JP2865524B2 - サーマルインクジェットヘッド - Google Patents

サーマルインクジェットヘッド

Info

Publication number
JP2865524B2
JP2865524B2 JP16784993A JP16784993A JP2865524B2 JP 2865524 B2 JP2865524 B2 JP 2865524B2 JP 16784993 A JP16784993 A JP 16784993A JP 16784993 A JP16784993 A JP 16784993A JP 2865524 B2 JP2865524 B2 JP 2865524B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
flow path
groove
single crystal
heating element
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP16784993A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0768760A (ja
Inventor
卓朗 関谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=26438568&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP2865524(B2) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP16784993A priority Critical patent/JP2865524B2/ja
Publication of JPH0768760A publication Critical patent/JPH0768760A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2865524B2 publication Critical patent/JP2865524B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ノンインパクト記録用
ヘッドの一つである発熱体基板と流路基板とを積層させ
たヘッド構造のサーマルインクジェットヘッドに関す
る。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録法は、記録時におけ
る騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点
において、関心の高い記録法とされている。中でも、高
速記録が可能で、特別な定着処理を必要とせず所謂普通
紙に記録を行うことが可能な、所謂インクジェット記録
法は極めて有力な記録法である。そこで、従来において
もインクジェット記録法に関して様々な方式が提案さ
れ、種々の改良も加えられ、現に商品化されているもの
や、実用化に向けて開発段階のものもある。
【0003】このようなインクジェット記録法は、所謂
インクと称される記録液体の小滴(droplet) を飛翔さ
せて普通紙などの記録媒体に付着させて記録を行うもの
である。その一例として、例えば本出願人提案による特
公昭56−9429号公報に示されるようなものがあ
る。これは、要約すれば、液室内のインクを加熱して気
泡を発生させることでインクに圧力上昇を生じさせ、微
細な毛細管ノズルからインクを飛び出させて記録するよ
うにしたものである。
【0004】その後、このようなインク飛翔原理を利用
して多くの提案がなされている。これらの提案の中で、
例えば特開昭56−123869号公報、特開昭57−
43876号公報、特開昭57−212067号公報、
特開昭57−212068号公報、特開昭57−212
069号公報、特開昭58−220754号公報、特開
昭58−220756号公報に示されたものでは、発熱
体基板上にフォトリソグラフィー技術によってインク流
路パターンを形成し、その上にガラス板等の天板を載せ
て蓋をし、インク流路及びノズルを形成するようにして
いる。
【0005】しかし、インク流路パターンをフォトリソ
グラフィー技術によって形成する場合、数10μmの厚
さのレジストパターンを形成しなければならない。よっ
て、半導体工業分野で行われている1μm程度の厚さの
レジストパターンを形成する場合と異なり、精度のよい
インク流路パターンを形成するのが非常に困難である。
また、このようなパターン形成後に、天板を蓋として貼
付ける際にこのパターンが崩れる、という問題があり、
高精度なインク流路及びノズルを形成するのが困難であ
る。
【0006】このような点を考慮し、特開平2−671
40号公報に示されるような流路基板の製法が本出願人
により提案されている。これは、単結晶シリコン(S
i)の異方性エッチングを利用したV字溝を流路とする
ようにしたものである。このように形成されるインク流
路は、V字溝の両側2面を形成する面が(111)面と
なり、単結晶の精度で形成でき、かつ、その面も非常に
滑らかとなるため、インクジェットの流路として考えた
場合、非常に都合のよいものとなる。さらには、単結晶
シリコンによる流路基板に形成する溝を、2つの等価な
(111)面と1つの(100)面とで形成される台形
状とするものも、本出願人により提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
提案例による場合も、実際には、V字溝又は台形状溝を
形成した流路基板をどのように取出したらよいか、或い
は、どのようにアセンブリすれば歩留まりよく、かつ、
効率よく、ヘッドを完成し得るか、といった点について
は、十分に検討されておらず、流路基板自体或いは流路
基板をアセンブリしたヘッドの歩留まりはそれ程高くな
っていないのが実情である。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明で
は、単結晶基板上に蓄熱層と発熱層とこの発熱層に通電
するための電極と保護層とを形成した発熱体基板と、前
記単結晶基板と同じ結晶方位面に切出された単結晶基板
上に異方性エッチングにより流路用溝を形成した流路基
板とよりなり、前記発熱体基板とこの流路基板とを結晶
軸方向を揃えるとともに発熱面と溝面とが相対するよう
に積層し、この積層物を前記流路用溝とほぼ垂直方向に
切断してインク流路開口を形成してサーマルインクジェ
ットヘッドを構成した。
【0009】この際、請求項2記載の発明では、発熱体
基板と流路基板とを形成する単結晶基板をともに(10
0)面の結晶方位面に切出された単結晶シリコンウエハ
とし、双方の単結晶基板の<110>軸方向を揃えて積
層させた。
【0010】さらに、請求項3記載の発明では、単結晶
基板を(100)面の結晶方位面に切出された単結晶シ
リコンウエハとし、流路用溝をV字溝とし、前記シリコ
ンウエハの直交する2つの等価な<110>軸方向のダ
イシングによりチップ化した流路基板とした。
【0011】一方、請求項4記載の発明では、単結晶基
板を(100)面の結晶方位面に切出された単結晶シリ
コンウエハとし、流路用溝を台形状溝とし、前記シリコ
ンウエハの直交する2つの等価な<110>軸方向のダ
イシングによりチップ化した流路基板とした。
【0012】また、請求項5記載の発明では、異方性エ
ッチングにより流路用溝より深く形成したチップ化溝に
よりチップ化した流路基板とした。
【0013】さらに、これらの発明において、請求項6
記載の発明では、流路用溝を有する溝面とは反対側から
発熱体基板に対する取付方向を認識させるための認識手
段を有する流路基板とした。
【0014】一方、請求項7記載の発明では、発熱体基
板上にフォトファブリケーションにより形成された位置
決めパターンと、流路基板に対して前記位置決めパター
ンに対応する位置に異方性エッチングにより貫通形成さ
れた位置決め透視部との組合せよりなる位置整合手段を
設けた。
【0015】
【作用】請求項1記載の発明においては、発熱体基板と
流路基板とを同じ結晶方位面に切出された単結晶基板で
形成し、その結晶軸方向を揃えて積層するとともにその
積層物を流路基板における流路用溝とほぼ垂直方向に切
断してインク流路開口を形成しているので、両者を積
層、切断して吐出ノズルを形成するヘッド構造に関し
て、両者が同じ結晶軸方向に切断されるものとなり、そ
の切断時に破損が生ずることがなく、歩留まりの高いヘ
ッドとなる。
【0016】特に、請求項2記載の発明においては、発
熱体基板、流路基板とも単結晶シリコンウエハによるそ
の単結晶基板を<110>軸方向を揃えて積層させてい
るので、切断によりインク流路開口を形成する際に、<
110>軸方向に切込みが入ることになり、その切断時
に破損が生ずることがなく、歩留まりが一層向上するも
のとなる。
【0017】また、請求項3又は4記載の発明において
は、単結晶基板を(100)面の結晶方位面に切出され
たシリコンウエハとし、その(100)面に流路用溝を
V字溝又は台形状溝として形成した流路基板のチップを
シリコンウエハから取出す際に、直交する2つの等価な
<110>軸方向のダイシングによりチップ化するよう
にしたので、破損することがなく、高い歩留まりで流路
基板が得られる。
【0018】さらに、請求項5記載の発明においては、
異方性エッチングにより流路用溝より深く形成したチッ
プ化溝により流路基板をチップ化するようにしたので、
流路用溝を形成する工程で済むことになり、後でダイシ
ング等を行う必要がなく、工程が短縮される。また、異
方性エッチングによるチップ化溝でチップ化するので、
得られる流路基板チップは寸法精度の高いものとなる。
【0019】一方、請求項6記載の発明においては、流
路基板を発熱体基板上に積層取付けする際に、流路基板
が不透明であっても、その溝面とは反対の外部から視認
し得る面に流路用溝等の取付方向を認識させる認識手段
を有するので、発熱体基板上への積層取付けを容易に行
うことができる。
【0020】また、請求項7記載の発明においては、発
熱体基板に形成した位置決めパターンと流路基板に貫通
形成した位置決め透視部との組合せによる位置整合手段
を設けたので、流路基板が不透明であってもアセンブリ
時に発熱部と流路用溝とを精度高く位置整合させること
ができる。特に、流路基板側の位置決め透視部は異方性
エッチングによるため、レーザ加工等による単純な貫通
加工によるものに比べて、非常に高精度となり、精度の
高い位置整合が可能となる。
【0021】
【実施例】本発明の一実施例を図面に基づいて説明す
る。本実施例のサーマルインクジェットヘッドの構成及
び動作原理を図1ないし図3を参照して説明する。この
ヘッドチップ1は図1(a)に示すように発熱体基板2
上に流路基板3を積層させたものである。ここに、流路
基板3には表裏に貫通したインク流入口4が形成されて
いるとともに、ノズル5を形成するための流路用溝6が
複数本形成されている。前記インク流入口4はこれらの
流路用溝6に連なったインク供給室領域に連通してい
る。また、発熱体基板2上には図2に示すように各ノズ
ル5(流路用溝6)に対応してエネルギー作用部を構成
する発熱体(ヒータ)8が複数個形成され、各々個別に
制御電極9に接続されているとともに共通電極10に共
通接続されている。これらの電極9,10の一端は発熱
体基板2の端部まで引出され、駆動信号導入部となるボ
ンディングパッド部11とされている。ここに、発熱体
基板2の発熱面上に流路基板3の溝面側を相対させて積
層接合することにより、流路用溝6及びインク供給室領
域は閉じられた状態となり、先端にノズル5を有するイ
ンク流路とインク供給室7とが形成される。
【0022】このようなヘッドチップ1において、サー
マルインクジェットによるインク噴射は図3に示すよう
なプロセスにより行われる。まず、定常状態では同図
(a)に示すような状態にあり、ノズル5先端のオリフ
ィス面でインク14の表面張力と外圧とが平衡状態にあ
る。ついで、ヒータ8が加熱され、その表面温度が急上
昇し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱されると
同図(b)に示すように、微小な気泡15が点在する状
態となる。さらに、ヒータ8全面で急激に加熱された隣
接インク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、同図(c)
に示すように気泡15が成長する。この時、ノズル5内
の圧力は、気泡15の成長した分だけ上昇し、オリフィ
ス面での外圧とのバランスが崩れ、オリフィスよりイン
ク柱16が成長し始める。同図(d)は気泡15が最大
に成長した状態を示し、オリフィス面より気泡15の体
積に相当する分のインク14が押出される。この時、ヒ
ータ8には既に電流が流れていない状態にあり、ヒータ
8の表面温度は降下しつつある。気泡15の体積の最大
値は電気パルス印加のタイミングよりやや遅れたものと
なる。やがて、気泡15はインク14などにより冷却さ
れて同図(e)に示すように収縮し始める。インク柱1
6の先端部では押出された速度を保ちつつ前進し、後端
部では気泡15の収縮に伴うインク流路の内圧の減少に
よってオリフィス面からインク流路内にインク14が逆
流し、インク柱16基部にくびれが生ずる。その後、同
図(f)に示すように気泡15がさらに収縮し、ヒータ
8面にインク14が接し、ヒータ8面がさらに冷却され
る。オリフィス面では外圧がインク流路内圧より高い状
態になるため、メニスカスが大きくインク流路内に入り
込んでくる。インク柱16の先端部は液滴17となって
記録紙(図示せず)の方向へ5〜10m/secの速度で飛
翔する。その後、同図(g)に示すように毛細管現象に
よりオリフィスにインク14が再び供給(リフィル)さ
れて同図(a)の定常状態に戻る過程で、気泡15は完
全に消滅する。
【0023】ついで、このようなヘッドチップ1を構成
する発熱体基板2、流路基板3等について詳細に説明す
る。まず、発熱体基板2について説明する。一般に、こ
の種のサーマルインクジェットヘッド用の発熱体基板と
しては熱伝導率の高いSiウエハやアルミナセラミック
スなどが使用される他、材料入手の容易なガラス基板な
どが使用されるが、本実施例の発熱体基板2は単結晶基
板、より好ましくは、半導体工業分野で多用されている
単結晶Siウエハ、最適には、(100)面の結晶方位
面に切出された単結晶Siウエハが用いられる。このよ
うな単結晶Siウエハ上にヒータ8等が形成されること
になる。
【0024】このSiウエハは例えば拡散炉中でO2
2O のガスを流しながら、800〜1000℃の高温
にさらされ、表面に熱酸化膜SiO2 を1〜2μm成長
させる。この熱酸化膜SiO2 は図4に示すように蓄熱
層21として働き、発熱体で発生した熱が発熱体基板2
側に逃げないようにすることで、インク方向に効率よく
熱が伝わるようにするためのものである。この蓄熱層2
1上にはヒータ8となる発熱層22が形成される。この
発熱層22を構成する材料としては、タンタル‐SiO
2 の混合物、窒化タンタル、ニクロム、銀‐パラジウム
合金、シリコン半導体、或いは、ハフニウム、ランタ
ン、ジルコニウム、チタン、タンタル、タングステン、
モリブデン、ニオブ、クロム、バナジウム等の金属の硼
化物が有用である。金属の硼化物中、特に優れているも
のは、硼化ハフニウムであり、以下、硼化ジルコニウ
ム、硼化ランタン、硼化タンタル、硼化バナジウム、硼
化ニオブの順となる。発熱層22はこのような材料を用
いて、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの手法
により形成される。発熱層22の膜厚としては、単位時
間当りの発熱量が所望通りとなるように、その面積、材
料及び熱作用部分の形状及び大きさ、さらには、実際面
での消費電力等によって決定されるが、通常、0.00
1〜0.5μm、より好ましくは0.01〜1μmとさ
れる。本実施例では、その一例としてHfB2 (硼化ハ
フニム)を材料として2000Åの膜厚にスパッタリン
グ形成されている。
【0025】電極9,10を構成する材料としては、通
常使用されている電極材料の多くのものを使用し得る。
具体的には、例えばAl,Ag,Au,Pt,Cu等が
挙げられ、これらを使用して蒸着等の手法により発熱層
22上の所定位置に所定の大きさ、形状、膜厚で形成さ
れる。本実施例では、例えばAlを用い、スパッタリン
グ法により膜厚1.4μmの電極9,10を形成した。
【0026】ついで、これらの発熱層22や電極9,1
0上には保護層23が形成される。この保護層23に要
求される特性は、ヒータ8部分で発生した熱をインクに
効率よく伝達することを妨げず、かつ、ヒータ8をイン
クから保護し得ることである。よって、この保護層23
を構成する材料としては、例えば酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化タ
ンタル、酸化ジルコニウム等がよい。これらを材料とし
て、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法により保護層
23が形成される。また、炭化珪素、酸化アルミニウム
等のセラミックス材料を用いてもよい。保護層23の膜
厚としては、通常、0.01〜10μmとされるが、好
ましくは、0.1〜5μm、最適には0.1〜3μm程
度とするのがよい。本実施例では、SiO2 膜としてス
パッタリング法により1.2μmの膜厚に形成した。
【0027】さらに、保護層23上に耐キャビテーショ
ン保護層24が形成されている。この保護層24は発熱
体領域を気泡発生によるキャビテーション破壊から保護
するためのものであり、例えば、Taをスパッタリング
法により4000Åの膜厚に形成される。さらに、その
上部には、電極9,10対応位置に位置させて膜厚2μ
mのResin層が電極保護層25として形成されている。
【0028】次に、流路基板3について説明する。この
流路基板3は発熱体基板2と同じく単結晶Siウエハ、
より具体的には、図5に示すように(100)面の結晶
方位に切出されたSiウエハが用いられる。この単結晶
Siウエハは図におけるX軸とY軸とが互いに直交する
<110>となるように選定され、かつ、X‐Y軸面
(上下面)が単結晶の(100)面となるように選定さ
れている。このようにすると、単結晶の(111)面は
Y軸に平行で、かつ、X‐Y軸面に対して約54.7°
の角度で交わることになる。流路基板3に形成される流
路用溝6はV字溝形状とされるが、このV字溝はその2
つの傾斜面が各々(111)面で構成されている。(1
11)面は他の結晶面に比べ水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、ヒトラジンのようなアルカリ系溶液によるエ
ッチング速度が極めて遅く、(100)面をアルカリ系
溶液でエッチングすると、(111)面で規制されたV
字形の溝を流路用溝6として得ることができる。このよ
うなV字溝の上部の幅はフォトエッチングの際のフォト
レジストの間隔で定まり、極めて精度の高いものとな
る。また、V字溝の深さは(100)面と(111)面
とのなす角度(約54.7°)と上面の幅とで定まるの
で、これも極めて精度の高いものとなる。さらには、エ
ッチングによって現れた(111)面は極めて平滑で直
線性のよいものとなる。
【0029】ここに、このような単結晶Siウエハを用
いて、異方性フォトエッチング法により流路用溝6を形
成する方法について、図6を参照して説明する。まず、
図5で説明したような結晶方位のSi単結晶からなる流
路基板3を用意する。図6(a)に示す状態では、紙面
に対して垂直方向が<110>軸、この基板3の上下面
が(100)面となる。このような基板3を、例えば8
00〜1200℃程度の水蒸気雰囲気中に置き、表面全
面に熱酸化膜26を形成する。熱酸化膜26の膜厚はエ
ッチング深さの0.3%程度あれば十分である。つい
で、同図(b)に示すように、熱酸化膜26の上面全面
に周知の方法でフォトレジストを塗布し、これを写真乾
板を用いて露光し、現像を行い、フォトレジストパター
ン27を得る。ついで、同図(c)に示すように、この
フォトレジストパターン27により露出している部分の
熱酸化膜26をフッ酸水溶液等により除去し、シリコン
の露出部3aを得て、その後、フォトレジストパターン
27を取り去る。このような状態にある基板3を、例え
ば5〜40%,80℃の水酸化カリウム溶液中において
エッチングする。これにより露出部3aのエッチングが
進行するが、(111)面のエッチング進行速度は(1
00)面におけるエッチング進行速度の0.3〜0.4
%程度であるため、異方性エッチングとなり、露出部3
aの各溝部からは基板3の上面(前述したように、(1
00)面である)に対し、tan~1√2(約54.7°)
の角度をなす(111)面が現れる。結局、エッチング
により形成される流路用溝6の溝形状は同図(d)に示
すように台形状となる。さらにエッチングを進めると、
流路用溝6は同図(e)に示すように、2つの(11
1)面によって規制されたV字溝となる。
【0030】このようなV字溝の精度について考察する
と、まず、熱酸化膜26端部の下溝における、いわゆる
アンダカットは極めて小さく、純度の高い水酸化ナトリ
ウムを使用した場合、(100)面のエッチング深さの
0.2%程度でしかない。従って、V字溝の幅(W)
は、フォトマスクの誤差を考慮に入れても±1μm程度
の精度とすることができる。また、V字溝の底部がなす
角度は(111)面同士がなす角度(約70.6°)で
決定される。V字形の深さ(d)はW/√2となる。
【0031】最後に、同図(f)に示すように、エッチ
ングマスクに使用した熱酸化膜26をフッ酸水溶液等に
より除去することによりV字溝形状なる流路用溝6が形
成された単結晶Siのみによる流路基板3となる。な
お、このような流路基板3を実際にヘッドチップ1に適
用するには、Siウエハをインクから保護するため、S
iO2 ,Si34等の保護膜で保護するようにするのが
よい。
【0032】このように異方性エッチングによりV字溝
形状で形成された流路用溝6を有する流路基板3は、前
述したようにヒータ8等が形成された発熱体基板2上
に、接合又は圧接されて積層状態とされる。この際、発
熱体基板2及び流路基板3は、双方の基板の<110>
軸方向を揃えて積層接合される。ここに、積層されたこ
れらの基板2,3について、ヒータ8部分から少し下流
(100〜200μm程度)の領域において、流路(流
路用溝6)に対してほぼ垂直方向にダイシングソーによ
って切断することにより、インク流路開口、ここではイ
ンク吐出用のノズル5が切出されてヘッドチップ1が完
成する。図1(a)はこのようにして完成したヘッドチ
ップ1を示し、同図(b)はそのインク吐出用のノズル
5から見た一部を拡大して示す正面図である。
【0033】なお、インク吐出用のノズル5の形成方法
としては、上記のように、ダイシングソーによって切断
した面(インク流路開口面)をそのまま直接インク吐出
用ノズル面とする他、例えば、図7に示すように、三角
形状の吐出ノズル28aを形成したノズル板28を別個
に用意し、これをインク流路開口が切断形成されたヘッ
ドチップ1端面に接合させるようにしてもよい。このよ
うなノズル板28は、例えばポリサルフォン、ポリエー
テルサルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリプロ
ピレンなどの樹脂板(厚さは、10〜50μm程度)
に、エキシマレーザを照射して樹脂を除去・蒸発させる
ことにより吐出ノズル28aを形成したものとすればよ
い。このような製法によると、吐出ノズル28a用の三
角形のマスクパターンに沿った精密な加工を簡単に行う
ことができ、高精度なノズル板28が得られる。このノ
ズル板28はヘッドチップ1の切断面に接着剤により接
合される。また、このような製法で得られる吐出ノズル
28aの大きさは、ヘッドチップ1の切断面におけるイ
ンク流路の断面の大きさと同等か、やや小さめとするの
がよい。何れにしても、このようにノズル板28を別体
で設けたヘッド構造によれば、図1等に示したものに比
べ、インク噴射の安定性が高いものとなる。
【0034】このような本実施例の基本構成によれば、
インク流路が非常に滑らかなため、インク噴射性能に優
れたものとなる。
【0035】次に、本実施例の特徴の一つである請求項
3記載の発明によるチップ化処理について説明する。本
実施例では、発熱体基板2、流路基板3とも単結晶材
料、具体的には、Siウエハにより形成されている。従
って、単結晶の持つ性質として、機械的に脆く、その取
出し(チップ化分離)には細心の注意を要する。この
点、本実施例では、特に流路基板3をSiウエハから流
路基板チップに分離する方法が工夫されている。
【0036】まず、単結晶材料は、一般に、へき開と呼
ばれる性質を有しており、結晶軸の方向には容易に割れ
易くなっている。本実施例のように、(100)面のS
iウエハを使用して流路基板3を作製する場合であれ
ば、Siウエハは、<110>軸方向に割れ易いものと
なる。そこで、本実施例では、Siウエハから微小な流
路基板チップを形成する際には、その割れ易い結晶軸方
向に、ダイシング溝を入れてチップ化するように工夫さ
れている。つまり、直交する2つの<110>軸方向に
ダイシング溝を入れて、矩形状の流路基板チップを形成
するものである。
【0037】これに対応して、発熱体基板2側について
も、流路基板3側と同じく、(100)面のSiウエハ
に関して、直交する2つの<110>軸方向にダイシン
グ溝を入れることで、矩形状の発熱体基板チップを形成
するように設定されている。
【0038】ここに、チップ化についての実験例を示
す。 (実験1)厚さ0.5mmで(100)面に結晶方位面を
持つように切出した直径5インチのSiウエハを用い、
7mm×10mmの大きさの矩形チップをダイシング法によ
り144個切出す実験を行ったものである。使用したダ
イシングソーはディスコ社製のDAD−2H/5型であ
り、ブレード回転数は30000rpm 、ブレード送り速
度は2mm/sとした。使用したブレードは、ディスコ社
製NBC−Z600(=外径52mm×厚さ0.1mm×内
径40mm)である。Siウエハをダイシングフィルムに
貼付け、ダイシングソーに真空チャックし、0.5mmの
切込み深さで直交する2つの<110>軸方向にダイシ
ングを行ったものである。この結果、144個のチップ
を全て破損なくチップ化できたものである。
【0039】(実験2)実験1と同じダイシングソー、
Siウエハ等を用い、ダイシング方向のみを、<110
>軸方向とは無関係(ランダム)な方向として144個
分のチップ化を行ったものである。結果は、144個の
チップの内、113個のチップに微小な欠け、或いは、
全面に割れが生じ、31個のチップだけが、7mm×10
mmの大きさで破損のない矩形チップとして得られたもの
である。破損等を生じたチップを観察したところ、欠
け、或いは、割れが<110>軸方向に生じていたこと
が判明した。
【0040】以上の実験結果からも分かるように、Si
ウエハからチップ化する場合には、結晶軸の方向にダイ
シングを行うことが重要である。従って、本実施例のよ
うに、(100)面を結晶方位面として切出されたSi
ウエハに流路用溝6を形成してなる流路基板3をSiウ
エハから切断してチップ化して得る際、直交する2つの
等価な<110>軸方向にダイシングを行えば、歩留ま
りの高いものとなる。また、(100)面を結晶方位面
として切出されたSiウエハによる発熱体基板2を、S
iウエハから切断してチップ化して得る際、直交する2
つの等価な<110>軸方向にダイシングを行えば、歩
留まりの高いものとなる。
【0041】また、本実施例の特徴の一つである請求項
1記載の発明によるヘッドチップ1のダイシング処理
(インク吐出ノズル面の切出し)について説明する。本
実施例では、発熱体基板2、流路基板3とも、単結晶材
料よりなり、これらの基板2,3は積層された状態でダ
イシングによりインク吐出ノズル面が切出される。この
際、上述した実験結果からも分かるように、仮に、ダイ
シング時に結晶軸方向から外れた方向にダイシングを行
うと、破損のないヘッドチップ(基板2枚の積層物)を
得ることが困難となる。この点、本実施例では、発熱体
基板2、流路基板3ともに同一方位面に切出されたSi
ウエハをベースとし、両基板2,3とも同一結晶軸にダ
イシングを行うことによりチップ化したものを用いるよ
うにされている。
【0042】具体的には、(100)面を結晶方位面と
して切出されたSiウエハ上にヒータ8等を形成した発
熱体基板2は直交する2つの等価な<110>軸方向に
ダイシングを行ってチップ化され、(100)面を結晶
方位面として切出されたSiウエハ上に異方性エッチン
グにより流路用溝6を形成した流路基板3は直交する2
つの等価な<110>軸方向にダイシングを行ってチッ
プ化されたものが用いられ、これらの2つのチップが積
層される。積層状態で、ヒータ8部分より少し下流領域
において、<110>軸方向(換言すれば、流路用溝6
に直交する方向)にダイシングソーによって両基板2,
3の積層物を切断することにより、インク吐出ノズル面
が切出し形成される。つまり、2枚の基板2,3をその
結晶軸方向を揃えて積層し、同じ結晶軸方向に切断する
ようにしているので、欠けや割れなどの破損を生ずるこ
となく、インク吐出ノズル面を形成できることになる。
【0043】この点に関する具体例を比較例と対比して
示す。 (具体例1)具体例として、まず、直径5インチ、厚さ
0.5mmで(100)面を結晶方位面として切出された
Siウエハを用い、400dpi で128素子分を配列さ
れた発熱体基板2を作製した。チップは、7mm×10mm
の大きさで144個取りとした。このSiウエハを前述
した実験1と同じ方法・処理で直交する<110>軸方
向にダイシングを行い、チップ化した。次いで、同様
に、直径5インチ、厚さ0.5mmで(100)面を結晶
方位面として切出されたSiウエハを用い、400dpi
で128本分の流路用溝6をV字溝として異方性エッチ
ングにより形成した流路基板3を作製した。チップは、
7mm×10mmの大きさで144個取りとした。このSi
ウエハを前述した実験1と同じ方法・処理で直交する<
110>軸方向にダイシングを行い、チップ化した。こ
れらの2つのチップ(発熱体基板チップと流路基板チッ
プ)を、発熱面と溝面とが相対するようにして積層し、
接着接合して積層物とした。このような積層物を50個
作製し、ヒータ8部分より下流100μmの位置で流路
用溝6にほぼ直交する<110>軸方向にダイシングを
行い、インク吐出ノズル面を切出すようにした。この
時、ダイシングの条件は、ブレード厚さを0.25mmと
し、切込み深さは1mmとし、ブレード送り速度を0.3
mm/sとした以外は、実験1の場合と同じとした。結果
は、50個全てについて、破損を生ずることなく、イン
ク吐出ノズル面を良好に切出すことができたものであ
る。
【0044】(比較例)具体例1で作製したものと同じ
積層物を20個用意し、流路の領域において流路用溝6
に対して垂直ではない方向(ここでは、垂直方向から約
20°ずれた方向)に、具体例1の場合と同じ切込み深
さでダイシングを行ったところ、20個の積層物全てに
破損を生じたものである。
【0045】さらに、本発明の特徴の一つである請求項
5記載の発明によるチップ化処理について説明する。こ
れは、特に流路基板3のチップ化に関するものであり、
前述したチップ化処理は、ダイシングによりチップ化し
たが、ここでは、流路用溝6等を形成するための異方性
エッチングを利用するようにしたものである。前述した
ように、流路用溝6を有する本実施例の流路基板3は異
方性エッチングにより形成される。そこで、ここではS
iウエハから流路基板をチップ化する際にもこの異方性
エッチングを利用することにより、別工程を要せず、容
易にして、高精度な寸法でチップ化できるようにしたも
のである。
【0046】図8はその一例を示すもので、Siウエハ
に流路用溝6をV字溝として形成する異方性エッチング
工程において、流路基板3のサイズ輪郭位置に、流路用
溝6よりもはるかに深い溝、ここではSiウエハの底面
に到達する程の深さのV字溝をチップ化溝30として形
成し、このチップ化溝30部分でチップ化分離して、各
流路基板3を形成するようにしたものである。
【0047】ここに、チップ化溝30のような深くて大
きい溝を形成するには、図6に示した異方性エッチング
工程において、Siウエハの露出部3aの幅を大きくす
ればよい。また、流路用溝6の深さとチップ化溝30の
深さとに違いがあると、エッチング時間の違いが問題に
なるという懸念が生ずるが、実際には、このようなエッ
チング時間の違いは殆ど問題とはならない。その理由
は、流路用溝6のようなV字溝は一旦形成されると(異
方性エッチングがV字溝の下端まで達すると)、そのV
字溝は、2つの(111)面で形成された溝となるた
め、エッチングがほぼストップし、それ以上、殆ど進行
しない状態となるからである。これは、(111)面が
他の面に比べてそのエッチング速度が極めて遅いためで
ある。従って、流路用溝6がほぼ形成された後もしばら
くの間、Siウエハをエッチング液に漬けておくことに
より、流路用溝6のエッチングを殆ど進行させることな
く、チップ化溝30についてその(100)面による露
出部3aが露出している限り、エッチングが進行してい
くことになる。その後、チップ化溝30の下端がSiウ
エハの底面に達するまでエッチングが進行した時点でエ
ッチングを終了させることにより、流路基板3のチップ
化が終了する。
【0048】ところで、チップ化溝30形成のためにエ
ッチングをSiウエハの底面まで行うと、その終了時点
では、全てのチップがバラバラになってしまう。このよ
うにバラバラになったチップをエッチング槽内で全て簡
単に収容し得るエッチング槽構造であればこのままでよ
いが、バラバラとなったチップの収容が困難なエッチン
グ槽を用いる場合には、例えば、図9に示すように、S
iウエハの途中の深さでエッチングを止めて形成される
チップ化溝31としてもよい。このようなチップ化溝3
1による場合、チップ化溝31に対して僅かな折曲げ力
を作用すれば、単結晶のへき開特性により、容易にチッ
プ化分離することができる。
【0049】また、このようなチップ化溝30を形成す
る平面的なパターンとしては、例えば図10に示すよう
に僅かな保持部30aを残して十字状に不連続的に形成
することで、Siウエハの底面までチップ化溝30用の
エッチングを行ったとしても、バラバラとならないよう
にしてもよい。後工程で、この保持部30aをチップ化
分離することは容易である。
【0050】また、本発明の特徴の一つである請求項6
記載の発明によるヘッドチップ1作製のための積層過程
の効率化について説明する。本実施例では、前述したよ
うにSiウエハを材料として流路基板3を形成している
ので、ガラス板製等のものと異なり、不透明であるた
め、流路用溝6側を下面として発熱体基板2上に積層さ
せる際、どの位置に流路用溝6が形成されているかは上
面(裏面)側からは認識できず、不便であり、アセンブ
リ工程に必要以上に時間がかかってしまう。そこで、こ
こでは、単純には例えばインク流入口4の位置を流路基
板3の矩形チップにおいてその中心位置(対角線の交差
する位置)から外れた位置、具体的には、インク吐出口
とは反対の後部側にシフトした位置に形成することによ
り、インク流入口4を認識手段とし、流路基板3を積層
アセンブリ化する際の方向性が分かるように構成されて
いる。これにより、流路基板3が不透明であっても、発
熱体基板2上に正しい方向性で積層取付けすることがで
き、作業効率のよいものとなる。
【0051】この他、例えば図11(a)(b)に示す
ように、流路基板3の角部や側辺等の適宜個所に切欠3
2a,32bを認識手段として形成し、どの位置に流路
用溝6があるかといった取付け方向性を外から容易に認
識できるものとなる。このように切欠32a,32bは
異方性エッチング工程を利用してそのまま形成すること
ができ、特別な工程を要することもない。
【0052】さらに、本発明の特徴の一つである請求項
7記載の発明によるアセンブリ化工程における位置整合
方式について説明する。これは、Siウエハによる流路
基板3が不透明であっても、その流路用溝6を各ヒータ
8に対して正しく位置整合させた状態でアセンブリ化し
得るようにしたものである。まず、発熱体基板2上には
流路基板3の4隅相当位置に位置させてL字形状の4つ
の位置決めパターン33がフォトファブリケーションに
より形成されている。即ち、これらの位置決めパターン
33はX軸、Y軸なる2軸方向の辺を有するものとされ
ている。また、これらの位置決めパターン33の位置、
形状に対応させて、流路基板3の4隅はその形成工程に
用いる異方性エッチングを利用して角状に切欠形成(貫
通形成)した4つの位置決め透視部34が形成され、対
応する位置の位置決めパターン33と位置決め透視部3
4との対により、4つの位置整合手段35が構成されて
いる。即ち、位置決め透視部34も位置決めパターン3
3のX軸、Y軸なる2軸方向の辺に対応すべき辺を有す
るものとして形成されている。
【0053】このような構成によれば、図12に示すよ
うに流路基板3を発熱体基板2上に積層させてアセンブ
リ化する際に、各位置整合手段35において、図13に
示すように位置決め透視部34の各辺が位置決めパター
ン33の2軸方向の各辺の位置に対応するように位置合
わせすればよく、簡単に流路用溝6とヒータ8とが正し
い位置関係となるように位置整合させてアセンブリ化す
ることができる。ここに、流路基板3においては、異方
性エッチング工程を利用するため、別工程を要しないと
ともに、レーザ加工等による場合に比して、位置精度の
高い位置決め透視部34を形成できるものとなる。
【0054】なお、位置決め透視部としては図12や図
13に示したように流路基板3の4隅部分に形成したも
のに限らず、例えば、図14に示すように流路用溝6な
どの支障ない4個所位置に異方性エッチングにより角穴
状に貫通形成した位置決め透視部36としてもよい(こ
れらの位置決め透視部36の対応位置に図12等に示し
た位置決めパターン33が形成される)。
【0055】ところで、上記説明では、流路基板3にお
ける流路用溝6をV字状溝として形成したが、図15等
に示すように、台形状溝とした流路用溝6を形成したも
のにも、前述したダイシング処理等を同様に適用し得る
(請求項3記載の発明に相当する)。ここでは、このよ
うな台形状溝による流路用溝6の形成方法等について説
明する。
【0056】まず、流路基板3としては、この場合も前
述したように単結晶Siウエハ、より具体的には、図5
に対応させた図16に示すように(100)面の結晶方
位に切出されたSiウエハが用いられる。この単結晶S
iウエハは図におけるX軸とY軸とが互いに直交する<
110>軸となるように選定され、かつ、X‐Y軸面
(上下面)が単結晶の(100)面となるように選定さ
れている。このようにすると、単結晶の(111)面は
Y軸に平行で、かつ、X‐Y軸面に対して約54.7°
の角度で交わることになる。
【0057】このような流路基板3に形成される流路用
溝6は発熱体基板2と積層した状態で断面台形状となる
ような形状とされるが、その断面台形状をなす2つの側
面は各々等価な(111)面により傾斜面として形成さ
れ、インク流路において天井面をなす底面は(100)
面により形成されている。ここに、(111)面は他の
結晶面に比べアルカリ系溶液によるエッチング速度が極
めて遅く、(100)面をアルカリ系溶液でエッチング
すると、(100)面に対して約54.7°をなす(1
11)面が現れ、図16に示すように断面台形状をなす
ように拡開した流路用溝6が形成される。このような断
面台形状溝の上部の幅W1 はフォトエッチングの際のフ
ォトレジストの間隔で定まり、極めて精度の高いものと
なる。また、断面台形状溝の深さdは、異方性エッチン
グ時間をコントロールすることにより容易に管理でき
る。さらには、このようなエッチングによって現れた
(111)面は鏡面状態となっており極めて平滑で直線
性のよいものとなる。
【0058】ここに、このような単結晶Siウエハを用
いて、異方性フォトエッチング法により断面台形状の流
路用溝6を形成する方法について、図17を参照して説
明する。基本的には、図6により説明した形成方法でよ
く、図17(a)〜(d)なる工程は、図6(a)〜
(d)と同様に行われる。ただし、異方性エッチングを
行うためのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等に代えて、水酸化テトラメチルアンモ
ニウム水溶液が用いられる。これによれば、異方性エッ
チングにより鏡面仕上げされる(111)面に加えて、
流路天井面を形成する(100)面も非常に滑らかな状
態に仕上げられることが判明したからである。図17
(d)に示すような断面台形状溝の精度について考察す
ると、まず、熱酸化膜26端部の下溝における、いわゆ
るアンダカットは極めて小さく、(100)面のエッチ
ング深さの0.2%程度でしかない。従って、断面台形
状溝の上部の幅W1 は、フォトマスクの誤差を考慮に入
れても±1μm程度の精度とすることができる。
【0059】この後、V字状溝の場合と異なり、図17
(d)に示す段階でエッチングを終了させ、最後に、同
図(e)に示すように、エッチングマスクに使用した熱
酸化膜26をフッ酸水溶液等により除去することにより
断面台形状なる流路用溝6が形成された単結晶Siのみ
による流路基板3となる。なお、このような流路基板3
を実際にヘッドチップ1に適用するには、Siウエハを
インクから保護するため、SiO2 ,Si34等の保護
膜で保護するようにするのがよい。
【0060】このように異方性エッチングにより台形状
溝として形成された流路用溝6を有する流路基板3は、
前述した場合と同様に、発熱体基板2上に、接合又は圧
接されて積層状態とされる。この際、発熱体基板2及び
流路基板3は、双方の基板の<110>軸方向を揃えて
積層接合される。ここに、積層されたこれらの基板2,
3について、ヒータ8部分から少し下流(100〜20
0μm程度)の領域において、流路(流路用溝6)に対
してほぼ垂直方向にダイシングソーによって切断するこ
とによりインク吐出用のノズル5が切出されてヘッドチ
ップ1が完成する。図15(a)はこのようにして完成
したヘッドチップ1を示し、同図(b)はそのインク吐
出用のノズル5から見た一部を拡大して示す正面図であ
る。
【0061】なお、インク吐出用のノズル5の形成方法
としては、この場合も、図7に示した場合に準じて、図
18に示すように、台形状の吐出ノズル28bを形成し
たノズル板28を別個に用意し、これをヘッドチップ1
端面に接合させるようにしてもよい。
【0062】このような台形状溝による流路用溝6を形
成した流路基板3を用いる場合も、V字状溝による場合
と同様に、Siウエハの(100)面に対する異方性エ
ッチングにより形成されるため、非常に高精度であり、
かつ、流路面も非常に滑らかなものとなり、インク流路
として理想的なものとなる。特に、台形状溝による場合
は、V字状溝による場合に比べ、ヒータ8部分で発生す
る気泡のトラップ、即ち、流路天井面付近での気泡の残
留が少なくなるメリットもある。
【0063】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、単結晶基
板上に蓄熱層と発熱層とこの発熱層に通電するための電
極と保護層とを形成した発熱体基板と、前記単結晶基板
と同じ結晶方位面に切出された単結晶基板上に異方性エ
ッチングにより流路用溝を形成した流路基板とよりな
り、前記発熱体基板とこの流路基板とを結晶軸方向を揃
えるとともに発熱面と溝面とが相対するように積層し、
この積層物を流路用溝とほぼ垂直方向に切断してインク
流路開口を形成してサーマルインクジェットヘッドを構
成することで、発熱体基板と流路基板とを同じ結晶方位
面に切出された単結晶基板で形成したので、両基板を積
層、切断して吐出ノズルを形成するヘッド構造に関し
て、両基板が同じ結晶軸方向に切断されるものとなり、
その切断時に破損が生ずることがなく、歩留まりの高い
ヘッドを提供できる。
【0064】特に、請求項2記載の発明によれば、発熱
体基板、流路基板とも単結晶シリコンウエハによるその
単結晶基板を<110>軸方向を揃えて積層させている
ので、切断によりインク流路開口を形成する際に、<1
10>軸方向に切込みが入ることになり、その切断時に
破損が生ずることがなく、歩留まりが一層向上するもの
となる。
【0065】また、請求項3又は4記載の発明によれ
ば、単結晶基板を(100)面の結晶方位面に切出され
たシリコンウエハとし、その(100)面に流路用溝を
V字溝又は台形状溝として形成した流路基板のチップを
シリコンウエハから取出す際に、直交する2つの等価な
<110>軸方向のダイシングによりチップ化するよう
にしたので、ダイシングに際して破損することがなく、
高い歩留まりで流路基板を作製できるものとなる。
【0066】また、請求項5記載の発明によれば、異方
性エッチングにより流路用溝より深く形成したチップ化
溝により流路基板をチップ化するようにしたので、流路
用溝を形成する工程で済ませることができ、後で別工程
としてダイシング等を行う必要がなく、工程を短縮で
き、かつ、異方性エッチングによるチップ化溝でチップ
化するので、得られる流路基板チップの寸法精度の高い
ものとすることができる。
【0067】さらに、これらの発明において、請求項6
記載の発明によれば、流路基板を発熱体基板上に積層取
付けする際に、流路基板が不透明であっても、その溝面
とは反対の外部から視認し得る面に流路用溝等の取付方
向を認識させる認識手段を有するようにしたので、発熱
体基板上への積層取付けを容易に行うことができる。
【0068】一方、請求項7記載の発明によれば、発熱
体基板に形成した位置決めパターンと流路基板に貫通形
成した位置決め透視部との組合せによる位置整合手段を
設けたので、流路基板が不透明であってもアセンブリ時
に発熱部と流路用溝とを精度高く位置整合させることが
でき、特に、流路基板側の位置決め透視部は異方性エッ
チングによるため、別工程を必要としないとともに、レ
ーザ加工等による単純な貫通加工によるものに比べて、
非常に高精度となり、精度の高い位置整合が可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示し、(a)はヘッドチッ
プの斜視図、(b)はその一部を拡大して示す正面図で
ある。
【図2】発熱体基板を示す斜視図である。
【図3】サーマルインクジェットの記録原理を順に示す
縦断側面図である。
【図4】ヒータ付近を拡大して示す縦断側面図である。
【図5】流路基板の結晶面及び結晶軸方向を示す斜視図
である。
【図6】流路基板に関する異方性エッチング工程を順に
示す縦断正面図である。
【図7】変形例を示す分解斜視図である。
【図8】チップ化処理の特徴を示す正面図である。
【図9】その変形例を示す正面図である。
【図10】別の変形例を示す平面図である。
【図11】流路基板を示す平面図である。
【図12】アセンブリ化処理の特徴を示す分解斜視図で
ある。
【図13】その一部を拡大して示す平面図である。
【図14】その変形例を示す平面図である。
【図15】台形状溝による実施例を示し、(a)はヘッ
ドチップの斜視図、(b)はその一部を拡大して示す正
面図である。
【図16】その流路基板の結晶面及び結晶軸方向を示す
斜視図である。
【図17】その流路基板に関する異方性エッチング工程
を順に示す縦断正面図である。
【図18】その変形例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
2 発熱体基板 3 流路基板 4 認識手段 6 流路用溝 9,10 電極 21 蓄熱層 22 発熱層 23 保護層 30,31 チップ化溝 32a,32b 認識手段 33 位置決めパターン 34 位置決め透視部 35 位置整合手段 36 位置決め透視部

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単結晶基板上に蓄熱層と発熱層とこの発
    熱層に通電するための電極と保護層とを形成した発熱体
    基板と、前記単結晶基板と同じ結晶方位面に切出された
    単結晶基板上に異方性エッチングにより流路用溝を形成
    した流路基板とよりなり、前記発熱体基板とこの流路基
    板とを結晶軸方向を揃えるとともに発熱面と溝面とが相
    対するように積層し、この積層物を前記流路用溝とほぼ
    垂直方向に切断してインク流路開口を形成したことを特
    徴とするサーマルインクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】 発熱体基板と流路基板とを形成する単結
    晶基板をともに(100)面の結晶方位面に切出された
    単結晶シリコンウエハとし、双方の単結晶基板の<11
    0>軸方向を揃えて積層させたことを特徴とする請求項
    1記載のサーマルインクジェットヘッド。
  3. 【請求項3】 単結晶基板を(100)面の結晶方位面
    に切出された単結晶シリコンウエハとし、流路用溝をV
    字溝とし、前記シリコンウエハの直交する2つの等価な
    <110>軸方向のダイシングによりチップ化した流路
    基板としたことを特徴とする請求項1又は2記載のサー
    マルインクジェットヘッド。
  4. 【請求項4】 単結晶基板を(100)面の結晶方位面
    に切出された単結晶シリコンウエハとし、流路用溝を台
    形状溝とし、前記シリコンウエハの直交する2つの等価
    な<110>軸方向のダイシングによりチップ化した流
    路基板としたことを特徴とする請求項1又は2記載のサ
    ーマルインクジェットヘッド。
  5. 【請求項5】 異方性エッチングにより流路用溝より深
    く形成したチップ化溝によりチップ化した流路基板とし
    たことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のサー
    マルインクジェットヘッド。
  6. 【請求項6】 流路用溝を有する溝面とは反対側から発
    熱体基板に対する取付方向を認識させるための認識手段
    を有する流路基板としたことを特徴とする請求項1,
    2,3,4又は5記載のサーマルインクジェットヘッ
    ド。
  7. 【請求項7】 発熱体基板上にフォトファブリケーショ
    ンにより形成された位置決めパターンと、流路基板に対
    して前記位置決めパターンに対応する位置に異方性エッ
    チングにより貫通形成された位置決め透視部との組合せ
    よりなる位置整合手段を設けたことを特徴とする請求項
    1,2,3,4又は5記載のサーマルインクジェットヘ
    ッド。
JP16784993A 1993-04-23 1993-07-07 サーマルインクジェットヘッド Expired - Fee Related JP2865524B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16784993A JP2865524B2 (ja) 1993-04-23 1993-07-07 サーマルインクジェットヘッド

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5-97387 1993-04-23
JP9738793 1993-04-23
JP16784993A JP2865524B2 (ja) 1993-04-23 1993-07-07 サーマルインクジェットヘッド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0768760A JPH0768760A (ja) 1995-03-14
JP2865524B2 true JP2865524B2 (ja) 1999-03-08

Family

ID=26438568

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP16784993A Expired - Fee Related JP2865524B2 (ja) 1993-04-23 1993-07-07 サーマルインクジェットヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2865524B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4494367B2 (ja) * 2006-05-19 2010-06-30 シャープ株式会社 ノズルプレート製造方法
US8210649B2 (en) * 2009-11-06 2012-07-03 Fujifilm Corporation Thermal oxide coating on a fluid ejector
JP5614082B2 (ja) * 2010-04-14 2014-10-29 セイコーエプソン株式会社 液体噴射ヘッドユニットの位置決め機構、液体噴射ヘッドユニット、液体噴射装置及び液体噴射ヘッドユニットの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0768760A (ja) 1995-03-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7052117B2 (en) Printhead having a thin pre-fired piezoelectric layer
JP5566130B2 (ja) 液体吐出ヘッドの製造方法
JPH09123468A (ja) シリコン基板中にサーマル・インクジェット供給スロットを形成する方法
JPH078569B2 (ja) 感熱インクジエツト用印字ヘツドの製造方法
KR20060115386A (ko) 박막을 구비한 프린트 헤드
JPS62111758A (ja) インパルスインクジエツトプリントヘツド及びその製造方法
JPH1058685A (ja) シリコン内に表面配列されて形成されたチャネルを有するインクジェットプリントヘッド
JP4182921B2 (ja) ノズルプレートの製造方法
JP2865524B2 (ja) サーマルインクジェットヘッド
JP4166476B2 (ja) スロットをつけた基板の形成技術
JP2004082722A (ja) 液体噴射ヘッドの製造方法
JP2006224596A (ja) インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録ヘッドの製造方法
JP3088849B2 (ja) インクジェット記録ヘッド
JP5088487B2 (ja) 液体噴射ヘッド及びその製造方法
JPH07125210A (ja) サーマルインクジェットヘッド
JPH06305145A (ja) サーマルインクジェットヘッド
JPH07125206A (ja) サーマルインクジェットヘッド
JPH06320730A (ja) サーマルインクジェットヘッド
EP2382151B1 (en) Bonded microelectromechanical assemblies
JPH05318738A (ja) 液滴噴射記録ヘッド
JPH05293966A (ja) サーマルインクジェットヘッドチップの製造方法
JP3217837B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド
JPH11170533A (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2004001436A (ja) インクジェットヘッド、その製造方法、及び該インクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタ
JP6991760B2 (ja) シリコン基板の加工方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 9

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071218

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081218

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081218

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091218

Year of fee payment: 11

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees