JP4659983B2 - フルクトース転移酵素活性を有する酵素をコードする核酸分子、およびその使用 - Google Patents

フルクトース転移酵素活性を有する酵素をコードする核酸分子、およびその使用 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、フルクトース転移酵素の酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子に関する。本発明はさらに、このような核酸分子を含むベクターおよび宿主に関する。また、本発明は、フルクトース転移酵素の製造のための方法、および種々の宿主生物またはインビトロにおけるイヌリン型のポリフルクトースの製造、さらにはイヌリン型のポリフルクトースの製造に用いることのできる、上記の核酸分子によってコードされるフルクトース転移酵素にも関する。
【0002】
水溶性の線状ポリマーは、例えば、水系の粘度を高めるため、界面活性剤として、懸濁化剤として、または沈降促進および錯化のためといったさまざまな用途が可能であり、さらに水と結合させることもできる。糖類をベースとするポリマー、例えばフルクトース多糖(fructosyl polysaccharide)は、生物分解性であるため、特に興味深い出発物質である。
【0003】
工業的な生産および製造における再生可能な原料としての使用に加えて、フルクトースポリマーは、 食品添加物、例えば甘味料としても魅力がある。さまざまな鎖長のポリマーがさまざまな用途に応じて求められる。食品部門では短いまたは中程度の鎖長が好ましいが、工業技術的な用途、例えば界面活性剤の製造には、重合度(DP)の高いポリマーが必要である。
【0004】
細菌由来のフルクトース転移酵素を発現させることによって植物内部でフルクタン多糖(fructan polysaccharide)を産生させるため、または植物由来のフルクトース転移酵素を発現させることによって中鎖長のポリフルクトースを産生させるためのさまざまな方法が記載されている。例えば、PCT/US89/02729号は、糖質ポリマー、特にデキストランまたはポリフルクトースを、トランスジェニック植物、すなわち具体的にはトランスジェニック植物の果実で生成させる可能性を述べている。このような様式で改変された植物を作製するために、微生物、特にエロバクター・レバニカム(Aerobacter levanicum)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)および枯草菌(Bacillus subtilis)由来のレバンスクロース、またはロイコノストク・メセントレイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のデキストランスクラーゼを用いることが提唱されている。活性酵素の作製も、レバンまたはデキストランの作製も、トランスジェニック植物の作出も記載されていない。
【0005】
PCT/EP93/02110号は、グラム陰性菌エルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)由来のレバンスクラーゼのlsc遺伝子を発現するトランスジェニック植物を作出するための方法を開示している。この植物は、高分子量の高分枝鎖レバンを産生する。PCT/NL93/00279号は、枯草菌由来のsacB遺伝子を含むキメラ遺伝子による植物の形質転換を記載している。この種の植物は分枝鎖レバンを産生する。PCT/US89/02729号、PCT/EP93/02110号およびPCT/NL93/00279号で用いられている細菌フルクトース転移酵素は、多数のβ-2,1分枝を有するβ-2,6結合型フルクトースポリマーであるレバンを合成する。しかし、多数の分枝があるために、レバンには工業技術的な加工の点で決定的な欠点があり、このため、工業技術用の出発物質としての需要はβ-2,1結合を示すイヌリンに比べてはるかに低い。現在のところ、遺伝子産物がイヌリンの合成に関与することが知られている細菌遺伝子は1つのみであり、この遺伝子はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)のftf遺伝子である。PCT/NL93/00279号は、高分子量イヌリンを合成する前記遺伝子による植物の形質転換を記載しているが、このような少量ではそれを経済的に利用することはできない。同じくPCT/EP97/02195号も、ストレプトコッカス・ミュータンスのftf遺伝子を有するイヌリン産生性トランスジェニック植物の作出のための方法を記載している。PCT/NL93/00279号に記載された植物の場合と同じく、高分子量イヌリンの収量は少ない。遺伝子にあらかじめ遺伝子操作を加えれば遺伝子を植物内部で発現させることはできるが、トランスジェニック植物から入手しうるイヌリンの収量はあまりにも少ないため、トランスジェニック植物を経済的に用いることはできない。さらに、PCT/NL96/00012号は、糖質ポリマー合成酵素をコードするDNA配列のほか、前記DNA配列を用いたトランスジェニック植物の作出を開示している。開示された配列はキクイモ(Helianthus tuberosus)に由来するものである。PCT/NL96/00012号に従って、開示された配列を用いて、ペチュニアおよびジャガイモ、さらにはキクイモ自体のフルクタンプロフィールを改変することができる。スクロース依存性スクロースフルクトース転移酵素(SST)またはフルクタンフルクトース転移酵素をコードする開示配列をトランスジェニック植物において発現させることにより、イヌリンの産生が可能となる。しかし、イヌリンの平均重合度はDP=6からDP=10までである。このような重合度ではイヌリンは長鎖とは考えられない。このため、PCT/NL96/00012号に記載された方法では高分子量イヌリンを製造することはできない。最近、レーム(Rehm)ら(J. Bacteriology 180(1998)、1305〜1310)は、アスペルギルス・フォエチダム(Aspergillus foetidus)由来のSSTを導入することによる、酵母におけるオリゴ糖の生成を報告している。しかし、得られた生成物の重合度はDP=3に過ぎなかった。
【0006】
ドイツ特許(DE)197 08 774.4号は、フルクトースポリメラーゼ活性を有する酵素を用いた1-ケトースおよびニストースの製造に関する。三糖および四糖をトランスジェニック植物で産生させることもできる。収量は多く、ジャガイモではスクロースの細胞含有量に相当する。しかし、より長鎖のイヌリンの産生については記載されていない。真菌によるポリフルクトースの合成も多くの刊行物で考察されている。例えば、バーソモイフ(Barthomeuf)およびポウラト(Pourrat)(Biotechnology Letters 17(1995)、911〜916)は、フルクトース転移酵素活性を有するペニシリウム・ルグロサム(Penidihium rugulosum)の酵素調製物を記載している。この調製物はさまざまな酵素特性を示すため、純粋なフルクトース転移酵素ではない。フルクトース転移酵素遺伝子のDNA配列は不明である。ケーンズ(Cairns)ら(New Phytologist 129(1995)、299〜308)は、モノグラフェラ・ニバリス(Monographella nivalis)の培養液におけるスクロースからの三糖、四糖および五糖の一過性合成を記載している。基質の枯渇が進行することによってポリフルクトースは酵素によって再び分解されるため、この原因となる酵素活性は主として加水分解性をもつと考えられる。DNA配列が不明であるため、本来の意味でのフルクトース転移酵素、またはインベルターゼが存在するか否かを、基準としてのフルクトフラノシダーゼ(インベルターゼ)との相同性によって評価することはできない。
【0007】
真菌アスペルギルス・シドウイ(Aspergillus sydowi)IAM 2544株は、イヌリン型のポリフルクトースを産生しうることが示されている。例えば、ハラダ(Harada)ら(ニシナリ(Nishinari)およびドイ(Doi)(編)、食品親水コロイド:構造、特性および機能(Food Hydrocolloids:Structures、Properties and Functions)、Plenum、New York(1994)、77〜82)は、アスペルギルス・シドウイの分生子によるイヌリンの合成を記載している。125gの分生子が25lの20%スクロース溶液中でインキュベートされた。生じた生成物はHPLCによって精製された。しかし、このような方法はイヌリンの大規模合成には向いていない。マラマツ(Maramatsu)ら(Agric. Biol. Chem. 52(1988)、1303〜1304)は、同じ真菌株(A.シドウイIAM 2544株)の菌糸体によるフルクトオリゴ糖の産生を記載している。重合度は3〜13と報告されている。この過程に関与する酵素は全く精製されていないか、または部分的に精製されているのみである。対応する遺伝子のアミノ酸配列およびDNA配列も不明である。蛋白質の精製のための指示はなされていないか、または不完全な形でなされているのみである。
【0008】
したがって、本発明の根底をなす課題は、イヌリン型のポリフルクトースを産生できる遺伝子組換え生物を作出することを可能にする核酸分子および方法を提供することである。
【0009】
この課題は、特許請求の範囲において特徴を記述する態様を提供することによって解決される。
【0010】
したがって、本発明は、
(a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含む蛋白質をコードする核酸分子、(b)配列番号:1に示されたコード領域のヌクレオチド配列または対応するリボヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(C)(a)または(b)に示された核酸分子に対して相補的なストランドとハイブリダイズする核酸分子、および
(d)遺伝暗号の縮重のために(c)に述べた核酸分子の配列とはヌクレオチド配列が異なる核酸分子、
ならびに、それらに対して相補的な核酸分子
からなる群より選択されるフルクトース転移酵素をコードする核酸分子に関する。
【0011】
配列番号:1に示された配列は、植物細胞にイヌリン型の長鎖ポリフルクタンを合成させる、アスペルギルス・シドウイ(Aspergillus sydowi)由来のスクロース依存性フルクタンフルクトース転移酵素をコードする。驚くべきことに、前記配列を用いた場合には、宿主生物、特にトランスジェニック植物、細菌または真菌で、イヌリン型の長鎖ポリフルクタンが高収率で産生されることが明らかになった。
【0012】
本発明の範囲に含まれる、アスペルギルス・シドウイ由来の酵素の精製のための指示について詳しく説明する。本酵素を、アミノ酸配列の検出が可能になる均質性が得られるまで精製した。得られた配列情報に基づいて、ポリメラーゼ連鎖反応のためのプライマーを検出した。これらのプライマーを利用して遺伝子断片を増幅し、これらをcDNAライブラリーのスクリーニングに用いた。PCR産物との配列相同性が認められるいくつかのcDNA分子を調製して比較した。得られたcDNA分子のほとんどには同じサイズの挿入断片がみられた。cDNA分子の完全性は、サッカロマイセス(Saccharomyces)またはジャガイモにおけるDNA配列の機能的発現によって確認した。
【0013】
酵素の精製、 PCR用のプライマーの設計、cDNA分子の同定、および異種発現については実施例の項で述べる。単離されたDNA配列およびそれから導き出される蛋白質配列は、それぞれ配列番号:1および2に示されている。本発明に係るDNA配列は、真菌由来のスクロース依存性フルクタンフルクトース転移酵素をコードする初めてのものである。DNA配列およびそれによってコードされる蛋白質配列は、既知のフルクトース転移酵素をコードするDNA配列とは大きく異なる。例えば、アスペルギルス・ネスルンディ(Asperglllus naeslundii)lev j株由来のフルクトース転移酵素との一致率は、蛋白質およびDNAレベルでそれぞれ22.6%および39%に過ぎない。黒色麹菌(Aspergillus niger)由来のインベルターゼ遺伝子との一致率は蛋白質およびDNAレベルでそれぞれ64%および60.6%であるが、前記遺伝子によってコードされる蛋白質は完全に異なる酵素活性を有する。これは、核酸分子およびそれらによってコードされるフルクトース転移酵素がこれまで記載されていない分子であることを示している。
【0014】
本発明の文脈において、フルクトース転移酵素とは、フルクトース単位の間のβ-2,1-グリコシド結合および/またはβ-2,6-グリコシド結合による連鎖を触媒しうる蛋白質であると解釈される。転移されるフルクトース残基はスクロースに由来する。
【0015】
本発明に係るスクロース依存性フルクタンフルクトース転移酵素によって触媒される反応は、以下の通りに示すことができる:
n(G-F)→ G-F +(n-1)G

【0016】
この式でG=グルコース、F=フルクトース、G-F=スクロースである。すなわち、本酵素はフルクトース残基をスクロースから、スクロース分子から開始してβ-2,1-グリコシド結合(この際、β-2,6グリコシド結合も生じうる)によって形成されるポリフルクタンへと転移させる。
【0017】
フルクトース転移酵素の活性を有する、本発明に係る核酸分子によってコードされるポリペプチドは、ポリフルクトースの合成をもたらし、特に植物細胞におけるイヌリン型ポリフルクトース (以下ではイヌリンとも称する)の合成をもたらす。
【0018】
本発明の文脈において、ポリフルクトースとは、重合度DPが4以上、好ましくはDPが6以上、特にDPが8以上のポリフルクタンであると解釈される。「イヌリン型のポリフルクトース」または「イヌリン」とは、その分子が主としてβ-2,1-グリコシド結合で連結していて、選択的にはβ-2,6分枝も有する長鎖フルクタンポリマーを指すものとする。「長鎖」という用語は、重合度(DP)が20を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回る、最も好ましくは200を上回ることを意味する。フルクトースポリマーが、グルコースのC-1 OH基およびフルクトース残基のC-2 OH基を介して結合している末端グルコース残基を有していてもよい。この場合には、フルクトースポリマー中にスクロース1分子が含まれる。
【0019】
本酵素をポリフルクタンの合成のためにインビトロで用いると、オリゴマー生成物が得られる(DP=4〜10)。
【0020】
本発明に係る核酸分子によってコードされる酵素は特に触媒反応の点で既知のフルクトース転移酵素とは区別される。例えば、既知の植物性SSTは以下の反応を触媒する:
G-F + G-F → G-F-F + G

【0021】
フルクタン依存性フルクタン-フルクトース転移酵素は植物に由来するが、以下の反応を触媒する:
G-F + G-F → G-Fn+1 + G-Fm−1
この反応は完全に可逆性である。
【0022】
細菌性フルクトース転移酵素、例えば、枯草菌のsacB遺伝子によってコードされるものなども以下のタイプの反応を触媒する。
nG-F → G-F + (n-1)G

【0023】
しかし、これらの酵素はレバン、すなわちβ-2,1-分枝を有するβ-2,6-グリコシド結合型ポリフルクタンを生成する。
【0024】
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)由来のftf遺伝子によってコードされる蛋白質(FTF)は、分子量数百万ダルトンのイヌリンの合成を誘導する。しかし、ftf遺伝子またはそれによってコードされる蛋白質は、配列番号:1に示された核酸配列または配列番号:2に示されたアミノ酸配列とそれほど高い相同性は認められない(それぞれ37.3%および22.6%に過ぎない)。
【0025】
本発明の文脈において、「ハイブリダイゼーション」という用語は、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはサムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYに記載されているようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、50%ホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液、40mMリン酸ナトリウム、pH 6.8;0.5%(wt./vol.)BSA、1%(wt./vol.)SDS、0.1mg/mlニシン精子DNA中、ハイブリダイゼーション温度42℃でのハイブリダイゼーションに続いて、フィルターを0.5×SSC/0.5%SDS、60℃中で洗浄することである。
【0026】
通常のストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件の一例は、上記の条件下で、50%ホルムアミドの代わりに30%ホルムアミドを用いてハイブリダイゼーションを行い、続いてフィルターを2×SSC/0.5%SDS中、56℃にて洗浄することである。本発明に係る分子とハイブリダイズする核酸分子は、好ましくは真菌から調製されたゲノムまたはcDNAライブラリーなどから単離することができる。このような核酸分子は、例えば、標準的な方法に従ったハイブリダイゼーション(例えば、Sambrookら、分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照)により、本発明に係る分子、またはこれらの分子の断片、またはこれらの分子の逆相補物を用いて同定および単離することができる。配列番号:1に示されたものまたはこの配列の断片と全くまたは実質的に同じヌクレオチド配列を有する核酸分子をハイブリダイゼーションプローブとして用いることもできる。ハイブリダイゼーションプローブとして用いる断片は、通常の合成法を用いて生成された、本発明に係る核酸分子の配列と実質的に同一な配列を有する合成断片でもよい。
【0027】
本発明に係る核酸分子とハイブリダイズする分子には、本発明に係る蛋白質をコードする上記の核酸分子の断片、誘導体および対立遺伝子変異体も含まれうる。「断片」とは、フルクトース転移酵素活性を有する蛋白質をコードするのに十分な程度に長い、核酸分子の部分であると解釈される。本明細書で用いられる「誘導体」という用語は、これらの分子の配列が1つまたはいくつかの位置で上記の核酸配列の配列とは異なるが、これらの配列と高度の相同性を示すことを意味する。相同性とは、少なくとも40%の配列同一性、特に少なくとも60%、好ましくは80%を上回る、さらにより好ましくは90%を上回る同一性を意味する。これらの核酸分子によってコードされる蛋白質は好ましくは、配列番号:2に示したアミノ酸配列と少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。例えば欠失、置換、挿入および/または組換えにより、上記の核酸分子からの差異が生じてもよい。本発明に係る核酸分子は、真菌由来の配列の他の誘導体でもよい。特定の宿主細胞における発現を促すために、配列の誘導体化が必要になることもある。
【0028】
上記の分子と相同であって前記分子の誘導体である核酸分子は一様に、同じ生物的機能を発揮する変更物であるこれらの分子の変形物である。これらの変形物は、例えば他の菌株または生物に由来する配列のような天然のものでも、変異体でもよい。これらの変異体は天然に生じたものでもよく、特定の突然変異誘発法によって導入されたものでもよい。また、変形物は合成的に生成された配列でもよい。対立遺伝子変異体は天然に生じた変異体でもよく、合成的に生成されたものでも、組換えDNA技術によって作製されたものでもよい。
【0029】
本発明に係る核酸分子の種々の変異体によってコードされる蛋白質は、 好ましくは、酵素活性、分子量、免疫学的反応性もしくは立体配座、またはゲル電気泳動における電気泳動移動度、クロマトグラフィーでの挙動、沈降係数、溶解度、分光学的性質、安定性、至適pHもしくは至適温度といった物理的性質などのある種の共通の特徴を有する。
【0030】
1つの好ましい態様において、本発明に係る核酸分子は、真菌性フルクトース転移酵素、特に好ましくはアスペルギルス属由来のもの、最も好ましくはアスペルギルス・シドウイ由来のフルクトース転移酵素の性質を有するポリペプチドをコードする。
【0031】
本発明に係る核酸分子は、DNAまたはRNA分子のいずれかでありうる。対応するDNA分子の例にはゲノムDNAまたはcDNA分子がある。本発明に係る核酸分子は、天然の供給源から、例えば真菌、特にアスペルギルス属、好ましくはアスペルギルス・シドウイから単離することもでき、または既知の方法に従って合成してもよい。分子生物学の通常の技法(例えば、Sambrookら、分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照)によって、本発明に係る核酸分子に種々の変異を導入することも可能である。このような導入により、生物的性質が改変された可能性のある蛋白質の合成が誘導される。1つの手法は、コードDNA配列の5'または3'末端に連続的欠失を加え、対応する切断型蛋白質を合成させることによって核酸分子が生じるような、欠失変異体を作製することである。もう1つの手法は、シグナル配列の付加によって、種々の区画に局在する酵素を特に産生させることである。本発明に係る蛋白質のサイトゾルへの局在化を実現するためには、配列番号:2に示した配列にシグナル配列を何ら付加しないことが必要である。
【0032】
一方、アミノ酸配列の改変が例えば酵素活性または酵素の調節などに影響を及ぼす位置に点変異を導入してもよい。この方式により、例えば、Km値が改変された変異体、または細胞内で通常起こっているアロステリック調節もしくは共有結合修飾による調節機構を受けなくなった変異体を作製することができる。
【0033】
さらに、基質または生成物の特異性が改変された変異体を作製することもできる。さらに、活性-温度プロフィールが改変された変異体を作製することもできる。
【0034】
原核細胞における遺伝子操作のためには、本発明の核酸分子またはこれらの分子の断片を、DNA配列の組換えによって突然変異誘発または配列改変を可能にするプラスミドに組み込むことができる。標準的な方法(Sambrookら、分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照)により、塩基置換を行うこと、または天然もしくは合成配列を付加することもできる。DNA断片を連結するためには、アダプターまたはリンカーを断片に結合させるとよい。さらに、適切な制限部位を付与する操作、または余分なDNAもしくは制限部位を除去する操作を行うこともできる。挿入、欠失または置換が有用と思われる場合には、インビトロ突然変異誘発、「プライマー修復」、制限または連結を用いることができる。解析のためには一般に、配列解析、制限解析、またはそれ以外の生化学的-分子生物学的方法が用いられる。
【0035】
さらに、本発明は、本発明に係る核酸分子を含むベクターにも関する。好ましくは、これらのベクターはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、および遺伝子工学において一般的な他のベクターである。
【0036】
好ましくは、本発明に係る核酸分子は、本発明に係るベクター中で、原核および/または真核細胞における翻訳可能なRNAの転写および合成を可能にする調節因子と機能的に結合している。例えば、本発明に係るベクターは以下の因子を含む:
1.宿主生物の細胞における下流コード領域の転写を保証するためのプロモーター、および選択的にはエンハンサー因子。
2.ポリペプチドの翻訳のためのオープンリーディングフレームを少なくとも1つ含む、プロモーターと融合したコード領域。本発明において、コード領域は本発明に係る核酸分子である。
3.選択的には、コード領域と融合した付加的な配列、例えば、転写終結シグナル(これらが特定の宿主生物における遺伝子発現の成功のために必要な場合)、または遺伝子産物の細胞内局在に影響を及ぼす、もしくは蛋白質の分泌を誘導するシグナル配列。
【0037】
このようなベクターは、適切な宿主細胞および適切な条件におけるベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などの付加的な遺伝子を含みうる。本発明に係る核酸分子の発現には、核酸分子の翻訳可能なmRNAへの転写が含まれる。原核および真核細胞における核酸分子の発現を可能にする調節因子は当業者に知られている。本発明に係る核酸分子の原核宿主細胞における発現のために適していると考えられる調節因子には、例えば、大腸菌におけるPL、lac、trpまたはtacプロモーターが含まれる。大腸菌IPTGにおいて誘導可能なlacZプロモーターを用いることが特に好ましい。真核宿主細胞における発現を可能にする調節因子の例には、酵母におけるAOX1およびGAL1プロモーター、または哺乳動物細胞もしくは他の動物細胞におけるCMV、SV40、RSVプロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーもしくはグロビンイントロンがある。酵母における発現のためには、酵母における活性が高い、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを用いるのが好ましい。この他の適したベクター系は、先行技術において、例えばサムブルック(Sambrook)、分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.およびアウスユーベル(Ausubel)、Current Protocols in Molecular Biology(1989)、Green Publishing Associates and Wiley lnterscience、N.Yに記載されている。
【0038】
本発明に係る核酸分子の植物細胞における発現のための調節因子は、原則として、植物細胞において活性を示す任意のプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどである。プロモーターは、発現が構成的に、または特定の組織中で、植物発生の特定の時点で、または外的状況によって決定される時点で起こるような形で選択することができる。植物に関してはプロモーターは同種のものでも異種のものでもよい。
【0039】
構成的発現のために適したプロモーターには、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35S RNAプロモーター(例えば、米国特許第5,352,605号を参照のこと)、および構成的発現のためのユビキチンプロモーター(例えば、米国特許第5,614,399号を参照のこと)、ジャガイモにおける塊茎特異的発現のためのパタチン遺伝子プロモーターB33(Rocha-Sosa、EMBO J. 8(1989)、23〜29)、または光合成活性を有する組織のみにおける発現を保証するプロモーター、例えば、ST-LS1プロモーター(Stockhaus、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(1987)、7943〜7947;Stockhaus、EMBO J. 8(1989)、2445〜2451)、Ca/bプロモーター(例えば、米国特許第5,656,496号、米国特許第5,639,952号、Bansal、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89(1992)、3654〜3658を参照のこと)およびRubisco SSUプロモーター(例えば、米国特許第5,034,322号、米国特許第4,962,028号を参照のこと)がある。しかし、外的状況によって決定される特定の時点のみに活性化されるプロモーターも用いることができる(例えば、国際公開公報第93/07279号を参照)。簡単な誘導を可能にする熱ショック蛋白質のプロモーターには特に関心がもたれる。また、ソラマメ(Vicia faba)および他の植物における種子特異的発現を可能にするソラマメのUSPプロモーターなどの種子特異的プロモーターも用いることができる(Fiedler、Plant Mol. Biol. 22(1993)、669〜679;Baumlein、Mol. Gen. Genet. 225(1991)、459〜467)。さらに、国際公開公報第91/01373号に記載されたものなどのような果実特異的プロモーターも用いることができる。成熟トマト果実における発現のためには、例えば、果皮の外側または内側で活性を示すトマト由来のポリガラクツロナーゼプロモーターのシス調節因子が適している(Nicholassら、Plant Mol. Biol. 28(1995)、423〜435;Montgomeryら、Plant Cell 5(1993)、1049〜1062)。トマト用の別の果実特異的プロモーターもファン・ハーレン(Van Haaren)ら(Plant Mol. Biol. 21(1993)、625〜640)によって記載されている。
【0040】
さらに、グルテリンプロモーター(Leisy、Plant Mol. Biol. 14(1990)、41〜50;Zheng、Plant J. 4(1993)、357〜366)、コムギのHMGプロモーター、USPプロモーター、ファゼオリンプロモーター、またはトウモロコシのzein遺伝子のプロモーター(Pedersen、Cell 29(1982)、1015〜1026;Quattrocchio、Plant Mol. Biol. 15(1990)、81〜93)、またはトウモロコシのshrunken-1-プロモーター(sh-1)(Werr、EMBO J. 4(1985)、1373〜1380)などのような、内乳特異的発現のためのプロモーターを用いることもできる。
【0041】
本発明に係る核酸分子の発現は、植物のうちスクロース含有量が高い部分またはスクロースを貯蔵する部分で特に有益である。このような器官には、例えば、テンサイの根またはサトウキビおよびサトウモロコシの茎がある。このため、ジャガイモ(Solanum tuberosum)のパタチンプロモーターB33などのように、これらの器官における発現を媒介するプロモーターは特に好ましい。サトウキビの茎における特異的発現のためには、ユビキチンプロモーターを第1イントロンとともに用いるとよい。本発明に係るベクターは、細菌複製起点または酵母における安定化および自律的複製のための2ミクロンDNAなどの、宿主生物におけるベクターの安定性をもたらす付加的な機能単位を有してもよい。また、植物ゲノムの安定的組み込みを可能にする、アグロバクテリウムT-DNAの「左縁」および「右縁」配列を含めてもよい。また、転写を正しく終結させる役割、または転写物を安定化する機能をもつといわれるポリA尾部を転写物に付加する役割を果たす転写終結配列が存在してもよい。このような因子は文献中に記載されており(例えば、Gielen、EMBO J. 8(1989)、23〜29を参照)、自由に交換可能である。1つの好ましい態様において、本発明に係るベクター中に含まれる核酸分子は、コードされる酵素の分泌のための機能的シグナル配列を含む領域を含む。このような配列は公知である。蛋白質の液胞内への局在化を可能にするシグナルペプチドの一例は、酵母由来のカルボキシペプチダーゼY(CPY)のシグナルペプチドである。対応する遺伝子は、例えばヴォールズ(Valls)ら(Cell 48、887〜899)に記載されている。植物シグナル配列には、例えば、オオムギ由来のレクチン遺伝子のもの(RaikhelおよびLerner、Dev. Genet. 12(1991)、255〜269)または豆類の成熟フィトヘマグルチニンのN末端領域由来の43アミノ酸(Tagueら、Plant Cell 2(1990)、533〜546)がある。C末端シグナルペプチドの一例は、キチナーゼ(Neuhausら、Plant J. 5(1994)、45〜54)である。
【0042】
好ましいシグナル配列は、例えば、ジャガイモ由来のプロテイナーゼインヒビターII遺伝子のシグナル配列である。しかし、選択された宿主におけるポリペプチドの分泌をもたらす任意の他のシグナル配列も用いることができる。 分泌されたフルクトース転移酵素を培養液から入手し、インビトロ合成のために用いることができる。
【0043】
1つの特に好ましい態様において、ベクター中に含まれる核酸分子は、植物細胞の液胞内への局在化のためのシグナル配列、好ましくはジャガイモ由来のパタチン遺伝子のもの(Sonnewald、Plant J. 1(1998)、95〜106)をコードする領域を含む。これにより、遺伝子組換えがなされた植物細胞および植物、例えばテンサイまたはジャガイモの空胞内へのフルクトース転移酵素の細胞内(subcellular)局在化、および高分子量のイヌリン型ポリフルクトースの液胞内への蓄積が可能になる。これ以外の液胞配置性シグナル配列も、例えばマツソアカ(Matusoaka)(Journal of Experimental Botany 50(1999)、165〜174)、クリスピールズ(Chrispeels)(Cell 68(1992)、613〜616)、マツオカ(Matsuoka)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88(1991)、834〜838)、ベドラネク(Bednarek)(Plant Cell 3(1991)、1195〜1206)、ナカムラ(Nakamura)(Plant Phys. 101(1993)、1〜5)によって記載されている。
【0044】
本発明のもう1つの態様において、ベクター中に含まれる核酸分子は、植物細胞における色素体への局在化のためのシグナル配列をコードする領域を含む。
【0045】
シグナル配列としては、例えば、ホウレンソウのフェロドキシン:NADP(+)-酸化還元酵素(FNR)のシグナル配列を用いることができる。この配列は、ホウレンソウの色素体蛋白質であるフェロドキシン:NADP(+)-酸化還元酵素(FNR)のcDNAの5'非翻訳領域のほか、隣接輸送(flanking transit)ペプチド配列(ヌクレオチド-171から+165まで;Jansen、Current Genetics 13(1988)、517〜522)も含む。
【0046】
また、トウモロコシの蝋様蛋白質の輸送ペプチドに成熟蝋様蛋白質の最初の34アミノ酸を加えたもの(Klosgen、Mol. Gen. Genet. 217(1989)、155〜161)をシグナル配列として用いることもできる。本発明の1つの好ましい態様においては、トウモロコシの蝋様蛋白質の輸送ペプチドは、成熟蝋様蛋白質の最初の34アミノ酸を伴わずに用いられる。
【0047】
1つの特に好ましい態様において、本発明はプラスミドpSK-as1、p112-as1、pA7-as1、p35-as1、p35-S3-as1に関し、その作製については実施例の項で説明する(図1〜5)。
【0048】
本発明に係る核酸分子および発現ベクターは、種々の宿主生物、特に植物、真菌および細菌におけるイヌリン型ポリフルクトースの産生を可能にする。コードされる酵素を、イヌリン型ポリフルクトースの製造のために宿主生物の外で用いてもよい。すなわち、宿主細胞および/または培養液から蛋白質を入手し、それをイヌリンのインビトロ合成のために用いることを目的として、本発明に係る核酸分子を、それによってコードされる蛋白質を任意の宿主細胞において製造するために用いることが特に可能である。
【0049】
例えば、アルコールデヒドロゲナーゼのプロモーターおよび本発明に係る核酸分子を含む構築物を、サッカロマイセス・セレビシエの形質転換のために用いることもできる。酵母はスクロースを取り込めないため、異種DNA配列の導入によってスクロース輸送体を発現するようにした細胞を用いる必要がある。このような細胞の作製は、例えば、リースマイヤー(Riesmeier)ら(EMBO J. 11(1992)、4705〜4713)に記載されている。上記の構築物による形質転換を受けた酵母は、イヌリン型の長鎖ポリフルクトースを生成する。アスペルギルス・シドウイのフルクトース転移酵素はシグナルペプチドを有していないため、これは分泌されない。このため、長鎖ポリフルクトースは酵母細胞内で生成される。これらのポリフルクトースを含む酵母細胞は食品添加物として直接用いうる。ポリフルクトースを培養液中で発酵により得ようとする場合には、分泌のために本発明に係る核酸分子へシグナル配列を融合させることができる。
【0050】
もう1つの態様において、本発明は、本発明に係る核酸分子もしくはベクターを一時的もしくは安定的に含む宿主細胞、または該細胞に由来する宿主細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、インビトロで組換えDNAを取り組むことができ、選択的には本発明に係る核酸分子によってコードされる蛋白質を合成することができる生物に関する。宿主細胞の由来は原核生物でも真核生物でもよい。「原核生物」という用語には、本発明に係る核酸分子による形質転換またはトランスフェクションが可能な細菌、およびフルクトース転移酵素活性を有する蛋白質の発現が好都合に可能な細菌がすべて含まれる。原核宿主細胞には例えば、大腸菌、ネズミチフス菌(S. typhimurium)、霊菌(Serratia marcescens)および枯草菌(Bacillus subtilis)などのグラム陰性菌およびグラム陽性菌の両方が含まれる。「真核生物」という用語には、昆虫細胞、真菌細胞、植物細胞、動物およびヒト細胞が含まれる。好ましい真菌細胞には、例えば、発酵に用いられるまたは用いうるものがあり、特にサッカロマイセス属、特に好ましくはサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、クリュイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピヒア属(Pichia)などである。好ましくは、この種の真菌細胞はアスペルギルス属、特に好ましくは黒色麹菌(Aspergillus niger)の細胞である。これらの細胞において本発明に係るフルクトース転移酵素を、フルクトース転移酵素の培養液への分泌を可能にする分泌シグナル配列、例えば、アスペルギルス・フォエチダス(Aspergillus foetidus)由来のパタチン遺伝子または1-SST遺伝子(Rehmら、J. Bac. 180(1998)、1305〜1319)のものと組み合わせて発現させることには、特に関心がもたれる。細胞は、分泌型インベルターゼ活性が低下したまたは全くないものが有利に用いられる。それ自体にインベルターゼ活性がない真菌種には、例えばトリコデルマ・レーセイ(Trichoderma reesei)がある。β-フルクトフラノシダーゼ(黒色麹菌由来のインベルターゼ)の発現のためのプロトコールは、例えば、Bergesら(Curr. Genet. 24(1993)、53〜59)に記載されている。 フルクトース転移酵素活性を有する蛋白質をコードする本発明に係る核酸分子または対応するベクターは、当業者により通常の技法による宿主細胞のトランスフェクションまたは形質転換に用いることができる。融合され、機能的に結合した遺伝子の作製、および適した宿主細胞におけるそれらの発現のための方法は当業者には周知であり、例えばサムブルック(Sambrook)またはアウスユーベル(Ausubel)、前記に記載されている。好ましい宿主は大腸菌、真菌、特に酵母および植物細胞である。
【0051】
本発明に係る細胞は、好ましくは、導入される核酸分子が形質転換細胞に対して異種性であること、すなわちそれがこれらの細胞で天然にはみられないこと、またはそれが対応する天然型配列のものとは異なるゲノムの遺伝子座に位置することを特徴とする。
【0052】
本発明に係る核酸分子を植物において発現させる場合には、合成される蛋白質を植物細胞の任意の区画に局在させることが一般に可能である。ある特定の区画への局在化を実現するためには、本発明に係る核酸分子を、望ましい区画への局在化を確実に行わせるようなDNA配列と結合させるとよい;上記参照。このような配列は公知である(例えば、Braun、EMBO J. 11(1992)、3219〜3227;Wolter、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(1988)、846〜850;Sonnewald、Plant J. 1(1991)、95〜106;RochaSosa、EMBO J. 8(1989)、23〜29を参照のこと)。
【0053】
したがって、本発明に係る宿主には、1つまたはいくつかの本発明に係る核酸分子による形質転換を受けたトランスジェニック植物細胞、植物組織および植物体のほか、このようにして形質転換を受けた細胞に由来するトランスジェニック植物細胞が含まれる。このような細胞は、植物細胞における転写を可能とする調節性DNA要素、特にプロモーターと好ましくは結合した1つまたはいくつかの核酸分子を含む。このような細胞は、それらが該細胞において天然にはみられない本発明に係る核酸分子を少なくとも1つ含む点、またはこのような分子が天然には位置しない細胞のゲノムの遺伝子座に位置している点、すなわち異なるゲノム環境にある点で、天然の植物細胞と区別することができる。
【0054】
もう1つの態様において、本発明は、本発明に係る蛋白質をサイトゾル中に含む植物細胞に関する。この態様のためには、配列番号:2に示された配列を、シグナル配列をさらに伴わずに用いる必要がある。
【0055】
もう1つの好ましい態様において、本発明は、本発明に係る蛋白質を色素体中に含む植物細胞に関する。
【0056】
本発明に係る蛋白質を色素体に局在させるために、本発明に係る核酸分子および/または本発明に係るベクターを上記のようにして改変することができる。
【0057】
液胞は通常、本発明に係る蛋白質の基質となるスクロースを大量に貯蔵できるため、この区画は、本発明に係る蛋白質の活性のために液胞内にポリフルクトースを産生する植物細胞を作製するためには完全に適している。
【0058】
このため、1つの特に好ましい態様において、本発明は、本発明に係る蛋白質を液胞内に含む植物細胞に関する。
【0059】
本発明に係る蛋白質の液胞内への局在化を媒介するために、本発明に係る核酸分子および/またはベクターをどのように作製すべきかについてはすでに説明した。
【0060】
トランスジェニック植物細胞および植物組織は、当業者に公知の方法によって植物体全体へと再生させることができる。本発明に係るトランスジェニック植物細胞の再生によって得られる植物体も本発明の主題である。本発明のもう1つの主題は、上記のトランスジェニック植物細胞を含む植物である。本発明に係る植物は一般に任意の植物種であってよく、好ましくはそれらは単子葉植物または双子葉植物である。好ましくは、植物細胞は農業的に有用な植物、すなわち食糧供給の目的で、または技術的、特に産業的な目的で人によって栽培される植物に由来する。好ましくは、本発明は繊維産生性(例えば、アマ、アサ、ワタ)、油脂貯蔵性(例えば、ナタネ、ヒマワリ、ダイズ)、糖貯蔵性(例えば、テンサイ、サトウキビ、サトウモロコシ、バナナ)および蛋白質貯蔵性植物(例えば、マメ科植物)に関する。
【0061】
もう1つの好ましい態様において、本発明は、飼料植物(例えば、飼い葉または飼草、アルファルファ、クローバーなど)、野菜(例えば、メロン、トマト、バナナ、チコリ、ニラネギ、アスパラガス、ニンジン)またはデンプン貯蔵性植物(コムギ、オオムギ、カラスムギ、ライムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、イネ、エンドウ、キャッサバ、マンゴー)に関する。
【0062】
もう1つの態様において、本発明は、スクロース含有植物(例えば、テンサイ、ジャガイモ、イネ、コムギ、サトウキビなど)由来の植物細胞に関する。特に好ましいものは、テンサイ、チコリ、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、サトウキビおよびコムギである。本発明はまた、本発明に係る植物の繁殖材料および収穫作物、例えば、果実、種子、塊茎、根茎、実生、挿木、カルス、細胞培養物などにも関する。
【0063】
本発明は、
(a)植物細胞が、本発明に係る核酸分子および/または本発明に係るベクターを導入することによって遺伝的に改変される;および
(b)植物が該細胞から再生される;および選択的には
(c)さらに別の植物が(b)による植物から再生される、
トランスジェニック植物を作出するための方法にも関する。
【0064】
本発明の文脈において、「遺伝的に改変される」という用語は、本発明に係る核酸分子の導入によって植物細胞がその遺伝情報の点で改変されること、および本発明に係る核酸分子の存在または発現によって表現型の改変がもたらされることを意味する。表現型の改変とは、好ましくは、細胞の1つまたはいくつかの機能の検出可能な改変のことを意味する。例えば、本発明に係る遺伝的に改変された植物は、本発明に係る蛋白質の活性、または全般的なフルクトース転移酵素活性の上昇を呈する。植物は、当業者に周知の方法に従い、段階(b)に従って再生させることができる。
【0065】
方法の段階(c)によるさらに別の植物の作製は、例えば、生長的(例えば、挿木、塊茎を用いて、またはカルス培養および植物体全体の再生により)または生殖的に行うことができる。生殖的繁殖は制御された様式で進行させること、すなわち、特定の性質を有する選択された植物を交雑させて繁殖させることが好ましい。本発明は、本発明に係る方法によって得られる植物に関する。
【0066】
本発明はまた、本発明に係る植物の繁殖材料のほか、本発明に係る方法によって作製されるトランスジェニック植物にも関する。「繁殖材料」という用語には、生長的または生殖的な経路によって後継物を作出するために適した植物の部分が含まれる。生長的繁殖のためには、例えば、果実、種子、実生、プロトプラスト、細胞培養物など。好ましくは、繁殖材料は塊茎および種子である。
【0067】
もう1つの態様において、本発明は、果実、葉、貯蔵根、根、花、芽、新芽または茎、好ましくは種子または塊茎などの、本発明に係る植物の収穫可能な植物部分に関する。
【0068】
もう1つの好ましい態様において、本発明は、本発明に係る収穫可能な植物部分、好ましくは種子または塊茎を含む、動物および/またはヒトの食料に関する。
【0069】
好ましくは、本発明に係る植物部分は、本発明に記載される様式で遺伝的に改変されていない植物の対応する部分と比べて、摂取後にヒトおよび/または動物の健康に有益な影響を及ぼす。本発明に記載される動物および/またはヒト用の食料についても同じことがいえる。ヒトの場合には、本発明に係る食料の摂取は、例えば、腸内細菌叢の組成の改善をもたらし、特にヒトの健康に良い効果を及ぼすと考えられている腸内のビフィズス菌の含有量を高める(Izzo、Trends in Food Science & Technology 9(1998)、255〜257)。これらの良い効果は、好ましくは予防効果または食料の利用を支える効果である。
【0070】
本発明のもう1つの主題は、適した宿主細胞が本発明に係る核酸分子またはベクターによって形質転換を受ける、宿主細胞の作製のための方法である。考慮の対象となるさまざまな宿主細胞の形質転換のための方法は当業者に知られている。
【0071】
もう1つの態様において、本発明は、本発明に係る宿主を本発明に係る核酸分子の発現のために十分な条件下で培養し、続いて培養物から、すなわち細胞および/またはおそらくは存在する培養液からフルクトース転移酵素を単離する、フルクトース転移酵素を製造するための方法に関する。上記の方法では、形質転換またはトランスフェクションを受けた宿主細胞を、至適細胞密度に到達するまで例えば発酵槽で培養する。選択的には、誘導性プロモーターの場合には、本発明に係る核酸分子によってコードされる蛋白質の発現が発酵段階の終了時のみに誘導される。このようにして発現された蛋白質は、続いて通常の技法に従って培養液、細胞可溶化物または細胞膜画分から精製することができる。例えば細菌性に発現された蛋白質は、調製用クロマトグラフィーまたは免疫学的精製法によって、例えば、本発明に係る核酸分子によってコードされる蛋白質を認識するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いることによって、単離および精製することができる。この文脈においては、フルクトース転移酵素活性を有し、本発明に係る核酸分子によってコードされる蛋白質が、別の機能的なアミノ酸配列、例えば、異種蛋白質に由来するか、または合成的に生成された蛋白質タグ(GST、GFP、Flag、HAペプチド、His-タグ)も含みうることを言及しておく必要がある。
【0072】
本発明はさらに、フルクトース転移酵素活性を有する蛋白質、すなわち、本発明に係る核酸分子によってコードされるか、または本発明に係る方法によって得られるフルクトース転移酵素にも関する。本発明に係るフルクトース転移酵素は、好ましくはイヌリン型ポリフルクトースの製造のために用いることができる。それらを、フルクトース転移酵素を検出および/または精製するために用いることのできる抗体を作製するために使用することもできる。
【0073】
本発明のもう1つの主題は、本発明に係る核酸分子またはその断片と特異的にハイブリダイズする核酸分子である。これらの分子は、好ましくは、長さが少なくとも10、特に15、特に好ましくは少なくとも50ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドである。本発明に係るオリゴヌクレオチドは、例えば、PCR反応のためのプライマー、ハイブリダイゼーションプローブなどとして用いることができる。
【0074】
本発明のもう1つの主題は、ポリフルクトース、特にイヌリン型のものを製造するための方法であって、それにより、本発明に係る宿主細胞またはそれらを含む宿主生物を、本発明に係るフルクトース転移酵素の発現ならびにポリフルクトースの合成を可能にする条件下で培養する。
【0075】
本発明に係る核酸分子の提供により、従来の方法を用いては不可能であった、ポリフルクトース、特にイヌリン型のものを―遺伝子技術の方法によって―生物体において産生させることができるようになった。このため、対応するフルクトース転移酵素の活性を高めるため、または前記酵素を通常は発現しない細胞にそれを導入するために、細菌、真菌または植物細胞などの宿主において本発明による核酸分子を発現させることが可能である。本発明による少なくとも1つの核酸分子の発現または付加的な発現により、本発明による宿主細胞はポリフルクトース、特にイヌリン型のものを合成する。したがって、本発明のもう1つの主題は、本発明に係る宿主細胞から得られる、さらには繁殖材料から得られる、植物の場合は植物体およびその収穫産物から得られる、ポリフルクトース、特にイヌリン型のものである。
【0076】
したがって、本発明は特に、
(a)本発明に係る宿主細胞またはこのような細胞を含む宿主を、フルクトース転移酵素の産生、およびスクロース、選択的には細胞外から添加されるスクロース、またはイヌリン型ポリフルクトースと等価な基質の反応を可能にする条件下で培養する段階;ならびに
(b)このようにして産生されたポリフルクトースを、培養した宿主細胞、宿主または培養液から得る段階
を含む、ポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースの製造に関する。
【0077】
宿主細胞は、好ましくは植物細胞であり、宿主は好ましくは植物である。ポリフルクトース、特にイヌリン型のものを植物から入手するための方法は、例えば、フォーゲル(Vogel)(イヌリンおよびイヌリン含有作物(Inulin and Inulin-containing Crops)、Elsevier Science Publishers B.V. Amsterdam、A. Fuchs(編)(1993)、65〜75)に記載されている。
【0078】
本発明のもう1つの主題は、
(a)ポリフルクトースの転換を可能にする条件下で、スクロースまたは等価な基質を本発明に係るフルクトース転移酵素と接触させる段階;および
(b)このようにして生成されたポリフルクトースを得る段階
を含む、ポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースを製造するためのインビトロ方法である。
【0079】
スクロースと等価な基質には、例えば、宿主細胞または1つもしくはいくつかの他の酵素によってスクロースへと転換される基質がある。スクロースと等価な基質は、本発明に係るフルクトース転移酵素によって基質として代替的に用いられる二糖またはオリゴ糖であってもよい。これらの糖類の一例は、三糖類のラフィノースである。しかし、誘導体化されたスクロースを用いてもよい。好ましくは、上記の方法によって得られたイヌリンは、長鎖イヌリンであり、好ましくは重合度DP>20であり、好ましくはDP>50であり、特にDP>100であり、特に好ましくは重合度DP>200である。
【0080】
本発明はさらに、上記の植物/植物細胞の1つ、およびまたは本発明に係るこのような植物の部分からポリフルクトースを抽出する段階を含む、ポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースを製造するための方法にも関する。好ましくは、このような方法は、ポリフルクトースを抽出する前に、培養した植物および/またはこれらの植物の部分を収穫する段階、特に好ましくは、それらを収穫する前に本発明に係る植物体を栽培する段階も含む。植物または植物の部分からポリフルクトースを抽出するための方法は当業者に知られており、例えば、ギブソン(Gibson)(International Sugar Journal 96(1994)、381〜387)、Vogel(Stud. Plant Sci. 3(1993)、イヌリンおよびイヌリン含有作物(Inulin and Inulin-Containing Crops)、65〜75)に記載されている。
【0081】
また、本発明は、本発明に係る宿主細胞によって、または上記の本発明に係る方法によって得られるポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースにも関する。このポリフルクトースは、好ましくは、水系の粘度を高めるため、洗剤としての、懸濁化剤としての、沈降促進および水との錯化または結合のための界面活性剤を製造するために用いられる。
【0082】
また、ポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースを合成する本発明に係る宿主細胞を、食品添加物として用いることもできる。フルクタンは健康に対して良い効果を有するため、このような用途は有益である(Roberfroidら、J. of Nutrition 128(1998)、11〜19;Kleesenら、Am. J. Clin. Nutr. 65(1997)、1397〜1402)。
【0083】
本発明はさらに、真菌性フルクトース転移酵素が、ポリフルクトース、または真菌性フルクトース転移酵素を発現する宿主生物を作製するために用いられることを特徴とする、ポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースを製造するための方法に関する。好ましくは、本発明に係るフルクトース転移酵素、または本発明に係る宿主細胞を用いることができる。本発明は、真菌性フルクトース転移酵素を用いてイヌリン型ポリフルクトースを製造できることを初めて示した。
【0084】
最後に、本発明は、ポリフルクトース、特にイヌリン型のポリフルクトースを製造するための真菌性フルクトース転移酵素の使用に関する。
【0085】
上記および他の態様は開示されており、当業者には明白であり、本発明の記載および実施例に含まれる。本発明に用いうる上記の方法、媒体および用途に関するこれ以外の文献は、先行技術から、例えば電子媒体などを用いて公的ライブラリーから入手することができる。この目的のためには、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.htmlのアドレスなどからインターネットを介して利用しうる「メドライン(Medline)」などの公的データベースが有用である。これ以外のデータベースおよびアドレスも当業者には知られており、例えば、http://www.lycos.comのアドレスからインターネットで見いだすことができる。バイオテク特許または特許出願に関する出典および情報に関する概要は、バークス(Berks)、TIBTECH 12(1994)、352〜364に提供されている。
【0086】
以下の実施例は、本発明を例示したものである。
【0087】
実施例1
アスペルギルス・シドウイからのaf1-SSTの精製
2%麦芽エキス、0.5%ペプトンおよび2%スクロースを含む培地上でアスペルギルス・シドウイIAM 2544株を増殖させた。培地は2%寒天を添加することによって固化させた。胞子を播き、プレートが完全に乾燥するまで培養物を25℃に保った。分生子をプレートから回収し、50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0中に溶解した。分生子の可溶化は「フレンチプレッシャーセル(French Pressure Cell)」に3回通すことによって行った。
【0088】
精製のためにホモジネートをセファロースQ(Sepharose Q)に吸着させた。結合した蛋白質を、0〜1000mM KClの直線的勾配によって溶出させた。スクロース分解活性のある画分は500〜700mM KClの間で得られた。これらの画分をプールし、リン酸ナトリウム、pH 6.0に対して透析した。蛋白質を濃縮するために、それを再びセファロースQ(総容積2ml)に吸着させ、10mlの容積中に溶出させた。溶出液を2M硫酸アンモニウムに調整し、フェニルスパローズ(phenyl superose)に吸着させた。溶出は、2M硫酸アンモニウム、100mMリン酸ナトリウム、pH 7.0で洗浄した後に、2M〜0M硫酸アンモニウムの直線的勾配によって行った。活性画分は溶出勾配の400〜0mM硫酸アンモニウムの間で得られた。得られた蛋白質混合物をSDS-PAGEによっって分析した。その結果を図11に示す。スクロース分解活性の同様の強化―しかし、アスペルギルス・シドウイの菌糸体を用いたものであるが―が、ムラマツ(Muramatsu)およびナカクキ(Nakakuki)(Biosci Biotech Biochem 59(1995)、208〜212)に記載されている。精製によって、シークエンシングなどに適すると思われる均質な蛋白質は得られなかった。
【0089】
フルクトース転移酵素の同定のためには、0.1%SDS、10%グリセロール、50mM Tris、pH 6.8中にあるフェニルスパローズカラム溶出液の蛋白質10μgを加えた、セミネイティブ(semi-native)ポリアクリルアミドゲルを用いた。電気泳動後にゲルを50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0、1%Triton X 100中にて10分間3回再緩衝化し、続いて50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0、1%Triton X 100、500mMスクロース中で30分間インキュベートした。続いてゲルを0.1%(w/v)2,3,5,-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)、0.5M NaOH中で煮沸した。これにより、TTCは還元糖とともに赤色のホルマザン色素を形成する。図11に示した蛋白質のバンドは蛋白質のスクロース分解活性のために染色され、このため、アスペルギルス・シドウイのフルクトース転移酵素として同定することができた。このバンドを調製用ゲルから単離し、蛋白質をゲルから溶出させてシークエンシングに用いた。蛋白質のN末端はブロックされているため、エンドペプチダーゼLysCおよびAspNによる切断を行い、ペプチドをHPLCによって精製した上でエドマン(Edmann)法によるシークエンシングを行った。以下の配列が得られた:
Figure 0004659983
【0090】
遺伝子のクローニングのために、ファージLambda Zap II(Stragene、Heidelberg)中にcDNAライブラリーを作製した。分生子からRNAを調製することはできなかったため、ロゲマン(Logemann)ら(Anal. Biochem. 163(1987)、16〜20)に従って菌糸体からRNAを調製した。ポリA-RNAをpolyATractシステム(Promega、Madison、USA)によって得た。cDNAの合成およびLambda Zap IIのクローニングは製造者の指示に従って行った(Stratagene、Heidelberg)。蛋白質配列に従って以下のプライマーをデザインした:
Figure 0004659983
【0091】
cDNAライブラリー全体を基質として用い、プライマーの組み合わせasp19下流/asp31上流(アニーリング温度40℃)を用いるPCR反応により、約350bpのDNA断片が得られた。前記断片を放射性標識(Megaprimeキット、Boehringer Mannheim、Mannheim)の後にcDNAライブラリーのスクリーニングに用いた。得られたクローンをpBluescriptプラスミドのインビボ切出し後に増幅した。制限切断後にcDNA挿入物を比較し、クローンの挿入物の完全なシークエンシングを行った。cDNA挿入物の配列を配列番号:1に示す。これから導き出された蛋白質配列を配列番号:2に示す。
【0092】
実施例2
さまざまな原核および真核宿主細胞の形質転換のための、真菌性フルクトース転移酵素のコード領域を含む構築物の作製
さまざまな宿主細胞に対して真菌性フルクトース転移酵素による形質転換を行うために、分子生物学の標準的な技法を用いて(Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、多数の異なる構築物を調製した。構築物を図1から図5までのそれぞれに示している。詳細には構築物を以下の通りに調製した:
【0093】
pSK-as1は、アスペルギルス・シドウイのcDNAライブラリーのLambda Zap IIクローンからインビボ切出しによって得られたpas1の誘導体である。pas1はcDNAをEcoRI/XhoI断片として含む。pSK-as1は、BamHIおよびSmaI切断、BamHI付着末端のフィル・イン(fill-in)、ならびにベクターの再連結によってpas1から生じる。4ヌクレオチドの除去により、as1のコード領域はlacZ遺伝子のリーディングフレームへと切り換えられる(図1)。
【0094】
p112-as1 BamHIで切断し、フィル・インおよびNotIによる切断を行ったベクターp112A1NE(Riesmeierら、EMBO J. 11(1992)、4705〜4713参照)中に、pas1からの断片as1(Asp718で切断し、フィル・インしてNotIで切断)をクローニングした(図2)。
【0095】
pA7-as1は、ベクターのフィル・インしたAsp718およびSmaI制限部位中に、付着末端をフィル・インしたSmaI/Asp718断片としてpas1のコード領域をクローニングすることによってpA7から作製した。断片の適正な配向は、HindIII切断によって約1900bpの断片が得られたことで確認した。pA7は、EcoRIとAsp718との間にカリフラワーモザイクウイルスの35S RNAプロモーター(CaMV;528bp;nt 6909〜7437、Franckら、Cell 21(1980)、285〜294)を含み、さらにSphIとHindIIIとの間にアグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のターミネーター(Gielenら、EMBO J. 3(1984)、835〜846)を含む、pUC18の誘導体である(図3)。
【0096】
p35-as1は、SmaIで切断したベクター中にpas1からの断片as1(Asp718/NotIで切断した後にフィル・イン)を連結することにより、pBinARから作製した。pBinARは、EcoRIとAsp718との間にカリフラワーモザイクウイルスの35S RNAプロモーター(CaMV;528bp;nt 6909〜7437、Franckら、前記)を含み、さらにSphIとHindIIIとの間にアグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のターミネーター(Gielenら、前記)を含む、pBin19(Bevan、NucI. Acids Res. 12(1984)、8711)の誘導体である(図4)。
【0097】
p35-s3-as1は、2つの段階でクローニングした。第1に、付着末端の両方をT4ポリメラーゼでフィル・インしたpas1由来のBamHI / Asp718断片を、BamHIで切断した後にフィル・インしたベクターpS3中にクローニングした。これによってpS3-as1を得た。ベクターpS3は、ヌクレオチド725〜1400を含む、パタチン遺伝子B33(Rosahlら、Mol. Gen. Genet. 203(1986)、214〜220)のPCR断片を含む。このPCR断片から、nt 725のAsp718制限部位(GGTACC)、nt 1399および1400の組み合わせによってNcoI制限部位が生じるnt 1400のATGG配列が得られる。このPCR断片をAsp718とSmaI制限部位との間に挿入する。pS3-as1から、融合物S3-as1を含むSacI(フィル・イン)/ XbaI断片を調製した。この断片をpBinARのSmaIとXbaI制限部位との間にクローニングした(図5)。
【0098】
対応する宿主には標準的な技法による形質転換を行った。大腸菌にはハナハン(Hanahan)(J. Mol. Biol. 166(1983)、557〜580)の方法による形質転換を行い、サッカロマイセス・セレビシエにはドーメン(Dohmen)ら(Yeast 7(1991)、691〜692)の方法による形質転換を行い、タバコプロトプラストにおける一時的遺伝子発現はダム(Damm)およびビルミツァー(Willmitzer)(Mol. Gen. Genet. 213(1989)、15〜20)の方法に従って行い、ジャガイモ植物の安定的形質転換はディーツ(Dietze)らの方法(Potrykus, I.およびG. Spangenberg(編)、植物への遺伝子導入(Gene transfer to plants)、xxii+361(1995)、24〜29;Springer-Verlag:Berlin、Germany;New York、New York、USA. ISBN 3〜540〜58406〜4)に従って行った。
【0099】
実施例3
真菌性フルクトース転移酵素を発現するトランスジェニック宿主細胞または生物のフルクトース転移酵素活性の分析
イヌリンのインビボ合成
真菌性フルクトース転移酵素を発現するトランスジェニック宿主細胞または生物を、植物組織の場合を除き、2%スクロースを加えた培養液中で培養した。宿主生物が大腸菌K12の場合には、大腸菌のスクロース透過酵素をコードする機能的cscB遺伝子を構築物としてベクターpACYC184中に導入した。サッカロマイセス・セレビシエの場合には、ホウレンソウのスクロース輸送体の遺伝子をベクターp112AINE(Riesmeierら、EMBO J. 11(1992)、4705〜4713)に導入した。細胞をスクロースの存在下で少なくとも24時間培養した後に回収し、50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0で洗浄した後に破砕した。
【0100】
真菌性フルクトース転移酵素を発現する植物を土壌中で生育させた。4週後に葉および他の組織の試料を採取し、不溶性ポリビニルポリピロリドンの存在下で1ml水/g新鮮重量にて抽出し、遠心処理によって細胞残渣を除去した。
【0101】
各4μlの抽出物をプレキャスト(pre-cast)DCフィルム(Schleicher and Schull、Dassel、Germany)上のシリカゲルに載せ、アセトン/水(87:13)で2回展開させた。フルクトース残基に関するアッセイ法は尿素-リン酸試薬(Roberら、Planta 199(1992)、528〜536)を用いて行った。
【0102】
イヌリンのインビトロ合成
真菌性フルクトース転移酵素を発現する細胞を50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0、50μM PMSF、1mM DTT、10%(v/v)エチレングリコール中で破砕した。細胞抽出物を50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0、500mMスクロース、50μM PMSF、1mM DTT、0.02%(w/v)NaN3、10%(v/v)エチレングリコール中、25℃で12時間インキュベートした。混合物を水で1:10に希釈し、続いて4μlをプレキャストシリカゲルDCフィルム(Schleicher and Schull、Dassel、Germany)に載せ、アセトン/水(87:13)で2回展開した。フルクトース残基に関するアッセイ法は尿素リン酸試薬(Roberら、前記)を用いて行った。
【0103】
個々の分析の結果を図6〜図10に示す。これらの図は、インキュベーション混合物または細胞ホモジネートの薄層クロマトグラフィー、およびフルクトース含有糖による染色の後のシリカゲルフィルムを示している。アセトン/水(87:13)による薄層クロマトグラフィーにより、糖質のモノマー、オリゴマーおよびポリマーがサイズによって分離される。フルクトースはスクロースよりも遠くまで移動し、スクロースはケストースよりも移動している。DP>7およびそれ以上のオリゴマーは分離されず、適用部位に残っている。
【0104】
図6から、挿入物をもたないpBluescriptベクターによる形質転換を受けた大腸菌クローンにはスクロース変換能がなく(レーン1)、一方、プラスミドpas1による形質転換を受けたものは三糖であるケストースを合成することが見てとれる。プラスミドpSK-as1による形質転換を受けたクローンもより高分子のオリゴマーを合成することができる(レーン3〜6)。同時に、フルクトース残基が水に転移し、それによってフルクトースが生成される。前記の転換はアスペルギルス・シドウイ由来のSFTによって触媒される。図7は、プラスミド112-as1による形質転換を受けた酵母の蛋白質抽出物がフルクタンを合成すると思われることを示している。これらの酵母におけるフルクトース転移酵素活性は構築物112-as1Lによる形質転換を受けたものよりも高い。後者が合成できるのは―実験時間内に得られるフルクトース転移酵素活性が低かったため―三糖のみであった。合成されるフルクタンのサイズは反応時間およびフルクトース転移酵素活性に依存する。図8は、形質転換タバコプロトプラストの抽出物で合成されるフルクタンのサイズが、所与の反応時間では得られるフルクトース転移酵素活性の量に依存し、これは形質転換に用いたプラスミドpA7-as1の量に依存することを示している。レーン3〜5からは、クロマトグラフィーでは適用部位から移動しないDP>7のオリゴマーおよびポリマーが合成されたことが見てとれる。図9および10に示した安定的形質転換植物からの植物抽出物についても同じことがいえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、細菌の形質転換のためのpSK-as1の構成を示している。
【図2】 図2は、酵母細胞の形質転換のためのプラスミドp112-as1の構成を示している。
【図3】 図3は、植物細胞の形質転換のためのプラスミドpA7-as1の構成を示している。
【図4】 図4は、植物の形質転換のためのプラスミドp35-as1の構成を示している。
【図5】 図5は、植物の形質転換のためのプラスミドp35-s3-as1の構成を示している。
【図6】 図6は、pSK-as1による形質転換を受けた大腸菌の薄層クロマトグラフィーによる分析を示している。レーン1は挿入物のないベクターpBluescript SKを用いた対照実験を示す。レーン2は、as1コード領域がlacZ遺伝子とインフレームの関係にないプラスミドpas1を用いた実験を示す(レーン2)。この場合には、as1コード領域の翻訳はβ-グルクロニダーゼとの融合体としては行われず、内因性開始コドンから始まって低い効率で進行する。レーン3〜6は、構築物pSK-as1の種々の形質転換体を用いた実験を示している。細菌をOD 600が0.4に達するまで増殖させた後、培養物を100mM IPTGで誘導した。2時間の誘導を行った後、細胞を回収し、50mMリン酸ナトリウム、pH 6.0で可溶化した。蛋白質抽出物を600mMスクロースとともに37℃で12時間インキュベートした。薄層クロマトグラフィー用の標準物質としては、1-ケストース(kestose)(7)、スクロース(8)およびフルクトース(9)をそれぞれレーン7〜9に用いた。
【図7】 図7は、プラスミドp112-as1(レーン2)またはp112-as1L(レーン3)を含む形質転換酵母細胞の薄層クロマトグラフィーによる分析を示している。ベクターp112-as1Lは、ホウレンソウ由来のスクロース輸送体の5'リーダー配列を含む。レーン1は、形質転換を受けていない酵母細胞を用いた対照実験を示す。酵母細胞からの蛋白質抽出物中にフルクトース転移酵素活性が検出された。標準物質としては、フルクトース(レーン4)、1-ケストース、ニストースおよびフルクトース-ニストースの混合物(レーン5)ならびにスクロース(レーン6)を用いた。
【図8】 図8は、プラスミドpA7-as1を含む植物細胞の薄層クロマトグラフィーによる分析の結果を示している。レーン1は挿入物をもたないベクターpA7(50μg)による形質転換を示す;レーン2〜5はベクターpA7-as1による形質転換を示す(レーン2:10μg;レーン3:20μg;レーン4および5:50μg)。標準物質としては、1-ケストース、ニストースおよびフルクトース-ニストース(レーン6)、スクロース(レーン7)およびフルクトース(レーン8)の混合物を用いた。すべての実験に500,000個のプロトプラストを用いた。プロトプラストを形質転換後に25℃で2日間インキュベートした後に、蛋白質抽出物を50mMリン酸ナトリウム、pH 6中にて採取し、これを500mMスクロースとともに28℃で20時間インキュベートした。混合物の1/10希釈液4μlを用いた。
【図9】 図9は、構築物35-as1による形質転換を受けた植物の薄層クロマトグラフィーによる分析を示している。12種の植物を無作為に選択した。それぞれ20mgの葉材料を200μlの水で抽出した。4μlの抽出液を用いた。標準物質としては、フルクトース(レーンF)、スクロース(レーンS)、ならびに1-ケストース、ニストースおよびフルクトース-ニストースの混合物(レーンSt)を用いた。
【図10】 図10は、構築物35-S3as1による形質転換を受けた植物の薄層クロマトグラフィーによる分析を示している。12種の植物を無作為に選択した。20mgの葉材料をそれぞれ200μlの水で抽出した。4μlの抽出液を用いた。標準物質として、フルクトース(レーンF)、スクロース(レーンS)、ならびに1-ケストース、ニストースおよびフルクトース-ニストースの混合物(レーンSt)を用いた。
【図11】 図11は、フルクトース転移酵素を増加させたアスペルギルス・シドウイからの蛋白質抽出物を載せたフェニルスパローズ(phenyl superose)カラムの「400〜0mM硫酸アンモニウム」溶出液を示している(レーンE)。「M」と表記したレーンでは、サイズマーカーが分離されている。マーカー蛋白質の分子質量を右側にkダルトン単位で示している。
【配列表】
Figure 0004659983
Figure 0004659983
Figure 0004659983
Figure 0004659983
Figure 0004659983

Claims (29)

  1. (a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含む蛋白質をコードする核酸分子、
    (b)配列番号:1に示されたコード領域のヌクレオチド配列または対応するリボヌクレオチド配列を含む核酸分子、
    (c)(a)または(b)に述べた核酸分子に対して相補的なストランドとハイブリダイズする核酸分子であって、(a)または(b)に述べた核酸分子と少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、および
    (d)遺伝暗号の縮重のために(c)に述べた核酸分子の配列とはヌクレオチド配列が異なる核酸分子、
    ならびに、それらに対して相補的な核酸分子
    からなる群より選択される、重合度(DP)が6以上のポリフルクトースの合成をもたらす活性を有するフルクトース転移酵素をコードする核酸分子。
  2. DNAまたはRNA分子である、請求項1記載の核酸分子。
  3. 真菌ポリペプチドをコードする、請求項1または2記載の核酸分子。
  4. 真菌がアスペルギルス属のものである、請求項3記載の核酸分子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子を含むベクター。
  6. 核酸分子が原核細胞および/または真核細胞における翻訳可能なRNAの転写および合成を可能にする調節因子と機能的に結合している、請求項5記載のベクター。
  7. 核酸分子がフルクトース転移酵素の細胞内または細胞外局在に影響を及ぼすシグナル配列をコードする領域を含む、請求項6記載のベクター。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子もしくは請求項5〜7のいずれか一項記載のベクターによる形質転換を受けた宿主細胞、または該細胞に由来する宿主細胞。
  9. 細菌細胞または真菌細胞である、請求項8記載の宿主細胞。
  10. 請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子もしくは請求項5〜7のいずれか一項記載のベクターによる形質転換を受けた植物細胞、または該細胞に由来する植物細胞。
  11. (a)植物細胞が、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子および/または請求項5〜7のいずれか一項記載のベクターを導入することによって遺伝的に改変される;および
    (b)植物がその細胞から再生される;および選択的には
    (c)さらに別の植物が(b)による植物から再生される、
    植物を製造するための方法。
  12. 請求項10記載の植物細胞を含む、または請求項11記載の方法によって得られる植物。
  13. 有用な植物である、請求項12記載の植物。
  14. 請求項10記載の植物細胞を含む、請求項12または13記載の植物の繁殖材料。
  15. 請求項12または13記載の植物の収穫可能な植物部分。
  16. 請求項15記載の収穫可能な植物部分を含む、動物および/またはヒトのための食料。
  17. 適した細胞が、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子または請求項5〜7のいずれか一項記載のベクターによる形質転換を受ける、請求項8または9記載の宿主細胞を作製するための方法。
  18. 請求項8もしくは9記載の宿主細胞または請求項10記載の植物細胞をフルクトース転移酵素の合成を可能にする条件下で培養し、培養した細胞および/または培養液からフルクトース転移酵素を単離する、フルクトース転移酵素の製造のための方法。
  19. 請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子によってコードされる、または請求項18記載の方法によって得られるフルクトース転移酵素。
  20. 請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸分子またはその相補鎖と特異的にハイブリダイズする核酸分子であって、DPが6以上のポリフルクトースの合成をもたらす活性を有するフルクトース転移酵素をコードする核酸分子。
  21. (a)請求項8もしくは9記載の宿主細胞またはこのような細胞を含む宿主を、フルクトース転移酵素の生産、および選択的に添加されるスクロースまたは等価な基質のポリフルクトースへの転換を可能にする条件下で培養する段階;ならびに
    (b)このようにして産生されたポリフルクトースを、培養した細胞、宿主または培養液から入手する段階
    を含む、ポリフルクトースを製造するための方法。
  22. (a)ポリフルクトースへの転換を可能にする条件下で、スクロースまたは等価な基質を請求項19記載のフルクトース転移酵素と接触させる段階;および
    (b)このようにして生成されたポリフルクトースを入手する段階
    を含む、ポリフルクトースを製造するための方法。
  23. 請求項10記載の植物細胞から、請求項12もしくは13記載の植物から、または該植物の部分からポリフルクトースを抽出する段階を含む、ポリフルクトースを製造するための方法。
  24. ポリフルクトースがイヌリン型のポリフルクトースである、請求項21〜23のいずれか一項記載の方法。
  25. 請求項21もしくは22記載の方法の段階(a)および(b)、または請求項23記載の方法の抽出段階を含む、界面活性剤を製造するための方法。
  26. 請求項8もしくは9記載の宿主細胞または請求項10記載の植物細胞の食品添加物としての使用。
  27. ポリフルクトースを製造するための、請求項19記載のフルクトース転移酵素の使用。
  28. ポリフルクトースがイヌリン型のポリフルクトースである、請求項27記載の使用。
  29. 界面活性剤を製造するために、水系の粘度を増加させるため、界面活性剤として、懸濁化剤として、沈降促進および水との錯化または結合のために、請求項21〜24のいずれか一項記載の方法により製造されるポリフルクトースの使用。
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