JP4656624B2 - 記録ユニット及び画像記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録ユニット及び画像記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを被記録材上に直接吐出して画像を記録する低騒音、かつノンインパクトな記録方法である。また、この方法は、実施するにあたって複雑な装置を必要としないため、低ランニングコスト、装置の小型化、カラー化等が容易である。
【0003】
したがって、従来からインクジェット記録方法を適用したプリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録装置が実用化されている。またこのようなインクジェット記録技術を利用してブラックインクとカラーインク(例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、レッドインク、グリーンインクおよびブルーインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインク)を用いて多色の画像を形成する為のカラーインクジェット記録装置も実用化されている。
【0004】
また一方で、インクジェット記録方法には異なる2種のインクが隣接して被記録材に付与された場合、該インク同士がそれらの境界部で混ざり合ってしまい、カラー画像の品位が低下する現象(ブリーディング)が発生するという問題がある。特に、ブラックインクとカラーインクの境界部での混色は画像品位低下への影響が大きいため、様々な解決方法の開発が行なわれている。
【0005】
その代表的な解決方法は、2種のインクが隣接して被記録材に付与された時、少なくともどちらか一方の増粘、あるいは少なくともどちらか一方の色材の凝集または沈殿を生起させ、ブリードを防止させるメカニズムを有するインクセット及び記録方法である。
【0006】
例えば、米国特許第5428383号は1つのインクに沈殿剤(例えば多価金属塩)を含み、他のインク、好ましくはブラックインクに、カルボキシル及び/又はカルボン酸塩の基を有する有機染料の形の着色剤を採用することを開示している。これらのインクを互いに隣り合わせてプリントすると、沈殿剤を有している第1のインクが、カルボキシル及び/又はカルボン酸塩の基を有する着色剤の沈殿を生じさせ、それによって着色剤の他のインクへの移動を防ぎ、2つの隣接するプリント領域間のブリードが低減されることが記載されている。
【0007】
また、米国特許第5976230号には、互いに反応する2種のインクを同一の領域に付与することによってブリードを防止する技術を開示している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らの検討によれば、上記米国特許第5976230号に記載されているように、互いに反応性を有する2種のインクを同一領域に付与する方法によって得られる画像は、その濃度が、単独のインクによる画像のそれよりも上昇することを確認している。本願出願人の出願にかかる特開平6-171208号公報においても、顔料系ブラックインクと塩を含むカラーインクとを記録媒体上の同一地点にインクジェット法で着弾させることで、ブラックインク単独で形成したブラックの画像よりも高い濃度の画像が得られたことを開示している。このような、反応系インクセットを重ねることによって画像濃度が高くなること自体は何ら問題となるものではない。
【0009】
しかしながら、同一ドキュメント内のブラック領域内に、ブラックインクのみで形成した部分とカラーインクとブラックインクとの混合によって形成した部分とが混在した場合、ブラックの画像濃度が互いに異なってしまい、視覚的に違和感のある画像となってしまうことがある。より具体的には、1ドキュメント内にカラーの背景を有さないブラックのキャラクター部分(第1のキャラクター部分)とカラーの背景を有するブラックのキャラクター部分(第2にキャラクター部分)とが存在し、第1のキャラクター部分をブラックインク単独で形成し、第2のキャラクター部分をブリード防止の観点から、上記USP5976230に開示されている方法に従ってブラックインク及び該ブラックインクとの反応性を有するカラーインクとを重ねて形成した場合、第1のキャラクター部分の濃度と第2のキャラクター部分の濃度とが視覚的に明らかに異なり、違和感を生じる場合があった。
【0010】
この解決方法の1つとして、ブラックインクの画像領域すべて、即ち上述の例でいえば、第1のキャラクター部分にもブラックインクと相互反応性を示すカラーインクを打ち込みブラックインクを固定化する処理方法を施すことが考えられるが、この場合はカラーインクの消費量の増加、そして先に打ち込んだカラーインクは通常高い浸透性を有するため、記録媒体上でブラックインクよりも広がり易く、例えば黒のキャラクター部において、当該キャラクターがカラーインクによって縁取られているように視覚的に認識されてしまう場合がある。
【0011】
本発明者らは以上の知見に鑑みて、検討を重ねた結果、ブラックインクのみで形成される画像の濃度を、ブラックインクと該ブラックインクに対して反応性を有するカラーインクとの混合によって得られる画像濃度とほぼ同程度にまで改善することのできる技術、更に、形成されるカラー記録画像の長期保存後のカラーバランスを保ち、かつブリードの発生を効果的に防止でき、更にこれらの機能を耐久性良く維持し得るインクジェット記録に必要な技術を見出した。
【0012】
更に、このようなブラックインクとカラーインクとの組合せを含むインクセットを用いる場合に、より好適に利用できるインクジェットヘッドに構成について検討した。その結果、異なる2種のインク間に反応性を付与するための成分として多価金属塩を用いた場合には、インクジェットヘッドの液流路内のインクと接触部分、特に発熱体上の部分における耐久性をより高度なものとするには、多価金属塩を含むインクと接触する部分の構成が重要であるとの結論を得た。そして、そのような構成として、インクと接触する面を有する耐キャビテーション膜を少なくとも二層の膜で形成し、その内の下層をTaを含むアモルファス合金層とし、インクと接する上層を、(1)該アモルファス合金層よりもTaリッチなアモルファス合金の非晶質層若しくは不動態層、または(2)Ta膜もしくはTaAl膜、とする構成が、多価金属含有インクにおける吐出耐久性を更に向上させる上で有効であるとの知見を得た。
【0013】
本発明はこれらの本発明者らの知見に基づいて為されたものである。すなわち、本発明の目的は、多価金属塩を含むインクを用いた場合でも、多価金属塩を用いる利点を維持しつつ、吐出耐久性を向上させることのできる構成を有する記録ユニット及び画像形成装置を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、先に述べたようなブラックインクとこれに反応する多価金属塩を含有するカラーインクとを用いる特長を維持しつつ吐出耐久性を向上させることのできる記録ユニット及び画像形成装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、長期保存した場合の各カラーインクの退色性ΔEがほぼ均等であるインクセットを用いることにより、形成される記録画像の長期保存後のカラーバランスを保ち、かつブリードの発生を効果的に防止でき、更にこれらの機能を耐久性良く維持し得ることのできる記録ユニット及び画像形成装置を提供することにある。
【0016】
本発明の更なる目的は、高速印字における着弾精度の向上によって、先に述べたブラックインクとこれに反応するカラーインクとの混合によって記録された部分とブラックインク単独で記録された部分との画像濃度差の解消効果を高速印字の際にも効果的に発揮できる記録ユニット及び画像形成装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明により達成することができる。すなわち、本発明にかかる記録ユニットは、色材と水性媒体とを含むインクを収容するインク収容部と、該インクのインク滴を吐出させるインクジェットヘッド部と、を有する記録ユニットであって、
該インクのうち少なくとも一色が多価金属塩を更に含む、多価金属塩含有インクであり、
少なくとも該多価金属塩含有インクを吐出する該インクジェットヘッド部が、発熱部を形成する発熱抵抗体と、該発熱抵抗体に電気的に接続する電極配線と、前記発熱抵抗体と前記電極配線との上に絶縁保護層を介して設けられた耐キャビテーション膜とを基板上に有する基体に対して、インク滴を吐出する吐出口に連通する液流路が該発熱部に対応して設けられた構成を有し、該耐キャビテーション膜が少なくとも二層の膜で形成され、インクと接する上層の膜がTa膜もしくはTaAl膜であり、下層の膜はTaを含むアモルファス合金であることを特徴するものである。
【0019】
これらの記録ユニットを用いて画像記録装置を構成することができる。
【0020】
本発明によれば、例えば、ブラックインクとこれに反応する多価金属塩を含有するカラーインクとを組み合わせた構成を採用することによって、ブラックインクが他の色のインクとの間にブリード、白モヤを生じることがなく、また、ブリード防止のためにカラーインクとブラックインクとを重畳して形成した黒色画像を、ブラックインク単独で形成した黒色画像とほぼ同程度の極めて高い濃度にすることができ、視覚的に均一感のある高品位な画像を得ることができるという効果を奏するものである。そして、インクジェットヘッドの流路内の少なくとも発熱抵抗体上のインクと接触する部分に、インクと接する上層の膜がTa膜もしくはTaAl膜であり、下層の膜はTaを含むアモルファス合金である少なくとも2層の膜で形成された耐キャビテーション膜を用いることで、かかる効果を維持しつつ吐出耐久性を更に向上させることができる。
【0021】
すなわち、多価金属塩を含むインクを用いる場合には、インクと接触する部分は、その材質によっては長期の使用時において腐食して吐出安定性が損なわれたり、吐出性能の低下が生じる場合がある。これに対して、本発明における耐キャビテーション膜の構成を用いることで、インクと接触する部分における耐久性が確保され、多価金属塩を含有するインクを用いることにより得られる効果を更に継続的に維持することが可能となる。また、インクジェットヘッドとして、液流路内の発熱体に対応する領域にインク中での気泡の発生に伴ないその位置を変位する可動部材を設けた構成とすることで、高速印字時においてもインク滴の着弾点精度が得られ、ブラックインクとカラーインクとの境界領域での混色自体が低減化されてブリードの発生が減少する上に、多価金属塩を用いることによるブラックインク単独での画像濃度とブラックインクとカラーインクとの混合による画像濃度との差が解消されるので、ブリードの発生が更に効果的に低減される。
【0022】
なお、塩を含むブラックインクと多価金属塩を含むカラーインクの組合せを用いる場合の上述した効果が得られる理由は、記録媒体上に付与されたブラックインクはインク中の塩により固液分離が速やかに生じ、顔料が記録媒体表面に十分な固形分として残るためであり、その結果として、顔料が記録媒体内部に浸透してしまう従来の塩を含まないブラックインクで形成された画像の光学濃度よりも格段にまた、色材濃度の調整等では再現できない程に上昇する。そして、この塩入りのブラックインク単独で形成された画像の光学濃度は、被記録材上でブラックインクが多価金属塩含有インクとの反応により凝集した場合の画像の光学濃度と目視でほぼ同等の高い光学濃度を示す。
【0023】
さらに、モノトーンの階調性を表現するためにブラックインクとカラーインクとを重ねて付与する場合においても、従来の技術では上記と同様の理由で光学濃度差が発生するため、滑らかな階調表現を行うためにはブラックインクとカラーインクとの配合比に制約が有り、設計の自由度低下や滑らかな階調表現自体を損なうといった問題が生じていた。しかし、本発明を採用することにより、ブラックインクが凝集した部分の光学濃度とブラックインクのみで形成された部分の光学濃度をほぼ同等にすることが可能となったため、ブラックインクにカラーインクを添加する割合を調整することで任意の階調表現が得られることとなり、より優れた多階調表現の画像を実現できるという他の効果も得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、カラーインクとブラックインクとが混合された際に、該ブラックインク中の色材の分散安定性が不安定化する様に組成を調整したカラーインクと塩入りのブラックインクを用いる場合を一例として本発明を説明する。
【0025】
なお、このようなインクの組合せおけるブラックインク中の色材の分散安定性の不安定化とは、具体的には、該色材の凝集、沈殿、あるいは該ブラックインクの増粘等である。増粘とは混合前の該ブラックインクと該カラーインクのどちらの粘度よりも両者を混合したインクの粘度が高くなった場合の現象を意味する。以下、本発明にかかる各構成について説明する。
【0026】
(ブラックインクとカラーインクの反応性)
本発明にかかるブラックインクとカラーインクの組成は、ブラックインクとカラーインクとが混合されたときに上記したようにブラックインク中の色材の分散安定性を不安定化させるように各々が調製されることが好ましい。具体的には、例えば、カラーインクが、ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤としての多価金属塩を含んでいる態様が挙げられる。このようなブラックインクとカラーインクとの組合せの具体例としては、ブラックインク中の色材がアニオン性基を有し、カラーインクが多価金属陽イオンを含む多価金属塩、例えば、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+およびAl3+から選ばれる多価金属陽イオンを含む二価金属塩の少なくとも1種含有する組合せを用いることができる。多価金属塩は、例えば上記の二価金属陽イオンの少なくとも1種がインク中に供給されるようにその1種以上を用いることができる。
【0027】
この例においては、カラーインクとブラックインクとが混合されると、カラーインク中の多価金属塩の多価金属陽イオンがブラックインク中の色材のアニオン性基と反応し、その結果ブラックインク中の色材が分散破壊を起こし、色材を凝集させ、またインクを増粘させる。ここでカラーインクに含有させる多価金属塩としては、カラーインクの全質量に対して例えば、約0.1〜15質量%を含有させることが好ましい。
【0028】
そしてかかるインクセットを用いることで、ブラックインク単独で形成された画像と、ブリード軽減のためにブラックインクとカラーインクとの重畳によって形成された画像との画像濃度の差を目視では殆ど認識し得ない程度にまで小さくすることができる、という効果を得られる。
【0029】
このような効果が得られる理由について、以下にその理由を説明する。
【0030】
(ブラックインクとカラーインクとで形成される画像)
まず、ブリード、白モヤの緩和のために、顔料ブラックインクと該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤を含むカラーインクとを重畳することによって高い濃度の画像が得られる理由を説明する。
【0031】
ブラックインクおよびカラーインクを用いてブリード防止のための処理を行なう場合、インクの付与順が異なる以下の2通りの方法が考えられる。
【0032】
まず、カラーインクが付与された後、ブラックインクを付与する方法によって被記録材上で生じている現象を図14(d)〜(f)に示す。図14(d)〜(f)は塩の入っているブラックインク、及びブラックインクと反応性を示すカラーインクを用いた場合において、該ブラックインクと該カラーインクが同じ場所に付与された様子を示している。
【0033】
カラーインク1305によって浸透性の高くなった記録媒体1303面上にブラックインク1301が付与されるため、ブラックインク1301の記録媒体内部への浸透は早くなる。しかし、ブラックインク1301中に含有されてなる塩の効果によって、ブラックインクの色材の記録媒体内部への浸透よりも、ブラックインクの記録媒体表面における固液分離が早く起こり、色材の分離、固化が速く行われる。更にブラックインク1301中の顔料は記録媒体1303の表面でカラーインク1305と接触することで、水性溶媒中における分散状態の不安定化とそれに伴う凝集が生じ、凝集物1309が記録媒体の表面に析出し、図14(f)のようにインク中の色材の浸透が抑えられる。
【0034】
ここで顔料の分散安定性の不安定化成分は、添加剤としての多価金属塩、例えば二価金属塩であり、カラーインク中の染料は記録媒体の内部に浸透し、画像濃度向上への寄与は少ないと考えられるが、二価金属塩は一般的には染料よりも分子量が小さいと考えられ、ブラックインクとカラーインクとが接触したときの反応効率がより高く、より多くの凝集体が生じ記録媒体の表面近傍に残留すると考えられる。また、反応に関与しなかった顔料は、凝集物1309の上に乗った形になり、画像濃度の向上に寄与しているものと考えられる。
【0035】
このように、画像濃度を決定すると考えられている記録媒体表面上並びに記録媒体表面から約15〜30μmの深さの範囲内における色材の占有率は、非常に高いものとなり、高い画像濃度が達成されることになる。
【0036】
次に、ブラックインクが付与された後にカラーインクが付与された場合について図14(a)〜(c)に示す。浸透性の低いブラックインクが図14(a)のように記録媒体を覆うと、ブラックインク1301は記録媒体1303に対して浸透性が低いために遅い速度で浸透していく。そして、その後図14(b)のように浸透性の高いカラーインク1305が付与されても記録媒体の表面はブラックインク1301で覆われているため、浸透性はあまり変わらない。
【0037】
このような状況においては、ブラックインク1301、カラーインク1305の記録媒体1303への浸透は遅いため、図14(c)のようにブラックインク1301の色材は記録媒体の表面に残りやすく、高い光学濃度を示す。更にまたブラックインクとカラーインクは反応することにより、ブラックインク中の顔料の凝集物1309が紙面上に多く残る。これにより、高い光学濃度の印刷物を得ることができる。また、カラーインクの付与量が多い場合においても、ブラックインクの迅速な固液分離と凝集の現象の両方により紙面上に十分な固形分がのこり、均一感もよい状態である。
【0038】
このように、カラーインクがブラックインクの後に付与された場合、凝集物1309の上にカラーインク中の染料が乗った形となる。しかし、インクジェット用インク中の色材の濃度はそれほど高くはない為、例えばカラーインク中の染料濃度がカラーインクの質量の10質量%以下であれば、画像の濃度への寄与は少なくとも目視上では殆どないと考えられる。そして凝集物309が、被記録材表面上および被記録材表面から15〜30μmの範囲内の色材の占有率を飛躍的に向上させる結果、高い濃度の画像が形成されることになる。
【0039】
そしてここで用いたインクセットによれば、ブラックインク及びカラーインクの付与順に関わらず、上記の両方法で形成された画像は少なくとも視覚上は、ほぼ等しい、そして高い画像濃度を示す。また、被記録材の上方に凝集物としてインク中の色材が定着されるため、ブラックインクとカラーインクとが被記録材上で重畳されても、高い浸透性を有するカラーインクが顔料を被記録材内部に浸透させることを抑制できる。
【0040】
その結果としてブリードや白モヤの発生を有効に緩和することができる。更に、モノトーン階調の画像を形成する場合においても、インクの付与順を考慮する必要がなく、より優れた階調表現をより容易に実現することができるのである。
【0041】
(ブラックインク単独で形成される画像)
次に本発明にかかるブラックインクが、上記したブラックインクとカラーインクとの重畳によって得られる画像の濃度と視覚的に殆ど遜色のない濃度の画像が得られるメカニズムは以下のとおりであると考えられる。
【0042】
図12(a)〜(c)および図13(a)〜(c)は各々、本発明にかかる塩を含むインクおよび対照としての塩を含まないインクの各々をインクジェット記録法によってオリフィスから吐出させ、普通紙等の浸透性の比較的高い記録媒体に付与したときに、そこで生じる固液分離の様子を模式的、概念的に示した説明図である。即ちインクが着弾した直後には、双方のインク共に図12(a)および図13(a)に示すように塩の添加の有無に関わらず顔料インク901または1001が紙(903または1003)の表面に乗った状態である。
【0043】
時間T1経過後、塩を添加した顔料インクは、図12(b)に示すように、固液分離が速やかに起こり、インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域905とインク中の溶媒とが分離し、分離した溶剤の浸透先端907が紙903内部へと進んでいく。一方、塩を添加しない顔料インクは、図13(b)に示すように、塩を添加したインク程には固液分離が速やかに起こらないために、固液分離しない状態1005で、紙1003内部へと浸透していく。
【0044】
時間T2経過後:塩を添加した顔料インクは図12(c)に示すように、溶剤の浸透先端907は更に紙内部へと浸透していくが、領域905は紙の表面とその近傍に留まったままで維持される。一方、塩を添加していない顔料インクは、図13(c)に示すように、この時点において漸く固液分離が始まり、インク中の固形分の浸透先端1009と溶媒の浸透先端1007との間に差が生じて来るものの、インク中の固形分含有領域1005は記録媒体の深部にまで到達している。
【0045】
なお上記説明における時間T1およびT2は、塩の有無による固液分離の相違を概念的に捉えるための目安の時間である。
【0046】
以上から明らかなように、塩を添加することで、固液分離が速やかに起こるために着弾後、比較的速い段階で固液分離とともに、溶液は被記録材内部へと浸透し、色材(顔料)は被記録材の上方に留まりやすくなるため、光学濃度が上昇すると考えられる。そして前記したように、ブラックインクは、カラーインクと比較して高い表面張力に設定されるのが一般的であり、ブラックインクの記録媒体への浸透性を高めるようなカラーインクとの重畳のない状態においては、本発明にかかるブラックインクが記録媒体上で、その速い固液分離によって、画像濃度を実質的に規定する記録媒体の表面上ならびに記録媒体の表面から約15〜30μmの深さの領域における顔料の占有率が大幅に向上する。その結果として当該ブラックインク単独で形成された画像の濃度の大幅な向上が図られるものである。
【0047】
図15は、本発明にかかるインクセットを用いたことによる濃度差の緩和効果を示したものである、図15において、ブラックの画像濃度aは、ブラックインクとカラーインクの重畳による画像の濃度であり、bは本発明にかかる塩を含むブラックインク単独で形成した画像の濃度であり、cは上記の対照に用いた塩を含まないブラックインク単独で形成した画像の濃度である。この図からも分かるように、ブラックインクの画像濃度aとcの間の差が、本発明にかかるインクセットを用いることで、大幅に緩和され、目視での観察では画像濃度aとbの差は殆ど認識し得ない程度のものとすることができる。
【0048】
次に本発明にかかるインクセットを構成するブラックインクならびにカラーインクについて詳細に説明する。
【0049】
(ブラックインクについて)
ブラックインク中の色材としては例えばカーボンブラックが好適に用いられる。そしてカーボンブラックのインク中での分散の形態としては、自己分散型であっても、分散剤による分散の形態であってもよい。
【0050】
(自己分散型カーボンブラック)
自己分散型のカーボンブラックとしては例えば、少なくとも1つの親水性基(アニオン性基やカチオン性基)がイオン性基としてカーボンブラック表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックが挙げられる。これを用いることによって、カーボンブラックを分散させるための分散剤の添加が削減あるいは不要となる。
【0051】
アニオン性基を表面に直接もしくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックの場合、表面に結合されている親水性基の例として、例えば、−COO(M2)、−SO3(M2)、−PO3H(M2)、−PO3(M2)2等を挙げることができる。なお上記式中、「M2」は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。これらの中で特に、−COO(M2)、−SO3(M2)がカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめた自己分散型カーボンブラックは、インク中での分散性が良好な為、本実施態様において特に好適に用い得るものである。
【0052】
ところで上記親水性基中、「M2」として表わしたもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えばLi、Na、K、RbおよびCs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0053】
そしてM2をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含む本実施態様のインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。ここでM2をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばM2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックをイオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法等が挙げられる。
【0054】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばカーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に−COONa基を化学結合させることができる。
【0055】
カチオン性に帯電したカーボンブラックの場合、直接若しくは他の原子団を介して結合した親水性基が、例えば下記に示す第4級アンモニウム基から選ばれる少なくとも1つを結合したものが挙げられる。
【0056】
【化7】
Figure 0004656624
【0057】
上記式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。
【0058】
なお上記のカチオン性基にはカウンターイオンとして例えばNO3 -やCH3COO-が存在する。
【0059】
上記したような親水性基が結合されてカチオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN-エチルピリジル基を結合させる方法を例にとって説明すると、
【0060】
【化8】
Figure 0004656624
【0061】
カーボンブラックを3-アミノ-N-エチルピリジニウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。この様にカーボンブラック表面への親水性基の導入によってアニオン性若しくはカチオン性に帯電させたカーボンブラックは、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分散状態を維持する。
【0062】
ところで上記した様な種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させても良い。ここで他の原子団の具体例としては例えば炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基およびナフチレン基の置換基としては例えば炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また他の原子団と親水性基の組合わせの具体例としては、例えば−C24COO(M2)、−Ph−SO3(M2)、−Ph−COO(M2)等(但し、−Ph−はフェニレン基を、M2は先に挙げた基を表わす。)が挙げられる。
【0063】
ところで本実施態様において上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択したインクの色材に用いてもよい。またインク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としてはインク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更にインクの色調の調製等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0064】
(通常のカーボンブラック)
またブラックインク用の色材としては、自己分散型でない、通常のカーボンブラックを用いることもできる。
【0065】
このようなカーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA-、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA-II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC-72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF-88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではなく従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。
【0066】
また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0067】
そしてこのような通常型のカーボンブラックをブラックインクの色材として用いる場合には、これを水性媒体に安定して分散させるために分散剤をインク中に添加することが好ましい。
【0068】
分散剤としては例えばイオン性基を有し、その作用によってカーボンブラックを水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられ、そのような分散剤としては、例えば分散剤として具体的には、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸-マレイン酸ハーフエステル共重合体、あるいは、これらの塩等が挙げられる。この中で質量平均分子量が 1000 から 30000 の範囲のものが好ましく、更に好ましくは 3000 から 15000 の範囲である。
【0069】
(ブラックインクの有する塩について)
本発明にかかるブラックインクの有する塩としては、(M1)2SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)2SO3および(M1)2CO3から選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。ここでM1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す。
【0070】
そしてアルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、Rb、Cs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムおよびトリエタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0071】
そして上記した塩の中でも硫酸塩(例えば硫酸カリウム等)、安息香酸塩(例えば安息香酸アンモニウム)は自己分散型カーボンブラックとの相性が良く、具体的には記録媒体に付与したときの固液分離効果が特に優れるためか、種々の記録媒体に特に優れた品質のインクジェット記録画像を形成することができる。
【0072】
イオン性基の作用によって水性媒体中に分散させられている色材を含むインク、例えば自己分散型カーボンブラックを含むインク中に上記したような塩を共存させることによって、記録媒体の種類によって画像品質が大きく変化することのない、安定的に高品位の画像を形成することのできるインクを得ることができる。
【0073】
本発明にかかるブラックインクが上記した様な特性を発揮する詳細なメカニズムは現時点においては明らかでない。しかし、インクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として知られているブリストウ法によって求められるKa値に関して、本発明にかかるブラックインクは、塩を添加しない以外は同一の組成を有するインクと比較して大きなKa値を示すとの知見を本発明者らは得ている。
【0074】
Ka値の増加は、インクの記録媒体への浸透性の向上したことを示すものであり、これまでの当業者の常識としてインクの浸透性の向上は、光学濃度の低下を意味するものであった。即ちインクの浸透と共に色材も記録媒体内部に浸透してしまう結果として光学濃度が低下してしまうというのがこれまでの当業者の認識である。
【0075】
そしてこのような本発明にかかるブラックインクに関する種々の知見から総合的に判断すると、該ブラックインク中の塩は、紙面上に付与した後のインク中の溶剤と固形分との分離(固液分離)を極めて速やかに引き起こすという特異的な作用を生じさせていると考えられる。つまりインクが記録媒体に付与されたときの、固液分離が遅ければ、Kaの値の大きいインク、あるいはインクの浸透性の大きな紙上ではインクは色材とともに等方的に紙中に拡散し、その結果文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に紙の奥まで色材が浸透するために光学濃度も低下することが予測される。
【0076】
しかし本発明にかかるブラックインクはその様な現象が観察されないことから、記録媒体に付与されたときの固液分離が速やかに起こり、その結果、インクのKa値の増加にも関わらず、高品異な画像を与えるものと推察される。また浸透性が比較的高い紙であっても本発明にかかるブラックインクの場合には、文字品位の低下や光学濃度の低下といった現象は起こりづらい理由もこれと同じと考えられる。
【0077】
本発明にかかるブラックインク中の色材、例えば自己分散型カーボンブラックの含有量としては、インク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。また塩の含有量としてはインク全質量に対して0.05〜10質量%、特には0.1〜5質量%の範囲とすることが好ましい。ブラックインク中の色材および塩の含有量を上記の範囲とすることでより一層優れた効果を享受できる。
【0078】
色材として前記した自己分散型カーボンブラックを用いるときに、カーボンブラックの表面の親水性基として例えば-COO(M2)、-SO3(M2)2、-PO3H(M2)、-PO3(M2)2を用いる場合、M2としてアンモニウムや有機アンモニウムが好適に用い得ることは上記した通りであるが、このときにブラックインク中の塩として、例えば「M2」と一致させること、即ち「M1」=「M2」とすることは好ましい態様の一つである。
【0079】
即ち本発明者らは自己分散型カーボンブラックを含むインクに対して塩を加えることの効果の検討過程において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のM2(カウンターイオン)とM1とを同一としたときに、インクの安定性が特に向上するという知見を得た。M1とM2とを揃えることでこのような効果が得られる理由は明らかではないが、インク中において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のカウンターイオンと塩との間で塩交換が生じないため、自己分散型カーボンブラックの分散安定性が安定して維持されるためと推測される。
【0080】
そしてM1とM2との双方をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした場合にはインク特性の安定化効果に加えて、記録画像の耐水性のより一層の向上を図ることができる。またこのときインク中の塩としてPh-COO(NH4)(安息香酸アンモニウム)を用いると、インクジェット記録を一時休止させたあとのヘッドノズルからのインクの再吐出性においても極めて優れた結果を得ることができる。
【0081】
(ブラックインクにおける水性媒体)
本発明に係るブラックインクに用いられる水性媒体の例としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。
【0082】
具体的には例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、nープロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0083】
本発明にかかるブラックインク中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の含有量はインク全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲である。
【0084】
以上説明してきたブラックインクは、印刷品質の記録媒体特性への依存性を極めて低減させることができるという優れた効果を奏するものである。そして本発明にかかるブラックインクの優れた点はこればかりではない。
【0085】
即ち、該ブラックインクと、対照として塩を含まない以外は同一の組成のブラックインクとに関して、顔料濃度と各々のインクによる画像の光学濃度との関係をプロットしたグラフを図16に示す。図16から分かる様に、いずれのインクによる画像の光学濃度も最終的には同程度の値に到達するが、本発明にかかるブラックインク(a)は、対照のブラックインク(b)よりも低い顔料濃度で飽和値に到達するとの知見を得た。即ち塩の添加によって、画像の光学濃度に変化を与えることなく、インク中の顔料濃度を減らすことが可能となるのである。
【0086】
具体的には例えば塩として安息香酸アンモニウムを1質量%程度含ませた場合、自己分散型カーボンブラックの濃度を約4質量%とすることで、普通紙上の印刷の光学濃度は例えば1.4程度にまで達し、カーボンブラック濃度をこれ以上増しても光学濃度はあまり変化しない。これに対して塩を含まないインクはカーボンブラック濃度4質量%とした場合には普通紙上の印刷の光学濃度は1.32程度であり、カーボンブラック濃度7質量%とした場合で光学濃度1.35程度となり、そして8質量%とした場合でも1.35程度であって、この値がほぼ飽和値となる。
【0087】
この様な光学濃度の飽和値(1.4と1.35)の差は数値上はわずかに0.05であっても、各々の印刷物を対比するとその差を目視にて明らかに認識することができるものである。この様に塩を加えたインクは、塩を含まないインクと比較して低いカーボンブラック濃度でも高い光学濃度の印刷を行うことができ、且つ光学濃度の飽和値自体も高いという好ましい結果をもたらすものである。尚ここでは自己分散型カーボンを用いた具体例を述べたが、分散剤を用いてカーボンブラックを分散させたブラックインクについても同様の事象が観察された。
【0088】
またこのことは次のようなメリットももたらす。即ち、塩を含むインクは上記した様に印刷物の光学濃度に対するカーボンブラック濃度のマージンが広いという特性を有する。そのため、例えば吸収体を有するインクタンクにこのインクを充填し、そのインクタンクを長期間、同一の姿勢で放置(例えば6ヶ月間ノズルを上にして放置)した後にそのインクタンクを用いて印字を行ったときに、印字初期に得られる印刷物と、インクタンク内のインクを使い切る直前に得られる印刷物との間で目視で確認できるような光学濃度の差を生じさせることを極めて有効に防ぐことができる。
【0089】
上記インクは、塩を添加したことの更に他の効果として、間欠吐出性に優れているという点が挙げられる。間欠吐出性とは記録ヘッドの所定のノズルに着目し、そのノズルからインクを吐出し、その後インクの予備吐出やノズル内のインクの吸引を行う事無しに所定の時間放置し、再びそのノズルからインクを吐出したときに、再吐出の最初から正常にインクが吐出するか否かを評価するものである。
【0090】
(インク特性;インクジェット吐出特性、記録媒体への浸透性について)
本発明にかかるブラックインクは、筆記具用インクやインクジェット記録用インクに用いる事ができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、およびインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法があり、それらの記録方法に本発明のインクは特に好適である。
【0091】
ところで本発明にかかるブラックインクをインクジェット記録用に用いる場合には、該インクはインクジェットヘッドから吐出可能である特性を有する事が好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該インクの特性としては、例えばその粘度を1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、特には粘度を1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとする事が好ましい。
【0092】
またインクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値がある。即ち、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後におけるインクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
【0093】
V=Vr+Ka(t-tw)1/2
ここでインク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の荒さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。
【0094】
そしてインクが付着した後、コンタクトタイムを越えると、該コンタクトタイムを越えた時間、即ち(t-tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaはこの増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そしてKa値はブリストウ法によるインクの動的浸透性試験装置(例えば商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製等)等を用いて測定可能である。
【0095】
そして前記した本発明の各実施態様にかかるインクにおいて、このKa値を1.5未満とすることは記録画像品質をより一層向上させるうえで好ましく、更に好ましくは0.2以上1.5未満である。即ちKa値が1.5未満である場合に、インクの記録媒体への浸透過程の早い段階で固液分離が起こり、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を形成することができると思われる。
【0096】
なお本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えばキヤノン株式会社製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等)を記録媒体として用いて測定した値である。また測定環境としては通常のオフィス環境、例えば温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0097】
そして、上記したような特性を担持させられる好ましい水性媒体の組成としては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、チオジグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、およびアセチレンアルコールを含むものとする事が好ましい。
【0098】
(カラーインクについて)
(色材)
本発明で用いられるカラーインクの色材については、特に限定されるものではないが、カラーインデックスに記載されている水溶性のキサンテン系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、テトラアゾ系、銅フタロシアニン系の染料が好ましい。同一インク中にこれらの色材の1種または2種を組み合わせてインクを調製できる。インク中での色材の含有量は、一般には、インク全体に対して0.1〜15.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%の範囲である。
アニオン性染料の具体例を以下に挙げる。
【0099】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー 8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー 1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー 2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー 3
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド 2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド 6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド 7、12、13、15、17、20、23、
24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド 87、92、94
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー 1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー 4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック 17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック1、2
また、銀塩写真に匹敵する高画質なインクジェット画像が実現されている最近では、画質が良好であることだけではなく、記録した画像の、より長期の保存性も要求されるようになっている。
上記要求は、カラー画像を形成するための各カラーインクの光退色性ΔEがほぼ均等であるインクセットを用いることにより、画像のカラーバランスを崩すことなく、長期保存後の画質の劣化を防ぐことができる。
【0100】
ここで、カラーインクの色は、たとえばCIELABのような色空間を使って表すことができる。CIELAB色空間において、色は3つの項、L*、a*、b*を使って表示される。L*は色の明るさを定義し、0(ブラック色)から100(白色)の範囲にある。a*およびb*は、色の色相および色度特性を定義している。
【0101】
ΔEは2色間の差異を定義するもので、ΔEの値が大きくなると、2色間の差異は大きく、
【0102】
【数1】
Figure 0004656624
【0103】
と表される。
【0104】
このΔEを用いて、カラーインクの耐光性を知ることができる。つまり印字直後と光退色後とのΔEが大きいと、光退色性は大きい。このΔEが各色均等であると、画像の全体的な光退色は多少認められるが、カラーバランスは保たれているので、画質の劣化が小さい印象を与える。さらに各色の反射強度の残存率が大きければ、画像の全体的な退色も感じにくい。
更に、3年以上の擬似室内光退色後の光退色性が、CIELAB色空間表示系におけるΔEの差が10以内となるようなインクとすることが好ましい。
【0105】
よって、本発明にかかるインクセットに濃色および淡色のマゼンタインクを含める場合は、これらの濃色および淡色のマゼンタインクには、少なくとも下記一般式(I)で示される色材を用いることが好ましい。
【0106】
【化9】
Figure 0004656624
【0107】
(上記一般式(I)中、R1は置換もしくは未置換のアルコキシ基、または置換もしくは未置換のアリール基を表し、R2およびR4は各々独立に水素原子または置換もしくは未置換のアルキル基を表し、R3は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基またはハロゲン原子を表す。X1はカルボキシル基およびその塩、またはスルホン酸もしくはその塩を表す。nは1〜2の整数を表す。)
以下に一般式(I)で示される色材の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。また、これらの色材を同時に同一インク中に2種類以上用いてもよい。
【0108】
本発明に用いられる一般式(I)の化合物に含まれる色材の具体例は、以下の構造を有する。
【0109】
【化10】
Figure 0004656624
【0110】
【化11】
Figure 0004656624
【0111】
濃色マゼンタインクの色材としては一般式(I)で表される色材を少なくとも1種と、下記一般式(II)、下記一般式(III)で表される色材及びキサンテン構造を有する色材のうち少なくとも1種とを含んでいるのがさらに好ましい。
【0112】
【化12】
Figure 0004656624
【0113】
(上記一般式(II)中、Ar1はカルボキシル基およびその塩、スルホン酸およびその塩から選ばれる少なくとも1つの置換基を有するアリール基を有するもの、または、置換もしくは未置換のアルキル基を、Ar2はアセチル基、ベンゾイル基、1,3,5−トリアジン誘導体、SO2−C65基またはSO2−C64−CH3基のいずれかを表す。M2およびM3は対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。)
【0114】
【化13】
Figure 0004656624
【0115】
(Ar3、Ar4は各々独立的にアリール基または置換アリール基であり、Ar3およびAr4の少なくとも1つはカルボキシル基およびその塩、あるいはスルホン酸およびその塩の置換基を有す。Mは対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウムおよび有機アンモニウムを表す。R5は1,3,5−トリアジン、又は1,3,5−トリアジン誘導体を表す。R6およびR7は独立的に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基又は置換アラルキル基を表し、又はNと共にベルヒドロキシアジン環を形成するに必要な原子群を表し、Lは2価の有機連結基である。)
本発明に用いられる一般式(II)の化合物の色材としては、例えばC. I. Reactive Red 180や以下の構造を有するもの、更には特開平8−73791号公報、特開平11−209673号公報などに記載されている構造の化合物が挙げられる。
【0116】
【化14】
Figure 0004656624
【0117】
【化15】
Figure 0004656624
【0118】
本発明に用いられる一般式IIIの化合物の色材は、以下の構造を有する。
【0119】
【化16】
Figure 0004656624
【0120】
【化17】
Figure 0004656624
【0121】
【化18】
Figure 0004656624
【0122】
【化19】
Figure 0004656624
【0123】
【化20】
Figure 0004656624
【0124】
【化21】
Figure 0004656624
【0125】
キサンテン構造を有する色材の具体例としては、C.I.Acid Red 52、92、94、289等が挙げられる。
【0126】
本実施態様にかかる濃色マゼンタインク中の一般式(I)で表される色材と、一般式(I)以外の色材(一般式(II)、一般式(III)で表される色材、キサンテン構造を有する色材の少なくとも1種を含む)との質量比は、鮮明な色調と高い画像濃度と更に優れた耐光性が得られるという効果を考慮すると、95:5〜20:80の範囲が好ましい。一般式(I)の化合物の質量比がこれ以上大きくなると被記録材によっては鮮明な色調と画像濃度が得られないことがあり、また質量比がこれ以上小さくなると十分な耐光性が得られないことがある。
【0127】
本発明のインクセットに濃色および淡色シアンインクを含める場合におけるこれらのインクの色材としては、銅フタロシアニン染料を用いるのがより好ましい。銅フタロシアニン構造の色材の具体例としては、C.I. Acid Blue 249, C.I. Direct Blue 86, C.I. Direct Blue 199, C.I. Direct Blue 307等が挙げられる。これら銅フタロシアニン染料のほかに、他のシアン色材を併用してもよい。しかし併用する場合の、銅フタロシアニン染料と他の染料との質量比は、95:5〜20:80の範囲がより好ましい。
【0128】
本発明にかかるインクセットにイエローインクを含める場合における色材としては、DirectYellow132を用いるのがより好ましい。
【0129】
本発明のインクセットには更にブラックインクを含ませてもよく、その場合には他のカラーインクと同様、3年以上の擬似室内光退色後の光退色性が、CIELAB色空間表示系におけるΔEの差が10以内となるようなインクとすることが好ましい。
【0130】
染料系のブラックインクを用いる場合に、該インクに用い得る染料としては、例えば下記一般式(IV)〜(VI)で示されるものの中から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0131】
【化22】
Figure 0004656624
【0132】
(式中、Wはカルボキシル基を、Xは水素原子、カルボキシル基またはスルホン基を、Yは水素原子、カルボキシル基またはスルホン基を、Zは水素原子、カルボキシル基またはスルホン基を、R1は水素原子、カルボキシル基及びアルコキシル基の少なくとも一方で置換されたアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、または置換もしくは未置換のアルカノイル基を、それぞれ表わす。)
一般式(IV)において、R1が表わすカルボキシルアルキル基は、好ましくはアルキル基がC1-6(炭素数が1〜6、以下同様)のアルキル基、より好ましくはC1-4アルキル基であるカルボキシアルキル基を挙げることができる。
【0133】
【化23】
Figure 0004656624
【0134】
(式中、Q1は低級アルキルカルボニルアミノ基及び低級アルコキシ基から選択された少なくとも1種により置換されたフェニル基もしくはナフチル基;またはスルホン基で置換されたナフチル基を表わし、Q2はスルホン基で置換されたナフチル基;または低級アルコキシ基で置換されたフェニル基を表わし、R2及びR3はそれぞれ独立して、低級アルキル基、低級アルコキシ基または低級アルキルカルボニル基を表わし、R4は水素原子またはスルホン基で置換されたフェニル基を表わし、nは0または1であり、Mはアルカリ金属または置換されていても良いアンモニウム基を表わす。)
一般式(V)及び(VI)で表わされる染料構造中の低級アルキルカルボニルアミノ基としては、C1-4アルキルカルボニルアミノ基が好ましく、低級アルコキシ基としては、C1-4アルコキシ基が好ましく、また、低級アルキル基としてはC1-4アルキル基が好ましい。
【0135】
上記一般式(V)で示される染料の具体例としては例えば下記構造式23〜27が挙げられる。
【0136】
【化24】
Figure 0004656624
【0137】
一般式(VI)で示される染料としては例えば下記に示す例示化合物No.28〜32が挙げられる。
【0138】
【化25】
Figure 0004656624
【0139】
このほかにも,例えばC.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、90、108、146、154、168、195、C.I.フードブラック1、2なども挙げることができる。これらのブラック色染料は単独で、または本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせて用いてもよい。
【0140】
本発明にかかる他のインクセットとして、2種以上のカラーインクとして、同一の色調を有する第1のカラーインクと第2のカラーインクを含み、且つ、該第1のカラーインクの可視光領域内の最大吸収波長に於ける吸光度が、該第2のカラーインクの可視光領域内の最大吸収波長に於ける吸光度よりも大きいものとした上記のインクセットがあげられる。上記2つのカラーインクの内、第2のカラーインクとしては、例えば該第2のカラーインクを用いて被記録媒体(例えば普通紙)に100%ベタの印字部を形成したときに、該印字部が、目視可能であるようなものが好ましい。このような第2のカラーインクは、例えば、その可視光領域内の最大吸収波長における吸光度が、該第1のカラーインクの可視光領域内の最大吸収波長における吸光度の1/20以上1未満のものである。より具体的には、先に挙げたような色材を用いる場合には、第1のカラーインクは、インク全質量に対し2質量%を越える量を含ませることが好ましいことから、第2のカラーインクとしては、例えばインク全質量に対して色材濃度が2質量%以下で、上記の条件を満たすことができるように適宜選択された量を含むインクを用いることが好ましい。
【0141】
さらに第2のカラーインクによって得られる画像の耐光性が、第1のカラーインクによって得られる画像の耐光性と同程度か若しくは高いことが好ましい。インクセットにマゼンタインクとして上記第1のカラーインクと上記第2のカラーインクの2種のインクを含む場合、第2のカラーインクに前記一般式(I)で示される色材を唯一の色材として含むものを、シアンインクとして上記第1のカラーインクと上記第2のカラーインクの2種のインクを含む場合は、色材濃度の低いシアンインクにDirect Blue 199を唯一の色材として含むものを用いることが好ましい。
【0142】
更に、本発明にかかる好ましいインクセットとしては、各カラーインクによって得られる各画像の耐光試験後のΔEが20以下、更に好ましくは15以下であるカラーインクに
よって構成されているものである。
【0143】
(溶剤)
上記したようなカラーインク用の色材を含むインク溶媒または分散媒としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶媒が挙げられる。そして水溶性有機溶媒としては前記ブラックインクにて記載したのと同様なものが挙げられる。また該カラーインクをインクジェット法(例えばバブルジェット法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、前述したように優れたインクジェット吐出特性を有するようにインク所望の粘度、表面張力を有するように調製する事が好ましい。
【0144】
(カラーインクの浸透性)
上記したようなカラーインクに関して、Ka値を例えば5以上のインクとする事は記録媒体上に高品質なカラー画像を形成する事ができ、好ましい。即ちこのようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高い為、例えばイエロー、マゼンタおよびシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合でも隣接する画像間で色のにじみ(ブリーディング)を抑える事ができ、またこれらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも各々のインクの浸透性が高い為、隣接する異なる色の画像との間でブリーディングを有効に抑える事ができる。カラーインクのKa値をこのような値に調製する方法としては、例えば界面活性剤の添加、グリコールエーテル等の浸透性溶剤の添加等の従来公知の方法が適用できる。もちろん添加量は適時選択すれば良い。
【0145】
本発明にかかるカラーインクは、前記したように、ブラックインクと混合されたときにブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる染料を含むものとするか、或いは染料とブラックインクと混合されたときにブラックインクの分散安定性を不安定化させる添加剤とを含むものとすることが好ましい。具体的には先にブラックインクとカラーインクとの反応性に関して言及した(1)及び(2)の態様、或いはi)〜v)の態様のいずれかに基づき、カラーインクを調製し、或いはカラーインクとブラックインクとを、上記した各々のインクに用い得る材料を適宜選択して用いることで調製すればよい。
【0146】
(保湿剤)
また、インクの保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の保湿性固形分もインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は一般にはインクに対して0.1〜20.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。さらに本発明のインクには上記成分以外にも必要に応じて界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0147】
(耐光性試験)
本発明における光退色を評価する手段としては、耐光性試験が用いられ、さらに、この耐光性試験としては、画像の保存される環境を考慮すると、室内で、窓越しの太陽光を想定した条件で行うのがより好ましい。また耐光性試験における照射量としては、長期の保存を考えると、6000klux・hr以上であるのが好ましい。例えば、照度63kluxでの100時間の試験を行うことにより、一日あたりの室内での太陽光の照射量を5klux・hrとして3年以上の保存を想定した試験となる。
【0148】
この耐光性試験の条件としては室内窓越し太陽光を想定した条件で行うのが好ましい。より好ましくはISO10977に準拠する室内窓越しの太陽光を想定した各条件で行う。
【0149】
照度については、ISO規格では6kluxであるが、6000klux・hr以上の試験を行うと、試験時間が長くなってしまう。そこで照度を高くすることによって、試験時間を短くしても、得られる結果に相反性がなければよい。
【0150】
(被記録媒体)
また耐光性試験の画像を印字する媒体については、限定されないが、特殊媒体を用いるのが好ましい。特殊媒体とは、吸収性、発色性、解像度を良好なものとするために、例えば、基材上に、無機粒子(アルミナ水和物等)から成る多孔質層や、多孔質粒子層(多孔質粒子とバインダー)、多孔質高分子層(有機粒子と無機粒子の混合層)等を有する被記録媒体をさす。光沢紙、コート紙、光沢フィルムと呼ばれるようなものである。
【0151】
(インクジェット記録装置、インクジェット記録方法)
このインクジェットヘッドでは、インクを吐出するための吐出エネルギー発生素子として、インクに熱エネルギーを作用させる発熱体2が平滑な素子基板1に設けられており、素子基板1上に発熱体2に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐出口18に連通していると共に、複数の液流路10にインクを供給するための共通液室13に連通しており、吐出口18から吐出されたインクに見合う量のインクをこの共通液室13から受け取る。符号Mは吐出液が形成するメニスカスを表し、メニスカスMは、吐出口18及びそれに連通する液流路10の内壁によって発生する毛細管力によって通常負圧である共通液室13の内圧に対して、吐出口18近傍でつり合っている。
【0152】
液流路10は、発熱体2を備えた素子基板1と天板50が接合されることで構成されており、発熱体2と吐出液との接する面の近傍領域には、発熱体2が急速に加熱されて吐出液に発泡を生じさせる気泡発生領域11が存在する。この気泡発生領域11を有する液流路10に可動部材31の少なくとも一部が発熱体2と対面するように配されている。この可動部材31は吐出口18に向かう下流側に自由端32を有すると共に、上流側に配置された支持部材34に支持されている。特に、上流側へのバック波及びインクの慣性力に影響する、気泡の上流側半分の成長を抑制するため、自由端32が気泡発生領域11の中央付近に配されている。そして可動部材31は気泡発生領域11で発生する気泡の成長に伴い、支持部材34に対して変位可能である。この変位するときの支点33は支持部材34における可動部材31の支持部となっている。
【0153】
気泡発生領域11の中央上方にはストッパ(規制部)164が位置していて、気泡の上流側半分の成長を抑制するために可動部材31の変位をある範囲で規制している。共通液室13から吐出口18への流れにおいて、ストッパ164を境に上流側に、液流路10と比較して相対的に流路抵抗の低い低流路抵抗領域165が設けられている。この領域165における流路構造は上壁がなかったり流路断面積が大きいことなどで、液の移動に対し流路から受ける抵抗を小さくしている。
【0154】
以上の構成により、変位した可動部材31とストッパ164との接触によって、気泡発生領域11を有する液流路10が吐出口18を除いて、実質的に閉じた空間になるという特徴的なヘッド構造が得られる。
【0155】
なお、上述したヘッドにおいて、前記可動部材は、前記吐出口に向かうインクの流れに関して上流方向に成長する気泡のみを抑制するために設けられているものであっても良い。前記可動部材の自由端が前記気泡発生領域の実質中央部に位置している構成がより好ましい。この構成によれば、インクの吐出にとって直接関係しない、気泡成長による上流側へのバック波及びインクの慣性力を抑えるとともに、気泡の下流側への成長成分を素直に吐出口方向に向けることが可能である。
【0156】
さらに、上述したヘッドにおいては、前記規制部を境界として前記吐出口とは反対側の液流路の流路抵抗が低い構成を採用することができる。この構成によれば、気泡の成長による上流方向へのインクの移動が低流路抵抗の液流路によって大きな流れとなるので、変位した可動部材が規制部に接触したとき、その可動部材が上流方向へ引っ張られた形の応力を受けることとなる。その結果、この状態で消泡を開始しても、気泡の成長による上流方向へのインク移動力が大きく残るため、このインク移動力に対し可動部材の反発力が勝るまでの一定の間、上述の閉空間を保つことができる。すなわち、この構成によって、高速メニスカス引き込みがより確実なものとなる。また、気泡の消泡工程が進み、気泡成長による上流方向へのインク移動力に対し可動部材の反発力が勝ると、可動部材が初期状態に戻ろうと下方変位し、これに伴い低流路抵抗領域でも下流方向への流れが生じる。低流路抵抗領域での下流方向への流れは流路抵抗が小さい為、急速に大きな流れとなって規制部を介し液流路へ流れ込む。その結果、この吐出口に向かう下流方向への液移動により、上述のメニスカスの引き込みを急制動させ、メニスカスの振動を高速に収束させることができる。
【0157】
なお、規制部は、最大気泡の上流側の成分を略一定化した状態を形成できるものであれば、上述した実施例で示されるものに限定されるものではない。
<素子基板>
次に、素子基板の構成について説明する。図1は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図を示したもので、図1(a)は後述する保護膜があるヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0158】
液流路10、液流路10と連通する吐出口18、低流路抵抗領域165および共通液室13を構成する溝を設けた天板50が素子基板1上に配されている。素子基板1には、シリコン等の基体107に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体2を構成するハフニュウムボライド(HfB2)、チッ化タンタル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウム等の配線電極104(0.2〜1.0μm厚)を図2(a)のようにパターニングしている。この配線電極104から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を流し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリコンやチッ化シリコン等の保護層103を0.1〜2.0μm厚で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテーション層102(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、インク等の各種の液体から抵抗層105を保護している。
【0159】
特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)等が耐キャビテーション層102として用いられる。
【0160】
また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み合わせにより、上述の抵抗層105に保護層103を必要としない構成でもよくその例を図2(b)に示す。このような保護層103を必要としない抵抗層105の材料としてはイリジュウム−タンタル−アルミ合金等が挙げられる。
【0161】
このように、前述の発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含むものでもよい。
【0162】
多価金属塩を含有するカラーインクを吐出する部分おける耐キャビテーション層102の構成を更に説明する。図2(a)及び(b)は、多価金属塩を含有するカラーインクの吐出用として用いられる耐キャビテーション層の構成を示す図である。なお、この構成は多価金属塩を含有しないインクの吐出に用いても良い。
【0163】
図2(a)はヘッド用基体の要部を示す模式的上面図、図2(b)は図2(a)中のX1−X2の一点鎖線によって切断した模式的側断面図である。
【0164】
図2に示すように、Si基板3の上に、蓄熱層8として酸化シリコン膜が形成されており、その上に発熱抵抗体層4、電極配線2としてAl層がそれぞれ所定のパターン形状に形成されている。一対の電極配線2同士の間隙にある発熱抵抗体層4の部分が、上面のインクを急激に加熱沸騰させる発熱部1となる。
【0165】
これら発熱抵抗体層4および電極配線2を覆う様に、主に電極2間の絶縁性を保つ保護膜5として窒化シリコン層が形成され、さらにその上に下層の耐キャビテーション膜6として耐インク腐食性の高い、Taを含むアモルファス合金膜、上層のキャビテーション膜7として比較的コゲ性の良好なTa膜が順に形成されている。また、上層のキャビテーション膜7は下層のそれよりも耐インク腐食性の低い膜である。
【0166】
第1の耐キャビテーション膜6としてのTaを含むアモルファス合金は、Ta,Fe,Ni及びCrを含む合金を挙げることができる。このような合金により耐インク腐食性の高いものとしている。また、Ti、Zr、Hf、Nb及びWからなる群より選ばれた1種類以上の原子を更に含んでいてもよい。
【0167】
さらに上記アモルファス合金は組成式(I):TaαFeβNiγCrδ (但し、10at.%≦α≦30at.%、且つ、α+β<80at.%、且つ、α<β、且つ、δ>γ、且つ、α+β+γ+δ=100at.%である。)で表されるTaを含むアモルファス合金がより好ましい。この場合、Taの量が10at.%〜30at.%の範囲と、上記組成のTaを含むアモルファス合金よりも低く設定してある。このような低Ta比を採用することで、合金に適度なアモルファス領域を付与して不動態膜化し、腐食反応の起点となる結晶界面の存在箇所を有意に減少させ、耐キャビテーション性を良好なレベルに維持しつつ、耐インク性を向上させることができる。
【0168】
特に多価金属塩やキレート錯体を形成する成分が含有されたインクに対して、不動態膜としての効果が発揮され、インクによる腐食を防止することができる。なお、上記組成式(I)におけるαは10at.%≦α≦20at.%であることがより好ましい。また、γ≧7at.%、且つ、δ≧15at.%であること、さらにはγ≧8at.%、且つ、δ≧17at.%がより好ましい。
【0169】
一方、第2の耐キャビテーション膜7としてのTaは正方格子の結晶構造からなるTa(β−Taとも呼ぶ。)で、発熱部1における気泡の消泡時に発生するキャビテーションによって少しづつ除去される特性を持ち、後述するが純度99%以上の金属Taのターゲットを用いてスパッタリングによって形成された正方格子の結晶構造を持つTa膜(層)である。
【0170】
次に、上述の構造をもつインクジェットへツド用基体の製造方法を、図3および図4に基づいて説明する。
【0171】
図3(a)に示すように、Si基板3に熱酸化法、スパッタ法、CVD法などによって、発熱抵抗体の下地としての蓄熱層8となる酸化シリコン膜を2400nm形成する。
【0172】
次に、図3(b)に示すように、蓄熱層8上に、反応性スパッタリングにより、発熱抵抗体層4となるTaN層を約100nm、電極配線2となるAl層をスパッタリングにより500nmの厚さに形成する。
【0173】
次に、フォトリソグラフィ法を用いて、Al層をウェットエッチングし、さらにTaN層をリアクティブエッチングし、断面形状が図3(c)のような電極配線2および発熱抵抗体層4を形成する。図2に示した発熱部1は、発熱抵抗体層4上のAl層が除去された部分であり、電極配線2間に電流を流したときにインクに付与する熱を生じる。
【0174】
次に、図3(d)に示すように、保護膜5として窒化シリコン膜を1000nm、さらに図4(a)に示すように下層の耐キャビテーション膜6としてその成分がTa:約18at.%,Fe:約60at.%,Cr:13at.%,Ni:約9at.%のTaを含むアモルファス合金膜をスパッタリング法で約100nmの厚さに形成する。このTaを含むアモルファス合金膜の成膜は、Ta−Fe−Cr−Niからなる合金ターゲットを用いたスパッタリング法のほか、別々のTaターゲットとFe−Cr−Niターゲットを用い、それぞれに接続された2台の電源から別個のパワーを印加する、2元同時スパッタリング法により形成することも可能である。
【0175】
さらに図4(b)に示すように上層の耐キャビテーション膜7として正方格子の結晶構造からなるTa(β−Taとも呼ぶ。)層を、純度99%以上(好ましくは99.99%)の金属Taのターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングで約150nmの厚さに形成する。なお、上記結晶構造のβ−Taが形成されるならば、マグネトロンスパッタリング以外に他のスパッタ法でもよい。
【0176】
このとき、下層の、Taを含むアモルファス合金膜であるa−Ta(Cr,Fe,Ni)層の表層部へTaがドーピングされる。ただし、a−Ta層のアモルファス構造が大幅に変更されることはないが、表層域に対するTaのドーピングが行われることにより、表層部においてTaがリッチ(rich)になっていると考えられる。この際、a−Ta(Cr,Fe,Ni)層は比較的Crが多く、Cr等の不動態表層に対してTaリッチのドーピングが行われているとも考えられる。そして、この部分が少なくとも、保護層の耐久性を向上する要因と推定される。
【0177】
次に図4(c)に示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、Ta上にレジストパターンを形成し、フッ化水素酸と硝酸を主成分とするエッチング液で上層のTa膜及び下層のTaを含むアモルファス合金膜を連続でエッチングし、所定の形状とする。
【0178】
次に図4(d)に示すように、フォトリソグラフィ法により保護膜上にレジストパターンを形成し、CF4ガスを用いたドライエッチングで外部電源との接続に必要なAl電極による電極パッドを露出させることにより、インクジェット記録へツド用基体の要部の製造を完了する。
【0179】
なお、米国特許第4,429,321号公報の様に、発熱抵抗体を駆動する集積回路を同一のSi基板内に作り込んでもよい。この場合、集積回路部分は、配線部分と同様に、保護膜5、第1の耐キャビテーション膜6、および第2の耐キャビテーション膜7で覆われていることが好ましい。
【0180】
ここで、ヒーター駆動パルス数の増加に応じた、Ta腐食性の高い多価金属塩を含むインクによる耐キャビテーション膜の変化を図5に示す。図5は図2(b)に示した発熱部付近の拡大図で、(A)はヒーター駆動パルス数≦2×108の時の膜の断面図、(B1)はヒーター駆動パルス数>2×108の時の膜の断面図、(B2)は(B1)の状態時の上面図である。
【0181】
図5(A)に示した初期状態における状態を示す。この状態は耐キャビテーション膜7をTa膜とした場合に限らず、TaAlを用いても同様である。
【0182】
一方、図5(A)に示した初期状態からヒーター駆動パルス数を増加していくと、Ta腐食性の高いインクと接するTa膜7が除々に腐食されるが、やがて有効発泡領域(電極配線間の発熱抵抗体が占める領域(ヒーター領域)で発生した熱がインクの発泡に有効に作用する領域)において同図(B1),(B2)に示すようにTaを含むアモルファス合金膜6が露出し、前記インクによる腐食の進行がTaを含むアモルファス合金膜6とTa膜7との界面で止まる。この効果は、本例のように下層の耐キャビテーション膜6をTaを含むアモルファス合金膜とした場合に限らず、同様に耐インク腐食性を持つもの、例えばCrの酸化物を含んだ酸化膜が表面に形成された耐キャビテーション膜6を用いても同様である。
【0183】
また図5(A)から同図(B1)の過程において、削られていくβ−Ta層がインク発泡時のキャビテーションによる圧力を受けることによって、その下層にあるTaを含むアモルファス合金表層の非晶質体もしくはその不動態膜中にドーピングされていく。つまり、ヘッド製造時のエージング(予め予備的な液滴吐出を製造終了工程として行うこと)や、使用中の吐出時の気泡消泡作用によって、TaがTaを含むアモルファス合金表層の非晶質体もしくはその不動態膜中に実質的にドーピングされる(逆スパッタともいう)ことによって、より耐久性に優れ、コゲの発生のない耐キャビテーション表層または膜全体を形成することができる。なお、上記の理由から、インクジェットヘッド用基体およびそれを備えたヘッドを記録装置に搭載して使用する際、上記のようにTaを含むアモルファス合金表層の非晶質体もしくは不動態膜にβ−Taをドーピングした層をインクに対して最初の表面にしてもよく、また後で露出する層としてもよい。この場合、前者のヘッドは初期状態からの吐出速度の安定を達成することができ、後者のヘッドは最初の表面がキャビテーションによって除去される間のコゲをつきにくくする期間を付加することができるといったそれぞれの利点がある。
【0184】
以上の事から、Ta腐食性の高いインクを使用したヒーター部分の寿命が図6に示すように、Taの一層からなる耐キャビテーション膜に比べて飛躍的に延びると同時にヒーター部分についても良好な発泡効率を保つことができる。
【0185】
ここでは、発熱体として電気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるものであればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0186】
なお、前述の素子基板1には、前述の発熱部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供給するための配線電極104で構成される電気熱変換体の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するためのトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込まれていてもよい。
【0187】
以上説明し素子基板の構成によれば、コゲを生じさせやすいインクに対してはヒーター駆動パルスの増加にともない、若干ずつ上層のTa膜が削れるためコゲの累積発生が抑えられ発泡の効率が低下しない。一方、腐食性の高いインクに対してヒーター駆動パルス数の増加にともない上層のTa膜が削られるが、Taを含むアモルファス合金層と上層のTa膜との界面に達したところで腐食が止まる。したがって、ヘッド用基体上に一直線に並べられた複数の発熱部をインクの種類別に分けて使用する場合、そのインクの種類にコゲを生じさせやすいインクとTaを腐食しやすいインクとが含まれていても、両方のインクに対してヘッド用基体は十分な寿命と信頼性の両立を図ることができる。
【0188】
第1の耐キャビテーション膜としてTaαFeβNiγCrδ (但し、10at.%≦α≦30at.%、且つ、α+β<80at.%、且つ、α<β、且つ、δ>γ、且つ、α+β+γ+δ=100at.%である。)のアモルファス合金保護層を用いた場合は、その表面に不動態膜が形成されている。この部分に第2の耐キャビテーション膜を形成するために純度99%以上の金属Taをスパッタリングを開始することで、形成される第2の耐キャビテーション膜としての正方格子の結晶構造のTa層と前記アモルファス合金保護層との界面もしくは、アモルファス合金保護層の表面域(すなわち、Cr,Ta等の不動態膜など)に何らかの耐久性向上の構成変化を与えていると推定している。
【0189】
第1の要因としては、第1の耐キャビテーション膜のCr,Taを含む不動態膜領域に対して、第2の耐キャビテーション膜に用いられるTaがマグネトロンスパッタ等によって実質的にドーピングされることで、マモルファス体(非晶質体)としてのTa(Fe,Ni,Cr)等のTa,Crを含む非晶質体不動膜を改質して、コゲに対する発生原因を無くすとともに、耐久性を向上していることである。
【0190】
したがって、この第1の要因からすれば、本発明は、少なくともTa,Crを含む非晶質体不動層にTaをドーピングした層を、インクに対して最初の表面もしくは、後で露出する層として有しているインクジェットヘッド用基体およびそれを備えたインクジェットヘッドであれば良い。このうち、前者の場合は最初からの吐出速度から安定した速度とすることができ、後者の場合は最初の表面がキャビテーションによって除去される間の耐久性期間を付加できるというそれぞれの利点がある。
【0191】
第2の要因としては、第1の耐キャビテーション膜の非晶質構造に対して後から形成される正方格子の結晶構造のTa(すなわちβ−Ta)が非晶質構造に対して表面にその一部が強固に残り、表面を改質していることで耐久性およびコゲの付着抑制作用が向上されていることである。
【0192】
これは第1の要因に対して加わっている場合も考えられる。いずれにしても、この第2の要因も、第1の要因と同様に、単独での効果を発揮するもので第1の要因の「Taをドーピングした層」に代えて「Taを表面部に付加した構造」と見ることで発明として意味を持つことになる。
【0193】
第3の要因としては、第1の要因と第2の要因の両方もしくは一方の要因のTaが、削られ(腐食され)ていくβ−Ta層がキャビテーションによる圧力を受けることによって、第1の耐キャビテーション膜の非晶質体もしくはその不動態膜中にドーピングされていくことである。つまり、ヘッド製造時のエージング(予め予備的な液滴吐出を製造終了工程として行うこと)や、使用中の吐出時の気泡消泡作用によって、Taが実質的にドーピングされる(逆スパッタともいう)ことによって、削られ(腐食され)てしまうべきTaや、非晶質体表面に強固に付着しているTaや、不動態膜中にドーピングされているTaに対して作用し、より耐久性に優れ、コゲの発生の無い条件の耐キャビテーション表層または膜全体を形成しているのである。
【0194】
無論、最初のインク接液表面として第1の要因を得る際に、上記ヘッド製造時のエージングを用いて、前記β−Taの結晶構造膜を除去しておくことは理解できよう。また、第1,第2,第3の要因の複合体や、第1,第3の複合体もそれぞれ本発明において利用することができる。
<インクタンク、記録ヘッド>
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0195】
図7は、記録ヘッドカートリッジを示す斜視図および分解斜視図である。図8は、図7に示される記録ヘッドの構成を示す分解斜視図、図9は、そのヘッドの底面側を示す斜視図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素の説明を行う。
【0196】
記録ヘッドH1001は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する一構成要素であり、記録ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、記録ヘッドH1001に着脱自在に設けられたインクタンクH1900(H1901,H1902,H1903,H1904)とから構成されている。記録ヘッドH1001は、インクタンクH1900から供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0197】
このヘッドカートリッジH1000は、インクジェット記録装置本体に載置されているキャリッジ(不図示)の位置決め手段および電気的接点によって固定支持されるとともに、キャリッジに対して着脱可能となっている。インクタンクH1901はブラック(黒)のインク用、インクタンクH1902はシアンのインク用、インクタンクH1903はマゼンタのインク用、インクタンクH1904はイエローのインク用である。このようにインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904のそれぞれが記録ヘッドH1001に対して着脱自在であり、それぞれのインクタンクが交換可能となっていることにより、インクジェット記録装置における印刷のランニングコストが低減される。
【0198】
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット方式のサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0199】
記録ヘッドH1001は、図8の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003とタンクホルダーH2000から構成されている。この図8に示した通り、記録ヘッドH1001は、記録素子ユニットH1002をビスH2400によりインク供給ユニットH1003に結合し、さらにタンクホルダーH2000と結合することにより完成する。その完成図を図9に示している。記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合する際には、記録素子ユニットH1002のインク連通口とインク供給ユニットH1003のインク連通口とを、インクがリークしないように連通させるため、ジョイントシール部材H2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。
【0200】
そして記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給ユニットH1003の一側面に、インク供給ユニットH1003の端子位置決めピン(2ヶ所)と電気コンタクト基板H2200の端子位置決め穴(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法としては、例えば、インク供給ユニットH1003に設けられた端子結合ピンをかしめることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定しても良い。さらにインク供給ユニットH1003のタンクホルダーとの結合穴および結合部をタンクホルダーH2000に嵌合させ結合することにより、記録ヘッドH1001が完成する。
【0201】
記録素子ユニットH1002には、図8および図9に示すように、インクタンクH1901から供給されたブラック(黒)インクを吐出する吐出口列H1011、インクタンクH1902から供給されたシアンインクを吐出する吐出口列H1012、インクタンクH1903から供給されたマゼンタインクを吐出する吐出口列H1013、およびインクタンクH1904から供給されたイエローインクを吐出する吐出口列H1014が設けられている。吐出口列H1011,H1012,H1013,H1014は、互いに平行な状態でその順番で並んでいる。
【0202】
前述の図7(a),(b)は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する記録ヘッドH1001とインクタンクH1901、H1902、H1903、H1904の装着を説明する図であり、インクタンクH1901、H1902、H1903、H1904の内部には、上述したように対応する色のインクが収納されている。それぞれのインクタンクには、インクタンク内のインクを記録ヘッドH1001に供給するためのインク連通口が形成されている。例えばインクタンク1901Hが記録ヘッドH1001に装着されると、インクタンクH1901のインク連通口が記録ヘッドH1001のジョイント部に設けられたフィルターと圧接され、インクタンクH1901内の黒インクがそのインク連通口から記録ヘッドH1001のインク流路を介して吐出口列H1011のそれぞれの吐出口に向けて供給される。
【0203】
そして、電気熱変換素子と吐出口のある発泡室にインクが供給され、電気熱変換素子に与えられる熱エネルギーによって被記録媒体である記録用紙に向けてインクが吐出される。
【0204】
インクタンクH1902〜H1904のそれぞれに収納されるシアン、マゼンタ、イエローのカラーインクは、カラー画像を形成する際に色の境界でインクの滲みが生じないように、記録用紙への浸透速度の速いものが用いられる。一方、インクタンクH1901に収納されるブラックインクは、黒画像が高濃度でかつフェザリングの少ない高品位なものとなるように、前記3種類のカラーインクに比べ比較的記録用紙への浸透速度が遅いものが用いられる。
【0205】
<画像記録装置>
図10にはこのインクジェットヘッドを組み込んだ画像記録装置の1例を示す。ここでブレード61はワイピング部材であって、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カレンチレバーの形態をなしている。このブレードは記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配置され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行なう構成を有している。
【0206】
さらに63はブレードに隣接して設けられるインク吸収体であり、このブレードと同様に記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。このブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61および吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵等の除去が行なわれる。
【0207】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録材にインクを吐出して記録を行なう記録ヘッドであり、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッドの移動を行なうためのキャリッジである。このキャリッジはガイド軸67と摺動可能に係合し、このキャリッジの一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続(図示せず)している。これによりこのキャリッジはガイド軸に沿った移動が可能となり、記録ヘッドによる記録領域およびその隣接した領域の移動が可能となる。
【0208】
一方51は被記録材を挿入するための被記録材供給部、52はモータ(図示せず)により駆動される送りローラーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置、即ち記録位置へ被記録材が搬送され、記録が進行するにつれて、ローラー53を配した排出部へ排出される。
【0209】
上記構成において記録ヘッドが記録終了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64のキャップ62は記録ヘッドの移動経路から退避しているが、ブレードは移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッドの吐出口面がワイピングされる。なおキャップが記録ヘッドの吐出口面に当接してキャッピングを行なう場合にはキャップは記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0210】
記録ヘッドがホームポジションから記録開始位置へ移動する場合にはキャップおよびブレードは前記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッドの吐出口面はワイピングされる。
【0211】
前記の記録ヘッドのホームポジションへの移動には記録終了時や吐出回復時ばかりではなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行なわれる。
【0212】
図11は、インクジェットヘッドを用いた画像記録装置を動作させるための装置全体のブロック図である。
【0213】
この記録装置は、ホストコンピュータ300より印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力される。CPU302はROM303に保存されている制御プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0214】
また、CPU302は前記画像データを記録用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モータを駆動するための駆動データを作る。画像データおよびモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミングで駆動され画像を形成する。
【0215】
上述のような記録装置に適用でき、インク等のインクの付与が行われる被記録媒体としては、各種の紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用いられるプラスチック材、布帛、アルミニウムや銅等の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0216】
また、上述の記録装置として、各種の紙やOHPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパクトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミックス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して記録を行う記録装置、また布帛に記録を行う捺染装置等をも含むものである。
【0217】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、以下の記載で、部、%とあるものは特に断らない限り質量基準である。
(1)顔料分散体の調製
はじめに顔料分散体1の調製を行った。
(顔料分散体1)
比表面積が230m2/gでDBP吸油量が70mL/100gのカーボンブラック10gとp-アミノ-N-安息香酸 3.41gを水72gに良く混合した後、これに硝酸 1.62gを滴下して、70℃で攪拌した。ここに更に数分後、5gの水に 1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0218】
【化26】
Figure 0004656624
【0219】
(インクセットの調製及びその評価(その1))
次に上記の各顔料分散体を用いてブラックインク1、および比較例であるブラックインク2を下記の方法にて調整した。
【0220】
(ブラックインク1)
・ 顔料分散体1:30部
・ 安息香酸アンモニウム:1部
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ ジエチレングリコール:6部
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水: 残部(合計100部、以下同様である。)
(ブラックインク2)
・ 顔料分散体1: 30部
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ ジエチレングリコール:6部
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ 水: 残部
カラーインクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
【0221】
(イエローインク1)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ 2−ピロリドン:6部
・ CIアシッドイエロー23:3部
・ 水: 残部
(マゼンタインク1)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ 2-ピロリドン:6部
・ CIアシッドレッド52:3部
・ 水: 残部
(シアンインク1)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ 2-ピロリドン:6部
・ CIアシッドブルー9:3部
・ 水:残部
さらに、上記の各々のカラーインクに、ブラック顔料の沈殿材である、2価金属塩を加えたものを以下のカラーインクとして調整した。
【0222】
(イエローインク2)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ 2-ピロリドン:6部
・ CIアシッドイエロー23:3部
・ 硝酸カルシウム塩:2部
・ 水: 残部
(マゼンタインク2)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ 2-ピロリドン:6部
・ CIアシッドレッド52:3部
・ 硝酸マグネシウム塩:2部
・ 水: 残部
(シアンインク2)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ トリメチロールプロパン:6部
・ グリセリン:6部
・ 2-ピロリドン:6部
・ CIアシッドブルー9:3部
・ 硝酸マグネシウム塩:2部
・ 水: 残部
上記で調整したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。
【0223】
【表1】
Figure 0004656624
【0224】
下記表2に上記実施例1および実施例2および比較例1のインクセットの主たる構成を示す。
【0225】
【表2】
Figure 0004656624
【0226】
上記の実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2のインクを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。インクジェット記録装置としては、図1に示した構成のインクジェットヘッドを装着したもので、発熱体上の耐キャビテーション層の構成は、第2のキャビテーション膜が99%のTa膜であり、第1のキャビテーション膜がTaαFeβNiγCrδ (但し、10at.%≦α≦30at.%、且つ、α+β<80at.%、且つ、α<β、且つ、δ>γ、且つ、α+β+γ+δ=100at.%)である。
【0227】
このインクジェット記録装置(オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有する)を用いて、上記実施例および比較例のインクセットでのブリード、白モヤおよびカラーインクとブラックインクとの重畳によって形成したブラック画像領域とブラックインク単独で形成したブラック画像領域との間の濃度差について以下の方法および基準で評価を行なった。
【0228】
尚、例えば、「Bk:100%duty ,Col:15%duty 」の処理とは、画像面積の100%の領域にブラックインクを付与し、その画像面積の15%の領域にはカラーインクも付与することを意味する。また、15%の領域にカラーインクを付与する場合、実施例1、比較例1、2はC、M、Yをそれぞれ5%ずつ付与し、実施例2はCのみを15%付与する。
【0229】
(ブリードおよび白モヤ)
印字パターンとしては図17のようなカラーとブラックの画像領域が隣接するものを印字し、境界部のブリードとブラック領域の白モヤの評価を目視で行った。
【0230】
この際、ブラックの画像領域はBk:100%duty ,Col:15%dutyとなるように処理を行った。
【0231】
・ブリードについての評価基準
A: 境界部のにじみがない。
B:境界部にややにじみが目立つ。
C:境界部のにじみがかなり目立つ。
【0232】
・白モヤについての評価基準
A:白モヤがない。
B:白モヤはやや目立つ。
C:全体的に白モヤが目立つ。
【0233】
(ブラック画像領域の濃度差)
図18のように▲1▼Bk:100%duty 、▲2▼Bk:100%duty ,Col:5%duty、▲3▼Bk:100%duty ,Col:15%dutyの3種類のブラックベタ画像領域が隣接する画像パターンを形成し、画像間の濃度差や均一感の評価を目視で行った。
【0234】
・濃度差についての評価基準
A:ブラックベタの境界が目立たず、均一感がある。
B:ブラックベタの境界は目立たないが、均一感がない。
C:ブラックベタの境界が目立つ。
【0235】
評価結果
【0236】
【表3】
Figure 0004656624
【0237】
以上より、本願発明にかかるインクセットを用いて画像を形成した場合、ブリードおよび白モヤが防止できるだけでなく、ブラックインク単独で形成したブラック画像と、ブラックインクおよびカラーインクとの重畳によって形成したブラック画像との間で視覚的に濃度差のない、均一感のある画像が得られることが確認された。
【0238】
(インクセットの調製及びその評価(その2))
以下の組成を用いて各インクを調製した。
(イエローインク3;Y3)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ エチレン尿素:6部
・ 2-ピロリドン: 6部
・ エタノール:5部
・ C.I.ダイレクトイエロー132:3部
・ 硝酸マグネシウム塩:2部
・ 水: 残部
(マゼンタインク3;M3)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ エチレン尿素:6部
・ 2-ピロリドン: 6部
・ エタノール:5部
・ 例示化合物7:3部
・ 例示化合物8:1部
・ C.I.アシッドレッド289:0.1部
・ 硝酸マグネシウム塩:3部
・ 水:残部
(シアンインク3;C3)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ エチレン尿素:6部
・ 2-ピロリドン: 6部
・ エタノール:5部
・ C.I.ダイレクトブルー199:3.5部
・ C.I.アシッドブルー9:0.3部
・ 硝酸マグネシウム塩:3部
・ 水: 残部
(シアンインク4;C4)
・ アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ エチレン尿素:6部
・ 2−ピロリドン:6部
・ エタノール:5部
・ C.I.ダイレクトブルー199:1.5部
・ 硝酸マグネシウム塩:3部
・ 水: 残部
各インクについて以下の測定を行った。
(1)吸光度
C3とC4において、可視光領域内の最大吸収波長に於ける吸光度を測定した。その結果、C3の最大吸収波長は621.5nmであり、吸光度は1.10となった。
【0239】
C4の最大吸収波長は615.5nmであり、吸光度は0.38となり、C3とC4は、ほぼ同一の色調を有するものであった。また、C4とC3の吸光度比はC4/C3≒0347≧1/20であった。
【0240】
(2)反射濃度残存率、ΔE
プリンターにY3、M3、C3、C4のインクを充填して、光沢紙(PR-101;キヤノン製)に各色の反射濃度 1.0 のベタ部を印字した後、印字物を24時間自然乾燥させ、ガラスカバーをした上からキセノンフェードメーターCi3000(アトラス社製)にて耐光性試験を行った。照度は 63 klux、照射時間は 100時間とした。
【0241】
その他のランプ、フィルター、槽内温度、湿度はすべてISO10977室内窓越し太陽光の条件に準拠した(槽内温度25℃、相対湿度 55%)。照度については、ISO規格では6kluxであるが、6000 klux・hr以上の試験を行うと、試験時間が長くなってしまうため、63 klux、100hrで行い、同じ照射量の時に相反性がないことを確認した。試験前後での印字物のベタ部の反射濃度、カラー座標L*、a*、b*を反射濃度計X-Rite 938(商品名:X-Rite社製)で測定し、反射濃度残存率と、光退色性ΔEを前出の式1に従って算出した。その結果を下記表4に示す。
【0242】
【表4】
Figure 0004656624
【0243】
(3)カラーバランス
プリンターに所定の下記表5に示した組合せの各インクセットを用意し、各インクセットごとにインクをインクジェット記録装置のインク収納部にそれぞれ充填し、光沢紙(PR-101;キヤノン製)に、充填した各インクを用いてフルカラーの画像を印字した。
【0244】
【表5】
Figure 0004656624
【0245】
印字後 24時間自然乾燥させ、上記耐光性試験と同様の耐光性試験を行った。試験後の印字物のカラーバランスを目視にて評価した。
その結果、いずれの組合せもカラーバランスに問題はなかった。
【0246】
【発明の効果】
本発明によれば、カラーインクとブラックインクとを組み合わせて用いる場合において、カラーインクとの共存下でブラックインクによる黒色画像・文字が高い光学濃度、画像品位、画像堅牢性等の種々の性能を満たし、かつブリード、白モヤの防止、インクの消費量の節約を可能にするインクセットに好適な構成を液流路に有する記録ユニット及び画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェットヘッドの一例の縦断面図である。
【図2】インクジェットヘッド用基体を示した図である。
【図3】インクジェットヘッド用基体の製造方法の前段の工程を示す図である。
【図4】図3に示した工程の続きの工程を示す図である。
【図5】ヒーター駆動パルス数の増加に応じた、Ta腐食性の高いインクによる耐キャビテーション膜の変化を示す図である。
【図6】Ta腐食性の高いインクを用いた場合の、本発明の上層にTa,下層にTaを含むアモルファス合金を構成した耐キャビテーション膜と、Taの一層のみからなる耐キャビテーション膜との寿命を比較したグラフである。
【図7】(a)は、本発明のカラーインクジェット記録方法が実施もしくは適用されるインクジェット記録装置に好適な記録ヘッドカートリッジの斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【図8】図7に示す記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図9】図7に示した記録ヘッドの底面側を示す斜視図である。
【図10】画像記録装置の一例の斜視図である。
【図11】画像記録装置を動作させるための装置全体のブロック図である。
【図12】塩を含む顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図13】塩を含まない顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図14】ブラックインク及びカラーインクのセットを用いたときに、往復ムラが極めて有効に解消できるメカニズムを説明する図である。(a)〜(c)は、被記録材に対して浸透し難いブラックインクを付与した後に浸透しやすいカラーインクを付与したときの被記録材へのインクの定着工程を示す。(d)〜(f)は、被記録材に対して浸透しやすいカラーインクを付与した後に浸透し難いブラックインクを付与したときの被記録材へのインクの定着工程を示す。
【図15】図12(C)、図13(C)、ならびに図14(C)及び(f)の光学濃度の関係図である。
【図16】インク中の塩の有無、インク中の顔料濃度と光学濃度との関係を示すグラフである。
【図17】ブリード及び白モヤの評価実験に使用する印字パターン。
【図18】画像処理によるブラック画像領域の濃度差に関する評価実験に使用する画像パターン。
【符号の説明】
1 素子基板
2 発熱体
10 液流路
13 共通液室
18 吐出口
31 可動部材
34 支持部材
50 天板
51 被記録材供給部
52 送りローラー
53 ローラー
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
68 モータ
69 ベルト
102 耐キャビテーション層
103 保護層
104 配線電極
105 抵抗層
106 チッ化シリコン膜
107 基体
111 モーター
112,113 ギア
115 キャリッジ軸
150 記録媒体
164 ストッパ
165 低流路抵抗領域
200 ヘッド
300 ホストコンピュータ
301 入出力インターフェイス
302 CPU
303 ROM
304 RAM
305 モータドライバ
306 駆動用モータ
307 ヘッドドライバ

Claims (7)

  1. 色材と水性媒体とを含むインクを収容するインク収容部と、該インクのインク滴を吐出させるインクジェットヘッド部と、を有する記録ユニットであって、
    該インクのうち少なくとも一色が多価金属塩を更に含む、多価金属塩含有インクであり、
    少なくとも該多価金属塩含有インクを吐出する該インクジェットヘッド部が、発熱部を形成する発熱抵抗体と、該発熱抵抗体に電気的に接続する電極配線と、前記発熱抵抗体と前記電極配線との上に絶縁保護層を介して設けられた耐キャビテーション膜とを基板上に有する基体に対して、インク滴を吐出する吐出口に連通する液流路が該発熱部に対応して設けられた構成を有し、該耐キャビテーション膜が少なくとも二層の膜で形成され、インクと接する上層の膜がTa膜もしくはTaAl膜であり、下層の膜はTaを含むアモルファス合金であることを特徴する記録ユニット。
  2. 前記インクとして2色以上のカラーインクを用い、これらの少なくとも1色のインクが前記多価金属塩含有インクである請求項1に記載の記録ユニット。
  3. 該カラーインクの色材が酸性染料または直接染料である請求項1または2に記載の記録ユニット。
  4. 前記インクジェットヘッド部の液流路が、該液流路中のインクに気泡を発生させる気泡発生領域と、前記気泡発生領域に対面して設けられ前記気泡の成長に伴い変位する可動部材とを有する請求項1〜3のいずれかに記載の記録ユニット。
  5. 前記液流路が、更に、前記気泡の成長に伴う前記可動部材の変位を規制するための規制部を有し、前記可動部材が変位して前記規制部に実質的に接触することによって、前記液流路が、前記吐出口に向かうインクの流れ方向に関して実質的に分断される請求項4に記載の記録ユニット。
  6. 前記可動部材の自由端は、前記気泡発生領域の中央部に実質的に位置している請求項4または5に記載の記録ユニット。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の記録ユニットを有することを特徴する画像記録装置。
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