また、上記特許文献1では、シフト操作装置やステアリングホイールの各スイッチが予め定められた判定時間以上連続して指示(すなわちON操作)された場合に初めてその操作結果を受け付けることにより、スイッチのオン(ON)操作時のチャタリングや運転者の誤ったスイッチのON操作に伴う目標減速度の設定が回避されて運転者が減速度を元に戻す煩わしさが回避されている。
しかしながら、減速度指示装置としてはフロアーコンソールに設けられるシフト操作装置やステアリングホイールに設けられる操作スイッチなど種々の態様が可能であり、例えば前記Eポジションへ操作されることなくスイッチのON操作を受け付けるようにする場合において、上記判定時間が一律に設定されると目標減速度の設定の利便性が低下して減速度制御性が低下する可能性があった。
例えば、一般的には、ステアリングホイールに操作スイッチを設ける場合にEポジションへ操作されることなくスイッチ操作を受け付けるようにすることが考えられ、またこのステアリングホイールの操作スイッチの方がフロアーコンソールに備えられるシフトレバーに比較して運転者の誤った操作がより発生し易いと仮定している。運転者は目標減速度の設定を意図して積極的にシフトレバーをEポジションへ操作するものであり、上記判定時間がステアリングホイールの操作スイッチにおける誤操作による減速度変化を防止するために適した値に設定されると、EポジションにおけるシフトレバーによるDecel側またはCan−Decel側への操作に対する応答性が低下して車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されない可能性があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、減速度指示装置による目標減速度の指示に基づいて車両の減速度を制御する車両用減速度制御装置において、減速度指示装置による目標減速度の指示を適切に減速度に反映して減速度制御性を向上することにある。
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) 人為的な操作により車両の目標減速度を指示する複数の減速度指示装置と、(b) その減速度指示装置による目標減速度の指示が所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段と、(c) 操作された前記減速度指示装置の種類に基づいて前記無反応時間を変更する無反応時間変更手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記減速度指示装置による目標減速度の指示が入力開始から所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度が制御される車両用減速度制御装置において、無反応時間変更手段により操作された減速度指示装置の種類に基づいて前記無反応時間が変更されるので、減速度指示装置による車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。例えば、運転者の誤操作はフロアーコンソールに設けられる減速度指示装置よりステアリングホイール近傍に設けられる減速度指示装置の方が誤って操作される可能性が高いと仮定され、操作された減速度指示装置の種類に合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
ここで、好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、(a) 人為的な操作により車両の目標減速度を指示する減速度指示装置と、(b) その減速度指示装置による目標減速度の指示が所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段と、(c) 前記減速度指示装置の操作履歴に基づいて前記無反応時間を変更する無反応時間変更手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記減速度指示装置による目標減速度の指示が入力開始から所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度が制御される車両用減速度制御装置において、無反応時間変更手段により前記減速度指示装置の操作履歴に基づいて前記無反応時間が変更されるので、減速度指示装置による車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。例えば、減速度指示装置の操作履歴が多い程、誤操作の可能性は低いと仮定され、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、好適には、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、(a) 人為的な操作により車両の目標減速度を指示する減速度指示装置と、(b) その減速度指示装置による目標減速度の指示が所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段と、(c) その減速度制御手段による車両の減速度制御を行うための減速度制御モードに人為的な操作により設定及び解除する減速度制御モード設定装置と、(d) その減速度制御モード設定装置による減速度制御モードの設定或いは解除に基づいて前記無反応時間を変更する無反応時間変更手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記減速度指示装置による目標減速度の指示が入力開始から所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度が制御される車両用減速度制御装置において、無反応時間変更手段により減速度制御モード設定装置による減速度制御モードの設定或いは解除に基づいて前記無反応時間が変更されるので、減速度指示装置による車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。例えば、減速度制御モード設定装置により減速度制御モードに設定されている場合は、誤操作の可能性は低いと仮定され、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、好適には、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、(a) 人為的な操作により車両の目標減速度を指示する減速度指示装置と、(b) その減速度指示装置による目標減速度の指示が所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段と、(c) 前記減速度指示装置による前記指示の内容に基づいて前記無反応時間を変更する無反応時間変更手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記減速度指示装置による目標減速度の指示が入力開始から所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度が制御される車両用減速度制御装置において、無反応時間変更手段により前記減速度指示装置による前記指示の内容に基づいて前記無反応時間が変更されるので、減速度指示装置による車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、好適には、請求項5にかかる発明では、前記無反応時間変更手段は、前記指示の内容が車両の目標減速度を増加させる場合に前記無反応時間を変更するものである。このようにすれば、減速度指示装置による指示が目標減速度の増加指示である場合には減速度が大きくされるので、それに合わせて無反応時間変更手段により無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、好適には、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、(a) 人為的な操作により車両の目標減速度を指示する減速度指示装置と、(b) その減速度指示装置による目標減速度の指示が所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段と、(c) 車両の走行状態に基づいて前記無反応時間を変更する無反応時間変更手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記減速度指示装置による目標減速度の指示が入力開始から所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度が制御される車両用減速度制御装置において、無反応時間変更手段により車両の走行状態に基づいて前記無反応時間が変更されるので、減速度指示装置による車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、好適には、請求項7にかかる発明では、前記車両の走行状態は、車速で表されるものである。このようにすれば、高車速である程、車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高いので、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。或いは、それに加えて前記減速度指示装置が誤操作されたとしても減速度の変化が回避される。
また、好適には、請求項8にかかる発明では、前記車両の走行状態は、操舵角で表されるものである。このようにすれば、操舵角が大きい程、車両の旋回走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高いので、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。或いは、それに加えて前記減速度指示装置が誤操作されたとしても減速度の変化が回避される。
また、好適には、請求項9にかかる発明では、前記車両の走行状態は、変速機の変速比で表されるものである。このようにすれば、変速機の変速比が大きい程、車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高いので、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。或いは、それに加えて前記減速度指示装置が誤操作されたとしても減速度の変化が回避される。
また、好適には、請求項10にかかる発明では、前記車両の走行状態は、ブレーキ作動の有無で表されるものである。このようにすれば、例えば車輪に設けられたホイールブレーキ等の制動装置が作動している場合には、車両走行に対する減速度変化の影響の出にくい可能性が高いので、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。或いは、それに加えて前記減速度指示装置が誤操作されたとしても減速度の変化が回避される。
また、好適には、請求項11にかかる発明では、前記車両の走行状態は、走行路面の摩擦係数で表されるものである。このようにすれば、走行路面の摩擦係数が小さい程すなわち雪道等の低μ路走行(低摩擦路走行)である程、車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高いので、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。或いは、それに加えて前記減速度指示装置が誤操作されたとしても減速度の変化が回避される。
また、好適には、請求項12にかかる発明の要旨とするところは、(a) 人為的な操作により車両の目標減速度を指示する減速度指示装置と、(b) その減速度指示装置による目標減速度の指示が所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段と、(c) 前記目標減速度に基づいて前記無反応時間を変更する無反応時間変更手段とを、含むことにある。
このようにすれば、前記減速度指示装置による目標減速度の指示が入力開始から所定の無反応時間を超えて継続して入力された場合にその指示に基づいて車両の減速度が制御される車両用減速度制御装置において、無反応時間変更手段により前記目標減速度に基づいて前記無反応時間が変更されるので、減速度指示装置による車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。例えば、目標減速度が大きい程、車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高いので、それに合わせて無反応時間が変更されれば車両の目標減速度の指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
ここで、好適には、本発明の車両用減速度制御装置は、例えばエンジンおよび電動機を車両の駆動輪との間で動力伝達可能に備えている車両に好適に適用されるが、エンジンのみ或いは電動機のみ車両の駆動輪との間で動力伝達可能に備えているものでも良いなど、種々の車両に適用され得る。電動機は、電気エネルギーを回転運動に変換する電動モータや、回転運動を電気エネルギーに変換する発電機、或いはその両方の機能を備えているもの(モータジェネレータ)である。
また、本発明は、エンジンのみを動力源とするエンジン駆動車両や、電動機のみを動力源とする電気自動車、エンジンおよび電動機の両方を動力源とするハイブリッド車両、エンジンや電動機以外の原動機を動力源として備えている車両、或いは3つ以上の原動機を備えている車両など、種々の車両に適用され得る。ハイブリッド車両には、エンジンの動力を直接駆動輪に伝達可能なパラレルハイブリッド車両と、エンジンからの動力は発電にのみ使用され駆動輪には直接伝達されないシリーズハイブリッド車両がある。
また、減速度制御手段による車両の減速度制御(ブレーキ力制御)は、自動変速機の変速比の変更によるエンジンブレーキ制御や、電動機の回生制動トルク、逆回転方向の力行トルクによるブレーキ力の増大、或いは正回転方向の力行トルクによるブレーキ力の低減等により、所定のブレーキ力を発生するように行われるが、このような動力源ブレーキの他に、車輪に設けられたホイールブレーキ等の他の制動装置を用いてブレーキ力を制御することもできる。
また、エンジンの種類によっては、吸排気バルブの開閉タイミングやリフト量、或いはスロットル弁開度などを制御してエンジンブレーキ力を制御することもできるなど、種々の態様が可能である。
また、前記自動変速機としては、複数組の遊星歯車装置の回転要素が油圧式摩擦係合装置によって選択的に連結されることによりギヤ段が切換られる遊星歯車式多段変速機、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられるベルト式無段変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされたトラクション型無段変速機、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備えてそれら複数対の変速ギヤのいずれかを油圧アクチュエータにより駆動される同期装置によって択一的に動力伝達状態とする同期噛合型平行2軸式自動変速機などにを用いることもできる。
また、上記遊星歯車式多段変速機は、複数のギヤ段が択一的に達成されるものであればよく、例えば、前進4段、前進5段、前進6段、前進7段、前進8段等の種々の多段式自動変速機が使用され得る。
また、上記有段変速機の変速制御と電動機のトルク制御を併用してブレーキ力を制御する場合、減速度指示装置による目標減速度の指示に基づいて目標減速度を段階的に変化させる時の変化量は、有段変速機の変速によって達成される減速度の変化量よりも小さく、電動機のトルク制御と変速制御との組合せにより、ブレーキ力がきめ細かく制御されるようにすることが望ましい。減速度指示装置による指示に基づく目標減速度の増大側の変化量と減少側の変化量は同じであっても良いが、増大側と減少側の変化量を相違させることもできる。
また、目標減速度に基づいて車両の減速度を制御する減速度制御手段は、目標減速度が得られる必要ブレーキ力を予め定められた演算式やデータマップ(関係)などから求め、動力源ブレーキなどでその必要ブレーキ力を発生させるように構成されるが、必要ブレーキ力は路面勾配や車両重量(乗車人数など)等の運転環境によって変化するため、その運転環境をパラメータとして必要ブレーキ力を求めることが望ましい。減速度を検出して、目標減速度となるようにブレーキ力をフィードバック制御することも可能である。
また、減速度指示装置は、例えばシフトレバーの所定の操作ポジションや、ステアリングホイール、ステアリングコラム、インストルメントパネル等、運転席近傍の種々の部位に配設することが可能で、例えばシフトレバーの操作で目標減速度を指示する第1減速度指示装置と、ステアリングホイール或いはその近傍に第1減速度指示装置とは別個に配設される第2減速度指示装置とを有して構成される。第1減速度指示装置は、ステアリングコラムに配設されるものでも、運転席横のセンターコンソール(フロアーコンソール)部分に配設されるものでも良いが、ステアリングホイールまたはその近傍に第2減速度指示装置が設けられる場合には、運転席横のセンターコンソール部分に配設することが望ましい。但し、請求項2乃至12にかかる発明においては、少なくとも1つの減速度指示装置が備えられておればよい。
また、減速度指示装置は、例えば自動的に原位置に復帰する自動復帰型のスイッチが用いられ、押釦式やレバー式など種々の態様が可能で、例えば1回のON操作毎に目標減速度が1段階ずつアップダウンされるが、ON操作の継続時間によって目標減速度が2段階以上連続的に変化したり飛び越して変化したりするようにしても良い。また、ON操作の継続時間に応じて目標減速度が連続的に変化されるようにしても良い。1つの減速度指示装置は、例えば目標減速度を大きくするDecel用、および目標減速度を小さくするCan−Decel用の一対のスイッチで構成される。
また、減速度指示装置は、手動操作に因らず運転者の音声に反応して目標減速度が1段階ずつアップダウンされる装置や足の操作により目標減速度が1段階ずつアップダウンされる装置等であってもよい。
また、請求項3にかかる発明の減速度制御モード設定装置は、前記シフトレバーの操作ポジションとして、減速度制御モードが設定される減速度制御モード設定位置(減速度制御モード設定ポジション)を有し、シフトレバーがその減速度制御モード設定ポジションへ操作されることにより減速度制御モードが設定されるように構成される。また、その減速度制御モード設定ポジションに、例えば第1減速度指示装置としてDecel用およびCan−Decel用のスイッチが設けられ、シフトレバーの操作で目標減速度を指示(アップダウン)できるように構成される。減速度制御モード設定装置としては、減速度制御モード設定ポジションに替えて或いは加えて、減速度制御モードを設定するON−OFFスイッチ等を設けることも可能である。
また、減速度制御モードは、上記減速度制御モード設定装置の操作で設定されるが、例えばステアリングホイールまたはその近傍などに配設される減速度指示装置のDecelスイッチがON操作されることによっても減速度制御モードが設定されるようにすることが可能である。その場合には、その減速度指示装置のCan−DecelスイッチのON操作で減速度制御モードを解除できるようにすることが望ましい。例えば、Can−Decelスイッチにより減速度制御モードによる減速度制御が実施されていない場合と同等の減速度まで目標減速度が低下させられた場合に減速度制御モードが解除されるようにすれば良い。
また、上記減速度制御モード設定装置により減速度制御モードが設定された場合には、単に減速度制御モードをアクティブ(待機状態)にして減速度指示装置の操作を有効状態とするだけでその減速度指示装置の操作を待って減速度制御を開始するものでも良いが、減速度指示装置の操作が行われなくても目標減速度の初期値を設定して直ちに減速度制御が開始されるようになっていても良い。
また、シフトレバーの操作ポジションとして前進走行モード選択ポジション(Dポジションなど)を設け、その前進走行モード選択ポジションへ操作されることにより、自動変速機等の動力伝達切換装置が前進駆動状態とされて前進走行モードが機械的に成立させられるように構成される。また、切換スイッチなどで、前進走行モードが電気的に成立させられるようになっていても良い。
また、前進走行モードは、少なくとも前進駆動状態となってアクセル操作に応じて前進走行するもので、例えば自動変速機の全ての変速範囲で自動的に変速しながら前進走行するフルレンジ自動変速モードなどである。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1の(a) は、本発明が適用されたハイブリッド車両用の駆動装置8の骨子図で、(b) は、駆動装置8に設けられた自動変速機10の複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。車両用駆動装置8は、燃料の燃焼によって動力を発生するエンジン30、第1電動機MG1、第2電動機MG2、および自動変速機10を、その順番で同軸上に備えており、車両の前後方向(縦置き)に搭載するFR車両に好適に用いられる。そして、主としてエンジン30および第2電動機MG2が走行用の動力源として使用され、第1電動機MG1は、主としてエンジン始動用および発電用として用いられる。第1電動機MG1、第2電動機MG2は、何れも電動モータおよび発電機の両方の機能を有するものである。また、第1電動機MG1は、図示しないダンパを介してエンジン30に接続されているとともに、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間にはクラッチCiが設けられ、エンジン30および第1電動機MG1と第2電動機MG2との間の動力伝達を遮断できるようになっている。なお、電動機MG1、MG2、自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1(a) では中心線の下半分が省略されている。
自動変速機10は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力部材に相当するもので、第2電動機MG2のロータに一体的に連結されており、出力軸24は出力部材に相当するもので、プロペラシャフトや差動歯車装置32等を介して左右の駆動輪34を回転駆動する。
図2は、上記自動変速機10の第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の回転速度を直線で表すことができる共線図で、下の横線が回転速度「0」で、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度であり、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態(係合、解放)に応じて第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の8つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、第1後進ギヤ段「Rev1」および第2後進ギヤ段「Rev2」の2つの後進ギヤ段が成立させられる。図1の(b) の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態との関係をまとめたもので、「○」は係合を表している。各ギヤ段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められ、図1(b) に示す変速比は、ρ1=0.463、ρ2=0.463、ρ3=0.415の場合である。なお、図1(a) の符号26はトランスミッションケースである。
図3は、上記自動変速機10やエンジン30、電動機MG1、MG2などを制御するために車両に設けられた制御系統の概略を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ52により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン30の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によって開き角(開度)θTHが制御される電子スロットル弁56が設けられている。また、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ62、車速V(出力軸24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ64、第1電動機MG1の回転速度NM1を検出するためのMG1回転速度センサ66、第2電動機MG2の回転速度NM2(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのMG2回転速度センサ68、フットブレーキが操作されたことを検出するためのフットブレーキスイッチ70、シフト操作装置71に備えられたシフトレバー72の操作ポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、シフトレバー72がEポジションへ操作されたことを検出するためのEポジションスイッチ76、電動機MG1、MG2に接続されたバッテリ77の残容量(蓄電量、充電量)SOCを検出するためのSOCセンサ78、第1減速促進スイッチ(以下第1Decelスイッチという)80、第1減速抑制スイッチ(以下第1Can−Decelスイッチという)81、第2減速促進スイッチ(以下第2Decelスイッチという)82、第2減速抑制スイッチ(以下第2Can−Decelスイッチという)83、ステアリングホイール84の操舵角(操舵量)θWを検出するためのステアリングセンサ85などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、車速V、第1電動機回転速度NM1、第2電動機回転速度NM2、フットブレーキの操作の有無、シフトレバー72の操作ポジションPSH、Eポジションへの操作の有無、残容量SOC、第1Decelスイッチ80からの指令信号Decel1、第1Can−Decelスイッチ81からの指令信号Can−Decel1、第2Decelスイッチ82からの指令信号Decel2、第2Can−Decelスイッチ83からの指令信号Can−Decel2、操舵角θWなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
前記電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御、電動機MG1、MG2の力行/回生制御などを行い、エンジン30や電動機MG1、MG2の作動状態が異なる複数の運転モードで走行する。図4は、運転モードの一例で、エンジン走行モードでは、クラッチCiを係合させてエンジン30を接続し、そのエンジン30により駆動力を発生させて走行する。エンジン30に余裕がある場合など、必要に応じて第1電動機MG1を回生制御してバッテリ77を充電することもできる。エンジン+モータ走行モードでは、クラッチCiを係合させてエンジン30を接続し、そのエンジン30および第2電動機MG2により駆動力を発生させて走行する。モータ走行モードでは、クラッチCiを解放してエンジン30を遮断し、第2電動機MG2により駆動力を発生させて走行する。バッテリ77の残容量SOCが少ない場合など、必要に応じてエンジン30を作動させるとともに第1電動機MG1を回生制御してバッテリ77を充電する。減速度制御を行うための減速度制御モードでは、クラッチCiを係合させてエンジン30を接続し、フューエルカットによりエンジン30に対する燃料供給を遮断してエンジンブレーキを発生させるとともに、第2電動機MG2を力行或いは回生制御することにより、所定の動力源ブレーキを発生させる。第1電動機MG1についても、第2電動機MG2と同様に力行或いは回生制御して、動力源ブレーキの調整に使用することができる。
また、上記電子制御装置90による自動変速機10の変速制御は、シフトレバー72の操作ポジションPSHに応じて行われる。シフトレバー72を有するシフト操作装置71は例えば運転席近傍のフロア部分、具体的には運転席の左側のセンターコンソール部分に配設され、そのシフトレバー72は図5に示すシフトパターン73すなわちシフト操作装置71が備えるシフトポジションに従って移動操作されるようになっており、シフトパターン73には「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、「7」、「6」、・・・「L」の操作ポジションが車両の前後方向に沿って設けられている。「P」ポジションは駐車位置で、自動変速機10は動力伝達遮断状態とされるとともに、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってパーキングロック機構などにより機械的に出力軸24、すなわち駆動輪が回転不能に固定される。「R」ポジションは後進走行を行なう後進走行位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従って油圧制御回路98(図3参照)のマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10は前記後進ギヤ段「Rev1」または「Rev2」が成立させられる。「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10はクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の全部が解放されて動力伝達遮断状態とされる。
「D」ポジションは、自動変速機10の前進ギヤ段を自動的に切り換えて前進走行する前進走行位置すなわち前進走行ポジションで、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を成立させることが可能とされ、それ等の総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(フルレンジ自動変速モード)が成立させられる。すなわち、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作されると、そのことをレバーポジションセンサ74のDポジション接点信号から判断してDレンジを電気的に成立させ、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の総ての前進ギヤ段を用いて変速制御を行う。具体的には、油圧制御回路98に設けられた複数のソノレイド弁やリニアソレノイド弁のATソレノイド99の励磁、非励磁を制御することにより油圧回路を切り換え、図1(b) に示すようにクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の作動状態を変化させて、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図6に示すように車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された関係(変速マップ)等の変速条件に従って行われ、車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の前進ギヤ段を成立させる。
「7」〜「L」ポジションは、予め定められた複数の変速レンジを手動操作で切り換えるマニュアル変速ポジションで、それ等の操作ポジション「7」、「6」、・・・「L」に応じて図7に示す7、6、・・・Lの各変速レンジが成立させられる。図7は、変速レンジとその変速範囲を示す図で、ギヤ段の欄の数字「1」〜「8」は第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」を表しており、変速比が最も大きい最低速前進ギヤ段は何れも第1速前進ギヤ段「1st」で、最高速前進ギヤ段が1つずつ変化している。また、各変速レンジでは、第1速前進ギヤ段「1st」からその最高速前進ギヤ段までの範囲で、前記Dレンジと同じ変速条件に従って自動的に変速が行なわれる。したがって、例えば下り坂などでシフトレバー72が「D」ポジションから、「7」ポジション、「6」ポジション、「5」ポジション、・・・へ順次切換操作されると、変速レンジがD→7→6→5→・・・へ切り換えられ、第8速前進ギヤ段「8th」から第7速前進ギヤ段「7th」、第6速前進ギヤ段「6th」、第5速前進ギヤ段「5th」・・・へ順次ダウンシフトされることになる。
前記「D」ポジションの横例えば運転席に近い側には「E」ポジションが設けられている。この「E」ポジションは、減速度制御を実施する減速度制御モード(Eモード)を設定するための減速度制御モード設定位置(減速度制御モード設定ポジション)であり、指示操作体としてのシフトレバー72が「E」ポジションへ選択的に移動操作されると、そのことがEポジションスイッチ76によって検出される。「E」ポジションの前後には、目標減速度GMを指示するための目標減速度指示位置として、目標減速度GMを小さくするための「Can−Decel」位置、および目標減速度GMを大きくするための「Decel」位置が設けられており、シフトレバー72がそれ等の「Decel」位置または「Can−Decel」位置へ選択的に操作されると、そのことが前記第1Decelスイッチ80、第1Can−Decelスイッチ81によって検出され、前記指令信号Decel1、指令信号Can−Decel1で表される目標減速度GMの指示信号が電子制御装置90に供給される。これにより、動力源ブレーキによって減速度を制御する減速度制御モードにおける目標減速度GMが変更され、減速度を増したい場合すなわち急激な制動を行いたい場合にはシフトレバー72を後方(「Decel」位置側)へ倒せば良く、減速度を低減したい場合すなわち緩やかな制動を行いたい場合にはシフトレバー72を前方(「Can−Decel」位置側)へ倒せば良い。Eポジションスイッチ76は、シフトレバー72が「Decel」位置または「Can−Decel」位置へ操作されてもON状態を維持する。
上記「Decel」位置、「Can−Decel」位置への操作に関して、シフトレバー72は前後方向に連続的にスライドするのではなく、節度感を持って動く。すなわち、シフトレバー72は、中立状態、前方に倒した状態、後方に倒した状態の3つのうち何れかの状態を採る。運転者がシフトレバー72に加える力を緩めれば、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により直ちに中立位置すなわち「E」ポジションへ戻されるようになっており、第1Decelスイッチ80および第1Can−Decelスイッチ81はそれぞれスプリング等の付勢手段により自動的にOFF状態に復帰する。これ等の第1Decelスイッチ80、第1Can−Decelスイッチ81およびそれらスイッチ80、81をON操作するシフトレバー72が第1の減速度指示装置(以下第1減速度指示装置75という)であり、またそれらを備えるシフト操作装置71を第1減速度指示装置75としてもよい。なお、第1減速度指示装置75(シフト操作装置71)は減速度制御モード設定装置を兼ねており、シフトレバー72が「E」ポジションへ操作されることによりEポジションスイッチ76をONにして減速度制御モードが設定されるとともに、シフトレバー72が「D」ポジションへ戻されることによりEポジションスイッチ76がOFFとされて減速度制御モードが解除される。
また、上述したシフトレバー72の操作の他、図8に示すようにステアリングホイール84の近傍のステアリングコラム86に配設された指示操作体としての第2Decelスイッチ82および第2Can−Decelスイッチ83が矢印で示すように回動操作(ON操作)されることによっても、目標減速度GMが設定させられる。すなわち、上記第2Decelスイッチ82、第2Can−Decelスイッチ83が目標減速度GMの指示のための目標減速度指示位置すなわちこれ等のスイッチ82、83をON状態とする位置に回動操作されると、これ等スイッチ82、83から前記指令信号Decel2、指令信号Can−Decel2で表される目標減速度GMの指示信号が電子制御装置90に出力され、目標減速度GMが設定される。第2Decelスイッチ82および第2Can−Decelスイッチ83は、何れも運転者によりON操作される自動復帰型のスイッチで、それぞれスプリング等の付勢手段により自動的に原位置(OFF状態)まで戻り回動させられる。また、位置固定のステアリングコラム86に設けられているため、運転者がステアリングホイール84を回転操作している最中でも容易に操作できる。これ等の第2Decelスイッチ82および第2Can−Decelスイッチ83は第1減速度指示装置75と相互に異なる位置に配設された第2の減速度指示装置(以下第2減速度指示装置88という)でもある。また、第2減速度指示装置88は減速度制御モード設定装置を兼ねており、第2Decelスイッチ82がON操作されることにより減速度制御モードが設定されるとともに、第2Can−Decelスイッチ83がON操作されることにより減速度制御モードによる減速度制御が実施されていない場合と同等の減速度まで目標減速度GMが低下させられた場合に減速度制御モードが解除される。
図9は、前記電子制御装置90の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。シフトポジション判定手段100は、レバーポジションセンサ74からのシフトレバー72の操作ポジションPSHを表す信号に基づいて現在シフトレバー72がいずれのポジションとなっているか、或いはシフトレバー72がいずれのポジションへ操作されたかを判定する。例えば、シフトポジション判定手段100は、上記シフトポジションPSHを表す信号に基づいてシフトレバー72のシフトポジションが「D」ポジションから「E」ポジションへ操作されたか、或いは「E」ポジションから「D」ポジションへ操作されたか否かを判定する。また、シフトポジション判定手段100は、Eポジションスイッチ76のON信号に基づいてシフトレバー72の操作ポジションが「E」ポジションであるか否かを判定する。
目標減速度設定手段102は、第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示に基づいて目標減速度GMを変更設定する。また、減速度制御手段104は、目標減速度設定手段102により設定された目標減速度GMに基づいて車両の減速度を制御する。以下に、この目標減速度設定手段102および減速度制御手段104による車両の減速度制御を具体的に説明する。
上記車両の減速度制御は、シフトポジション判定手段100によりシフトレバー72の操作ポジションが「E」ポジションであると判定された場合、或いはステアリングコラム86に配設された第2Decelスイッチ82が操作されることによって指令信号Decel2が出力された場合には、前記減速度制御手段104により減速度制御モードが設定されることにより実行される。図10は、その減速度制御が行われた場合のタイムチャートの一例である。
前記目標減速度設定手段102は、シフトレバー72が「Decel」位置または「Can−Decel」位置へ操作されたことが第1Decelスイッチ80または第1Can−Decelスイッチ81により検出されることによって指令信号Decel1または指令信号Can−Decel1が発生したか否か、或いはステアリングコラム86に配設された第2Decelスイッチ82または第2Can−Decelスイッチ83が操作されることによって指令信号Decel2または指令信号Can−Decel2が発生したか否かを判断する。
そして、上記目標減速度設定手段102は、上記スイッチ80、81、82、83から何れの指令信号も発生していないと判断した場合には、現在の目標減速度GMを維持し、前記減速度制御手段104はその目標減速度GMで減速するように動力源ブレーキ、すなわち自動変速機10の変速制御によるエンジンブレーキ制御および第2電動機MG2のトルク制御を行う。減速度制御モードの設定時に定められる目標減速度の変化量ΔGMの初期値は0で、その後の第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88の操作を有効にするように減速度制御モードをアクティブ(待機状態)にするだけであり、実質的に減速度制御は行われない。すなわち、目標減速度変化量ΔGM=0は、DレンジにおけるアクセルOFFの惰性走行時で、フューエルカット状態のエンジンブレーキのみが作用している場合に、特別な減速度制御を行うことなく得られる減速度で、自動変速機10のギヤ段に基づいて車速Vに応じて発生するエンジンブレーキ力によって得られる基準値(図12の破線参照)である。図10のタイムチャートのt1時点は、シフトレバー72が「E」ポジションへ操作されることにより、減速度制御モードがアクティブ(ON、待機状態)とされたことを示している。
前記目標減速度設定手段102は、前記スイッチ80、81、82、83から何れか指令信号が発生したと判断した場合には、第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示に基づいて目標減速度GMを設定し、前記減速度制御手段104はその設定された目標減速度GMに基づいて動力源ブレーキを制御する。例えば、目標減速度設定手段102は、指令信号Decel1および指令信号Can−Decel1と、指令信号Decel2および指令信号Can−Decel2とを区別することなく処理するようになっており、指令信号Decel1またはDecel2が出力された場合には目標減速度GMを予め定められた一定の目標減速度変化量ΔGMすなわち変化量β(図12参照)だけ増大させる一方、指令信号Can−Decel1またはCan−Decel2が出力された場合には目標減速度GMを変化量βだけ減少させる。
また、目標減速度設定手段102は、誤操作による目標減速度GMの変更を防止するため、指令信号Decel1、Decel2や指令信号Can−Decel1、Can−Decel2が予め定められた判定時間TDON以上継続して出力された場合に有効状態と判断し、その指令信号に基づいて目標減速度GMを設定する。この判定時間TDONは、第1減速度指示装置75や第2減速度指示装置88の操作時のスイッチのチャタリングや運転者の誤ったスイッチ操作に伴う目標減速度GMの設定が回避されるように予め実験的に定められて記憶されている時間であり、例えば0.1秒程度に設定される。
ここで、目標減速度GMの初期値である目標減速度変化量ΔGM=0すなわち減速度制御が実施されていない状態で、シフトレバー72が「Decel」位置へ操作されるか或いはステアリングコラム86に配設された第2Decelスイッチ82がON操作されると、図12に実線で示すように車速Vをパラメータとする目標減速度GMが減速度制御無し状態(図12の破線)よりも変化量βだけ大きい値に設定される。すなわち、新たに減速度制御が開始される時には、その開始時の目標減速度GM0(図12の破線)を基準として、その時の車速Vに応じた目標減速度GMが上記変化量βに基づいて設定されるのである。目標減速度GMの設定に際しては、図13に示すように路面勾配が考慮されることも可能であり、下り勾配では水平な平坦路よりも大きな目標減速度GMが設定されるようにしても良い。なお、減速度制御が実施されていない場合の減速度は、ギヤ段の切換位置に凹凸ができるが、図12の破線はその凹凸を平滑化して示したものであり、減速度制御モードで設定される目標減速度GMは、図12に実線や一点鎖線で示すようにそのような凹凸の無いデータマップ(関係)或いは演算式に従って設定される。また、本実施例では減速度指示装置のON操作毎の変化量βが一定値であるが、車速V等をパラメータとして可変設定されるようにしても良いし、目標減速度GMの増加側と減少側とで異なる値としても良い。また、指令信号Decel1、Decel2や指令信号Can−Decel1、Can−Decel2の継続時間が長くなることに応じて変化量βを連続的に大きく変化させ、目標減速度GMを連続的に変化させるようにすることもできる。
図10のt2時点はシフトレバー72が「Decel」位置へ操作されることにより指令信号Decel1がONとなり、図12に実線で示す目標減速度GMが設定されて減速度制御が開始されたことを示しており、t3時点はシフトレバー72が更に「Decel」位置へ操作されて指令信号Decel1がONとなり、目標減速度GMが更に1段階(β)増加させられたことを示している。
図11は、減速度制御を実行中の別の例を示すタイムチャートで、t1時点はシフトレバー72が「Decel」位置へ操作されて指令信号Decel1がONとなり、目標減速度GMが1段階(β)増加させられたことを示しており、t3時点はステアリングコラム86の第2Decelスイッチ82が操作されて指令信号Decel2がONとなり、目標減速度GMが更に1段階(β)増加させられたことを示している。また、t4時点はステアリングコラム86の第2Can−Decelスイッチ83が操作されて指令信号Can−Decel2がONとなり、目標減速度GMが1段階(β)減少させられたことを示しており、t5時点はシフトレバー72が「Can−Decel」位置へ操作されて指令信号Can−Decel1がONとなり、目標減速度GMが更に1段階(β)減少させられたことを示している。この変化量βは、自動変速機10の変速によって達成される減速度の変化量よりも小さく、第2電動機MG2の回生トルク制御と変速制御との組合せによってブレーキ力がきめ細かく制御されるようになっており、t3時点では自動変速機10が第8速前進ギヤ段「8th」から第7速前進ギヤ段「7th」へダウンシフトされるとともに、第2電動機MG2の回生トルクが1段階だけ小さくされることにより、目標減速度GMの変化量βに対応する所定量だけ動力源ブレーキが増大させられる。
また、前回のON操作からの時間間隔TDが予め定められたOFF時間TDOFFよりも短い場合には、短時間の連続操作によって減速度が大きく変化することを回避するため、そのON操作を無効状態とするようになっており、図11のt2時点は、シフトレバー72の「Decel」位置への操作に拘らず現在の目標減速度GMが維持された場合である。このOFF時間TDOFFは、シフトレバー72の「Can−Decel」位置への操作や第2Decelスイッチ82、第2Can−Decelスイッチ83についても同様に適用され、減速度の変化が大きくなることが防止されるが、Decel側すなわち目標減速度GMの増大側のみ制限し、目標減速度GMを低減するCan−Decel側については連続操作を有効状態とするなど、種々の態様が可能である。この他、減速度制御による自動変速機10のダウンシフトでエンジン回転速度NEがオーバー回転になったり、駆動力変化で車両の挙動が不安定になったりする場合等も、動力源ブレーキの制御がキャンセルされる。
ところで、本実施例では、減速度指示装置として第1減速度指示装置75および第2減速度指示装置88が備えられており、第1減速度指示装置75においてはシフトレバー72が「E」ポジションに操作されることにより減速度制御モードが設定され、第2減速度指示装置88においては第2Decelスイッチ82がON操作されることにより減速度制御モードが設定される。一般的に、運転席横のフロアーコンソール部分に配設される第1減速度指示装置75に比較して、ステアリングホイールまたはその近傍に設けられる第2減速度指示装置88の方が誤って操作される可能性が高いと仮定され、減速度の変化が発生しやすいと考えられる。また、ユーザ(運転者)は目標減速度GMの設定を意図して減速度制御モードを設定するものであり、その減速度制御モード時には、第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88の操作に対して応答性よく目標減速度GMの指示が減速度に反映されることを望むものと考えられる。しかしながら、前記判定時間TDONは一律に設定されており、目標減速度GMの設定の利便性が低下して減速度制御性が低下する可能性があった。例えば、第2減速度指示装置88においては減速度制御モードの設定と目標減速度GMの増加指示が第2Decelスイッチ82のON操作により行われるため、運転者の誤った操作による減速度の変化を回避することと目標減速度GMの増加指示の応答性を向上することとを考慮して前記判定時間TDONを設定するという相反する要求があった。
そこで、前記判定時間TDONとは別に遊び時間すなわち所定の無反応時間TCが設けられ、前記目標減速度設定手段102は、前述の機能に加え第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示が入力開始からその無反応時間TC経過後に判定時間TDON以上継続して入力された場合に目標減速度GMを変更設定する。例えば、目標減速度GMの指示を受け付ける為の判定時間が上記判定時間TDONに対して長い時間例えば0.2〜0.3秒程度となるように上記無反応時間TCが設けられるのである。例えば、前記目標減速度設定手段102は、目標減速度GMを変更設定する条件が成立したか否かを判定する変更条件成立手段112を備え、変更条件成立手段112により目標減速度GMを変更設定する条件が成立したと判定され且つ目標減速度GMの指示が判定時間TDON以上継続して入力された場合に目標減速度GMを変更設定する。この変更条件成立手段112は、目標減速度GMを変更設定する条件としての第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示が入力開始から無反応時間TC経過したか否かを判定する。
無反応時間変更手段114は、目標減速度GMの指示のために操作された減速度指示装置の種類例えばシフトレバー72を有する第1減速度指示装置75および第2減速度指示装置88の何れであるかに基づいて無反応時間TCを変更する。
具体的には、無反応時間変更手段114は、減速度制御モードが解除された状態において第2Decelスイッチ82のON操作が行われた場合には、第1Decelスイッチ80或いは第1Can−Decelスイッチ81のON操作が行われた場合に比較して長くされた無反応時間TCすなわち予め実験的に定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1を設定する。反対に、無反応時間変更手段114は、第1Decelスイッチ80或いは第1Can−Decelスイッチ81のON操作が行われた場合には、略零乃至上記予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCを設定する。また、減速度制御モードが設定された状態において第2Decelスイッチ82或いは第2Can−Decelスイッチ83のON操作が行われた場合には、第1Decelスイッチ80或いは第1Can−Decelスイッチ81のON操作が行われた場合と同等の状態であるので、無反応時間変更手段114は、略零乃至予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCを設定する。
第2減速度指示装置操作判定手段116は、第2減速度指示装置88が初めて操作されたか否かを判定する。具体的には、第2減速度指示装置操作判定手段116は、減速度制御モードが解除された状態において第2Decelスイッチ82のON操作が行われたか否かを判定する。また、第2減速度指示装置操作判定手段116は、減速度制御モードが設定された状態において第2Decelスイッチ82或いは第2Can−Decelスイッチ83のON操作が行われたか否かを判定する。上記無反応時間変更手段114は、この第2減速度指示装置操作判定手段116による判定結果に基づいて無反応時間TCを変更する。例えば、上記無反応時間変更手段114は、この第2減速度指示装置操作判定手段116により減速度制御モードが解除された状態において第2Decelスイッチ82のON操作が行われたと判定された場合には、予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1を設定する。或いは、上記無反応時間変更手段114は、第2減速度指示装置操作判定手段116により減速度制御モードが設定された状態において第2Decelスイッチ82或いは第2Can−Decelスイッチ83のON操作が行われたと判定された場合には、略零乃至予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCを設定する。
また、上記無反応時間変更手段114は、車両の走行状態に基づいて無反応時間TCを変更する。図14および図15は、車両の走行状態に基づいて設定される無反応時間TCの一例を示した図である。図14は、操舵角θWをパラメータとして車速Vと無反応時間TCとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)であり、高車速である程車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高く誤操作によるその減速度変化を回避するために無反応時間TCが長くなるように、また操舵角θWが大きい程車両旋回走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高く誤操作によるその減速度変化を回避するために無反応時間TCが長くなるように設定されている。図15は、走行路面の摩擦係数μをパラメータとして車速Vと無反応時間TCとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)であり、高車速である程無反応時間TCが長くなるように、また雪道等の低μ路走行(低摩擦路走行)である程車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高く誤操作によるその減速度変化を回避するために無反応時間TCが長くなるように設定されている。例えば、無反応時間変更手段114は、図14に示すマップから実際の車速Vに基づいて無反応時間TCを変更したり、実際の操舵角θWに基づいて無反応時間TCを変更する。
また、図示はしていないが、自動変速機10のギヤ段(変速比)が大きい程車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高く誤操作によるその減速度変化を回避するために無反応時間TCが長くなるよう設定される。また、駆動輪(車輪)に設けられたホイールブレーキ等の制動装置が作動している場合には車両走行に対する減速度変化の影響の出難い可能性が高いので略零乃至予め定められたホイールブレーキ等の制動装置が作動していない時の無反応時間TCに比較して無反応時間TCが短くなるように設定される。
また、上記無反応時間変更手段114は、目標減速度GMに基づいて無反応時間TCを変更する。図14および図15は、目標減速度GMに基づいて無反応時間TCを設定するために予め記憶された関係を示す一例であって、矢印に示すように同一車速Vにおいては目標減速度GMが大きい程無反応時間TCが長くなるように設定される。目標減速度GMが大きい程車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高く誤操作によるその減速度変化を回避するためである。
図16は、前記減速度制御手段104による減速度制御作動の処理内容を具体的に説明するフローチャートである。
図16のステップR1では、前記目標減速度設定手段102により設定された目標減速度GMに応じて必要ブレーキトルクが算出される。これは、例えば図17に実線で示すように、目標減速度GMが大きくなる程必要ブレーキトルクが大きくなるように予め定められたデータマップ(関係)や演算式に従って求められるが、目標減速度GMを設定する段階で路面勾配を考慮しない場合には、必要ブレーキトルクを求める段階で路面勾配を考慮して、例えば図17に破線で示すように、下り勾配では水平な平坦路よりも大きな必要ブレーキトルクが算出されるようにすることが望ましい。この他、車両重量(乗車人数など)についても、車両重量が大きくなる程必要ブレーキトルクが大きくなるようにすることが望ましい。但し、フットブレーキ操作の有無やフットブレーキ力とは関係なく定められ、フットブレーキ操作の変化によって動力源ブレーキが変化することはない。
ステップR2では、充電状態判定手段106によりバッテリ77の残容量SOCが予め定められた残容量の上限値SOCMAX(以下αと表す)例えば満充電の80%程度の残容量SOC80%以下か否かが判断され、 SOC≦α であればバッテリ77の充電が可能であるため、ステップR3で、必要ブレーキトルクを発生させることができる範囲で高速側の前進ギヤ段が設定されるとともに、ステップR4で第2電動機MG2が回生制御され、エンジンブレーキ力および回生トルクの両方で目的とするブレーキトルクが得られるようにする。また、 SOC>α の場合には、バッテリ77の充電が不可であるため、ステップR5で、必要ブレーキトルクを発生させることができる範囲で低速側の前進ギヤ段が設定されるとともに、ステップR6で第2電動機MG2が力行制御され、その力行トルクでエンジンブレーキ力を低減することにより目的とするブレーキトルクが得られるようにする。
上記ステップR3、R5においては、減速度制御手段104の指令すなわち自動変速機10のギヤ段の設定に従って変速を実行させるための変速出力が変速制御手段108により油圧制御回路98に対して行われることにより、自動変速機16のギヤ段が切り換えられる。また、この変速制御手段108は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびスロットル開度θTHに基づいて変速判断を実行し、判断された変速を実行させるための変速出力を油圧制御回路98に対して行うことにより、自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える。
また、上記ステップR4、R6においては、減速度制御手段104の指令に従ってハイブリッド制御手段110により第2電動機MG2の回生制御或いは第2電動機MG2の力行制御が実行される。
すなわち、動力源ブレーキトルクは、自動変速機10のギヤ段に応じて得られるエンジンブレーキトルクと第2電動機MG2の力行トルク或いは回生トルクとを加算したものであるため、図18に実線で示す各前進ギヤ段におけるエンジンブレーキトルクを中心として、第2電動機MG2を回生制御すれば、その回生トルクに応じて動力源ブレーキトルクをそれぞれ破線で示す範囲まで増大させることができる。また、第2電動機MG2を力行制御すれば、その力行トルクに応じて動力源ブレーキトルクを一点鎖線で示す範囲まで減少させることが可能で、各ギヤ段において得られる動力源ブレーキトルクの範囲が互いにオーバーラップさせられているのである。例えば、第7速前進ギヤ段「7th」で第2電動機MG2を回生制御することによって得られる動力源ブレーキトルクの範囲と、第6速前進ギヤ段「6th」で第2電動機MG2を力行制御することによって得られる動力源ブレーキトルクの範囲は、互いに重複している。したがって、基本的には第2電動機MG2を回生制御してバッテリ77を充電しつつ目的とするブレーキトルクを発生させるが、バッテリ77が満充電で充電不可の場合には、ギヤ段を下げてエンジンブレーキトルクを増大させるとともに、第2電動機MG2を力行制御してブレーキトルクを低下させることにより、目的とするブレーキトルクを得ることができるのである。
図19は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわち第2減速度指示装置88の操作による目標減速度GMの指示に伴って実行される減速度制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行される。また、図20は、図19のフローチャートに示す制御作動の一例であって、第2減速度指示装置88の操作により減速度制御モードが設定される場合の制御作動を説明するタイムチャートである。
図19において、前記第2減速度指示装置操作判定手段116に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、減速度制御モードが解除された状態において第2Decelスイッチ82のON操作が行われたか否かが判定される。図20のt0’時点は、減速度制御モードが解除された状態において第2Decelスイッチ82のON操作が行われたことを示している。このS1の判断が肯定される場合は前記シフトポジション判定手段100に対応するS2において、シフトレバー72の操作ポジションが「E」ポジションであるか否かが判定される。言い換えれば、シフトレバー72の操作により減速度制御モードが設定されているか否かが判定される。上記S1の判断が否定される場合は前記第2減速度指示装置操作判定手段116に対応するS5において、減速度制御モードが設定された状態において第2Decelスイッチ82或いは第2Can−Decelスイッチ83のON操作が行われたか否かが判定される。
上記S2の判断が肯定される場合は前記無反応時間変更手段114に対応するS3において、略零乃至予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCが設定される。上記S2の判断が否定される場合は前記無反応時間変更手段114に対応するS4において、予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1が設定される。上記S5の判断が否定される場合はS10において、現在実行されている減速度制御以外の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記無反応時間変更手段114に対応するS6において、略零乃至予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCが設定される。
上記S3、S4、或いはS6に続いて前記変更条件成立手段112に対応するS7において、第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示すなわち第2Decelスイッチ82のON操作が行われてから無反応時間TC経過したか否かが判定される。図20のt0 ’’時点は、第2Decelスイッチ82のON操作が行われてから無反応時間TC経過したことを示している。
上記S7の判断が肯定される場合は目標減速度設定手段102および減速度制御手段104に対応するS8において、第2減速度指示装置88の操作に基づいて目標減速度GMが設定され、図16のフローチャートに示すようにその目標減速度GMで減速するように動力源ブレーキ、すなわち自動変速機10の変速制御によるエンジンブレーキ制御および第2電動機MG2のトルク制御が実行される。上記S7の判断が否定される場合は目標減速度設定手段102に対応するS9において、現在の目標減速度GMが維持される。図20のt0時点は、第2Decelスイッチ82のON操作に基づいて目標減速度GMが1段階(β)増加させられ、その目標減速度GMで減速するように第2電動機MG2の回生トルク制御と変速制御との組合せによってブレーキ力が制御されていることを示している。
上述のように、本実施例によれば、無反応時間変更手段114により目標減速度GMの指示のために操作された減速度指示装置の種類例えば第1減速度指示装置75および第2減速度指示装置88の何れであるかに基づいて無反応時間TCが変更されるので、減速度指示装置の誤操作による減速度の変化が回避されて、減速度指示装置による目標減速度GMの指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、本実施例によれば、無反応時間変更手段114により車両の走行状態例えば車速V、操舵角θW、自動変速機10の変速比、ホイールブレーキ等の制動装置の作動の有無、走行路面の摩擦係数μ等に基づいて無反応時間TCが変更されるので、減速度指示装置の誤操作による減速度の変化が回避されて、減速度指示装置による目標減速度GMの指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、本実施例によれば、無反応時間変更手段114により目標減速度GMに基づいて無反応時間TCが変更されるので、減速度指示装置の誤操作による減速度の変化が回避されると共に、減速度指示装置による目標減速度GMの指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図23は、前記電子制御装置90の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図9に相当する図である。
減速度指示装置75、88による目標減速度GMの指示の内容が目標減速度GMの増加指示である場合には減速度が大きくされて車両走行に対する減速度変化の影響の出る可能性が高くされる。そこで、前記無反応時間変更手段114は、前述の実施例に替えて或いは加えて、減速度指示装置75、88による目標減速度GMの指示の内容に基づいて無反応時間TCを変更する。
具体的には、指示内容判定手段122は、第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置による目標減速度GMの指示の内容を判定する。例えば、指示内容判定手段122は、シフトレバー72が「Decel」位置へ操作されて指令信号Decel1が出力されるか或いは第2Decelスイッチ82のON操作により指令信号Decel2が出力される場合には目標減速度GMを増加させる指示内容であると判定する。或いは、指示内容判定手段122は、シフトレバー72が「Can−Decel」位置へ操作されて第1Can−Decel指令Can−Decel1が出力されるか或いは第2Can−Decelスイッチ83のON操作により第2Can−Decel指令Can−Decel2が出力される場合には目標減速度GMを減少させる指示内容であると判定する。
前記無反応時間変更手段114は、予め実験的に定められた関係から指示内容判定手段122により目標減速度GMを増加させる指示内容であると判定された場合には、減速度制御モードでない時の無反応時間TC1を設定する。或いは、上記無反応時間変更手段114は、指示内容判定手段122により目標減速度GMを減少させる指示内容であると判定された場合には、略零乃至予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCを設定する。
上述のように、本実施例によれば、無反応時間変更手段114により第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示の内容に基づいて無反応時間TCが変更されるので、減速度指示装置の誤操作による減速度の変化が回避されると共に、減速度指示装置による目標減速度GMの指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例4において前記無反応時間変更手段114は、目標減速度GMを減少させる指示内容である場合には、略零乃至予め定められた減速度制御モードでない時の無反応時間TC1に比較して短くされた無反応時間TCを設定したが、元々無反応時間TCが設定されなくともよい。すなわち、前記指示の内容が車両の目標減速度GMを増加させる場合のみ前記無反応時間が変更されても良い。このようにしても、減速度指示装置75、88の誤操作による減速度の変化が回避されると共に、車両の目標減速度GMの指示が適切に減速度に反映されて減速度制御性が向上される。
また、前述の実施例では、第2Decelスイッチ82がON操作されることにより減速度制御モードが設定されたが、シフトレバー72が「E」ポジションへ操作されたことのみにより減速度制御モードが設定され、この「E」ポジションにおいて第2減速度指示装置88のON操作が有効とされても良い。
また、変更条件成立手段112は、前述の機能に加え、目標減速度GMを変更設定する条件が成立したか否かを、目標減速度GMの変更後の減速度が車両走行に予め実験的に定められた許容減速度以下であるか否かにより判定しても良い。
また、前述の実施例では、第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示に基づいて目標減速度設定手段102により目標減速度GMが設定され、その目標減速度設定手段102により設定された目標減速度GMに基づいて減速度制御手段104により車両の減速度が制御されたが、その目標減速度設定手段102を備えず、第1減速度指示装置75或いは第2減速度指示装置88による目標減速度GMの指示に基づいて直接に減速度制御手段104により車両の減速度が制御されても良い。
また、前述の実施例の図16に示すフローチャートにおいて、第2電動機MG2に加えて第1電動機MG1を力行或いは回生制御すれば、各前進ギヤ段における動力源ブレーキトルクの制御範囲を更に拡大することが可能で、必要ブレーキトルクに応じて3つ以上の前進ギヤ段の中から適当なギヤ段を選択して動力源ブレーキ制御を行うことができるようにすることもできる。第2電動機MG2のトルク容量が大きい場合も、同様に3つ以上の前進ギヤ段の中から選択できるようにすることができる。また、図16のステップR5、R6では、低速側の前進ギヤ段を設定するとともに第2電動機MG2を力行制御してブレーキトルクを低下させるようになっていたが、高速側の前進ギヤ段を設定するとともに第2電動機MG2に逆回転方向の力行トルクを加えてブレーキトルクを増大させるようにしても良い。
また、電動機MG1、MG2のフェールで回生トルクが得られない場合には、自動変速機10の変速制御によるエンジンブレーキ力のみで対応する。逆に、車速Vが低下してクラッチCiが解放された場合など、エンジンブレーキ力が得られない場合は、第2電動機MG2の回生制御のみで対応する。
また、減速度制御の実行中にアクセルペダル50が踏込み操作された場合には、第2電動機MG2のトルク制御を中止するとともに、自動変速機10のギヤ段はそのままでエンジン30の出力をアクセル操作量Accに応じて制御する。シフトレバー72が「E」ポジションから「D」ポジションへ戻し操作されて、減速度制御モードが解除(OFF)された場合には、自動変速機10を含めて全ての減速度制御をキャンセルする。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。