。すなわち、前述したように液晶分子は、非選択電圧印加時に、無機配向膜16、22によって所定方向に配向規制されるようになっているのである。
(プロジェクタ)
次に、本発明の電子機器の一実施形態としてのプロジェクタについて、図7を用いて説明する。図7は、プロジェクタの要部を示す概略構成図である。このプロジェクタは、前記実施形態に係る液晶装置を光変調手段として備えたものである。
図7において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は本発明の液晶装置からなる光変調手段、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズである。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用光変調手段822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用光変調手段823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用光変調手段824に入射される。
各光変調手段822、823、824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、画像が拡大されて表示される。
このような構成からなるプロジェクタは、前記の液晶装置を光変調手段として備えている。この液晶装置は、前述したように耐光性および耐熱性に優れた無機配向膜を備えているので、光源から照射される強い光や熱により配向膜が劣化することはない。また、このプロジェクタは、吸湿に起因する品質低下が確実に防止された液晶装置を備えているので、この電子機器自体も吸湿に起因する品質低下が防止されたものとなる。
なお、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、前記実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態では透過型液晶装置を例にして説明したが、反射型液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、前記実施形態ではTN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置を例にして説明したが、VA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、実施形態では3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、前述した各実施形態またはその変形例に係る液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
液晶装置のTFTアレイ基板の平面図。 液晶装置の等価回路図。 液晶装置の画素構成を示す説明図。 液晶装置の断面構造の説明図。 液晶装置の一製造工程について示す説明図。 (a)は蒸着装置の模式図、(b)は斜方蒸着の説明図。 プロジェクタの要部を示す概略構成図。
符号の説明
10…基板(TFTアレイ基板)、16,20…無機配向膜、16a,22a…第1配向膜(アモルファス層)、16b,22b…第2配向膜(ナノ結晶粒子層)、20…基板(対向基板)、50…液晶(液晶層)、60…液晶装置

Claims (7)

  1. 一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶装置であって、
    前記一対の基板の少なくとも一方の前記液晶層側には珪素酸化物からなる無機配向膜が設けられており、
    前記無機配向膜は、アモルファスの珪素酸化物からなる第1配向膜と、前記第1配向膜上に形成され結晶粒径2nm以下に結晶化された珪素酸化物からなる第2配向膜と、からなることを特徴とする液晶装置。
  2. 前記第1配向膜が斜方蒸着膜であることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
  3. 前記無機配向膜のうち、当該無機配向膜の膜厚の60%〜90%の厚さの表層が前記第2配向膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
  4. 一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶装置の製造方法であって、
    前記一対の基板の少なくとも一方の基板の作成工程において、
    基材上にアモルファスの珪素酸化物からなる無機材料膜を成膜する成膜工程と、
    前記無機材料膜にレーザー光を照射して、当該無機材料膜の表層部分のみを選択的に結晶化させ、アモルファスの珪素酸化物からなる第1配向膜と、前記第1配向膜上に形成され結晶粒径2nm以下に結晶化された珪素酸化物からなる第2配向膜とからなる無機配向膜を形成するレーザー光照射工程と、を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
  5. 前記レーザー光照射工程において、1パルスあたり0.01J/cm〜0.25J/cmのエネルギーを有するレーザー光を照射することを特徴とする請求項4に記載の液晶装置の製造方法。
  6. 前記成膜工程が斜方蒸着法により前記無機材料膜を成膜する工程であることを特徴とする請求項4又は5に記載の液晶装置の製造方法。
  7. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。
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