JP4183236B2 - 画像記録方法 - Google Patents

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを記録媒体上に直接吐出して画像を記録する低騒音、かつノンインパクトな記録方法である。また、この方法は、実施するにあたって複雑な装置を必要としないため、低ランニングコスト、装置の小型化、カラー化等が容易である。
【0003】
したがって、従来からインクジェット記録方法を適用したプリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録装置が実用化されている。またこのようなインクジェット記録技術を利用してブラックインクとカラーインク(例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、レッドインク、グリーンインクおよびブルーインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインク)を用いて多色の画像を形成する為のカラーインクジェット記録装置も実用化されている。
【0004】
また一方で、インクジェット記録方法には異なる2種のインクが隣接して記録媒体に付与された場合、該インク同士がそれらの境界部で混ざり合ってしまい、カラー画像の品位が低下する現象(ブリーディング)が発生するという問題がある。特に、ブラックインクとカラーインクの境界部での混色は画像品位低下への影響が大きいため、様々な解決方法の開発が行なわれている。
【0005】
その代表的な解決方法は、2種のインクが隣接して記録媒体に付与された時、少なくともどちらか一方の増粘、あるいは少なくともどちらか一方の色材の凝集または沈殿を生起させ、ブリードを防止させるメカニズムを有するインクセット及び記録方法である。
【0006】
例えば、米国特許第5428383号(特許文献1)は1つのインクに沈殿剤(例えば多価金属塩)を含み、他のインク、好ましくはブラックインクに、カルボキシル及び/又はカルボン酸塩の基を有する有機染料の形の着色剤を採用することを開示している。これらのインクを互いに隣り合わせてプリントすると、沈殿剤を有している第1のインクが、カルボキシル及び/又はカルボン酸塩の基を有する着色剤の沈殿を生じさせ、それによって着色剤の他のインクへの移動を防ぎ、2つの隣接するプリント領域間のブリードが低減されることが記載されている。
【0007】
また、米国特許第5976230号(特許文献2)には、互いに反応する2種のインクを同一の領域に付与することによってブリードを防止する技術を開示している。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第5428383号
【特許文献2】
米国特許第5976230号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このようなブラックインクとカラーインクとの組合せを含むインクセットを用いる場合に、より好適に利用できるインクジェットヘッドに構成について検討した。その結果、異なる2種のインク間に反応性を付与するための成分として多価金属塩を用いた場合には、インクジェットヘッドの液流路内のインクと接触部分、特に発熱体(電気熱変換素子)上の部分、例えば保護層の構成が、インクジェットヘッドの吐出耐久性を向上させる場合に重要であるとの結論を得た。そして、そのような構成として、インクの液滴を吐出口から吐出する際に発熱体から熱エネルギーが付与さることで形成された気泡が外気(大気)と連通する構成による吐出方式が、多価金属含有インクを用いた場合においても吐出耐久性を向上させる上で有効であるとの知見を得た。
【0010】
本発明はこれらの本発明者らの知見に基づいて為されたものである。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、多価金属塩を含むインクを用いた場合でも、多価金属塩を用いる利点を維持しつつ、記録ユニット及び画像記録装置の吐出耐久性を向上させることができる画像記録方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる画像記録方法は、インクをインクジェットヘッドから記録媒体に吐出させて画像を形成する画像記録方法において、
前記インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出口と、該吐出口と連通し該吐出口にインクを供給するための液流路と、該液流路内の該吐出口と対向する底面に設けられインクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子と、を備えるとともに、水性媒体及びイオン性基の作用によって該水性媒体に分散している顔料を含むブラックインクを吐出する第1のインクジェットヘッド部と、多価金属塩を含み前記第1のインクジェットヘッド部から吐出される液滴の量より相対的に小さな量のカラーインクを吐出する第2のインクジェットヘッド部とを含み、
前記第1のインクジェットヘッド部は前記電気熱変換素子の駆動によって前記液流路内のインク中に発生した気泡が外気と連通することなくインクを吐出し、
前記第2のインクジェットヘッド部は前記電気熱変換素子の駆動によって前記液流路内のインク中に発生した気泡が外気と連通することでインクを吐出する
ことを特徴とする画像記録方法である。
【0015】
本発明では、多価インク金属塩を含有するインクを吐出するインクジェットヘッド部に、液流路中に発生した気泡が吐出口を介して外気と連通する吐出方式によるものを採用することで、多価金属塩含有インクを用いた場合においても、インクジェットヘッドによる吐出耐久性を向上させることが可能となる。
【0016】
気泡が大気と連通しない吐出方式のインクジェットヘッドにおいては、電気熱変換素子の有するヒータ面の少なくともインクと接触する部分吐出口の大きさ及び/またはに設けられる保護層には、インクの吐出の際に発生するキヤビテーション、すなわち気泡の発生と消失による物理的な衝撃が発生する場合には、これに対する耐久性が要求される。キャビテーションは、ヒータ部からの加熱によってインク内に発生し、体積増加した気泡内が、ヒータ部からの加熱停止後に負圧となり、急激な体積減少の後消失するプロセスによるものと考えられる。一方、上記した気泡が外気と連通する吐出方式では、気泡に外気が連通することで上記のような負圧発生のプロセスがなく、キャビテーションの発生は実質的にない。
【0017】
多価金属含有インクを気泡が外気と連通しない吐出方式に用いた場合には、多価金属塩の存在下でキャビテーションの影響、例えば腐食の進行の程度、が増大する場合があり、そのような場合に対応できる構成の保護層をヒータ部上部に設ける必要が生じる。これに対して、多価金属塩含有インクを吐出するインクジェットヘッドについて、気泡が外気と連通する吐出方式を適用することで、ヒータ面に設ける保護層に対する耐久性に関する要件を緩和させることができる。その結果、多価金属塩含有インクを吐出するインクジェットヘッドに同じ構成の保護層を用い、気泡が外気と連通する吐出方式と、気泡が外気と連通しない吐出方式とをそれぞれ適用した場合に、気泡が外気と連通する吐出方式を用いた方が断線が起こりにくなり、吐出耐久性に優れる場合が生じる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に本発明にかかるインクセットを構成するブラックインクならびにカラーインクについて詳細に説明する。
【0019】
以下、カラーインクとブラックインクとが混合された際に、該ブラックインク中の色材の分散安定性が不安定化する様に組成を調整したカラーインクとブラックインクを用いる場合を一例として本発明を説明する。
【0020】
なお、このようなインクの組合せおけるブラックインク中に含有させた色材の分散安定性の不安定化とは、具体的には、該色材の凝集、沈殿、あるいは該ブラックインクの増粘等である。増粘とは混合前の該ブラックインクと該カラーインクのどちらの粘度よりも両者を混合したインクの粘度が高くなった場合の現象を意味する。以下、本発明にかかる各構成について説明する。
【0021】
(ブラックインクとカラーインクの反応性)
本発明にかかるブラックインクとカラーインクの組成は、ブラックインクとカラーインクとが混合されたときに上記したようにブラックインク中の色材の分散安定性を不安定化させるように各々が調製されることが好ましい。具体的には、例えば、カラーインクが、ブラックインクと混合されたときに該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤としての多価金属塩を含んでいる態様が挙げられる。このようなブラックインクとカラーインクとの組合せの具体例としては、ブラックインク中の色材がアニオン性基を有し、カラーインクが多価金属陽イオンを含む多価金属塩、例えば、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+およびAl3+から選ばれる多価金属陽イオンを含む二価金属塩の少なくとも1種含有する組合せを用いることができる。多価金属塩は、例えば上記の二価金属陽イオンの少なくとも1種がインク中に供給されるようにその1種以上を用いることができる。
【0022】
この例においては、カラーインクとブラックインクとが混合されると、カラーインク中の多価金属塩の多価金属陽イオンがブラックインク中の色材のアニオン性基と反応し、その結果ブラックインク中の色材が分散破壊を起こし、色材を凝集させ、またインクを増粘させる。ここでカラーインクに含有させる多価金属塩としては、カラーインクの全質量に対して例えば、約0.1〜15質量%を含有させることが好ましい。
【0023】
(ブラックインクについて)
ブラックインク中の色材としては例えばカーボンブラックが好適に用いられる。そしてカーボンブラックのインク中での分散の形態としては、自己分散型であっても、分散剤による分散の形態であってもよい。
【0024】
(自己分散型カーボンブラック)
自己分散型のカーボンブラックとしては例えば、少なくとも1つの親水性基(アニオン性基やカチオン性基)がイオン性基としてカーボンブラック表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックが挙げられる。これを用いることによって、カーボンブラックを分散させるための分散剤の添加が削減あるいは不要となる。
【0025】
アニオン性基を表面に直接もしくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックの場合、表面に結合されている親水性基の例として、例えば、-COO(M2)、-SO3(M2)、-PO3H(M2)、-PO3(M2)2等を挙げることができる。なお上記式中、「M2」は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。これらの中で特に、-COO(M2)、-SO3(M2)がカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめた自己分散型カーボンブラックは、インク中での分散性が良好な為、本実施態様において特に好適に用い得るものである。
【0026】
ところで上記親水性基中、「M2」として表わしたもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えばLi、Na、K、RbおよびCs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0027】
そしてM2をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含む本実施態様のインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。ここでM2をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばM2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックを、イオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法等が挙げられる。
【0028】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばカーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に-COONa基を化学結合させることができる。
【0029】
カチオン性に帯電したカーボンブラックの場合、直接若しくは他の原子団を介して結合した親水性基が、例えば下記に示す第4級アンモニウム基から選ばれる少なくとも1つを結合したものが挙げられる。
【0030】
【化1】
Figure 0004183236
上記式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。
【0031】
なお上記のカチオン性基にはカウンターイオンとして例えばNO3 -やCH3COO-が存在する。
【0032】
上記したような親水性基が結合されてカチオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN-エチルピリジル基を結合させる方法を例にとって説明すると、
【0033】
【化2】
Figure 0004183236
カーボンブラックを3-アミノ-N-エチルピリジニウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。この様にカーボンブラック表面への親水性基の導入によってアニオン性若しくはカチオン性に帯電させたカーボンブラックは、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分散状態を維持する。
【0034】
ところで上記した様な種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させても良い。ここで他の原子団の具体例としては例えば炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基およびナフチレン基の置換基としては例えば炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また他の原子団と親水性基の組合せの具体例としては、例えば-C24COO(M2)、-Ph-SO3(M2)、-Ph-COO(M2)等(但し、-Ph-はフェニレン基を、M2は先に挙げた基を表す)が挙げられる。
【0035】
ところで本実施態様において上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択したインクの色材に用いてもよい。またインク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としてはインク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更にインクの色調の調製等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0036】
(通常のカーボンブラック)
またブラックインク用の色材としては、自己分散型でない、通常のカーボンブラックを用いることもできる。
【0037】
このようなカーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA-、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA-II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC-72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF-88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではなく従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。
【0038】
また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0039】
そしてこのような通常型のカーボンブラックをブラックインクの色材として用いる場合には、これを水性媒体に安定して分散させるために分散剤をインク中に添加することが好ましい。
【0040】
分散剤としては例えばイオン性基を有し、その作用によってカーボンブラックを水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられ、そのような分散剤としては、例えば分散剤として具体的には、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸-マレイン酸ハーフエステル共重合体、あるいは、これらの塩等が挙げられる。この中で質量平均分子量が1000から30000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは3000から15000の範囲である。
【0041】
(ブラックインクの有する塩について)
ブラックインクの顔料として自己分散型のカーボンブラックを用いる際には、ブラックインク中に塩を含有させることが好ましい。
【0042】
本発明にかかるブラックインクの有する塩としては、(M1)2SO4、CH3COO(M1)、Ph-COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)2SO3および(M1)2CO3から選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。ここでM1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す。
【0043】
そしてアルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、Rb、Cs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジャ`ルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムおよびトリエタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0044】
そして上記した塩の中でも硫酸塩(例えば硫酸カリウム等)、安息香酸塩(例えば安息香酸アンモニウム)は自己分散型カーボンブラックとの相性が良く、具体的には記録媒体に付与したときの固液分離効果が特に優れるためか、種々の記録媒体に特に優れた品質のインクジェット記録画像を形成することができる。
【0045】
イオン性基の作用によって水性媒体中に分散させられている色材を含むインク、例えば自己分散型カーボンブラックを含むインク中に上記したような塩を共存させることによって、記録媒体の種類によって画像品質が大きく変化することのない、安定的に高品位の画像を形成することのできるインクを得ることができる。
【0046】
本発明にかかるブラックインクが上記した様な特性を発揮する詳細なメカニズムは現時点においては明らかでない。しかし、インクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として知られているブリストウ法によって求められるKa値に関して、本発明にかかるブラックインクは、塩を添加しない以外は同一の組成を有するインクと比較して大きなKa値を示すとの知見を本発明者らは得ている。
【0047】
Ka値の増加は、インクの記録媒体への浸透性の向上したことを示すものであり、これまでの当業者の常識としてインクの浸透性の向上は、光学濃度の低下を意味するものであった。即ちインクの浸透と共に色材も記録媒体内部に浸透してしまう結果として光学濃度が低下してしまうというのがこれまでの当業者の認識である。
【0048】
そしてこのような本発明にかかるブラックインクに関する種々の知見から総合的に判断すると、該ブラックインク中の塩は、紙面上に付与した後のインク中の溶剤と固形分との分離(固液分離)を極めて速やかに引き起こすという特異的な作用を生じさせていると考えられる。つまりインクが記録媒体に付与されたときの、固液分離が遅ければ、Kaの値の大きいインク、あるいはインクの浸透性の大きな紙上ではインクは色材とともに等方的に紙中に拡散し、その結果文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に紙の奥まで色材が浸透するために光学濃度も低下することが予測される。
【0049】
しかし本発明にかかるブラックインクはその様な現象が観察されないことから、記録媒体に付与されたときの固液分離が速やかに起こり、その結果、インクのKa値の増加にも関わらず、高品異な画像を与えるものと推察される。また浸透性が比較的高い紙であっても本発明にかかるブラックインクの場合には、文字品位の低下や光学濃度の低下といった現象は起こりづらい理由もこれと同じと考えられる。
【0050】
本発明にかかるブラックインク中の色材、例えば自己分散型カーボンブラックの含有量としては、インク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。また塩の含有量としてはインク全質量に対して0.05〜10質量%、特には0.1〜5質量%の範囲とすることが好ましい。ブラックインク中の色材および塩の含有量を上記の範囲とすることでより一層優れた効果を享受できる。
【0051】
色材として前記した自己分散型カーボンブラックを用いるときに、カーボンブラックの表面の親水性基として例えば-COO(M2)、-SO3(M2)2、-PO3H(M2)、-PO3(M2)2を用いる場合、M2としてアンモニウムや有機アンモニウムが好適に用い得ることは上記した通りであるが、このときにブラックインク中の塩として、例えば「M2」と一致させること、即ち「M1」=「M2」とすることは好ましい態様の一つである。
【0052】
即ち本発明者らは自己分散型カーボンブラックを含むインクに対して塩を加えることの効果の検討過程において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のM2(カウンターイオン)とM1とを同一としたときに、インクの安定性が特に向上するという知見を得た。M1とM2とを揃えることでこのような効果が得られる理由は明らかではないが、インク中において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のカウンターイオンと塩との間で塩交換が生じないため、自己分散型カーボンブラックの分散安定性が安定して維持されるためと推測される。
【0053】
そしてM1とM2との双方をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした場合にはインク特性の安定化効果に加えて、記録画像の耐水性のより一層の向上を図ることができる。またこのときインク中の塩としてPh-COO(NH4)(安息香酸アンモニウム、Phはフェニル基である)を用いると、インクジェット記録を一時休止させたあとのヘッドノズルからのインクの再吐出性においても極めて優れた結果を得ることができる。
【0054】
そしてかかるインクセットを用いることで、ブラックインク単独で形成された画像と、ブリード軽減のためにブラックインクとカラーインクとの重畳によって形成された画像との画像濃度の差を目視では殆ど認識し得ない程度にまで小さくすることができる、という効果を得られる。
【0055】
このような効果が得られる理由について、以下にその理由を説明する。
【0056】
(ブラックインクとカラーインクとで形成される画像)
まず、ブリード、白モヤの緩和のために、顔料ブラックインクと該ブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる添加剤を含むカラーインクとを重畳することによって高い濃度の画像が得られる理由を説明する。
【0057】
ブラックインクおよびカラーインクを用いてブリード防止のための処理を行なう場合、インクの付与順が異なる以下の2通りの方法が考えられる。
【0058】
まず、カラーインクが付与された後、ブラックインクを付与する方法によって記録媒体上で生じている現象を図11(d)〜(f)に示す。図11(d)〜(f)は塩の入っているブラックインク、及びブラックインクと反応性を示すカラーインクを用いた場合において、該ブラックインクと該カラーインクが同じ場所に付与された様子を示している。
【0059】
カラーインク1305によって浸透性の高くなった記録媒体1303面上にブラックインク1301が付与されるため、ブラックインク1301の記録媒体内部への浸透は早くなる。しかし、ブラックインク1301中に含有されてなる塩の効果によって、ブラックインクの色材の記録媒体内部への浸透よりも、ブラックインクの記録媒体表面における固液分離が早く起こり、色材の分離、固化が速く行われる。更にブラックインク1301中の顔料は記録媒体1303の表面でカラーインク1305と接触することで、水性溶媒中における分散状態の不安定化とそれに伴う凝集が生じ、凝集物1309が記録媒体の表面に析出し、図11(f)のようにインク中の色材の浸透が抑えられる。
【0060】
ここで顔料の分散安定性の不安定化成分は、添加剤としての多価金属塩、例えば二価金属塩であり、カラーインク中の染料は記録媒体の内部に浸透し、画像濃度向上への寄与は少ないと考えられるが、二価金属塩は一般的には染料よりも分子量が小さいと考えられ、ブラックインクとカラーインクとが接触したときの反応効率がより高く、より多くの凝集体が生じ記録媒体の表面近傍に残留すると考えられる。また、反応に関与しなかった顔料は、凝集物1309の上に乗った形になり、画像濃度の向上に寄与しているものと考えられる。
【0061】
このように、画像濃度を決定すると考えられている記録媒体表面上並びに記録媒体表面から約15〜30μmの深さの範囲内における色材の占有率は、非常に高いものとなり、高い画像濃度が達成されることになる。
【0062】
次に、ブラックインクが付与された後にカラーインクが付与された場合について図11(a)〜(c)に示す。浸透性の低いブラックインクが図11(a)のように記録媒体を覆うと、ブラックインク1301は記録媒体1303に対して浸透性が低いために遅い速度で透していく。そして、その後図11(b)のように浸透性の高いカラーインク1305が付与されても記録媒体の表面はブラックインク1301で覆われているため、浸透性はあまり変わらない。
【0063】
このような状況においては、ブラックインク1301、カラーインク1305の記録媒体1303への浸透は遅いため、図11(c)のようにブラックインク1301の色材は記録媒体の表面に残りやすく、高い光学濃度を示す。更にまたブラックインクとカラーインクは反応することにより、ブラックインク中の顔料の凝集物1309が紙面上に多く残る。これにより、高い光学濃度の印刷物を得ることができる。また、カラーインクの付与量が多い場合においても、ブラックインクの迅速な固液分離と凝集の現象の両方により紙面上に十分な固形分がのこり、均一感もよい状態である。
【0064】
このように、カラーインクがブラックインクの後に付与された場合、凝集物1309の上にカラーインク中の染料が乗った形となる。しかし、インクジェット用インク中の色材の濃度はそれほど高くはない為、例えばカラーインク中の染料濃度がカラーインクの質量の10質量%以下であれば、画像の濃度への寄与は少なくとも目視上では、殆ど寄与はないと考えられる。そして凝集物1309が、記録媒体表面上および記録媒体表面から15〜30μmの範囲内の色材の占有率を飛躍的に向上させる結果、高い濃度の画像が形成されることになる。
【0065】
そしてここで用いたインクセットによれば、ブラックインク及びカラーインクの付与順に関わらず、上記の両方法で形成された画像は少なくとも視覚上は、ほぼ等しい、そして高い画像濃度を示す。また、記録媒体の上方に凝集物としてインク中の色材が定着されるため、ブラックインクとカラーインクとが記録媒体上で重畳されても、高い浸透性を有するカラーインクが顔料を記録媒体内部に浸透させることを抑制できる。
【0066】
その結果としてブリードや白モヤの発生を有効に緩和することができる。更に、モノトーン階調の画像を形成する場合においても、インクの付与順を考慮する必要がなく、より優れた階調表現をより容易に実現することができるのである。
【0067】
(ブラックインク単独で形成される画像)
次に本発明にかかるブラックインクが、上記したブラックインクとカラーインクとの重畳によって得られる画像の濃度と視覚的に殆ど遜色のない濃度の画像が得られるメカニズムは以下のとおりであると考えられる。
【0068】
図12(a)〜(c)および図13(a)〜(c)は各々、本発明にかかる塩を含むインクおよび対照としての塩を含まないインクの各々をインクジェット記録法によってオリフィスから吐出させ、普通紙等の浸透性の比較的高い記録媒体に付与したときに、そこで生じる固液分離の様子を模式的、概念的に示した説明図である。即ちインクが着弾した直後には、双方のインク共に図12(a)および図13(a)に示すように塩の添加の有無に関わらず顔料インク901または1001が紙(903または1003)の表面に乗った状態である。
【0069】
時間T1経過後、塩を添加した顔料インクは、図12(b)に示すように、固液分離が速やかに起こり、インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域905とインク中の溶媒とが分離し、分離した溶剤の浸透先端907が溶剤紙903内部へと進んでいく。一方、塩を添加しない顔料インクは、図13(b)に示すように、塩を添加したインク程には固液分離が速やかに起こらないために、固液分離しない状態1005で、紙1003内部へと浸透していく。
【0070】
時間T2経過後:塩を添加した顔料インクは図12(c)に示すように、溶剤の浸透先端907は更に紙内部へと浸透していくが、領域905は紙の表面とその近傍に留まったままで維持される。一方、塩を添加していない顔料インクは、図13(c)に示すように、この時点において漸く固液分離が始まり、インク中の固形分の浸透先端1009と溶媒の浸透先端1007との間に差が生じて来るものの、インク中の固形分含有領域1005は記録媒体の深部にまで到達している。
【0071】
なお上記説明における時間T1およびT2は、塩の有無による固液分離の相違を概念的に捉えるための目安の時間である。
【0072】
以上から明らかなように、塩を添加することで、固液分離が速やかに起こるために着弾後、比較的速い段階で固液分離とともに、溶液は記録媒体内部へと浸透し、色材(顔料)は記録媒体の上方に留まりやすくなるため、光学濃度が上昇すると考えられる。そして前記したように、ブラックインクは、カラーインクと比較して高い表面張力に設定されるのが一般的であり、ブラックインクの記録媒体への浸透性を高めるようなカラーインクとの重畳のない状態においては、本発明にかかるブラックインクが記録媒体上で、その速い固液分離によって、画像濃度を実質的に規定する記録媒体の表面上ならびに記録媒体の表面から約15〜30μmの深さの領域における顔料の占有率が大幅に向上する。その結果として当該ブラックインク単独で形成された画像の濃度の大幅な向上が図られるものである。
【0073】
図14は、本発明にかかるインクセットを用いたことによる濃度差の緩和効果を示したものである、図14において、ブラックの画像濃度aは、ブラックインクとカラーインクの重畳による画像の濃度であり、bは、あり本発明にかかる塩を含むブラックインク単独で形成した画像の濃度であり、cは上記の対照に用いた塩を含まないブラックインク単独で形成した画像の濃度である。この図からも分かるように、ブラックインクの画像濃度aとcの間の差が、本発明にかかるインクセットを用いることで、大幅に緩和され、目視での観察では画像濃度aとbの差は殆ど認識し得ない程度のものとすることができる。
【0074】
(ブラックインクにおける水性媒体)
本発明に係るブラックインクに用いられる水性媒体の例としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。
【0075】
具体的には例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0076】
本発明にかかるブラックインク中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の含有量はインク全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲である。
【0077】
以上説明してきたブラックインクは、印刷品質の記録媒体特性への依存性を極めて低減させることができるという優れた効果を奏するものである。そして本発明にかかるブラックインクの優れた点はこればかりではない。
【0078】
即ち、該ブラックインクと、対照として塩を含まない以外は同一の組成のブラックインクとに関して、顔料濃度と各々のインクによる画像の光学濃度との関係をプロットしたグラフを図15に示す。図15から分かる様に、いずれのインクによる画像の光学濃度も最終的には同程度の値に到達するが、本発明にかかるブラックインク(a)は、対照のブラックインク(b)よりも低い顔料濃度で飽和値に到達するとの知見を得た。即ち塩の添加によって、画像の光学濃度に変化を与えることなく、インク中の顔料濃度を減らすことが可能となるのである。
【0079】
具体的には例えば塩として安息香酸アンモニウムを1質量%程度含ませた場合、自己分散型カーボンブラックの濃度を約4質量%とすることで、普通紙上の印刷の光学濃度は例えば1.4程度にまで達し、カーボンブラック濃度をこれ以上増しても光学濃度はあまり変化しない。これに対して塩を含まないインクはカーボンブラック濃度4質量%とした場合には普通紙上の印刷の光学濃度は1.32程度であり、カーボンブラック濃度7質量%とした場合で光学濃度1.35程度となり、そして8質量%とした場合でも1.35程度であって、この値がほぼ飽和値となる。
【0080】
この様な光学濃度の飽和値(1.4と1.35)の差は、数値上はわずかに0.05であっても、各々の印刷物を対比するとその差を目視にて明らかに認識することができるものである。この様に塩を加えたインクは、塩を含まないインクと比較して低いカーボンブラック濃度でも高い光学濃度の印刷を行うことができ、且つ光学濃度の飽和値自体も高いという好ましい結果をもたらすものである。尚ここでは自己分散型カーボンを用いた具体例を述べたが、分散剤を用いてカーボンブラックを分散させたブラックインクについても同様の事象が観察された。
【0081】
またこのことは次のようなメリットももたらす。即ち、塩を含むインクは上記した様に印刷物の光学濃度に対するカーボンブラック濃度のマージンが広いという特性を有する。そのため、例えば吸収体を有するインクタンクにこのインクを充填し、そのインクタンクを長期間、同一の姿勢で放置(例えば6ヶ月間ノズルを上にして放置)した後にそのインクタンクを用いて印字を行ったときに、印字初期に得られる印刷物と、インクタンク内のインクを使い切る直前に得られる印刷物との間で目視で確認できるような光学濃度の差を生じさせることを極めて有効に防ぐことができる。
【0082】
上記インクは、塩を添加したことの更に他の効果として、間欠吐出性に優れているという点が挙げられる。間欠吐出性とはインクジェットヘッドの所定のノズルに着目し、そのノズルからインクを吐出し、その後インクの予備吐出やノズル内のインクの吸引を行う事無しに所定の時間放置し、再びそのノズルからインクを吐出したときに、再吐出の最初から正常にインクが吐出するか否かを評価するものである。
【0083】
(インク特性;インクジェット吐出特性、記録媒体への浸透性について)
本発明にかかるブラックインクは、筆記具用インクやインクジェット記録用インクに用いる事ができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、およびインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法があり、それらの記録方法に本発明のインクは特に好適である。
【0084】
ところで本発明にかかるブラックインクをインクジェット記録用に用いる場合には、該インクはインクジェットヘッドから吐出可能である特性を有する事が好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該インクの特性としては、例えばその粘度を1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、特には粘度を1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとする事が好ましい。
【0085】
またインクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値がある。即ち、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後におけるインクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
【0086】
V=Vr+Ka(t-tw)1/2
ここでインク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の荒さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。
【0087】
そしてインクが付着した後、コンタクトタイムを越えると、該コンタクトタイムを越えた時間、即ち(t-tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaはこの増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そしてKa値はブリストウ法によるインクの動的浸透性試験装置(例えば商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製等)等を用いて測定可能である。
【0088】
そして前記した本発明の各実施態様にかかるインクにおいて、このKa値を1.5未満とすることは記録画像品質をより一層向上させるうえで好ましく、更に好ましくは0.2以上1.5未満である。即ちKa値が1.5未満である場合に、インクの記録媒体への浸透過程の早い段階で固液分離が起こり、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を形成することができると思われる。
【0089】
なお本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えばキヤノン株式会社製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等)を記録媒体として用いて測定した値である。また測定環境としては通常のオフィス環境、例えば温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0090】
そして、上記したような特性を担持させられる好ましい水性媒体の組成としては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、チオジグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、およびアセチレンアルコールを含むものとする事が好ましい。
【0091】
(カラーインクについて)
(色材)
本発明で用いられるカラーインクの色材については、特に限定されるものではないが、カラーインデックスに記載されている水溶性のキサンテン系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、テトラアゾ系、銅フタロシアニン系の染料が好ましい。同一インク中にこれらの色材の1種または2種を組み合わせてインクを調製できる。インク中での色材の含有量は、一般には、インク全体に対して0.1〜15.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%の範囲である。
【0092】
アニオン性染料の具体例を以下に挙げる。
【0093】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー 8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー 1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リアクティブイエロー 2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー 3。
【0094】
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド 2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230C.I.アシッドレッド 6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リアクティブレッド 7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド 87、92、94。
【0095】
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー 1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リアクティブブルー 4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100。
【0096】
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック 17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック1、2。
【0097】
また、銀塩写真に匹敵する高画質なインクジェット画像が実現されている最近では、画質が良好であることだけではなく、記録した画像の、より長期の保存性も要求されるようになっている。
【0098】
上記要求は、カラー画像を形成するための各カラーインクの光退色性ΔEがほぼ均等であるインクセットを用いることにより、画像のカラーバランスを崩すことなく、長期保存後の画質の劣化を防ぐことができる。
【0099】
ここで、カラーインクの色は、たとえばCIELABのような色空間を使って表すことができる。CIELAB色空間において、色は3つの項、L*、a*、b*を使って表示される。L*は色の明るさを定義し、0(ブラック色)から100(白色)の範囲にある。a*およびb*は、色の色相および色度特性を定義している。
【0100】
ΔEは2色間の差異を定義するもので、ΔEの値が大きくなると、2色間の差異は大きく、
【0101】
【数1】
Figure 0004183236
と表される。
【0102】
このΔEを用いて、カラーインクの耐光性を知ることができる。つまり印字直後と光退色後とのΔEが大きいと、光退色性は大きい。このΔEが各色均等であると、画像の全体的な光退色は多少認められるが、カラーバランスは保たれているので、画質の劣化が小さい印象を与える。さらに各色の反射強度の残存率が大きければ、画像の全体的な退色も感じにくい。
【0103】
更に、3年以上の擬似室内光退色後の光退色性が、CIELAB色空間表示系におけるΔEの差が10以内となるようなインクとすることが好ましい。
【0104】
よって、本発明にかかるインクセットに濃色および淡色のマゼンタインクを含める場合は、これらの濃色および淡色のマゼンタインクには、少なくとも下記一般式(I)で示される色材を用いることが好ましい。
【0105】
【化3】
Figure 0004183236
(上記一般式(I)中、R1は置換もしくは未置換のアルコキシ基、または置換もしくは未置換のアリール基を表し、R2およびR4は各々独立に水素原子または置換もしくは未置換のアルキル基を表し、R3は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基またはハロゲン原子を表す。X1はカルボキシル基およびその塩、またはスルホン酸もしくはその塩を表す。nは1〜2の整数を表す。)
以下に一般式(I)で示される色材の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。また、これらの色材を同時に同一インク中に2種類以上用いてもよい。
【0106】
本発明に用いられる一般式(I)の化合物に含まれる色材の具体例は、以下の構造を有する。
【0107】
【化4】
Figure 0004183236
【0108】
【化5】
Figure 0004183236
濃色マゼンタインクの色材としては一般式(I)で表される色材を少なくとも1種と、下記一般式(II)、下記一般式(III)で表される色材及びキサンテン構造を有する色材のうち少なくとも1種とを含んでいるのがさらに好ましい。
【0109】
【化6】
Figure 0004183236
(上記一般式(II)中、Ar1はカルボキシル基およびその塩、スルホン酸およびその塩から選ばれる少なくとも1つの置換基を有するアリール基を有するもの、または、置換もしくは未置換のアルキル基を、Ar2はアセチル基、ベンゾイル基、1,3,5-トリアジン誘導体、SO2-C65基またはSO2-C64-CH3基のいずれかを表す。M2およびM3は対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。)
【0110】
【化7】
Figure 0004183236
(Ar3、Ar4は各々独立的にアリール基または置換アリール基であり、Ar3およびAr4の少なくとも1つはカルボキシル基およびその塩、あるいはスルホン酸およびその塩の置換基を有す。Mは対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウムおよび有機アンモニウムを表す。R5は1,3,5-トリアジン、又は1,3,5-トリアジン誘導体を表す。R6およびR7は独立的に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基又は置換アラルキル基を表し、又はNと共にベルヒドロキシアジン環を形成するに必要な原子群を表し、Lは2価の有機連結基である。)
本発明に用いられる一般式(II)の化合物の色材としては、例えばC.I.Reactive Red 180や以下の構造を有するもの、更には特開平8-73791号公報、特開平11-209673号公報などに記載されている構造の化合物が挙げられる。
【0111】
【化8】
Figure 0004183236
【0112】
【化9】
Figure 0004183236
本発明に用いられる一般式IIIの化合物の色材は、以下の構造を有する。
【0113】
【化10】
Figure 0004183236
【0114】
【化11】
Figure 0004183236
【0115】
【化12】
Figure 0004183236
【0116】
【化13】
Figure 0004183236
【0117】
【化14】
Figure 0004183236
【0118】
【化15】
Figure 0004183236
キサンテン構造を有する色材の具体例としては、C.I.AcidRed52、92、94、289等が挙げられる。
【0119】
本実施態様にかかる濃色マゼンタインク中の一般式(I)で表される色材と、一般式(I)以外の色材(一般式(II)、一般式(III)で表される色材、キサンテン構造を有する色材の少なくとも1種を含む)との質量比は、鮮明な色調と高い画像濃度と更に優れた耐光性が得られるという効果を考慮すると、95:5〜20:80の範囲が好ましい。一般式(I)の化合物の質量比がこれ以上大きくなると記録媒体によっては鮮明な色調と画像濃度が得られないことがあり、また質量比がこれ以上小さくなると十分な耐光性が得られないことがある。
【0120】
本発明のインクセットに濃色および淡色シアンインクを含める場合におけるこれらのインクの色材としては、銅フタロシアニン染料を用いるのがより好ましい。銅フタロシアニン構造の色材の具体例としては、C.I.Acid Blue 249,C.I.Direct Blue 86,C.I.Direct Blue 199,C.I.Direct Blue 307等が挙げられる。これら銅フタロシアニン染料のほかに、他のシアン色材を併用してもよい。しかし併用する場合の、銅フタロシアニン染料と他の染料との質量比は、95:5〜20:80の範囲がより好ましい。
【0121】
本発明にかかるインクセットにイエローインクを含める場合における色材としては、DirectYellow132を用いるのがより好ましい。
【0122】
本発明のインクセットには更にブラックインクを含ませてもよく、その場合には他のカラーインクと同様、3年以上の擬似室内光退色後の光退色性が、CIELAB色空間表示系におけるΔEの差が10以内となるようなインクとすることが好ましい。
【0123】
染料系のブラックインクを用いる場合に、該インクに用い得る染料としては、例えば下記一般式(IV)〜(VI)で示されるものの中から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0124】
【化16】
Figure 0004183236
(式中、Wはカルボキシル基を、Xは水素原子、カルボキシル基またはスルホン基を、Yは水素原子、カルボキシル基またはスルホン基を、Zは水素原子、カルボキシル基またはスルホン基を、R1は水素原子、カルボキシル基及びアルコキシル基の少なくとも一方で置換されたアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、または置換もしくは未置換のアルカノイル基を、それぞれ表わす。)
一般式(IV)において、R1が表わすカルボキシルアルキル基は、好ましくはアルキル基がC1-6(炭素数が1〜6、以下同様)のアルキル基、より好ましくはC1-4アルキル基であるカルボキシアルキル基を挙げることができる。
【0125】
【化17】
Figure 0004183236
(式中、Q1は低級アルキルカルボニルアミノ基及び低級アルコキシ基から選択された少なくとも1種により置換されたフェニル基もしくはナフチル基;またはスルホン基で置換されたナフチル基を表わし、Q2はスルホン基で置換されたナフチル基;または低級アルコキシ基で置換されたフェニル基を表わし、R2及びR3はそれぞれ独立して、低級アルキル基、低級アルコキシ基または低級アルキルカルボニル基を表わし、R4は水素原子またはスルホン基で置換されたフェニル基を表わし、nは0または1であり、Mはアルカリ金属または置換されていても良いアンモニウム基を表わす。)
一般式(V)及び(VI)で表わされる染料構造中の低級アルキルカルボニルアミノ基としては、C1-4アルキルカルボニルアミノ基が好ましく、低級アルコキシ基としては、C1-4アルコキシ基が好ましく、また、低級アルキル基としてはC1-4アルキル基が好ましい。
【0126】
上記一般式(V)で示される染料の具体例としては例えば下記構造式23〜27が挙げられる。
【0127】
【化18】
Figure 0004183236
一般式(VI)で示される染料としては例えば下記に示す例示化合物No.28〜32が挙げられる。
【0128】
【化19】
Figure 0004183236
このほかにも,例えばC.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、90、108、146、154、168、195、C.I.フードブラック1、2なども挙げることができる。これらのブラック色染料は単独で、または本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせて用いてもよい。
【0129】
本発明にかかる他のインクセットとして、2種以上のカラーインクとして、同一の色調を有する第1のカラーインクと第2のカラーインクを含み、且つ、該第1のカラーインクの可視光領域内の最大吸収波長に於ける吸光度が、該第2のカラーインクの可視光領域内の最大吸収波長に於ける吸光度よりも大きいものとした上記のインクセットがあげられる。上記2つのカラーインクの内、第2のカラーインクとしては、例えば該第2のカラーインクを用いて記録媒体(例えば葡ハ紙)に100%ベタの印字部を形成したときに、該印字部が、目視可能であるようなものが好ましい。このような第2のカラーインクは、例えば、その可視光領域内の最大吸収波長における吸光度が、該第1のカラーインクの可視光領域内の最大吸収波長における吸光度の1/20以上1未満のものである。より具体的には、先に挙げたような色材を用いる場合には、第1のカラーインクは、インク全質量に対し2質量%を越える量を含ませることが好ましいことから、第2のカラーインクとしては、例えばインク全質量に対して色材濃度が2質量%以下で、上記の条件を満たすことができるように適宜選択された量を含むインクを用いることが好ましい。
【0130】
さらに第2のカラーインクによって得られる画像の耐光性が、第1のカラーインクによって得られる画像の耐光性と同程度か若しくは高いことが好ましい。インクセットにマゼンタインクとして上記第1のカラーインクと上記第2のカラーインクの2種のインクを含む場合、第2のカラーインクに前記一般式(I)で示される色材を唯一の色材として含むものを、シアンインクとして上記第1のカラーインクと上記第2のカラーインクの2種のインクを含む場合は、色材濃度の低いシアンインクにDirect Blue 199を唯一の色材として含むものを用いることが好ましい。
【0131】
更に、本発明にかかる好ましいインクセットとしては、各カラーインクによって得られる各画像の耐光試験後のΔEが20以下、更に好ましくは15以下であるカラーインクによって構成されているものである。
【0132】
(溶剤)
上記したようなカラーインク用の色材を含むインク溶媒または分散媒としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶媒が挙げられる。そして水溶性有機溶媒としては前記ブラックインクにて記載したのと同様なものが挙げられる。また該カラーインクをインクジェット法(例えばバブルジェット法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、前述したように優れたインクジェット吐出特性を有するようにインク所望の粘度、表面張力を有するように調製する事が好ましい。
【0133】
(カラーインクの浸透性)
上記したようなカラーインクに関して、Ka値を例えば5以上のインクとする事は記録媒体上に高品質なカラー画像を形成する事ができ、好ましい。即ちこのようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高い為、例えばイエロー、マゼンタおよびシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合でも隣接する画像間で色のにじみ(ブリーディング)を抑える事ができ、またこれらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも各々のインクの浸透性が高い為、隣接する異なる色の画像との間でブリーディングを有効に抑える事ができる。カラーインクのKa値をこのような値に調製する方法としては、例えば界面活性剤の添加、グリコールエーテル等の浸透性溶剤の添加等の従来公知の方法が適用できる。もちろん添加量は適時選択すれば良い。
【0134】
本発明にかかるカラーインクは、前記したように、ブラックインクと混合されたときにブラックインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる染料を含むものとするか、或いは染料とブラックインクと混合されたときにブラックインクの分散安定性を不安定化させる添加剤とを含むものとすることが好ましい。具体的には先にブラックインクとカラーインクとの反応性に関して言及した(1)及び(2)の態様、或いはi)〜v)の態様のいずれかに基づき、カラーインクを調製し、或いはカラーインクとブラックインクとを、上記した各々のインクに用い得る材料を適宜選択して用いることで調製すればよい。
【0135】
(保湿剤)
また、インクの保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の保湿性固形分もインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は一般にはインクに対して0.1〜20.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。さらに本発明のインクには上記成分以外にも必要に応じて界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0136】
(耐光性試験)
本発明における光退色を評価する手段としては、耐光性試験が用いられ、さらに、この耐光性試験としては、画像の保存される環境を考慮すると、室内で、窓越しの太陽光を想定した条件で行うのがより好ましい。また耐光性試験における照射量としては、長期の保存を考えると、6000 klux・hr以上であるのが好ましい。例えば、照度63 kluxでの100時間の試験を行うことにより、一日あたりの室内での太陽光の照射量を5klux・hrとして3年以上の保存を想定した試験となる。
【0137】
この耐光性試験の条件としては室内窓越し太陽光を想定した条件で行うのが好ましい。より好ましくはISO10977に準拠する室内窓越しの太陽光を想定した各条件で行う。
【0138】
照度については、ISO規格では6kluxであるが、6000 klux・hr以上の試験を行うと、試験時間が長くなってしまう。そこで照度を高くすることによって、試験時間を短くしても、得られる結果に相反性がなければよい。
【0139】
(記録媒体)
また耐光性試験の画像を印字する媒体については、限定されないが、特殊媒体を用いるのが好ましい。特殊媒体とは、吸収性、発色性、解像度を良好なものとするために、例えば、基材上に、無機粒子(アルミナ水和物等)から成る多孔質層や、多孔質粒子層(多孔質粒子とバインダー)、多孔質高分子層(有機粒子と無機粒子の混合層)等を有する記録媒体をさす。光沢紙、コート紙、光沢フィルムと呼ばれるようなものである。
【0140】
(記録ユニット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法)
本発明の画像記録方法に用いることができる記録ユニットは、インク収容部(インクタンク)と、インク収容部から供給されるインクを吐出するインクジェットヘッドとを有して構成され、これらは一体化された状態で接続される。なお、インク収容部とインクジェットヘッド部とは、必要に応じて着脱自在に接続した構成をとることができる。
【0141】
記録ユニットに設けるインク収容部は、少なくとも1色のインクを収納する部分を有し、この少なくとも1色のインクとして多価金属塩含有インクが用いられる。すなわち、多価金属塩含有インクの複数をそれぞれ収納する部分を有する形態や、多価金属塩含有インクの1以上と、多価金属塩含有インクを含有しないインクの1以上とをそれぞれ収納する部分を有する形態等を挙げることができる。この記録ユニットに用いるインクジェットヘッドでは、少なくとも多価金属含有インクを吐出する部分に気泡が外気と連通する吐出方式(以下、略記する場合はBTJ方式と記載する)による構成が採用される。
【0142】
BTJ方式を採用した記録ユニットとしては、例えば、特開平11-188870号公報に記載された以下に説明する構造のインクジェットヘッド部を有するものを好ましいものとして挙げることができる。
【0143】
図1(a)および(b)は、このBTJ方法を適用した記録ユニットの概略構成を示す図であって、図1(a)は外観を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0144】
図1において、符号1は後述の電気熱変換素子の有するヒータ1とこのヒータ1に対向する吐出口4が薄膜技術により形成されたSi素子基板である。この素子基板2には、図1(a)に示すように2列に配列された複数の吐出口4が千鳥状に設けられている。素子基板2はL字状に加工された支持部材102の一部に接着固定されている。同じく支持部材102上には、配線基板104が固定され、この配線基板104の配線部分と素子基板2の配線部分とはワイヤボンディングにより電気的に接続されている。支持部材102は、コスト、加工性等の観点から例えばアルミニウム材で形成される。モールド部材103は、その内部に支持部材102の一部を挿入させ、支持部材102を支持すると共に、その内部に形成された液体供給路107を介して液体貯留部(図示略)から前述の素子基板2に設けられた吐出口に液体(例えば、インク)を供給するための部材である。また、モールド部材103は、本実施形態の液体吐出ヘッド全体を後述の液体吐出装置に着脱自在に固定するための装着、位置決め部材としての役割を果たす。
【0145】
素子基板2の内部には、モールド部材103の液体供給路107を介して供給される液体を、吐出口までさらに供給するための連通路105が素子基板2を貫通して設けられている。この連通路105は、各吐出口に連通する液流路とも連通しており、共通液室としての役割を担っている。
【0146】
図2(a)および(b)は、図1(a)および(b)に示した液体吐出ヘッドの要部を示す図であって、図2(a)は吐出口を側面から視た側断面図であり、図2(b)は図2(a)の上面図である。
【0147】
図2に示すように、素子基板2上の所定位置には、電気熱変換素子の有するヒータ1が設けられている。このヒータ1は、インクとの接触部が矩形の面として形成されている。ヒータ1上には、吐出口形成部材としてのオリフィスプレート3が配設されており、このオリフィスプレート3は上記ヒータ1の対向する位置に矩形状に開口する吐出口4を有している。なお、この例では、吐出口4の開口形状を矩形としたが、これに限らず、円形等の形状であってもよい。また、吐出口4の上部開口面積と下部開口面積とを等しく設定したが、吐出口4の上部開口面積を下部開口面積よりも小さくして吐出口4の側壁をテーパ形状としてもよい。このような構造とすることで、吐出安定性を向上させることが可能である。
【0148】
また、ヒータ1とオリフィスプレート3との間隔は、図2(a)に示すように液流路5の高さTnと等しく、液流路壁6の高さによって規定されている。この液流路5が図2(b)に示すようにx方向に延在されている場合には、液流路5に連通する吐出口4は、x方向と直交するy方向に複数配列されている。複数の液流路5は、図1(b)に示した共通液室としても機能する連通路105に連通している。なお、吐出口4から液流路5までの距離に相当するオリフィスプレート3の厚さをT0とすると、ヒータ1の表面から吐出口4までの距離は、(T0n)で表わすことができる。本実施形態では、例えば、T0=12μm、Tn=13μmである。
【0149】
このような構成のBTJ方式の記録ヘッドは、上記の特開平11-188870号公報などに記載の公知の方法により製造することができる。
【0150】
なお、本実施形態における駆動パルス幅を例えば2.9μsec.とし、駆動電圧を例えば吐出閾値の1.2倍である9.84Vの単パルスとすることができる。また、本実施形態で用いられる液体としてのインクの物性値は、例えば次の通りである。
・粘度:2.2×10-2N/sec.
・表面張力:38×10-3N/m、・密度:1.04g/cm3
【0151】
次に、上述の構成を有する液体吐出ヘッドを用いる液体吐出方法の一実施形態を説明する。
【0152】
図3(a)〜(h)は、液体吐出方法を適用した液体吐出ヘッドの動作を説明するための断面図であり、その切断方向は図2(a)の切断方向と同じである。図3(a)はヒータ上に膜状の気泡が生成した状態を示し、図3(b)は図3(a)の約1μ秒後、図3(c)は図3(a)の約2.5μ秒後、図3(d)は図3(a)の約3μ秒後、図3(e)は図3(a)の約4μ秒後、図3(f)は図3(a)の約4.5μ秒後、図3(g)は図3(a)の約6μ秒後、図3(h)は図3(a)の約9μ秒後の状態をそれぞれ示している。なお、図3(a)〜図3(h)における水平方向にハッチングを施した部分はオリフィスプレートまたは流路壁を示し、短い線分を施した部分は液体を示し、その線分の密度は液体の速度を示している。すなわち、線分の高密度部分は高速度であることを示し、低密度部分は低速度であることを示している。
【0153】
まず、図3(a)に示すように、記録信号等に基づいたヒータ1への通電に伴いヒータ1上の液流路5内に気泡301が生成されると、約2.5μ秒間に図3(b)および図3(c)に示すように急激に体積膨張して成長する。気泡301の最大体積時における高さはオリフィスプレート上面を上回るが、このとき、気泡の圧力は大気圧の数分の1から10数分の1にまで減少している。次に、気泡301の生成から約2.5μ秒後の時点で気泡301は上述のように最大体積から体積減少に転じるが、これとほぼ同時にメニスカス302の形成も始まる。このメニスカス302も図3(d)に示すようにヒータ1側への方向に後退、すなわち落下していく。
【0154】
これまで述べた「落下」または「落とし込み」、「落ち込み」とは、いわゆる重力方向への落下という意味ではなく、ヘッドの取り付け方向によらず、電気熱変換体の方向への移動をいう。以下も同様である。
【0155】
このメニスカス302の落下速度が気泡301の収縮速度よりも速いために、図3(e)に示すように気泡の生成から約4μ秒後の時点で気泡301が吐出口4の下面近傍で大気に連通する。このとき、吐出口4の中心軸近傍の液体(インク)はヒータ1に向かって落ち込んでいく。これは、大気に連通する前の気泡301の負圧によってヒータ1側に引き戻された液体(インク)が、気泡301の大気連通後も慣性でヒータ1面方向の速度を保持しているからである。ヒータ1側に向かって落ち込んでいった液体(インク)は、図3(f)に示すように気泡301の生成から約4.5μ秒後の時点でヒータ1の表面に到達し、図3(g)に示すようにヒータ1の表面を覆うように拡がっていく。このようにヒータ1の表面を覆うように拡がった液体はヒータ1の表面に沿った水平方向のベクトルを有するが、ヒータ1の表面に交差する、例えば垂直方向のベクトルは消滅し、ヒータ1の表面上に留まろうとし、それよりも上側の液体、すなわち吐出方向の速度ベクトルを保つ液体を下方向に引っ張ることになる。その後、ヒータ1の表面に拡がった液体と上側の液体(主滴)との間の液柱303が細くなっていき、気泡301の生成から約9μ秒後の時点でヒータ1の表面の中央で液柱303が切断され、吐出方向の速度ベクトルを保つ主滴とヒータ1の表面上に拡がった液体とに分離される。このように分離の位置は液流路内部、より好ましくは吐出口よりも電気熱変換体側が望ましい。主滴は吐出方向に偏りがなく、吐出ヨレすることなく、吐出口4の中央部分から吐出され、記録媒体の被記録面の所定位置に着弾される。また、ヒータ1の表面上に拡がった液体は、従来であれば主滴の後続としてサテライト滴となって飛翔するものであるが、ヒータ1の表面上に留まり、吐出されない。このようにサテライト滴の吐出を抑制することができるため、サテライト滴の吐出により発生し易いスプラッシュを防止することができ、霧状に浮遊するミストにより記録媒体の被記録面が汚れるのを確実に防止することができる。
【0156】
このように多価金属を含有するインクにBTJ方式のヘッドを用いることにより、上記したように被記録面が汚れるのを防ぐだけでなく、多価金属インクが霧状に浮遊したミストがブラックインクの記録ヘッドの吐出口近傍に付着し、その影響で、ブラックインクが固着したり、ブラックインクの印字が乱れる等の問題を防止することができる。
【0157】
更に多価金属含有するカラーインクを限定し(例えば、シアンインクのみ多価金属を含有する。)、画像処理等によりブリードを低減させる記録システムに用いる場合、より効果的に上記問題を防止することができる。
【0158】
また、本例における主滴の吐出体積は9×10153程度であり、その吐出速度は16m/sec程度であり、リフィル周波数は11kHz程度とされるが、これらに限定されない。
【0159】
更に、ブラックインクと、カラーインク、例えば、シアン、マゼンタ及びイエローの3色とを組み合わせて用いる場合には、カラーインクの少なくとも1色、好ましくは全色に多価金属含有インクを用いるとともに、ブラックインクとカラーインクとで吐出方式を異ならせることが好ましい。特に、多価金属塩を含有するカラーインクに対してBTJ方式が用いられるのに対して、ブラックインクに気泡が外気と連通しない吐出方式(以下BJ方式)を適用するのが更に好ましい。
【0160】
このような2つの異なる吐出方式を画像記録装置中に組み込む方法としては、例えば、異なる吐出方式の記録ユニットの複数を組み合わせて用いる方法、1つの記録ユニット中に異なる吐出方式により駆動される吐出口を配置した構成の記録ユニットを用いる方法、これらの記録ユニットを組み合わせて用いる方法、などを挙げることができる。
【0161】
1つの記録ユニット中に異なる吐出方式により駆動される吐出口を配置した構成は、画像記録装置の構成をより簡易化するという点などから好適な構成である。この構成に好適なインクジェットヘッドとしては、電気熱変換素子のヒータ面(インクと直接接触し、インクを加熱する面)を有する底部と、吐出口形成部材からなる天井部との間に液流路が形成されており、ヒータ面の面方向に対して交差する方向、例えば直行する方向にヒータ面と対向する位置に設けられた吐出口からインクが吐出する構造のものがより好ましい。このような構造のインクジェットヘッドは、例えば以下の基準(1)〜(3)の少なくとも1つに基づいて設計されることが好ましい。
【0162】
(1)ブラックインクが供給されるヒータ面と吐出口との距離OHBk(図2に示すT0+Tn)が100μm以下である。
【0163】
(1)ブラックインクの吐出速度をVBk、吐出量をVdBkとし、カラーインク、特に多価金属塩含有インクの吐出速度をVCl、吐出量をVdClとしたときに、VCl>VBk≧8m/sec かつ VdBk>VdClを満たす。
【0164】
(2)ブラックインクが供給されるヒータ面から吐出口までの距離OHBk、ヒータ面と吐出口形成部材の距離をhBK(図2に示すTn)、カラーインク、特に多価金属塩含有インクが供給されるヒータ面から吐出口までの距離
hBK>hCl、かつOHCl、ヒータ面と吐出口形成部材の距離をhClとしたときに、
OHBk>OHCl
を満たす。
【0165】
このようなBJ方式とBTJ方式の2つの方式からなる吐出部を有する記録ユニットの構造の好ましい一例を図4〜9に示す。
【0166】
この記録ユニットは、インクジェットヘッドと、インク収容部としてのインクタンクとが着脱自在に接合された構成を有する。インクタンクとしては、ブラック、マゼンタ、イエロー及びシアンの4色のインクをそれぞれ収納する4つのインクタンクが設けられている。これらのインクタンクは、インクジェットヘッドに対してシールゴムH1800側に着脱自在にセットされていることで、それぞれのインクタンクが交換可能となっており、これにより、印刷や記録に用いた場合のランニングコストの低減が達成できる。
【0167】
以下、各構成要素について更に詳細に説明する。
【0168】
(インクジェットヘッド部)
インクジェットヘッド部(記録ヘッド)H1001は、図5の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003とタンクホルダーH2000から構成されている。更に、記録素子ユニットH1002は、第1の記録素子基板H1100、第2の記録素子基板1101、第1のプレート(第1の支持部材)H1200、電気配線テープ(可撓性の、すなわちフレキシブルな配線基板)H1300、電気コンタクト基板H2200、第2のプレート(第2の支持部材)H1400で構成されており、また、インク供給ユニットH1003は、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントシール部材(ゴム)H2300、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されている。
【0169】
(記録素子ユニット)
図6は、第1の記録素子基板H1100の構成を説明するために一部を分解した斜視図である。第1の記録素子基板H1100は、厚さ0.5〜1mmのSi基板H1110の片面に、インクを吐出するための複数の電気熱変換素子H1103と、各電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の電気配線が成膜技術により形成されている。そして、この電気熱変換素子H1103に対応する複数のインク流路(液流路)と複数の吐出口1107とがフォトリソグラフィ技術により形成されるとともに、複数の液流路にインクを供給するためのインク供給口H1102が反対側の面(裏面)に開口するように形成されている。
【0170】
また、記録素子基板H1100は、図4に示す第1のプレートH1200に接着され固定されており、インク供給口H1102は第1のプレートH1200側のインク連通口1201と接続される。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着され固定されており、この第2のプレートH1400を介して、電気配線テープH1300が記録素子基板H1100に対して電気的に接続されるように保持されている。この電気配線テープH1300は、第1の記録素子基板H1100にインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、記録素子基板H1100に対応する電気配線と、この電気配線部に位置しプリンタ本体からの電気信号を受け取る外部信号入力端子H1301とを有し、この外部信号入力端子H1301は、インク供給部材H1500の背面側に位置決めされ固定されている。
【0171】
インク供給口H1102は、Si基板1110が、ウエハー面方向に<100>、厚さ方向に<111>の結晶方位を持つ場合、アルカリ系のエッチング剤(KOH、TMAH、ヒドラジン等)による異方性エッチングによって約54.7度の角度でエッチングを進行させ、所望の深さにエッチングを行い、長溝状の貫通口からなるインク供給口H1102を形成することができる。インク供給口H1102を挟んで両側に電気熱変換素子H1103がそれぞれ一列ずつ千鳥状に配列されている。電気熱変換素子H1103と、電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されている。さらに、電気配線に電力を供給するための電極H1104が電気熱変換素子H1103の両外側に配列されており、電極H1104にはAu等のバンプH1105が熱超音波圧着法で形成されている。そして、Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に対応したインク流路を形成するための流路壁H1106と吐出口H1107が樹脂材料でフォトリソグラフィ技術により形成され、吐出口群H1108が形成されている。電気熱変換素子H1103に対向して吐出口1107が設けられているため、インク供給口H1102から供給されたインクは電気熱変換素子H1103の発熱による加熱によって発生した気泡により吐出口H1107から吐出される。
【0172】
また、図7は、第2の記録素子基板H1101の構成を説明するために一部を分解した斜視図である。第2の記録素子基板H1101は3色のインクを吐出させるための記録素子基板であり、3個のインク供給口1102が並列して形成されており、それぞれのインク供給口H1102を挟んだ両側に電気熱変換素子H1103とインク吐出口1107が形成されている。第1の記録素子基板H1100と同じようにSi基板H1110にインク供給口H1102や電気熱変換素子H1103、電気配線(不図示)、電極H1104などが形成されており、その上に樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりインク流路やインク吐出口H1107が形成されている。そして、第1の記録素子基板H1100と同様に電気配線に電力を供給するための電極H1104にはAu等のバンプH1105が形成されている。
【0173】
次に、第1のプレートH1200は、例えば、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al23)で形成されている。なお、第1のプレートH1200の材料はアルミナに限定されることなく、第1の記録素子基板H1100の材料の熱膨張率と同等以上の熱伝導率を有する材料から構成することができる。この第1のプレートH1200を構成する材料としては、例えば、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のうちいずれであってもよい。第1のプレートH1200には第1の記録素子基板H1100にブラックインクを供給するためのインク連通口H1201と、第2の記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ及びイエローのインクを供給するためのインク連通口H1201が形成されており、記録素子基板のインク供給口H1102が第1のプレート1200のインク連通口H1201にそれぞれ対応し、かつ、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101はそれぞれ第1のプレートH1200に対して位置精度良く接着固定されている。
【0174】
電気配線テープH1300は、図8に示すように、第1の記録素子基板H1100、第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400と接続されるもので、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加するためのものである。
【0175】
この電気配線テープH1300は、ボンディング部周辺が3層構造になっており、表側にポリイミドのベースフィルムH1300a、中間に銅箔H1300b、裏側にソルダーレジストH1300cが配置されている。電気配線テープH1300には、更に、それぞれの記録素子基板H1100、H1101を組み込むための複数のデバイスホール(開口部)H1、H2と、それぞれの記録素子基板H1100、H1101の電極H1104に対応する電極端子H1302と、この電気配線テープH1300の端部に位置し、プリンタ本体装置からの電気信号を受け取るための外部入力端子H1301(図5参照)を有する電気コンタクト基板H2200と電気的接続をおこなうための電極端子部を有しており、この電極端子部と電極リードH1302とは連続した銅箔の配線パターンでつながっている。この電極配線テープH1300は、例えば、配線が2層構造をなし表層がレジストフィルムによって覆われているフレキシブル配線基板からなる。この場合、外部入力端子H1301の裏面側(外面側)には、補強板が接着され、平面性の向上が図られている。補強板としては、例えば0.5〜2mmのガラスエポキシ、アルミニウム等の耐熱性を有する材料が使用される。
【0176】
電気配線テープH1300と第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101は、それぞれ電気的に接続されており、接続方法は、例えば、記録素子基板の電極H1104上のバンプH1005と、電気配線テープH1300の電極リードH1302とが、熱超音波圧着法により電気接合される。
【0177】
第2のプレートH1400は、例えば、厚さ0.5〜1mmの一枚の板状部材であり、例えばアルミナ等のセラミックや、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で形成されている。第2のプレートH1400の材料は、これらに限定されるものではなく、記録素子基板H1100、H1101および第1のプレートH1200と同等の線膨張率を有し、かつ、熱伝導率と同等以上の熱伝導率を有する材料で、第2のプレートH1400に必要な物性を達成できる種々の材料を用いることができる。
【0178】
第2のプレートH1400は、第1のプレートH1200に接着固定された第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板1101の外径寸法よりも大きな開口部をそれぞれ有する形状である。また、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300を平面的に電気接続できるように、第1のプレートH1200に第2の接着層H1203により接着されており、電気配線テープH1300の裏面が第3の接着層H1306により接着固定される。
【0179】
第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板1101と電気配線テープH1300の電気接続部分は、第1の封止剤および第2の封止剤により封止され、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護している。第1の封止剤は、主に電気配線テープの電極端子H1302と記録素子基板のバンプH1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止し、第2の封止剤は前記接続部の表側を封止している。
【0180】
さらに、電気配線テープH1300のは端部にプリンタ本体装置からの電気信号を受け取りための外部信号入力端子1301を有する電気コンタクト基板H2200が、異方性導電フィルム等を用いて熱圧着されている。
【0181】
そして、電気配線テープ1300は、第2のプレートH1400に接着されると同時に、第1のプレートH1200および第2のプレートH1400一側面に沿って折り曲げられ第1のプレートH1200の側面に第3の接着層H1306により接着される。第2の接着剤は、粘度が低く、接着面に薄い第2の接着層H1203を形成し得るとともに、耐インク性を有するものが好ましい。また、第3の接着層H1300は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした厚さ100μm以下の熱硬化接着剤層である。
【0182】
(インク供給ユニット)
インク供給部材H1500は、例えば、樹脂成形によって形成することができる。インク供給部材H1500を構成し得る樹脂材料としては、形状を維持するために必要な剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜50質量%配合した強化樹脂材料を使用することが好ましい。
【0183】
図4及び図5に示すように、インクタンクを着脱自在に保持するインク供給部材H1500は、インクタンクから記録素子ユニットH1002にインクを導くためのインク供給ユニットH1003の一構成部品であり、流路形成部材H1600が超音波溶着されて、インクタンクから第1のプレートH1200に至る液流路H1501が形成される。また、インクタンクと係合するジョイント部には、外部からゴミの侵入を防ぐためのフィルターH1700が溶着により接合されており、さらに、ジョイント部からのインクの発熱を防止するためにシールゴムH1800が装着されている。
【0184】
また、記録ユニットを画像記録装置であるインクジェット記録装置のキャリッジの装着位置に案内するための装着ガイドH1601、記録ユニットをヘッドセットレバーにより、キャリッジに装着固定するための係合部、キャリッジの所定装着位置に位置決めするためのX方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部H1509、Y方向(記録媒体搬送方向)の突き当て部H1510、Z方向(インク吐出方向)の突き当て部H1511を備えている。また、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200を位置決め固定する端子固定部H1512を有し、端子固定部H1512およびその周囲には複数のリブが設けられ、端子固定部H1512を有する面の剛性を高めている。
【0185】
(記録素子ユニットとインク供給ユニットとの結合)
先に、図5に示したとおり、記録ヘッド部は、記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合し、さらにタンクホルダーH2000と結合することにより完成する。この結合は次のような操作によって行うことができる。
【0186】
記録素子ユニットH1002のインク連通口(第1のプレートH1200のインク連通口H1201)とインク供給ユニットH1003のインク連通口(流路形成部材H1600のインク連通口1602)とを、インクがリークしないように連通させるため、ジョイントシール部材H2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。この際、同時に、記録素子ユニットH1002はインク供給ユニットのX方向、Y方向、Z方向に基準位置に対して正確に位置決め固定される。
【0187】
そして、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給部材1500の一側面に、端子位置決めピン(2ヶ所)と端子位置決め穴(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法としては、例えば、インク供給部材H1500に設けられた端子位置決めピンをかしめることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定してもよい。
【0188】
さらに、インク供給部材H1500のタンクホルダーとの結合穴および結合部をタンクホルダーH2000に嵌合させ結合させることにより、記録ヘッドH1001が完成する。すなわち、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、記録素子基板H1100、第2のプレートH1400から構成される記録素子部とを接着等で結合することにより、記録ヘッドが構成されている。
【0189】
(記録ユニット)
各インクタンクの内部には、対応する色のインクが収納されている。また、それぞれのインクタンクには、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド部に供給するためのインク連通口が形成されている。例えば、インクタンクが記録ヘッドに装着されると、インクタンクのインク連通口が記録ヘッドのジョイント部に設けられたフィルターH1700と圧接され、インクタンク内のインクがインク連通口からインクジェットヘッドの液流路H1501を介して第1のプレートH1200を通り第1の記録素子基板H1100に供給される。
【0190】
インクは記録ヘッドの電気熱変換素子H1103と吐出口1107のある液流路内に供給され、電気熱変換素子H1103に与えられる熱エネルギーによって、記録用紙などの記録媒体に向けて吐出される。
【0191】
この記録ユニットにおいては、シアン、マゼンタ及びイエローのカラーインクに多価金属塩含有インクを用い、これらのインクをBTJ方式を適用した吐出部から吐出させる一方で、ブラックインクについてはBJ方式を適用した吐出部から吐出させる。そして、これらの異なる吐出方式を適用した部分を同一の電気コンタクト基板H2200上に形成することで、これらの高精度での位置合わせを、フォトリソグラフィーを用いた工程を含む方法により容易に達成可能となる。
【0192】
図9にこれらの吐出方式を適用した吐出口からのインク吐出工程を模式的に示す。BJ方式の吐出部では、吐出口と電気熱変換素子H1103のヒータ面との間距離(OH)が比較的長く、電気熱変換素子H1103の発熱によるインクの加熱によって生じるインク内で生じた気泡Aは、それが消失するまでインクI内に封じ込められた状態で存在する。これに対して、BTJ方式の場合、OHが比較的短いため、インク内に発生した気泡Aは吐出口を介して外気と連通する。
【0193】
これらの各方式による吐出部は、OH、吐出面積、ヒータサイズ等を先に挙げた基準に基づくことで設計されている。
【0194】
更に、BTJ方式による吐出部は、OHが比較的短いために、吐出口の開口部の内面積である吐出面積S0とOHの積(S0×OH)が吐出量Vdと実質的に等しい。例えば、吐出量Vd=約5plとする場合、OH=25μm、吐出面積S0=200μm2(直径φ=約16μm)とすればよい。
【0195】
一方、この例では、第1の記録素子基板H1100は、ブラックインクの印字が美しく見え、かつ印字速度を高速にするために、インク吐出量Vdを約30plにしている。BTJ方式によりこの吐出量を達成するためにはOH=約25μmのとき、吐出面積S0=1200μm2(直径φ=約39μm)とする必要がある。このような構成にする場合、所望の吐出量を達成するためには、通常は、35μm×35μm程度の大型のヒータ面が必要となる。また、吐出口がヒータ面よりも大きくなるので、吐出したインクの直進性が損なわれる場合が生じる。この場合、OHを大きくすれば、S0を小さくしても必要とされる吐出量を達成することができるが、流路抵抗が大きくなるため、更に大きな電気熱変換素子が必要となる。そこで、この例では、大きな吐出量が要求される機会の多いブラックインクについてはBJ方式を採用し、その吐出部には、例えば、OH=70〜80μm、S0=600〜800μm2となる構造を採用している。
【0196】
ここで、顔料インク(ブラックインク)を用いインクジェット記録を行った場合、ヒーター上にコゲが蓄積し、吐出量や吐出速度の低下による画像の乱れを生じる場合がある。
【0197】
このように染料インクと比較し、ヒーター上のコゲが蓄積しやすい顔料インクを用いた場合においては、用いる記録ヘッドとして、BJ方式のものが好ましい。
【0198】
これは、BJ方式の吐出部を用いることで、キャビテーションの作用により、ヒーター上のコゲ蓄積による吐出量や吐出速度の低下を格段に低減することができるためであり、これにより、BTJ方式の吐出部と、信頼性や耐久性、画像品位のバランスをとることができる。
【0199】
なお、上記のようにブラックインクとカラーインクとで吐出方式を異ならせることで、ブラックインクの吐出口面積をカラーインクの吐出口面性よりも大きくしてブラックインクの吐出量を効果的に増大させることができる。
【0200】
更に、BTJ方式による吐出では、キャビテーションの発生がほとんどないか、極めて少なく、インクが多価金属塩を含有していても、ヒータ面へのダメージが効果的に低減され、インクジェットヘッドの耐久安定性を向上させることができる。例えば、キャビテーションの大きな吐出方式で多価金属塩含有インクを吐出させる場合、インクと接するヒータ面の保護層を、多価金属塩の存在下においても耐キャビテーション性を維持できる材料から構成する必要が生じる。これに対して、BTJ方式により多価金属塩含有インクの吐出を行うことで、多価金属塩の存在下での耐キャビテーション性の確保のための要件を緩和することができ、ヒータ面の保護層の構成の選択幅を拡大することができる。
【0201】
<画像記録装置>
図10に画像記録装置(プリンタ)の一例を示す。この装置には、図4に示した記録ユニットH1000がキャリッジ12に位置決めして交換可能に搭載されており、キャリッジ12には、記録ユニットH1000上の外部信号入力端子を介して各吐出部に駆動信号等を伝達するための電気接続部が設けられている。
【0202】
キャリッジ12は、主操作方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト13に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ12は主走査モータ104によりモータプーリ15、従動プーリ16およびタイミングベルト17等の駆動機構を介して駆動されるとともに、その位置および移動が制御される。また、ホームポジションセンサ130が、キャリッジ12に設けられている。これにより、遮蔽板136の位置をキャリッジ12上のホームポジションセンサ130が通過した際に位置を知ることが可能となる。
【0203】
記録用紙やプラスチック薄板等の記録媒体18は給紙モータ135からギアを介してピックアップローラ131を回転させることによりオートシートフィーダ(ASF)132から一枚ずつ分離給紙される。更に、搬送ローラ19の回転により、記録ユニットH1000の吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)される。搬送ローラ19による搬送は、LFモータ134の回転によりギアを介して行われる。その際、給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、記録媒体の端部を検知するセンサ133を記録媒体18が通過した時点で行われる。さらに、記録媒体18の後端が実際にどこに有り、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出すためにもセンサ133は使用されている。
【0204】
記録媒体18は、プリント部において平坦なプリント面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持されている。この場合、キャリッジ12に搭載された記録ユニットH1000は、それらの吐出口面がキャリッジ12から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間で記録媒体18と平行になるように保持されている。
【0205】
記録ユニットH1000は、各吐出部における吐出口の並び方向が、上述したキャリッジ12の走査方向に対して交差する方向になるようにキャリッジ12に搭載され、これらの吐出口列から液体を吐出して記録を行う。
【0206】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、以下の記載で、部、%とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0207】
(1)記録ユニット及び画像記録装置
図4に示す構成の記録ユニットを作製した。なお、第1及び第2の記録素子基板ともほぼ同じ厚みのSiウエハー(厚み約625μm)を用いた。また、吐出口形成部材を構成する樹脂は第1の記録素子基板及び第2の記録素子基板ともに同じ材料を用いた。そして、それぞれの塗布用溶液の溶媒、粘度を変えて異なるOHを実現した。すいなわち、カラーインク用の第2の記録素子基板における吐出口形成部材は、エポキシ樹脂60%にMIBK(メチルイソブチルケトン)、ジグライム等の溶媒を混ぜ、粘度を約60mPa・s程度にし、1回スピンコートすることで、約25μmのOHを実現した。また、ブラックインク用の第1の記録素子基板については、エポキシ樹脂分約60%にキシレン等を溶媒とし、粘度を約120mPa・s程度とし、3回重ねてスピンコートすることで、約75μmのOHを実現した。
【0208】
スピンコート後は、常法により吐出口形成部材のパターニング、インク流路の形成、吐出口の形成等を行った。
【0209】
このように、第1の記録素子基板及び第2の記録素子基板は、吐出口形成部材を作製するための塗布溶液や塗布回数、具体的なパターンなどは異なるものの、スピンナー、露光現像装置などは操作条件を変えるだけで同じものが利用でき、工程としてはそれぞれ専用のものを用いる必要はなく、異なるOHの記録素子基板を同一工程で作製することが可能である。
【0210】
更に、これらの記録素子基板について同じSi基板を用いることで、同一Si基板上に第1及び第2の記録素子基板を形成し、更に、電気接点用パッドの上に各バンプを形成してから、各記録素子基板を分割して、これらの記録素子基板を得ることもできた。
【0211】
また、記録ヘッドの作製においては、第2のプレートは事前に第1のプレート上に接着剤により貼り付けた。そして、この第2のプレートの第1の記録素子基板が貼り付けられるべきところに、エポキシ系紫外線(UV)/熱硬化型接着剤を塗布し、貼り付け装置に取り付けられたカメラにより、第1の記録素子基板に設けられたアライメントマークを画像処理し、位置決め、貼り付けた。そのとき、接着剤は第1の記録素子基板よりはみ出すように塗布しておき、貼り付け後、貼り付け装置で第1の記録素子基板を押さえながら、UV光を照射し、接着剤を仮硬化させ、貼り付けた第1の記録素子基板が動かなくなるようにした。次に、第2の記録素子基板を同様の方法で第1のプレートに貼り付け、仮硬化を行った。この時、第1及び第2の記録素子基板は基本的に基板の厚み(吐出口形成部材を除く)が同じなので、アライメントのカメラの一部は、共通で使用することが可能である。その後、オーブンに入れ、熱で接着剤を硬化させた。次に、第1及び第2の記録素子基板、第2のプレートが貼り付けられた第1のプレート上にある第2のプレート上に、第1及び第2の記録素子基板の電気接点部との位置決め(上記の画像処理を用いた位置決め)を行い、電気配線テープを接着剤を用いて貼り付け、各記録素子基板に設けられたバンプと電気配線テープに設けられた電極リードを熱超音波法により電気接合した。この場合、第2のプレートは、厚みが同じ第1及び第2の記録素子基板のバンプと電気配線テープの電極リードが適当な位置にくるような厚みとなっている。
【0212】
インクタンクに所定のインクセットを収容させて記録ヘッドと接続することで記録ユニットを作製し、図10に示す画像記録装置(プリンタ)のキャリッジ上に装着した。
【0213】
本実施例における記録ユニットにおけるインク吐出時の電熱変換素素子の駆動電圧は、ブラックインク及びカラーインク用共に19(V)とした。また、ブラックインク用のヒーター面は矩形とし、そのサイズは37μm□であり、吐出口は、インクの流れ方向に直行する断面が丸型で直径(φ)は25μmとした。一方、カラーインク用のヒーター面の形状は矩形とし、そのサイズは26μm□であり、吐出口は、インクの流れ方向に直行する断面が丸型で直径(φ)は16μmとした。
【0214】
また、駆動パルス幅は、シングルパルス相当で、ブラックインク用が約1.4〜3μs程度であり、カラーインク用が約6.0〜11μs程度とした。このパルス幅はヒータボードの成膜の状態や、ヒータの駆動本数によりそれぞれ適正な値が、プリンタ内に記憶されたパルステーブルから引き出され使用されようにした。なお、このテーブル値を引き出すためには、製造工程中で、それぞれの記録素子基板の抵抗値や、吐出させるぎりぎりのパルス幅等を測定し、記録ヘッドに装着したROMに書き込み、プリンタ側で読み出してもよい。また、プリンタ上で記録ヘッドのヒータ抵抗値等を読み取り、適正なパルスを与えるなどしてもよい。
【0215】
一般に、パルス幅と吐出速度とはパルス幅が短くなるにつれて吐出速度が下がってくる。従って、本実施例においては、吐出の特性を合わせる為に、ダブルパルスを採用した。以下にその数点例を挙げる。この時、ダブルパルスは、プレパルス-休み時間-メインパルスの関係で表記する。単位は全てμsである。
【0216】
【表1】
Figure 0004183236
上記のパルス幅は一例であり、これらに限定されない。
【0217】
一方、本実施例における記録ヘッドでは、電気熱変換素子の配置密度は、ブラックインク用で片側300dpi(両側で600dpi)、カラーインク用で片側600dpi(両側で1200dpi)と異なっている。これは、ブラックインク、カラーインクとも吐出量がそれぞれ約30pl、約5plと異なるものの、どちらも同時に最速(1パス)で印字可能なようにするためである。
【0218】
また、ブラックインクとカラーインクとでインクの吐出量が大きく異なるが、ブラックインクは記録媒体上であまり広がらないような組成にし、カラーインクは記録媒体上で広がる(滲み率が比較的大きい)組成にして用いた。本実施例で用いたブラックインク、カラーインクの物性値は、以下のとおりである。
ブラックインク: 粘度:約2Pa・s、表面張力:約40N/m
カラーインク: 粘度:約2Pa・s、表面張力:約30N/m。
【0219】
(2)インクセットの調製
(2-1)顔料分散体の調製
はじめに顔料分散体1の調製を行った。
【0220】
・顔料分散体1
比表面積が 230m2/gでDBP吸油量が70mL/100gのカーボンブラック10gとp-アミノ-N-安息香酸 3.41gを水72gに良く混合した後、これに硝酸 1.62gを滴下して、70℃で攪拌した。ここに更に数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0221】
【化20】
Figure 0004183236
(2-2)インクセットの調製
次に上記の各顔料分散体を用いてブラックインク1、および比較例であるブラックインク2を下記の方法にて調整した。
【0222】
(ブラックインク1)
・顔料分散体1:30部
・安息香酸アンモニウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:残部
(合計100部、以下同様である。)
(ブラックインク2)
・顔料分散体1:30部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:残部。
【0223】
カラーインクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
【0224】
(イエローインク1)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・2-ピロリドン:6部
・CIアシッドイエロー23:3部
・水:残部。
【0225】
(マゼンタインク1)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・2-ピロリドン:6部
・CIアシッドレッド52:3部
・水:残部。
【0226】
(シアンインク1)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・2-ピロリドン:6部
・CIアシッドブルー9:3部
・水:残部。
【0227】
さらに、上記の各々のカラーインクに、ブラック顔料の沈殿材である、2価金属塩を加えたものを以下のカラーインクとして調整した。
【0228】
(イエローインク2)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・2-ピロリドン:6部
・CIアシッドイエロー23:3部
・硝酸カルシウム塩:2部
・水: 残部
(マゼンタインク2)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・2-ピロリドン:6部
・CIアシッドレッド52:3部
・硝酸マグネシウム塩:2部
・水:残部
(シアンインク2)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・2-ピロリドン:6部
・CIアシッドブルー9:3部
・硝酸マグネシウム塩:2部
・水:残部。
【0229】
上記で調整したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。
【0230】
【表2】
Figure 0004183236
下記表2に実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のインクセットの主たる構成を示す。
【0231】
【表3】
Figure 0004183236
(2-3)評価
上記の実施例1〜3及び比較例のインクを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。プリンタとしては、先に(1)で説明した図1に示した構成の記録ユニットを装着したものを用いた。
【0232】
このプリンタを用いて、上記実施例および比較例のインクセットでのブリード、白モヤおよびカラーインクとブラックインクとの重畳によって形成したブラック画像領域とブラックインク単独で形成したブラック画像領域との間の濃度差について以下の方法および基準で評価を行なった。
【0233】
尚、例えば、「Bk:100%duty,Col:15%duty」の処理とは、画像面積の100%の領域にブラックインクを付与し、その画像面積の15%の領域にはカラーインクも付与することを意味する。また、15%の領域にカラーインクを付与する場合、実施例1、3、比較例はC、M、Yをそれぞれ5%ずつ付与し、実施例2はCのみを15%付与する。
【0234】
(ブリードおよび白モヤ)
印字パターンとしては図16のようなカラーとブラックの画像領域が隣接するものを印字し、境界部のブリードとブラック領域の白モヤの評価を目視で行った。
【0235】
この際、ブラックの画像領域はBk:100%duty,Col:15%dutyとなるように処理を行った。
【0236】
・ブリードについての評価基準
A: 境界部のにじみがない。
B:境界部にややにじみが目立つ。
C:境界部のにじみがかなり目立つ。
【0237】
・白モヤについての評価基準
A:白モヤがない。
B:白モヤはやや目立つ。
C:全体的に白モヤが目立つ。
【0238】
(ブラック画像領域の濃度差)
図17のように▲1▼Bk:100%duty、▲2▼Bk:100%duty,Col:5%duty、▲3▼Bk:100%duty,Col:15%dutyの3種類のブラックベタ画像領域が隣接する画像パターンを形成し、画像間の濃度差や均一感の評価を目視で行った。
【0239】
・濃度差についての評価基準
A:ブラックベタの境界が目立たず、均一感がある。
B:ブラックベタの境界は目立たないが、均一感がない。
C:ブラックベタの境界が目立つ。
【0240】
評価結果を表4に示す。
【0241】
【表4】
Figure 0004183236
以上より、本願発明にかかるインクセットを用いて画像を形成した場合、ブリードおよび白モヤが防止できるだけでなく、ブラックインク単独で形成したブラック画像と、ブラックインクおよびカラーインクとの重畳によって形成したブラック画像との間で視覚的に濃度差のない、均一感のある画像が得られることが確認された。
【0242】
(3)インクセットの調製
(3-1)各インクの調製
以下の組成を用いて各インクを調製した。
【0243】
(イエローインク3;Y3)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・エチレン尿素:6部
・2-ピロリドン:6部
・エタノール:5部
・C.I.ダイレクトイエロー132:3部
・硝酸マグネシウム塩:2部
・水:残部。
【0244】
(マゼンタインク3;M3)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・エチレン尿素:6部
・2-ピロリドン:6部
・エタノール:5部
・例示化合物7:3部
・例示化合物8:1部
・C.I.アシッドレッド289:0.1部
・硝酸マグネシウム塩:3部
・水:残部。
【0245】
(シアンインク3;C3)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・エチレン尿素:6部
・2-ピロリドン:6部
・エタノール:5部
・C.I.ダイレクトブルー199:3.5部
・C.I.アシッドブルー9:0.3部
・硝酸マグネシウム塩:3部
・水:残部。
【0246】
(シアンインク4;C4)
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1.0部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・エチレン尿素:6部
・2-ピロリドン:6部
・エタノール:5部
・C.I.ダイレクトブルー199:1.5部
・硝酸マグネシウム塩:3部
・水:残部。
【0247】
(3-2)吸光度
C3とC4において、可視光領域内の最大吸収波長に於ける吸光度を測定した。その結果、C3の最大吸収波長は621.5nmであり、吸光度は1.10となった。C4の最大吸収波長は615.5nmであり、吸光度は0.38となり、C3とC4は、ほぼ同一の色調を有するものであった。また、C4とC3の吸光度比はC4/C3≒0.347≧1/20であった。
【0248】
(3-3)反射濃度残存率(ΔE)
プリンタにY3、M3、C3、C4のインクを充填して、光沢紙(PR-101;キヤノン製)に各色の反射濃度1.0のベタ部を印字した後、印字物を24時間自然乾燥させ、ガラスカバーをした上からキセノンフェードメーターCi3000(アトラス社製)にて耐光性試験を行った。照度は63 klux、照射時間は100時間とした。
【0249】
その他のランプ、フィルター、槽内温度、湿度はすべてISO10977室内窓越し太陽光の条件に準拠した(槽内温度25℃、相対湿度 55%)。照度については、ISO規格では6kluxであるが、6000 klux・hr以上の試験を行うと、試験時間が長くなってしまうため、63 klux、100hrで行い、同じ照射量の時に相反性がないことを確認した。試験前後での印字物のベタ部の反射濃度、カラー座標L*、a*、b*を反射濃度計X-Rite 938(商品名:X-Rite社製)で測定し、反射濃度残存率と、光退色性ΔEを前出の式1に従って算出した。
【0250】
その結果を下記表5に示す。
【0251】
【表5】
Figure 0004183236
(3-4)カラーバランス
プリンターに所定の下記表6に示した組合せの各インクセットを用意し、各インクセットごとにインクを先に(1)で説明した構成のプリンタのインク収容部にそれぞれ充填し、光沢紙(PR-101;キヤノン製)に、充填した各インクを用いてフルカラーの画像を印字した。
【0252】
【表6】
Figure 0004183236
印字後24時間自然乾燥させ、上記耐光性試験と同様の耐光性試験を行った。試験後の印字物のカラーバランスを目視にて評価した。その結果、いずれの組合せもカラーバランスに問題はなかった。
【0253】
【発明の効果】
本発明によれば、カラーインクとブラックインクとを組み合わせて用いる場合において、カラーインクとの共存下でブラックインクによる黒色画像・文字が高い光学濃度、画像品位、画像堅牢性等の種々の性能を満たし、かつブリード、白モヤの防止、インクの消費量の節約を可能にするインクセットに好適な構成を有する記録ユニット及び画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)および(b)は、本発明の液体吐出方法を適用し得る液体吐出ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は外観を示す斜視図であり、(b)は(a)のA-A線に沿う断面図である。
【図2】 (a)および(b)は、図1(a)および(b)に示した液体吐出ヘッドの要部を示す図であって、図2(a)は吐出口を側面から視た側断面図であり、図2(b)は図2(a)の上面図である。
【図3】 (a)〜(h)は、本発明の液体吐出方法の一実施形態を適用した液体吐出ヘッドの動作を説明するための断面図である。
【図4】本発明にかかる記録ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す記録ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図6】記録素子基板の構成を示す一部切欠き説明斜視図である。
【図7】記録素子基板の構成を示す一部切欠き説明斜視図である。
【図8】記録素子ユニットの要部分解模式断面図である。
【図9】異なる吐出方式を説明するための吐出口を含む部分の断面図である。
【図10】プリンタの一例を示す説明図である。
【図11】ブラックインク及びカラーインクのセットを用いたときに、往復ムラが極めて有効に解消できるメカニズムを説明する図である。(a)〜(c)は、被記録材に対して浸透し難いブラックインクを付与した後に浸透しやすいカラーインクを付与したときの被記録材へのインクの定着工程を示す。(d)〜(f)は、被記録材に対して浸透しやすいカラーインクを付与した後に浸透し難いブラックインクを付与したときの被記録材へのインクの定着工程を示す。
【図12】塩を含む顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図13】塩を含まない顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図14】図11(C)、図12(C)および図13(C)、(f)の光学濃度の関係図である。
【図15】インク中の塩の有無、インク中の顔料濃度と光学濃度との関係を示すグラフである。
【図16】ブリード及び白モヤの評価実験に使用する印字パターンを示す図である。
【図17】画像処理によるブラック画像領域の濃度差に関する評価実験に使用する画像パターン。
【符号の説明】
1 ヒータ
2 素子基板
4 吐出口
12 キャリッジ
13 ガイドシャフト
14 主走査モータ
15 モータプーリ
16 従動プーリ
17 タイミングベルト
19 搬送ローラ
18 記録媒体
102 支持部材
103 モールド部材
104 配線基板
105 連通路
107 液体供給路
130 ホームポジションセンサ
131 ピックアップローラ
132 オートシートフィーダ
133 センサ
134 LFモータ
135 給紙モータ
136 遮蔽板
H1000 記録ユニット
H1001 インクジェットヘッド(記録ヘッド)
H1002 記録素子ユニット
H1003 インク供給ユニット
H1100 第1の記録素子基板
H1103 電気熱変換素子
H1101 第2の記録素子基板
H1102 インク供給口
H1105 バンプ
H1104 電極
H1106 流路壁
H1107 吐出口
H1108 吐出口群
H1110 Si基板
H1200 第1のプレート(第1の支持部材)
H1201 インク連通口
H1300 電気配線テープ
H1300a ベースフィルム
H1300b 銅箔
H1300c ソルダーレジスト
H1301 外部信号入力端子
H1302 電極端子
H1400 第2のプレート(第2の支持部材)
H1500 インク供給部材
H1501 液流路(インク流路)
H1509 突き当て部
H1511 突き当て部
H1512 端子固定部
H1600 流路形成部材
H1601 装着ガイド
H1700 フィルター
H1800 シールゴム
H2000 タンクホルダー
H2200 電気コンタクト基板
H2300 ジョイントシール部材(ゴム)
H2400 ビス

Claims (12)

  1. インクをインクジェットヘッドから記録媒体に吐出させて画像を形成する画像記録方法において、
    前記インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出口と、該吐出口と連通し該吐出口にインクを供給するための液流路と、該液流路内の該吐出口と対向する底面に設けられインクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子と、を備えるとともに、水性媒体及びイオン性基の作用によって該水性媒体に分散している顔料を含むブラックインクを吐出する第1のインクジェットヘッド部と、多価金属塩を含み前記第1のインクジェットヘッド部から吐出される液滴の量より相対的に小さな量のカラーインクを吐出する第2のインクジェットヘッド部とを含み、
    前記第1のインクジェットヘッド部は前記電気熱変換素子の駆動によって前記液流路内のインク中に発生した気泡が外気と連通することなくインクを吐出し、
    前記第2のインクジェットヘッド部は前記電気熱変換素子の駆動によって前記液流路内のインク中に発生した気泡が外気と連通することでインクを吐出する
    ことを特徴とする画像記録方法。
  2. 前記第2のインクジェットヘッド部における前記気泡が最大体積に成長した後の体積減少段階で、前記気泡が外気と連通する際にインクが前記吐出口から吐出される請求項1に記載の画像記録方法。
  3. 前記第2のインクジェットヘッド部における前記液流路内の電気熱変換素子上に供給されたインクの前記液滴となる部分が、該電気熱変換素子を覆った状態で他の部分と分離し、前記吐出口から前記液滴として吐出される請求項1または2に記載の画像記録方法。
  4. 前記第1のインクジェットヘッド部の吐出口面積が、前記第2のインクジェットヘッド部の吐出口面積よりも大きい請求項1〜3のいずれかに記載の画像記録方法。
  5. 前記ブラックインクが、前記イオン性基としてアニオン性基を含むブラックインクである請求項1〜4のいずれかに記載の画像記録方法。
  6. 前記ブラックインクが、さらに塩を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の画像記録方法。
  7. 前記多価金属塩が、多価金属陽イオンとしてMg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+またはAl3+を有する少なくとも1種の多価金属塩である請求項1〜6のいずれかに記載の画像記録方法。
  8. 前記多価金属塩の含有量がインク全質量に対して0.1〜15質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の画像記録方法。
  9. 前記ブラックインクの色材は、カーボンブラックであり、前記カーボンブラックは表面に少なくとも1種の親水性基が前記イオン性の基として直接もしくは他の原子団を介して結合しているものである請求項1〜8のいずれに記載の画像記録方法。
  10. 前記ブラックインクが色材としてカーボンブラックを含有し、更に該イオン性基を有する分散剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の画像記録方法。
  11. 前記カラーインクの色材が酸性染料または直接染料である請求項1〜10の何れかに記載の画像記録方法。
  12. 前記カラーインクが、少なくともシアン、マゼンタ及びイエローインクを含み、これらの少なくとも1色が多価金属塩含有インクである請求項1〜11のいずれかに記載の画像記録方法。
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