JP4656352B2 - 常温触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、アルデヒド類、エチレン、アンモニアなどの環境負荷物質を、50℃以下の常温(室温)で容易に分解除去できる常温触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば合板用接着剤あるいは家具に塗装されている塗膜などには遊離ホルムアルデヒドが含まれる場合があり、それが徐々に大気中に放出される。またホルムアルデヒドを原料とする接着剤や塗料を用いた工業製品からは、劣化に伴ってホルムアルデヒドが発生する。このホルムアルデヒドは刺激臭があり、シックハウス症候群の原因物質の1つとして指摘されている。そのため住宅メーカでは、住宅の施工後施主に引き渡す前に、住宅内をエージングしてホルムアルデヒド濃度を低減する努力を行っているが、エージングだけでは必ずしも厚生省の基準値を満たしているとは言えず、空気中のホルムアルデヒド濃度のさらなる低減が求められている。
【0003】
そこで空気中の環境負荷物質を除去する方法として、オゾンを用いる方法、あるいは活性炭やゼオライトなどの吸着材を用いる方法が広く行われている。例えば冷蔵庫、押入、下駄箱などに置いて脱臭する脱臭剤として、吸着材を空気の流通可能な容器に収納したものが市販されている。また吸着材や光触媒を内蔵した空気清浄機なども知られている。
【0004】
また空気中に含まれているエチレンは、青果物の生理作用を促進させ追熟老化を進行させるために、エチレンによって青果物の鮮度が低下すると考えられている。したがって青果物の鮮度保持には大気からのエチレンの除去が有効であり、オゾンや過酸化水素によりエチレンを分解させたり、エチレンを吸着除去したりする方法が提案されている。
【0005】
例えば特開平7-260331号公報には、生鮮野菜類を収容する貯蔵容器内に光触媒と紫外線光源を配置し、光触媒作用によってエチレン、アセトアルデヒドなど生鮮野菜類の鮮度保持に有害なガスを分解除去する装置が開示されている。
【0006】
また例えば特開平10−296087号公報には、ジルコニアまたはセリアを含む担体に貴金属を担持した触媒が開示されている。この触媒によれば、 200℃程度の温度で用いることによってトリメチルアミンを酸化分解することができる。
【0007】
そしてCOやHCを酸化する触媒、あるいはNOx を還元する触媒として、アルミナなどの担体に貴金属を担持した触媒が知られ、排ガス浄化用触媒などとして広く用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところがオゾンを用いる方法では、オゾンの効果を発現させるためには規制値を上回るオゾン濃度が必要であり、環境負荷物質を除去した後にもオゾンが残留する恐れがある。そのため残留オゾンを処理するための触媒が必要となるなど、実用的でない。
【0009】
また吸着材によって空気中の環境負荷物質を吸着して除去する方法では、吸着材の吸着容量を越えて吸着することは困難であり、吸着量が飽和する前に吸着材を交換する必要がある。
【0010】
そして光触媒を利用する方法では、光触媒の励起源となる人工光源が必要であり、常時光源を光触媒に照射するとなると光源を作動させる電気代も必要となり、コスト的に高いものとなっている。
【0011】
さらに触媒を利用する方法では、貴金属の活性化温度まで温度を上げなければならず、50℃以下の常温で活性化する触媒はまだ知られていない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、50℃以下の常温で活性化してCO、アミン類、ホルムアルデヒドなどの環境負荷物質を分解除去できる触媒を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の常温触媒の特徴は、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物とを含みセリウム酸化物の少なくとも一部が酸素欠損の状態で存在する酸化物に貴金属を担持してなり、50℃以下で活性な活性酸素を40μモル/g以上含有し、一酸化炭素、メチルメルカプタン、トリエチルアミン及びエチレンから選ばれる少なくとも一種の環境負荷物質を分解除去することにある。
【0014】
この常温触媒としては、還元処理によって酸素欠損が導入された酸化物に貴金属を担持してなるものが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の常温触媒は、50℃以下で活性な活性酸素を40μモル/g以上含有している。この活性酸素は、触媒表面に吸着した環境負荷物質と50℃以下の常温で反応し、環境負荷物質を酸化分解する。触媒中に含まれていた活性酸素は、環境負荷物質との反応によって消費されるが、空気中に含まれる酸素ガスが触媒中に取り込まれて活性酸素となり、それがさらに環境負荷物質と反応する。このように酸化反応が触媒的に進行することにより、環境負荷物質を酸化分解して除去することができる。
【0016】
例えばCOは活性酸素によって酸化されてCO2 となり、ホルムアルデヒド(HCHO)あるいはエチレン(C2H4)などは酸化されてCO2 及び H2Oとなって無害化される。
【0017】
そして本発明の常温触媒は、活性酸素を40μモル/g以上含有している。この活性酸素の含有量が40μモル/g未満であると、50℃以下の常温における環境負荷物質との反応が十分でない。
【0018】
このように活性酸素を40μモル/g以上含有する触媒としては、酸素欠損が導入された酸化物に貴金属を担持したものが代表的に例示される。酸素欠損とは、酸化物を形成している酸素の一部が脱離したきわめて活性の高い状態をいい、酸化物として結合している酸素のモル量が規定値より少ない状態をいう。例えばCe酸化物の場合はCeO2が酸素欠損の無い状態であるので、酸素原子がCe原子に対して2倍モル未満であれば酸素欠損が導入されているということになる。
【0019】
本発明の常温触媒は、この酸素欠損が導入された酸化物に貴金属を担持している。酸素欠損によって酸化物自体の活性が高められ、その結果、環境負荷物質の貴金属への吸着性が弱まる。これにより貴金属の活性が高まり、酸素欠損部を経由して活性化された活性酸素を利用して環境負荷物質の酸化反応が進行する。そして本発明の常温触媒では活性酸素量が40μモル/g以上と多いため、環境負荷物質の酸化反応が速やかに進行し、常温域での環境負荷物質の浄化が可能となっているものと考えられる。なお50℃を超える高温でも環境負荷物質の酸化浄化は可能であるが、酸素欠損が喪失する場合があるので50℃以下、より好ましくは10〜40℃の範囲で使用することが望ましい。
【0021】
中でもCe酸化物は酸素欠損を導入しやすく、かつ酸素欠損状態を安定して保持できるので特に好ましい酸化物である。またCe酸化物とZr酸化物とを併用すれば、Ce酸化物の酸素欠損状態の安定性が一層向上する。この場合、Ce酸化物とZr酸化物とは、複合酸化物又は固溶体を形成していることがさらに望ましい。複合酸化物又は固溶体とすることにより、酸素欠損をさらに多く形成することができ、また酸素欠損状態の安定性もさらに向上する。
【0022】
酸化物に酸素欠損を形成するには、酸化物を還元処理する方法が例示される。
例えば上記の酸化物を 100℃〜 800℃の温度範囲において、還元ガス気流中でおよそ1時間程度処理すればよい。酸化物が高温下で還元ガスと接触することで酸化物の酸素の一部が還元ガスと結合して除去され、その結果、酸化物の一部が酸素欠損状態となり酸素欠損を導入することができる。還元処理温度が 100℃未満では還元反応が進行せず所望の酸素欠損状態を形成することが困難となる。また、処理温度が 800℃を超えると酸化物の比表面積が小さくなり触媒活性が低下するので好ましくない。なおヒドラジン、水素化硼素アルミニウム等に代表される還元性薬剤を用いて還元処理することも可能である。
【0023】
還元処理に使用される還元ガスとしては、水素、一酸化炭素などの還元性ガスの他、メタンなどの炭化水素やアルデヒド類などが挙げられる。還元処理時の還元ガス濃度としては、 0.1体積%〜 100体積%、より好ましくは1体積%から 100体積%が良い。
【0024】
そして、含まれる活性酸素量と酸素欠損の量との関係を予め知っておくことにより、還元処理の温度、時間などを調整することで酸素欠損の量を容易に調整することができ、含まれる活性酸素量を容易に40μモル/g以上とすることができる。
【0025】
本発明の常温触媒に担持される貴金属としては、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ruから選ばれる少なくとも一種を用いることができる。このうち一種でもよいし、複数種類を担持することもできる。この貴金属の担持量は、酸素欠損が導入された酸化物に対して 0.1〜10重量%とするのが好ましい。 0.1重量%未満では50℃以下での触媒活性が得られないので好ましくない。また、貴金属を10重量%を超えて担持しても添加の割に浄化効率が向上せず、高価な貴金属を多量使用することになりコストアップとなる。また貴金属は粒子径が5nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。担持されている貴金属の粒径が小さいほど触媒の活性を高くすることができる。
【0026】
貴金属の担持には、吸着担持法、蒸発乾固法、超臨界流体法など公知の担持方法を利用することができる。また酸化物を還元処理する前に貴金属を担持しておき、それを還元処理することにより、より効果的に酸素欠損を導入することができる。
【0027】
以下、酸化物として固溶体又は複合酸化物となっているCeO2−ZrO2を用いた場合について、本発明の常温触媒の構成を具体的に説明する。
【0028】
CeO2−ZrO2は、Ce化合物とZr化合物の少なくとも一方が溶解した溶液を用い、必要に応じて他方の酸化物粉末を混合して、共沈法、アルコキシド法などで析出させた後、それを焼成することで形成することができる。またCeO2粉末とZrO2粉末との混合物を高温で焼成してもよい。
【0029】
CeO2−ZrO2におけるCeとZrのモル比は、Ce:Zr= 100:1〜1: 100の範囲が好ましく、Ce:Zr=20:1〜1:10の範囲がより好ましく、Ce:Zr=5:1〜1:1の範囲がさらに好ましい。この範囲とすることで酸素欠損状態をより安定に維持することができる。またCeのモル量をZrのモル量より多くするのが望ましい。これにより酸素欠損状態をより容易に形成することができ、活性酸素量をより多くすることができる。
【0030】
CeO2−ZrO2には、さらに第3成分としてY、La、Nd、Prなどの希土類元素の酸化物、Fe、Mn、Co、Cr、Ni、Cuなどの遷移金属の酸化物から選ばれる1種を含んでいても良い。これらの第3成分を配合することで、CeO2−ZrO2の酸素欠損状態をさらに安定に維持することができる。この第3成分の含有量は、全体の1〜30モル%とすることが好ましい。この範囲より少ないと含有させた効果が得られず、30モル%を超えて含有させると酸素欠損を形成しにくくなる場合がある。
【0031】
CeO2−ZrO2に酸素欠損を導入するには、上記したように還元ガスを用いて還元処理することで行うことができる。これにより主としてCeO2に酸素欠損が導入される。この場合CeOnにおけるnの構成比を 1.5≦n<2、より好ましくは 1.5≦n≦ 1.8の範囲の酸素欠損状態とすれば、ホルムアルデヒドの浄化に特に優れた効果を示す。n値が 1.5未満の状態は通常の還元処理では形成が困難であると考えられ、もしそうなっていたとしても通常の元素分析条件では同定が困難である。酸化物の酸素欠損状態は、例えばX線回折などによって測定することができる。なお触媒活性の面からは、触媒粒子の内部よりも、触媒粒子の表面から 100nm程度の表層における構成比を 1.5≦n≦ 1.8の範囲とすることが望ましい。
【0032】
CeO2−ZrO2に担持される貴金属としては、Pt、Pd、Rh、Au、Ruの少なくとも一種が好ましく、Ptが特に好ましい。また貴金属の担持量は、CeO2−ZrO2の 150gに対して 0.1gから20g、より好ましくは 0.5gから5gとすることが好ましい。貴金属を担持するには、還元処理の前に担持し、貴金属担持後に還元処理を行う。またCeO2−ZrO2を共沈法などで製造する場合には、貴金属の共存下で共沈させた後焼成して担持することもできる。
【0033】
本発明の触媒は粉末状として調製され、それをペレット状に成形して用いることができる。またハニカム基材の表面に定法と同様にして触媒粉末からコート層を形成することもできる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
共沈法にて製造されたCe:Zr=5:1のCeO2−ZrO2固溶体粉末に、所定濃度のジニトロジアンミン白金水溶液の所定量を含浸させ、撹拌後に加熱して蒸発乾固し、その後大気中で 500℃で3時間焼成してPtを担持した。Ptの担持量はCeO2−ZrO2固溶体 150gに対して2gである。
【0036】
次に、得られたPt担持CeO2−ZrO2固溶体粉末を、COを1体積%含む窒素気流中に配置し、 500℃で15分の還元処理を行って酸素欠損を導入して実施例1の常温触媒を調製した。
【0037】
(実施例2)
還元処理の条件を 400℃で3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の常温触媒を調製した。
【0038】
(実施例3)
還元処理の条件を 300℃で3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の常温触媒を調製した。
【0039】
(実施例4)
還元処理の条件を 250℃で3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の常温触媒を調製した。
【0040】
(実施例5)
還元処理の条件を 200℃で3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の常温触媒を調製した。
【0041】
(実施例6)
還元処理の条件を 100℃で3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の常温触媒を調製した。
【0042】
(実施例7)
CeO2−ZrO2固溶体粉末に代えて Fe2O3粉末を用いたこと、及び還元温度を 300℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の触媒を調製した。
【0043】
(実施例8)
CeO2−ZrO2固溶体粉末に代えてMnO2粉末を用いたこと、及び還元温度を 300℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の触媒を調製した。
【0044】
(比較例1)
CeO2−ZrO2固溶体粉末に代えて Al2O3粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の触媒を調製した。
【0045】
(比較例2)
吸着材として一般に用いられているヤシ殻活性炭(比表面積 700m2/g)を比較例2とした。
【0046】
<試験・評価>
(試験例1)
実施例1〜8及び比較例1の触媒について、活性酸素量を測定した。測定に際して、先ず−60℃まで触媒を冷却し、H2を1体積%含有するアルゴンガス気流中で昇温しながら、H2消費量をTCD検出器によって検出した。そして50℃となるまでに消費されたH2量から活性酸素量を求め、結果を表1に示す。
【0047】
また実施例1〜8及び比較例1の触媒をそれぞれ評価装置に5g配置し、CO濃度250ppm、O2濃度20体積%、残部N2からなるモデルガスをガス流量10リットル/分で流して、室温(25℃)におけるCO転化率を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
そして表1の活性酸素量とCO転化率との関係をプロットし、結果を図1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1及び図1より、各実施例の触媒は活性酸素量が40μモル/g以上である。
そして活性酸素量が40μモル/g以上であれば常温におけるCO浄化活性が発現されることが明らかであり、活性酸素量が多くなるほど常温における触媒活性が高くなっていることがわかる。
【0051】
(試験例2)
実施例1の触媒と比較例2の吸着材を選び、メチルメルカプタンを900ppm含む大気を充填した5リットルの密閉容器中にそれぞれ 0.1g入れ、室温(25℃)雰囲気にある密閉容器中のメチルメルカプタン濃度の経時変化をガスクロマトグラフィによって測定した。結果を図2に示す。
【0052】
図2より、実施例1の触媒は比較例2の吸着材よりもメチルメルカプタンの除去特性に優れていることが明らかであり、高い常温浄化活性を有していることがわかる。
【0053】
(試験例3)
実施例1の触媒と比較例2の吸着材を選び、メチルメルカプタンに代えてトリエチルアミン又はエチレンをそれぞれ900ppm含む大気を用いたこと以外は試験例2と同様にして、トリエチルアミン濃度及びエチレン濃度の経時変化を測定した。結果を図3及び図4に示す。
【0054】
図3及び図4より、実施例1の触媒は比較例2の吸着材よりもトリエチルアミン及びエチレンの除去特性に優れていることが明らかであり、高い常温浄化活性を有していることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
すなわち本発明の常温触媒によれば、50℃以下の常温でCO、アミン類、ホルムアルデヒドなどの環境負荷物質を効率よく分解除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例の触媒の活性酸素量と室温におけるCO転化率との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1の触媒と比較例2の吸着材を入れた密閉容器中の室温におけるメチルメルカプタン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例1の触媒と比較例2の吸着材を入れた密閉容器中の室温におけるトリエチルアミン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例1の触媒と比較例2の吸着材を入れた密閉容器中の室温におけるエチレン濃度の経時変化を示すグラフである。
Claims (2)
- セリウム酸化物とジルコニウム酸化物とを含みセリウム酸化物の少なくとも一部が酸素欠損の状態で存在する酸化物に貴金属を担持してなり、50℃以下で活性な活性酸素を40μモル/g以上含有し、
一酸化炭素、メチルメルカプタン、トリエチルアミン及びエチレンから選ばれる少なくとも一種の環境負荷物質を分解除去することを特徴とする常温触媒。 - 還元処理によって酸素欠損が導入された前記酸化物に貴金属を担持してなることを特徴とする請求項1に記載の常温触媒。
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