JP4660924B2 - 安定化された銅錯体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅薄膜層の形成に好適な銅錯体に関するものである。殊に高速高集積回路配線、すなわち、高速演算回路用の銅配線を化学蒸着法により形成させる際に用いるに好適な銅錯体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子産業の集積回路分野の製造技術において、高集積化かつ高速化の要求が高まっている。現在、集積回路の大部分にアルミニウム配線が使用されているが、高集積化及び高速化の要求にともなって、より電気抵抗が低く、マイグレーション耐性のある銅による配線技術が実用化されつつある。
【0003】
銅配線の形成技術については、0価のCu(以下、銅(0)と記載する)スパッタリング法と二価Cu(以下、銅(II)と記載する)の溶液メッキ法を組み合わせた方法と主に一価Cu(以下、銅(I)と記載する)の有機金属錯体を用いた化学蒸着法(以下MOCVD法と記載)とがある。しかしながら、前者のスパッタ法とメッキ法を組み合わせた方法では、0.15μm以下程度の小さい口径を有する深い溝に対する埋め込みが困難であることが判明してきた。これを解決する為にMOCVD法が用いられ、高い深さ/口径比(高アスペクト比)の溝や孔及び段差を凹凸が小さく平滑かつ良好な膜質で被覆することが可能となった。
【0004】
銅化合物としては、銅(II)ビス(アセチルセトナート)、銅(II)ビス(トリメチルアセチルアセトナート)があるが、これらは固体で蒸気圧が低く、銅MOCVD材料としては不適である。
【0005】
これに対して、これらの銅化合物と類似の構造を有し、弗素原子をその配位子に有する銅(II)ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銅は、固体であるにも関わらず、蒸気圧が高い為、古くから使用されてきた。これは、弗化することにより、分子間相互作用が小さくなることに起因している。銅(II)ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銅及びその水和物は、Van HerertらによってJ.Electrochem.Soc.,112,1123(1965)でCu−MOCVD材料として使用することが報告されている。この際、銅化合物を150℃に加熱し、キャリアーガスとして90℃の水素ガスを用い、250℃の基板上に銅(II)を銅(0)に還元しつつ、蒸着させている。この際、配位子であるヘキサフルオロアセチルアセトナートアニオンは水素化され、ヘキサフルオロアセチルアセトンとなり、系外に排出される。
【0006】
シッフ塩基配位子、すなわちβ−ケトイミン配位子を用いた銅(II)化合物のCu−MOCVD材料も提案されている。例えば、USP 3,594,216号公報では、ビス(アセチルアセトンエチレンジイミノ)銅(II)とビス(アセチルアセトンイミノ)銅(II)が提案されており、200℃以上で蒸発させ、400℃以上で基板上に蒸着させいる。また、Mater.Res.Soc.Symp.Proc.204,415(1990)では、弗化タイプのシッフ塩基配位子を有する銅(II)化合物が提案されており、100℃程度の温度で蒸発させ、300℃程度の温度で基板上に蒸着させている。
【0007】
以上の提案においては、蒸着温度が200℃以上であり、より低温で蒸着可能なCu−MOCVD材料が望まれていた。
【0008】
この200℃以下の蒸着温度を実現したのは、銅(I)の有機金属化合物である。具体的には、シクロペンタジエニル銅(I)トリアルキルホスフィン錯体であり、Chem.Mater.2,636(1990)では、シクロペンタジエニル銅(I)トリメチルホスフィンを130℃〜200℃温度で蒸着させている。しかしながら、シクロペンタジエニル銅(I)トリアルキルホスフィンによるCu−MOCVDは、基板上の燐汚染及び金属及び絶縁体への選択性の問題等を有している。更にシクロペンタジエニル銅(I)トリアルキルホスフィン自体も70℃近傍の比較的低い温度で長時間使用した場合でも銅(0)の析出を伴う分解が起こり、安定性の問題を有していた。
【0009】
更に、上述の銅(II)と同様に固体であり、蒸発速度及び蒸着速度が固体粒子形状、粒度、粒度分布に依存するという問題点をも有していた。
【0010】
液状で比較的安定な銅化合物の提案は、ビニルシランを配位させた銅(I)錯体によって実現された。特許第2132693号公報にて提案されているヘキサフルオロアセチルアセトナート銅(I)ビニルトリメチルシランである。液状である為、供給量が液体流量計で制御可能であり、蒸気圧も比較的高く、従来の固体の化合物に比し、MOCVD材料としては、使い易くなっている。しかしながら、ヘキサフルオロアセチルアセトナート銅(I)ビニルトリメチルシランは、気化のための長時間加熱によって徐々に分解し、銅(0)の析出があったり、ビニルシラン化合物をその構造中有している為に、高温で長時間の気化操作を行うとそのオリゴマー及びポリマーが生成し、装置内の閉塞原因となる場合があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術の問題を解決すること、すなわち、本発明は、蒸気圧が高く気化が容易で銅薄膜の形成速度の制御が容易で且つ高温で安定なMOCVD用銅錯体の提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、β−ケトイミン配位子と電子供与性化合物として有する銅化合物が熱的に安定であり、蒸気圧が高いことを見出し、すなわち、MOCVD材料として良質の銅薄膜を制御可能な速度で形成可能な銅化合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R1,R2は、炭素数1〜20の弗化炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R1,R2の少なくとも一方は弗化炭化水素基である。R3は水素原子、弗素原子又は炭素数1〜20の弗化炭化水素基を表わし、R4は炭素数1〜20の弗化炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を表わす。Lは、ヘテロ原子を含んでよい不飽和炭化水素、エーテル、シリルエーテル、ホスフィン又はアミン等の電子供与性化合物を表わす。)で示される安定化された銅錯体、それを用いてなる銅錯体組成物、及びそれらの製造方法に関するものである。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
前述の一般式(1)おいて、R1,R2は、炭素数1〜20の弗化炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R1,R2の少なくとも一方は弗化炭化水素基である。炭素数が20を越える場合は、原料の調達の困難さ及び純度の高いものの調達の困難さから好ましくない。
【0018】
弗化炭化水素基としては、少なくとも一つ以上の弗素原子を有する炭素数1〜20の炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、弗化飽和炭化水素基又は弗化不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0019】
弗化飽和炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロシクロプロピル基、パーフルオロメチルシクロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロシクロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロメチルシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルシクロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基等のパーフルオロカーボン残基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、2−パーフルオロアルキルエチル基のフルオロハイドロカーボン残基等を挙げることができる。
【0020】
更に弗化不飽和炭化水素基としては、例えば、パーフルオロエテニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロ−1,3−ブタジエニル基、シクロブテニル基、パーフルオロ−2−ブチニル基、ペンタフルオロフェニル基、パーフルオロトルイル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、パーフルオロナフタレニル基、パーフルオロインデニル基、パーフルオロフルオレニル基等を挙げることができる。
【0021】
炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基,アリール基,アリールアルキル基,アルキルアリール基を挙げることができる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert.−ブチル基、n−ペンチル基、tert.−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トルイル基等を挙げることができる。
【0022】
R1,R2は、同一であっても異なっても良い。
【0023】
R3は、水素原子、弗素原子又はR1,R2と同様の炭素数1〜20の弗化炭化水素基を示す。炭素数が20を越える場合は、原料の調達の困難さ及び純度の高いものの調達の困難さから好ましくない。
【0024】
R4は、R1,R2と同様の炭素数1〜20の弗化炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基、又は水素原子を表わす。炭素数が20を越える場合は、原料の調達の困難さ及び純度の高いものの調達の困難さから好ましくない。
【0025】
Lは、ヘテロ原子を含んで良い不飽和炭化水素、エーテル、シリルエーテル、ホスフィン又はアミン等の電子供与性化合物の群から選ばれる。
【0026】
ヘテロ原子を含んで良い不飽和炭化水素は、例えば、アルケン、ヘテロ原子含有アルケン、アルキン、ヘテロ原子含有アルキンを挙げることができる。アルケンとしては、直鎖状オレフィン、分岐鎖状オレフィンを挙げることができ、ヘテロ原子含有アルケンとしては、ビニルシラン化合物を挙げることができる。アルキンもしくはヘテロ原子含有アルケンとしては、三重結合に直結する水素原子を有しない構造の化合物が好ましく、三重結合の両端に炭化水素基もしくは珪素等のヘテロ原子含有置換基が結合したものを挙げることができる。その具体例については後述する。
【0027】
エーテルとしては、分子中に少なくとも一つ以上の酸素原子を含む、モノエーテル類及びポリエーテル類を使用することができ、直鎖状、分岐鎖状、環状構造のものが使用できる。例えば、モノエーテル類として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン等を挙げることができ、ポリエーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−tert.−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−i−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン等が挙げられる。
【0028】
シリルエーテルとしては、下記一般式(4)
【0029】
【化5】
【0030】
(R13,R14は、炭素数1〜50の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、nは1〜3の整数を表わす。)で示されるシリルエーテルを用いることができる。例えば、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、sec.−ブチルトリメトキシシラン、tert.−ブチルトリメトキシシラン、ジ−i−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert.−ブチルジメトキシシラン、tert.−ブチルメチルジメトキシシラン、tert.−ブチルエチルジメトキシシラン、tert.−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、tert.−ブチル−tert.−ブトキシジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0031】
ホスフィンとしては、下記一般式(5)
【0032】
【化6】
【0033】
(R15は、炭素数1〜50の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。)で示されるホスフィンを用いることができる。例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−i−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−i−ブチルホスフィン、トリ−sec.−ブチルホスフィン、トリ−tert.−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトルイルホスフィンが挙げられる。
【0034】
アミンとしては、モノアミン、ポリアルキレンポリアミン等のポリアミンを用いることができる。
【0035】
例えば、モノアミン類として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、sec.−ブチルアミン、tert.−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン等を挙げることができ、ポリアミン類としては、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン等のポリアルキレンポリアミンを挙げることができる。
【0036】
これらの電子供与性化合物は、単独で使用しても複数の混合物として使用しても良い。
【0037】
中でも上記の電子供与性化合物Lが、アルケン、アルキン、ヘテロ原子含有アルケン、ヘテロ原子含有アルキンである銅錯体が好ましい。なかんずく、下記一般式(2)
【0038】
【化7】
【0039】
(式中、R1,R2は、炭素数1〜20の弗化炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R1,R2の少なくとも一方は弗化炭化水素基である。R3は水素原子、弗素原子又は炭素数1〜20の弗化炭化水素基を表わし、R4は炭素数1〜20の弗化炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を表わす。R5,R6,R7,R8は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、又はヘテロ原子含有置換基を表わす。)で示される電子供与性化合物がアルケンであることが好ましい。
【0040】
R1,R2,R3,R4は、上記一般式(1)と同様であり、具体例も上記の例に準ずる。原料の調達、純度等を考慮すると炭素数20以下が好ましい。
【0041】
アルケンの具体例としては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等の直鎖状オレフィン、イソブテン、3−メチル−ブテン−1、4−メチルペンテン−1等の分岐鎖状オレフィン、ビニルシクロヘキサン等の環状アルキル置換オレフィン、シクロヘキセン、シクロオクタジエン等の環状オレフィン、スチレン、p−メチルスチレン、p−tert.−ブトキシスチレン、p−トリメチルシリルスチレン等の芳香族置換ビニル化合物、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のビニルシランを挙げることができる。
【0042】
なかんずく、下記一般式(3)
【0043】
【化8】
【0044】
(式中、R9は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、又は炭素数1〜20の弗化炭化水素基であり、R10,R11,R12は炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、nは0〜20の整数を表わす)で示される電子供与性化合物Lが珪素含有アルケンである銅錯体が更に好ましい。
【0045】
R9は、上記一般式(1)のR1,R2と同様の弗化炭化水素基、炭化水素基、又は水素原子であり、具体例も上記の例に準ずる。原料の調達、純度等を考慮すると炭素数20以下が好ましい。
【0046】
アルケンの種類としては、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ブテニルトリメチルシラン、ペンテニルトリメチルシラン、ヘキセニルトリメチルシラン、ヘプテニルトリメチルシラン、オクテニルトリメチルシラン、デセニルトリメチルシラン、ビニルtert.−ブチルジメチルシラン、アリルtert.−ブチルジメチルシラン、ブテニルtert.−ブチルジメチルシラン、ペンテニルtert.−ブチルジメチルシラン、ヘキセニルtert.−ブチルジメチルシラン、ヘプテニルtert.−ブチルジメチルシラン、オクテニルtert.−ブチルジメチルシラン、デセニルtert.−ブチルジメチルシラン、ビニルジtert.−ブチルメチルシラン、アリルジtert.−ブチルメチルシラン、ブテニルジtert.−ブチルメチルシラン、ペンテニルジtert.−ブチルメチルシラン、ヘキセニルジtert.−ブチルメチルシラン、ヘプテニルジtert.−ブチルジメチルシラン、オクテニルジtert.−ブチルメチルシラン、デセニルジtert.−ブチルメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルメトシキシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジメトシキシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルtert.−ブチルジメトキシシラン、アリルtert.−ブチルジメトシキシラン、ビニルジtert.−ブチルメトキシシラン、アリルジtert.−ブチルメトシキシランが挙げられる。
【0047】
本発明における前述の一般式(1)の安定化された銅錯体の合成方法は、弗化β−ジケトンにアンモニアもしくはアミンを反応させ、β−ケトイミンとした後、電子供与性化合物の共存下、銅(I)化合物を反応させることにより合成することができる。電子供与性化合物の非共存下にβ−ケトイミンのケトンとイミン間の炭素上のプロトンをアルカリ金属等で引き抜き、銅(I)化合物を反応させ、β−ケトイミン銅錯体を合成した後、電子供与性化合物を添加し配位させる方法を採用することも可能である。
【0048】
安定化された銅錯体を合成する際の溶媒は、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。
【0049】
安定化された銅錯体を合成する際の反応温度は、特に限定されないが、生成する銅化合物が分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−78〜200℃の範囲、好ましくは、−50〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0050】
合成した安定化された銅錯体の精製方法は、特に限定されないが、減圧蒸留及びシリカ、アルミナ、高分子ゲルを用いたカラム分離精製を使用することができる。この際の操作は、当該有機金属化合物合成分野での方法に従う。すなわち、脱水及び脱酸素された窒素又はアルゴン雰囲気下で行い、使用する溶媒及び精製用のカラム充填剤等は、予め脱水操作を施しておくことが好ましい。この操作により、生成する銅化合物の収量及び純度が向上する場合がある。
【0051】
こうして精製した安定化された銅錯体は、そのまま化学蒸着法による基板上への銅薄膜形成に用いることができる。安定化された銅錯体1molに対し、上述の電子供与性化合物Lを更に0.01mol〜10mol添加した組成物を用いることによって、長時間の化学蒸着操作を施した場合においても、装置内での閉塞等の問題が生じない、若しくは、緩和される。
【0052】
本発明における化学蒸着操作の際の温度は、特に限定されないが、通常、0℃〜200℃の範囲である。また、キャリアーガスとした当該技術分野で使用されるものであれば使用でき、例えば、水素、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0053】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
実施例1
窒素気流下200mlのシュレンク管に、Journal of Fluorine Chemistry,27(1985)371−378に記載の方法でヘキサフルオロアセチルアセトンとアンモニアより合成した1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2−アミノペンタン−4−4オン 20.70g(0.100mol)を脱水したテトラヒドロフラン 100mlに希釈し、水素化カリウム 4.01g(0.100mol)を添加した後、室温で攪拌してカリウム塩溶液とした。
【0055】
得られたカリウム塩溶液を塩化銅(I) 9.90g(0.100mol)とビニルトリメチルシラン 10.01g(0.100mol)とテトラヒドロフラン100mlを混合したものに室温で滴下し、50℃で4時間攪拌した。残渣をガラスフィルターで濾別した後、テトラヒドロフランを留去させ、減圧蒸留し、目的物である(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2−アミノペンタン−4−オナート)銅(I)ビニルトリメチルシラン 25.13g(0.0680mol)を得た。収率は、68%に相当した。元素分析の結果は以下の通り。
【0056】
C10H14NOF6SiCu wt%
実測値(C32.2,H3.7,N3.8,F30.9,Cu17.1,Si7.4)
理論値(C32.5,H3.8,N3.8,F30.8,Cu17.2,Si7.6)
実施例2
実施例1において、ビニルトリメチルシラン 10.01g(0.100mol)に変えて、アリルトリメチルシラン 11.41g(0.100mol)としたこと以外は、実施例1と同様にして、(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2−アミノペンタン−4−オナート)銅(I)アリルトリメチルシランの合成を行った。結果は、収率72%であり、元素分析の結果は、以下の通りであった。
【0057】
C10H14NOF6SiCu wt%
実測値(C34.5,H4.2,N4.0,F29.9,Cu16.8,Si7.1)
理論値(C34.4,H4.2,N4.2,F29.7,Cu16.6,Si7.3)
【0058】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、熱安定性が高く、室温で蒸気圧を有する新規な銅錯体を得られ、殊に銅配線用MOCVD材料として好適な銅錯体を得られることは明らかである。
【0059】
さらに、β−ケトイミンを配位子として有する銅(I)錯体を合成するにあたり、極めて効率的で、経済的な合成処方を提供できる。
Claims (5)
- 請求項1または2に記載の安定化された銅錯体1molに対し、0.01mol〜10molの電子供与性化合物を添加してなる銅錯体組成物。
- 請求項1または2に記載の安定化された銅錯体、もしくは、請求項3記載の銅錯体組成物を用い、化学蒸着法により、基板上に銅薄膜を形成する方法。
- 弗化β−ジケトンにアンモニアもしくはアミンを反応させ、β−ケトイミンとした後、電子供与性化合物の共存下、一価銅化合物を反応させることを特徴する請求項1または2に記載の安定化された銅錯体の製造方法。
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