JPH05293966A - サーマルインクジェットヘッドチップの製造方法 - Google Patents

サーマルインクジェットヘッドチップの製造方法

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JPH05293966A
JPH05293966A JP10147692A JP10147692A JPH05293966A JP H05293966 A JPH05293966 A JP H05293966A JP 10147692 A JP10147692 A JP 10147692A JP 10147692 A JP10147692 A JP 10147692A JP H05293966 A JPH05293966 A JP H05293966A
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substrate
wafer
dicing
groove
chips
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JP10147692A
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English (en)
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Takuro Sekiya
卓朗 関谷
Nobuhiko Umezawa
信彦 梅澤
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、サーマルインクジェットヘッドチ
ップの製造方法に関し、1枚の基板から多数のヘッドチ
ップを採る際、基板の割れ、及び各チップの欠けやクラ
ックを生じ難くすることができる他、吐出口を形成する
際、基板側から吐出口部にかけての欠けやクラックを生
じ難くすることができ、歩留り及び量産性良くヘッドチ
ップを形成することができるサーマルインクジェットヘ
ッドチップの製造方法を提供することを目的とする。 【構成】 単結晶材料からなる基板上に蓄熱層、発熱体
及び該発熱体に通電するための電極、保護層が形成され
てなる発熱体基板にインクが通る流路が形成されてなる
サーマルインクジェットヘッドにおいて、前記基板を複
数個のチップに分離する際に、前記基板の厚さ方向に前
記基板の底面に届かない深さの溝を結晶軸と略平行方向
に入れ、その後、単結晶の劈開を利用してチップに分離
するように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、サーマルインクジェッ
トヘッドチップの製造方法に係り、詳しくは液体噴射記
録装置等に適用することができ、インクに熱による状態
変化を生じせしめ、微小な吐出口よりインクを噴射して
記録するサーマルインクジェットヘッドチップの製造方
法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録法は、記録時におけ
る騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点
において、最近関心を集めている。その中で、高速記録
が可能であり、しかも所謂普通紙に特別の定着処理を必
要とせずに記録の行える所謂インクジェット記録法は極
めて有力な記録法であって、これまでにも様々な方式が
提案され、改良が加えられて商品化されたものもあれ
ば、現在もなお実用化への努力が続けられているものも
ある。
【0003】この様なインクジェット記録法は、所謂イ
ンクと称される記録液体の小滴(droplet )を飛翔さ
せ、記録部材に付着させて記録を行うものであって、こ
れについては例えば本発明者等は、特公昭56−942
9号公報の中で報告している。ここでは、液室内のイン
クを加熱して気泡を発生させてインクに圧力上昇を生じ
させ、微細な毛細管ノズルからインクを飛び出させて記
録するようにしている。その後、この原理を利用して多
くの発明がなされた。
【0004】例えば特開昭56−123869号公報で
報告されたものでは、アルミナ等のセラミックス、金
属、プラスチックス等を形成して得られる基板にインク
を噴射するためのエネルギー源としての発熱素子や圧電
素子等の駆動素子を設置し、その基板上に、感光性組成
物を塗布法やラミネート法等によって設けた後、通常行
われているフォトリソグラフィーの手段によってインク
流路溝を形成し、その後、インク流路溝の設けられた基
板に上蓋を接合して、インクジェット記録ヘッドが製造
されるようにしている。
【0005】また、例えば特開昭57−43876号公
報で報告されたものでは、前述の特開昭56−1238
69号公報のものから一歩進んで上蓋を接合した後、ダ
イシング法によって切断することによってインク吐出口
を形成するという点にまで言及しており、その製造方法
はより明確になった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の公報には、基板上にフォトリソグラフィー等の技術を
用いてインクジェットヘッドとして必要な構成(流路、
吐出口等)を形成する方法についての記載はあるもの
の、どのような基板を用いて如何にそれらを量産性良く
個々のヘッドチップにするかの記載はなく、このままで
は個々のヘッドチップにするのが非常に困難であった。
具体的には、1枚の基板から多数のヘッドチップを採る
際に、基板が割れたり、各チップに欠けやクラック等が
生じたりして、著しく歩留りが悪いものであった。
【0007】また、特開昭57−43876号公報のも
のでは、吐出口を形成する具体的な方法としてダイシン
グ法を挙げているが、基板側からの欠けやクラックが吐
出口部にまで及んでしまい、上記と同様歩留りは非常に
悪いものであった。そこで本発明は、1枚の基板から多
数のヘッドチップを採る際、基板の割れ、及び各チップ
の欠けやクラックを生じ難くすることができの他、吐出
口を形成する際、基板側から吐出口部にかけての欠けや
クラックを生じ難くすることができ、歩留り及び量産性
良くヘッドチップを形成することができるサーマルイン
クジェットヘッドチップの製造方法を提供することを目
的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明は、単結晶材料からなる基板上に
蓄熱層、発熱体及び該発熱体に通電するための電極、保
護層が形成されてなる発熱体基板にインクが通る流路が
形成されてなるサーマルインクジェットヘッドにおい
て、前記基板を複数個のチップに分離する際に、前記基
板の厚さ方向に前記基板の底面に届かない深さの溝を結
晶軸と略平行方向に入れ、その後、単結晶の劈開を利用
してチップに分離することを特徴とするものである。
【0009】請求項2記載の発明は、上記請求項1記載
の発明において、前記基板は(100)面を切り出した
Siウエハであり、溝は〈110〉軸と略平行に入れる
ことを特徴とするものである。請求項3記載の発明は、
前記基板は(100)面を切り出したSiウエハであ
り、前記流路は前記基板上に感光性樹脂膜のフォトリソ
グラフィーによって形成し、その後、前記流路を覆う第
2の基板を積層、接合し、該積層体に前記Siウエハの
底面に届かない深さの溝を〈110〉軸方向と略平行方
向に入れ、その後、単結晶の劈開を利用して、前記溝の
底面部分を分離して吐出口を形成することを特徴とする
ものである。
【0010】以下、本発明の原理を具体的に図面を用い
て説明する。まず最初に、図1を参照しながらサーマル
インクジェットによるインク噴射について説明する。
(a)は定常状態であり、オリフィス面でインク10の表
面張力と外圧とが平面状態にある。
【0011】(b)はヒータ9が加熱されて、ヒータ9
の表面温度が急上昇し隣接インク層に沸騰現象が起きる
まで加熱され、微小気泡11が点在している状態にある。
(c)はヒータ9の全面で急激に加熱された隣接インク
層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、この気泡11が生長し
た状態である。この時、ノズル内の圧力は、気泡の生長
した分だけ上昇し、オリフィス面での外圧とのバランス
がくずれ、オリフィスよりインク柱が生長し始める。
【0012】(d)は気泡が最大に生長した状態であ
り、オリフィス面より気泡の体積に相当する分のインク
10が押し出される。この時、ヒータ9には電流が流れて
いない状態にあり、ヒータ9の表面温度は降下しつつあ
る。なお、気泡11の体積の最大値は電気パルス印加のタ
イミングからやや遅れる。(e)は気泡11がインク10等
により冷却されて収縮を開始し始めた状態を示す。イン
ク柱の先端部では押し出された速度を保ちつつ前進し、
後端部では気泡の収縮に伴ってノズル内圧の減少により
オリフィス面からノズル内へインク10が逆流してインク
柱にくびれが生じている。
【0013】(f)は更に気泡11が収縮し、ヒータ面に
インク10が接しヒータ面が更に急激に冷却される状態に
ある。オリフィス面では、外圧がノズル内圧より高い状
態になるため、メニスカスが大きくノズル内に入り込ん
で来ている。インク柱の先端部は液滴になり記録紙の方
向へ5〜10m/ secの速度で飛翔している。(g)はオ
リフィスにインク10が毛細管現象により再び供給(リフ
ィル)されて(a)の状態に戻る過程で、気泡は完全に
消滅している。
【0014】このような原理のサーマルインクジェット
においては、通常図2(a)に示すような発熱体基板が
使用される。図2(b)は図2(a)に示した発熱体部
近傍のA1−A2断面図である。図2において、1はS
i等の基板であり、2、3、4は基板1上に順次形成さ
れたSiO2 等の蓄熱層、HfB2 等の発熱体(図1の
ヒータ9に該当する)、開口部を有するAl等の電極で
ある。そして、5、6、7は電極層4上に順次形成され
たSiO2 等の保護層、Ta等の耐キャビテーション保
護層、レジン等の電極保護層である。
【0015】次に、このような図2に示す発熱体基板を
製作する方法を説明する。本発明に使用されるその基板
は単結晶材料からなり、具体的には、SiあるいはGe
の単結晶ウエハからなり、その結晶面は(100)面を
切り出したものである。なお、この結晶面方位について
は後述する。ここでは、一例として(100)面のSi
ウエハ基板1上に発熱体3等を形成する方法を説明す
る。
【0016】まず最初に、例えば拡散炉中でO2 、H2
Oのガスを流しながら 800〜1000℃の高温にSiウエハ
基板1を曝し、Si基板1表面に熱酸化膜(SiO2
の蓄熱層2を1〜2μm成長させる。このSiO2 蓄熱
層2は蓄熱するための層として働き、後述する発熱体3
で発生した熱が基板1の方へ逃げないようにしてインク
の方向に効率良く伝わるようにするためのものである。
【0017】次に、発熱体3及び電極4等の形成方法に
ついて説明する。図2(b)は発熱体部近傍の詳細断面
図である。このSiO2 蓄熱層2上には発熱体3が形成
されるが、この発熱体3を構成する材料として有用なも
のには、タンタル−SiO2の混合物、窒化タンタル、
ニクロム、銀−パラジウム合金、シリコン半導体、ある
いはハフニウム、ランタン、ジルコニウム、チタン、タ
ンタル、タングステン、モリブデン、ニオブ、クロム、
パナジウム等の金属の硼化物が挙げられる。金属の硼化
物のうち最も特性の優れているものは、硼化ハフニウム
であり、次いで、硼化ジルコニウム、硼化ランタン、硼
化タンタル、硼化バナジウム、硼化ニオブの順となって
いる。
【0018】発熱体3は、上記の材料を用いて、電子ビ
ーム蒸着やスパッタリング等の手法を用いて形成するこ
とができる。発熱体3の膜厚は、単位時間当りの発熱量
が所望通りとなるように、その面積、材質及び熱作用部
分の形状及び大きさ、更には実際面での消費電力等に従
って決定されるものであるが、通常の場合、 0.001〜5
μm、好適には0.01〜1μmとされる。本発明では、例
えばHfB2 を2000Åスパッタリングした例を示した。
【0019】電極4を構成する材料としては、通常使用
されている電極材料の多くのものが有効に使用され、具
体的には、例えばAl、Ag、Au、Pt、Cu等が挙
げられ、これらを使用して蒸着等の手法で所定位置に、
所定の大きさ、形状、厚さで設けられる。本発明では、
例えばAlをスパッタリングにより 1.4μm形成した。
【0020】次に、保護層5に要求される特性は、発熱
体3で発生された熱を記録液体に効果的に伝達すること
を妨げずに、記録液体より発熱体3を保護するというこ
とである。保護層5を構成する材料として有用なものに
は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化マグネシ
ウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニ
ウム等が挙げられ、これらは、電子ビーム蒸着やスパッ
タリング等の手法を用いて形成することができる。ま
た、炭化ケイ素、酸化アルミニウム(アルミナ)等のセ
ラミック材料も好適に用いられる材料である。保護層5
の膜厚は、通常は0.01〜10μm、好適には 0.1〜5μ
m、最適には 0.1〜3μmとされるのが好ましい。本発
明では、例えばスパッタリングにより、SiO2 を 1.2
μm形成した。更に、本発明では、発熱体領域を気泡発
生によるキャビテーション破壊から保護するために耐キ
ャビテーション保護層6として、例えばTaをスパッタ
リングにより、4000Å形成した。そして、電極保護層7
としてレジン層を2μm形成している。
【0021】以上のようにして形成された発熱体基板に
は、その後、インクが通る流路を形成する。以下、具体
的に図面を用いて説明をする。次に、図3、4はインク
ジェット記録ヘッドの製作工程を説明するための図であ
る。図3、4において、21は基板、22はインク吐出圧発
生素子、23は薄膜、24はフォトレジスト、24Pは露出部
分、25はフォトマスク、26は平板状部材、27は感光性樹
脂膜、28はインク通路、28aはインク供給室、28bはイ
ンク細流路、28cはインク吐出口、29は貫通孔である。
【0022】図3(a)は、上記説明したような発熱体
基板を図示している。次いで、図3(b)に示す工程で
は、図3(a)に示した基板21上にインク吐出圧発生素
子22及び薄膜23が形成されてなる発熱体基板上に高粘度
(例えば 500〜1000cp) のフォトレジスト24をスピンコ
ーティングあるいはディップコーティング、若しくはロ
ーラーコーティングによって、10〜50μmの厚さにコー
トする。この厚さは、最終的に形成される吐出口のサイ
ズによって決定されるが、例えば最終的な吐出口サイズ
を25μm×25μmとするためには、1000cpのフォトレジ
ストを用いて、スピンコーティングにより500rpmで30秒
回転することにより25μmの厚さが得られる。次いで、
図3(b)に示すように、基板面に設けたフォトレジス
ト24上に所定のパターンを有するフォトマスク25を重ね
合わせた後、このフォトマスク25の上部からの露光を行
う。この時、インク吐出圧発生素子22の設置位置と上記
パターンの位置合わせを周知の手法で行っておく必要が
ある。
【0023】次に、図3(c)は、上記露光済みのフォ
トレジスト24の未露光部分をトリクロルエタン等の所定
の有機溶剤から成る現像液にて溶解除去した工程を示す
説明図である。次いで、基板21に残されたフォトレジス
トの露光された部分24Pの耐インク性向上のため、熱硬
化処理(例えば 150〜 250℃で30分〜60時間加熱) また
は、紫外線照射 (例えば50〜 200mV/cm2 またはそれ以
上の紫外線強度) を行い、充分に重合硬化反応を進め
る。上記熱硬化と紫外線による硬化の両方を兼用するの
も効果的である。
【0024】以上までは、いわゆるウエハプロセスによ
って行われる前述のように、本発明で使用されるSiウ
エハは、(100)面の結晶方位面に切り出されたウエ
ハである。次に、図3(d)は(100)面の結晶方位
面に切り出されたSiウエハを示している。ここで
〈 〉は結晶軸方位を、( )は結晶面方位を表す。ま
た、結晶軸は結晶面に対して垂直方向である。(10
0)面のウエハとは、直交する〈110〉軸によって形
成される平面がウエハ表面となるように切り出されたウ
エハである。図3(d)に示した切り欠きは、“オリエ
ンテーションフラット31”と呼ばれているもので、ウエ
ハの結晶軸方向を示す目安となるものである。ここで
は、〈110〉軸方向が判るように切り欠かれている。
【0025】次に、図4(e)は、前述の図3(a)〜
(c)の発熱体基板製作のプロセスを終了したウエハの
一例であり、ここでは一例として図2(a)のような発
熱体基板を30個取れるようにウエハ上にレイアウトした
ものである。この後、ウエハには、ダイシングソーによ
ってX、Y方向に溝が入れられ、図4(e)の拡大図に
示すように、各発熱体基板に分離される。ここで重要な
ことは、本発明では、ダイシングソーによる溝切りの方
向を略〈110〉軸と平行に入れるということである。
また、ダイシング溝の深さは、ウエハの厚さ方向におい
て、ウエハの底まで届かない深さにすることである。言
い換えるならば、ダイシングソーによって下まで全て切
らないということである。以下、このようにする理由を
具体的に説明する。
【0026】一般に単結晶材料は、脆く、ある特定の方
位をもった面に割れ易いという所謂劈開という性質をも
っている。従って、ウエハにある衝撃が加わった場合、
特定の方向に割れ易いので、その方向がチップ化する時
のダイシング溝の方向と一致していることが最も望まし
い。通常図2(a)に示したようなチップ化された発熱
体基板は長方形あるいは正方形形状とするのが一般的で
ある。このようなチップをウエハから採るために最も良
い方法は、結晶軸方向が直交するようなウエハ上にチッ
プのパターンを形成することである。このような理由か
ら、本発明では、(100)面のウエハを用い、チップ
化時のダイシング溝を互いに直交する〈110〉軸方向
に入れるようにしている。これにより、他の結晶面方位
に切り出されたウエハを用いたり、あるいは(100)
面のウエハであったとしても、〈110〉軸方向以外に
ダイシング溝を入れようとすると、ダイシング中にダイ
シング溝の方向とは異なる結晶軸方向にクラックが入
り、所望の形状のチップを得ることが難しくなる。
【0027】本発明のもう一つの特徴は、ダイシング溝
をウエハの底に届く深さまで入れないことである。その
理由は、ダイシング時の切削の負荷を軽減し、ダイシン
グスピードを上げ量産スピードを上げるためである。も
ちろん、ウエハの底に届く深さまでダイシング溝を入れ
ても、チップ化は可能であるが、切削の負荷が大きくな
るため、ブレードの送り速度を遅くしなければならない
という欠点がある。しかしながら、本発明では、ダイシ
ング溝はウエハの底に届かない深さで入れることによ
り、切削の負荷を小さくし、ブレードの送り速度を速く
することができる。本発明では、更にダイシング溝を
〈110〉軸と略平行方向に入れているため、ダイシン
グ溝深さは、ウエハの底に届かない深さであっても、溝
形成後に単結晶の劈開を利用して容易に各チップに分離
することができるため、非常に量産性がよい。
【0028】以上のようにして形成される発熱体基板の
チップは、次に、インク通路の覆いをする基板が接合さ
れる。次に、図4(f)はインク通路28の覆いを構成す
る電磁波を透過する材料、例えば透紫外光材料からなる
平板状部材26の表面に接合層としてフォトレジスト27を
コートしたものである。この場合、平面度の優れたドラ
イフィルムタイプのフォトプレジストをラミネートする
方法が好適に用いられる。
【0029】次に、図4(g)は、図4(f)について
説明した方法により作成した前記インク通路28の覆いを
構成する平板状部材26及び紫外線硬化型樹脂の感光性樹
脂膜27を押圧貼付した場合の説明図である。次に、透紫
外光材料から成る平板状部材26にラミネートされたドラ
イフィルム27に非酸素雰囲気下で紫外線照射(例えば50
〜 200mW/cm2 又はそれ以上の紫外線強度) を行い、ド
ライフィルムの感光性樹脂膜27を充分に硬化させる。更
に熱硬化処理(例えば 130〜 250℃で30分〜6時間加
熱)するのも有効である。ここで図4(g)の工程終了
後のヘッド外観斜視図を図4(h)に示す。
【0030】以上のとおり、溝を形成した基板とインク
通路との接合が完了した後、図4(h)のC1−C2線
に沿って切断する。これは、インク細流路28bにおい
て、インク吐出圧発生素子22とインク吐出口28cとの間
隔を最適化するために行うものであり、ここで切断する
領域は適宜決定される。この切断に際しては、半導体工
業で通常採用されているダイシング法が採用される。
【0031】次に、図5は、図4(h)のZ1−Z2線
方向の構造を示す断面図である。本発明では、図5のC
1−C2線のところで図6に示すように、ダイシング法
によって切断溝を入れる。次に、図7は、ダイシング構
造の様子を示す断面図である。ダイシング法によって吐
出口部を形成する際、本発明では、図より明らかなよう
に、基板(シリコンウエハ)の底面に届かない深さの溝
としている。これは、前述のチップ化の際に溝を入れる
場合と同じ理由による。即ち、切断時の負荷を小さくし
て切削のスピードを速くし、生産性を高めるためであ
る。ところで、この吐出口形成のためのダイシング溝
も、本発明では〈110〉軸と略平行に入れる。これに
より、ダイシング時にSiウエハにクラックが入った
り、欠けが生じたりして、不良品となることが生じない
ようにすることができる。本発明では、更にこの吐出口
形成のダイシング溝をSiウエハの底に届かない深さに
入れ、その後、単結晶の劈開を利用してダイシングソー
の切り残しの部分(図6中aの部分)を分離する。ダイ
シング溝の方向を〈110〉軸と略平行に入れる理由
は、この劈開を利用して不要部分(a部)を分離するた
めである。
【0032】次いで、切断面を研磨して平滑化し、貫通
孔29にインク供給管30を取り付けて図8に示すインクジ
ェット記録ヘッドが完成する。以上の説明より明らかな
ように、本発明では、吐出口形成のダイシング溝の方向
を〈110〉軸と略平行方向に入れるようにしている。
従って、吐出口の配列方向も〈110〉軸方向と略平行
な方向であり、従って、図2(a)あるいは図4
(e)、若しくは図4(h)に示した発熱体の配列方向
も〈110〉軸方向である。一方、インクが噴射する方
向はこれらの図の例では、発熱体の配列方向と略直角方
向に流路が形成されているため(図4h)、やはり〈1
10〉軸方向と互いに直交する〈110〉軸方向であ
る。
【0033】本発明では、ウエハからチップにする際、
及び吐出口を形成する際のダイシング溝の方向がいずれ
も〈110〉軸方向と略平行(あるいは直角方向という
表現もできるが)となるように形成されるため、図4
(e)に示したようなウエハ上でウエハプロセスによっ
てパターン形成を行う際、そのことを念頭においてフォ
トマスク設計あるいはフォトマスクのアライメントを行
うことが重要である。
【0034】以上の説明では、Siウエハを用いる例で
示したが、本発明に使用される材料は、Siに限定され
るものではなく、結晶軸の方向が互いに直交することに
よって形成される平面を切り出すことによってウエハ化
され、チップ化時、吐出口形成時に単結晶の性質である
劈開を利用できる材料であれば、他の材料も有効に利用
することができる。そして、Si以外には、例えばGe
単結晶の(100)面に切り出された基板も有効であ
る。
【0035】本発明に使用するフォトレジストは、紫外
線硬化型に限定される訳ではなく、可視光、X線、電子
線、レザー等の電磁波に感応する組成物であれば、いか
なるものでも使用できる。本発明の方法に使用できるド
ライフィルムタイプのフォトレジストとしては、例え
ば、デュポン社製パーマネントフォトポリマーコーティ
ングRISTON、ソルダーマスク730S、同740
S、同730FR、同740FR、同SM1、日立化成
工業(社)製PhotcSR−1000、同SR−20
00、同SR−3000、東京応化工業(社)製、オー
ディルSE−250、同SE−238、同SE−22
5、同SP−750、同SP−740、同SP−72
5、同SX−350、同SY−325等の商品名で市販
されているものが挙げられる。更にインク流路の覆いの
支持体となる平板状部材の材質としては、覆いを形成す
る感光性樹脂を光重合させるのに有効な波長の電磁波に
対して透過性を示し、かつ感光性樹脂の収縮応力によっ
ては容易に変形しないものであれば特に限定されない
が、製造上の便宜及び経済性から、ガラス、エポキシ樹
脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂等が推奨される。
【0036】
【作用】請求項1記載の発明では、基板を複数個のチッ
プに分離する際に、基板の厚さ方向に基板の底面に届か
ない深さの溝を結晶軸と略平行方向に入れ、その後、単
結晶の劈開を利用してチップに分離するようにしてお
り、チップに分離する際、結晶方向にうまく割れる(劈
開)ように溝を入れるようにしたため、クラックが入っ
たり、欠けたりして不良となることが生じないようにす
ることができる。また、溝の深さはウエハ底まで入れな
いようにしたため、切削負荷が小さく、高速でダイシン
グを行うことができ、生産効率を上げることができる。
【0037】請求項2記載の発明では、基板を(10
0)面を切り出したSiウエハとし、溝を〈110〉面
軸と略平行に入れるようにしており、基板として、(1
00)面Siウエハという半導体産業で大量に出回って
いる材料を利用するようにしたため、材料入手を容易に
することができるとともに、コストを安くすることがで
きる。また、Siは熱伝導率が高く、サーマルインクジ
ェット用基板としては連続使用時に熱を籠もり難くする
ことができる(放熱性が良い)。このため、高速駆動を
長時間行うことが可能なヘッドを形成することができ
る。蓄熱層の形成をSiの熱酸化によって容易に行うこ
とができる点もSiを利用するうえでの利点である。
【0038】請求項3記載の発明では、基板を(10
0)面を切り出したSiウエハとし、流路を基板上に感
光性樹脂膜のフォトリソグラフィーによって形成し、そ
の後、流路を覆う第2の基板を積層、接合し、積層体に
Siウエハの底面に届かない深さの溝を〈110〉軸方
向と略平行方向に入れ、その後、単結晶の劈開を利用し
て、溝の底面部分を分離して吐出口を形成するようにし
ており、吐出口形成時のダイシング溝を〈110〉軸方
向に入れるようにしたため、Siチップの底までダイシ
ング溝を入れないで済ませることができる。このため、
グレード送り速度を速くすることができ、生産性を向上
させることができる。また、Siチップのダイシング溝
のないところは、単結晶の劈開を利用して容易に高精度
に分離することができ、分離時にチップにクラックが入
って不良になるのを生じないようにすることができる。
【0039】
【実施例】
(実施例1)4インチ、厚さ 525μmの(100)面S
iウエハにチップサイズ14mm×12mmの発熱体基板チップ
が34個採れるようにマスク設計を行い、発熱体等のパタ
ーンを形成した。この時、各チップの一辺が各々〈11
0〉軸方向となるようにした(図4(e)参照)。この
うようなウエハに、深さ100 μmのダイシング溝を互い
に直交する〈110〉軸方向に入れ、その後、裏面から
軽く衝撃を加えて、残りの 425μm分の厚さの部分を単
結晶の劈開を利用して割り、チップ化した。この時のダ
イシング条件は以下のようである。まず、ダイシングソ
ーはディスコ社製DAD−2H/5であり、ブレードは
ディスコ社製NBC−Z 600で52mm (外径) ×0.14mm
(厚さ) ×40mm (内径) であり、ブレード回転数は 3000
0 rpmであり、ブレード送り速度は 0.8mm/ sであり、
冷却水は 0.2μmフィルター濾過された純水である。
【0040】その結果、全てのチップが割れたり、ある
いは欠けたりすることなく良好なチップを採ることがで
きた。 (比較例1)実施例1と同じウエハを用い、同じ条件で
ダイシング溝をウエハの下まで届くようにして切断を行
おうとしたが、ブレードが割れて加工できなかった。 (比較例2)比較例1でブレードが割れたので、ブレー
ド送り速度を 0.4mm/ sにして行ったところ、ブレード
が割れることなく、ダイシングのみによりチップ化する
ことができた。しかしながら、生産効率は実施例1の約
半分に落ちた。 (比較例3)実施例1と同じ条件でパターンを形成する
時、結晶軸方向を任意にして形成した。このため、チッ
プ化のダイシング溝の方向は、〈110〉軸方向とは関
係なく入れた。その結果、ダイシング溝を形成した後、
裏面から衝撃を加えてチップ化する際、ダイシング溝の
方向に沿ってチップ化することができず、劈開によりチ
ップにクラックが入り、良好なチップを行うことができ
なかった。 (比較例4)実施例1と同じ条件でウエハだけを4イン
チ、厚さ 520μm(111)面Siウエハとして同様の
実験を行った。その結果、比較例3の場合と同じように
ダイシング溝形成までは行えたが、その後、裏面から衝
撃を加えてチップ化する際にダイシング溝の方向に沿っ
てチップ化することができず、劈開によりチップにクラ
ックが入り、良好なチップ化を行うことができなかっ
た。 (比較例5)80mm×80mm、厚さ1mmのアルミナセラミッ
ク基板に、実施例1で使用したフォトマスクを使用し
て、同様の発熱体基板を作り、ダイシング条件等も同じ
にしてチップ化を試みた。その結果、約半数のチップに
クラックあるいは欠けが生じ良好なチップは半分しか採
れなかった。 (実施例2)実施例1で形成したチップを用い、図4
(f)〜図4(h)、図5〜7に示したような方法で接
合、吐出口形成を行った。その際、ダイシング溝の方向
は〈110〉軸と略平行な方向とした。また、蓋板は厚
さ1mmのパイレックスガラスである。実施例1とはダイ
シング条件において、以下の点が異なっている。ブレー
ドはディスコ社製、NBC−Z 600、52mm (外径) ×0.
27mm (厚さ) ×40mm (内径) であり、ブレード送り速度
は 0.3mm/ sである。吐出口形成のためのダイシング溝
は、Siの底から 150μmを残して入れ、ダイシング後
に劈開を利用して図6のaの部分をピンセットでつまん
で分離した。その結果、吐出口部に欠け等がなく、良好
なインクジェットヘッドを作ることができた。 (比較例6)実施例2と同じ条件でダイシングの溝をS
iの底まで入れ、ダイシングのみで行おうとしたとこ
ろ、ブレードが割れて実施することができなかった。 (比較例7)比較例6でブレードが割れたので、ブレー
ド送り速度を 0.1mm/ sとして行ったところ、良好なイ
ンクジェットヘッドを作ることができた。しかしなが
ら、生産効率は実施例2の約1/3に落ちた。 (比較例8)比較例3で使用したウエハを用い、比較例
2のようにブレード送り速度を遅くしてチップ化した。
その後、実施例2と同様の接合、吐出口形成を行おうと
したが、吐出口形成のためのダイシング溝方向が〈11
0〉軸方向と平行ではなかったため、でき上がったイン
クジェットヘッドのSiチップにクラックが入って、不
良品しか作ることができなかった。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、1枚の基板から多数の
ヘッドチップを採る際、基板の割れ及び各チップの欠け
やクラックを生じ難くすることができる他、吐出口を形
成する際、基板側から吐出口部にかけての欠けやクラッ
クを生じ難くすることができ、歩留り及び量産性良くヘ
ッドチップを形成することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】サーマルインクジェットによるインク噴射を説
明する図である。
【図2】発熱体基板の構造を示す斜視及び断面図であ
る。
【図3】インクジェット記録ヘッドの製造工程を説明す
るための図である。
【図4】インクジェット記録ヘッドの製造工程を説明す
るための図である。
【図5】図4(h)のZ1−Z2線方向の構造を示す断
面図である。
【図6】図5のC1−C2線方向の構造を示す断面図で
ある。
【図7】ダイシングの構造を示す断面図である。
【図8】インクジェット記録ヘッドの構造を示す断面図
である。
【符号の説明】
1,21 基板 2 蓄熱層 3 発熱体 4 電極 5 保護層 6 耐キャビテーション保護層 7 電極保護層 9 ヒータ 10 インク 11 気泡 22 インク吐出圧発生素子 23 薄膜 24 フォトレジスト 24P 露出部分 25 フォトマスク 26 平板状部材 27 感光性樹脂膜 28 インク通路 28a インク供給室 28b インク細流路 28c インク吐出口 29 貫通孔 30 インク供給管 31 オリエンテーションフラット
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 21/78 V 8617−4M

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単結晶材料からなる基板上に蓄熱層、発熱
    体及び該発熱体に通電するための電極、保護層が形成さ
    れてなる発熱体基板にインクが通る流路が形成されてな
    るサーマルインクジェットヘッドにおいて、前記基板を
    複数個のチップに分離する際に、前記基板の厚さ方向に
    前記基板の底面に届かない深さの溝を結晶軸と略平行方
    向に入れ、その後、単結晶の劈開を利用してチップに分
    離することを特徴とするサーマルインクジェットヘッド
    チップの製造方法。
  2. 【請求項2】前記基板は(100)面を切り出したSi
    ウエハであり、溝は〈110〉軸と略平行に入れること
    を特徴とする請求項1記載のサーマルインクジェットヘ
    ッドチップの製造方法。
  3. 【請求項3】前記基板は(100)面を切り出したSi
    ウエハであり、前記流路は前記基板上に感光性樹脂膜の
    フォトリソグラフィーによって形成し、その後、前記流
    路を覆う第2の基板を積層、接合し、該積層体に前記S
    iウエハの底面に届かない深さの溝を〈110〉軸方向
    と略平行方向に入れ、その後、単結晶の劈開を利用し
    て、前記溝の底面部分を分離して吐出口を形成すること
    を特徴とする請求項1記載のサーマルインクジェットヘ
    ッドチップの製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111599671A (zh) * 2019-02-21 2020-08-28 东莞新科技术研究开发有限公司 一种长形条半导体背面开槽以消除应力的方法

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