JP4371555B2 - 画像記録方法及び多色画像の品質改善方法 - Google Patents

画像記録方法及び多色画像の品質改善方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4371555B2
JP4371555B2 JP2000265670A JP2000265670A JP4371555B2 JP 4371555 B2 JP4371555 B2 JP 4371555B2 JP 2000265670 A JP2000265670 A JP 2000265670A JP 2000265670 A JP2000265670 A JP 2000265670A JP 4371555 B2 JP4371555 B2 JP 4371555B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
color
black
black ink
recording
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000265670A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001150793A5 (ja
JP2001150793A (ja
Inventor
卓巳 金子
大策 井手
孝一 大角
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2000265670A priority Critical patent/JP4371555B2/ja
Publication of JP2001150793A publication Critical patent/JP2001150793A/ja
Publication of JP2001150793A5 publication Critical patent/JP2001150793A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4371555B2 publication Critical patent/JP4371555B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像記録方法及び多色画像の品質改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを被記録材上に直接吐出して画像を記録する低騒音、かつノンインパクトな記録方法である。また、この方法は、実施するにあたって複雑な装置を必要としないため、低ランニングコスト、装置の小型化、カラー化等が容易である。したがって、従来からインクジェット記録方法を適用したプリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録装置が実用化されている。
【0003】
またこのようなインクジェット記録技術を利用してブラックインクとカラーインク(例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、レッドインク、グリーンインクおよびブルーインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインク)を用いて多色の画像を形成する為のカラーインクジェット記録装置も実用化されている。
【0004】
このようなカラーインクジェット記録装置において、特にブラックインクは文字等の印刷に多用されることから、印刷のシャープさ、鮮明さ及び高い印字濃度を達成することが要求され、その為の一手段として被記録材に対するブラックインクの浸透性を下げ、ブラックインク中の色材の被記録材への浸透を抑制する技術が知られている。
【0005】
一方カラーインクに関しては、異なる色の2種のインクが隣接して被記録材に付与されたときに、該インク同士がそれらの境界部で混ざりあってしまいカラー画像の品位を低下させる現象(ブリーディング)を防ぐために、被記録材に対する浸透性を上げ、カラーインク同士が被記録材表面で混ざり合うことを防止する技術も知られている(例えば、特開昭55-65269号公報)。
【0006】
ところで、インクジェット記録において、その印刷時間を短縮する方法として、主走査の往方向、復方向の双方向において印字する方法(以下「往復印字」という)や、1度の主走査で記録ヘッドの長さと同じ幅の画像を完成される低パス印字といった方法が試みられている。往復印字といった方法により、何の記録を行うことも無しにホームポジションに戻っていたキャリッジ走査が全て省かれるので、事実上一紙面の記録時間をほぼ半減させることができる。また、1度の主走査で画像を形成する方法に関しては、記録紙面上の同一箇所を多数回走査する必要がなく、印字時間を大幅に短縮できる。また、キャリッジの移動を高速に行うことにより印字時間を短縮させるような方法も知られている。
【0007】
また、高品位な画像を実現するために、2度以上の主走査によって記録ヘッドの長さと同じ幅の画像を完成させる、多パス印字といった方法も試みられている。このような方法により、ヘッド毎に固有のばらつきを緩和させることができる。
【0008】
この場合、画像を複数回に分割して完成させるため、たとえば図19(a)及び(b)に示すような1組のマスクを用いて印字を行う。同図において、ハッチングを施した部分は印字領域、非ハッチング部分は非印字領域を表わす。この場合、マスクの印字領域と、実際の画像領域との論理積を演算し、印字領域が決定する。
【0009】
このようなマスクは、異なるインク種においてそれぞれ別のマスクを用いる、またはインク種毎にオフセットをかけたマスクを用いることにより、マスクが固有するムラが緩和され、より高品位な画像を得られることが知られている。
【0010】
さらに、低パス印字においても、同一種類のインクを有するヘッドを2つ以上具備することにより、多パス印字と同じ効果を得るような印字方法も存在する。図20はその1例で、ブラックインクを有するヘッド84をカラーインクのヘッド81〜83の両端に配置した物である。この場合も2つの同一種のインクを吐出する両端のヘッドは図19のようなマスクを用い、2つのヘッドは補完関係にある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、被記録材に対して浸透性の低いブラックインクと、該被記録材に対して浸透性の高いカラーインクとを用いたカラーインクジェット記録方法において、上記したような往復印字や多パス印字、複数ヘッドによる印字方法を用いて、印刷時間の短縮および高品位印刷を達成すべく種々の検討を行なったところ、つぎのような技術課題を新たに見出した。
【0012】
即ち、カラーインクジェット記録においては、その階調性をより滑らかにするためにブラックインクとカラーインクとを重ねて印字する場合がある。そしてこの様な印字方法を上記した往復印字の可能なインクジェット記録装置において実施した場合や、多パス印字においてカラーとブラックヘッドが異なるマスクを用いた場合、および、同一種のインクを有するヘッドを2つ以上有するような場合、カラーインクとブラックインクの付与順序によって再現される色調が異なることがあることを見出した。
【0013】
即ち、本来同一の色調であるべき画像が記録ヘッドの往方向に走査されたときに記録された場合と復方向に走査されたときに記録された場合とで色調が異なる場合があった(以降この現象を「往復ムラ」と称する)。とくに、このような現象はカラーインクおよびブラックインクの紙面に対する付与量の多い領域において顕著に検出される。
【0014】
また多パス印字においてカラーとブラックヘッドが異なるマスクを用いた場合、および、同一種のインクを有するヘッドを2つ以上有するような場合、ブラックとカラーインクが異なる付与順序で付与される箇所が存在し、これが不均一なムラを発生することがある。
【0015】
このような現象(カラーインクとブラックインクとの付与順序に違いに起因するムラ)は、カラーとブラックが混在するような画像において著しく画像を劣化させる可能性があり、より高品質の多色画像を高速で記録可能なインクジェット記録装置を開発するうえで是非とも解決すべき技術課題であるとの結論を得るに至った。
【0016】
そこで本発明の目的は、より高品質な多色画像をより短時間で記録することのできる画像記録方法を提供する点にある。
【0017】
また本発明の目的は、インクジェット記録装置を用いた多色画像の画質を改善する方法を提供する点にある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできる本発明にかかる画像記録方法は、ブラックインク及びカラーインクを交互に重ねる順番が異なる画像を含む多色画像を記録する方法であって、
該ブラックインクが、塩、水性媒体及びイオン性基の作用によって該水性媒体に分散させられている顔料を含み、ブリストウ法におけるKa値が1.5mL・m-2・msec-1/2未満のインクであり、
該カラーインクが染料を含み、ブリストウ法におけるKa値が5mL・m -2 ・msec -1/2 以上のインクであり、
該塩は、(M1) 2 SO 4 、CH 3 COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO 3 、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1) 2 SO 3 および(M1) 2 CO 3 から選ばれるもの(M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す)である
ことを特徴とするものである。
【0021】
また上記の目的を達成することのできる本発明にかかる多色画像の品質を改善する方法は、ブラックインク及びカラーインクを個別に具備したインクジェット記録ヘッドを用いて、該ブラックインク及び該カラーインクを交互に重ねる順番が異なる画像を含む多色画像の品質を改善する方法であって、
該ブラックインクとして、塩、水性媒体及びイオン性基の作用によって該水性媒体に分散させられている顔料を含み、ブリストウ法におけるKa値が1.5mL・m-2・msec-1/2未満のインクであるブラックインクおよび、染料を含むカラーインクを用い、
該カラーインクがブリストウ法に於けるKa値が5mL・m -2 ・msec -1/2 以上のインクであり、
該塩は、(M1) 2 SO 4 、CH 3 COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO 3 、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1) 2 SO 3 および(M1) 2 CO 3 から選ばれるもの(M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す)である
ことを特徴とするものである。
【0025】
上記した種々の構成を採用することによって、例えば、記録ヘッドの往方向への走査および復方向への走査の双方で印刷を行うことによって高速で多色画像の記録を行なったときに観察されることのあった往復ムラを大幅に改善することができ、また低パス往復印字において、走査方向の違いによる画像の光学濃度差が少ない良好な画像を得ることができるという効果を奏するものである。さらには、多パス印字等において発生する、カラーインクとブラックインクの付与順序が異なる印字箇所が画像上に存在することが原因で発生する画像上の均一感の悪さを抑え、良好な画像を得ることができる。
【0026】
また本発明のより好ましい態様としては、該カラーインクとして、該ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる染料を含むカラーインクを用いるか、もしくは該ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤を含むカラーインクを用いるか、もしくは該ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる染料と添加剤との両方を含むカラーインクなどが挙げられる。このような形態をとることにより、往復ムラや多パス印字において発生する画像上の均一感をより有効に改善することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下に種々の実施態様を挙げて、詳細に説明する。
【0028】
本発明の第一の実施態様は、被記録材上に、ブラックインクとカラーインクとを、交互に重ねることによって画像を形成する際に、ブラックインクとカラーインクとを被記録材の該画像形成部位に付与する順番が変化する記録方法において、該ブラックインクとして塩、水性媒体及びイオン性基の作用によって水性媒体に分散させられている顔料を含むブラックインクを用い、該カラーインクとして染料を色材として含んでいるカラーインクを用いるものである。
【0029】
この実施態様によれば、前記したように、ブラックインクとカラーインクとの付与順序が画像ムラに与える影響を緩和することができる。このような効果を得られる理由は明らかでないが、本発明者らは上記の技術課題および目的に対して検討を重ねた結果、上記の画像ムラがブラックインクとカラーインクの浸透性の差に起因するものであると推測した。
【0030】
即ち、例えば往復印字において、ヘッドの往方向への走査時のインクの付与の順番がブラックインク、次いでカラーインクの順である場合、ヘッドの復方向への走査時のインクの付与の順番はカラーインク次いでブラックインクとなるが、各々の場合の被記録材への色材の浸透の程度が異なる結果、上記往復ムラが生じるものと考えられる。
【0031】
このことを図11、図22及び図23を用いて、塩を含まず、顔料を色材として含むブラックインクと染料を色材として含むカラーインクとからなるインクセット(以降「対照インクセット」と称する)と対比させて説明する。
【0032】
まず、光学濃度と、顔料色材の紙面上に存在する量に関して説明をする。通常のブラックインクを紙面上に付与した場合、紙面上および紙面中の表面近傍(以下「紙面上方」と呼ぶ)に定着した顔料が反射光学濃度の支配的な寄与を示す。この紙面上方に定着する顔料と光学濃度との関係は、通常図22のような飽和曲線を描く。
【0033】
一例として、対照インクセットを用いた記録時の紙面上の色材の様子について説明する。
【0034】
対照インクセットのブラックインクを単独で吐出した場合の紙面上方での色材の定着量および、光学濃度が、図23(a)で示した曲線においてポイント 2301 に当たるとする。ブラックインクは通常、浸透性が低いために、比較的紙面上方に定着する顔料の量は多い。
【0035】
次に、対照インクセットのカラーインクをブラックインクに先んじて紙面に付与した場合を説明する。この場合、図11(e)のようにブラックインク 1101 が付与されるが、ブラックインク 1101 はカラーインク 1105 がすでに付与された、濡れやすい(浸透しやすい)記録媒体 1103の表面に付与されるため、図11(f)のようにブラックインクの色材は記録紙面内に浸透しやすくなる。このため、光学濃度の低下が起こる。また、この印字順序において、カラーインクが均一に浸透した後にブラックインクが浸透するため均一感に問題はない。
【0036】
次に、ブラックインクをカラーインクに先んじて紙面に付与した場合を説明する。この場合、図11(a)のようには浸透性の低いブラックインク 1101 が記録媒体 1103 を覆う。この状態において、ブラックインク 1101 は記録媒体 1103 に対して浸透性が低いために遅い速度で浸透していく。そして、その後に浸透性の高いカラーインク 1105 が付与されるが、図11(b)および(c)に示す様に、記録媒体の表面はブラックインク 1101 で覆われているため、ブラックインクの浸透性はあまり変わらない。
【0037】
このような状況においては、ブラックインクの記録媒体への浸透は非常に遅いため、ブラックインクの色材は記録媒体の表面に残りやすく、その結果として印字物は高い光学濃度を示すことになる。また、カラーインクの付与量が多い場合においては、カラーインクとブラックインクとが記録媒体上で均一に混ざらないために、均一感のない画像になってしまうこともある。(さらには、この不均一性から、光学濃度が下がることもありうる。)また、カラーインクは浸透性が強いため、紙面上の顔料の凝集物の間隙を通り抜けて、紙面中に図11(d)に 1105
として示した様に浸透していくと考えられる。
【0038】
前述した光学濃度―顔料色材量曲線を用いて、付与順序の逆転による光学濃度の乖離の発生するメカニズムを説明する。
【0039】
図23(a)におけるポイント 2301 は、前述したように、対照インクセットのブラックインクを単独で紙面に付与した場合の紙面上方に存在する顔料色材の量および、実現する光学濃度の関係を示した物である。この場合において、前述したように紙面上方に定着する顔料色材の量は比較的多い。
【0040】
次にポイント 2302 はブラックインクに先んじてカラーインクを紙面上に付与した場合の紙面上方に定着するブラックインクの量および、光学濃度の関係である。この場合は図11(e)から(g)に示すように紙面中にブラックインクが浸透するために紙面上方に存在する顔料の量は低下し、また低い光学濃度を示す。また、カラーインクに含まれる染料はカラーインクの浸透性が高く、紙面中に浸透するため光学濃度に対する寄与は少ない。
【0041】
次にポイント 2303 はブラックインクの付与後にカラーインクを付与した場合の顔料色材の量と光学濃度の関係である。この場合は、図11(a)〜(d)に示したように、ブラックインク 1101 の浸透速度の遅さゆえに顔料色材の紙面への浸透速度は遅い。その結果、紙面上方に定着する顔料の量はブラックインク単独で印字した場合とほぼ変わらない。
【0042】
紙面上方に定着した顔料上にカラーインク 1105 中の染料が一部が乗る為か、厳密に見ると、ブラックインク単独の場合よりもわずかに高い光学濃度を示すが、インクジェットインク中の色材濃度はそれほど高くない為、2303 と 2301 との間では、視覚的には識別できる程の光学濃度の差異は生じない。しかし、2302と 2303 との間には、2304 として示すように、大きな光学濃度の差が生じており、ブラックインクとカラーインクの付与順序によって得られる画像の濃度に乖離が生じる。
【0043】
さらに、この現象はカラーインクおよびブラックインクの紙面に対する付与量にも依存する。図23(b)はブラックインクの打ち込み量およびカラーインクの打ち込み量が少ない場合の光学濃度の乖離を示した物である。この場合において、カラーインクは打ち込み量が少ないためにカラーインクの高い浸透性がブラックインクの被記録材への浸透性に与える影響は少ない。
【0044】
そのため、カラーインクをブラックインクに先んじて紙面上に付与した場合のブラックインクの紙面上方に定着する量(ポイント 2312)は、ブラックインク単独での定着量(ポイント 2311)とほぼ同量である。また、ブラックインクをカラーインクに先んじて付与した場合においても、ブラックインクの紙面上方に定着する量に対する影響は少なく、また被記録材上方に定着した顔料上に乗る染料の量もわずかであり、光学濃度の向上に与える効果は殆どない(ポイント 2313)。
【0045】
つまり、ポイント 2312 と 2313 との間の濃度差 2314 はそれほど大きくはならない。また、カラーインクとブラックインクが少量ずつ存在するため、均一性の悪化もみられない。
【0046】
次に、ブラックインクおよびカラーインクの紙面に対する付与量が多い場合であるが、この場合は図23(c)に示すように、打ち込み順序の違いによる光学濃度の乖離 2324 が大きい。これは、カラーを先んじて紙面上に付与した場合に、ブラックインクの紙面上方での定着量が大きく減少するためである。
【0047】
○非反応塩あり
上記の対照インクセットで観察される現象と対比して、本発明の第一の実施態様にかかるインクセットを用いた場合を見てみる。
【0048】
まず、塩を含んだブラックインク、および塩を含まないブラックインクの被記録材に付与した場合の紙面上での浸透の様子の違いについて説明する。
【0049】
図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)は各々、塩を含むブラックインクおよび塩を含まないブラックインクの各々をインクジェット記録法によってオリフィスから吐出させ、浸透性の高い記録媒体に付与したときに、そこで生じる固液分離の様子を模式的、概念的に示した説明図である。
【0050】
即ちインクが着弾した直後には、双方のインク共に図9(a)および図10(a)に示すように塩の添加の有無に関わらず顔料インク 901 または 1001 が紙(903 または 1003)の表面に乗った状態である。
【0051】
時間T1経過後、塩を添加した顔料インクは、図9(b)に示すように、固液分離が速やかに起こり、インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域 905 とインク中の溶媒とが分離し、分離した溶剤の浸透先端 907 が紙 903 内部へと進んでいく。一方、塩を添加しない顔料インクは、図10(b)に示すように、塩を添加したインク程には固液分離が速やかに起こらないために、固液分離しない状態 1005 で、紙 1003 内部へと浸透していく。
【0052】
時間T2経過後:塩を添加した顔料インクは図9(c)に示すように、溶剤の浸透先端 907 は更に紙内部へと浸透していくが、領域 905 は紙の表面とその近傍に留まったままで維持される。一方、塩を添加していない顔料インクは、図10(c)に示すように、この時点において漸く固液分離が始まり、インク中の固形分の浸透先端 1007 と溶媒の浸透先端 1009 との間に差が生じて来るものの、インク中の固形分含有領域 1005 は記録媒体の深部にまで到達している。
【0053】
なお上記説明における時間T1およびT2は、塩の有無による固液分離の相違を概念的に捉えるための目安の時間である。
【0054】
以上の説明から明らかなように、塩を添加することで、固液分離が速やかに起こるために着弾後、比較的速い段階で固液分離とともに、紙内部へと浸透するようになるために上記効果を生じるものであると推察している。即ち塩を添加することにより画像品位が、記録媒体の浸透性の大小等によって影響され難くなると考えられる。そして上記した塩の中でも硫酸塩(例えば硫酸カリウム等)、安息香酸塩(例えば安息香酸アンモニウム)は自己分散型カーボンブラックとの相性が良く、具体的には記録媒体に付与したときの固液分離効果が特に優れるためか、種々の記録媒体に特に優れた品質のインクジェット記録画像を形成することができる。
【0055】
以上に説明したような理由から、本実施態様にかかるブラックインク単独で紙面上に付与した場合、そのブラックインクは浸透性が低く、しかも、塩の効果によって固液分離速度は早いため、紙面上方に定着する顔料濃度は非常に高い。そのため、対照インクセットにかかるブラックインクよりもさらに高い光学濃度を示す。
【0056】
次に本実施態様にかかるインクセットを構成するカラーインクとブラックインクを、カラー、ブラックの順序で記録媒体に付与した場合を図12(e)〜(g)に示す。カラーインク 1205 によって浸透性の高くなった記録媒体 1203 上にブラックインク 1201 が付与されるため、ブラックインクの浸透は早くなる。しかし、ブラックインク中に共存する塩の効果によって、ブラックインク中の色材の記録媒体内部への浸透に対して、ブラックインクの固液分離が早く起こり、色材の固化が早く行われるために、図12(g)のようにブラックインク中の色材の記録媒体内部への浸透は抑えられる。その結果として得られる印刷物は高い光学濃度を有することとなる。なお、1207 は、インク中の水性媒体の浸透先端である。
【0057】
逆にブラックインク、カラーインクの順に付与した場合を図12(a)〜(d)に示す。まず、図12(a)に示したように、浸透性の低いブラックインク 1201 が記録媒体 1203 を覆う。この状態において、ブラックインク 1201 は記録媒体 1203 に対して浸透性が低いために遅い速度で浸透していく。しかも塩の作用によってブラックインク中の顔料は、被記録材表面において急速な凝集を生じる。そして、その後図12(b)のように浸透性の高いカラーインク 1205 が付与されても記録媒体の表面は、顔料の凝集が急速に進みつつあるブラックインク 1201 で覆われているため、ブラックインク中の顔料の浸透性はあまり変わらない。
【0058】
その結果、図12(c)のようにブラックインク中の顔料は記録媒体 1203 の表面に残りやすく、その結果として印刷物は高い光学濃度を示す。またカラーインクの付与量が多い場合においても、ブラックインクの固液分離により紙面上方に十分な固形分がのこり、それにより、均一感もよい状態である。また、カラーインク中の染料の一部が、被記録媒体の上方に定着した顔料の上に乗るものの、インクジェットインク中の染料濃度は通常それほど高くない為、視覚的には、光学濃度への寄与は少ない。なお、この点に関して、カラーインク中の染料濃度はカラーインクの全質量の10質量%以下とした場合、定着した顔料の上に乗る染料の光学濃度への寄与は実質的に無視し得る程度のものとなる。
【0059】
なお、ブラックインクに塩を有する場合の、ブラックインクとカラーインクとの付与の順番による光学濃度の乖離が抑えられる理由は以上のようなものである。
【0060】
ここで、図23(d)におけるポイント 2331 は本実施態様にかかるブラックインクを単独で被記録材に付与した場合の紙面上方に存在する顔料色材の量および実現する光学濃度を示した物である。この場合においては、塩が存在するために、高い光学濃度をしめす。
【0061】
次にカラーインクをブラックインクに先んじて付与した場合においては、ポイント 2332 のように、カラーインクが浸透性を高めることによってブラックインクの定着量が少し減る。しかし、ブラックインクが固液分離を急速に起こすため、ブラックインク中の顔料の紙面内部への浸透は抑えられ、紙面上方に定着する顔料の量は多い。
【0062】
また、ブラックインクをカラーインクに先んじて付与した場合においては、ブラックインクの浸透性は殆ど上がらないため、紙面上方に十分に定着する(ポイント 2333)。
【0063】
また、どちらの順序においても染料は、カラーインクの浸透性が高いためほとんどの染料が紙面中に浸透し、光学濃度に対する影響は少ない。このようなメカニズムによりブラックインクとカラーインクの付与順序に関わらず、どちらも高い光学濃度をしめすことにより、付与順序に起因する濃度ムラ(2334)を有効に抑えることができる。
【0064】
第二の実施態様
反応系▲1▼
上記した第一の実施態様と比較しても、カラーインクとブラックインクとの付与順序がもたらす画像濃度のムラをより一層改善でき、優れた品位の画像を得るのに適している第二の実施態様を説明する。
【0065】
被記録材上に形成されている画像の視覚的な光学濃度は、一般的に被記録材の表面上及び表面から約15〜30μmの深さの範囲内の色材量によって決まると考えられており、濃度の高い画像を得るためには、上記の範囲内に高密度に色材を存在させることが必要となる。そしてこの態様においては、水性媒体、塩及びイオン性基によって該水性媒体中に分散させられている顔料を含むブラックインクと、色材として染料を含み、且つ該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる成分を含んでいるカラーインクとを用いることで、被記録材の上記範囲内における色材の占有密度をより向上させ、極めて有効にムラを解消させることができる。
【0066】
第二の実施態様(1)
まず初めに、ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる成分がカラーインク中の染料そのものである場合について説明する。即ち、カラーインク中の染料が直接顔料と反応する態様について説明する。
【0067】
このようなインクセットを構成するカラーインクおよびブラックインクを、この順序で記録媒体に付与した場合の紙面上でのインクの挙動を図13(d)〜(f)に模式的、概略的に示す。
【0068】
この場合、カラーインク 1305 によって浸透性の高くなった記録媒体 1303 上にブラックインク 1301 が付与されるため、ブラックインクの浸透は早くなる。しかし、ブラックインク中に共存する塩の効果によって、ブラックインク中の色材の記録媒体内部への浸透に対して、ブラックインクの固液分離が早く起こり、色材の固化が早く行われるために、図13(f)のようにブラックインク中の色材の記録媒体内部への浸透は抑えられる。
【0069】
さらに、カラーインク中に存在する染料色材と、ブラックインクは紙面の表面において反応し、凝集物 1309 を形成して、被記録材内部への浸透がより有効に抑えられる。また、カラーインク中の染料は、前記した対照インクセットの場合においては被記録材の深部に浸透してしまう為、凝集物の形成には殆ど寄与しないが、本態様においては、顔料と反応をした染料が紙面上方に定着し、凝集物の生成に寄与する。
【0070】
更に、反応に寄与しなかった顔料も、凝集物が形成されたことによって、図13(f)に示したように凝集物の上に乗ることになる。これにより、カラーインクの浸透性に起因する顔料の紙面中への浸透による光学濃度の低下を有効に抑え、高い光学濃度が維持される。なお、1307 は、インク中の水性媒体の浸透先端である。
【0071】
逆にブラックインク、次いでカラーインクの順に付与した場合を図13(a)〜(c)を用いて説明する。
【0072】
図13(a)のように浸透性の低いブラックインク 1301 が記録媒体 1303 を覆う。この状態において、ブラックインク 1301 は記録媒体 1303 に対して浸透性が低いために遅い速度で浸透していく。しかも塩の作用によってブラックインク中の顔料や記録媒体表面において急速な凝集を生じる。
【0073】
そして、その後図13(b)のように浸透性の高いカラーインク 1305 が付与されても記録媒体の表面はブラックインク 1301 で覆われているため、ブラックインク中の顔料の浸透性はあまり変わらない。このような状況においては、ブラックインク 1301、カラーインク 1305 の記録媒体 1303 への浸透は遅いため、図13(c)のようにブラックインクの色材は記録媒体 1303 の表面に残りやすい。
【0074】
さらに、ブラックインクが十分に紙面上に残っている状態でカラーインクがブラックインクと混合されるため、染料と顔料は十分に反応をし、紙面上に染料、顔料ともに顔料、染料の混合凝集物 1309 として多量に紙面上に残る。そのため、高い光学濃度を示すことになる。
【0075】
ここで、カラーインク中の染料が、被記録材上の染料-顔料凝集体の表面に乗るものの、インクジェット用インクにおける染料濃度はそれほど高くなく、図13(d)〜(f)で説明したカラーインク、次いでブラックインクの順に付与することで形成した画像との間で、視覚的に識別できる程の光学濃度の差異は生じない。
【0076】
本態様において、カラーインクとブラックインクの付与順による光学濃度の乖離が抑えられる理由は以上のようなものである。
【0077】
図23(e)におけるポイント 2341 は本態様にかかるインクセットのブラックインクを単独で被記録材に付与した場合の紙面上方に存在する顔料色材の量およびそれによって実現する光学濃度を示した物である。この場合においては、塩が存在するために、高い光学濃度をしめす。
【0078】
次にカラーインクをブラックインクに先んじて付与した場合においては、ポイント 2342 のように、カラーインクが浸透性を高めることによるブラックインクの定着量の減少は、ブラックインクとカラーインクとの反応および、ブラックインク中の塩による急速な固液分離により極めて少ない。また前述したように反応に寄与した染料は凝集体の形成に関与し、紙面上に定着する。そのため、厳密に言えば、ブラックインクとカラーインクとの重畳による画像の濃度と色材の定着量との関係は、顔料単独系での曲線上にはプロットされない。ポイント 2341 が乗っている曲線とポイント 2342、2343 が乗っている曲線との間の差(2345)は、その差を表わしている。しかし、インクジェットインク中の染料の濃度はそれほど高くはなく、例えばカラーインクの染料濃度がカラーインクの質量の10質量%以下程度であれば、この差は目視で認識できるほどの差ではない。
【0079】
また、ブラックインクをカラーインクに先んじて付与した場合においては、ブラックインクの固液分離が急速に進み、さらに、染料が顔料と十分に紙面上で混合するため、染料―顔料凝集体が被記録材の上方に十分定着し、それにより、高い光学濃度を示す。
【0080】
このようなメカニズムによりブラックインクとカラーインクの付与順序に関わらず、どちらも高い光学濃度を示し、特にカラーが先立って付与される場合の、ブラックインクの浸透が有効に抑えられるため、インクの付与順序に起因するムラをより有効に抑えることができる。
【0081】
なお、カラーインク中の染料の含有量としては、カラーインクの全質量に対して10質量%以下とすることが好ましい。即ち、この程度の濃度であれば、ブラックインクをカラーインクに先んじて付与した場合に、凝集物の上に乗る染料の光学濃度への寄与が大きくなりすぎて、カラーインクをブラックインクに先んじて付与した場合の画像の光学濃度との乖離を大きくなることがなく、インクの付与の順番が異なることによるムラの発生を極めて有効に防止することができ、目視の観察ではほとんどあるいは全く光学濃度に差が発生しないレベルを実現することができる。
【0082】
第二の実施態様(2)
○反応系▲2▼
最後に第二の実施態様の他の形態として、ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる成分が、カラーインク中の添加されている添加剤である態様について説明する。
【0083】
この態様にかかるカラーインク、及びブラックインクをこの順序で記録媒体に付与した場合を図24(e)〜(g)に示す。この場合、カラーインク 2405 によって浸透性の高くなった記録媒体 2403 上にブラックインク 2401 が付与されるため、ブラックインクの浸透は早くなる。
【0084】
しかし、ブラックインク中に共存する塩の効果によって、ブラックインク中の色材の記録媒体内部への浸透に対して、ブラックインクの固液分離が早く起こり、色材の固化が早く行われ、さらに、カラーインク中に存在する添加剤によって、カラーインクとブラックインクは紙面の表面において反応をする。これにより、ブラックインク中の顔料の分散安定性が不安定化し、顔料の凝集物 2410 が析出する。
【0085】
その結果、顔料の被記録媒体内部への浸透が抑えられ、図24(f)に示したように、顔料色材の凝集物 2410 が記録媒体の上方に存在することとなり、高い光学濃度が維持される。本態様においては、カラーインクの染料は、ブラックインクとの反応には関与せず、またカラーインクの浸透性は高いために、紙面中に急速に浸透していく為、カラーインク中の染料による光学濃度の上昇はほとんど発生しない。なお、2412 は、インクの水性媒体の浸透先端である。
【0086】
逆にブラック、カラーインクの順に付与した場合、図24(a)のように浸透性の低いブラックインク 2401 が記録媒体 2403 を覆う。この状態において、ブラックインク 2401 は記録媒体 2403 に対して浸透性が低いために遅い速度で浸透していく。しかも塩の作用によってブラックインク中の顔料は記録媒体表面で急速な固液分離とそれにともなって急速な凝集を生じる。
【0087】
そして、その後図24(b)のように浸透性の高いカラーインク 2405 が付与されても記録媒体の表面はブラックインク 2401 で覆われているため、浸透性はあまり変わらない。このような状況においては、ブラックインク 2401、カラーインク 2405 の記録媒体 2403 への浸透は遅いため、図24(c)のようにブラックインクの色材は記録媒体 2403 の表面に残りやすい。
【0088】
さらに、ブラックインクが十分に紙面上に残っている状態でカラーインクがブラックインクと混合されるため、カラーインクと顔料とは十分に反応をし、紙面上に顔料は凝集物 2410 として多量に紙面上に残る。そのため、高い光学濃度を示すことになる。ここでカラーインク中の染料が顔料凝集物 2410 の上に乗るものの、インクジェット用インクにおける染料の濃度は通常それほど高くなく、図24の(e)〜(g)で説明したカラーインク次いでブラックインクの順に付与することで形成した画像との間で、視覚的に識別できる程の光学濃度の差を生じさせるものではない。また、この点に関連して、カラーインク中の染料の含有量は、先に説明したのと同様の理由により、カラーインクの全質量に対し、10質量%以下とすることが好ましい。更に、カラーインク中の染料の中には、顔料凝集物を通り抜けて記録媒体内部に浸透するものもあると思われる。
【0089】
本態様において、カラーインクとブラックインクの付与順による光学濃度の乖離が抑えられる理由は上のようなものである。
【0090】
そして本態様によれば、図23(f)のように、ブラック単独での光学濃度のポイント 2351、カラー先打ちブラック後打ちでのポイント(2352)、ブラック先打ちカラー後打ちでのポイント 2353 はほぼ同一点になる。即ち、インクの付与順がもたらす濃度ムラの改善は、前記した第一の実施態様(1)によって問題のないレベルにまで改善できたが、第二の実施態様によれば、より理想的な状態となる。
【0091】
また、上記第二の態様のバリエーションとして、上記第二の実施態様の(1)と(2)とを併用したものも、本発明の範疇に含まれるものである。即ち、カラーインクとして、ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる染料と、ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤とを含むカラーインクを用いてもよい。
【0092】
次に、第一の実施態様に用いられるインクの構成、記録方法、記録装置などについて説明する。
【0093】
第一の実施態様にかかるインクジェット記録方法としては、ブラックインク及びカラーインクを個別に具備したインクジェット記録ヘッドを用いて、該ブラックインク及び該カラーインクを交互に重ねる順番が異なる画像を含む多色画像を記録する方法であって、前記ブラックインクは塩、水性媒体及びイオン性基の作用によって前記水性媒体に分散させられている顔料色材を含む点に一つの特徴を有する。またカラーインクは、例えばシアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用及びブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を有する。
【0094】
[ブラックインクについて]
(カーボンブラックについて)
ブラックインク中の色材としては例えばカーボンブラックが好適に用いられる。そしてカーボンブラックのインク中での分散の形態としては、自己分散型であっても、分散剤による分散の形態であってもよい。
【0095】
(自己分散型カーボンブラック)
自己分散型のカーボンブラックとしては例えば、少なくとも1つの親水性基(アニオン性基やカチオン性基)がイオン性基としてカーボンブラック表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックが挙げられる。これを用いることによって、カーボンブラックを分散させるために分散剤を添加することが不要となる。
【0096】
アニオン性基を表面に直接もしくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックの場合、表面に結合されている親水性基の例として、例えば
-COO(M2)、-SO3(M2)、-PO3H(M2)、-PO3(M2)2
等を挙げることができる。なお上記式中、「M2」は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。
【0097】
これらの中で特に、-COO(M2)、-SO3(M2)がカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめた自己分散型カーボンブラックは、インク中での分散性が良好な為、本実施態様において特に好適に用い得るものである。
【0098】
ところで上記親水性基中、「M2」として表わしたもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えばLi、Na、K、RbおよびCs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0099】
そしてM2をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含む本実施態様のインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。
【0100】
ここでM2をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラック(の製法に)は、例えばM2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックをイオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法等が挙げられる。
【0101】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばカーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に-COONa基を化学結合させることができる。
【0102】
カチオン性に帯電したカーボンブラックの場合、直接若しくは他の原子団を介して結合した親水性基が、例えば下記に示す第4級アンモニウム基から選ばれる少なくとも1つを結合したものが挙げられる。
【0103】
Figure 0004371555
【0104】
【化1】
Figure 0004371555
上記式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。
【0105】
なお上記のカチオン性基にはカウンターイオンとして例えばNO3 -やCH3COO-が存在する。
【0106】
上記したような親水性基が結合されてカチオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN-エチルピリジル基を結合させる方法を例にとって説明すると、
【0107】
【化2】
Figure 0004371555
カーボンブラックを3-アミノ-N-エチルピリジニウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。この様にカーボンブラック表面への親水性基の導入によってアニオン性若しくはカチオン性に帯電させたカーボンブラックは、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分散状態を維持する。
【0108】
ところで上記した様な種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させても良い。
【0109】
ここで他の原子団の具体例としては例えば炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基およびナフチレン基の置換基としては例えば炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0110】
また他の原子団と親水性基の組合せの具体例としては、例えば-C24COOM、-Ph-SO3M、-Ph-COOM等(但し、Phはフェニル基を表す)が挙げられる。
【0111】
ところで本実施態様において上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択したインクの色材に用いてもよい。またインク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としてはインク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更にインクの色調の調製等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0112】
(通常のカーボンブラック)
またブラックインク用の色材としては、自己分散型でない、通常のカーボンブラックを用いることもできる。
【0113】
このようなカーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA-、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA-II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC-72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF-88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではなく従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。
【0114】
また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0115】
そしてこのような通常型のカーボンブラックをブラックインクの色材として用いる場合には、これを水性媒体に安定して分散させるために分散剤をインク中に添加することが好ましい。
【0116】
分散剤としては例えばイオン性基を有し、その作用によってカーボンブラックを水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられ、そのような分散剤としては、具体的には、例えばスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸-マレイン酸ハーフエステル共重合体、あるいは、これらの塩等が挙げられる。この中で質量平均分子量が1000から30000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは3000から15000の範囲である。
【0117】
(ブラックインクの有する塩について)
本態様にかかるブラックインクの有する塩としては、(M1)2SO4、CH3COO(M1)、Ph-COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)2SO3および(M1)2CO3から選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。ここでM1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す。
【0118】
そしてアルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、Rb、Cs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムおよびトリエタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0119】
このように自己分散型カーボンブラックを含むインク中に上記したような塩を共存させることによって、記録媒体の種類によって画像品質が大きく変化することのない、安定的に高品位の画像を形成することのできるインクを得ることができる。
【0120】
この実施態様にかかるインクが上記した様な特性を発揮する詳細なメカニズムは現時点においては明らかでない。しかし、インクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として知られている、ブリストウ法によって求められるKa値に関して、本態様のインクは、塩を添加しない以外は同一の組成を有するインクと比較して大きなKa値を示すとの知見を本発明者らは得ている。
【0121】
Ka値の増加は、インクの記録媒体への浸透性の向上したことを示すものであり、これまでの当業者の常識としてインクの浸透性の向上は、画像濃度の低下を意味するものであった。即ちインクの浸透と共に色材も記録媒体内部に浸透してしまう結果として画像濃度が低下してしまうというのがこれまでの当業者の認識である。
【0122】
そしてこのような本態様のインクに関する種々の知見から総合的に判断すると、本態様のインク中の塩は、紙面上に付与した後のインク中の溶剤と固形分との分離(固液分離)を極めて速やかに引き起こすという特異的な作用を生じさせていると考えられる。つまりインクが記録媒体に付与されたときの、固液分離が遅ければ、Kaの値の大きいインク、あるいはインクの浸透性の大きな紙上ではインクは色材とともに等方的に紙中に拡散し、その結果文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に紙の奥まで色材が浸透するために画像濃度も低下することが予測される。
【0123】
しかし本態様のインクはその様な現象が観察されないことから、記録媒体に付与されたときの固液分離が速やかに起こり、その結果、インクのKa値の増加にも関わらず、高品異な画像を与えるものと推察される。また浸透性が比較的高い紙であっても本態様のインクの場合には、文字品位の低下や画像濃度の低下といった現象は起こりづらい理由もこれと同じと考えられる。以下、この点を図9および図10に基づき更に説明する。
【0124】
図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)は各々、塩を含むインクおよび塩を含まないインクの各々をインクジェット記録法によってオリフィスから吐出させ、浸透性の高い記録媒体に付与したときに、そこで生じる固液分離の様子を模式的、概念的に示した説明図である。
【0125】
即ちインクが着弾した直後には、双方のインク共に図9(a)および図10(a)に示すように塩の添加の有無に関わらず顔料インク 901 または 1001 が紙(903 または 1003)の表面に乗った状態である。
【0126】
時間T1経過後、塩を添加した顔料インクは、図9(b)に示すように、固液分離が速やかに起こり、インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域 905 とインク中の溶媒とが分離し、分離した溶剤の浸透先端 907 が溶剤紙 903 内部へと進んでいく。一方、塩を添加しない顔料インクは、図10(b)に示すように、塩を添加したインク程には固液分離が速やかに起こらないために、固液分離しない状態 1005 で、紙 1003 内部へと浸透していく。
【0127】
時間T2経過後:塩を添加した顔料インクは図9(c)に示すように、溶剤の浸透先端 907 は更に紙内部へと浸透していくが、領域 905 は紙の表面とその近傍に留まったままで維持される。一方、塩を添加していない顔料インクは、図10(c)に示すように、この時点において漸く固液分離が始まり、インク中の固形分の浸透先端 1007 と溶媒の浸透先端 1009 との間に差が生じて来るものの、インク中の固形分含有領域 1005 は記録媒体の深部にまで到達している。
【0128】
なお上記説明における時間T1およびT2は、塩の有無による固液分離の相違を概念的に捉えるための目安の時間である。
【0129】
以上の説明から明らかなように、塩を添加することで、固液分離が速やかに起こるために着弾後、比較的速い段階で固液分離とともに、紙内部へと浸透するようになるために上記効果を生じるものであると推察している。即ち塩を添加することにより画像品位が、記録媒体の浸透性の大小等によって影響され難くなると考えられる。
【0130】
そして上記した塩の中でも硫酸塩(例えば硫酸カリウム等)、安息香酸塩(例えば安息香酸アンモニウム)は自己分散型カーボンブラックとの相性が良く、具体的には記録媒体に付与したときの固液分離効果が特に優れるためか、種々の記録媒体に特に優れた品質のインクジェット記録画像を形成することができる。
【0131】
インク中の自己分散型カーボンブラックの含有量としては、インク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。また塩の含有量としてはインク全質量に対して0.05〜10質量%、特には0.1〜5質量%の範囲とすることが好ましい。インク中の自己分散型カーボンブラックおよび塩の含有量を上記の範囲とすることでより一層優れた効果を享受できる。
【0132】
(ブラックインクにおける水性媒体)
本実施態様に係るブラックインクに用いられる水性媒体の例としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。
【0133】
具体的には例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、nープロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0134】
本実施態様に関わるインク中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の含有量はインク全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲である。
【0135】
(インク特性;インクジェット吐出特性、記録媒体への浸透性について)
本実施態様にかかるブラックインクは、筆記具用インクやインクジェット記録用インクに用いる事ができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録法、およびインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録法があり、それらの記録方法に本発明において用いられるインクは特に好適である。
【0136】
ところで上記各実施態様にかかるインクをインクジェット記録用に用いる場合には、該インクはインクジェットヘッドから吐出可能である特性を有する事が好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該液体の特性としては、例えばその粘度を1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、特には粘度を1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとする事が好ましい。
【0137】
またインクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値がある。即ち、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後におけるインクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
【0138】
V=Vr+Ka(t-tw)1/2
ここでインク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の荒さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。
【0139】
そしてインクが付着した後、コンタクトタイムを越えると、該コンタクトタイムを越えた時間、即ち(t-tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaはこの増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そしてKa値はブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製等)等を用いて測定可能である。
【0140】
そして前記した本発明の各実施態様にかかるインクにおいて、このKa値を1.5未満とすることは記録画像品質をより一層向上させるうえで好ましく、更に好ましくは0.2以上1.5未満である。即ちKa値が1.5未満である場合に、インクの記録媒体への浸透過程の早い段階で固液分離が起こり、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を形成することができると思われる。
【0141】
なお本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えばキヤノン株式会社製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等)を記録媒体として用いて測定した値である。また測定環境としては通常のオフィス環境、例えば温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0142】
そして上記各実施態様にかかるインクに上記したような特性を担持させられる好ましい水性媒体の組成としては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、チオジグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、およびアセチレンアルコールを含むものとする事が好ましい。
【0143】
(カラーインクについて)
該カラーインクに用いることのできる色材としては、公知の染料や顔料を用いることができる。染料としては例えば酸性染料、直接染料、等を用いることができる。たとえばアニオン性染料としては、既存のものでも、新規に合成したものでも適度な色調と濃度を有するものであれば、たいていのものを用いることができる。またこれらのうちいずれかを混合して用いることも可能である。
【0144】
アニオン性染料の具体例を以下に挙げる。
【0145】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー 8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー 1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー 2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー 3
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド 2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド 6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド 7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド 87、92、94
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー 1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー 4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック 17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック 1、2
(溶剤)
上記したようなカラーインク用の色材を含むインク溶媒または分散媒としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶媒が挙げられる。そして水溶性有機溶媒としては前記ブラックインクにて記載したのと同様なものが挙げられる。また該カラーインクをインクジェット法(例えばバブルジェット法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、前述したように優れたインクジェット吐出特性を有するようにインク所望の粘度、表面張力を有するように調製する事が好ましい。
【0146】
(色材の含有量)
ここで書くカラーインク中の色材の含有量は、例えばインクジェット記録に用いる場合には該インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、また所望の色調や濃度を有するように適時選択すれば良いが、目安としては例えばインク全質量に対して3〜50質量%の範囲が好ましい。またインクに含有される水の量はインク全質量に対して50〜95質量%の範囲が好ましい。更に、インクの付与順序による画像濃度のムラを考慮した場合には、カラーインク中の染料の濃度は,該染料を含むカラーインク全質量の10質量%以下とすることが好ましい。
【0147】
(カラーインクの浸透性)
上記したようなカラーインクに関して、Ka値を例えば5以上のインクとする事は記録媒体上に高品質なカラー画像を形成する事ができ、好ましい。即ちこのようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高い為、例えばイエロー、マゼンタおよびシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合でも隣接する画像間で色のにじみ(ブリーディング)を抑える事ができ、またこれらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも各々のインクの浸透性が高い為、隣接する異なる色の画像との間でブリーディングを有効に抑える事ができる。
【0148】
カラーインクのKa値をこのような値に調製する方法としては、例えば界面活性剤の添加、グリコールエーテル等の浸透性溶剤の添加等の従来公知の方法が適用できる。もちろん添加量は適時選択すれば良い。
【0149】
(インクセットを用いた記録装置、記録方法)
次に、記録装置について説明する。本発明には記録ヘッドの記録インクに記録信号を与え、その発生した熱エネルギーにより液滴を吐出する方式が好ましい。その装置の主要部である記録ヘッドの構成を図1、図2、図3に示す。
【0150】
ヘッド13はインク流路14を形成したガラス、セラミックまたはプラスチック等と感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されない)とを接着して得られる。この発熱ヘッド15は酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17-1、17-2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よりなっている。
【0151】
記録インク21は吐出オリフィス22まで来ており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。
【0152】
ここで電極17-1、17-2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15の nで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生する。その圧力でメニスカスが吐出し、オリフィス22より記録液滴24となり、記録材25に向かって飛翔する。
【0153】
図3には図1に示したノズルを多数並べた記録ヘッドの概略図を示す。該記録ヘッドは多数の流路を有するガラス板等27と図1において説明したヘッドと同様の発熱ヘッド28を密着して作られる。
【0154】
なお図1はインクの流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA-B線での断面図である。
【0155】
図4にはこのヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の1例を示す。ここでブレード61はワイピング部材であって、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カレンチレバーの形態をなしている。
【0156】
このブレードは記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配置され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行なう構成を有している。
【0157】
さらに63はブレードに隣接して設けられるインク吸収体であり、このブレードと同様に記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。このブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61および吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵等の除去が行なわれる。
【0158】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録材にインクを吐出して記録を行なう記録ヘッドであり、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッドの移動を行なうためのキャリッジである。このキャリッジはガイド軸67と摺動可能に係合し、このキャリッジの一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続(図示せず)している。これによりこのキャリッジはガイド軸に沿った移動が可能となり、記録ヘッドによる記録領域およびその隣接した領域の移動が可能となる。
【0159】
一方51は被記録材を挿入するための被記録材供給部、52はモータ(図示せず)により駆動される送りローラーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置、即ち記録位置へ被記録材が搬送され、記録が進行するにつれて、ローラー53を配した排出部へ排出される。
【0160】
そして本態様にかかる画像記録装置は、記録ヘッドを被記録材の搬送方向に対して直交する方向に往復移動させ、且つその往方向の走査時と復方向の走査時の双方で、該ヘッドからブラックインクおよびカラーインクの少なくとも一方を被記録材に付与することができる様に構成されている。なお双方向印刷の際の、記録データの処理方法等は、双方向印刷に関わる従来公知の技術を利用することができる。
【0161】
上記構成において記録ヘッドが記録終了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64のキャップ62は記録ヘッドの移動経路から退避しているが、ブレードは移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッドの吐出口面がワイピングされる。なおキャップが記録ヘッドの吐出口面に当接してキャッピングを行なう場合にはキャップは記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0162】
記録ヘッドがホームポジションから記録開始位置へ移動する場合にはキャップおよびブレードは前記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッドの吐出口面はワイピングされる。
【0163】
前記の記録ヘッドのホームポジションへの移動には記録終了時や吐出回復時ばかりではなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行なわれる。
【0164】
図5ではヘッドにインク供給部材、例えばチューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す。ここで40は供給用インクを収容したインク収容部、例えばインク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓に針(図示せず)を挿入することによりインク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容する吸収体である。
【0165】
インク収容部としては、インクとの接触面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。また本発明にかかるカートリッジの他の態様として、該ブラックインクと該カラーインクとを各々個別に収容した2つの収容部を有し、該ブラックインクおよび該カラーインクを吐出させるためのヘッドに対して着脱可能に構成され、かつ各々のインクが該記録ヘッドに供給可能に構成されているカートリッジを挙げることができる。
【0166】
図14はそのようなカートリッジ 1401 の一例を示すものであり、1403 はブラックインクを収容したブラックインクの収容部、1405 がカラーインクを収容したカラーインクの収容部であり、該カートリッジは図15に示す様に該ブラックインクおよび該カラーインクの各々を吐出せしめる記録ヘッド 1501 に着脱可能に構成されてなると共に、該カートリッジ 1401 を記録ヘッド 1501 に装着した状態では該液体組成物及び該インクが記録ヘッド 1501 に供給される様に構成されているものである。
【0167】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、前記のようなヘッドとインクカートリッジが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらを一体とした記録ユニットも好適に用いられる。
【0168】
図6では70は記録ユニットであって、この中にインクを収容したインク収容部、例えばインク吸収体が収納されており、このようなインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、例えばポリウレタンを用いることができる。
【0169】
72は記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニットは図4で示す記録ヘッドに変えて用いられるものであって、キャリッジ66に脱着自在になっている。
【0170】
更に本発明にかかる記録ユニットの他の実施態様として、該ブラックインクとカラーインク(例えばイエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーンおよびブルーから選ばれる少なくとも1つのカラーインク)とを、1個のインクタンク内の各々のインク収納部に収納し、且つ各々のインクを吐出させる為の記録ヘッドを一体的に備えた記録ユニット、具体的には例えば図16に示す様に該ブラックインクを収納部 1601Bkに、またイエロー、シアン及びマゼンタのカラーインクを各々カラーインク収納部 1601Y、1601Cおよび 1601Mに収納し、更に各々のインクを各々個別に吐出させることができる様にインク流路を分けて構成した記録ヘッド 1603 を備えている様な記録ユニット 1601 が挙げられる。
【0171】
なお本発明に使用する記録装置では、インクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出するインクジェット記録装置を例に挙げたが、本発明は、例えば力学的エネルギーをインクに作用させてインクを吐出する方式の記録装置、例えば圧電素子を使用するピエゾ方式のインクジェット記録装置に対しても同様に適用可能である。
【0172】
その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図17に示す。ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路 1701 と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート 1703 と、インクに直接圧力を作用させる振動板 1705 と、この振動板 1705 に接合され、電気信号により変位する圧電素子 1707 と、オリフィスプレート 1703 、振動板等を指示固定するための基板 1709 とから構成されている。
【0173】
図17において、インク流路1701は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート1703は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口1711が形成され、振動板 1705はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子1707は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。
【0174】
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子1707にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子1707に接合された振動板を変形させ、インク流路1701内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレートの吐出口1711より吐出して記録を行うように動作する。この様な記録ヘッドは図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0175】
(付与順序の異なることに起因するムラの解消について)
さて本態様に関わる記録方法を実施する場合には、例えば、前記図3に示した記録ヘッドを4つキャリッジ上に並べた記録装置を使用する。図7はその一例である。81、82、83、84はそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の記録インクを吐出するための記録ヘッドである。これらヘッドは前記の記録装置に配置され、記録信号に応じて、各色の記録インクを吐出する。また、図8のように、カラーインクを縦に並べる構成をとることにより、カラーインク同士の往復印字における、付与順序の違いによる色むらをなくすこともできる。
【0176】
即ち、図7および8に示した様なヘッドにおいて図の主走査方向である左右両方向において印字を行うような往復印字といった印字方法において、ブラックインクとカラーインクが記録紙面上の同じ場所に付与する場合がある。そしてこのときに従来の、被記録材に対して浸透性の低いブラックインクと浸透性の高いカラーインクとを用いた場合、カラーインク、ブラックインクという順序で印字した場合と、ブラックインク、カラーインクの順序で印字した場合において著しく濃度が変わることがあること、そしてこれは、1度の主走査で記録ヘッドの長さと同じ幅の画像を完成させる低パス印字といった方法において特に顕著に観察され、これにより多色画像の品位が低下することがあり、ブラックおよびカラーが共存する、高品位な画像を短時間で形成するうえで解決すべき技術課題であることは先に述べた通りである。
【0177】
さらに、図7および図8に示したようなヘッドにおいて、多パス印字を行う際においても、異なる色毎に、異なるマスクを用いる場合、画像箇所において、ブラックインクが先に被記録材に付与される箇所と、カラーインクが先に被記録材に付与される箇所が生じ、これが不均一な濃度むらを発生させる。
【0178】
また、図20のような、ヘッド構成を用い、ブラック画像を2つのヘッドによって実現させるような場合においても、ブラックインクが先に被記録材に付与される箇所と、カラーインクが先に被記録材に付与される箇所が生じ、これが不均一な濃度むらを発生させる。
【0179】
係る課題に対し、本実施態様によれば、(ブラックインクが記録媒体表面に付与されたときに、該ブラックインク中の塩がブラックインク中の色材と水性媒体との分離(固液分離)を促進する役目を果たすと考えられる。従って、記録媒体経の浸透性が高いカラーインクが付与した後にブラックインクを付与しても、塩の作用による固液分離が生じて色材が記録媒体の表面に留まり、記録媒体の内部に浸透していくのを有効に防いでいるものと考えられる。
【0180】
その結果、1度の主走査で画像を形成する1パス往復印字においても、往復の印字に対して濃度ムラを有効に抑えることができ、高品質なインクジェット多色画像を短時間で形成することができるものである。また、多パス印字のような場合においても、有効に濃度ムラを抑えることが出来、均一感の非常によい画像を実現できる。
【0181】
(第二の実施態様)
本発明に関わる第2の実施態様は、第一の実施態様において用いたカラーインクとブラックインクとを、該カラーインクと該ブラックインクとが混合されたときに、該ブラックインク中の色材の分散安定性が不安定化する様に各々の組成を調製した点に一つの特徴を有する。
【0182】
(ブラック、カラーインクの反応性)
本実施態様におけるブラックインクとカラーインクの組成は、ブラックインクとカラーインクとが混合されたときに例えば反応することにより増粘または凝集を起こし、ブラックインク中の色材の分散安定性を不安定化させるように各々が調製されることが好ましい。そのようなブラックインクとカラーインクの組み合わせとしては、以下のようなものが例として挙げられる。
【0183】
(1)カラーインク中の染料を、ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる成分として用いる態様;
(2)カラーインク中に、ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤を含有させる態様。
【0184】
上記(1)の態様をより具体的に述べれば、例えば、以下の2つが挙げられる。
【0185】
i)ブラックインク中の色材がアニオン性基を有し、カラーインクの色材がカチオン性基を有する様に調製する例が挙げられる。
【0186】
この例においては、カラーインクとブラックインクとが混合されると、カラーインクの色材のカチオン性基がブラックインク中の色材のアニオン性基と反応し、ブラックインク中の色材が分散破壊を起こし、色材を凝集させ、またインクを増粘させる。ここでカラーインクに含有させる色材染料の量としては、カラーインクの全質量に対して例えば、約0.1〜10質量%を含有させることが好ましい。
【0187】
ii)ブラックインク中の色材がカチオン性基を有し、カラーインク中の色材がアニオン性基を有する様に調製する例。
【0188】
この例においては、カラーインクとブラックインクとが混合されると、カラーインク中の色材のアニオン性基がブラックインク中の色材のカチオン性基と反応し、その結果ブラックインク中の色材が分散破壊を起こし、色材が凝集し、またインクを増粘させる。ここでカラーインクに含有させる色材染料の量としては、カラーインクの全質量に対して例えば、約0.1〜10質量%を含有させることが好ましい。
【0189】
また上記(2)の態様をより具体的に述べれば、例えば、以下の3つが挙げられる。
【0190】
i)ブラックインク中の色材がアニオン性基を有し、カラーインクが多価金属陽イオンからなる多価金属塩、例えばMg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、Al3+から選ばれる多価金属陽イオンからなる少なくとも一つの多価金属塩を有する様に調製する例が挙げられる。
【0191】
この例においては、カラーインクとラックインクとが混合されると、カラーインク中の多価金属塩の多価金属陽イオンがブラックインク中の色材のアニオン性基と反応し、その結果ブラックインク中の色材が分散破壊を起こし、色材を凝集させ、またインクを増粘させる。ここでカラーインクに含有させる多価金属塩としては、カラーインクの全質量に対して例えば、約0.1〜15質量%を含有させることが好ましい。
【0192】
ii)ブラックインクのもつ色材がpHの3〜7において安定に分散されている性格を有し、カラーインクがpH8〜11となる様に調製する例。
【0193】
この例においては、カラーインクとブラックインクが混合されると、ブラックインクのpHが上昇することにより、色材の分散安定性が破壊され、色材が凝集し、インクが増粘する。
【0194】
iii)ブラックインクのもつ色材がpHの7〜11において安定に分散されている性格を有し、カラーインクがpH3〜6となる様に調製する例。
【0195】
この例においては、カラーインクとブラックインクが混合されると、ブラックインクのpHが低下することにより、色材の分散安定性が破壊され、色材が凝集し、インクを増粘させる。
【0196】
(付与順序の異なることに起因するムラの解消について)
図7および8に示した様な、ヘッドにおいて図の主走査方向である左右両方向において印字を行うような往復印字といった印字方法や、ブラックおよびカラー毎に異なるマスクを用いた多パス印字方法、さらには、図20のような同一の有色インクを有するヘッドを複数具備するヘッドを用いた印字のようなブラックとカラーインクの付与順序がことなる箇所が被記録材上に存在する場合において、本実施態様におけるインクセットを用いることにより、第一の実施態様に示したものよりも、さらに往復の濃度ムラおよび、ブラック、カラーの順に印字した際の均一感を向上させることことができ、鮮明で高品位な画像が得られるインクセット、これを用いるインクジェット記録方法及びインクジェット機器類を提供することができる。
【0197】
その理由及びメカニズムは先に説明したとおりである。
【0198】
ここで、第2の実施態様に用いるブラックインクならびにカラーインクは、各々上記の例に基づき、前記した第一の態様にもちいるインクの組成を適宜組み合わせることで、容易に調製できる。
【0199】
以上説明したような効果により、塩を用いたブラックインクと、ブラックインクと反応することを特徴とするカラーインクのセットを用いることにより、濃度ムラ、均一感のムラがなく、さらに非常に光学濃度の高い画像を実現することができる。
【0200】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚以下の記載で、部、%とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0201】
実験例I-(1) (第一の実施態様および第二の実施態様にかかるインクセットの調整および評価)
はじめに顔料分散体1の調整を行った。
【0202】
顔料分散体1
比表面積が230m2/gでDBP吸油量が70mL/100gのカーボンブラック10gとp-アミノ-N-安息香酸 3.41gを水72gに良く混合した後、これに硝酸 1.62gを滴下して、70℃で攪拌した。ここに更に数分後、5gの水に 1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0203】
【化3】
Figure 0004371555
次に上記の各顔料分散体を用いてブラックインク1、および比較例であるブラックインク2を下記の方法にて調整した。
【0204】
(ブラックインク1)
顔料分散体1 : 30部
安息香酸アンモニウム : 1部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
ジエチレングリコール : 6部
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :0.2部
水 : 残部
(ブラックインク2)
顔料分散体1 : 30部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
ジエチレングリコール : 6部
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :0.2部
水 : 残部
カラーインクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
【0205】
(イエローインク1)
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :1.0部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
2-ピロリドン : 6部
CIアシッドイエロー23 : 3部
水 : 残部
(マゼンタインク1)
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :1.0部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
2-ピロリドン : 6部
CIアシッドレッド52 : 3部
水 : 残部
(シアンインク1)
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :1.0部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
2-ピロリドン : 6部
CIアシッドブルー9 : 3部
水 : 残部
実施例1
上記で調製したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。ブラックインク1
イエローインク1
マゼンタインク1
シアンインク1
比較例1
上記で調製したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。ブラックインク2
イエローインク1
マゼンタインク1
シアンインク1
さらに、実施例1で用いたカラーインクに、ブラック顔料の沈殿材である、2価金属塩を加えたものを以下のカラーインクとして調整した。
【0206】
(イエローインク2)
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :1.0部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
2-ピロリドン : 6部
CIアシッドイエロー23 : 3部
硝酸カルシウム塩 : 2部
水 : 残部
(マゼンタインク2)
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :1.0部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
2-ピロリドン : 6部
CIアシッドレッド52 : 3部
硝酸マグネシウム塩 : 2部
水 : 残部
(シアンインク2)
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名 : アセチレノールEH ;
川研ファインケミカル(株)社製) :1.0部
トリメチロールプロパン : 6部
グリセリン : 6部
2-ピロリドン : 6部
CIアシッドブルー9 : 3部
硝酸マグネシウム塩 : 2部
水 : 残部
実施例2
上記で調製したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。ブラックインク1
イエローインク2
マゼンタインク2
シアンインク2
下記第1表に上記実施例1および実施例2および比較例1のインクセットの主たる構成を示す
【0207】
【表1】
Figure 0004371555
[実験1] 往復の印字ムラに関して
上記の実施例1、実施例2及び比較例1のインクを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJF-800;キヤノン(株)社製)を用いた。
【0208】
印字パターンとしては、同位置にイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックインクを3種類の異なる打ち込み量で1パス双方向印字を行った(100%dutyの打ち込み量とは、1/600inch 平方の領域に、カラーインクは20ng、ブラックインクは30ngのインクを付与した場合の打ち込み量である)。
【0209】
本実施例に示した打ち込み量は、どれもブラックベタとホワイトとの間の色域に存在するグレー領域において存在する打ち込み量の1例である。下記表に、比較例1、実施例1および実施例2における、往復での色むら、均一感の状態をしめす。
【0210】
(往復のムラ)
市販のコピー用紙に対して、表2に記載の打ち込み量で印字し、ブラック、カラー順に印字した場合とカラー、ブラック順に印字した場合における濃度ムラ、および画像の均一感を目視にて観察し、以下の評価基準で評価した。
【0211】
濃度ムラについては、
A:ほとんどムラは認められない。
B:微少な領域ならムラは認められない。
C:顕著な濃度ムラが認められる。
【0212】
均一感については、
A:全く均一感に問題ない。
B:よく見れば均一感が多少乱れているが実用上問題ないレベルである。
C:均一感がわるい。
【0213】
【表2】
Figure 0004371555
なお、各々の評価は、市販のコピー用紙に印字を行った後に1時間放置したもので行った。
【0214】
[実験2] 2パス印字に於けるに均一感に関して
上記の実施例1、実施例2及び比較例1のインクセットを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。
【0215】
使用したインクジェット記録装置としては、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJF-800;キヤノン(株)社製)を用いた。
【0216】
印字パターンとしては、同位置にイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックインクを1種類の打ち込み量で印字を行った(100%dutyの打ち込み量とは、1/600inch平方の領域に、カラーインクは20ng、ブラックインクは30ngのインクを付与した場合の打ち込み量である)。
【0217】
本実施例に示した打ち込み量は、どれもブラックベタとホワイトとの間の色域に存在するグレー領域において存在する打ち込み量の1例である。下記表に、比較例1、実施例1および実施例2における、往復での色むら、均一感の状態をしめす。
【0218】
さらに、同一箇所を2回の走査によって形成する2パス印字において用いるマスクとしては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックインクに対してそれぞれ、図21の(a)から(d)のマスクを用いた。
【0219】
下記表に、比較例1、実施例1および実施例2のインクセットを用いて、実験2の方法によって得られた画像の均一感の状態を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
【0220】
均一感については、
A:全く均一感に問題ない。
B:よく見れば均一感が多少乱れているが実用上問題ないレベルである。
C:均一感がわるい。
【0221】
【表3】
Figure 0004371555
[実験3] ブラックインクを有するヘッドを2つ有する印字方法に於けるに均一感に関して
上記の実施例1、実施例2及び比較例1のインクセットを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJF-800;キヤノン(株)社製)を用いた。
【0222】
印字パターンとしては、同位置にイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックインクを1種類の打ち込み量で1パス双方向印字を行った。(100%dutyの打ち込み量とは、1/600inch平方の領域に、カラーインクは20ng、ブラックインクは30ngのインクを付与した場合の打ち込み量である。)本実施例に示した打ち込み量は、どれもブラックベタとホワイトとの間の色域に存在するグレー領域において存在する打ち込み量の1例である。
【0223】
下記表に、比較例1、実施例1および実施例2で用意したインクセットを用い、実験3の方法によって得られた画像の均一感の状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
【0224】
なお、ブラックインクを含有しているヘッドは2つ具備し、図20のように同一箇所を2つのヘッドの走査によって形成する印字において用いるマスクとしては、図21の(a)のマスクを用いた。下記表に、比較例1、実施例1および実施例2のインクセットを用い、実験3の方法によって得られた画像の均一感の状態を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
【0225】
均一感については、
A:全く均一感に問題ない。
B:よく見れば均一感が多少乱れているが実用上問題ないレベルである。
C:均一感がわるい。
【0226】
【表4】
Figure 0004371555
【0227】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の各実施態様によれば、往復印字のような、ブラックとカラーの印字順序が逆になるようなことがあっても、光学濃度や、均一感が異なることによる色むらの発生を極めて有効に抑制し、あるいは殆ど無くすことができる。その結果、高品質な多色の画像を短時間で形成することができる。
【0228】
またブラックインクを用いることで、優れた文字品位(シャープネス、光学濃度等)の印字を行なうことができ、またカラー画像間のブリーディングも極めて低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部のA-B線による切断面の図である。
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの斜視図である。
【図7】本発明の実施例で使用した複数の記録ヘッドが配列した記録部を示した斜視図である。
【図8】本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図である。
【図9】塩を含む顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図10】塩を含まない顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図11】塩を含まない顔料インクおよびカラーインクを記録媒体に付与したときの記録媒体上での色材の様子を示す模式図である。
【図12】塩を含む顔料インクおよびカラーインクを記録媒体に付与したときの記録媒体上での色材の様子を示す模式図である。
【図13】塩を含む顔料インクおよび顔料インクと反応性を持つカラーインクを記録媒体に付与したときの記録媒体上での色材の様子を示す模式図である。
【図14】本発明の一実施態様にかかるインクカートリッジの概略平面図である。
【図15】図14のカートリッジが記録ヘッドに装着された状態を示す概略平面図である。
【図16】本発明の一実施態様にかかる記録ユニットの概略斜視図である。
【図17】インクジェットプリンタの記録ヘッド部の一態様のオリフィス部の拡大図である。
【図18】インク中の塩の有無、インク中の顔料濃度と画像濃度との関係を示すグラフである。
【図19】 (a)は、多パス印字において、1度目の走査に用いるマスクであり、(b)は2度目の走査に用いるマスクである。
【図20】ブラックインクを有するヘッドがカラーインクのヘッドの両端に配置されている記録部を示した斜視図である。
【図21】 (a)〜(d)は、各々実験3に用いたブラックインク、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクの付与に用いるマスクである。
【図22】被記録媒体の上方に定着する顔料の量とそれによって形成される画像の光学濃度との関係を示す概略図である。
【図23】ブラックインク単独の画像、ブラックインクを付与した後にカラーインクを重畳して形成した画像及びカラーインクと付与した後にブラックインクを重畳して形成した画像の濃度を対比したグラフである。
(a)対照インクセットの場合。
(b)対照インクセットにおいて、ブラックインクの打ち込み量およびカラーインクの打ち込み量が少ない場合。
(c)対照インクにおいて、ブラックインクおよびカラーインクの紙面に対する付与量が多い場合。
(d)本発明の第一の実施態様にかかるインクセットの場合。
(e)本発明の第二の実施態様の(1)にかかるインクセットの場合。
(f)本発明の第二の実施態様の(2)にかかるインクセットの場合。
【図24】本発明の第二の実施態様の(2)にかかるインクセットを用いて、ブラックインクとカラーインクとの重畳によって画像を形成したときの記録媒体上におけるインク並び色材の挙動を概略を示した図である。
【符号の説明】
13 ヘッド
14 インク流路、溝
15 発熱ヘッド
16 保護膜
17-1 アルミニウム電極
17-2 同上
18 発熱抵抗体
19 蓄熱層
20 基板
21 インク
22 オリフィス
23 メニスカス
24 記録液滴
25 記録材
26 マルチ溝
27 ガラス板
28 発熱ヘッド
40 インク袋
42 栓
44 インク吸収体
45 インクカートリッジ
51 記録材
52 紙送りローラ
53 排紙ローラ
61 ワイピング部材
62 キャップ
62’ 同上
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
65’ 同上
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モータ
69 ベルト
70 記録ユニット
71 ヘッド部
72 大気連通口
81 イエローインクのための記録ヘッド
82 マゼンタインクのための記録ヘッド
83 シアンインクのための記録ヘッド
84 ブラックインクのための記録ヘッド
901、1301 (顔料)ブラックインク
1201、2401 塩を含む(顔料)ブラックインク
1001、1101 塩を含まない(顔料)ブラックインク
905、1005 インク中の固体成分の豊富に含まれる領域
903、1003、1103、1203、2403 記録媒体
1105、1205、1305、2405 カラーインク
1007 固形分の浸透先端
907、1009、1207、1307、2412 溶剤の浸透先端
1309、2410 凝集物
1401 カートリッジ
1403 ブラックインクの収容部
1405 カラーインクの収容部
1501、1603 記録ヘッド
1601 記録ユニット
1601Bk ブラックインク収納部
1601Y カラーインク(イエロー)収納部
1601C カラーインク(シアン)収納部
1601M カラーインク(マゼンタ)収納部
1701 インク流路
1703 オリフィスプレート
1705 振動板
1707 圧電素子
1709 基板
1711 吐出口
2301〜2303、2311〜2313、2331〜2333、2341〜2343、2351〜2353 紙面上方での色材の定着量および光学濃度を示す曲線上のポイント
2304、2314、2324、2334、2344、2345 光学濃度の差

Claims (12)

  1. ブラックインク及びカラーインクを交互に重ねる順番が異なる画像を含む多色画像を記録する方法であって、
    該ブラックインクが、塩、水性媒体及びイオン性基の作用によって該水性媒体に分散させられている顔料を含み、ブリストウ法におけるKa値が1.5mL・m-2・msec-1/2未満のインクであり、
    該カラーインクが染料を含み、ブリストウ法におけるKa値が5mL・m -2 ・msec -1/2 以上のインクであり、
    該塩は、(M1) 2 SO 4 、CH 3 COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO 3 、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1) 2 SO 3 および(M1) 2 CO 3 から選ばれるもの(M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す)である
    ことを特徴とする多色の画像を記録する方法。
  2. 該ブラックインクが、ブリストウ法におけるKa値が0.2以上1.5mL・m-2・msec-1/2未満のインクである請求項記載の方法。
  3. 前記ブラックインクの顔料は、カーボンブラックであり、前記カーボンブラックは表面に少なくとも1種の親水性基が前記イオン性の基として該カーボンブラックの表面に直接もしくは他の原子団を介して結合しているものである請求項1または2に記載の方法。
  4. 該ブラックインクが、該イオン性基としてアニオン性基を含むブラックインクであり、該カラーインクが該添加剤として多価金属塩を含むカラーインクである請求項1〜の何れかに記載の方法。
  5. 該多価金属塩がMg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+およびAl3+から選ばれる少なくとも1つの多価金属陽イオンからなる多価金属塩を含む請求項記載の方法。
  6. ブラックインク及びカラーインクを個別に具備したインクジェット記録ヘッドを用いて、該ブラックインク及び該カラーインクを交互に重ねる順番が異なる画像を含む多色画像の品質を改善する方法であって、
    該ブラックインクとして、塩、水性媒体及びイオン性基の作用によって該水性媒体に分散させられている顔料を含み、ブリストウ法におけるKa値が1.5mL・m-2・msec-1/2未満のインクであるブラックインクおよび、染料を含むカラーインクを用い、
    該カラーインクがブリストウ法に於けるKa値が5mL・m -2 ・msec -1/2 以上のインクであり、
    該塩は、(M1) 2 SO 4 、CH 3 COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO 3 、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1) 2 SO 3 および(M1) 2 CO 3 から選ばれるもの(M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す)である
    ことを特徴とする多色画像の画質の品質を改善する方法。
  7. 該ブラックインクが、ブリストウ法におけるKa値が0.2以上1.5mL・m-2・msec-1/2未満のインクである請求項に記載の方法。
  8. 前記ブラックインクの色材は、カーボンブラックであり、前記カーボンブラックは表面に少なくとも1種の親水性基が前記イオン性の基として該カーボンブラックの表面に直接もしくは他の原子団を介して結合しているものである請求項6または7に記載の方法。
  9. 該ブラックインクが、該イオン性基としてアニオン性基を含むブラックインクであり、該カラーインクが該成分として多価金属塩を含むカラーインクである請求項6〜8の何れかに記載の方法。
  10. 該多価金属塩がMg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+およびAl3+から選ばれる少なくとも1つの多価金属陽イオンからなる多価金属塩を含む請求項に記載の方法。
  11. 該ブラックインクが含む塩は、安息香酸塩である請求項1〜5の何れかに記載の方法。
  12. 該ブラックインクが含む塩は、安息香酸塩である請求項6〜10の何れかに記載の方法。
JP2000265670A 1999-09-17 2000-09-01 画像記録方法及び多色画像の品質改善方法 Expired - Fee Related JP4371555B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000265670A JP4371555B2 (ja) 1999-09-17 2000-09-01 画像記録方法及び多色画像の品質改善方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP26390699 1999-09-17
JP11-263906 1999-09-17
JP2000265670A JP4371555B2 (ja) 1999-09-17 2000-09-01 画像記録方法及び多色画像の品質改善方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2001150793A JP2001150793A (ja) 2001-06-05
JP2001150793A5 JP2001150793A5 (ja) 2007-10-18
JP4371555B2 true JP4371555B2 (ja) 2009-11-25

Family

ID=26546257

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000265670A Expired - Fee Related JP4371555B2 (ja) 1999-09-17 2000-09-01 画像記録方法及び多色画像の品質改善方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4371555B2 (ja)

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4817540B2 (ja) * 2000-06-21 2011-11-16 キヤノン株式会社 インクセット、該インクセットを用いたインクジェットプリント方法、記録ユニット、インクカートリッジ及びインクジェットプリント装置
CN101186148B (zh) * 2002-12-27 2014-01-22 佳能株式会社 喷墨记录方法
JP2005280068A (ja) * 2004-03-29 2005-10-13 Canon Inc インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP4717722B2 (ja) * 2005-06-10 2011-07-06 キヤノン株式会社 インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システム
EP1992495B1 (en) 2006-03-09 2012-10-31 Canon Kabushiki Kaisha Ink jet printing method
JP2008239964A (ja) * 2007-03-01 2008-10-09 Canon Inc インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法
US8016932B2 (en) 2007-05-11 2011-09-13 Canon Kabushiki Kaisha Aqueous ink, ink set, image forming method and image forming apparatus
US8163817B2 (en) 2007-05-11 2012-04-24 Canon Kabushiki Kaisha Aqueous ink, ink set, image forming method and image forming apparatus
JP5349987B2 (ja) * 2009-01-22 2013-11-20 キヤノン株式会社 インクジェット画像形成方法及びインクと記録媒体のセット
JP2010167671A (ja) * 2009-01-22 2010-08-05 Canon Inc インクジェット画像形成方法及びインクジェット記録装置
JP2011062828A (ja) * 2009-09-15 2011-03-31 Seiko Epson Corp 印刷装置、及び、印刷装置の制御方法
JP2011203155A (ja) * 2010-03-26 2011-10-13 Yamato Scale Co Ltd マーキング装置
JP5593829B2 (ja) 2010-05-18 2014-09-24 セイコーエプソン株式会社 印刷装置の印刷濃度を補正する方法および印刷装置
JP5625531B2 (ja) * 2010-06-22 2014-11-19 セイコーエプソン株式会社 印刷装置および印刷方法
JP5736676B2 (ja) * 2010-06-24 2015-06-17 セイコーエプソン株式会社 液体噴射装置、及び、液体噴射装置の制御方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001150793A (ja) 2001-06-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4683585B2 (ja) インクセット
JP4343632B2 (ja) 反応液、反応液とインクとのセット、インクジェット記録装置及び画像記録方法
JP4250249B2 (ja) インクジェット用インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクセット、画像記録方法及び画像記録装置
EP1990381B1 (en) Aqueous ink, ink set, image forming method and image forming apparatus
US7753515B2 (en) Ink set, ink jet recording method, ink cartridge, recording unit, ink-jet recording apparatus, and image formation method
WO2006022456A1 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP4371555B2 (ja) 画像記録方法及び多色画像の品質改善方法
EP1184187B1 (en) Ink jet recording method
EP1036830B1 (en) Ink containing a colouring material and an aqueous medium
JP4273104B2 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法及び画像形成方法
JP2002079740A (ja) インクジェットプリント方法
JP5932196B2 (ja) 画像形成方法、及び画像形成装置
KR100485293B1 (ko) 잉크 젯 기록 헤드 및 잉크 젯 기록 장치
JP5016758B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2006159426A (ja) 反応液、インクセット、インクジェット記録方法及び記録物
JP4536967B2 (ja) インクジェット記録方法
JP2004106297A (ja) インクと反応液とのセット、インクジェット記録方法及び記録物
JP5054897B2 (ja) インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP2010018764A (ja) インクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置
JP2000309732A (ja) インク、インクジェット記録装置の間欠吐出性の改善方法、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクセット及び画像記録装置
JP2006160850A (ja) インク、インクジェット記録方法及び記録物
JP2004107452A (ja) インクと反応液とのセット、インクジェット記録方法及び記録物
JP2004107427A (ja) インクセット及びインクジェット記録方法
JP2006160815A (ja) インクセット、インクジェット記録方法及び記録物
JP2004106299A (ja) インクジェット記録方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070903

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070903

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20070903

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090401

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090603

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090803

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090826

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090901

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120911

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4371555

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120911

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130911

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees