JPH07125206A - サーマルインクジェットヘッド - Google Patents

サーマルインクジェットヘッド

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Publication number
JPH07125206A
JPH07125206A JP14166393A JP14166393A JPH07125206A JP H07125206 A JPH07125206 A JP H07125206A JP 14166393 A JP14166393 A JP 14166393A JP 14166393 A JP14166393 A JP 14166393A JP H07125206 A JPH07125206 A JP H07125206A
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JP
Japan
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flow path
substrate
groove
ink
thickness
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Application number
JP14166393A
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English (en)
Inventor
Takuro Sekiya
卓朗 関谷
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 機械的に脆い性質を持つ単結晶シリコンウエ
ハにより流路基板を作製する場合において、流路用溝が
破損しない強度を確保すること。 【構成】 蓄熱層と発熱層とこの発熱層に通電するため
の電極と保護層とを形成した発熱体基板に対して積層さ
せる流路基板3を、(100)面に切出された単結晶シ
リコンウエハによるものとし、その(100)面に異方
性エッチングにより2つの等価な(111)面による側
面と1つの(100)面による天井面とで断面台形状と
なる流路用溝6を形成するとともに、その厚さtをこれ
らの流路用溝6の深さhの15倍以上とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ノンインパクト記録用
ヘッドの一つである発熱体基板と流路基板とを積層させ
たヘッド構造のサーマルインクジェットヘッドに関す
る。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録法は、記録時におけ
る騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点
において、関心の高い記録法とされている。中でも、高
速記録が可能で、特別な定着処理を必要とせず所謂普通
紙に記録を行うことが可能な、所謂インクジェット記録
法は極めて有力な記録法である。そこで、従来において
もインクジェット記録法に関して様々な方式が提案さ
れ、種々の改良も加えられ、現に商品化されているもの
や、実用化に向けて開発段階のものもある。
【0003】このようなインクジェット記録法は、所謂
インクと称される記録液体の小滴(droplet)を飛翔させ
て普通紙などの記録媒体に付着させて記録を行うもので
ある。その一例として、例えば本出願人提案による特公
昭56−9429号公報に示されるようなものがある。
これは、要約すれば、液室内のインクを加熱して気泡を
発生させることでインクに圧力上昇を生じさせ、微細な
毛細管ノズルからインクを飛び出させて記録するように
したものである。
【0004】その後、このようなインク飛翔原理を利用
して多くの提案がなされている。これらの提案の中で、
例えば特開平2−67140号公報に示されるような流
路基板の製法が本出願人により提案されている。これ
は、単結晶シリコン(Si)の異方性エッチングを利用
したV字溝を流路とするようにしたものである。このよ
うに形成されるインク流路は、V字溝の両側2面を形成
する面が(111)面となり、単結晶の精度で形成で
き、かつ、その面も非常に滑らかとなるため、インクジ
ェットの流路として考えた場合、非常に都合のよいもの
となる。
【0005】さらに、このようなV字溝(V字状の天井
部付近に気泡が詰まり、インクの流れが阻害されるおそ
れがある)を改良したものとして、同様に、(100)
面の結晶方位面に切出されたシリコンウエハ基板上に異
方性エッチングにより2つの等価な(111)面による
側面と1つの(100)面による天井面とで断面台形状
の流路用溝を形成した流路基板を用いるようにしたもの
も考えられている。このような断面台形状の流路用溝な
いしは流路による場合も、単結晶の精度で形成でき、か
つ、その面も非常に滑らかとなるため、インクジェット
の流路として考えた場合、非常に都合のよいものとな
る。
【0006】一方、従来より単結晶Siの異方性エッチ
ングにより角錐状(断面矩形状)の窪みを形成し、その
先端が吐出ノズルとなるような、所謂シリコンノズルを
作製する方法も、例えば特開昭50−144338号公
報、特開昭51−84641号公報、特開昭51−87
924号公報等により広く知られている。この際、ノズ
ル先端部が鋭角であり、非常に壊れやすいため、SiO
2 膜、Au膜などによって保護することもよく知られて
いる。これらは、(100)面から異方性エッチングを
行うことによって、角錐状の窪みを形成する方法に関す
るものであり、<100>軸方向にインクが噴射する構
成とされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、断面台形状
溝による場合も角錐状溝による場合も、流路基板が単結
晶基板を材料としているため、ヘッド作製途中でこれら
の流路が破損してしまうことが多々有り、歩留まり上、
改善が要望されている。特に、前者のように、断面台形
状溝により流路を形成し、<110>軸方向にインクを
流す方式のものについては、未だ、研究が不十分であ
り、その破損を生ずる形態ないしは破損に対する防止策
については不十分なものとなっている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明で
は、蓄熱層と発熱層とこの発熱層に通電するための電極
と保護層とを形成した発熱体基板と、(100)面に切
出された単結晶シリコンウエハ上に異方性エッチングに
より2つの等価な(111)面による側面と1つの(1
00)面による天井面とで断面台形状となる流路用溝を
有してこの溝面を発熱面に相対させて前記発熱体基板上
に積層させたこれらの流路用溝の深さの15倍以上の厚
さの流路基板とにより構成した。
【0009】請求項2記載の発明では、溝内部の角部に
1μm以上の厚さのSiO2 膜を有する流路用溝とし
た。
【0010】
【作用】請求項1記載の発明においては、単結晶シリコ
ンウエハの異方性エッチングにより断面台形状の流路用
溝を形成した流路基板の厚さを、これらの流路用溝の深
さの15倍以上としたので、単結晶シリコンウエハを使
用しても必要な強度を確保でき、流路用溝を破損させる
ことなくヘッド作製を行えるものとなり、歩留まりが向
上する。
【0011】請求項2記載の発明においては、断面台形
状の流路用溝の内部の角部に1μm以上の厚さのSiO
2 膜を形成することで、角部に丸みを持たせることがで
き、これにより、角部への応力集中を緩和でき、長期使
用環境においても流路を破損から保護し得るものとな
る。
【0012】
【実施例】本発明の一実施例を図面に基づいて説明す
る。まず、本実施例のサーマルインクジェットヘッドの
構成及び動作原理を図2ないし図4を参照して説明す
る。このヘッドチップ1は図2に示すように発熱体基板
2上に流路基板3を積層させたものである。ここに、流
路基板3には表裏に貫通したインク流入口4が形成され
ているとともに、ノズル5を形成するための流路用溝6
が複数本形成されている。前記インク流入口4はこれら
の流路用溝6に連なったインク供給室領域に連通してい
る。また、発熱体基板2上には図3に示すように各ノズ
ル5(流路用溝6)に対応してエネルギー作用部を構成
する発熱体(ヒータ)8が複数個形成され、各々個別に
制御電極9に接続されているとともに共通電極10に共
通接続されている。これらの電極9,10の一端は発熱
体基板2の端部まで引出され、駆動信号導入部となるボ
ンディングパッド部11とされている。ここに、発熱体
基板2の発熱面上に流路基板3の溝面側を相対させて積
層接合することにより、流路用溝6及びインク供給室領
域は閉じられた状態となり、先端にノズル5を有するイ
ンク流路とインク供給室7とが形成される。
【0013】このようなヘッドチップ1において、サー
マルインクジェットによるインク噴射は図4に示すよう
なプロセスにより行われる。まず、定常状態では同図
(a)に示すような状態にあり、ノズル5先端のオリフ
ィス面でインク14の表面張力と外圧とが平衡状態にあ
る。ついで、ヒータ8が加熱され、その表面温度が急上
昇し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱されると
同図(b)に示すように、微小な気泡15が点在する状
態となる。さらに、ヒータ8全面で急激に加熱された隣
接インク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、同図(c)
に示すように気泡15が成長する。この時、ノズル5内
の圧力は、気泡15の成長した分だけ上昇し、オリフィ
ス面での外圧とのバランスが崩れ、オリフィスよりイン
ク柱16が成長し始める。同図(d)は気泡15が最大
に成長した状態を示し、オリフィス面より気泡15の体
積に相当する分のインク14が押出される。この時、ヒ
ータ8には既に電流が流れていない状態にあり、ヒータ
8の表面温度は降下しつつある。気泡15の体積の最大
値は電気パルス印加のタイミングよりやや遅れたものと
なる。やがて、気泡15はインク14などにより冷却さ
れて同図(e)に示すように収縮し始める。インク柱1
6の先端部では押出された速度を保ちつつ前進し、後端
部では気泡15の収縮に伴うインク流路の内圧の減少に
よってオリフィス面からインク流路内にインク14が逆
流し、インク柱16基部にくびれが生ずる。その後、同
図(f)に示すように気泡15がさらに収縮し、ヒータ
8面にインク14が接し、ヒータ8面がさらに冷却され
る。オリフィス面では外圧がインク流路内圧より高い状
態になるため、メニスカスが大きくインク流路内に入り
込んでくる。インク柱16の先端部は液滴17となって
記録紙(図示せず)の方向へ5〜10m/secの速度で飛
翔する。その後、同図(g)に示すように毛細管現象に
よりオリフィスにインク14が再び供給(リフィル)さ
れて同図(a)の定常状態に戻る過程で、気泡15は完
全に消滅する。
【0014】ついで、このようなヘッドチップ1を構成
する発熱体基板2、流路基板3等について詳細に説明す
る。まず、発熱体基板2について説明する。この発熱体
基板2用の基板としては、アルミナセラミックス、ガラ
ス、Siウエハなどが用いられる。アルミナセラミック
スの場合には、蓄熱層としてグレーズ層を設けたものが
用いられる。或いは、スパッタリング等の技術によって
SiO2 を数μmの厚さで形成したアルミナセラミック
ス板としてもよい。ガラスの場合、熱伝導率が低いため
ガラスそれ自体が蓄熱作用を持つので、蓄熱層を別個に
設ける必要はない。Siウエハの場合、材料の入手が容
易であり(半導体プロセス分野で大量に出回ってい
る)、各種の半導体プロセス装置を利用でき、量産性が
高く都合がよい。
【0015】本実施例の発熱体基板2には、例えば、S
iウエハが用いられ、Siウエハ上にヒータ8等が形成
されることになる。このSiウエハは例えば拡散炉中で
2,H2O のガスを流しながら、800〜1000℃
の高温にさらされ、表面に熱酸化膜SiO2 を1〜2μ
m成長させる。この熱酸化膜SiO2 は図5に示すよう
に蓄熱層21として働き、後述するように発熱体で発生
した熱が発熱体基板2側に逃げないようにすることで、
インク方向に効率よく熱が伝わるようにするためのもの
である。この蓄熱層21上にはヒータ8となる発熱層2
2が形成される。この発熱層22を構成する材料として
は、タンタル‐SiO2 の混合物、窒化タンタル、ニク
ロム、銀‐パラジウム合金、シリコン半導体、或いは、
ハフニウム、ランタン、ジルコニウム、チタン、タンタ
ル、タングステン、モリブデン、ニオブ、クロム、バナ
ジウム等の金属の硼化物が有用である。金属の硼化物
中、特に優れているものは、硼化ハフニウムであり、以
下、硼化ジルコニウム、硼化ランタン、硼化タンタル、
硼化バナジウム、硼化ニオブの順となる。発熱層22は
このような材料を用いて、電子ビーム蒸着法やスパッタ
リング法などの手法により形成される。発熱層22の膜
厚としては、単位時間当りの発熱量が所望通りとなるよ
うに、その面積、材料及び熱作用部分の形状及び大き
さ、さらには、実際面での消費電力等によって決定され
るが、通常、0.001〜0.5μm、より好ましくは
0.01〜1μmとされる。本実施例では、その一例と
してHfB2 (硼化ハフニム)を材料として2000Å
の膜厚にスパッタリング形成されている。
【0016】電極9,10を構成する材料としては、通
常使用されている電極材料の多くのものを使用し得る。
具体的には、例えばAl,Ag,Au,Pt,Cu等が
挙げられ、これらを使用して蒸着等の手法により発熱層
22上の所定位置に所定の大きさ、形状、膜厚で形成さ
れる。本実施例では、例えばAlを用い、スパッタリン
グ法により膜厚1.4μmの電極9,10を形成した。
【0017】ついで、これらの発熱層22や電極9,1
0上には保護層23が形成される。この保護層23に要
求される特性は、ヒータ8部分で発生した熱をインクに
効率よく伝達することを妨げず、かつ、ヒータ8をイン
クから保護し得ることである。よって、この保護層23
を構成する材料としては、例えば酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化タ
ンタル、酸化ジルコニウム等がよい。これらを材料とし
て、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法により保護層
23が形成される。また、炭化珪素、酸化アルミニウム
等のセラミックス材料を用いてもよい。保護層23の膜
厚としては、通常、0.01〜10μmとされるが、好
ましくは、0.1〜5μm、最適には0.1〜3μm程
度とするのがよい。本実施例では、SiO2 膜としてス
パッタリング法により1.2μmの膜厚に形成した。
【0018】さらに、保護層23上に耐キャビテーショ
ン保護層24が形成されている。この保護層24は発熱
体領域を気泡発生によるキャビテーション破壊から保護
するためのものであり、例えば、Taをスパッタリング
法により4000Åの膜厚に形成される。さらに、その
上部には、電極9,10対応位置に位置させて膜厚2μ
mのResin層が電極保護層25として形成されている。
【0019】次に、流路基板3について説明する。この
流路基板3は発熱体基板2と同じく単結晶Siウエハ、
より具体的には、図1(a)に示すように(100)面
の結晶方位に切出されたSiウエハが用いられる。この
単結晶Siウエハは図におけるX軸とY軸とが互いに直
交する<110>軸となるように選定され、かつ、X‐
Y軸面(上下面)が単結晶の(100)面となるように
選定されている。このようにすると、単結晶の(11
1)面はY軸に平行で、かつ、X‐Y軸面に対して約5
4.7°の角度で交わることになる。
【0020】このような流路基板3に形成される流路用
溝6は発熱体基板2と積層した状態で流路が断面台形状
となるような形状とされるが、その断面台形状をなす2
つの側面は各々等価な(111)面により傾斜面として
形成され、天井面は(100)面により形成されてい
る。ここに、(111)面は他の結晶面に比べ水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、ヒトラジンのようなアルカ
リ系溶液によるエッチング速度が極めて遅く、(10
0)面をアルカリ系溶液でエッチングすると、(10
0)面に対して約54.7°をなす(111)面が現
れ、図1(a)に示すように断面台形状をなすように拡
開した流路用溝6が形成される。このような断面台形状
溝の開口部(底部)の溝幅aはフォトエッチングの際の
フォトレジストの間隔で定まり、極めて精度の高いもの
となる。また、断面台形状溝の深さdは、異方性エッチ
ング時間をコントロールすることにより容易に管理でき
る。さらには、このようなエッチングによって現れた
(111)面は鏡面状態となっており極めて平滑で直線
性のよいものとなる。
【0021】ここに、このような単結晶Siウエハを用
いて、異方性フォトエッチング法により断面台形状の流
路用溝6を形成する方法について、図6を参照して説明
する。
【0022】まず、図1(a)で説明したような結晶方
位のSi単結晶からなる流路基板3を用意する。図6
(a)に示す状態では、紙面に対して垂直方向が<11
0>軸、この基板3の上下面が(100)面となる。こ
のような基板3を、例えば800〜1200℃程度の水
蒸気雰囲気中に置き、表面全面に熱酸化膜26を形成す
る。熱酸化膜26の膜厚はエッチング深さの0.3%程
度あれば十分である。
【0023】ついで、同図(b)に示すように、熱酸化
膜26の上面全面に周知の方法でフォトレジストを塗布
し、これを写真乾板を用いて露光し、現像を行い、フォ
トレジストパターン27を得る。
【0024】ついで、同図(c)に示すように、このフ
ォトレジストパターン27により露出している部分の熱
酸化膜26をフッ酸水溶液等により除去し、シリコンの
露出部3aを得て、その後、フォトレジストパターン2
7を取り去る。
【0025】このような状態にある基板3を、22%,
90℃の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液中にお
いてエッチングする。ここに、エッチング液に水酸化テ
トラメチルアンモニウム水溶液を用いるのは、この他の
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のエッチング液を
利用した場合に比べ、天井面(溝では、底面となる)と
して露出してくる(100)面が、両側の(111)面
と同様に、非常に滑らかな鏡面状態となるからである。
これにより露出部3aのエッチングが進行するが、(1
11)面のエッチング進行速度は(100)面における
エッチング進行速度の0.3〜0.4%程度であるた
め、異方性エッチングとなり、露出部3aの各溝部から
は基板3の上面(前述したように、(100)面であ
る)に対し、tan~1√2(約54.7°)の角度をなす
(111)面が現れる。結局、エッチングにより形成さ
れる流路用溝6の溝形状は同図(d)に示すように断面
台形状となる。
【0026】このような断面台形状溝の精度について考
察すると、まず、熱酸化膜26端部の下溝における、い
わゆるアンダカットは極めて小さく、(100)面のエ
ッチング深さの0.2%程度でしかない。従って、断面
台形状溝の底部溝幅aは、フォトマスクの誤差を考慮に
入れても±1μm程度の精度とすることができる。
【0027】最後に、同図(e)に示すように、エッチ
ングマスクに使用した熱酸化膜26をフッ酸水溶液等に
より除去することにより断面台形状なる流路用溝6が形
成された単結晶Siのみによる流路基板3となる。な
お、このような流路基板3を実際にヘッドチップ1に適
用するには、Siウエハをインクから保護するため、S
iO2 ,Si34等の保護膜で保護するようにするのが
よい。
【0028】このように異方性エッチングにより断面台
形状で形成された流路用溝6を有する流路基板3は、前
述したようにヒータ8等が形成された発熱体基板2上
に、接合又は圧接されて積層状態とされる。ここに、積
層されたこれらの基板2,3について、ヒータ8部分か
ら少し下流(100〜200μm程度)の領域におい
て、流路(流路用溝6)に対してほぼ垂直方向にダイシ
ングソーによって切断することにより、流路一端が直接
ノズル5となるヘッドチップ1が完成する。図2はこの
ようにして完成したヘッドチップ1を示し、図7はその
ノズル5から見た一部を拡大して示す正面図である。
【0029】なお、インク吐出用のノズル5の形成方法
としては、上記のように、ダイシングソーによって切断
した面をそのまま直接ノズル5とする他、例えば、図8
に示すように、流路対応の台形状のノズル28aを形成
したノズル板(薄膜基板)28を別個に用意し、これを
ヘッドチップ1の端面に接合させるようにしてもよい。
このようなノズル板28は、例えばポリサルフォン、ポ
リエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポ
リプロピレンなどの樹脂板(厚さは、10〜50μm程
度)に、エキシマレーザを照射して樹脂を除去・蒸発さ
せることによりノズル28aを形成したものとすればよ
い。このような製法によると、ノズル28a用の台形状
のマスクパターンに沿った精密な加工を簡単に行うこと
ができ、高精度なノズル板28が得られる。このノズル
板28はヘッドチップ1の切断面に接着剤により接合さ
れる。或いは、上記のような樹脂板をヘッドチップ1の
切断面に接合させた後に、エキシマレーザを照射して吐
出ノズル28aを形成するようにしてもよい。このよう
にすれば、流路(流路用溝6)と吐出ノズル28aとを
整合させる点に関する煩雑さから解放されるものとな
る。また、このような製法で得られるノズル28aの大
きさは、ヘッドチップ1の切断面におけるインク流路の
断面の大きさと同等か、やや小さめとするのがよい。何
れにしても、このようにノズル板28を別体で設けたヘ
ッド構造によれば、図2等に示したものに比べ、インク
噴射の安定性が高いものとなる。
【0030】このような本実施例の基本構成によれば、
インク流路が非常に滑らかなため、インク噴射性能に優
れたものとなる。もっとも、上述したようなヘッドチッ
プ1の構成は、本実施例の基本をなすものであるが、流
路基板3を単結晶Siウエハ製としているため、単結晶
材料の持つ性質として、機械的な衝撃に対して脆く、破
損し易いという欠点がある。この点、本実施例では下記
のような実験例に基づき、流路基板3をなす単結晶Si
ウエハの厚さを適正にすることにより、歩留まりが向上
するようにしたものである。
【0031】(実験例1)(100)面を利用した断面
台形状の流路用溝6を有する300dpi ,128ノズル
のヘッドチップ1を試作した。この場合に、流路基板3
を構成するために使用したSiウエハは直径5インチも
のとし、1枚のウエハから7mm×13mmの流路基板チッ
プを112個とるようにした。また、流路用溝6の大き
さは、図1(b)に示すように、開口部の溝幅a=59
μm、深さh=24.7μmとなるように設定した。こ
のような条件下に、Siウエハの厚さtを330μmか
ら400μmの範囲で10μm刻みで変化させて得た流
路基板3を用いてヘッドチップ1を作製した場合の歩留
まりを調べたところ、表1に示すような結果が得られた
ものである。
【0032】
【表1】
【0033】ここに、破損を生じた流路基板3について
検討したところ、全てについて、その破損領域は図9に
示すように台形状の流路用溝6の底の角部部分からクラ
ック29が入ることに起因するSi単結晶のへき開によ
るものが原因であった。表1に示す結果によれば、流路
基板3をなすSiウエハの厚さtが370μm以上であ
れば、流路基板3ないしはヘッドチップ1の作製時に破
損を生じておらず、それより薄い場合には破損を生じ得
ることが分かる。換言すれば、流路用溝6の深さhの1
5倍以上の厚さtを持つSiウエハを用いることによ
り、流路基板3ないしはヘッドチップ1の作製時に破損
を生じないものとなる。
【0034】(実験例2)実験例1と同様の実験を、4
00dpi ,128ノズルのヘッドチップ1の試作につい
て行ったものである。この場合に、流路基板3を構成す
るために使用したSiウエハは直径5インチものとし、
1枚のウエハから7mm×10mmの流路基板チップを14
4個とるようにした。また、流路用溝6の大きさは、溝
幅a=51μm、深さh=21.8μmとなるように設
定した。このような条件下に、Siウエハの厚さtを3
00μmから350μmの範囲で10μm刻みで変化さ
せて得た流路基板3を用いてヘッドチップ1を作製した
場合の歩留まりを調べたところ、表2に示すような結果
が得られたものである。
【0035】
【表2】
【0036】表2に示す結果によれば、流路基板3をな
すSiウエハの厚さtが330μm以上であれば、流路
基板3ないしはヘッドチップ1の作製時に破損を生じて
おらず、それより薄い場合には破損を生じ得ることが分
かる。換言すれば、この表2に示す結果からも、流路用
溝6の深さhの15倍以上の厚さtを持つSiウエハを
用いることにより、流路基板3ないしはヘッドチップ1
の作製時に破損を生じないものとなる。
【0037】(比較例1)厚さt=300μm,350
μm,400μmの3種のパイレックスガラスチップ
(大きさは、7mm×13mm)を各々30枚ずつ用意し、
ダイシングソーによって実験例1と同様の大きさ、数の
台形状の流路用溝を形成して流路基板を作製しヘッドア
センブリを行った。ダイシングソーは、ディスコ社製D
AD−2H/5型を使用し、ブレード回転数は3000
0rpm 、ブレード送り速度は2mm/sとした。使用した
ブレードは実験例1と同じ大きさの台形状の溝となるよ
うに特別に断面が台形となるように作製したものを用い
た。この結果、全ての流路基板について破損を生ずるこ
となく作製でき最終的なヘッドチップとしてのアセンブ
リ後も流路破損は生じなかったものである。
【0038】(比較例2)厚さt=300μm,350
μm,400μmの感光性ガラス(大きさは、7mm×1
0mm)に、溝幅a=28μm、深さh=28μmの溝を
エッチングによって400dpi 相当の配列密度で128
本形成した流路基板を用意してヘッドアセンブリを行っ
た。サンプル数は、各厚さtとも各々30枚ずつとし
た。この結果、全ての流路基板について破損を生ずるこ
となく作製でき最終的なヘッドチップとしてのアセンブ
リ後も流路破損は生じなかったものである。
【0039】このような比較例1,2を考慮して、実験
例1,2の結果を考察すると、パイレックスガラスや感
光性ガラスに台形状或いは矩形状の流路用溝を形成した
流路基板では問題とならなかったような基板厚さであっ
ても、Siウエハ等の単結晶材料を使用した場合にはそ
の材料の持つ「機械的に脆い」という性質故に、壊れ易
いため、実験例1,2の結果に示すように、Siウエハ
の厚さtを慎重に決定することが必要かつ重要といえ
る。
【0040】ついで、本実施例の別の特徴点について説
明する。前述した説明は、ヘッド作製途中ないしは作製
直後における流路基板3の破損防止を特に考慮したもの
であるが、ここでは、実際にヘッドチップ1として作製
した後で実際にインク噴射を行う実使用における信頼性
を考慮したものである。
【0041】まず、前述したように作製されたヘッドチ
ップ1を長期に渡って使用すると、時々、図9に示した
ようなクラック29が流路用溝6の角部から入って破損
してしまうことがある。これは、流路用溝6の角部が最
も弱く、かつ、単結晶Si材料が持つ脆いという性質に
よるものであるが、このような点を考慮して、その対策
を講じたものである。その着想として、流路用溝の内面
角部に対して単結晶Si材料ではない材料の層(膜)を
形成することで、機械的強度が向上し、長期使用に対し
て信頼性が向上するものと考え、以下の実験を行ったも
のである。即ち、流路基板3作製後に、そのSiウエハ
を拡散炉に入れ、O2 又はH2O 蒸気を流しながら、1
000℃前後に保って表面にSiO2 膜を成長させるよ
うにしたものである。以下の実験では、このようにSi
2 膜の膜厚を変化させて(SiO2 膜を有しないもの
を含む)、流路の破損発生や内壁の腐食の有無などを調
べたものである。
【0042】(実験例3)本実験例に用いたヘッドチッ
プは、台形状の流路用溝6を300dpi の密度で128
ノズル分有する流路基板3を備えたもので、そのSiウ
エハの厚さt=320μmと比較的壊れやすいものとし
た。ここに、SiO2 膜を形成しなかったものと、図1
0に示すようにSiO2 膜30を形成したもの(その膜
厚に関しては、0.5μm,0.7μm,1.0μm,
1.3μmのように異ならせた)との5種類を各々10
個ずつ用意してヘッドアセンブリ化を行い、インク噴射
耐久試験を行ったものである。使用したインクは、グリ
セリン:18%、エチルアルコール:4.8%、水:7
5%、C.I.ダイレクトブラック154(染料):
2.2%の組成よりなるものである。また、駆動周波数
0 =6kHzとし、10日間連続噴射を行ったもので
ある。使用ノズルは各種類のヘッドとも、128ノズル
中で、8ノズルのみとした。表3にその結果を示す。
【0043】
【表3】
【0044】表3によれば、SiO2 膜30を1μm以
上の膜厚で形成し、流路用溝6の内面角部に丸み30a
を持たせれば、流路破損を生じていないことが分かる。
これは、単結晶Siに比して強度的に強いSiO2 膜3
0によって丸み30a部分が形成されることにより、流
路用溝6単独で丸みを持たない場合に比べて応力が集中
することがないため、機械的強度が向上するためと考え
られる。もっとも、SiO2 膜30を設ける場合でもそ
の膜厚が1μmよりも薄い場合には(0.5μmや0.
7μmのもの)、厚さ不足により角部に丸み30aをつ
けて応力集中を緩和させるまでには至らなかったと考え
られる。しかし、流路用溝6の内壁のインクに対する腐
食防止効果を考えた場合には、SiO2 膜30は薄くて
も効果が発揮されるものとなる。
【0045】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、蓄熱層と
発熱層とこの発熱層に通電するための電極と保護層とを
形成した発熱体基板と、(100)面に切出された単結
晶シリコンウエハ上に異方性エッチングにより2つの等
価な(111)面による側面と1つの(100)面によ
る天井面とで断面台形状となる流路用溝を有してこの溝
面を発熱面に相対させて前記発熱体基板上に積層させた
これらの流路用溝の深さの15倍以上の厚さの流路基板
とにより構成したので、単結晶シリコンウエハを使用し
ても必要な強度を確保でき、流路用溝を破損させること
なくヘッド作製を行えるものとなり、歩留まりを向上さ
せることができる。
【0046】また、請求項2記載の発明によれば、溝内
部の角部に1μm以上の厚さのSiO2 膜を有する流路
用溝とすることで、角部に丸みを持たせるようにしたの
で、角部への応力集中を緩和して、長期使用環境におい
ても流路を破損から保護できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の流路基板に関し、(a)は
結晶面及び結晶軸方向を示す斜視図、(b)は溝形状及
び寸法関係を示す正面図である。
【図2】ヘッドチップを示す斜視図である。
【図3】発熱体基板を示す斜視図である。
【図4】サーマルインクジェットの記録原理を順に示す
縦断側面図である。
【図5】ヒータ付近を拡大して示す縦断側面図である。
【図6】流路基板に関する異方性エッチング工程を順に
示す縦断正面図である。
【図7】ヘッドチップの一部を拡大して示す正面図であ
る。
【図8】変形例を示す分解斜視図である。
【図9】クラック発生状況を示す説明図である。
【図10】SiO2 膜を形成した様子を示す正面図であ
る。
【符号の説明】
2 発熱体基板 3 流路基板 6 流路用溝 9,10 電極 21 蓄熱層 22 発熱層 23 保護層 30 SiO2

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蓄熱層と発熱層とこの発熱層に通電する
    ための電極と保護層とを形成した発熱体基板と、(10
    0)面に切出された単結晶シリコンウエハ上に異方性エ
    ッチングにより2つの等価な(111)面による側面と
    1つの(100)面による天井面とで断面台形状となる
    流路用溝を有してこの溝面を発熱面に相対させて前記発
    熱体基板上に積層させたこれらの流路用溝の深さの15
    倍以上の厚さの流路基板とよりなることを特徴とするサ
    ーマルインクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】 溝内部の角部に1μm以上の厚さのSi
    2 膜を有する流路用溝としたことを特徴とする請求項
    1記載のサーマルインクジェットヘッド。
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