JP4172283B2 - 液晶装置、及び電子機器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶装置、配向膜、及び電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置に搭載される光変調手段や、携帯電話等に搭載される直視型表示装置として用いられる液晶装置においては、液晶層を挟持する基板の液晶層側最表面に、電圧無印加時における液晶分子の配列を制御するための配向膜が形成されており、電圧無印加時、電圧印加時における液晶分子の配列変化に基づいて表示が行われる構成となっている。
【0003】
従来、上記のような配向膜としては、ポリイミド等からなる有機膜の表面を、布等により所定の方向にラビングしたものが、液晶配向能力(液晶配向制御機能)に優れることから広く用いられている。しかしながら、例えば光束密度が2〜10(lm/mm)程度の光強度の強い光が照射される投射型表示装置等に搭載する場合には、配向膜が光や熱により次第に分解され、長期使用後に、電圧無印加時の液晶分子を所望のプレチルト角に配列することができないなど、液晶配向制御機能が低下し、表示品質が低下することがあった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、配向膜として酸化珪素などの無機材料からなる無機配向膜を用い、この無機配向膜の表面形状効果により液晶分子を配向させる液晶装置が提案されている。この無機配向膜は、基板をある角度で固定して一方向から無機材料を蒸着させ、基板に対して所定の角度で配列した柱状構造物を成長させる斜方蒸着法により形成される。このようにして形成した無機配向膜は、ポリイミド等の有機膜から構成したものに比して耐光性や耐熱性に優れており、液晶装置の耐久性を向上させることが可能である。
【0005】
また液晶装置に用いられる配向膜としては、上記ポリイミド配向膜や酸化珪素配向膜に限られず、例えば以下の(特許文献1)では、アルミニウム膜の表面を陽極酸化処理して酸化アルミニウム多孔質膜を形成し、さらに係る多孔質膜の表面にラビング処理を施した配向膜が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特許第2764997号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酸化珪素などの材料からなる配向膜は吸湿性があるため、水分が液晶装置内に浸入し、液晶装置内の金属配線の腐食や駆動回路の劣化を引き起こす惧れがある。また、このような無機配向膜はポリイミド膜に比して耐光性、耐熱性に優れるものの、配向能力自体はポリイミド膜よりも劣るものである。さらに、例えば電極への通電制御を行うスイッチング素子を備えるアクティブマトリクス型液晶装置の電極表面に配向膜を形成する場合には、スイッチング素子形成位置に対応して電極表面には段差部が形成され、その段差部において斜方蒸着方向から影となる部分ができ、その影の部分において蒸着ムラや蒸着不良を生じる場合がある。このような不具合は、配向膜としての信頼性低下(配向不良発生等)に繋がる一因となり得るものであって、例えば液晶装置を表示装置として用いた場合、表示不良等を生じさせる原因となる場合がある。
また、特許文献1に記載の酸化アルミニウム多孔質膜を用いた配向膜では、液晶層を駆動するための電極層を覆うように絶縁体である酸化アルミニウム膜が形成されるため、誘導電荷による焼き付きを生じやすくなるという問題があり、さらにはアルミニウム膜を陽極酸化する際に基板上に形成されたTFT(薄膜トランジスタ)素子が特性変動等の損傷を受けやすくなるという製造工程上の問題も生じる場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、高い配向性で液晶層が制御され、また量産性に優れ、好ましくは耐久性及び信頼性にも優れる液晶装置、及びこれを備えた電子機器を提供することを目的としている。
また本発明は、高い配向性を備え、かつ耐久性にも優れた配向膜を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の液晶装置は、互いに対向して配置された一対の基板間に液晶層が挟持された液晶装置であって、少なくとも一方の基板における前記液晶層との当接面に、液晶分子の配向を制御するための配向制御層が設けられており、前記配向制御層の表面に、複数の空孔が形成されていることを特徴としている。
このような構成とすることで、上記複数の空孔の内周面に沿って液晶分子が配向されて、従来の液晶装置に設けられていた配向制御機能を実現することができる。また、本発明に係る配向制御層は、耐光性に劣るポリイミド等の材料を用いなくとも形成することができ、無機配向膜のように均一に形成するのが困難な斜方蒸着法を用いる必要もないため、耐光性に優れると共に、面内で均一に形成することが可能である。従って、本発明によれば、耐久性に優れ、また量産性が高い液晶装置を提供することができる。
【0010】
本発明の液晶装置は、前記配向制御層が、前記液晶層に電圧を印加するための電極層上に形成され、前記空孔が、前記配向制御層を貫通して形成されている構成とすることができる。
このような構成とすることで、上記電極層の一部が上記空孔を介して液晶層に露出されるので、従来の絶縁材料を用いた配向膜で問題となっていた焼き付きの生じ易さを改善することができ、高品質の表示が可能である。また、液晶層に混入した異物によって上下の電極層がショートするのを、この配向制御層により効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の液晶装置は、前記空孔が、前記配向制御層を貫通して前記電極層中にまで延設されている構成とすることができる。
上記空孔は、深く形成する方がその配向規制力(液晶を配向させる能力)を高める点において有利であるが、配向制御層の層厚を厚くして空孔を深くすると、電極層と液晶層との平均的な距離が大きくなり駆動電圧が上昇するという問題が生じる。そこで、本構成のように電極層中に一部空孔を延設することで、配向制御層を厚くすることなく空孔を深く形成することができ、その結果、駆動電圧の上昇を伴わずに配向制御層の配向規制力を向上させることができる。尚、本構成において上記空孔は電極層を貫通しないように形成される。
【0012】
本発明の液晶装置は、前記配向制御層が、液晶分子を垂直配向させる垂直配向層と、複数の貫通孔を有する空孔層とを前記基板側から順に積層して備える構成とすることができる。
本構成において、上記空孔層は、配向規制力よりも耐久性を優先して採用される材料(例えばSiO等の無機材料)によって形成することができる。その場合、空孔による液晶の配向規制力が不足するおそれがあるが、本構成のように空孔層の下側に垂直配向層を設けることで、空孔の底部で垂直配向膜による配向制御作用が得られるため、配向制御層全体としては、優れた配向規制力が得られるようになる。従って、本構成によれば、優れた耐久性を具備し、かつ良好に液晶が配向制御された液晶装置を提供することができる。
【0013】
本発明の液晶装置は、前記空孔が、前記空孔層の貫通孔に連続して前記垂直配向膜中にまで延設されている構成とすることができる。
本構成によっても、配向制御層を厚く形成することなく空孔を深くすることができるので、駆動電圧の上昇を伴わずに配向制御層の配向規制力を向上させることができる。尚、本構成においても、上記空孔は垂直配向層を貫通しないように形成される。
【0014】
本発明の液晶装置は、前記空孔が、前記配向制御層を有する基板に対して略垂直に形成されている構成とすることができる。
この構成とすることで、上記空孔により液晶分子を基板に対してほぼ垂直に配向させることができ、耐光性及び量産性に優れる、広視野角の垂直配向モードの液晶装置を提供することができる。
【0015】
本発明の液晶装置は、前記空孔の内部形状が、略円柱状とされている構成とすることができる。また、前記空孔の内部形状が、上開き円錐台状とされている構成とすることもできる。さらには、前記空孔が、前記基板に対して傾斜して形成されている構成とすることもできる。
上記いずれの形状に空孔を形成した場合にも、優れた配向性が得られ、かつ上記形状とすることで、比較的容易に空孔を形成できるという製造工程上のメリットもある。
また、上開き円錐台状あるいは傾斜した形状のような、基板に対して傾斜した内壁面を有する形状に形成することで、液晶層を基板に対して傾斜した状態で配向させることができ、これにより、電圧印加時の液晶分子の傾倒方向を制御することができる。従って、これらの構成によれば、表示のムラが生じにくい、表示品質に優れる液晶装置を提供することができる。
【0016】
本発明の液晶装置は、前記配向制御層表面における前記空孔の開口径が、5nm以上100nm以下である構成とすることができる。開口径が5nm未満では、空孔を形成するのが困難になり、生産性の低下を招く。また100nmを越える開口径では、液晶分子の配向性が低下する。
【0017】
本発明の液晶装置は、前記配向制御層表面における前記空孔のピッチが、5nm以上250nm以下である構成とすることができる。ピッチが5nm未満では、空孔を形成するのが困難になり、生産性の低下を招く。また250nmを越えるピッチでは、空孔間の距離が大きすぎて液晶分子の配向性が低下する。
【0018】
本発明の液晶装置は、前記空孔の深さが、5nm以上200nm以下である構成とすることができる。深さdが5nm未満では、配向規制力が低下して液晶分子の配向性が悪くなる。また200nmを越える深さとすると、液晶層と電極層との平均距離が大きくなるために、駆動電圧が高くなる。
【0019】
本発明の液晶装置は、前記空孔の密集度(ピッチ/開口径)が、1以上2.5以下である構成とすることができる。空孔の密集度が1未満の場合、空孔同士が重なり合って実質的な空孔の開口径が大きくなるため、配向性が低下するおそれがある。また、密集度が2.5を越えると、空孔間の距離が大きくなって配向性が低下する。
【0020】
本発明の液晶装置は、前記空孔のアスペクト比(深さ/開口径)が、1以上40以下である構成とすることができる。空孔のアスペクト比が1未満の場合、液晶の配向性が低下する。また40を越えるアスペクト比の空孔を形成すると電極層と液晶層との平均距離が大きく、駆動電圧が高くなる。
【0021】
本発明の液晶装置は、前記配向制御層又は空孔層が、透光性の樹脂材料により構成されていても良い。このような構成とすることで、基板上に樹脂材料を塗布して樹脂層を形成し、係る樹脂層に対して転写型を用いた転写成形を行うことで、一括に上記空孔を形成でき、極めて効率よく配向制御層、あるいは空孔層を形成することが可能になる。
【0022】
本発明の液晶装置は、前記配向制御層又は空孔層が、透光性の無機材料により構成されていてもよい。このように、耐光性に優れる無機材料により配向制御層ないし空孔層を形成することで、特に優れた耐光性、耐久性を有する液晶装置が得られる。
【0023】
本発明の液晶装置は、前記液晶層を構成する液晶分子のうち、少なくとも前記基板に隣接して配置された液晶分子が、当該基板に対して略垂直に配向されている構成とすることが好ましい。また、前記液晶層が、負の誘電率を有する液晶からなる構成とすることが好ましい。
本発明に係る配向制御層は、特に垂直配向モードの液晶装置に好適なものである。
【0024】
本発明の液晶装置は、前記空孔に液晶が満たされている構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、上記空孔による配向規制力が効果的に液晶分子に対して作用するようにすることができる。また電極層と液晶層との距離が小さくなるので、電圧の印加による液晶層の駆動がより円滑に行えるようになる。
【0025】
本発明の液晶装置は、互いに対向して配置された一対の基板間に液晶層が挟持された液晶装置であって、前記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板の前記液晶層との当接面に開口径100nm以下の複数の空孔が形成されており、前記空孔により、前記液晶層を構成する液晶分子の配向が制御されていることを特徴とする。
このような構成とすることで、液晶層と当接する空孔による液晶分子の配向制御が可能になり、従来の樹脂材料や無機材料からなる配向膜における問題点であった耐光性や、面内均一性等を改善することができ、もって耐久性、量産性に優れた液晶装置を提供することができる。
【0026】
次に、本発明の配向膜は、対象分子の配向を制御可能な配向膜であって、前記配向膜の表面に形成された複数の空孔により前記対象分子の配向制御を行うことを特徴としている。
このような構成を備えた配向膜によれば、対象分子の配向制御を上記空孔により行うので、構成材料の選択の幅が広がり、例えば耐光性に優れる材料等を用いることが容易になる。尚、上記対象分子としては液晶分子を例示することができ、この場合、本発明の配向膜は液晶配向膜として機能することとなる。
【0027】
本発明の配向膜は、前記配向膜が、前記対象分子を配向させることが可能な2層以上の配向層の積層体とされ、前記積層体の最表面に積層された配向層に、少なくとも該層を貫通する空孔が形成されている構成とすることもできる。
このような構成とすることで、容易に配向膜の配向規制力を向上させることができる。すなわち、最表面の配向層の下側に、より強い配向規制力を備えた配向層を配置することで、空孔の底部において対象分子を強く配向させることができる。また、配向規制力は強いものの、耐久性の点で劣る配向層の上面により耐久性の高い配向層を配置し、最表面の配向層に空孔を設けることで、耐久性と配向規制力のいずれにも優れた配向膜を提供することができる。
【0028】
次に、本発明の電子機器は、先の本発明の液晶装置を備えたことを特徴としている。係る構成によれば、異物等の混入による表示不良が生じにくく、かつ駆動電圧も低く抑えることができる信頼性、及び消費電力に優れた液晶装置を、光変調手段ないし画像表示手段として備えた電子機器を提供することができる。このような電子機器としては、上記液晶装置を光変調手段として備え、該光変調手段により変調された光を投射する投射手段として備えた投射型表示装置、あるいは上記液晶装置を直視型の表示部として備えた機器等を例示できる。つまり「電子機器」には限定が無いが、例えば、テレビ受像機、カーナビゲーション装置、POS,パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、リア型またはフロント型のプロジェクター、表示機能付きファックス装置、電子案内板、輸送車両等のインフォメーションパネル、ゲーム装置、工作機械の操作盤、電子ブック、およびデジタルカメラや携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、携帯電話、ビデオカメラ等の携帯機器等なども含まれることは言うまでもない。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(液晶装置)
[第1の実施形態]
以下に示す本実施形態の液晶装置は、スイッチング素子としてTFT(薄膜トランジスタ)素子を用い、誘電異方性が負の液晶を用いたアクティブマトリクス型の垂直配向モードの透過型液晶装置である。また、本実施形態の液晶装置は、液晶層と接して設けられた配向制御層の構造に特徴を有している。
【0030】
図1は本実施形態の透過型液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図である。図2はデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図である。図3は本実施形態の透過型液晶装置の構造を示す断面図であって、図2のA−A’線断面図である。図4は本実施形態の透過型液晶装置に備えられた配向膜を拡大して示す部分断面図である。また、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0031】
本実施形態の透過型液晶装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極9と当該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT素子30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。
【0032】
また、走査線3aがTFT素子30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT素子30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0033】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークするのを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0034】
次に、図2に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の平面構造について説明する。図2に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と略す。)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(点線部9aにより輪郭を示す)がマトリクス状に配列形成されており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。本実施形態において、各画素電極9及び各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
【0035】
データ線6aは、TFT素子30を構成する例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、後述のチャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0036】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0037】
次に、図3に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の断面構造について説明する。図3に示すように、本実施形態の透過型液晶装置においては、TFTアレイ基板10と、これに対向配置される対向基板20との間に誘電異方性が負の液晶からなる垂直配向モードの液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、石英等の透光性材料からなる基板本体10Aとその液晶層50側表面に形成されたTFT素子30、画素電極9、配向膜40を主体として構成されており、対向基板20はガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面に形成された共通電極21と配向膜60とを主体として構成されている。
【0038】
TFTアレイ基板10において、基板本体10Aの液晶層50側表面には画素電極9が設けられ、各画素電極9に隣接する位置に、各画素電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用TFT素子30が設けられている。画素スイッチング用TFT素子30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0039】
また、上記走査線3a上、ゲート絶縁膜2上を含む基板本体10A上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5、及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第2層間絶縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第2層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上及び第2層間絶縁膜4上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第3層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜4及び第3層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電極9に電気的に接続されている。
【0040】
また、本実施形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0041】
また、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面において、各画素スイッチング用TFT素子30が形成された領域には、TFTアレイ基板10を透過し、TFTアレイ基板10の図示下面(TFTアレイ基板10と空気との界面)で反射されて、液晶層50側への戻り光が、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a'及び低濃度ソース、ドレイン領域1b、1cに入射することを防止するための第1遮光膜11aが設けられている。また、第1遮光膜11aと画素スイッチング用TFT素子30との間には、画素スイッチング用TFT素子30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁するための第1層間絶縁膜12が形成されている。さらに、図2に示したように、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続するように構成されている。
【0042】
また、TFTアレイ基板10の液晶層50側最表面、すなわち、画素電極9及び第3層間絶縁膜7上には、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御する配向膜(配向制御層)40が形成されている。
【0043】
他方、対向基板20には、基板本体20Aの液晶層50側表面であって、データ線6a、走査線3a、画素スイッチング用TFT素子30の形成領域に対向する領域、すなわち各画素部の開口領域以外の領域に、入射光が画素スイッチング用TFT素子30の半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに侵入するのを防止するための第2遮光膜23が設けられている。さらに、第2遮光膜23が形成された基板本体20Aの液晶層50側には、そのほぼ全面に渡って、ITO等からなる共通電極21が形成され、その液晶層50側には、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御する配向膜(配向制御層)60が形成されている。
【0044】
上述したように、本実施形態においては、配向膜(配向制御層)40、60の構造が特に特徴的なものとなっている。以下、図4及び図5に基づいて、配向膜40、60の構造及びその作用について説明する。図4(a)は、配向膜40を拡大して示す部分平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示すB−B’線に沿う部分断面図である。図5は、に示す配向膜40による配向制御作用を部分断面にて示す説明図である。また、本実施形態では、TFTアレイ基板10側の配向膜40と対向基板20側の配向膜60とは同一の構造を有するものとしている。
【0045】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る配向膜40は、平面視円形状の空孔40aが所定のピッチpで格子状に配列された構成を備えており、この空孔40aは、図4(b)に示すように、配向膜40をほぼ垂直に貫通して形成されている。従って、空孔40aが設けられた領域において、画素電極9は液晶層50に対して露出されており、液晶層50の液晶は空孔40a内に充たされている。本実施形態の場合、配向膜40は、光透過性の高い樹脂材料(有機材料)により形成されている。この樹脂材料としては、アクリレート、メタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が好適に用いられる。また配向膜40は、95%以上の光透過率を有する材料で構成することが好ましく、このような材料を用いることで、高い耐光性が得られ、高信頼性の液晶装置とすることができる。
また、配向膜40の構成材として、絶縁性の材料、又は導電性の低い材料を用いるならば、上下の電極層(画素電極9、共通電極21)がショートするのを効果的に防止できるという利点がある。
【0046】
本実施形態において、図4(a)に示す空孔40a及びその配列の各寸法は、配向膜40表面における開口径φが約50nm、ピッチpが約60nm、深さdが約120nmとされている。従って、配向膜40表面における空孔40aの密集度(ピッチp/開口径φ)は、約1.2、空孔40aの配向膜40厚さ方向におけるアスペクト比(深さd/開口径φ)は、約2.4である。
そして、図5に示すように、このような微細な空孔40aが配向膜40を貫通して複数設けられていることで、配向膜40と接する液晶層50の液晶分子51が空孔40aの長さ方向(配向膜40厚さ方向)に沿って配向され、その結果、液晶層50全体として液晶分子51がTFTアレイ基板10及び対向基板20に対して垂直に配向される。
【0047】
このように、本実施形態の液晶装置では、画素電極9上に、複数の空孔40aを有する配向膜40が形成されていることで、良好な配向制御性が得られるとともに、液晶層50と画素電極9との間に設けられた絶縁性の配向膜40により基板10,20間に異物が混入した場合にも、画素電極9と対向電極21とがショートし難く、係る不具合による製造歩留まりの低下を防止することができる。
また、空孔40aが配向膜40を貫通しているため、画素電極9の一部が液晶層50と接した状態となり、従来の無機配向膜で問題となっていた焼き付きが生じ難く、高品質の表示が可能になっている。
【0048】
上記有機材料からなる配向膜40は、例えば、転写型を用いた成型法や、フォトリソグラフィ技術を用いたパターニングにより形成することができる。フォトリソグラフィ技術を用いる場合、配向膜40を部分的に除去する方法として、エッチング法、あるいは電子ビーム照射を用いることができる。
【0049】
以下に本発明に係る配向制御層の形成方法の一例として、転写型を用いた方法を示す。
まず、Si等からなる母型基板を、フォトリソグラフィ技術により図4に示す配向膜40と逆凹凸の形状にパターニングする。すなわち、図4に示す空孔40aの内部形状と同一の略円柱状の突条を母型基板上に配列形成する。その後、上記母型基板表面にNi等の金属膜を蒸着して転写型を作製する。
次いで、配向膜40を構成する樹脂材料を、画素電極9等が形成されたTFTアレイ基板10の表面に塗布して樹脂層を形成する。その後、前記樹脂層に対して上記転写型を押し当てて、転写型の形状を樹脂層に転写する。その際、転写型の突条が樹脂層を貫通して画素電極9にまで到達するようにして転写を行う。
最後に、上記樹脂層を光線照射や加熱により硬化させた後、転写型を取り除き、TFTアレイ基板10の最表面を成す配向膜40を得る。
なお製造誤差等により、転写型の突条が樹脂層を貫通しきれない部分が生じる場合には、エッチングにより空孔40a部の電極表面を露出させる工程を入れることも出来る。
【0050】
本実施形態では、ほぼ同一寸法の多数の空孔40aが、平面視格子状に同一ピッチで配列形成された配向膜40について説明したが、空孔40a、…は必ずしも同一寸法に形成しなくてもよい。また、空孔40aの平面的な配列も格子状に限定されない。すなわち、配向膜40には、互いに寸法が異なる複数の空孔40aが形成されていてもよく、配向膜40表面において、空孔40aがほぼランダムに配置されていても、ピッチをずらして配置されていても構わない。その一方で、空孔40が極端に微細な場合や、大きすぎる場合には、生産性の低下を生じたり、十分な配向規制力が得られないといったおそれがある。そこで、空孔40aの各寸法の好ましい範囲を以下に示す。
【0051】
空孔40aの配向膜40表面における開口径φは、5〜100nmとすることが好ましい。開口径φが5nm未満では、空孔40aを形成するのが困難になり、生産性の低下を招く。また100nmを越える開口径では、液晶分子の配向性が低下する。空孔40a形成時の生産性と、配向性とを考慮すると、より好ましい開口径φとしては、50±5nmである。
【0052】
次に、空孔40aのピッチpは、5〜250nmとすることが好ましい。ピッチpが5nm未満では、空孔40aを形成するのが困難になり、生産性の低下を招く。また250nmを越えるピッチでは、空孔40a間の距離が大きすぎて液晶分子の配向性が低下する。空孔40a形成時の生産性と、配向性とを考慮すると、より好ましいピッチpとしては、60±6nmである。
【0053】
次に、空孔40aの深さdは、5〜200nmとすることが好ましい。深さdが5nm未満では、配向規制力が低下して液晶分子の配向性が悪くなる。また200nmを越える深さとすると、液晶層50と画素電極9との平均距離が大きく、駆動電圧が高くなる。空孔40aによる配向性と、駆動電圧の上昇とを考慮すると、より好ましい深さdとしては、120±12nmである。
【0054】
また、上記空孔40aの各部の寸法に加え、空孔40aのアスペクト比(深さd/開口径φ)は、1〜40とすることが好ましく、空孔40aの平面的な密集度(ピッチp/開口径φ)は、1〜2.5とすることが好ましい。
空孔40aのアスペクト比が1未満の場合、液晶の配向性が低下する。また40を越えるアスペクト比の空孔40aを形成すると画素電極9と液晶層50との平均距離が大きく、駆動電圧が高くなる。アスペクト比のより好ましい範囲としては、上記開口径φ及び深さdの範囲から、1.2±0.12程度である。
【0055】
また、空孔40aの密集度が1未満の場合、空孔40a同士が重なり合って実質的な空孔40aの開口径が大きくなるため、配向性が低下するおそれがある。また、密集度が2.5を越えると、空孔40a間の距離が大きくなって配向性が低下する。この密集度のより好ましい範囲としては、上記開口径φ及びピッチpの範囲から、2.4±0.24程度である。
【0056】
上記第1の実施形態では、配向膜40の空孔40aは、配向膜40を貫通して画素電極9の表面に到るものとされているが、液晶分子の配向規制力の点から、空孔40aのアスペクト比は可能な限り大きく(空孔40aの深さdを大きく)することが好ましい。しかし、駆動電圧を考慮すると、画素電極9と液晶層50との間の絶縁膜(配向膜40)は、なるべく薄くすることが好ましい。そこで、図6に示す部分断面図のように、空孔40aが、配向膜40を貫通して、画素電極9の中にまで形成されている構成とすることで、駆動電圧の上昇を抑えつつ、空孔40aの配向規制力を高めることが可能になる。
【0057】
但し、図6に示す構成とする場合、空孔40aは画素電極9を貫通しない範囲で画素電極9中にまで延設されている構成とする。画素電極9を貫通して絶縁膜7に到る空孔を形成すると、配向規制力は高くなるものの、空孔40aの形成領域が表示に利用できなくなるため、実質的な開口率が低下して表示が暗くなる。
【0058】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を図7及び図8を参照して説明する。本実施形態の液晶装置は、上記第1の実施形態と同様の基本構成を備えており、先の実施形態と異なる点は、配向膜40に形成された空孔40aの内部形状のみである。従って、図7及び図8において、図1ないし図6と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
<第1構成例>
図7は、本実施形態の第1例の液晶装置に備えられた配向膜(配向制御層)の部分断面構成を示す図である。図7に示す配向膜40の平面構成は、図4(a)の部分平面図に示す先の実施形態の配向膜と同様であり、図7に示す部分断面図は、図4(a)に示すB−B’線に沿う断面図である。
図7に示すように、本実施形態の第1構成例では、配向膜40を貫通して形成された空孔40aが、配向膜40の層厚方向(図示上下方向)に対して傾斜して形成されている。従って、本実施形態に係る空孔40aは、基板10,20の面に対して傾斜して形成されている。
【0060】
上記本実施形態の第1構成例においては、図示右方向に傾いて空孔40aが形成されているので、液晶層50の液晶分子51も、空孔40aの方向に沿って傾斜して配向される。従って、係る構成によれば、液晶分子51にプレチルトを付与したのと同様の状態を実現することができ、電圧印加時に空孔40aの傾斜方向側へ液晶分子51は倒れるようになる。これにより、ドット領域内で傾倒方向の異なる領域(ドメイン)が複数形成されるのを防止することができ、これらの領域境界のディスクリネーションに起因する表示むら等を効果的に防止することができる。
【0061】
<第2構成例>
図8は、本実施形態の第2例の液晶装置に備えられた配向膜(配向制御層)の部分断面構成を示す図である。図8に示す配向膜40の平面構成は、図4(a)の部分平面図に示す先の実施形態の配向膜と同様であり、図8に示す部分断面図は、図4(a)に示すB−B’線に沿う断面図である。
図8に示すように、本実施形態の第2構成例では、配向膜40を貫通して形成された空孔40aの孔径が、空孔40aの深さ方向に連続的に狭くなるように形成されている。つまり、本例は、空孔40aの内部形状が、図示上方に向かって広口の逆円錐台状に形成された例である。
【0062】
上記本実施形態の第2構成例においても、上記第1構成例と同様に、電圧印加時の液晶分子51の傾倒方向を制御することができる。また、本構成の場合、電圧印加時に空孔40aの周囲に放射状に液晶分子が倒れるため、視野角の方位依存が小さい、広視野角の液晶装置とすることができる。
尚、本構成例において、逆円錐台状の空孔40aがさらに配向膜40の層厚方向に対して傾斜して形成されていても良い。また、上記第1構成例、第2構成例において、図6に示すように、画素電極9の中にまで空孔40aが延設されている構成を適用でき、その場合には、駆動電圧を上昇させることなく、配向膜40の配向規制力を向上させることができるという利点が得られる。
【0063】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、図9を参照して説明する。本実施形態の液晶装置と、先の第1実施形態の液晶装置との相違点は、配向膜の構成のみである。従って、図9において、図1ないし図6と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図9(a)は、本実施形態の液晶装置に備えられた配向膜40の部分断面構成を示す図であり、図9(b)は、本実施形態に係る配向膜の配向制御作用を示す説明図である。
【0064】
図9(a)に示すように、本実施形態の液晶装置では、画素電極9上に配向膜45が形成されており、配向膜45は画素電極9側から順に垂直配向層41と、空孔層42とが積層されて構成されている。そして、空孔層42は、層厚方向に貫通形成された複数の空孔45aを有している。本実施形態の場合、空孔層42は無機材料で構成され、例えばSiO、MgO、MgF、CaF、Al3、ITO、IZO等が好適に用いられる。また、上下の電極層(画素電極9及び共通電極21)がショートするのを防止するために、空孔層42を絶縁性の材料で構成することが好ましいのは、上記第1の実施形態と同様である。あるいは、空孔層42を導電性の材料で構成した場合に、上下の電極層(画素電極9及び共通電極21)がショートするのを防止するためには、その表面の空孔45a以外の部分に絶縁性の材料を薄く載せることが好ましい。
垂直配向層41には、それ自体に液晶分子を垂直配向させる機能を備えた配向膜が用いられ、例えば、ポリシロキサン、アルキルシラン、ポリイミド等の分子間力配向膜や、PTFE(四フッ化ポリエチレン)等の低表面エネルギー膜が好適に用いられる。
【0065】
上記構成の配向膜45では、先の第1の実施形態における配向膜40に相当する空孔層42が、無機材料で構成されているため、樹脂材料からなる先の配向膜40よりも配向規制力に劣る場合があるが、この空孔層42の下層側に垂直配向膜41を備えていることで、図9(b)に示すように空孔45aの底部で液晶層50側に露出された垂直配向膜が液晶分子51に対して配向制御作用を奏し、樹脂材料に比して配向規制力に劣る無機材料からなる空孔層42による配向規制力を補助するようになっている。従って、本実施形態に係る配向膜45によれば、先の樹脂材料を用いた配向膜40と同等の配向規制力を有し、かつ無機材料の空孔層42によりさらに高い耐光性が得られるようになっている。
【0066】
尚、本実施形態の液晶装置においても、図6に示した構成を適用することが可能である。すなわち、空孔45aが、空孔層42のみならず、垂直配向膜41中にまで延設された構成とすることができる。このような構成とするならば、駆動電圧を上昇させることなく空孔45aのアスペクト比を大きくすることができ、空孔45aによる配向規制力を向上させることができる。さらに、係る構成では、液晶層50と画素電極9との距離が短くなり、焼き付きが生じ難くなるという利点もある。
上記の構成とする場合、空孔45aは垂直配向膜41を貫通しないように形成する。なぜならば、垂直配向膜41を貫通して空孔45aを形成してしまうと、垂直配向膜41による配向制御作用が得られず、配向膜45の配向規制力が逆に低下する場合があるからである。
【0067】
また、本実施形態に係る配向膜45に、先の第2実施形態の構成を適用することもできる。すなわち、空孔45aが配向膜45の厚さ方向に対して傾斜して形成されていてもよく、あるいはその内部形状が逆円錐台状であってもよい。空孔45aをこれらの形状とすることで、電圧印加時の液晶分子の傾倒方向をドット領域内で制御することが可能になり、液晶分子が無秩序に倒れることに起因する表示むらの発生を効果的に防止でき、表示品質に優れる液晶装置が得られる。
【0068】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明に係る配向制御層の構成として、上記第1〜第3の実施の形態では、空孔が形成された配向膜を備えた構成としたが、空孔による液晶の配向制御は、配向膜に空孔が設けられていなくても得ることができる。すなわち、少なくとも基板の液晶層と接する面に微細な空孔が複数形成されていれば、上記配向制御効果を得ることができ、例えば、電極層(画素電極、共通電極)に直接上記空孔が設けられ、電極層上には配向膜が形成されていない構成とすることもできる。あるいは、電極層に形成された空孔を埋めない程度の極薄い配向膜を電極層上に形成しても良い。また例えば、本発明に係わる空孔の形状に関して、上記第1〜第3の実施の形態では、略円錐状としたが略多角形錘状としても良い。略多角形錘状とすることで、製造はより難しくなるが、液晶分子と空孔壁との接触面積が増加するのでより高い配向制御性を得ることが出来る。
【0069】
(投射型表示装置)
次に、上記実施形態の液晶装置を光変調手段として備えた投射型表示装置の構成について、図面を参照して説明する。図10は、上記実施形態の液晶装置を光変調装置として用いた投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。この図において、510は光源、513、514はダイクロイックミラー、515、516、517は反射ミラー、518は入射レンズ、519はリレーレンズ、520は出射レンズ、522、523、524は液晶光変調装置、525はクロスダイクロイックプリズム、526は投射レンズを示す。
【0070】
光源510はメタルハライド等のランプ511とランプの光を反射するリフレクタ512とからなる。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー513は、光源510からの光束のうちの赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー517で反射されて、上記実施形態の液晶装置を備えた赤色光用液晶光変調装置522に入射される。一方、ダイクロイックミラー513で反射された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー514によって反射され、上記実施形態の液晶装置を備えた緑色光用液晶光変調装置523に入射される。なお、青色光は第2のダイクロイックミラー514も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ518、リレーレンズ519、出射レンズ520を含むリレーレンズ系からなる導光手段521が設けられ、これを介して青色光が上記実施形態の液晶装置を備えた青色光用液晶光変調装置524に入射される。赤色光用液晶光変調装置522、緑色光用液晶光変調装置523、青色光用液晶光変調装置524の前後にはそれぞれ入射側偏光板522a、523a、524aと出射側偏光板522b、523b、524bが設置されている。入射側偏光板で直線偏光となった光は液晶光変調装置により変調された後、出射側偏光板を通過するが、この時決められた振動方向の光しか透過できないため調光が可能となる。
【0071】
各光変調装置と2枚の偏光板により調光された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム525に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ526によってスクリーン527上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0072】
上記構造を有する投射型表示装置は、上記実施形態の液晶装置を備えたものであるので、量産性に優れ、液晶層を構成する液晶分子に対する配向規制力が高く、さらに光や熱に対する耐久性に優れた、高信頼性の表示装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の第1実施形態たる液晶装置におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図。
【図2】 図2は、図1の液晶装置のTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図。
【図3】 図3は、図1の液晶装置についてその要部の構造を示す断面図。
【図4】 図4(a)は、図1の液晶装置に備えられた配向膜の構造を示す部分平面図、図4(b)は、図4(a)に示すB−B’線に沿う部分断面図。
【図5】 図5は、図4に示す配向膜による液晶分子の配向状態を示す説明図。
【図6】 図6は、第1実施形態の配向膜の他の例を示す部分断面図。
【図7】 図7は、第2実施形態に係る配向膜の構成を示す部分断面図。
【図8】 図8は、第2実施形態に係る配向膜の構成を示す部分断面図。
【図9】 図9(a)は、第3実施形態に係る配向膜の構造を示す部分断面図、図9(b)は、配向膜の配向制御作用を示す説明図。
【図10】 図10は、本発明に係る投射型表示装置についての一例を示す図。
【符号の説明】
10…TFTアレイ基板、20…対向基板、10A、20A…基板本体、30…画素スイッチング用TFT素子、50…液晶層、40,60,45…配向膜、9…画素電極(電極層)、21…共通電極(電極層)、40a,45a…空孔、φ…空孔の開口径、p…空孔のピッチ、d…空孔の深さ

Claims (10)

  1. 互いに対向して配置された一対の基板間に液晶層が挟持された液晶装置であって、
    少なくとも一方の基板における前記液晶層との当接面に、液晶分子の配向を制御するための配向制御層が設けられており、
    前記配向制御層の表面に、複数の空孔が形成され、
    前記配向制御層が、前記液晶層に電圧を印加するための電極層上に形成され、
    前記空孔が、前記配向制御層を貫通して前記電極層中にまで延設されていることを特徴とする液晶装置。
  2. 互いに対向して配置された一対の基板間に液晶層が挟持された液晶装置であって、
    少なくとも一方の基板における前記液晶層との当接面に、液晶分子の配向を制御するための配向制御層が設けられており、
    前記配向制御層の表面に、複数の空孔が形成され、
    前記配向制御層が、液晶分子を垂直配向させる垂直配向層と、複数の貫通孔を有する空孔層とを前記基板側から順に積層して備えており、
    前記空孔が、前記空孔層の前記貫通孔に連続して前記垂直配向層中にまで延設されていることを特徴とする液晶装置。
  3. 前記空孔が、前記配向制御層を有する基板に対して略垂直に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
  4. 前記空孔の内部形状が、略円柱状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶装置。
  5. 前記空孔の内部形状が、上開き円錐台状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶装置。
  6. 前記空孔が、前記基板に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液晶装置。
  7. 前記配向制御層又は空孔層が、透光性の樹脂材料により構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液晶装置。
  8. 前記配向制御層又は空孔層が、透光性の無機材料により構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液晶装置。
  9. 前記液晶層を構成する液晶分子のうち、少なくとも前記基板に隣接して配置された液晶分子が、当該基板に対して略垂直に配向されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液晶装置。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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