JP2004207206A - 銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】導体損失が低減されて、直径が10〜100μmの微細な径の貫通導体の形成が可能な銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板を提供する。
【解決手段】ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有した銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有した銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅粉末の表面にアルミナ等の混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有した貫通導体用の銅メタライズ組成物と、それを用いたガラスセラミック配線基板とを同時焼成した銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容する半導体素子収納パッケージや、半導体素子の他に各種電子部品を搭載した混成集積回路装置等の各種配線基板用絶縁基体として、電気絶縁性や化学的安定性等の特性に優れたアルミナ質セラミックスが多用されてきた。
【0003】
しかし、近年、携帯用端末に代表される通信分野における1〜10GHz帯の高周波領域で多用される配線基板には、さらに導体損失の低減と小型化が図れる銅や金,銀で配線層を形成したガラスセラミック配線基板が注目されている。
【0004】
これら低抵抗導体のうちでも金はコストが高くなる難点がある。他方、銀は大気中で焼成でき、絶縁基体表面に形成した配線導体にはメッキを施さなくてもワイヤボンディングが可能であり、コスト面では有利であるものの、銀の配線導体はマイグレーションや半田食われの問題から信頼性が劣るという問題点があった。
【0005】
そのため、配線導体の表面にメッキが必要であるものの、低抵抗の導電材料であって非酸化性雰囲気中で焼成ができて高い信頼性を確保できる銅の配線導体が鋭意研究されている。
【0006】
銅を配線導体とするガラスセラミック配線基板は、例えば、ガラスセラミック原料粉末と有機バインダ等を用いて調製した泥漿物をシート状のガラスセラミックグリーンシートに成形した後、得られたガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を打ち抜き加工し、その貫通孔に銅を主成分とする導体ペーストを充填すると共に、ガラスセラミックグリーンシート上に同様の導体ペーストを用いて所定の配線パターンを形成し、これらの複数シートを位置合わせして加圧積層した後、一般的には、この積層体を水蒸気を含有する窒素雰囲気から成る非酸化性雰囲気の中で加熱して脱バインダおよび焼成をおこなうことにより作製されていた。
【0007】
しかしながら、一般にガラスセラミック配線基板のガラスセラミックスから成る絶縁体と銅を主成分とする貫通導体とは焼成収縮率が異なるという問題がある。この問題に対し、主成分の銅粉末100質量部に対して、ガラス転移点を厳密に制御した2〜20質量部のSiO2−Al2O3−RO(R:アルカリ土類金属)−B2O3系ガラスフリットを銅メタライズ組成物中に含有させることにより、両者の収縮挙動を一致させることが可能となることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−53940号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平11−353939号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年の配線基板へのさらなる導体損失の低減と小型化の要求に応じて貫通孔径を100μm以下とする微細貫通導体を形成する必要が生じた場合、銅メタライズ組成物中の銅粉末およびガラスフリットの微粉化が必須となるが、特許文献1に開示されたガラスフリットは、通常のボールミル等による粉砕方法では粒径1μm以下の微粉化が困難であるという問題点があった。
【0011】
また、特許文献1に開示されたガラスフリットを使用する銅メタライズ組成物は、主成分の銅粉末100質量部に対して絶縁体であるガラスフリット2〜20質量部を含有させるために微細貫通導体の比抵抗が銅金属の30〜100倍に増大してしまい、部分的には微細貫通導体の断線を生じさせやすくなり、微細貫通導体用の銅メタライズ組成物には不適であるという問題点があった。
【0012】
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑み完成されたもので、その目的は、導体損失の低減および微細な径の貫通導体の形成が可能な銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような課題について鋭意検討した結果、ガラスセラミックスから成る絶縁層の積層体の内部に銅粉末の表面にアルミナ等の混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有させた銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成することによって、導体損失の低減と貫通導体の小径化が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の銅メタライズ組成物は、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のガラスセラミック配線基板は、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に上記構成の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の銅メタライズ組成物によれば、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有するものとしたことにより、銅メタライズ組成物を構成する粉末の平均粒径が小さくなることに伴って最大粒の粒径も小さくなり、粗大粒が貫通孔に詰まることがないので、直径が10〜100μmの微小径の貫通孔に、貫通導体用の銅メタライズ組成物の主成分としての0.1μm〜3μmの粒径の銅粉末を効果的に充填させることが可能となる。また、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を1〜5質量部被着することにより、従来の電気的に絶縁体であるガラスフリットを2〜20質量部入れる銅メタライズ組成物よりも絶縁体の添加物量が少なくてすむので、微細貫通導体の比抵抗を小さくすることが可能となる。さらにまた、銅粉末の表面を銅より高い融点を有するアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着することにより、銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができるので、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を700〜1000℃の範囲に効果的に上げることができることから、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の焼成温度である700〜1000℃の焼成開始温度と一致させることが可能となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との収縮率の違いによって生じる応力を効果的に抑えることが可能となって銅メタライズ組成物からなる貫通導体を形成したガラスセラミック配線基板を良好に同時焼成することができる。
【0017】
また、アルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛は、ガラスセラミックスのガラス成分に組成として含まれている。よって700〜1000℃の同時焼成時にガラスセラミックスのガラス成分が溶融した際、銅メタライズ組成物がアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛を介して溶融したガラスセラミックスのガラス成分に容易に濡れるために、空隙無く緻密化したガラスセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0018】
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に上記構成の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことにより、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との同時焼成が可能で、導体損失の低減と貫通導体の小径化が可能なガラスセラミック配線基板とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【0021】
図1によれば、本発明のガラスセラミック配線基板1は、ガラスセラミックスから成る絶縁層2、絶縁層2を複数積層されて成る絶縁基板3、銅メタライズ組成物から成る貫通導体4、配線導体5を具備する。
【0022】
絶縁基板3は、ガラス粉末,フィラー粉末(セラミック粉末)、さらに有機バインダ,可塑剤,有機溶剤等を混合したガラスセラミックグリーンシートを焼結することで形成される。
【0023】
ガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
【0024】
また、フィラーとしては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
【0025】
これらガラスとフィラーとの混合割合は質量比で40:60〜99:1であるのが好ましい。
【0026】
ガラスセラミックグリーンシートに配合される有機バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0027】
ガラスセラミックグリーンシートは、上記ガラス粉末,フィラー粉末,有機バインダに必要に応じて所定量の可塑剤,溶剤(有機溶剤,水等)を加えてスラリーを得て、これをドクターブレード,圧延,カレンダーロール,金型プレス等により厚さ約50μm〜500μmに成形することによって得られる。
【0028】
このようにして得られたガラスセラミックグリーンシートにレーザやマイクロドリル,パンチングにより貫通孔を形成し、その内部に銅を主成分とした導体ペーストを充填して貫通導体4と成す。これを複数枚積層した後、表層には配線回路層となる配線パターン5が形成され、有機成分の除去および焼成を行なう。
【0029】
有機成分の除去は、100〜1000℃の温度範囲でこの積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解,揮散させる。また、焼成温度はガラスセラミック組成により異なるが、通常は約700〜1000℃の範囲内である。焼成は通常、大気中でおこなうが、導体材料に銅を使用する場合には100℃〜700℃の水蒸気を含む窒素雰囲気中で有機成分の除去をおこなった後、窒素雰囲気中で焼成を行なう。
【0030】
本発明の銅メタライズ組成物によれば、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有することとすることが重要である。
【0031】
これは、貫通孔用の銅メタライズ組成物の主成分としての銅粉末の粒径を0.1μm〜3μmとすることにより、貫通孔の直径が10〜100μmの微小径の貫通孔に効果的に充填させることが可能となるからである。
【0032】
また、銅粉末の表面に銅より高い融点を有する酸化物であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシア,酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着することにより銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができるので、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を700〜1000℃の範囲に効果的に上げることができることから、ガラスセラミックスから成る絶縁層2が複数積層されて成る絶縁基板3の焼成温度である700〜1000℃の焼成開始温度と一致させることが可能となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層2との収縮率の違いによって生じる応力(熱応力)を効果的に抑えることが可能となって銅メタライズ組成物から成る貫通導体4を形成したガラスセラミックス配線基板1を良好に同時焼成することができる。
【0033】
また、アルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛は、ガラスセラミックスのガラス成分、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等に組成として含まれる成分、またはフィラーとして含まれる成分、例えばSiO2,Al2O,ZrO2,ZnO等の単体若しくは結晶相に含まれる成分であるので、700〜1000℃の同時焼成時にガラスセラミックスのガラス成分またはフィラー成分が溶融した際に、銅メタライズ組成物がアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛を介して、溶融したガラスセラミックスのガラス成分またはフィラー成分に容易に濡れるために、空隙無く緻密化したガラスセラミック配線基板1を容易に得ることができる。
【0034】
銅粉末の粒径を0.1μm未満とした場合には、比表面積が粒径に反比例して大きくなるので、銅ペースト作製時において粉末表面を十分に覆うための溶剤、バインダ等を多くしないと、十分な分散が得られなくなり、銅ペーストのチキソトロピィー指数が高くなり過ぎてしまって、微小貫通孔に充填ができないという問題点が発生する。
【0035】
他方、銅粉末の粒径を3μmを超えるものとした場合には、直径が10〜100μmの微小径の貫通孔への充填性に問題が生じる。
【0036】
また、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を100質量部の銅粉末に対して1〜5質量部被着することにより従来の電気的に絶縁体であるガラスフリットを2〜20質量部入れる銅メタライズ組成物よりも、絶縁体の添加物量が少なくてすむので、微細貫通導体の比抵抗を小さくすることが可能となる。
【0037】
銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物の被着量を100質量部の銅粉末に対して1質量部未満とした場合には、銅より高い融点を有するアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物の量が不足することから、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を効果的に上げることができなくなり、ガラスセラミックスから成る絶縁層2が複数積層されて成る絶縁基板3の焼成温度である700〜1000℃の温度で焼成開始温度を一致させることが困難となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層2との収縮率を一致させることができないという問題が発生する。
【0038】
他方、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物の被着量が100質量部の銅粉末に対して5質量部を超える場合には、微細貫通導体の比抵抗が増大するとともに、絶縁体である被着物の増加により貫通導体4の断線を生じさせてしまう傾向がある。
【0039】
さらにまた、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスセラミックスから成る絶縁層2が複数積層されて成る絶縁基板3の内部に本発明の銅メタライズ組成物から成る貫通導体4を形成することにより、上述の通り銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層2との同時焼成時の焼成温度を一致させることができることから同時焼成が可能となり、導体損失の低減および微細な径の貫通導体の形成が可能なガラスセラミック配線基板1を作製することが可能となる。なお、本発明の銅メタライズ組成物を、貫通導体の他にも、例えば絶縁層の表面の配線導体5に用いても良いことは言うまでもなく、貫通導体に用いたときと同じ理由により、低抵抗で微細な配線導体を形成することができる。
【0040】
本発明の銅メタライズ組成物の銅粉末は、湿式反応により作製された球状の粉末を用いることが好ましい。湿式反応により作製された粉末は、球状でかつ均粒の粉末が得やすく、球状でかつ均粒の粉末であれば、その中に含まれる粗大粒は少ないものとなり、微細貫通孔に詰まることがない。従って、球状粉末は微細貫通孔に充填しやすいことから好適である。しかし、これに限られるものではなく、平均粒径が0.1〜3μmの粉末であれば必ずしも球状でなくても良い。
【0041】
このような銅粉末をアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物で被着した粉末を得るには、例えばアルミナの場合であれば、アルミナとなるべきアルミニウムの塩,レジネート,ゾル等のアルミニウム化合物溶液中に銅粉末を分散させた後、溶剤を飛ばして銅粉末の表面に金属化合物を被着させた状態とし、さらに空気中で加熱処理してアルミニウム化合物を酸化してアルミナにすればよい。
【0042】
また、銅微粉末と平均粒径100nm以下の超微粒子のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛粉末を、所望の重量比および混合比で調合、撹拌混合し、銅粉末表面にアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛の超微粒子が付着した状態を得た後、それを磨砕機に投入し高速で回転させて、銅粉末相互の衝突を発生させ、銅粉末と各々の超微粒子とのメカノケミカル反応により表面に被着させる方法も可能である。
【0043】
一方、銅メタライズ組成物に使用する銅ペースト用の有機バインダには、非酸化雰囲気中での熱分解性に優れたアクリル樹脂、好ましくはメタクリル酸系樹脂が好適であり、溶剤としてはフタル酸ジブチルやα−テルピネオール等の一般的なペースト用の溶剤を適用することが可能である。
【0044】
なお、銅ペーストを用いて形成した配線パターンを有するガラスセラミック配線基板1の焼成は、一般的に水蒸気を含有する窒素雰囲気から成る非酸化性雰囲気中で実施されるが、有機バインダ分解後に残留するカーボンを雰囲気中の水蒸気と反応させ効率良く除去するためにはガラスセラミック配線基板1の焼成温度を700℃以上とし、ガラスセラミック配線基板1が焼成収縮を開始する前の多孔質な状態で脱バインダ処理をおこなうことが望ましく、ガラスセラミック配線基板1と同時焼成する銅メタライズ組成物も焼成開始温度をガラスセラミック配線基板1と同等に高くすることが望ましい。
【0045】
本発明の銅メタライズ組成物は、100質量部の銅粉末に対して、アルミナ(Al2O3),シリカ(SiO2),マグネシア(MgO),ジルコニア(ZrO2),カルシア(CaO3)もしくは酸化亜鉛(ZnO)またはそれらの混合物を1〜5質量部被着しているが、このアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはその混合物の被着量を調整することにより、銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができることを利用し、その被着量によってネッキングの開始温度を変化させることができるので、銅粉末の焼成開始温度を700〜1000℃に調整することが可能となる。
【0046】
焼成後、得られた絶縁基体表面の銅の配線導体に用途に応じてメッキ処理を施し、下地にニッケルあるいは銅を被覆し、その上に金を被覆して銅の配線導体を有するガラスセラミック配線基板1が得られる。
【0047】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の例では貫通孔の形成方法としてレーザやマイクロドリル,パンチングにより形成するとしたが、フォトリソグラフィ(写真現像)工法等を用いても何ら支障無い。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
平均粒径が、0.5,1,3μmの銅粉末に対し、アルミナ(Al2O3),シリカ(SiO2),マグネシア(MgO),ジルコニア(ZrO2),カルシア(CaO3)もしくは酸化亜鉛(ZnO)またはその混合物を、銅粉末100質量部に対して、それぞれ表1に示す割合で被着を施し、その微粉末に有機バインダと溶媒を添加して混練し、ペースト状の貫通導体用の銅メタライズ用試料を調整した。
【0050】
銅粉末に被着を施す方法としては、平均粒径が0.5,1,3μmの銅微粉末と平均粒径100nm以下の超微粒子の酸化アルミニウム,酸化珪素粉末,酸化マグネシウム粉末とを、所望の重量比および混合比で調合、撹拌混合し、銅粉末表面に超微粒子が付着した状態を得た後、それを磨砕機に投入し高速で回転させて、銅粉末相互の衝突を発生させ、銅粉末と各々の超微粒子の酸化アルミニウム,酸化珪素粉末,酸化マグネシウム粉末とのメカノケミカル反応により表面に被着させる手法を用いた。
【0051】
また、比較用に従来手法どおり、ガラスフリットを銅メタライズ組成物に含有する手法を用いた試料を作製した。ガラスフリットを含有する銅メタライズ組成物ペーストは、平均粒径が1μmの銅粉末100質量部に、SiO2が56質量%、Al2O3が17質量%、MgOが6質量%、CaOが8質量%、BaOが8質量%、B2O3が5質量%の組成を有するガラスフリットとAl2O3粉末から成るフィラーも、それぞれ表1に示す割合で混合し、その混合物に有機バインダと溶剤を添加して混練し、作製した。
【0052】
一方、SiO2が44質量%、Al2O3が28質量%、MgOが11質量%、ZnOが8質量%、B2O3が9質量%の組成を有する結晶性ガラス粉末61質量%と、ジルコン酸カルシウム粉末21質量%、チタン酸ストロンチウム粉末16質量%、Al2O3粉末2質量%から成るガラスセラミック原料粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で12質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを6質量部添加し、トルエンおよび酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調整した。
【0053】
得られたスラリーをドクターブレード法により厚さ0.09mmのガラスセラミックグリーンシートに成形し、このグリーンシートに直径0.03mmの貫通孔を形成し、貫通孔に、前記貫通導体用銅ペーストを充填し、さらにその上面にパッドパターンを印刷したものを2枚加圧積層した成形体を作製した。
【0054】
それから、前記成形体中の有機バインダ等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に750℃の温度で1時間保持する熱処理を行なった後、900℃の温度で1時間保持して評価用のガラスセラミック配線基板を作製した。
【0055】
前記評価用のガラスセラミック配線基板を用いて、絶縁基体を貫通する貫通導体を4端子法にて抵抗を測定し、貫通導体の比抵抗値を求めるとともに銅メタライズ組成物とガラスセラミックスとから成る絶縁層とのセパレーション発生の有無の確認をおこなった。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1における貫通導体の抵抗(貫通抵抗)については、純銅の比抵抗1.55×10−8Ωmの9倍である13.9×10−8Ωm以下のものを合格とし、「○」と合否判定欄に記した。この範囲を超えるレベルのものには「×」と合否判定欄に記した。同じ長さでの10〜100μmの微細貫通導体の抵抗値を、従来の200μm以上の貫通孔での導通抵抗値と同等にするためには、従来の200μm以上の貫通導体の抵抗値が銅比抵抗値の35倍程度の銅メタイズ組成物の抵抗を(100/200)2〜(10/200)2以下にしなければならないことから算出すると、純銅の比抵抗の8.8倍以下が必要となる。よって純銅の比抵抗の9倍以下を合否基準としたものである。
【0058】
また、セパレーション発生有無については、「無」は、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスとから成る絶縁層でセパレーションの発生が全く無かったものとし、「有」は、発生が有ったものとした。
【0059】
表1の結果から明らかなように、100質量部の銅粉末の表面にSiO2を7質量部被着した銅成分粉末による試料No.5は、貫通導体抵抗が15.8×10−8Ωmと高くなり問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。さらにまた、100質量部の銅粉末の表面にMgOを7質量部被着した銅成分粉末による試料No.14は、貫通導体抵抗が16.6×10−8Ωmと高くなり問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。
【0060】
また、銅粉末の表面に、SiO2,Al2O3が被着されていない試料No.9,10は、貫通導体抵抗は低かったもののセパレーションの発生が有り問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。さらにまた、銅粉末の表面に、SiO2,Al2O3が被着されていない試料No.11,12は、貫通導体抵抗も高く、かつセパレーションの発生も有り問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。
【0061】
これに対して、本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板に基づいて作製された試料No.1,2,3,4,6,7,8,13,15,16,17,18は、貫通導体抵抗が低く、かつセパレーションの発生も無く優れたものであった(表中の総合判定の欄に○で示す)。
【0062】
【発明の効果】
本発明の銅メタライズ組成物によれば、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有するものとしたことにより、銅メタライズ組成物を構成する粉末の平均粒径が小さくなることに伴って最大粒の粒径も小さくなり、粗大粒が貫通孔に詰まることがないので、直径が10〜100μmの微小径の貫通孔に、貫通導体用の銅メタライズ組成物の主成分としての0.1μm〜3μmの粒径の銅粉末を効果的に充填させることが可能となる。また、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を1〜5質量部被着することにより、従来の電気的に絶縁体であるガラスフリットを2〜20質量部入れる銅メタライズ組成物よりも絶縁体の添加物量が少なくてすむので、微細貫通導体の比抵抗を小さくすることが可能となる。さらにまた、銅粉末の表面を銅より高い融点を有するアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着することにより、銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができるので、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を700〜1000℃の範囲に効果的に上げることができることから、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の焼成温度である700〜1000℃の焼成開始温度と一致させることが可能となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との収縮率の違いによって生じる応力を効果的に抑えることが可能となって銅メタライズ組成物からなる貫通導体を形成したガラスセラミックス配線基板を良好に同時焼成することができる。
【0063】
また、アルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛は、ガラスセラミックスのガラス成分またはフィラーの成分に組成として含まれる成分であるので、700〜1000℃の同時焼成時にガラスセラミックスのガラス成分またはフィラー成分が溶融した際に、銅メタライズ組成物がアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛を介して溶融したガラスセラミックスのガラス成分に容易に濡れるために、空隙無く緻密化したガラスセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0064】
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に上記構成の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことにより、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との同時焼成が可能で、導体損失の低減と貫通導体の小径化が可能なガラスセラミック配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・ガラスセラミック配線基板
2・・・・・・絶縁層
3・・・・・・絶縁層2を複数積層されて成る絶縁基板
4・・・・・・銅メタライズ組成物から成る貫通導体
5・・・・・・配線導体
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅粉末の表面にアルミナ等の混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有した貫通導体用の銅メタライズ組成物と、それを用いたガラスセラミック配線基板とを同時焼成した銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容する半導体素子収納パッケージや、半導体素子の他に各種電子部品を搭載した混成集積回路装置等の各種配線基板用絶縁基体として、電気絶縁性や化学的安定性等の特性に優れたアルミナ質セラミックスが多用されてきた。
【0003】
しかし、近年、携帯用端末に代表される通信分野における1〜10GHz帯の高周波領域で多用される配線基板には、さらに導体損失の低減と小型化が図れる銅や金,銀で配線層を形成したガラスセラミック配線基板が注目されている。
【0004】
これら低抵抗導体のうちでも金はコストが高くなる難点がある。他方、銀は大気中で焼成でき、絶縁基体表面に形成した配線導体にはメッキを施さなくてもワイヤボンディングが可能であり、コスト面では有利であるものの、銀の配線導体はマイグレーションや半田食われの問題から信頼性が劣るという問題点があった。
【0005】
そのため、配線導体の表面にメッキが必要であるものの、低抵抗の導電材料であって非酸化性雰囲気中で焼成ができて高い信頼性を確保できる銅の配線導体が鋭意研究されている。
【0006】
銅を配線導体とするガラスセラミック配線基板は、例えば、ガラスセラミック原料粉末と有機バインダ等を用いて調製した泥漿物をシート状のガラスセラミックグリーンシートに成形した後、得られたガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を打ち抜き加工し、その貫通孔に銅を主成分とする導体ペーストを充填すると共に、ガラスセラミックグリーンシート上に同様の導体ペーストを用いて所定の配線パターンを形成し、これらの複数シートを位置合わせして加圧積層した後、一般的には、この積層体を水蒸気を含有する窒素雰囲気から成る非酸化性雰囲気の中で加熱して脱バインダおよび焼成をおこなうことにより作製されていた。
【0007】
しかしながら、一般にガラスセラミック配線基板のガラスセラミックスから成る絶縁体と銅を主成分とする貫通導体とは焼成収縮率が異なるという問題がある。この問題に対し、主成分の銅粉末100質量部に対して、ガラス転移点を厳密に制御した2〜20質量部のSiO2−Al2O3−RO(R:アルカリ土類金属)−B2O3系ガラスフリットを銅メタライズ組成物中に含有させることにより、両者の収縮挙動を一致させることが可能となることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−53940号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平11−353939号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年の配線基板へのさらなる導体損失の低減と小型化の要求に応じて貫通孔径を100μm以下とする微細貫通導体を形成する必要が生じた場合、銅メタライズ組成物中の銅粉末およびガラスフリットの微粉化が必須となるが、特許文献1に開示されたガラスフリットは、通常のボールミル等による粉砕方法では粒径1μm以下の微粉化が困難であるという問題点があった。
【0011】
また、特許文献1に開示されたガラスフリットを使用する銅メタライズ組成物は、主成分の銅粉末100質量部に対して絶縁体であるガラスフリット2〜20質量部を含有させるために微細貫通導体の比抵抗が銅金属の30〜100倍に増大してしまい、部分的には微細貫通導体の断線を生じさせやすくなり、微細貫通導体用の銅メタライズ組成物には不適であるという問題点があった。
【0012】
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑み完成されたもので、その目的は、導体損失の低減および微細な径の貫通導体の形成が可能な銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような課題について鋭意検討した結果、ガラスセラミックスから成る絶縁層の積層体の内部に銅粉末の表面にアルミナ等の混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有させた銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成することによって、導体損失の低減と貫通導体の小径化が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の銅メタライズ組成物は、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のガラスセラミック配線基板は、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に上記構成の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の銅メタライズ組成物によれば、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有するものとしたことにより、銅メタライズ組成物を構成する粉末の平均粒径が小さくなることに伴って最大粒の粒径も小さくなり、粗大粒が貫通孔に詰まることがないので、直径が10〜100μmの微小径の貫通孔に、貫通導体用の銅メタライズ組成物の主成分としての0.1μm〜3μmの粒径の銅粉末を効果的に充填させることが可能となる。また、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を1〜5質量部被着することにより、従来の電気的に絶縁体であるガラスフリットを2〜20質量部入れる銅メタライズ組成物よりも絶縁体の添加物量が少なくてすむので、微細貫通導体の比抵抗を小さくすることが可能となる。さらにまた、銅粉末の表面を銅より高い融点を有するアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着することにより、銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができるので、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を700〜1000℃の範囲に効果的に上げることができることから、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の焼成温度である700〜1000℃の焼成開始温度と一致させることが可能となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との収縮率の違いによって生じる応力を効果的に抑えることが可能となって銅メタライズ組成物からなる貫通導体を形成したガラスセラミック配線基板を良好に同時焼成することができる。
【0017】
また、アルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛は、ガラスセラミックスのガラス成分に組成として含まれている。よって700〜1000℃の同時焼成時にガラスセラミックスのガラス成分が溶融した際、銅メタライズ組成物がアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛を介して溶融したガラスセラミックスのガラス成分に容易に濡れるために、空隙無く緻密化したガラスセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0018】
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に上記構成の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことにより、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との同時焼成が可能で、導体損失の低減と貫通導体の小径化が可能なガラスセラミック配線基板とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【0021】
図1によれば、本発明のガラスセラミック配線基板1は、ガラスセラミックスから成る絶縁層2、絶縁層2を複数積層されて成る絶縁基板3、銅メタライズ組成物から成る貫通導体4、配線導体5を具備する。
【0022】
絶縁基板3は、ガラス粉末,フィラー粉末(セラミック粉末)、さらに有機バインダ,可塑剤,有機溶剤等を混合したガラスセラミックグリーンシートを焼結することで形成される。
【0023】
ガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
【0024】
また、フィラーとしては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
【0025】
これらガラスとフィラーとの混合割合は質量比で40:60〜99:1であるのが好ましい。
【0026】
ガラスセラミックグリーンシートに配合される有機バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0027】
ガラスセラミックグリーンシートは、上記ガラス粉末,フィラー粉末,有機バインダに必要に応じて所定量の可塑剤,溶剤(有機溶剤,水等)を加えてスラリーを得て、これをドクターブレード,圧延,カレンダーロール,金型プレス等により厚さ約50μm〜500μmに成形することによって得られる。
【0028】
このようにして得られたガラスセラミックグリーンシートにレーザやマイクロドリル,パンチングにより貫通孔を形成し、その内部に銅を主成分とした導体ペーストを充填して貫通導体4と成す。これを複数枚積層した後、表層には配線回路層となる配線パターン5が形成され、有機成分の除去および焼成を行なう。
【0029】
有機成分の除去は、100〜1000℃の温度範囲でこの積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解,揮散させる。また、焼成温度はガラスセラミック組成により異なるが、通常は約700〜1000℃の範囲内である。焼成は通常、大気中でおこなうが、導体材料に銅を使用する場合には100℃〜700℃の水蒸気を含む窒素雰囲気中で有機成分の除去をおこなった後、窒素雰囲気中で焼成を行なう。
【0030】
本発明の銅メタライズ組成物によれば、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有することとすることが重要である。
【0031】
これは、貫通孔用の銅メタライズ組成物の主成分としての銅粉末の粒径を0.1μm〜3μmとすることにより、貫通孔の直径が10〜100μmの微小径の貫通孔に効果的に充填させることが可能となるからである。
【0032】
また、銅粉末の表面に銅より高い融点を有する酸化物であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシア,酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着することにより銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができるので、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を700〜1000℃の範囲に効果的に上げることができることから、ガラスセラミックスから成る絶縁層2が複数積層されて成る絶縁基板3の焼成温度である700〜1000℃の焼成開始温度と一致させることが可能となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層2との収縮率の違いによって生じる応力(熱応力)を効果的に抑えることが可能となって銅メタライズ組成物から成る貫通導体4を形成したガラスセラミックス配線基板1を良好に同時焼成することができる。
【0033】
また、アルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛は、ガラスセラミックスのガラス成分、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等に組成として含まれる成分、またはフィラーとして含まれる成分、例えばSiO2,Al2O,ZrO2,ZnO等の単体若しくは結晶相に含まれる成分であるので、700〜1000℃の同時焼成時にガラスセラミックスのガラス成分またはフィラー成分が溶融した際に、銅メタライズ組成物がアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛を介して、溶融したガラスセラミックスのガラス成分またはフィラー成分に容易に濡れるために、空隙無く緻密化したガラスセラミック配線基板1を容易に得ることができる。
【0034】
銅粉末の粒径を0.1μm未満とした場合には、比表面積が粒径に反比例して大きくなるので、銅ペースト作製時において粉末表面を十分に覆うための溶剤、バインダ等を多くしないと、十分な分散が得られなくなり、銅ペーストのチキソトロピィー指数が高くなり過ぎてしまって、微小貫通孔に充填ができないという問題点が発生する。
【0035】
他方、銅粉末の粒径を3μmを超えるものとした場合には、直径が10〜100μmの微小径の貫通孔への充填性に問題が生じる。
【0036】
また、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を100質量部の銅粉末に対して1〜5質量部被着することにより従来の電気的に絶縁体であるガラスフリットを2〜20質量部入れる銅メタライズ組成物よりも、絶縁体の添加物量が少なくてすむので、微細貫通導体の比抵抗を小さくすることが可能となる。
【0037】
銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物の被着量を100質量部の銅粉末に対して1質量部未満とした場合には、銅より高い融点を有するアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物の量が不足することから、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を効果的に上げることができなくなり、ガラスセラミックスから成る絶縁層2が複数積層されて成る絶縁基板3の焼成温度である700〜1000℃の温度で焼成開始温度を一致させることが困難となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層2との収縮率を一致させることができないという問題が発生する。
【0038】
他方、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物の被着量が100質量部の銅粉末に対して5質量部を超える場合には、微細貫通導体の比抵抗が増大するとともに、絶縁体である被着物の増加により貫通導体4の断線を生じさせてしまう傾向がある。
【0039】
さらにまた、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスセラミックスから成る絶縁層2が複数積層されて成る絶縁基板3の内部に本発明の銅メタライズ組成物から成る貫通導体4を形成することにより、上述の通り銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層2との同時焼成時の焼成温度を一致させることができることから同時焼成が可能となり、導体損失の低減および微細な径の貫通導体の形成が可能なガラスセラミック配線基板1を作製することが可能となる。なお、本発明の銅メタライズ組成物を、貫通導体の他にも、例えば絶縁層の表面の配線導体5に用いても良いことは言うまでもなく、貫通導体に用いたときと同じ理由により、低抵抗で微細な配線導体を形成することができる。
【0040】
本発明の銅メタライズ組成物の銅粉末は、湿式反応により作製された球状の粉末を用いることが好ましい。湿式反応により作製された粉末は、球状でかつ均粒の粉末が得やすく、球状でかつ均粒の粉末であれば、その中に含まれる粗大粒は少ないものとなり、微細貫通孔に詰まることがない。従って、球状粉末は微細貫通孔に充填しやすいことから好適である。しかし、これに限られるものではなく、平均粒径が0.1〜3μmの粉末であれば必ずしも球状でなくても良い。
【0041】
このような銅粉末をアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物で被着した粉末を得るには、例えばアルミナの場合であれば、アルミナとなるべきアルミニウムの塩,レジネート,ゾル等のアルミニウム化合物溶液中に銅粉末を分散させた後、溶剤を飛ばして銅粉末の表面に金属化合物を被着させた状態とし、さらに空気中で加熱処理してアルミニウム化合物を酸化してアルミナにすればよい。
【0042】
また、銅微粉末と平均粒径100nm以下の超微粒子のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛粉末を、所望の重量比および混合比で調合、撹拌混合し、銅粉末表面にアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛の超微粒子が付着した状態を得た後、それを磨砕機に投入し高速で回転させて、銅粉末相互の衝突を発生させ、銅粉末と各々の超微粒子とのメカノケミカル反応により表面に被着させる方法も可能である。
【0043】
一方、銅メタライズ組成物に使用する銅ペースト用の有機バインダには、非酸化雰囲気中での熱分解性に優れたアクリル樹脂、好ましくはメタクリル酸系樹脂が好適であり、溶剤としてはフタル酸ジブチルやα−テルピネオール等の一般的なペースト用の溶剤を適用することが可能である。
【0044】
なお、銅ペーストを用いて形成した配線パターンを有するガラスセラミック配線基板1の焼成は、一般的に水蒸気を含有する窒素雰囲気から成る非酸化性雰囲気中で実施されるが、有機バインダ分解後に残留するカーボンを雰囲気中の水蒸気と反応させ効率良く除去するためにはガラスセラミック配線基板1の焼成温度を700℃以上とし、ガラスセラミック配線基板1が焼成収縮を開始する前の多孔質な状態で脱バインダ処理をおこなうことが望ましく、ガラスセラミック配線基板1と同時焼成する銅メタライズ組成物も焼成開始温度をガラスセラミック配線基板1と同等に高くすることが望ましい。
【0045】
本発明の銅メタライズ組成物は、100質量部の銅粉末に対して、アルミナ(Al2O3),シリカ(SiO2),マグネシア(MgO),ジルコニア(ZrO2),カルシア(CaO3)もしくは酸化亜鉛(ZnO)またはそれらの混合物を1〜5質量部被着しているが、このアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはその混合物の被着量を調整することにより、銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができることを利用し、その被着量によってネッキングの開始温度を変化させることができるので、銅粉末の焼成開始温度を700〜1000℃に調整することが可能となる。
【0046】
焼成後、得られた絶縁基体表面の銅の配線導体に用途に応じてメッキ処理を施し、下地にニッケルあるいは銅を被覆し、その上に金を被覆して銅の配線導体を有するガラスセラミック配線基板1が得られる。
【0047】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の例では貫通孔の形成方法としてレーザやマイクロドリル,パンチングにより形成するとしたが、フォトリソグラフィ(写真現像)工法等を用いても何ら支障無い。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
平均粒径が、0.5,1,3μmの銅粉末に対し、アルミナ(Al2O3),シリカ(SiO2),マグネシア(MgO),ジルコニア(ZrO2),カルシア(CaO3)もしくは酸化亜鉛(ZnO)またはその混合物を、銅粉末100質量部に対して、それぞれ表1に示す割合で被着を施し、その微粉末に有機バインダと溶媒を添加して混練し、ペースト状の貫通導体用の銅メタライズ用試料を調整した。
【0050】
銅粉末に被着を施す方法としては、平均粒径が0.5,1,3μmの銅微粉末と平均粒径100nm以下の超微粒子の酸化アルミニウム,酸化珪素粉末,酸化マグネシウム粉末とを、所望の重量比および混合比で調合、撹拌混合し、銅粉末表面に超微粒子が付着した状態を得た後、それを磨砕機に投入し高速で回転させて、銅粉末相互の衝突を発生させ、銅粉末と各々の超微粒子の酸化アルミニウム,酸化珪素粉末,酸化マグネシウム粉末とのメカノケミカル反応により表面に被着させる手法を用いた。
【0051】
また、比較用に従来手法どおり、ガラスフリットを銅メタライズ組成物に含有する手法を用いた試料を作製した。ガラスフリットを含有する銅メタライズ組成物ペーストは、平均粒径が1μmの銅粉末100質量部に、SiO2が56質量%、Al2O3が17質量%、MgOが6質量%、CaOが8質量%、BaOが8質量%、B2O3が5質量%の組成を有するガラスフリットとAl2O3粉末から成るフィラーも、それぞれ表1に示す割合で混合し、その混合物に有機バインダと溶剤を添加して混練し、作製した。
【0052】
一方、SiO2が44質量%、Al2O3が28質量%、MgOが11質量%、ZnOが8質量%、B2O3が9質量%の組成を有する結晶性ガラス粉末61質量%と、ジルコン酸カルシウム粉末21質量%、チタン酸ストロンチウム粉末16質量%、Al2O3粉末2質量%から成るガラスセラミック原料粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で12質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを6質量部添加し、トルエンおよび酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調整した。
【0053】
得られたスラリーをドクターブレード法により厚さ0.09mmのガラスセラミックグリーンシートに成形し、このグリーンシートに直径0.03mmの貫通孔を形成し、貫通孔に、前記貫通導体用銅ペーストを充填し、さらにその上面にパッドパターンを印刷したものを2枚加圧積層した成形体を作製した。
【0054】
それから、前記成形体中の有機バインダ等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に750℃の温度で1時間保持する熱処理を行なった後、900℃の温度で1時間保持して評価用のガラスセラミック配線基板を作製した。
【0055】
前記評価用のガラスセラミック配線基板を用いて、絶縁基体を貫通する貫通導体を4端子法にて抵抗を測定し、貫通導体の比抵抗値を求めるとともに銅メタライズ組成物とガラスセラミックスとから成る絶縁層とのセパレーション発生の有無の確認をおこなった。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1における貫通導体の抵抗(貫通抵抗)については、純銅の比抵抗1.55×10−8Ωmの9倍である13.9×10−8Ωm以下のものを合格とし、「○」と合否判定欄に記した。この範囲を超えるレベルのものには「×」と合否判定欄に記した。同じ長さでの10〜100μmの微細貫通導体の抵抗値を、従来の200μm以上の貫通孔での導通抵抗値と同等にするためには、従来の200μm以上の貫通導体の抵抗値が銅比抵抗値の35倍程度の銅メタイズ組成物の抵抗を(100/200)2〜(10/200)2以下にしなければならないことから算出すると、純銅の比抵抗の8.8倍以下が必要となる。よって純銅の比抵抗の9倍以下を合否基準としたものである。
【0058】
また、セパレーション発生有無については、「無」は、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスとから成る絶縁層でセパレーションの発生が全く無かったものとし、「有」は、発生が有ったものとした。
【0059】
表1の結果から明らかなように、100質量部の銅粉末の表面にSiO2を7質量部被着した銅成分粉末による試料No.5は、貫通導体抵抗が15.8×10−8Ωmと高くなり問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。さらにまた、100質量部の銅粉末の表面にMgOを7質量部被着した銅成分粉末による試料No.14は、貫通導体抵抗が16.6×10−8Ωmと高くなり問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。
【0060】
また、銅粉末の表面に、SiO2,Al2O3が被着されていない試料No.9,10は、貫通導体抵抗は低かったもののセパレーションの発生が有り問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。さらにまた、銅粉末の表面に、SiO2,Al2O3が被着されていない試料No.11,12は、貫通導体抵抗も高く、かつセパレーションの発生も有り問題があった(表中の総合判定の欄に×で示す)。
【0061】
これに対して、本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板に基づいて作製された試料No.1,2,3,4,6,7,8,13,15,16,17,18は、貫通導体抵抗が低く、かつセパレーションの発生も無く優れたものであった(表中の総合判定の欄に○で示す)。
【0062】
【発明の効果】
本発明の銅メタライズ組成物によれば、100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有するものとしたことにより、銅メタライズ組成物を構成する粉末の平均粒径が小さくなることに伴って最大粒の粒径も小さくなり、粗大粒が貫通孔に詰まることがないので、直径が10〜100μmの微小径の貫通孔に、貫通導体用の銅メタライズ組成物の主成分としての0.1μm〜3μmの粒径の銅粉末を効果的に充填させることが可能となる。また、銅粉末の表面に絶縁体であるアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を1〜5質量部被着することにより、従来の電気的に絶縁体であるガラスフリットを2〜20質量部入れる銅メタライズ組成物よりも絶縁体の添加物量が少なくてすむので、微細貫通導体の比抵抗を小さくすることが可能となる。さらにまた、銅粉末の表面を銅より高い融点を有するアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着することにより、銅粉末粒子同士の接点に高融点物質が介在することになって、焼結開始時の初期段階における銅粉末粒子同士の接点で起きるネッキングを遅らせることができるので、銅メタライズ組成物の焼成開始温度を700〜1000℃の範囲に効果的に上げることができることから、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の焼成温度である700〜1000℃の焼成開始温度と一致させることが可能となる。その結果、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との収縮率の違いによって生じる応力を効果的に抑えることが可能となって銅メタライズ組成物からなる貫通導体を形成したガラスセラミックス配線基板を良好に同時焼成することができる。
【0063】
また、アルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛は、ガラスセラミックスのガラス成分またはフィラーの成分に組成として含まれる成分であるので、700〜1000℃の同時焼成時にガラスセラミックスのガラス成分またはフィラー成分が溶融した際に、銅メタライズ組成物がアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛を介して溶融したガラスセラミックスのガラス成分に容易に濡れるために、空隙無く緻密化したガラスセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0064】
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に上記構成の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことにより、銅メタライズ組成物とガラスセラミックスから成る絶縁層との同時焼成が可能で、導体損失の低減と貫通導体の小径化が可能なガラスセラミック配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の銅メタライズ組成物およびそれを用いたガラスセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・ガラスセラミック配線基板
2・・・・・・絶縁層
3・・・・・・絶縁層2を複数積層されて成る絶縁基板
4・・・・・・銅メタライズ組成物から成る貫通導体
5・・・・・・配線導体
Claims (2)
- 100質量部の平均粒径が0.1〜3μmの銅粉末の表面に、1〜5質量部のアルミナ,シリカ,マグネシア,ジルコニア,カルシアもしくは酸化亜鉛またはそれらの混合物を被着した粉末を金属成分粉末として含有することを特徴とする銅メタライズ組成物。
- ガラスセラミックスから成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基板の内部に請求項1記載の銅メタライズ組成物から成る貫通導体を形成したことを特徴とするガラスセラミック配線基板。
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- 2003-03-24 JP JP2003080208A patent/JP2004207206A/ja active Pending
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