JP5054897B2 - インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法 - Google Patents

インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5054897B2
JP5054897B2 JP2005136535A JP2005136535A JP5054897B2 JP 5054897 B2 JP5054897 B2 JP 5054897B2 JP 2005136535 A JP2005136535 A JP 2005136535A JP 2005136535 A JP2005136535 A JP 2005136535A JP 5054897 B2 JP5054897 B2 JP 5054897B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
water
soluble organic
organic solvent
insoluble colorant
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005136535A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005350661A5 (ja
JP2005350661A (ja
Inventor
愉衣 徳田
智成 渡邉
幹雄 真田
幹史 小笠原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2005136535A priority Critical patent/JP5054897B2/ja
Publication of JP2005350661A publication Critical patent/JP2005350661A/ja
Publication of JP2005350661A5 publication Critical patent/JP2005350661A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5054897B2 publication Critical patent/JP5054897B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Description

本発明は、インクセットに関し、より詳しくは、インクジェット方式を用いたインクジェット記録方法、インクジェット記録装置、更には、画像形成方法に好適なインクセットに関する。
従来より、着色剤として水不溶性色材を含むインク(例えば、顔料インク)は、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた画像を与えることが知られている。近年、このようなインクによって形成されてなる画像の光学濃度のより一層の向上、及び互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色の領域の境界部における混色(ブリーディング)をより有効に抑制することを目的として、種々の技術が提案されている。例えば、自己分散型カーボンブラックと、特定の塩とを含有させてなるインクを用いることによって、画像濃度のより一層の向上を達成する技術についての提案がある(例えば、特許文献1参照)。
又、顔料、ポリマー微粒子、水溶性有機溶剤及び水を含む組成物であるインクジェット記録用インクと、多価金属塩含有水溶液とを記録媒体に付着させ、前記インク組成物と多価金属塩水溶液とを反応させて、高品位な画像を形成する技術についての提案がある(例えば、特許文献2参照)。これらの技術では、何れの場合も、インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させ、このことによって顔料の記録媒体中への浸透を抑制し、従来の顔料インクによって得られる画像に対して、より一層濃度が高く、ブリーディングの発生が抑制された画像を得ている。
このように、濃度が高く、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を形成するにあたり、従来は、インク中に顔料の凝集を促すような特別な化合物を含有させる、或いは、インクと異なる液を用い、2種類以上の液を反応させる、等の手段が主に用いられてきた。
特開2000−198955号公報 特開2000−63719号公報
これに対して、本発明者らは、特別な化合物や液を使用することなく、一般的に水性インクを形成する基本的な成分、例えば、色材や水溶性有機溶剤等について、適切な設計及び組み合わせ等を制御することにより、上記と同様な高品位画像が形成されないかという課題を掲げて鋭意検討を行った。そして、この検討により、インクの構成成分を機能分離し、色材と水溶性有機溶剤の相互作用を利用したインクシステムを考えて、ブリーディング抑制に効果的で、且つ高画質を達成できる、複数の水性インクの組み合わせからなるインクセットが提供できるものと考えた。
従って、本発明の目的は、複数の水性インク(以下、単に「インク」と呼ぶこともある)を組み合わせて、互いに異なる色の領域が隣接しているフルカラーの画像を形成する場合に、各色の領域の境界における混色(ブリーディング)が抑制された画像を得ることのできるインクセットを提供することにある。
又、本発明の他の目的は、上記インクセットを用いることで、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を形成することのできるインクジェット記録方法を提供することにある。
又、本発明の他の目的は、上記インクジェット記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、記録媒体に互いに異なる色の領域が隣接している画像記録を行った場合に、各色の領域の境界における混色(ブリーディング)の発生を有効に抑制することができる画像形成方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかるインクセットは、水不溶性色材を含有してなるブラックインクである水性インク(B)と共に用いられる、カラーインクである水性インク(a)が複数組み合わされてなるインクセット(A)において、該インクセット(A)を構成する前記水性インク(a)のそれぞれが、上記水性インク(B)を構成する水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を1種以上含有してなり、且つ、前記水性インク(a)中における前記水溶性有機溶剤の含有量の合計(質量%)が、上記水性インク(B)中の前記水不溶性色材の含有量(質量%)の3倍以上であり、前記水溶性有機溶剤が、ポリエチレングリコール200(平均分子量200のポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール600(同平均分子量600)、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン及び1,2,6−ヘキサントリオールからなる群から選ばれるいずれかであり、さらに、上記水性インク(a)中にそれぞれ含有されている前記水溶性有機溶剤のうち、少なくとも1種の水溶性有機溶剤の20℃における蒸気圧が、20℃における水の蒸気圧よりも低いことを特徴とする。
又、本発明にかかるインクジェット記録方法は、上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)をインクジェット方式で吐出する工程を有することを特徴とする。
又、本発明にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、該インクカートリッジが、インクを収容する部分を有し、これに収納されるインクが上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)であることを特徴とする。
又、本発明にかかる記録ユニットは、上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)を収容するインク収容部と、上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)とを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドとを具備してなることを特徴とする。
又、本発明にかかるインクジェット記録装置は、上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)を収容するインク収容部と、上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)を吐出させるためのインクジェット記録ヘッドとを具備してなることを特徴とする。
又、本発明にかかる画像形成方法は、上記インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)と、上記何れかの水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)を用いて、記録媒体に前記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)により形成される画像及び前記水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)により形成される画像が隣接してなる画像を形成する画像形成方法において、上記水不溶性色材を含有する水性インク(B)を付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域に、上記インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)の少なくとも1種を付与する走査を行うことを特徴とする。
又、本発明にかかるインクジェット記録方法は、カラーインクである複数の水性インク(a)が組み合わされてなるインクセット(A)を構成する各水性インクと、少なくとも水不溶性色材を含有してなるブラックインクである水性インク(B)とをインクジェット方式で吐出する工程を有するインクジェット記録方法において、上記インクセット(A)を構成する前記複数の水性インク(a)がそれぞれ、上記水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有してなり、且つ、前記水性インク(a)中における前記水溶性有機溶剤の含有量の合計(質量%)が、上記水性インク(B)中の水不溶性色材の含有量(質量%)の3倍以上であり、前記水溶性有機溶剤が、ポリエチレングリコール200(平均分子量200のポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール600(同平均分子量600)、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン及び1,2,6−ヘキサントリオールからなる群から選ばれるいずれかであり、さらに、上記貧溶媒となる水溶性有機溶剤のうちの少なくとも1種の水溶性有機溶剤の20℃における蒸気圧が、20℃における水の蒸気圧よりも低いことを特徴とする。
本発明によれば、水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)と共に、複数の水性インク(a)を用いて互いに異なる色の領域が隣接している画像記録を行った場合に、特に、各色の領域の境界における混色(ブリーディング)の発生を有効に抑制することができる複数の水性インク(a)からなるインクセット(A)が提供される。又、本発明によれば、かかるインクセット(A)を用いることで、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を形成することのできるインクジェット記録方法、該記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置が提供される。更に、本発明によれば、普通紙に互いに異なる色の領域が隣接している画像記録を行った場合に、境界部における混色(ブリーディング)の発生を有効に抑制することができる画像形成方法が提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明において「インクセット(A)」或いは「インクセット」と呼ぶものは、水性インク(a)が複数組み合わされてなるものであれば下記に挙げるいずれの形態のものであってもよい。例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクがそれぞれ収納されたタンクが一体となった構造のインクタンク又はそのヘッド付きインクタンクで構成されるインクセット、若しくは、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクがそれぞれ収納されたタンクが一体となった構造のインクタンク又はそのヘッド付きインクタンクで構成されるインクセット、若しくは、上記したようなインクが収納されたそれぞれ個別のインクタンクが記録装置に脱着可能に構成されている構造のインクセット、等が挙げられる。何れにしても、本発明は、インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)の特性を、これら複数の水性インク間において相対的に規定するものである。従って、本発明における、水性インクにおける特性の規定が満足される複数の水性インクを組み合わせて用いるのであれば、インクセットの形態は、上記に挙げた形態に限られず、どのような形態であっても構わない。
[色材、及び前記色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤の作用]
本発明によって前記したような効果が得られる理由は明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。一般に、普通紙等の記録媒体上に、複数の水性インクで画像を形成し、互いに異なる色の領域が隣接する画像記録を行った場合に、各色の領域の境界における混色(ブリーディング)の発生が抑制された画像を得るためには、画像の境界部における色材の隣接領域への流出が抑制されることが必要である。そのためには、紙面上にインクが着弾した後に、できるだけ早く色材が凝集を起こすことが重要な条件となる。
そこで、本発明では、水不溶性色材を安定に分散させない水溶性有機溶剤を、水不溶性色材に対する「貧溶媒」と定義する。そして、水不溶性色材を含有する水性インク(B)と共に、該水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有する水性インク(a)を使用して画像を形成することを本発明の基本構成とし、前記した効果の達成を図る。即ち、水不溶性色材を含有する水性インク(B)を記録媒体に付与した後に、貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有してなる複数の水性インク(a)を記録媒体に付与することにより、画像の境界部における水不溶性色材の分散性が不安定となって凝集に至る、というメカニズムをより迅速に起こさせる。
本発明者らの検討によれば、水溶性有機溶剤が、対象となる水不溶性色材に対して貧溶媒であることに該当するための条件には、その水溶性有機溶剤の比誘電率が関係してくる。以下に、水溶性有機溶剤の比誘電率が水不溶性色材に対してどのように作用しているのかについて、水不溶性色材が顔料である場合を例に挙げて説明する。
顔料表面に少なくとも1つのイオン性基が、直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料を用いた場合、媒体中でイオン性基がイオン解離を生じることにより顔料粒子が帯電し、その結果生じる静電反発力が、顔料粒子を媒体中に分散させる一つの因子となる。このイオン解離の指標となるものの一つとして、媒体中におけるイオン間の吸引力が考えられる。互いに極性の異なる2つの電荷q1とq2が、真空の誘電率ε0に対する比誘電率εrの媒体中で、距離r離れたところに置かれたとした場合に、2つの電荷に働く吸引力Fは、下記(式1)で表されることが知られている。
Figure 0005054897
ここで、顔料表面に結合しているイオン性基においても上記(式1)が適用されると考えられる。そして、この吸引力Fが増大すると、イオンとそのカウンターイオン間の距離は短くなる、若しくは完全にイオン同士がイオン結合してしまい、顔料粒子の帯電量が減少若しくは電気二重層が圧縮されるために静電反発力が弱まり、顔料の分散が不安定化する。そして、上記(式1)から、真空の誘電率ε0に対する比誘電率εrが小さい水溶性有機溶剤を用いた場合において、顔料表面に結合しているイオン性官能基のイオン間吸引力Fが増大し、顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で実質的にイオン解離を生じなくなり、静電反発力による顔料の分散性が低下することは明らかである。
上記のことから、イオン性基を有する水不溶性色材を含有する水性インク(B)と共に、比誘電率が小さい水溶性有機溶剤を含有する複数の水性インク(a)とを組み合わせてなるインクセットを用い、記録媒体に、前記水性インク(B)と、前記複数の水性インクを組み合わせてなるインクセット(A)を構成する各水性インク(a)を付与し、記録媒体上で、これらの水性インク同士を接触させることで、イオン性基を有する水不溶性色材の電荷量を減少させ、水不溶性色材の分散を不安定化に導くため、水不溶性色材を凝集に至らしめることが予想される。
そこで、本発明では、異なる複数の色の水性インク(a)を組み合わせてなるインクセット(A)を、水不溶性色材を含有する水性インク(B)と共に用い、上記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)がそれぞれ、水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有する構成とする。この結果、本発明にかかるインクセットを用い、互いに異なる色の領域が隣接しているフルカラーの画像を形成する場合には、各色の領域の境界における混色(ブリーディング)の発生が抑制された高品質な画像の形成が達成される。
[画像形成のメカニズム]
ここで、本発明における画像形成のメカニズムについて例を挙げて説明する。図18(a)に示したように、先ず、水不溶性色材を含有するインク101が記録媒体102上に着弾する。記録媒体に付与されたインク滴においては、水分蒸発と、記録媒体への浸透が徐々に進行するため、図18(b)に示したように、着弾直後のインク滴が占める面積103よりも大きなドット面積104が形成される。続いて、上記水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有するインク105が、先に付与された水不溶性色材を含有するインク101の隣接部に着弾する。すると、そのインク滴は、記録媒体102の内部へと浸透、拡散することにより、水不溶性色材を含有するインク101と同様に、図18(c)に示したように、着弾直後のインク滴が占める面積106よりも大きなドット面積107が形成される。更に、インク101によるドット面積104と、インク105によるドット面積107が徐々に拡大すると、インク同士がドットの外周部で混合し始めて、図18(c)に示したように、インク混合部108が形成される。このインク混合部108においては、局部的に、インク101とインク105のそれぞれのインクの溶剤組成が変化する。
これに対して、特に、水不溶性色材を含有するインク101が、イオン性基を有する水不溶性色材、及びそれを比較的安定に分散できるような比誘電率εS1を有する水溶性有機溶剤で構成されている場合には、インク101のインク滴は、上記したようにしてインク105のインク滴と混合する以前においては、インク101を構成する水不溶性色材のイオン性基が十分にイオン解離するため、水不溶性色材は分散性を維持している。
しかし、水不溶性色材を含有するインク101と、該水不溶性色材に対して貧溶媒として作用する比誘電率εS2(εS1>εS2)を有する水溶性有機溶剤を含有するインク105の両液が混合すると、水不溶性色材近傍では、比誘電率εS2を有する水溶性有機溶剤の濃度が上昇し、前記したプロセスによって、水不溶性色材粒子の帯電量が減少、若しくは電気二重層が圧縮されるため、静電反発が弱まり、水不溶性色材は分散不安定となる。このようにして凝集が促進されると、図18(c)に示したように、凝集した水不溶性色材109は、両インクの境界部に堰を形成する。この結果、水不溶性色材の拡散を防ぐ役割を果たし、インク101とインク105との各インク滴によってそれぞれ形成される各色の画像の境界における混色(ブリーディング)の発生が抑制されるものと考えられる。
このことから、水不溶性色材を含有するインク101における水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤の真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS1と、別のインク105に含有させる、インク101中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤の、真空の誘電率ε0に対する比誘電率をεS2が、εS1>εS2の関係を満たすことが好ましい。
又、本発明者らの検討によれば、水不溶性色材を含有する水性インク(B)中に含有される水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤の比誘電率εS1の常温(例えば、25℃)での値の上限が、35以下、より好ましくは30以下である場合に、より一層本発明の効果が効果的に発揮される。又、下限は、0より大きいことが好ましく、更には1より大きいことがより好ましい。
ここで、水より蒸気圧の高い水溶性有機溶剤、例えば、アルコール類等の比誘電率は比較的小さい値であるが、記録媒体上にインクが付与された後の、これらの水溶性有機溶剤の蒸発速度は非常に大きい。従って、記録媒体に水不溶性色材を含有するインク(B)を付与した後に、該インク(B)で形成した画像の近傍に、インク(B)中に含有されている水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤としてアルコール類等を含有するインクを付与した場合には、図18(c)に示したインク混合部108が形成される以前に、蒸気圧の高いアルコール類等が蒸発してしまう。このため、貧溶媒としての効果を有するアルコール類等の濃度が低下してしまい、水不溶性色材の凝集はあまり促進されない。このことから、水よりも揮発性が高い水溶性有機溶剤は、後述する貧溶媒の定義に照らし合わせて考えると、水不溶性色材の水性インクにおける分散を不安定化する作用を有さないと考えられる。つまり、水性インク(a)において、蒸発速度が非常に大きい、即ち、水よりも蒸気圧が高いアルコール類等の水溶性有機溶剤を、水不溶性色材に対する貧溶媒として用いても、本発明の効果を十分に得ることができないことが判明した。
上記のことから、記録媒体に水不溶性色材を含有するインクを付与した後に、前記インクで形成した画像の近傍に、前記水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有するインクを付与する場合には、貧溶媒として用いる水溶性有機溶剤の蒸気圧は、水よりも低いことが好ましいことがわかる。
尚、貧溶媒として用いる水溶性有機溶剤の蒸気圧の値は、温度が一定である条件の下で、水よりも低いことが重要であるため、その下回る程度は、特に限定されない。又、蒸気圧の測定温度は、通常のインク使用温度付近を想定して20℃としている。しかし、前記温度以外でも、通常、インクを使用する温度範囲における温度で、貧溶媒として用いる水溶性有機溶剤の蒸気圧が、前記所定の温度と等しい温度における水の蒸気圧より低ければ、本発明の効果を得ることができる。
但し、水不溶性色材と、該不溶性色材に対する貧溶媒を共に含有する水性インクにおいては、水よりも蒸気圧が高い水溶性有機溶剤(アルコール類等)を用いることも可能である。なぜならば、1の水性インクが、水不溶性色材及び前記不溶性色材に対する貧溶媒を共に含有する場合、不溶性色材を含有するインクと前記不溶性色材に対する貧溶媒を含有するインクが混合されるまでの時間が発生しないため、インクが記録媒体に付与された後においてもアルコール類等の蒸発がそれほど起こらない。従って、貧溶媒の効果が十分に得られるためである。
[貧溶媒]
次に、上記したようなメカニズムを発現させるために必須であり、且つ、本発明において重要な役割を果たす貧溶媒について、その定義と選択の方法について説明する。本発明者らは、インクに含有させることで、前記した本発明の効果をもたらす貧溶媒の判定基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、下記のような判定方法が有効であることを見いだした。
先ず、判定対象の水溶性有機溶剤50質量%、及び水45質量%を含有し、且つ当該インクに用いる水不溶性色材5質量%を含有する、水不溶性色材の分散液を調製する。そして、調製した分散液を60℃で48時間保存したときの、当該分散液中の水不溶性色材の平均粒径が、5質量%の上記水不溶性色材と、水95質量%とを含む水分散液の平均粒径と比較して増加しているものを貧溶媒と規定した。
より具体的には、下記の方法で、ある水不溶性色材に対して、使用される水溶性有機溶剤が貧溶媒となっているか否かの判定を行った。先ず、下記に挙げた、判定対象の水溶性有機溶剤を含有する、ある水不溶性色材の分散液A、及び該水不溶性色材の水分散液B、の2種類の分散液を調製する。
分散液A:判定対象としての水溶性有機溶剤が50質量%、水不溶性色材、又は該水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量が5質量%、水が45質量%である組成の水不溶性色材分散液。
水分散液B:ある水不溶性色材又は、当該水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量が5質量%、水が45質量%である組成の水不溶性色材の水分散液。
次に、上記分散液Aを25℃で24時間保存した後の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)等を用いて測定した。又、同様にして上記水分散液Bの平均粒径を、上記濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、上記分散液A及び水分散液Bの各々の平均粒径値を、粒径(A)、粒径(B)としたときに、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、前記水溶性有機溶剤を貧溶媒、粒径(A)が粒径(B)と同等又はそれ以下の場合には貧溶媒ではないと判定した。
本発明で使用した貧溶媒である水溶性有機溶剤の具体例は、ポリエチレングリコール200(平均分子量200のポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール600(同平均分子量600)、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられ、中でも、ポリエチレングリコール600、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドンが好ましく、更には、ポリエチレングリコール600及び1,5−ペンタンジオールが好ましい。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
[水溶性有機溶剤の比誘電率]
水溶性有機溶剤の比誘電率とその測定方法について説明する。水溶性有機溶剤の極性を左右する一因子である比誘電率εrは、真空の静電容量COに対する、水溶性有機溶剤の静電容量CXの比によって表され、下記(式2)により算出される。
Figure 0005054897
上記比誘電率が大きい水溶性有機溶剤は、イオン性物質を安定に溶解する。逆に、比誘電率が小さい水溶性有機溶剤は、イオン性物質を溶解する能力が低い。このため、先に述べた(式1)からも分かるように、比誘電率が小さい水溶性有機溶剤は、イオン性基を有する水不溶性色材のイオン間に働く力を強め、電気二重層を圧縮することとなる。このことからも、比誘電率が小さな値である水溶性有機溶剤は、イオン性基を有する水不溶性色材を凝集させる方向へと導く作用がある。このため、本発明においては、比誘電率に着目して、インクを構成する水溶性有機溶剤を選択することが重要である。
上記水溶性有機溶剤の比誘電率の測定は、以下に述べる方法で簡単に行うことができる。試料の水溶性有機溶剤を電極容器に満たし、設定された周波数における電極間の静電容量を測定する。得られた静電容量の測定値を用いて、上記(式2)に従い、試料水溶性有機溶剤の比誘電率を算出した。尚、本発明においては、誘電率測定装置(商品名:BI−870;Brookhaven製)等を用いて各種水溶性有機溶剤の比誘電率の測定を行った。
特に、本発明においては、上記した思想に従ってインクを構成する水溶性有機溶剤の選択を行った場合に、上記したような優れた効果が得られる。つまり、前記水不溶性色材を含有する水性インク(B)の構成材料である水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤の真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS1と、前記水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤の真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS2が、εS1>εS2の関係を満たす場合に、特に、水不溶性色材の凝集が促進され、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を得られるために好ましい。更には、水不溶性色材を含有する水性インク(B)に含有される水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤の比誘電率εS1の常温(例えば、25℃)での値が35以下である場合に、前記した凝集が促進され、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を得られるため、好ましい。
[水溶性有機溶剤のKa値]
次に、水溶性有機溶剤のKa値について説明する。インクの記録媒体への浸透性を表す尺度であるKa値は、下記のようにして求めることができる。先ず、記録媒体1m2当たりに付与されるインク量Vrと、インクが吐出されてから所定時間tが経過した後におけるインクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)の関係は、下記(式3)のブリストウの式によって示される。
Figure 0005054897
本発明においては、インクセットを構成する各水性インク(a)に含有される水溶性有機溶剤のうち、Ka値が最大である水溶性有機溶剤が、水不溶性色材に対する貧溶媒であることが好ましい。これは、記録媒体に水不溶性色材を含有するインクを付与した後に、前記インクで形成した画像の近傍に、前記水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有するインクを付与する場合に以下のような現象が起きていると考えられるためである。
水溶性有機溶剤を含有するインクにより形成されたドットの外周部付近においては、Ka値が高い、即ち、記録媒体への浸透性が高い水溶性有機溶剤の濃度分布が高くなる。このため、水不溶性色材を含有するインク(B)により形成されたドットと接触する、貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有するインク(a)のドットの外周部付近に貧溶媒が高い濃度で存在することにより、前記水不溶性色材の凝集が効率的に起こると考えられる。このことから、本発明においては、インクセットを構成する水性インク(a)に含有されている水溶性有機溶剤のうち、Ka値が最大である水溶性有機溶剤が、水不溶性色材に対する貧溶媒であることが好ましい。
記録媒体に付与された直後のインクは、そのほとんどが記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体表面の粗さの部分)に吸収され、記録媒体の内部(深さ方向)へはほとんど浸透していない。この間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに記録媒体表面の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが記録媒体に付与された後に、コンタクトタイムを超えると、前記コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例するインク量が記録媒体の内部(深さ方向)への浸透し、浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を取る。尚、Ka値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いて測定することが可能である。
尚、本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えば、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙(キヤノン製)や、電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC紙等)を記録媒体として用いて測定した値である。又、測定環境は、通常のオフィス等の環境、例えば、温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
[水性媒体]
本発明にかかるインクセット(A)を構成するそれぞれの水性インク(a)は、インクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)に含有される水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を、含有してなるものであることを要する。更に、本発明にかかるインクセットを構成する各水性インク(a)には、これらを添加することによる効果が得られ、且つ本発明の目的効果を損なわない範囲で適宜に、下記に挙げるような、その他の水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を添加することができる。この水性媒体は、水と水溶性有機溶剤を含有するものが利用できる。水は種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用することが好ましい。尚、インクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)で使用される水性媒体としても、水と、下記に挙げるような水溶性有機溶剤とを含有する混合媒体を使用することができる。
水溶性有機溶剤の具体例は、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。尚、上記水溶性有機溶剤は、単独で用いても、或いは複数を組み合わせて用いても構わない。
更に、本発明においては、本発明にかかるインクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)における水溶性有機溶剤のうち、その含有量が最大である水溶性有機溶剤の真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS1と、インクセットを構成するそれぞれの水性インク(a)における、水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤の、真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS2が、εS1>εS2の関係を満たす水溶性有機溶剤を選択すると、より本発明の効果が効率的に発揮されるため、好ましい。
又、更に、本発明においては、水不溶性色材を含有する水性インク(B)中の水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤の上記比誘電率εS1が35以下、より好ましくは30以下になる水溶性有機溶剤を選択すると、より本発明の効果が効率的に発揮されるため、好ましい。
又、更に、本発明においては、インクセットを構成するそれぞれの水性インク(a)における水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤が、水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤である場合に、より本発明の効果が効率的に発揮されるため、好ましい。
又、更に、本発明においては、インクセットを構成するそれぞれの水性インク(a)における、前記水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤の含有量の合計(質量%)が、前記水不溶性色材を含有する水性インク(B)における、水不溶性色材の含有量(質量%)の下限の2倍以上、より好ましくは3倍以上である場合に、より本発明の効果が発揮されるため、好ましい。又、上限は、20倍以下であることが好ましい。尚、本発明者らの検討によれば、含有量の比が2倍以上であれば、前記インクセットを構成するそれぞれの水性インク(a)の記録媒体への付与量が、前記水不溶性色材を含有する水性インク(B)の記録媒体への付与量と比較して少ない場合においても、本発明の効果である、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を得られることが確認された。これは、水不溶性色材の記録媒体への付与量に対して、貧溶媒となる水溶性有機溶剤の記録媒体への付与量が少ない場合においても、前記質量比が2倍以上であれば、上述した画像形成のメカニズムが発現することを意味している。
尚、本発明においては、水不溶性色材と、前記不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤とが同一の水性インク中に含有されている場合でも、異なる2種類のインクで構成した場合と同等、或いはそれ以上にブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を得られることが期待される。
本発明にかかるインクセットを構成する各水性インク(a)或いは、本発明にかかるインクセットと共に用いる水性インク(B)における、水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量の3質量%〜50質量%の範囲とし、好ましくは3質量%〜40質量%の範囲とする。又、水の含有量は、インク全質量の10質量%〜90質量%の範囲とし、好ましくは30質量%〜80質量%の範囲とする。特に、水性インク(a)中の水溶性有機溶剤の全量が、水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤であると、本発明の効果を効率的に得ることができるため、好ましい。前記貧溶媒となる水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量に対して4質量%〜50質量%であることが好ましく、4質量%〜40質量%であることがより好ましい。
[水不溶性色材]
次に、本発明にかかるインクセットと共に用いられる水性インク(B)の色材である水不溶性色材について説明する。本発明において使用する水不溶性色材は特に限定されるものではないが、主なものとしては、カーボンブラックや有機顔料等の顔料を使用することができる。中でも特に、少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料を使用することが好ましい。この条件を満たす限りであれば、特に限定はされず、ジアゾカップリング法を用いてイオン性基を有する化合物を表面に結合させた顔料や、次亜塩素酸ソーダや水中オゾン処理等による表面酸化処理でイオン性基を表面に導入した顔料、イオン性基を有する分散剤、界面活性剤、樹脂分散剤等が吸着した顔料等を使用することができる。これらの水不溶性色材は、単独では勿論のこと、2種類以上を混合して用いることも可能である。
とりわけ、ジアゾカップリング法を用いて、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す)からなる群から選ばれる少なくとも1種を、表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合された顔料が好適に用いられる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等が好適である。
又、より具体的には、顔料表面に−C64−COOM1基や−C63−(COOM1)2基(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)等の親水性基を導入した自己分散顔料を好適に用いることができ、とりわけ、−C63−(COOM1)2基が導入された自己分散顔料に関しては、本発明の構成において好ましい効果が発揮される。
前記−C64−COOM1基や−C63−(COOM1)2基等の親水性基の顔料表面への導入量は、顔料粒子の単位表面積当たりの量が多い方が、本発明の構成において好ましい効果が発揮される。この理由は、自己分散顔料とインクに含有される水溶性有機溶剤との相互作用が大きく関与していると考えられる。即ち、顔料表面に−C64−COOM1基や−C63−(COOM1)2基等の親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散顔料を用いた場合、特に上記−C63−(COOM1)2基がより高密度で顔料粒子の表面に結合している場合、立体障害の影響等により、従来の自己分散顔料と比較して、インクに含有される水溶性有機溶剤が顔料となじみにくくなる。従って、インクが記録媒体に付与された時、インクに含有される水溶性有機溶剤と顔料を含む固形分との分離(固液分離)が極めて速やかに引き起こされるためであると考えられる。又、インクに含有される水溶性有機溶剤が顔料に対してなじみにくい場合には、分散安定性の効果も小さくなるため、記録媒体上における顔料同士の凝集もより顕著に起こると考えられる。
(顔料)
本発明で使用する水性インク(B)において使用することのできる顔料は特に限定されず、下記に挙げるようなものを何れも使用することができる。又、顔料の含有量は、インク全質量に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、更には、2質量%〜12質量%の範囲がより好ましい。
ブラックインクに用いられる顔料は、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを何れも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
又、カラーインクに用いられる顔料の具体例を、色調別に挙げる。イエローインクに用いられる顔料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー:1、2、3、13、16、74、83、128等が挙げられる。又、マゼンタインクに用いられる顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド:5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、112、122等が挙げられる。又、シアンインクに用いられる顔料は、例えば、C.I.ピグメントブルー:1、2、3、15:3、16、22、C.I.バットブルー:4、6等が挙げられる。しかし、これらに限られるものではなく、上記の顔料の他に、本発明のために新たに製造された顔料を用いることもできる。
又、水不溶性色材として顔料を用いる場合には、顔料をインク中に分散させるための分散剤を使用することができる。分散剤は、水溶性樹脂であればどのようなものでも使用することができるが、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲の水溶性樹脂が好ましく、更には、3,000〜15,000の範囲の水溶性樹脂が好ましい。
前記分散剤の具体例は、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく用いられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。尚、これらの分散剤として用いられる水溶性樹脂の含有量は、インク全質量に対して、0.1質量%〜5質量%の範囲が好ましい。
(油溶性染料)
油溶性染料は、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されているものであれば特に限定はない。又、カラーインデックスに記載のない新規の染料であっても、特に制限はない。油溶性染料の具体例は、下記のものが挙げられる。これらの油溶性染料の含有量は、インク全質量に対して、1質量%〜10質量%が好ましく、更には、1質量%〜5質量%の範囲がより好ましい。
油溶性染料の具体例を、色調別に挙げる。イエローインクに用いられる油溶性染料は、C.I.ソルベントイエロー:1、49、62、74、79、82、83、89、90、120、121、151、153、154等が挙げられる。又、マゼンタインクに用いられる油溶性染料は、C.I.ソルベントレッド:25、31、86、92、97、118、132、160、186、187、219等が挙げられる。又、シアンインクに用いられる油溶性染料は、C.I.ソルベントブルー:33、38、42、45、53、65、67、70、104、114、115、135等が挙げられる。
[水溶性色材]
本発明にかかるインクセット(A)を構成する各水性インク(a)を作製する場合においては、上記の水不溶性色材を使用することもできるが、これと併用して、或いは単独で、下記に挙げるような水溶性色材を用いることができる。勿論、水溶性色材を複数併用してもよい。水溶性色材の一例に、水溶性染料が挙げられ、特に可溶化基としてアニオン性基を有する水溶性染料を用いることが好ましい。尚、インクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)を作製する場合においても、前記した水不溶性色材と併用して下記に挙げるような水溶性色材を使用してもよい。
(染料)
本発明で使用することのできる染料は、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定はない。又、カラーインデックスに記載のない染料であっても、アニオン性基、例えば、スルホン基を有するものであれば特に制限はない。これらの染料の含有量は、インク全質量に対して、1質量%〜10質量%が好ましく、更には、1質量%〜5質量%の範囲がより好ましい。尚、可溶化基として、カルボキシル基を持つ染料は、インクが記録媒体に付与された場合に、耐水性に優れた画像を与えるものが多いために、特に好ましい。
染料の具体例を、色調別に挙げる。
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、98、100、110、132等
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230等
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226等
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99等
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289等
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161等
[インクの特性]
これまでに説明した構成成分を有する、本発明にかかるインクセット(A)を構成する各水性インク(a)、及びインクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)は、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。インクジェット記録ヘッドからの吐出性を向上させるという観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。又、ブラックインクとカラーインクとを併用する場合には、特にブラックインクの表面張力よりもカラーインクの表面張力が低いことが更に好ましい。具体的には、ブラックインクの表面張力が35〜50mN/m、カラーインクの表面張力が25〜35mN/mであることが好ましい。
[その他の成分]
本発明にかかるインクセット(A)を構成する各水性インク(a)、及びインクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)には、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性成分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の保湿性成分のインク中の含有量は、一般には、インク全質量に対して、0.1質量%〜20.0質量%が好ましく、更には、3.0質量%〜10.0質量%の範囲がより好ましい。
更に、本発明にかかるインクセット(A)を構成する各水性インク(a)、及びインクセット(A)と共に用いる水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)には、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
[画像形成方法]
以下、本発明にかかる画像形成方法について説明する。本発明にかかる画像形成方法では、上記で説明した構成の、水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有する複数の水性インク(a)を組み合わせてなるインクセット(A)を、水不溶性色材を含有する水性インク(B)と共に用いる。そして、これらによって記録媒体に画像を形成する場合に、互いに異なる色の領域が隣接してなる画像を、上記水不溶性色材を含有する水性インク(B)を付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域に、上記インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)の少なくとも1種を付与する走査を行う。
又、本発明にかかる画像形成方法では、水不溶性色材を含有する水性インク(B)がブラックインクであり、該水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有する、複数の水性インクを組み合わせてなるインクセット(A)を構成する各水性インク(a)が、それぞれカラーインクであるインクセットの場合に、特に、前記したような優れた効果が得られるため好ましい。この理由は次のように考えられる。
ブラックインクは、カラーインクに比べて、ブリーディングの発生が比較的目立ち易い。前記インクセットを構成するそれぞれの水性インク(a)により形成される画像が隣接してなる画像を形成する際に、カラーインクに、ブラックインクに含有される水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有させてなるインクを用いることで、記録媒体表面、又は記録媒体の内部において、前記水不溶性色材の凝集を促進させることができる。このため、前記水不溶性色材の記録媒体の内部における拡散を抑制することができる。従って、上記構成を採ることで、ブラックインクに含有される水不溶性色材が、記録媒体に対して素早く定着することができるので、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を得られる。
以下、水不溶性色材を含有する水性インク(B)がブラックインクであり、該水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有する各水性インク(a)がカラーインクであるインクセット(A)を用いて、記録媒体に画像を形成する場合を例にとって、本発明にかかる画像形成方法を説明する。尚、図10〜15に示した記録ヘッドは、ブラックインク用吐出口列及びカラーインク用吐出口列が1つのヘッドチップに搭載されたものであり、図16、17に示した記録ヘッドは、ブラックインク用吐出口列が搭載されたヘッドチップ、及びカラーインク用吐出口列が搭載されたヘッドチップが別々になっているものである。
本発明にかかる画像形成方法において、フルカラーの画像を形成する場合には、ブラックインクを吐出させるためのブラックインク用吐出口列と、カラーインク用吐出口列が副走査方向にずれて配置された記録ヘッドを用いることが好ましい。具体的には、例えば、図10に示した記録ヘッドを用いてブラックの画像とカラーの画像が混在したフルカラーの画像の形成を行う場合には、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列のb部分、を用いて画像を形成することが好ましい。以下、ブラックの画像とカラーの画像が混在した画像の形成を行う場合について、更に詳細に説明する。
図10は、本発明に用いることができる記録ヘッドの一例である。記録ヘッドは、ブラックインクを吐出するための吐出口列(Bk)と、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の3色のカラーインクをそれぞれ吐出するための吐出口列とを備えている。先ず、ブラックインク用吐出口列のa部分を用いて、プリントヘッドを図の横方向(主走査方向)に走査することで、ブラックの画像を1パス印字で記録媒体上に形成する。次に、副走査方向に距離aだけ記録媒体の搬送を行い、次のプリントヘッドにおける主走査の往方向の過程で、カラーインク用吐出口列のb部分を用いて、先程のブラックインク用吐出口列のa部分で形成された画像領域にカラーの画像を1パス印字で記録媒体上に形成する。このとき、ブラックインク用吐出口列のa部分は、次の領域に画像を形成している。この繰り返しにより、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。
図11は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図11においても、図10の場合と同様に、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列の全領域にあたるb部分を使用し、上記と同様にして、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。
図12は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図12においても、図10の場合と同様に、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列の全領域にあたるb部分を使用し、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。ここで、図12に示される記録ヘッドにおいては、ブラックインク用吐出口列のa部分とカラーインク用吐出口列のb部分との間に、1回分の紙送り量a’分だけ距離が置かれている。このため、かかる構成の記録ヘッドにおいては、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成されるまでの間に、往復で1回の走査分の時間差が余分に生じることになる。従って、図12に示される記録ヘッドにおいては、図11に示される記録ヘッドの構成よりも、ブラックの画像及びカラーの画像の間におけるブリーディングの抑制に対して、より有利な構成となる。
図13は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図13に示される記録ヘッドのように、副走査方向に順に、ブラックインク用吐出口列及びカラーインク用吐出口列が一列に配置された記録ヘッドを用いた場合は、紙送りに応じて、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成される。
図14は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図14に示される記録ヘッドでは、主走査の往方向と復方向とで、カラーインクの打ち込み順序が等しくなるように、カラーインク用吐出口列が、シアンインク(C1、C2)、マゼンタインク(M1、M2)、イエローインク(Y1、Y2)についてそれぞれ2列ずつ、主走査方向に対称に設けられている。この結果、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成において、双方向印字が可能となる。この場合には、先ず、ブラックインク用吐出口列のa部分を用いてブラックの画像が形成され、次に、副走査方向に距離aだけ記録媒体の搬送を行い、次のプリントヘッドにおける主走査の復方向の過程で、カラーインク用吐出口列のb部分を用いて、先程のブラックインク用吐出口列のa部分で形成された画像領域にカラーの画像を1パス印字で記録媒体上に形成する。
図14に示されるような双方向印字に対応した記録ヘッドにおいても、図12において説明した記録ヘッドと同様に、ブラックインク用吐出口列のa部分とカラーインク用吐出口列のb部分との間に、1回分の紙送り量a’分だけ距離が置かれた配置とし(図15参照)、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成されるまでの間に、往復で1回の走査分の時間差を設け、ブラックの画像及びカラーの画像の間におけるブリーディングの抑制に対して、より有利な構成としてもよい。
図16は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図16は、インクタンク付き記録ヘッドであり、ブラックインク用インクタンク付き記録ヘッドと、カラーインク用インクタンク付き記録ヘッドは、それぞれ個別にキャリッジに装着可能である。図16においても、図12の場合と同様に、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列のa部分を使用し、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。
図17は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図17においても、図16の場合と同様に、インクタンク付き記録ヘッドであり、ブラックインク用インクタンク付き記録ヘッドと、カラーインク用インクタンク付き記録ヘッドは、それぞれ個別にキャリッジに装着可能である。又、図17においては、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列の全領域にあたるb部分を使用し、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。ここで、図17に示される記録ヘッドにおいては、ブラックインク用吐出口列のa部分とカラーインク用吐出口列のb部分との間に、1回分の紙送り量a’分だけ距離が置かれている。このため、かかる構成の記録ヘッドにおいては、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成されるまでの間に、往復で1回の走査分の時間差が余分に生じることになる。従って、図17に示される記録ヘッドにおいては、図16に示される記録ヘッドの構成よりも、ブラックの画像及びカラーの画像の間におけるブリーディングの抑制に対して、より有利な構成となる。
以上、本発明にかかる画像形成方法について説明した。勿論、本発明にかかる画像形成方法に用いることができる記録ヘッドの形態は、図10〜17に限定されるものではない。
[インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置]
次に、本発明にかかるインクジェット記録装置の一例について説明する。前記インクジェット記録装置は、先に説明した本発明にかかるインクセットを搭載していることを特徴とする。
先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を、図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿った記録ヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。記録ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。
発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20より構成される。
上記記録ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。
図3には、図1に示した記録ヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
51は記録媒体を挿入するための給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングのときの位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
図7は、本発明に用いることができる記録ヘッドの分解図である。図7に示される記録ヘッドは、インクタンク一体構成となっている。記録ヘッド1001は、インクジェット記録装置本体に載置されているキャリッジの位置決め手段及び電気的接点によって支持固定されるとともに、キャリッジに対して着脱可能となっており、搭載したインクが消費されると交換される。
記録ヘッド1001はインクを吐出させるためのもので、インク供給口が並列して形成された記録素子基板1100、インクを吐出するための電気信号を印加する電気信号経路を形成する電気配線テープ1300、樹脂成形により形成されたインク供給保持部材1400、インクを保持するための負圧を発生するインク吸収体1500、蓋部材1600から構成されている。
インク供給保持部材1400は、内部にシアン、マゼンタ、イエローのインクを保持するための負圧を発生するための吸収体1500を保持するための空間を有することでインクタンクの機能と、記録素子基板1100のインク供給口にインクを導くための独立したインク流路を形成することでインク供給機能とを備えている。インク流路の下流部には、記録素子基板1100にインクを供給するためのインク供給口1200が形成されており、記録素子基板1100のインク供給口がインク供給保持部材1400のインク供給口1200に連通するよう、記録素子基板1100がインク供給保持部材1400に対して固定される。又、インク供給口1200付近周囲の平面には、電気配線テープ1300の一部の裏面が固定される。蓋部材1600は、インク供給保持部材1400の上部開口部に溶着されることで、インク供給保持部材1400内部の空間を閉塞するものである。蓋部材1600は記録ヘッドをインクジェット記録装置に固定するための係合部1700を有している。
図8は、本発明に用いることができる別の一例である記録ヘッドの分解図である。図8に示される記録ヘッドは、図7の場合と同様に、インクタンク一体構成となっている。記録ヘッド1001は、異なる複数の色のインク(例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)を搭載することができ、搭載したインクが消費されると交換される。
記録ヘッド1001は異なる複数の色のインク(例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)を吐出させるためのもので、シアン、マゼンタ、イエロー用のインク供給口が並列して形成された記録素子基板1100等から構成されている。インク供給保持部材1400は、内部にシアン、マゼンタ、イエローのインクを保持するための負圧を発生するための吸収体1501、1502、1503をそれぞれ独立して保持するための空間を有することでインクタンクの機能と、記録素子基板1100のインク供給口にそれぞれのインクを導くための独立したインク流路を形成することでインク供給機能とを備えている。
尚、本発明においては、図8に示されるように、インク供給保持部材の形状を、各液室ごとに大気に露出した部分の表面積をほぼ同面積になるように揃えることが好ましい。これによって各液室に保持されるインクの蒸発量をある程度等しく揃えることができる。
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例について説明する。力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図9に示す。
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
図10において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
次に、実施例及び参考例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるものは、特に記載のない限り質量基準である。
[顔料分散液Aの調製]
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックAを調製した。
更に、上記で得られた自己分散型カーボンブラックAに水を加えて顔料濃度が10%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C63−(COONa)2基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックAが水中に分散された状態の顔料分散液Aを得た。前記顔料分散液Aは、特に分散剤を使用することなくカーボンブラックが良好に水中に分散していた。
尚、上記で調製した自己分散型カーボンブラックA(顔料A)のイオン性基密度を測定したところ、3.1μmol/m2であった。この際に用いたイオン性基密度の測定方法は、上記で調製した顔料分散液A中のナトリウムイオン濃度をイオンメーター(東亜DKK製)を用いて測定し、その値から自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度に換算した。
[各水溶性有機溶剤の顔料Aに対して貧溶媒となるか否かの判定]
上記顔料分散液中の顔料に対して貧溶媒として作用する水溶性有機溶剤を選択するために以下の実験を行った。先ず、上記顔料分散液Aの固形分濃度10%水溶液を調製し、これと各水溶性有機溶剤とを用いて、以下の配合比にて貧溶媒の判定用分散液A、判定用水分散液Bを作成した。
(貧溶媒判定用分散液の配合比)
[判定用分散液A]
・顔料分散液A 5部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤 50部
・純水 45部
[判定用水分散液B]
・顔料分散液A 5部
・純水 95部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した判定用分散液A及び判定用水分散液B各10gを、それぞれ透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分撹拌し、これを60℃で48時間静置した。その後、静置した分散液を測定用サンプルとして、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)を用いて測定した。60℃、48時間保存後の判定用分散液A及び判定用水分散液B中の顔料の平均粒径が、判定用分散液Aの方が判定用水分散液Bより大きくなる水溶性有機溶剤を貧溶媒と判定し、判定用分散液Aの平均粒径が、判定用水分散液Bと同等又はそれ以下になる水溶性有機溶剤を貧溶媒でないと判定した。
表1に、上記のようにして平均粒径を測定することで貧溶媒に該当するか否かについての判定した結果を示した。表1中の結果は、顔料粒径の増大が認められ、貧溶媒と判定された場合を○とし、顔料粒径の増大が認められず、貧溶媒と判定されない場合を×として判定して示した。
Figure 0005054897
[水溶性有機溶剤の比誘電率の測定]
比誘電率測定装置(商品名:BI−870;Brookhaven製)を用いて、表1に示した各水溶性有機溶剤の比誘電率の測定を行った。先ず、測定対象の水溶性有機溶剤23mlをセルに満たし、続いて電極部をサンプルに浸した上で、周波数10kHzにおける比誘電率を測定した。そして、表2に、得られた各水溶性有機溶剤についての比誘電率の測定結果を示した。
Figure 0005054897
[水溶性有機溶剤の蒸気圧]
インクに使用する各水溶性有機溶剤についての蒸気圧を表3に示す。
Figure 0005054897
[ブラックインク及び3色のカラーインクからなるインクセットの調製]
上記で調製した顔料分散液Aを用い、表4に記載した各成分を混合し、充分に撹拌して溶解或いは分散した後、1.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、ブラックインク1〜3を調製した。
Figure 0005054897
又、上記で調製したブラックインク1〜3と共に用いるカラーインクセットA〜Mを作製した。表5−1、表5−2、表6、及び表7に記載した成分を混合し、充分に撹拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、Y、M、Cのカラーインクをそれぞれ調製し、カラーインクセットA〜Mを作製した。
Figure 0005054897
Figure 0005054897
Figure 0005054897
尚、2−ピロリドンの20%水溶液におけるKa値は、0.19(mL/m2/msec1/2)であり、グリセリンの20%水溶液におけるKa値は、0.13(mL/m2/msec1/2)であった。
Figure 0005054897
<実施例1〜19及び参考例1〜1
上記で調製したブラックインク1〜3とカラーインクセットA〜Mを表8のように組み合わせて、各インクを、表8に示した各記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に搭載して画像形成を行った。実施例1〜19では、ブラックインクとカラーインクセットとの関係が、請求項1の要件を満足している。参考例1〜6は、カラーインクセットを構成する各インクが貧溶媒を含有していないインクを用いた例である。又、参考例7〜9は、カラーインクセットを構成する3種のインクのうちの1種が貧溶媒を含有していないインクを用いた例である。参考例10は、カラーインクセットを構成する各インクが貧溶媒を含有しているものの、該貧溶媒の20℃における蒸気圧が、20℃における水の蒸気圧よりも高いものを使用したインクを用いた例である。
Figure 0005054897
[評価]
表8に示した実施例及び参考例のブラックインクとカラーインクセットをそれぞれ用いて画像を形成し、ブリーディングについての評価を行った。記録装置は、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるBJS600及びBJS700(何れもキヤノン製)を用いた。そして、表8に示したように、それぞれ、上記装置の記録ヘッドを、図11、図12、及び図17に示される構成に改造して用いた。又、記録媒体は、スーパーホワイトペーパーSW−101(キヤノン製)を用いた。画像の形成は、図11、図12、及び図17に示される構成の記録ヘッドにより、ブラックのベタ画像とカラー各色(イエロー、マゼンタ及びシアン)のベタ画像が隣接した画像を形成し、ブラックの画像とカラーの各画像の境界部におけるブリーディングの程度を目視により観察し、下記の基準で評価した。評価結果は表9に示した。
AA:参考例よりもかなり向上(ブリーディングを視認できない。)
A:参考例よりも向上(ブリーディングは殆ど目立たない。)
B:参考例と同等レベル(ブリーディングはしているが、実質上問題のないレベルである。)
Figure 0005054897
上記表9において、評価がAである実施例1〜3及び10〜19の画像は、評価は同じAではあるが、参考11の画像よりも優れていた。尚、本発明においては特に、水不溶性色材として、例えば、顔料を含有するブラックインクで形成されたブラックの画像と、これと共に用いるカラーインクで形成されたカラーの画像との境界部の全てにおいて、ブリーディングの発生が抑制されることを目標としている。本発明にかかるインクセットを用いて画像を形成した実施例においては、何れも参考例の評価レベルを上回る結果となっており、本発明の優位性が示された。
本発明の活用例としては、互いに異なる色の領域が隣接している各色の領域の境界における混色(ブリーディング)の発生を有効に抑制することができる、高品位画像の提供が可能なインクセットが挙げられる。又、本発明の活用例は、上記のインクセットを用いることで、ブリーディングの発生が抑制された高品位な画像を形成することのできるインクジェット記録方法、該記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置が挙げられる。
記録ヘッドの縦断面図である。 記録ヘッドの縦横面図である。 図1の記録ヘッドをマルチ化した記録ヘッドの外観斜視図である。 インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。 インクカートリッジの縦断面図である。 記録ユニットの一例を示す斜視図である。 記録ヘッドの分解図である。 記録ヘッドの分解図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 本発明にかかるインクセットを構成する水性インクが記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための図である。
符号の説明
13:記録ヘッド
14:インクノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
101:水不溶性色材を含有するインク
102:記録媒体
103:着弾直後のインク滴が占める面積
104:ドット面積
105:貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有するインク
106:着弾直後のインク滴が占める面積
107:ドット面積
108:インク混合部
109:凝集した水不溶性色材
1001:記録ヘッド
1100:記録素子基板
1200:インク供給口
1300:電気配線テープ
1400:インク供給部材
1500:インク吸収体
1501:インク吸収体
1502:インク吸収体
1503:インク吸収体
1600:蓋部材
1700:係合部

Claims (18)

  1. 水不溶性色材を含有してなるブラックインクである水性インク(B)と共に用いられる、カラーインクである水性インク(a)が複数組み合わされてなるインクセット(A)において、
    該インクセット(A)を構成する前記水性インク(a)のそれぞれが、上記水性インク(B)を構成する水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を1種以上含有してなり、且つ、前記水性インク(a)中における前記水溶性有機溶剤の含有量の合計(質量%)が、上記水性インク(B)中の前記水不溶性色材の含有量(質量%)の3倍以上であり、
    前記水溶性有機溶剤が、ポリエチレングリコール200(平均分子量200のポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール600(同平均分子量600)、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン及び1,2,6−ヘキサントリオールからなる群から選ばれるいずれかであり、
    さらに、上記水性インク(a)中にそれぞれ含有されている前記水溶性有機溶剤のうち、少なくとも1種の水溶性有機溶剤の20℃における蒸気圧が、20℃における水の蒸気圧よりも低いことを特徴とするインクセット。
  2. 前記水性インク(B)が、少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含有してなり、且つ、該水性インク(B)中の水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤についての真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS1と、
    前記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)中にそれぞれ含有されている、前記貧溶媒となる各水溶性有機溶剤についての真空の誘電率ε0に対する比誘電率εS2とが、
    εS1>εS2の関係を満たす請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記比誘電率εS1の常温での値が、35以下である請求項2に記載のインクセット。
  4. 前記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)中に含有されている水溶性有機溶剤のうち、含有量が最大である水溶性有機溶剤が、前記水性インク(B)を構成する水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤である請求項1〜3の何れか1項に記載のインクセット。
  5. 前記水性インク(a)に含有される色材が、水溶性染料である請求項1〜4の何れか1項に記載のインクセット。
  6. 前記水不溶性色材を含有する水性インク(B)が、更に、該水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有してなる請求項1〜の何れか1項に記載のインクセット。
  7. 前記水性インク(B)中の水不溶性色材が、イオン性基を有する請求項1〜6の何れか1項に記載のインクセット。
  8. 前記水性インク(B)中の水不溶性色材が、その表面に、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムである)からなる群から選ばれる少なくとも1種を、直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料である請求項1〜7の何れか1項に記載のインクセット。
  9. 前記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基からなる群から選ばれるものである請求項8に記載のインクセット。
  10. 前記水性インク(B)中の水不溶性色材が、カーボンブラックである請求項1〜9の何れか1項に記載のインクセット。
  11. インクをインクジェット方式で吐出する工程を有するインクジェット記録方法において、
    上記インクが、請求項1〜10の何れか1項に記載のインクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  12. インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、
    前記インクカートリッジが、インクを収容する部分を有し、上記インクが、請求項1〜10の何れか1項に記載のインクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)であることを特徴とするインクカートリッジ。
  13. インク収容部と、インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドとを具備している記録ユニットにおいて、
    上記インクが、請求項1〜10の何れか1項に記載のインクセットを構成する複数の水性インク(a)であることを特徴とする記録ユニット。
  14. インク収容部と、インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドとを具備しているインクジェット記録装置において、
    上記インクが、請求項1〜10の何れか1項に記載のインクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  15. 請求項1〜10の何れか1項に記載のインクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)と、請求項1〜10の何れか1項に記載の水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)を用いて、記録媒体に前記インクセット(A)を構成する各水性インク(a)により形成される画像及び前記水不溶性色材を含有してなる水性インク(B)により形成される画像が隣接してなる画像を形成する画像形成方法において、
    上記水不溶性色材を含有する水性インク(B)を付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域に、上記インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)の少なくとも1種を付与する走査を行うことを特徴とする画像形成方法。
  16. 前記水不溶性色材を含有する水性インク(B)を記録媒体に付与する走査を行った後に、少なくとも1回の走査分の時間差を空けた後に、前記インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)の少なくとも1種を付与する走査を行う請求項15に記載の画像形成方法。
  17. 前記水不溶性色材を含有する水性インク(B)を吐出させるための吐出口列と、前記インクセット(A)を構成する複数の水性インク(a)をそれぞれ吐出させるための吐出口列が副走査方向にずれて配置されている記録ヘッドを用いてインクの付与を行う請求項15又は16に記載の画像形成方法。
  18. カラーインクである複数の水性インク(a)が組み合わされてなるインクセット(A)を構成する各水性インクと、少なくとも水不溶性色材を含有してなるブラックインクである水性インク(B)とをインクジェット方式で吐出する工程を有するインクジェット記録方法において、
    上記インクセット(A)を構成する前記複数の水性インク(a)がそれぞれ、上記水性インク(B)中の水不溶性色材に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を含有してなり、且つ、前記水性インク(a)中における前記水溶性有機溶剤の含有量の合計(質量%)が、上記水性インク(B)中の水不溶性色材の含有量(質量%)の3倍以上であり、
    前記水溶性有機溶剤が、ポリエチレングリコール200(平均分子量200のポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール600(同平均分子量600)、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン及び1,2,6−ヘキサントリオールからなる群から選ばれるいずれかであり、
    さらに、上記貧溶媒となる水溶性有機溶剤のうちの少なくとも1種の水溶性有機溶剤の20℃における蒸気圧が、20℃における水の蒸気圧よりも低いことを特徴とするインクジェット記録方法。
JP2005136535A 2004-05-10 2005-05-09 インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法 Expired - Fee Related JP5054897B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005136535A JP5054897B2 (ja) 2004-05-10 2005-05-09 インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004140282 2004-05-10
JP2004140282 2004-05-10
JP2005136535A JP5054897B2 (ja) 2004-05-10 2005-05-09 インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005350661A JP2005350661A (ja) 2005-12-22
JP2005350661A5 JP2005350661A5 (ja) 2008-06-26
JP5054897B2 true JP5054897B2 (ja) 2012-10-24

Family

ID=35585394

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005136535A Expired - Fee Related JP5054897B2 (ja) 2004-05-10 2005-05-09 インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5054897B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5911211B2 (ja) * 2010-08-03 2016-04-27 キヤノン株式会社 インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP5911215B2 (ja) * 2010-08-03 2016-04-27 キヤノン株式会社 インク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003041172A (ja) * 2001-05-16 2003-02-13 Seiko Epson Corp インクジェット記録用インクセット及びその製造方法、画像記録方法、インクジェット記録装置、並びに、記録物
JP4302940B2 (ja) * 2001-06-19 2009-07-29 株式会社リコー インクジェット記録用インクセット
JP4612793B2 (ja) * 2002-12-27 2011-01-12 キヤノン株式会社 インクジェット記録方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005350661A (ja) 2005-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7753515B2 (en) Ink set, ink jet recording method, ink cartridge, recording unit, ink-jet recording apparatus, and image formation method
JP5938815B2 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置
JP4971754B2 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置
JP4683585B2 (ja) インクセット
US20080292793A1 (en) Ink set, ink jet recording method, ink cartridge, recording unit, and ink jet recording apparatus
WO2006022456A1 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP4273104B2 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法及び画像形成方法
JP4612793B2 (ja) インクジェット記録方法
US6533853B1 (en) Ink, aqueous ink for ink-jet recording, ink set, ink cartridge, recording unit, image-recording apparatus, color-image-recording apparatus, ink-jet recording process and bleeding reducing method
JP4100976B2 (ja) インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置
JP5054897B2 (ja) インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP5561887B2 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP2006159426A (ja) 反応液、インクセット、インクジェット記録方法及び記録物
JP2006008899A (ja) インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP2006008898A (ja) 水性インク、インクセット及びインクジェット記録装置
JP4976644B2 (ja) インクジェット用水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法
JP2004143290A (ja) 水性顔料インク
JP2000309732A (ja) インク、インクジェット記録装置の間欠吐出性の改善方法、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクセット及び画像記録装置
JP5328108B2 (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置
JP2009108192A (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置
JP2006160815A (ja) インクセット、インクジェット記録方法及び記録物
JP2010089380A (ja) 反応液とインクとのセット、画像記録方法、及び画像記録装置
JP2006008911A (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及び画像形成方法
JP2001081378A (ja) インク、インクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置及びインクジェット記録方法
JP2005350612A (ja) 顔料インク、これを用いたインクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置及びインクジェット記録方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080508

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080508

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111107

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120724

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120730

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5054897

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150803

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees