JP3849655B2 - 投射型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の液晶ライトバルブを用いて光変調を行う投射型表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー表示が可能な投射型表示装置が実用化されており、その典型的な構成としては、RGB表示系の三刺激値にそれぞれ対応する液晶ライトバルブを備えており、これらの液晶ライトバルブに3原色(R,G,B)の原色光を入射させて変調し、前記各液晶ライトバルブにより変調された原色光を重畳して画像の表示を行うものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−271232号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来から、液晶ライトバルブを構成する液晶材料が、エネルギーの高い紫外光や近紫外光(波長の短い青色光)を照射された場合に容易に分解、劣化してしまうことは知られており、通常はこれらの帯域の光が液晶ライトバルブに入射しないように、光源と液晶ライトバルブとの間にUV(紫外線)カットフィルター等を設けて液晶を保護するようになっている。
近年、明るさの向上や、色再現範囲の拡大を目的として、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ等の高強度ランプを光源に用いて投射型表示装置を構成するようになっている。図9は、交流点灯メタルハライドランプの分光分布を示すグラフであり、図10は、直流点灯超高圧水銀ランプの分光分布を示すグラフである。図9及び図10に示すように、この種のランプでは可視光のうちでも波長の短い光の成分が非常に多くなっている。
そのため、上記UVカットフィルター等を用いたとしても、光強度が高く、かつ比較的高エネルギーの青色光を変調するための液晶ライトバルブが、他の原色光の変調に用いられる液晶ライトバルブよりも著しく早く劣化することが問題となっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、光強度分布に偏りを有する光源を用いた場合にも特定の液晶ライトバルブに劣化を生じることが無く、好ましくは経時的に色バランスに変化を生じることのない、長期間の使用に耐える高信頼性の投射型表示装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の投射型表示装置は、光源と、該光源から供給される複数の原色光に対応して設けられた複数の液晶ライトバルブとを備えた投射型表示装置であって、前記液晶ライトバルブが、略90°ツイストのTN液晶を含む液晶層を有しており、前記複数の液晶ライトバルブのうち青色相の原色光に対応する液晶ライトバルブの液晶層において、その原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向が、当該液晶層に入射する原色光の偏光方向と略直交する向きとされており、前記複数の液晶ライトバルブのうち、前記青色相の原色光以外に対応する液晶ライトバルブの液晶層に入射する原色光の偏光方向と、当該液晶層の原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向とが、略平行に配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成の投射型表示装置は、色相が青色の光を変調する液晶ライトバルブについて、略90°ツイストのTNモードの液晶を用いることで、液晶の旋光性を利用した表示を行うようになっている。そして、原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向と、液晶層に入射する光の偏光方向とが直交するように原色光を入射させるので、液晶層を透過する偏光は、吸光度が小さい方向(分子短軸方向)で液晶分子と交差して変調される。これにより、比較的高いエネルギーを有する短波長域(青色相)の光が照射される液晶ライトバルブの液晶劣化を防止し、もって液晶ライトバルブないし投射型表示装置の長寿命化を実現している。
また本発明は、4原色以上の多原色式の投射型表示装置にも容易に適用でき、例えばRGB表色系の三刺激値に対して2原色ずつの6原色表示を行う場合には、青色相の2つの原色光に対応して設けられた液晶ライトバルブとそれらの入射する偏光について上記構成を適用すればよい。
【0008】
次に、本発明の投射型表示装置は、前記光源の強度が10,000(lm)以上であることを特徴とする。このような構成とすることで、明るく、色再現性に優れた表示が得られ、かつ長寿命の投射型表示装置を提供することができる。
【0009】
次に、本発明の投射型表示装置は、前記光源が、メタルハライドランプ又は超高圧水銀ランプであることを特徴とする。このような構成とすることで、容易に表示の明るさを向上させることができる。これらの強力な光源は短波長域の成分を多く含み、従来の構成では短波長域側の光を変調するためのライトバルブの劣化が問題となっていたが、本発明に係る投射型表示装置では、先に記載のように青色相の液晶ライトバルブにおける長寿命化を実現しているため、これらのランプを光源とした構成に極めて有効である。
【0010】
次に、本発明の投射型表示装置は、前記青色相に対応する液晶ライトバルブの液晶層の原色光入射側に偏光板が設けられ、前記偏光板の透過軸が、前記液晶層の原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向と略直交する向きに配置されていることを特徴とする。この構成によれば、先の液晶ライトバルブを長寿命化するための原色光の偏光方向と、液晶分子の配向方向を容易に規定できる。また液晶ライトバルブの構成部材を大きく変更しないため、高い製造容易性を得られるという利点もある。
【0011】
本発明の投射型表示装置は、前記複数の液晶ライトバルブのうち、前記青色相の原色光以外に対応する液晶ライトバルブの液晶層に入射する原色光の偏光方向と、当該液晶層の原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向とが、略平行に配置されていることを特徴とする。
従来の投射型表示装置では、青色光用の液晶ライトバルブの寿命が短いことが問題となっていたが、先に記載のように本発明の構成では、青色相の光を変調する液晶ライトバルブの長寿命化を実現できる。この液晶ライトバルブの構成を、青色相以外の光(赤色相や緑色相の光)を変調するためのライトバルブに適用すれば、それらの液晶ライトバルブも長寿命化することは可能であるが、変調後の光を合成した表示の色バランスについては、各原色光に対応する液晶ライトバルブの経時的な変化が揃っている方が好ましい。従って、上記構成のように、青色相の光変調用のライトバルブのみに本発明の構成を適用することで、各液晶ライトバルブでの寿命を揃え、液晶ライトバルブの経時的な劣化に伴う色バランスの変化が生じ難くなるようにすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(投射型表示装置の構成)
図1は、本実施形態の投射型表示装置の概略構成図である。図1中、符号101は光源、102〜103は色分離手段として機能するダイクロイックミラー、110R、110G、110Bは光変調手段として機能する液晶ライトバルブ、111,112は反射ミラー、125は画像重畳手段として機能するダイクロイックプリズム、126は画像投射手段として機能する投射レンズ、127はスクリーン等の被投射体をそれぞれ示している。すなわち、本実施形態の投射型表示装置は、3板式の投射型カラー表示装置である。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0013】
ダイクロイックミラー102は、主光源101からの光束のうち、青色光(原色光)LBを反射するとともに、赤色光LR、緑色光LGを透過するものであり、ダイクロイックミラー102で反射された赤色光LRは、反射ミラー111で反射された後、液晶ライトバルブ110Bに入射するようになっている。ダイクロイックミラー102を透過した光のうち、緑色光(原色光)LGは、ダイクロイックミラー103で反射された後、液晶ライトバルブ110Gに入射するようになっている。ダイクロイックミラー103を透過された赤色光(原色光)LRは、反射ミラー112で反射された後、液晶ライトバルブ110Rに入射するようになっている。
【0014】
上記各液晶ライトバルブ110R、110G、110Bは、ダイクロイックプリズム125の3面にそれぞれ配置されており、それぞれの液晶ライトバルブにより変調された光が、ダイクロイックプリズム125により重畳され、投射レンズ126を介して被投射体127に画像を投射するようになっている。
【0015】
本実施の形態の投射型表示装置に備えられた液晶ライトバルブ110R〜110Bは、例えば、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の液晶パネルを主体として構成することができる。
図2は、係る液晶パネルの画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットの等価回路図、図3はTFTアレイ基板の1つのドットの構造を示す平面図、図4は、同、図3のA−A’線に沿う部分断面図である。
【0016】
本実施形態に係る液晶パネルにおいて、図2に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極9と当該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT素子30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。
【0017】
また、走査線3aがTFT素子30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT素子30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0018】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークするのを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0019】
次に、図3に基づいて、本実施形態に係る液晶パネルの平面構造について説明する。図3に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と略す。)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(点線部9aにより輪郭を示す)がマトリクス状に配列形成されており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。本実施形態において、各画素電極9及び各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
【0020】
データ線6aは、TFT素子30を構成する例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、後述のチャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0021】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図3中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0022】
次に、図4に基づいて、本実施形態に係る液晶パネルの断面構造について説明する。図4に示すように、本実施形態に係る液晶パネルにおいては、TFTアレイ基板10と、これに対向配置される対向基板20との間に90°ツイストのTN(ツイステッドネマチック)液晶からなる液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、石英等の透光性材料からなる基板本体10Aとその液晶層50側表面に形成されたTFT素子30、画素電極9、配向膜40を主体として構成されており、対向基板20はガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面に形成された共通電極21と配向膜60とを主体として構成されている。
【0023】
TFTアレイ基板10において、基板本体10Aの液晶層50側表面には画素電極9が設けられ、各画素電極9に隣接する位置に、各画素電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用TFT素子30が設けられている。画素スイッチング用TFT素子30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0024】
また、上記走査線3a上、ゲート絶縁膜2上を含む基板本体10A上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5、及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第2層間絶縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第2層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上及び第2層間絶縁膜4上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第3層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜4及び第3層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電極9に電気的に接続されている。
【0025】
また、本液晶パネルでは、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0026】
また、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面において、各画素スイッチング用TFT素子30が形成された領域には、TFTアレイ基板10を透過し、TFTアレイ基板10の図示下面(TFTアレイ基板10と空気との界面)で反射されて、液晶層50側への戻り光が、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a'及び低濃度ソース、ドレイン領域1b、1cに入射するのを防止するための第1遮光膜11aが設けられている。また、第1遮光膜11aと画素スイッチング用TFT素子30との間には、画素スイッチング用TFT素子30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁するための第1層間絶縁膜12が形成されている。さらに、図3に示したように、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続するように構成されている。
また、TFTアレイ基板10の液晶層50側最表面、すなわち、画素電極9及び第3層間絶縁膜7上には、液晶層50内の液晶分子の配向を制御する配向膜40が形成されている。
【0027】
他方、対向基板20には、基板本体20Aの液晶層50側表面であって、データ線6a、走査線3a、画素スイッチング用TFT素子30の形成領域に対向する領域、すなわち各画素部の開口領域以外の領域に、入射光が画素スイッチング用TFT素子30の半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに入射するのを防止するための第2遮光膜23が設けられている。さらに、第2遮光膜23が形成された基板本体20Aの液晶層50側には、そのほぼ全面に渡って、ITO等からなる共通電極21が形成され、その液晶層50側には、この液晶層50内の液晶分子の配向を制御する配向膜60が形成されている。
【0028】
上記構成を備えた本実施形態の投射型表示装置では、液晶ライトバルブ110R、110G、110Bのうち、青色光を変調する液晶ライトバルブ110Bと、その他の液晶ライトバルブ110R、110Gとで、液晶層50に入射する原色光の偏光状態が異ならされている。
図5(a)は、液晶ライトバルブ110Bの断面説明図であり、図5(b)は、液晶ライトバルブ110R、あるいは110Gの断面説明図であり、これらの図において、符号51は液晶層50を構成する液晶分子を示しており、図示左側領域(Voffで示す領域)は、画素電極9と共通電極21との間に電圧が印加されていない状態の液晶分子51の配向状態を示し、図示右側領域(Vonで示す領域)は、前記両電極9,21間に印加された電圧により基板垂直方向に液晶分子51が配向された状態を示している。本実施形態の投射型表示装置では、図5(a)に示すように、液晶ライトバルブ110Bの液晶層50に入射する青色光LBは、紙面に垂直な直線偏光であり、液晶層50の原色光入射面(液晶層50と配向膜40との当接面)に配置された液晶分子51aの配向方向(紙面と平行)とは直交する向きの偏光方向を有する光である。
一方、図5(b)に示すように、液晶ライトバルブ110R,110Gに入射する赤色光LR、緑色光LGは、紙面に平行な直線偏光であり、液晶層50の原色光入射面(液晶層50と配向膜40との当接面)に配置された液晶分子51aの配向方向(紙面と平行)と平行の偏光方向を有する光である。
【0029】
青色光変調用の液晶ライトバルブ110Bにおいて、入射する青色光LBの偏光方向と、液晶分子51aの配向方向とが上記配置とされていることで、本実施形態の投射型表示装置では、液晶ライトバルブ110Bを構成する液晶層50の光照射による劣化を効果的に防止することを可能にし、もって液晶ライトバルブ110Bの大幅な長寿命化を実現している。実際に、本発明者が上記本実施形態の投射型表示装置において、光源101として図10に示すような分光分布を有し、強度25,000(lm)の超高圧水銀ランプを用い、液晶ライトバルブ110Bの寿命試験を行ったところ、30,000時間以上の長寿命が得られることが確認されている。
【0030】
ここで、図6は、液晶分子の分子構造の一例を示す図である。この図に示すように、液晶分子は、ほぼ一方向に分子が配列された構造を備えており、図示左右方向が液晶分子の長軸方向、図示上下方向が液晶分子の短軸方向とされている。液晶分子は、その長軸方向と短軸方向とで様々な特性が異なっており(例えば、屈折率、誘電率、磁化率、粘性、吸光度、導電率など)、液晶表示装置では、これらのうち屈折率異方性と誘電率異方性を利用している。本発明では、このような液晶分子の特性に鑑み、高エネルギー、高強度の青色光を照射される液晶ライトバルブ110Bの液晶層50に対して、光入射面に配置された液晶分子51aの短軸方向と平行に振動する直線偏光LBを入射させるようにすることで、液晶分子による光の吸収を抑え、液晶分子51の劣化を効果的に防止できるようになっている。
【0031】
図5(a)及び図5(b)に示す入射光の偏光方向を規定する具体的な手段としては、例えば、液晶パネルの基板本体10A外面側に、所定方向(図5(a)では紙面垂直方向、図5(b)では紙面平行方向)の透過軸を有する偏光板を設ければよく、液晶ライトバルブと光源101との間の光路上に偏光変換素子を設けてもよい。また、液晶分子51aの配向方向を規定する具体的な手段としては、配向膜40がポリイミド等の有機材料で構成される場合にはラビング処理の方向により制御する方法を挙げることができ、SiO2等の無機材料で構成される場合には斜方蒸着時の蒸着方向により制御する方法を挙げることができる。すなわち、図5(a)に示す構成を実現するに際しては、例えば、基板10Aの外面側に紙面と垂直な方向の透過軸を有する偏光板を設け、かつ配向膜40に対して紙面と平行な方向にラビング処理を施せばよい。
【0032】
尚、本実施形態の液晶ライトバルブ110R、110G、110Bでは、その液晶層50が、90°ツイストのTNモードの液晶で構成されており、液晶の旋光性を利用して表示を行うようになっている。このような表示モードにおいて、液晶層50に入射する直線偏光は、光入射面に配置された液晶分子51aの長軸方向と平行に振動する光(異常光モード)であっても、短軸方向と平行に振動する光(常光モード)であっても、視角特性に若干の変化を生じる以外は、同様の表示特性を呈する。従って、本実施形態のように、青色光変調用の液晶ライトバルブ110Bでは常光モードで表示を行い、それ以外の液晶ライトバルブ110R、110Gでは異常光モードで表示を行うようにしても、その表示品質に差異を生じることはない。
【0033】
また、本実施形態では、赤色光、緑色光変調用の液晶ライトバルブ110R、110Gでは、図5(b)に示すように、異常光モードを用いて表示を行う構成としたが、これらの液晶ライトバルブ110R、110Gにおいて、液晶ライトバルブ110Bと同様に、液晶層50の原色光入射面に配置された液晶分子51aに対して、その短軸方向と平行に振動する直線偏光を入射させるようにしてもよいのは勿論である。
ただし、本実施形態の如く、液晶ライトバルブ110Bとそれ以外の液晶ライトバルブ110R、110Gの表示モードを異ならせて構成するならば、各液晶ライトバルブ110R、110G、110Bの液晶の劣化速度を揃えることができるので、表示画像の色バランスが経時的に変化し難くなり、色バランスの調整を頻繁に行うことなく高品質の表示を長期間に渡り提供できる投射型表示装置とすることができる。
【0034】
(液晶ライトバルブの寿命試験)
本例では、液晶層の原色光入射面に配置された液晶の配向方向と、液晶層に入射する原色光の偏光方向との配置関係を変えた2種類の液晶パネルを、上記実施形態の投射型表示装置の青色光変調用液晶ライトバルブ110Bとして用いた場合の液晶パネルの寿命について調査した。
図7及び図8は、液晶ライトバルブ110Bの寿命試験におけるパネル構成を示す模式図であり、図7は、紙面に平行な液晶分子51aに対して、紙面に平行な直線偏光LBを入射させる構成(異常光モード)、図8は、紙面に平行な液晶分子51aに対して、紙面と垂直な直線偏光LBを入射させる構成(常光モード)である。
【0035】
寿命試験において、投射型表示装置の光源101として超高圧水銀ランプを用い、ランプへの供給電力を調整してその光強度を1,000(lm)〜50,000(lm)の範囲で種々に変更して、青色光変調用液晶ライトバルブ110Bの寿命を調査した。尚、液晶ライトバルブの寿命については、白表示の明るさが初期状態の1/2になるまでの時間を計測した。
図7及び図8に示す構成での寿命測定結果を、それぞれ表1、表2に示す。これらに表に併記している「寿命判定」については、寿命が10,000時間以上であった条件を「OK」、10,000時間未満であった条件を「NG」としている。これは、投射型表示装置に限らず民生機器用途では、寿命10,000時間が必要とされているためである。
【0036】
本発明の要件を満たす構成である、図8に示す常光モードの表示では、表2に示すように光源の光強度が20,000(lm)であっても32,000時間という長寿命が得られており、光源を50,000(lm)とした場合にも、判定としては「NG」であるものの、9,000時間の寿命が得られている。これに対して、図7に示す異常光モード表示とした場合には、表1に示すように、光源強度10,000(lm)で10,000時間未満の寿命となっており、液晶ライトバルブ110Bの劣化が進行しやすいことが分かる。
【0037】
このように、本発明の要件を満たす構成とするならば、光源強度が10,000(lm)を超えるような強力な光源を用いたとしても、極めて長寿命の投射型表示装置を提供することができる。また、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ等の強力な光源は、短波長域に強いピークを有するが、本発明の構成によれば、このような分光分布に偏りを有する光源を用いた場合にも、十分に民生機器用途に展開することができ、かつ色再現範囲の広い投射型表示装置を提供することができる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施形態の投射型表示装置を示す概略構成図。
【図2】 図2は、実施形態に係る液晶パネルの回路構成図。
【図3】 図3は、同、平面構成図。
【図4】 図4は、同、断面構成図。
【図5】 図5(a)は、青色光変調用液晶ライトバルブの断面説明図、図5(b)は、赤色光又は緑色光変調用液晶ライトバルブの断面説明図。
【図6】 図6は、液晶分子の分子構造の一例を示す図。
【図7】 図7は、液晶ライトバルブの寿命試験におけるパネル構成を示す模式図。
【図8】 図8は、液晶ライトバルブの寿命試験におけるパネル構成を示す模式図。
【図9】 図9は、メタルハライドランプの分光分布を示すグラフ。
【図10】 図10は、超高圧水銀ランプの分光分布を示すグラフ。
【符号の説明】
101 光源、102〜104 ダイクロイックミラー(色分離手段)、
110R、110G、110B 液晶ライトバルブ、
LR 赤色光、LG 緑色光、LB 青色光(原色光)、
50 液晶層、51,51a 液晶分子、
Claims (4)
- 光源と、該光源から供給される複数の原色光に対応して設けられた複数の液晶ライトバルブとを備えた投射型表示装置であって、
前記液晶ライトバルブが、略90°ツイストのTN液晶を含む液晶層を有しており、
前記複数の液晶ライトバルブのうち青色相の原色光に対応する液晶ライトバルブの液晶層において、その原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向が、当該液晶層に入射する原色光の偏光方向と略直交する向きとされており、
前記複数の液晶ライトバルブのうち、前記青色相の原色光以外に対応する液晶ライトバルブの液晶層に入射する原色光の偏光方向と、当該液晶層の原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向とが、略平行に配置されていることを特徴とする投射型表示装置。 - 前記光源の強度が10,000(lm)以上であることを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
- 前記光源が、メタルハライドランプ又は超高圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の投射型表示装置。
- 前記青色相に対応する液晶ライトバルブの液晶層の原色光入射側に偏光板が設けられ、前記偏光板の透過軸が、前記液晶層の原色光入射面に配置された液晶分子の配向方向と略直交する向きに配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
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