JP4660991B2 - 感光性導電ペースト及び電子部品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、導電ペースト及び導電ペーストを用いて形成した導体パターンを有する電子部品に関し、詳しくは、膜厚の大きい導体パターンを形成するのに適した感光性導電ペースト及びそれを用いて形成した回路などの導体パターンを有する積層インダクタなど電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
高周波電子機器の高密度化や高速信号化に伴い、電子機器が備える高周波回路を構成する配線導体は、微細で、膜厚が大きく、しかも、断面形状が矩形で、断面の底辺寸法に対する高さ寸法の比(高さ寸法/底辺寸法=アスペクト比)の大きいことが求められるようになっている。
【0003】
ところで、従来、基板上に配線を与える厚膜導体膜を形成するにあたっては、有機バインダーに導電性粉末を混合した導電ペーストを用い、これをスクリーン印刷法により、基板上に所望のパターンとなるように付与し、その後、焼成して、有機バインダーを除去するとともに、導電成分を焼結させることが行なわれている。
【0004】
しかし、スクリーン印刷法では、パターン版精度が必ずしも十分ではなく、例えば100μm以下の微細なパターンを形成することは困難である。そこでスクリーン印刷では形成することが困難な微細パターンを得る方法として、特開昭54−121967号公報、特開昭54−13591号公報、特開昭59−143149号公報などに記載されているように、感光性樹脂組成物に導電性粉末を混合した感光性ペーストを用い、これにフォトリソグラフィー技術を適用して、微細パターンの導体膜を基板上に形成する方法が提案されている。
【0005】
ところで、これらの感光性ペーストを用いて、微細で、形状精度の高い良好なパターンを形成しようとすると、十分な感光性を確保することが必要となる。そして、そのためには、導電性粉末の含有率を低くして、感光性樹脂組成物の割合を高くすることが必要となる。しかし、導電性粉末の含有率が低くなると、形成されるパターンの導電性が低くなるという問題点がある。
【0006】
すなわち、上記従来の感光性導電ペーストにおいては、導電性を確保しようとすると導電性粉末(固体粒子)の含有量を大きくすることが必要となり、導電性粉末の含有量を大きくすると、UV光などの照射光が、導電性粉末(固体粒子)による散乱のため、塗膜深部にまで到達しにくく、硬化が不十分になるという問題点があり、また、塗膜深部の硬化が不十分な状態で現像を行うと、パターンの深部(下部)が現像液に溶解し、膜厚の大きい配線を形成しようとすると、現像時にパターン(配線)に剥がれが生じるばかりでなく、パターン(配線)を形成することができたとしても、焼成工程でパターン(配線)が倒れて所望の配線パターンを形成することができなくなったり、あるいはエッジカールを生じて、高周波での端部での電流集中による損失の増大を招いたりする場合があり、さらには、感光性ペーストを用いて導体と絶縁体の積層体を形成する場合には、層間のショートの原因になるというような問題点がある。
【0007】
また、上記問題点を解決するために、感光性樹脂の光に対する感度を向上させる方法が提案されている(特開平5−204151号公報)。
しかし、この感光性樹脂の光に対する感度を向上させる方法には、露光工程における導電性粉末による光の散乱により、硬化することが望ましくない部分まで硬化してしまい、形状精度の高いパターンを形成することができなくなるという問題点がある。
【0008】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、導電性粉末による照射光の散乱を抑制し、塗膜深部にまで照射光を到達させることが可能で、形状精度が高く、アスペクト比の大きいパターンを形成することが可能な感光性導電ペースト、及びそれを用いて導体パターンを形成した電子部品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明(請求項1)の感光性導電ペーストは、
導電性粉末と、露光することにより硬化する感光性樹脂成分とを含有する感光性導電ペーストにおいて、
前記導電性粉末がシリカ及びアルミナから選ばれる少なくとも1種の酸化物によってコーティングされていることを特徴としている。
【0010】
導電性粉末を酸化物によってコーティングすることにより、導電性粉末の表面での散乱による照射光のロスを抑制して、塗膜深部にまで照射光を到達させることが可能になる。したがって、光硬化深度(照射した光がペースト膜中を進行し、樹脂の硬化に消費され、樹脂の硬化に最小限必要なエネルギーを下回るまでのペースト膜表面からの深さ)を大幅に増大することが可能になり、微細で、形状精度に優れた、高アスペクト比の導体パターンを形成することが可能になる。
【0011】
また、コーティング用の酸化剤として、シリカ又はアルミナを用いているので、例えば、導電性粉末として、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、Ni、W、Al、Mo粉末のいずれかを用いているような場合に、露光工程における光の散乱を抑制することが可能になるとともに、形成される導体パターンの導電性を十分に確保することが可能になる。
【0012】
なお、コーティング用の酸化物としては、感光性樹脂成分の屈折率に近いものを選択することが望ましい。これは、感光性樹脂成分と導電性粉末にコーティングされる酸化物の屈折率の差が小さいほど、散乱によるロスが小さくなることによる。
【0013】
また、酸化物により導電性粉末の表面をコーティングする方法としては、導電性物質の表面を、別途用意した酸化物により被覆する方法、導電性粉末を酸化処理して、表面に導電性物質の酸化被膜を生じさせる方法、導電性物質の表面に熱処理などにより酸化物となるような溶液を付着させた後、所定の条件で熱処理して導電性物質の表面が酸化物により被覆されるようにする方法などの種々の方法が例示されるが、さらに他の方法を適用することも可能である。
【0014】
また、請求項2の感光性導電ペーストは、
前記導電性粉末がコーティングされている酸化物の屈折率N1と、前記感光性樹脂成分の屈折率N2が以下の関係式(1):
|N1−N2|≦0.3 ……(1)
の要件を満たすことを特徴としている。
【0015】
導電性粉末がコーティングされている酸化物の屈折率N1と、感光性樹脂成分の屈折率N2の関係が、|N1−N2|≦0.3の要件を満たすようにした場合、照射光の散乱によるロスをさらに確実に低減して、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0016】
また、請求項3の感光性導電ペーストは、前記導電性粉末が、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、Ni、W、Al、Moからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴としている。
【0017】
導電性粉末として、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、Ni、W、Al、Moから選ばれる少なくとも1種を含むものが用いられている場合、酸化物でその表面をコーティングすることにより、光の散乱を抑制することが可能で、かつ、実用上十分な導電性を備えた導体パターンを形成することが可能な感光性導電ペーストを得ることができるようになる。
【0018】
また、請求項4の感光性導電ペーストは、前記導電性粉末がコーティングされている酸化物の導電性粉末に対する割合が、導電性粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の割合であることを特徴としている。
【0019】
導電性粉末がコーティングされている酸化物の導電性粉末に対する割合を、導電性粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の割合とすることにより、形成される導体パターンの導電性を損なうことなく、露光工程での光の散乱を十分に抑制することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0020】
また、請求項5の感光性導電ペーストは、前記導電性粉末がコーティングされている酸化物が、導電性粉末の酸化物被膜以外の酸化物であることを特徴としている。
【0021】
導電性粉末を、導電性粉末の酸化物被膜以外の酸化物によりコーティングすることにより、用途や導電性粉末の特性などに応じた酸化物の選択の自由度が向上し、露光工程における光の散乱を抑制することが可能になるとともに、形成される導体パターンの導電性を十分に確保することが可能になり有意義である。
【0022】
また、本願発明(請求項)の電子部品は、請求項1〜のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて形成された導体パターンを備えていることを特徴としている。
【0023】
本願発明(請求項6)の電子部品は、請求項1〜のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて形成された、形状精度に優れ、十分な導電性を備えた導体パターンを備えており、小型、高性能で、信頼性の高い電子部品を提供することが可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明の実施の形態を示して、その特徴とするところを具体的に説明する。
【0025】
[感光性導電ペーストの調製]
まず、以下の各成分を配合することにより、本願発明の実施例にかかる感光性導電ペーストと、本願発明の範囲外の比較例の感光性導電ペーストを調製した。
【0026】
(1)導電性粉末
この実施例及び比較例においては、導電性粉末として、Ag粉末、AgPt粉末、Cu粉末、AgPd粉末を用いた。
また、導電性粉末としては、酸化物によりコーティングした導電性粉末及びコーティングしていない導電性粉末を用いた。なお、導電性粉末をコーティングする酸化物としては、SiO2、Al23、Al23・SiO2、SnO2、ZrO2、TiO2、ZrSiO4を適宜用いた。
【0027】
(2)接合剤
接合剤としては、SiO2−B23−Bi23系ガラス粉末を用いた。
【0028】
(3)感光性樹脂成分
感光性樹脂成分としては、以下のアクリル系共重合体、光ラジカル重合性モノマー、光重合開始剤を配合したものを用いた。
(a)アクリル系共重合体
感光性樹脂成分を構成するアクリル系共重合体としては、平均分子量15000のメタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体を用いた。
(b)光ラジカル重合性モノマー
感光性樹脂成分を構成する光ラジカル重合性モノマーとしては、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートを用いた。
(c)光重合開始剤
感光性樹脂成分を構成する光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−1−ブタノンを用いた。
なお、上記のアクリル系共重合体、光ラジカル重合性モノマー、光重合開始剤を配合した感光性樹脂成分の屈折率は、1.48であった。
【0029】
そして、上記(1)の導電性粉末、(2)の接合剤、及び(3)の感光性樹脂成分を構成する(a)アクリル系共重合体、(b)光ラジカル重合性モノマー、(c)光重合開始剤を、適宜選択した有機溶剤とともに、表1及び表2に示すような組成比率となるように配合し、十分に混合した後、3本ロールを用いて混練することにより、実施例1〜8及び比較例1〜12の感光性導電ペーストを調製した。
【0030】
なお、表1には、実施例1〜8の感光性導電ペーストの組成比率及び特性を示し、表2には、比較例1〜12の感光性導電ペーストの組成比率及び特性を示す。
【0031】
【表1】
Figure 0004660991
【0032】
【表2】
Figure 0004660991
【0033】
なお、表1及び表2における感光性ペースト膜の光硬化深度は、感光性導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷して感光性導電ペースト膜を形成し、照射光(例えば紫外光)のエネルギー量を一定にして、露光を行った後、現像液により(例えば、炭酸ナトリウムなどの希薄水溶液)を用いて現像を行い、未硬化部分を除去した後の硬化膜の厚みを測定することにより得た値である。なお、硬化膜の厚みの計測方法は、光学顕微鏡、電子顕微鏡、レーザー顕微鏡などの種々の公知の方法で行うことが可能である。
【0034】
上述のようにして調製した実施例及び比較例の感光性導電ペーストの基本組成は以下の通りである。
【0035】
<感光性導電ペーストの基本組成>
・導電性粉末・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75.0重量%
・メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体・・・・・・・・・6.0重量%
・エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート・・・・・5.8重量%
・2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6重量%
・2,4−ジエチルチオキサントン・・・・・・・・・・・・・・0.2重量%
・2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.8重量%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル・・・・・・・・・11.6重量%
【0036】
以下、表1及び2を参照しつつ、各実施例及び比較例の感光性導電ペーストの構成及び特性について説明する。
<実施例1>
SiO2でコーティングされた平均粒径1.8μmのAg粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(SiO2)のコート量は、Ag粉末100重量部に対して3重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、8.5μmであり、比較例1と比べて光硬化深度が25%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性は良好であった。
【0037】
<実施例2>
Al23でコーティングされた平均粒径1.8μmのAg粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(Al23)のコート量は、Ag粉末100重量部に対して3重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、8.3μmであり、比較例1と比べて光硬化深度が21%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性はほぼ良好であった。
【0038】
<実施例3>
SiO2でコーティングされた平均粒径3.0μmのAg粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(SiO2)のコート量は、Ag粉末100重量部に対して1.1重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、9.3μmであり、比較例10と比べて光硬化深度が13%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性は良好であった。
【0039】
<実施例4>
SiO2でコーティングされた平均粒径4.5μmのAg粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(SiO2)のコート量は、Ag粉末100重量部に対して4.3重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、14.8μmであり、比較例11と比べて光硬化深度が28%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性は良好であった。
【0040】
<実施例5>
SiO2でコーティングされた平均粒径2.2μmのAgPd粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(SiO2)のコート量は、AgPd粉末100重量部に対して1.5重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、7.1μmであり、比較例5と比べて光硬化深度が37%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性は良好であった。
【0041】
<実施例6>
Al23でコーティングされた平均粒径3.2μmのCu粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(Al23)のコート量は、Cu粉末100重量部に対して2.5重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、7.8μmであり、比較例6と比べて光硬化深度が24%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性はほぼ良好であった。
【0042】
<実施例7>
Al23でコーティングされた平均粒径2.4μmのAgPt粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(Al23)のコート量は、AgPt粉末100重量部に対して0.2重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、6.0μmであり、比較例7と比べて光硬化深度が9%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性は良好であった。
【0043】
<実施例8>
Al23・SiO2でコーティングされた平均粒径1.8μmのAgPt粉末を用いて、上記組成の感光性導電ペーストを調製した。コーティング剤である酸化物(Al23・SiO2)のコート量は、AgPt粉末100重量部に対して2.0重量部とした。
この感光性導電ペーストについて光硬化深度を測定したところ、8.1μmであり、比較例1と比べて光硬化深度が19%増加することが確認された。
また、この感光性導電ペーストの焼結性はほぼ良好であった。
【0044】
なお、比較例1〜12のうち、比較例1,5,6,7,10,11は、酸化物でコートしていない導電性粉末を用いた感光性導電ペーストである。
また、比較例2,3,4,8,9,12は、酸化物でコートした導電性粉末を用いた感光性導電ペーストであって、本願発明の特徴をより明瞭にするために、酸化物のコート量を過多としたり、感光性樹脂成分の屈折率に対する屈折率の関係が必ずしも最適ではないものを用いたりしたものであり、硬化深度の増減や焼結性に関し、必ずしも良好な結果が得られていないものもあるが、焼成条件その他の要件を調整することにより、場合によっては実用が可能であるものも存在する。
【0045】
なお、比較例1〜12の感光性導電ペーストのうち、比較例1は実施例1,2,8との比較用、比較例5は実施例5との比較用、比較例6は実施例6との比較用、比較例7は実施例7との比較用、比較例10は実施例3との比較用、比較例11は実施例4との比較用の感光性導電ペーストである。
【0046】
表1に示すように、導電性粉末を酸化物によってコーティングした本願発明の実施例にかかる感光性導電ペースト(実施例1〜8)においては、導電性粉末の表面での散乱による照射光のロスが抑制され、光硬化深度が大幅に増大するため、実施例1〜8の感光性導電ペーストを用いることにより、微細で、形状精度に優れた、高アスペクト比の導体パターンを形成することが可能になる。
【0047】
[電子部品(チップコイル)の製造]
次に、上述のようにして作製した感光性導電ペーストを用いて導体パターン(コイルパターン)を形成した電子部品(この実施形態ではチップコイル)及びその製造方法について説明する。
図1は上述のようにして作製した感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成したチップコイルを示す斜視図であり、図2はその要部構成を示す分解斜視図である。
【0048】
このチップコイル1(図1)は、図2に示すように、内部電極4a、4b、4c及び4dがそれぞれ形成されたアルミナなどからなる絶縁体層2a,2b、2c、2d及び2eが順次積層された積層体2(図1)の側面に、外部電極3a、3b(図1)が配設された構造を有している。
【0049】
すなわち、積層体2の内部には、コイルパターンを形成する内部電極4a、4b、4c及び4dが、絶縁体層2a−絶縁体層2b間、絶縁体層2b−絶縁体層2c間、絶縁体層2c−絶縁体層2d間、絶縁体層2d−絶縁体層2e間にそれぞれ設けられており、絶縁体層2a−絶縁体層2b間に設けられる内部電極4aは外部電極3a(図1)に、絶縁体層2d−絶縁体層2e間に設けられる内部電極4dは外部電極3b(図1)にそれぞれ接続されている。
【0050】
さらに、絶縁体層2a−絶縁体層2b間に設けられる内部電極4aは、絶縁体層2bに形成されたビアホール(図示せず)を介して、絶縁体層2b−絶縁体層2c間に設けられた内部電極4bと電気的に接続されており、同様に、内部電極4bと内部電極4c、及び内部電極4cと内部電極4dとが、それぞれ絶縁体層2c、2dに形成されたビアホール(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0051】
次に、このチップコイル1の製造方法について説明する。
(1)まず、本願発明の感光性導体ペースト(酸化物によってコーティングされた導電性粉末を用いた感光性導電ペースト)を、アルミナなどからなる絶縁体層(絶縁性基板)2a上に印刷し、露光、現像を行って、所望の導体パターンを形成する。
次いで、脱脂処理後、例えば空気中、850℃で1時間程度焼成して、スパイラル状の内部電極4aを形成する。
【0052】
(2)次いで、無機粉末としてガラス粉末を含有する感光性絶縁体ペーストを用い、内部電極4aの形成された絶縁性基板2a上に絶縁体ペースト層を形成する。この絶縁体ペースト層には、例えば直径50μmのビアホール用パターンを形成しておく。そして、大気中、所定温度で焼成して、ビアホール用貫通孔(図示省略)を有する絶縁体層2bを形成する。
【0053】
(3)それから、ビアホール用貫通孔に導体ペーストを充填、乾燥し、内部電極4aの一端と内部電極4bの一端とを接続するためのビアホール(図示省略)を形成した後、上記(1)において内部電極4aを形成した手法と同様の手法で、スパイラル状の内部電極4bを形成する。
【0054】
(4)次いで、同様にして、絶縁体層2c、内部電極4c、絶縁体層2d、内部電極4dを形成する。そして、保護用の絶縁体層2eを形成し、さらに、外部電極3a及び3bを設けることによって、図1に示すような、内部電極と絶縁体層が積層された構造を有するチップコイル1が得られる。
【0055】
上述の製造方法によれば、内部電極4a、4b、4c及び4dを形成するのに、光硬化深度の大きい本願発明の感光性導電ペーストを用いているので、微細で、形状精度に優れ、アスペクト比の大きい導体パターンを備えたチップコイル1を製造することができる。
【0056】
このように、本願発明の感光性導電ペーストを用いることにより、微細で、形状精度に優れ、アスペクト比の大きい導体パターンを形成することが可能になり、小型、高性能の電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【0057】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、導電性粉末及び酸化物の種類、平均粒径、感光性樹脂成分の具体的な組成、導電性粉末を酸化物によってコーティングする方法、酸化物の屈折率と感光性樹脂成分の屈折率の関係、酸化物の導電性粉末に対する割合などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0058】
【発明の効果】
上述のように、本願発明(請求項1)の感光性導電ペーストは、導電性粉末を酸化物によってコーティングしているので、導電性粉末の表面での散乱による照射光のロスを抑制して、塗膜深部にまで照射光を到達させることが可能になる。したがって、光硬化深度を大幅に増大することが可能になり、微細で、形状精度に優れた、高アスペクト比の導体パターンを形成することができるようになる。
また、酸化剤として、シリカ又はアルミナを用いているので、例えば、導電性粉末として、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、Ni、W、Al、Mo粉末のいずれかを用いているような場合に、露光工程における光の散乱を抑制することが可能になるとともに、形成される導体パターンの導電性を十分に確保することが可能になる。
【0059】
また、請求項2の感光性導電ペーストのように、導電性粉末がコーティングされている酸化物の屈折率N1と、感光性樹脂成分の屈折率N2の関係が、|N1−N2|≦0.3の要件を満たすようにした場合、照射光の散乱によるロスをさらに確実に低減して、本願発明をより実効あらしめることが可能になる。
【0060】
また、請求項3の感光性導電ペーストのように、導電性粉末として、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、Ni、W、Al、Moから選ばれる少なくとも1種を含むものが用いられている場合に本願発明を適用することにより、導電性粉末による光の散乱を抑制し、かつ、実用上十分な導電性を備えた導体パターンを形成することが可能になり特に有意義である。
【0061】
また、請求項4の感光性導電ペーストのように、導電性粉末がコーティングされている酸化物の導電性粉末に対する割合を、導電性粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の割合とすることにより、形成される導体パターンの導電性を損なうことなく、露光工程での光の散乱を十分に抑制することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0062】
また、請求項5の感光性導電ペーストのように、導電性粉末を、導電性粉末の酸化物被膜以外の酸化物によりコーティングすることにより、用途や導電性粉末の特性などに応じた酸化物の選択の自由度が向上し、露光工程における光の散乱を抑制することが可能になるとともに、形成される導体パターンの導電性を十分に確保することが可能になり有意義である。
【0063】
また、本願発明(請求項)の電子部品は、請求項1〜のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて形成された、形状精度に優れ、十分な導電性を備えた導体パターンを備えており、小型、高性能で、信頼性の高い電子部品を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成した電子部品(チップコイル)を示す斜視図である。
【図2】 図1の電子部品(チップコイル)の要部構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 チップコイル
2 積層体
2a,2b,2c,2d,2e 絶縁体層
3a,3b 外部電極
4a,4b,4c,4d 内部電極

Claims (6)

  1. 導電性粉末と、露光することにより硬化する感光性樹脂成分とを含有する感光性導電ペーストにおいて、
    前記導電性粉末がシリカ及びアルミナから選ばれる少なくとも1種の酸化物によってコーティングされていることを特徴とする感光性導電ペースト。
  2. 前記導電性粉末がコーティングされている酸化物の屈折率N1と、前記感光性樹脂成分の屈折率N2が以下の関係式(1):
    |N1−N2|≦0.3 ……(1)
    の要件を満たすことを特徴とする請求項1記載の感光性導電ペースト。
  3. 前記導電性粉末が、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、Ni、W、Al、Moからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項1又は2記載の感光性導電ペースト。
  4. 前記導電性粉末がコーティングされている酸化物の導電性粉末に対する割合が、導電性粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の割合であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  5. 前記導電性粉末がコーティングされている酸化物が、導電性粉末の酸化物被膜以外の酸化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて形成された導体パターンを備えていることを特徴とする電子部品。
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