===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
すなわち、液体を吐出させるための動作を実行可能な素子に印加される第1駆動信号及び第2駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記第1駆動信号の前記素子への印加状態を定めるための第1選択データ、及び、前記第2駆動信号の前記素子への印加状態を定めるための第2選択データを出力するデータ出力部と、前記データ出力部から出力された前記第1選択データと前記第2選択データとを検査して検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとを出力するものであって、前記第1選択データ及び前記第2選択データが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、それまで出力していた検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとを継続して出力するデータ検査部と、前記検査済み第1選択データに基づいて前記第1駆動信号の前記素子への印加を制御する第1スイッチ、及び、前記検査済み第2選択データに基づいて前記第2駆動信号の前記素子への印加を制御する第2スイッチを有するスイッチ部と、を有する液体吐出装置が実現できること。
このような液体吐出装置によれば、データ検査部は、データ出力部から出力された第1選択データと第2選択データとが第1駆動信号及び第2駆動信号の素子への同時印加を示す場合に、それまで出力していた検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとを継続して出力する。ここで、それまで出力されていた検査済み第1選択データと検査済み第2選択データは、データ検査部による検査を受けたものである。すなわち、第1駆動信号及び第2駆動信号の素子への同時印加を示さない選択データである。そして、これらの検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとにより、第1駆動信号及び第2駆動信号の素子への印加を制御するので、第1駆動信号及び第2駆動信号の素子への同時印加を確実に防止することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記データ検査部は、それまで出力していた前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを、前記素子に印加される駆動信号を前記第1駆動信号と前記第2駆動信号の一方から他方へと切り替え可能なタイミングまで継続して出力すること。
このような液体吐出装置によれば、第1駆動信号と第2駆動信号の一方から他方へと切り替え可能なタイミングで、新たな検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとに基づく駆動信号の印加制御がなされる。このため、新たな検査済み第1選択データと検査済み第2選択データに基づく駆動信号の印加制御を円滑に行わせることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記データ検査部は、それまで出力していた前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを、吐出される液体の量を示す吐出量情報の更新タイミングまで継続して出力すること。
このような液体吐出装置によれば、吐出量情報が更新されるタイミングで新たな検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとに基づき、駆動信号の印加制御がなされる。このため、新たな検査済み第1選択データと検査済み第2選択データに基づく駆動信号の印加制御を円滑に行わせることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記データ検査部は、前記データ出力部から出力された前記第1選択データと前記第2選択データとが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示すか否かを判断するデータ判断部と、前記データ判断部での判断結果を記憶する判断結果記憶部と、前記データ判断部から出力された判断結果、若しくは、前記判断結果記憶部に記憶された判断結果の何れかが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、それまで出力していた前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを選択して出力する選択出力部と、を有すること。
このような液体吐出装置によれば、データ判断部の判断結果を判断結果記憶部に記憶させているので、判断結果記憶部での記憶に基づき、それまで出力していた前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを、簡単な構成で継続して出力させることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記データ判断部は、前記第1駆動信号の切り替えタイミング及び前記第2駆動信号の切り替えタイミングを規定するタイミングパルスの前側エッジのタイミングで、前記第1選択データと前記第2選択データについての判断を行い、前記選択出力部は、前記タイミングパルスの後側エッジのタイミングで、前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データの選択を行うこと。
このような液体吐出装置によれば、データ判断部による判断と、選択出力部による選択について、順序を確実に定めることができる。これにより、データ出力部から出力された第1選択データと第2選択データの判断を確実に行うことができる。
かかる液体吐出装置であって、前記判断結果記憶部は、前記第1駆動信号の切り替えタイミング及び前記第2駆動信号の切り替えタイミングを規定するタイミングパルスの中の特定タイミングパルスに基づいて、記憶していた前記判断結果をリセットすること。
このような液体吐出装置によれば、第1駆動信号及び第2駆動信号の切り替えタイミングで、判断結果記憶部がリセットされる。このため、新たな検査済み第1選択データと検査済み第2選択データに基づく駆動信号の印加制御を円滑に行わせることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記データ出力部は、前記液体の吐出量に基づき分類された複数種類の第1選択データ及び複数種類の第2選択データを出力し、前記データ判断部は、同じ種類の前記第1選択データと前記第2選択データについて判断を行うこと。
このような液体吐出装置によれば、判断対象が同じ種類の第1選択データと第2選択データであるので、適切な判断を行わせることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記選択出力部は、前記データ判断部から出力された判断結果、及び、前記判断結果記憶部に記憶された判断結果のいずれもが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示さない場合に、前記データ出力部から出力された前記第1選択データ及び前記第2選択データを選択する一方、前記データ判断部から出力された判断結果、若しくは、前記判断結果記憶部に記憶された判断結果の少なくとも一方が、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを選択する切り替えスイッチと、前記第1駆動信号の切り替えタイミング及び前記第2駆動信号の切り替えタイミングを規定するタイミングパルスに基づき、前記切り替えスイッチによって選択されたデータを記憶して出力する記憶出力部とを有すること。
このような液体吐出装置によれば、判断結果に基づいて動作する切り替えスイッチと切り替えスイッチによって選択されたデータを記憶して出力する記憶出力部とよって、データの選択と出力が行われる。このため、簡単な構成でデータの選択を確実に行うことができる。
また、液体を吐出させるための動作を実行可能な素子に印加される第1駆動信号及び第2駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記第1駆動信号の前記素子への印加状態を定めるためのものであって、前記液体の吐出量に基づき分類された複数種類の第1選択データと、前記第2駆動信号の前記素子への印加状態を定めるためのものであって、前記液体の吐出量に基づき分類された複数種類の第2選択データとを、出力するデータ出力部と、前記第1駆動信号の切り替えタイミング及び前記第2駆動信号の切り替えタイミングを規定するタイミングパルスの前側エッジのタイミングで、前記データ出力部から出力された同じ種類の前記第1選択データと前記第2選択データとが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示すか否かを判断するデータ判断部と、前記データ判断部での判断結果を記憶する一方、前記タイミングパルスの中の特定タイミングパルスに基づいて、記憶していた前記判断結果をリセットする判断結果記憶部と、前記データ出力部から出力された前記第1選択データと前記第2選択データとを検査して検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとを出力するものであって、前記データ判断部から出力された判断結果、及び、前記判断結果記憶部に記憶された判断結果のいずれもが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示さない場合に、前記データ出力部から出力された前記第1選択データ及び前記第2選択データを選択する一方、前記データ判断部から出力された判断結果、若しくは、前記判断結果記憶部に記憶された判断結果の少なくとも一方が、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを選択する切り替えスイッチと、前記第1駆動信号の切り替えタイミング及び前記第2駆動信号の切り替えタイミングを規定するタイミングパルスに基づき、前記切り替えスイッチによって選択されたデータを記憶して出力する記憶出力部と、前記データ判断部から出力された判断結果、若しくは、前記判断結果記憶部に記憶された判断結果の何れかが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、前記タイミングパルスの後側エッジのタイミングで、それまで出力していた前記検査済み第1選択データと前記検査済み第2選択データとを選択して出力する選択出力部と、を有し、前記第1選択データ及び前記第2選択データが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、それまで出力していた検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとを、前記素子に印加される駆動信号を前記第1駆動信号と前記第2駆動信号の一方から他方へと切り替え可能なタイミングまで、又は、吐出される液体の量を示す吐出量情報の更新タイミングまで継続して出力する、データ検査部と、前記検査済み第1選択データに基づいて前記第1駆動信号の前記素子への印加を制御する第1スイッチ、及び、前記検査済み第2選択データに基づいて前記第2駆動信号の前記素子への印加を制御する第2スイッチを有するスイッチ部と、を有する液体吐出装置を実現することもできる。
このような液体吐出装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するので、本発明の目的が最も有効に達成できる。
また、液体を吐出させるための動作を実行可能な素子に印加される第1駆動信号及び第2駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと、前記第1駆動信号の前記素子への印加状態を定めるための第1選択データ、及び、前記第2駆動信号の前記素子への印加状態を定めるための第2選択データを出力する選択データ出力ステップと、出力された第1選択データ及び前記第2選択データが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示さない場合に、前記第1選択データ及び前記第2選択データを検査済み第1選択データ及び検査済み第2選択データとして出力する一方、出力された第1選択データ及び前記第2選択データが、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の前記素子への同時印加を示す場合に、それまで出力されていた検査済み第1選択データ及び検査済み第2選択データを継続して出力させるデータ検査ステップと、前記検査済み第1選択データに基づいて前記第1駆動信号を前記素子へ印加させ、前記検査済み第2選択データに基づいて前記第2駆動信号を前記素子へ印加させる駆動信号印加ステップと、を有する駆動信号の印加方法を実現することもできる。
===説明の対象===
<液体吐出装置について>
液体吐出装置には、印刷装置、カラーフィルタ製造装置、ディスプレイ製造装置、半導体製造装置、及びDNAチップ製造装置など、様々な種類があり、全てについて説明することは困難である。そこで、本明細書では、印刷装置としてのプリンタ、及び、このプリンタを有する印刷システムを例に挙げて説明する。なお、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも有するシステムのことであり、液体吐出装置と吐出制御装置とを有する液体吐出システムの一形態に相当する。
===印刷システムの構成===
<全体構成について>
まず、印刷装置を印刷システム100とともに説明する。ここで、図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。
プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。なお、この媒体に関し、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。表示装置120は、ディスプレイを有している。この表示装置120は、例えば、コンピュータプログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボード131やマウス132である。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置141やCD−ROMドライブ装置142である。
===コンピュータ===
<コンピュータ110の構成について>
図2は、コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。まず、コンピュータ110の構成について簡単に説明する。このコンピュータ110は、前述した記録再生装置140と、ホスト側コントローラ111とを有している。記録再生装置140は、ホスト側コントローラ111と通信可能に接続されており、例えばコンピュータ110の筐体に取り付けられている。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものであり、前述した表示装置120や入力装置130も通信可能に接続されている。このホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間に介在し、データの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM、磁気ディスク装置等によって構成される。このメモリ114に格納されるコンピュータプログラムとしては、前述したように、アプリケーションプログラムやプリンタドライバがある。そして、CPU113は、メモリ114に格納されているコンピュータプログラムに従って各種の制御を行う。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データSI(図6等を参照。)とを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、画素データSIは、印刷される画像の画素に関するデータである。ここで、画素とは、用紙S上に仮想的に定められた方眼状の升目であり、ドットが形成される領域を示す。そして、印刷データにおける画素データSIは、用紙S上に形成されるドットに関するデータ(例えば、階調値)である。本実施形態において、画素データSIは2ビットのデータによって構成されている。すなわち、この画素データSIには、ドット無しに対応するデータ[00]と、小ドットに対応するデータ[01]と、中ドットの形成に対応するデータ[10]と、大ドットに対応するデータ[11]とがある。従って、このプリンタ1は4階調でドットの形成ができる。
===プリンタ===
<プリンタ1の構成について>
次に、プリンタ1の構成について説明する。ここで、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の構成を説明する側面図である。なお、以下の説明では、図2も参照する。
図2に示すように、プリンタ1は、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、検出器群50、プリンタ側コントローラ60、及び駆動信号生成回路70を有する。なお、本実施形態において、プリンタ側コントローラ60及び駆動信号生成回路70は、共通のコントローラ基板CTRに設けられている。また、ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HCと、ヘッド41とを有している。
このプリンタ1では、プリンタ側コントローラ60によって制御対象部、すなわち用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40(ヘッド制御部HC,ヘッド41)、及び駆動信号生成回路70が制御される。これにより、プリンタ側コントローラ60は、コンピュータ110から受け取った印刷データに基づき、用紙Sに画像を印刷させる。また、検出器群50の各検出器は、プリンタ1内の状況を監視している。そして、各検出器は、検出結果をプリンタ側コントローラ60に出力する。各検出器からの検出結果を受けたプリンタ側コントローラ60は、その検出結果に基づいて制御対象部を制御する。
<用紙搬送機構20について>
用紙搬送機構20は、媒体を搬送させる媒体搬送部に相当する。この用紙搬送機構20は、用紙Sを印刷可能な位置に送り込んだり、この用紙Sを搬送方向に所定の搬送量で搬送させたりするものである。この搬送方向は、次に説明するキャリッジ移動方向と交差する方向である。そして、図3A及び図3Bに示すように、用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に自動的に送るためのローラであり、この例ではD形の断面形状をしている。搬送モータ22は、用紙Sを搬送方向に搬送させるためのモータであり、その動作は、プリンタ側コントローラ60によって制御される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを、印刷可能な領域まで搬送するためのローラである。この搬送ローラ23の動作も搬送モータ22によって制御される。プラテン24は、印刷中の用紙Sを、この用紙Sの裏面側から支持する部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラである。
<キャリッジ移動機構30について>
キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させるためのものである。キャリッジ移動方向には、一側から他側への移動方向と、他側から一側への移動方向が含まれている。なお、ヘッドユニット40はヘッド41を有するので、キャリッジ移動方向はヘッド41の移動方向に相当し、キャリッジ移動機構30はヘッド41を移動方向に移動させるヘッド移動部に相当する。そして、このキャリッジ移動機構30は、キャリッジモータ31と、ガイド軸32と、タイミングベルト33と、駆動プーリー34と、従動プーリー35とを有する。キャリッジモータ31は、キャリッジCRを移動させるための駆動源に相当する。このキャリッジモータ31は、プリンタ側コントローラ60によって動作が制御される。そして、キャリッジモータ31の回転軸には、駆動プーリー34が取り付けられている。この駆動プーリー34は、キャリッジ移動方向の一端側に配置されている。駆動プーリー34とは反対側のキャリッジ移動方向の他端側には、従動プーリー35が配置されている。タイミングベルト33は、キャリッジCRに接続されているとともに、駆動プーリー34と従動プーリー35に架け渡されている。ガイド軸32は、キャリッジCRを移動可能な状態で支持する。このガイド軸32は、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられている。従って、キャリッジモータ31が動作すると、キャリッジCRは、このガイド軸32に沿ってキャリッジ移動方向に移動する。
<ヘッドユニット40について>
ヘッドユニット40は、インクを用紙Sに向けて吐出させるためのものである。このヘッドユニット40は、キャリッジCRに取り付けられている。このヘッドユニット40が有するヘッド41は、ヘッドケース42の下面に設けられている。また、ヘッドユニット40が有するヘッド制御部HCは、ヘッドケース42の内部に設けられている。なお、このヘッド制御部HCについては、後で詳しく説明する。
次に、ヘッド41の構造について説明する。ここで、図4は、ヘッド41の構造を説明するための断面図である。例示したヘッド41は、流路ユニット41Aと、アクチュエータユニット41Bとを有する。流路ユニット41Aは、ノズルNzが設けられたノズルプレート411と、インク貯留室412aとなる開口部が形成された貯留室形成基板412と、インク供給口413aが形成された供給口形成基板413とを有する。アクチュエータユニット41Bは、圧力室414aとなる開口部が形成された圧力室形成基板414と、圧力室414aの一部を区画する振動板415と、供給側連通口416aとなる開口部が形成された蓋部材416と、振動板415の表面に形成されたピエゾ素子417とを有する。このヘッド41には、インク貯留室412aから圧力室414aを通ってノズルNzに至る一連の流路が形成されている。使用時において、この流路はインクで満たされており、ピエゾ素子417を変形させることで、対応するノズルNzからインクを吐出させることができる。従って、このヘッド41において、ピエゾ素子417は、インクを吐出させるための動作を実行可能な素子に相当する。
そして、このプリンタ1では、前述したように、画素データSIのデータ[00]に対応するドット無し、データ[01]に対応する小ドットの形成、データ[10]に対応する中ドットの形成、及びデータ[11]に対応する大ドットの形成という4種類の制御ができる。このため、各ノズルNzからは、量が異なる複数種類のインクを吐出させることができる。例えば、各ノズルNzからは、大ドットを形成し得る量の大インク滴、中ドットを形成し得る量の中インク滴、及び小ドットを形成し得る量の小インク滴からなる3種類のインクを吐出させることができる。
<検出器群50について>
検出器群50は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。図3A,図3Bに示すように、この検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出器53、及び紙幅検出器54等が含まれている。リニア式エンコーダ51は、キャリッジCR(ヘッド41,ノズルNz)のキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出器53は、印刷される用紙Sの先端位置を検出するためのものである。紙幅検出器54は、印刷される用紙Sの幅を検出するためのものである。
<プリンタ側コントローラ60について>
プリンタ側コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うものである。このプリンタ側コントローラ60は、図2に示すように、インタフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、制御ユニット64とを有する。インタフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110との間で、データの受け渡しを行う。CPU62は、プリンタ1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリ63に記憶されているコンピュータプログラムに従い、各制御対象部を制御する。例えば、CPU62は、制御ユニット64を介して用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を制御する。
また、CPU62は、ヘッド41の動作を制御するためのヘッド制御信号をヘッド制御部HCに出力したり、駆動信号COMを生成させるための制御信号を駆動信号生成回路70に出力したりする。ヘッド制御信号は、例えば図6に示すように、転送用クロックCLK,画素データSI,ラッチ信号LAT,第1チェンジ信号CH_A,第2チェンジ信号CH_Bである。また、駆動信号COMを生成させるための制御信号は、例えばDAC値である。このDAC値は、駆動信号生成回路70が有する第1駆動信号生成部70Aや第2駆動信号生成部70B(図5を参照。)から出力させる信号の電圧を指示するための情報であり、極めて短い更新周期毎に更新される。そして、このDAC値は、駆動信号COMを生成させるための生成情報の一種である。
<駆動信号生成回路70について>
駆動信号生成回路70は、共通に使用される駆動信号COMを生成するものであり、駆動信号生成部に相当する。本実施形態の駆動信号COMは、1つのノズル列に対応する全てのピエゾ素子417に対して共通に使用される。ここで、図5は、駆動信号生成回路70の構成を説明するブロック図である。この駆動信号生成回路70は、複数種類の駆動信号COMを同時に生成することができる。本実施形態の駆動信号生成回路70は、第1駆動信号COM_Aを生成する第1駆動信号生成部70Aと、第2駆動信号COM_Bを生成する第2駆動信号生成部70Bを有している。そして、第1駆動信号生成部70Aは、DAC値(生成情報)に対応する電圧の信号を出力する第1波形生成回路71Aと、第1波形生成回路71Aで生成された信号の電流を増幅する第1電流増幅回路72Aを有する。また、第2駆動信号生成部70Bは、第2波形生成回路71Bと第2電流増幅回路72Bを有する。なお、第1波形生成回路71Aと第2波形生成回路71Bは同じ構成であり、第1電流増幅回路72Aと第2電流増幅回路72Bは同じ構成である。
<生成される駆動信号COMについて>
次に、駆動信号生成回路70によって生成される駆動信号COMについて説明する。例示された駆動信号生成回路70は、図9に示す第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bを生成する。すなわち、第1駆動信号生成部70Aは、第1のDAC値(第1生成情報に相当する。)に基づいて第1駆動信号COM_Aを生成する。また、第2駆動信号生成部70Bは、第2のDAC値(第2生成情報に相当する。)に基づいて第2駆動信号COM_Bを生成する。
第1駆動信号COM_Aは、繰り返し周期Tにおける期間T11で生成される第1波形部SS11と、期間T12で生成される第2波形部SS12と、期間T13で生成される第3波形部SS13とを有する。ここで、第1波形部SS11は駆動パルスPS1を有している。また、第2波形部SS12は駆動パルスPS2を、第3波形部SS13は駆動パルスPS3をそれぞれ有している。そして、駆動パルスPS1は、大ドットの形成時にピエゾ素子417へ印加されるものである。すなわち、この駆動パルスPS1は、大ドットの形成時において、インクを吐出させるための動作の開始から終了までを規定する。また、駆動パルスPS2は、メニスカスを微振動させるための微振動パルスであり、ドット無しの場合に、ピエゾ素子417に印加される。また、駆動パルスPS3は、中ドットの形成時にピエゾ素子417へ印加されるものである。そして、この駆動パルスPS3は、中ドットの形成時において、インクを吐出させるための動作の開始から終了までを規定する。この駆動パルスPS3をピエゾ素子417へ印加させることで、ヘッド41(対応するノズルNz)からは、中インク滴が吐出される。
第2駆動信号COM_Bは、期間T21で生成される第1波形部SS21と、期間T22で生成される第2波形部SS22とを有する。この第2駆動信号COM_Bでは、第1波形部SS21は駆動パルスPS4を、第2波形部SS22は駆動パルスPS5をそれぞれ有している。ここで、駆動パルスPS4は、小ドットの形成時にピエゾ素子417へ印加される。この駆動パルスPS4をピエゾ素子417へ印加させることで、ヘッド41からは、小インク滴が吐出される。従って、この駆動パルスPS4は、小ドットの形成時において、インクを吐出させるための動作の開始から終了までを規定する。また、駆動パルスPS5は、大ドットの形成時にピエゾ素子417へ印加されるものである。すなわち、この駆動パルスPS5も、大ドットの形成時において、インクを吐出させるための動作の開始から終了までを規定する。本実施形態において、期間T22は開始タイミングと長さが、第1駆動信号COM_Aにおける期間T13と揃えられている。すなわち、第1駆動信号COM_Aの期間T11と期間T12とをあわせた長さは、第2駆動信号COM_Bの期間T21の長さと同じである。
これらの駆動パルスPS1〜PS5は、いずれもピエゾ素子417の動作を規定するものである。そして、駆動パルスPS1〜PS5のうち、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPS1〜PS3は単位信号群に相当する。また、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPS4,PS5は他の単位信号群に相当する。
これらの第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bは、波形部毎にピエゾ素子417へ印加させることができる。すなわち、第1駆動信号COM_Aや第2駆動信号COM_Bの一部分を、選択的にピエゾ素子417へ印加させることができる。また、第1駆動信号COM_Aの一部分と第2駆動信号COM_Bの一部分とを組み合わせて、ピエゾ素子417に印加させることもできる。この例では、繰り返し周期Tの開始タイミング(ラッチ信号LATにおけるラッチパルスのタイミング)で、第1駆動信号COM_Aの第1波形部SS11や第2駆動信号COM_Bの第1波形部SS21をピエゾ素子417へ印加させるか否かについて選択することができる。また、第1チェンジ信号CH_Aの1番目のチェンジパルスのタイミングでは、第1駆動信号COM_Aの第2波形部をピエゾ素子417へ印加させるか否かについて選択することができる。
ここで、大ドット形成時において、駆動パルスPS1は第1駆動信号COM_Aから、駆動パルスPS2は第2駆動信号COM_Bから出力されており、これには以下の利点がある。インクの吐出が多い高濃度の印刷においては、インク吐出回数が多く、駆動信号生成回路の発熱が大きい。かつ、高濃度の印刷においては大ドットが多用される。本実施例においては、繰り返し周期Tにある二つある大ドットのパルスが、第1駆動信号生成部70Aと第2駆動信号生成部70Bの二つに分けられているので、高濃度の印刷時に、ひとつの駆動回路信号生成部に熱が集中することが避けられ、熱設計が容易である。
このように、これらの波形部はピエゾ素子417へ印加される一単位(印加単位)である。そして、第1駆動信号COM_Aが有する第1波形部SS11,第2波形部SS12,第3波形部SS13は波形部群を構成し、第2駆動信号COM_Bが有する第1波形部SS21,第2波形部SS22は他の波形部群を構成する。なお、各波形部をピエゾ素子417へ印加させるための制御については、後で詳しく説明する。
<ヘッド制御部HCについて>
次に、ヘッド制御部HCについて説明する。ここで、図6は、ヘッド制御部HCの構成を説明するブロック図である。図7は、制御ロジックの説明図である。図8は、デコーダの説明図である。
図6に示すように、ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、デコーダ83と、制御ロジック84と、検査回路85と、第1スイッチ86Aと、第2スイッチ86Bを備えている。そして、制御ロジック84及び検査回路85を除いた各部(すなわち、第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B、デコーダ83、第1スイッチ86A、及び第2スイッチ86B)は、それぞれピエゾ素子417毎に設けられる。ここで、同じピエゾ素子417に設けられる第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bの組は、スイッチ部に相当する。また、ピエゾ素子417はインクが吐出されるノズルNz毎に設けられるので、これらの各部もノズルNz毎に設けられる。
ヘッド制御部HCは、プリンタ側コントローラ60からの画素データSIに基づき、インクを吐出させるための制御を行う。すなわち、ヘッド制御部HCは、印刷データに基づいて第1スイッチ86Aと第2スイッチ86Bを制御し、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bの必要な部分を選択的にピエゾ素子417へ印加させている。本実施形態では、画素データSIが2ビットで構成されている。そして、転送用クロックCLKに同期して、この画素データSIが記録ヘッド41へ送られてくる。さらに、画素データSIの上位ビット群が各第1シフトレジスタ81Aにセットされ、下位ビット群が各第2シフトレジスタ81Bにセットされる。第1シフトレジスタ81Aには第1ラッチ回路82Aが電気的に接続され、第2シフトレジスタ81Bには第2ラッチ回路82Bが電気的に接続されている。そして、プリンタ側コントローラ60からのラッチ信号LATがHレベルになると、各第1ラッチ回路82Aは対応する画素データSIの上位ビットをラッチし、各第2ラッチ回路82Bは画素データSIの下位ビットをラッチする。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データSI(上位ビットと下位ビットの組)はそれぞれ、デコーダ83に入力される。
デコーダ83は、画素データSIの上位ビット及び下位ビットに基づいてデコードを行い、第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bを制御するためのスイッチ制御信号SW(第1スイッチ制御信号SW_A,第2スイッチ制御信号SW_B,図8を参照。)を出力する。このスイッチ制御信号SWは、検査回路85で検査された検査済み選択データq0d〜q7dと、第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データSIとの組み合わせに基づいて出力される。ここで、検査済み選択データq0d〜q7dとは、制御ロジック84に記憶されている選択データq0〜q7を、検査回路85で検査することで得られるものである。簡単に説明すると、検査回路85は、第1駆動信号COM_A用の第1選択データq0〜q3と第2駆動信号COM_B用の第2選択データq4〜q7を検査する。そして、これらの第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7が正常であれば、これらの第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7を検査済み第1選択データq0d〜q3dと検査済み第2選択データq4d〜q7dとして出力する。一方、第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7が異常な場合には、すなわち、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示す場合には、それまで出力していた検査済み第1選択データq0d〜q3dと検査済み第2選択データq4d〜q7dを継続して出力する。なお、選択データq0〜q7と検査済み選択データq0d〜q7dの関係、及び、検査回路85については、後で詳細に説明する。
次に、制御ロジック84、及びこの制御ロジック84に記憶されている選択データq0〜q7について説明する。図7に示すように、制御ロジック84は、1ビットのデータを記憶可能なレジスタRGを複数有している。各レジスタRGは、例えば、D−FF(delay flip flop)回路によって構成される。そして、各レジスタRGには、所定の選択データが記憶される。この選択データは所定タイミングで逐次更新される。例えば、或るラッチパルスの出力タイミングから次のラッチパルスの出力タイミングまでの間に更新される。なお、本実施形態において、選択データの内容は各繰り返し周期Tで同じである。このため、同じ内容の選択データを繰り返しセットすることになる。そして、選択データの内容は、例えば印刷モードが変更された場合において変更される。
また、説明の便宜上、図7では、各レジスタRGを、列方向(縦方向)に4個、行方向(横方向)に8個のマトリクス状に配置している。そして、同じ列に属する4つのレジスタRGをグループ化して、左側のグループから順に、符号Q0〜Q7を付して示している。また、各レジスタRGを、行方向の左側に位置するレジスタ群(グループQ0〜Q3)と、行方向の右側に位置するレジスタ群(グループQ4〜Q7)とに分けている。そして、左側に位置するレジスタ群については、同じ行に属する4つのレジスタRGをグループ化して、上側に位置するグループから順に符号G11〜G14を付して示している。右側に位置するレジスタ群についても同様に、上側に位置するグループから順に符号G21〜G24を付して示している。
以上のグループ分けは、各レジスタRGの役割に基づいてなされている。まず、行方向の左側に位置するグループQ0〜グループQ3に属する各レジスタRGは、第1駆動信号COM_A用の第1選択データq0〜q3を記憶可能なものである。また、行方向の右側に位置する4つのグループQ4〜グループQ7に属する各レジスタRGは、第2駆動信号COM_B用の第2選択データq4〜q7を記憶可能なものである。さらに、同じ列に属する各レジスタRGは、同じ階調値で使用される選択データを記憶可能なものである。具体的に説明すると、グループQ0及びグループQ4に属する各レジスタRGは、いずれもドット無しの画素データSI(データ[00])に対応する選択データq0,q4を記憶可能なものである。そして、グループQ1及びグループQ5に属する各レジスタRGは、いずれも小ドットの画素データSI(データ[01])に対応する選択データq1,q5を記憶可能なものである。同様に、グループQ2及びグループQ6に属する各レジスタRGは中ドットの画素データSI(データ[10])に対応する選択データq2,q6を、グループQ3及びグループQ7に属する各レジスタRGは大ドットの画素データSI(データ[11])に対応する選択データq3,q7を、それぞれ記憶可能なものである。
また、同じ行に属する各レジスタRGは、同じ波形部の選択データを記憶可能なものである。具体的に説明すると、グループG11に属する各レジスタRGは、期間T11で生成される第1波形部SS11用の選択データを記憶可能なものである。そして、グループG12に属する各レジスタRGは、期間T12で生成される第2波形部SS12用の選択データを記憶可能なものである。さらに、グループG13に属する各レジスタRGは、期間T13で生成される第3波形部SS13用の選択データを記憶可能なものである。なお、グループG14に属する各レジスタRGは、本実施形態では使用されていない。このグループG14に属する各レジスタRGは、第1駆動信号COM_Aが4つの波形部から構成された場合に、4番目の波形部用の選択データが記憶される。一方、グループG21に属する各レジスタRGには、期間T21で生成される第1波形部SS21用の選択データが、グループG22に属する各レジスタRGには、期間T22で生成される第2波形部SS22用の選択データが、それぞれ記憶される。また、本実施形態では、グループG23に属する各レジスタRG、及びグループG23に属する各レジスタRGは、使用されない。
以上を総括すると、制御ロジック84が有する各レジスタRGは、対応する駆動信号COMの種類(第1駆動信号COM_A,第2駆動信号COM_B)、対応する画素データSI(データ[00]〜データ[11])、対応する波形部(第1波形部SS11や第2波形部SS22等)の各因子で定まる選択データを記憶するものといえる。例えば、グループQ0とグループG11の両方に属するレジスタRG(Q0,G11)には、ドット無しの画素データSI(データ[00])における、第1駆動信号COM_Aの第1波形部SS11に対応する選択データが記憶される。また、グループQ3とグループG13の両方に属するレジスタRG(Q3,G13)には、大ドットの画素データSI(データ[11])における、第1駆動信号COM_Aの第3波形部SS13に対応する選択データが記憶される。同様に、グループQ7とグループG22の両方に属するレジスタRG(Q7,G22)には、大ドットの画素データSIにおける、第2駆動信号COM_Bの第2波形部SS22に対応する選択データが記憶される。
これらのレジスタRGに記憶された選択データは、マルチプレクサMX0〜マルチプレクサMX7により、ラッチ信号LATが有するラッチパルス、第1チェンジ信号CH_Aが有するチェンジパルス、及び第2チェンジ信号CH_Bが有するチェンジパルスで規定されるタイミングで順次選択される。すなわち、これらのパルスで規定されるタイミングは、波形データの切り替えタイミングに相当する。ここで、これらのマルチプレクサMX0〜マルチプレクサMX7の選択内容を指示する信号を発生するカウンタCTA、CTBには、ラッチパルスと各チェンジパルスとがそのまま(反転されずに)入力されている。加えて、カウンタCTA、CTBからの出力に従って、マルチプレクサMX0〜マルチプレクサMX7は、パルスの正エッジ(LレベルからHレベルへと電圧が立ち上がるエッジ)で動作する。このため、マルチプレクサMX0〜マルチプレクサMX7は、ラッチパルスと各チェンジパルスの前側エッジのタイミングで選択データを更新する。そして、マルチプレクサMX0〜マルチプレクサMX7で選択された選択データは、第1駆動信号COM_A用の第1選択データq0〜q3、及び、第2駆動信号COM_B用の第2選択データq4〜q7として、制御信号線群CTL_A,CTL_Bを通じて出力される。
ここで、第1選択データq0はドット無しの階調値に対応する選択データである。また、第1選択データq1は小ドットの階調値に対応する選択データである。同様に、第1選択データq2は中ドットの階調値に対応する選択データであり、第1選択データq3は大ドットの階調値に対応する選択データである。一方、第2選択データq4はドット無しの階調値に対応する選択データであり、第2選択データq5は小ドットの階調値に対応する選択データである。また、第2選択データq6は中ドットの階調値に対応する選択データであり、第2選択データq7は大ドットの階調値に対応する選択データである。そして、ドット無し、小ドット、中ドット、及び大ドットは、吐出させるインクの量が相違している。このため、階調値は、吐出させるインクの量を表す情報であるといえる。従って、第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7は、インクの吐出量に基づき分類された複数種類のデータを有しているといえる。
次に、デコーダ83について説明する。デコーダ83は、検査済み第1選択データq0d〜q3d及び検査済み第2選択データq4d〜q7dの中から、ラッチされた画素データSIに対応するものを選択し、スイッチ制御信号SWとして出力する。このデコーダ83は、第1スイッチ制御信号SW_Aを出力する第1デコード部83Aと、第2スイッチ制御信号SW_Bを出力する第2デコード部83Bとを有する。
第1デコード部83Aは、4つのアンドゲート831A〜834Aと、1つのオアゲート835Aを有している。各アンドゲート831A〜834Aは入力端子が3つ、出力端子が1つのものであり、検査済み第1選択データq0d〜q3dのうちの1つの検査済み選択データと、画素データSIの上位ビットのデータと、画素データSIの下位ビットのデータとが入力される。そして、各アンドゲート831A〜834Aは、画素データSIの上位ビットのデータと下位ビットのデータの入力の仕方が異なっている。すなわち、アンドゲート831Aには、ドット無しの検査済み第1選択データq0dと、画素データSIの上位ビットの反転データと、下位ビットの反転データとが入力されている。このため、画素データSIがデータ[00]の場合において、このアンドゲート831Aからの出力は、ドット無しの検査済み第1選択データq0dに従った内容になる。そして、アンドゲート832Aには、小ドットの検査済み第1選択データq1dと、画素データSIの上位ビットの反転データと、下位ビットのデータとが入力されている。このため、画素データSIがデータ[01]の場合において、このアンドゲート832Aからの出力は、小ドットの検査済み第1選択データq1dに従った内容になる。また、アンドゲート833Aには、中ドットの検査済み第1選択データq2dと、画素データSIの上位ビットのデータと、下位ビットの反転データとが入力されている。このため、画素データSIがデータ[10]の場合において、このアンドゲート832Aからの出力は、中ドットの検査済み第1選択データq2dに従った内容になる。また、アンドゲート834Aには、大ドットの検査済み第1選択データq3dと、画素データSIの上位ビットのデータと、下位ビットのデータとが入力されている。このため、画素データSIがデータ[11]の場合において、このアンドゲート832Aからの出力は、大ドットの検査済み第1選択データq3dに従った内容になる。
オアゲート835Aは入力端子が4つ、出力端子が1つのものである。そして、4つの入力端子のそれぞれには、各アンドゲート831A〜834Aからの出力が入力されている。このオアゲート835Aからは、第1スイッチ制御信号SW_Aが出力される。すなわち、検査済み第1選択データq0d〜q3dの内、ラッチされた画素データSIに対応するものが、第1スイッチ制御信号SW_Aとして出力される。
第2デコード部83Bもまた、4つのアンドゲート831B〜834Bと、1つのオアゲート835Bを有している。この第2デコード部83Bの構成は、第1デコード部83Aと同様である。すなわち、アンドゲート831Bには、ドット無しの検査済み第2選択データq4dと、画素データSIの上位ビットの反転データと、下位ビットの反転データとが入力されている。アンドゲート832Bには、小ドットの検査済み第2選択データq5dと、画素データSIの上位ビットの反転データと、下位ビットのデータとが入力されている。アンドゲート833Bには、中ドットの検査済み第2選択データq6dと、画素データSIの上位ビットのデータと、下位ビットの反転データとが入力されている。アンドゲート834Bには、大ドットの検査済み第2選択データq7dと、画素データSIの上位ビットのデータと、下位ビットのデータとが入力されている。オアゲート835Bには、4つのアンドゲート831B〜834Bからの出力が入力されている。そして、オアゲート835Bからは、第2選択データq4d〜q7dの内、ラッチされた画素データSIに対応するものが、第2スイッチ制御信号SW_Bとして出力される。
デコーダ83から出力された第1スイッチ制御信号SW_A及び第2スイッチ制御信号SW_Bは、第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bに入力される。これらの第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bは、抵抗値を変えることでオン状態とオフ状態とを切り替えるものである。例えば、オン状態では100Ω程度の抵抗値となり、オフ状態では数MΩの抵抗値となる。そして、第1スイッチ86Aの入力側には駆動信号生成回路70からの第1駆動信号COM_Aが印加されており、第2スイッチ86Bの入力側には第2駆動信号COM_Bが印加されている。また、第1スイッチ86Aと第2スイッチ86Bの共通の出力側にはピエゾ素子417が電気的に接続されている。これらの第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bは、生成される駆動信号COM毎に設けられるスイッチであり、第1駆動信号COM_Aを構成する波形部SS11〜SS13と、第2駆動信号COM_Bを構成する波形部SS21,SS22を、ピエゾ素子417へ選択的に印加させる。
第1スイッチ制御信号SW_Aは第1スイッチ86Aの動作を制御し、第2スイッチ制御信号SW_Bは第2スイッチ86Bの動作を制御する。すなわち、第1スイッチ制御信号SW_Aは、第1スイッチ86A用のスイッチ制御信号SWに相当する。また、第2スイッチ制御信号SW_Bは、第2スイッチ86B用の他のスイッチ制御信号SWに相当する。具体的には、第1スイッチ制御信号SW_Aがデータ[1]の場合、第1スイッチ86Aがオン状態となって、第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。また、第1スイッチ制御信号SW_Aがデータ[0]の場合、第1スイッチ86Aがオフ状態となるので、第1駆動信号COM_Aはピエゾ素子417に印加されない。同様に、第2スイッチ制御信号SW_Bがデータ[1]の場合、第2スイッチ86Bがオン状態となって、第2駆動信号COM_Bがピエゾ素子417に印加される。また、第2スイッチ制御信号SW_Bがデータ[0]の場合、第2スイッチ86Bがオフ状態となるので、第2駆動信号COM_Bはピエゾ素子417に印加されない。
なお、ピエゾ素子417はコンデンサの様に振る舞う。このため、駆動信号COMの印加が停止された場合において、ピエゾ素子417は停止直前の電位を維持する。従って、駆動信号COMの印加が停止されている期間において、ピエゾ素子417は、駆動信号COMの印加が停止される直前の変形状態を維持する。
<階調制御について>
次に、このプリンタ1における階調制御について説明する。ここで、図9は、第1駆動信号COM_Aと、第2駆動信号COM_Bと、必要な制御信号を説明する図である。図10は、大ドットの形成時、中ドットの形成時、及び小ドットの形成時において、ピエゾ素子417に印加される波形部を説明する図である。この階調制御において、第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bは、前述したように、第1スイッチ制御信号SW_A,第2スイッチ制御信号SW_Bに基づいて動作が制御される。
まず、大ドットの形成(画素データSIがデータ[11])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、大ドットの形成を示す画素データSIに基づき、検査済み第1選択データq3d及び検査済み第2選択データq7dを選択する。そして、検査済み第1選択データq3dが第1スイッチ制御信号SW_Aとして出力され、検査済み第2選択データq7dが第2スイッチ制御信号SW_Bとして出力される。本実施形態では、第1スイッチ制御信号SW_AがT11、T12、T13の時系列に従いデータ[100]とされ、第2スイッチ制御信号SW_BがT21、T22の時系列に従いデータ[01]とされる。これにより、図10の最上段に示すように、第1駆動信号COM_Aは期間T11でピエゾ素子417に印加され、第2駆動信号COM_Bは期間T22でピエゾ素子417に印加される。その結果、第1駆動信号COM_Aの第1波形部SS11が有する駆動パルスPS1と、第2駆動信号COM_Bの第2波形部SS22が有する駆動パルスPS5とがピエゾ素子417へ順に印加され、ノズルNzからは大ドットに対応する量のインクが吐出される。
次に、中ドットの形成(画素データSIがデータ[10])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、中ドットの形成を示す画素データSIに基づき、検査済み第1選択データq2d及び検査済み第2選択データq6dを選択し、第1スイッチ制御信号SW_A及び第2スイッチ制御信号SW_Bとして出力する。本実施形態では、第1スイッチ制御信号SW_Aがデータ[001]とされ、第2スイッチ制御信号SW_Bがデータ[00]とされる。これにより、図10の中上段に示すように、第1駆動信号COM_Aは期間T13でピエゾ素子417に印加され、第2駆動信号COM_Bはピエゾ素子417に印加されない。従って、第1駆動信号COM_Aの第3波形部SS13が有する駆動パルスPS3がピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは中ドットに対応する量のインクが吐出される。
次に、小ドットの形成(画素データSIがデータ[01])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、小ドットの形成を示す画素データSIに基づき、検査済み第1選択データq1d及び検査済み第2選択データq5dを選択し、第1スイッチ制御信号SW_A及び第2スイッチ制御信号SW_Bとして出力する。本実施形態では、第1スイッチ制御信号SW_Aがデータ[000]とされ、第2スイッチ制御信号SW_Bがデータ[10]とされる。これにより、図10の中下段に示すように、第2駆動信号COM_Bは期間T21でピエゾ素子417に印加され、第1駆動信号COM_Aはピエゾ素子417に印加されない。従って、第2駆動信号COM_Bの第1波形部SS21が有する駆動パルスPS4がピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは小ドットに対応する量のインクが吐出される。
なお、ドットの非形成(画素データSIがデータ[00])の場合、デコーダ83は、小ドットの形成を示す画素データSIに基づき、検査済み第1選択データq0d及び検査済み第2選択データq4dを選択し、第1スイッチ制御信号SW_A及び第2スイッチ制御信号SW_Bとして出力する。本実施形態では、第1スイッチ制御信号SW_Aがデータ[010]とされ、第2スイッチ制御信号SW_Bがデータ[00]とされる。これにより、図10の最下段に示すように、第1駆動信号COM_Aが期間T12でピエゾ素子417に印加されて、駆動パルスPS2によってメニスカスが微振動される。
<印刷動作について>
前述した構成を有するプリンタ1では、プリンタ側コントローラ60が、メモリ63に格納されたコンピュータプログラムに従って、制御対象部(用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、駆動信号生成回路70)を制御する。従って、このコンピュータプログラムは、この制御を実行するためのコードを有する。そして、制御対象部を制御することで、用紙Sに対する印刷動作が行われる。ここで、図11は、印刷動作を説明するフローチャートである。例示した印刷動作は、印刷命令の受信動作(S10)、給紙動作(S20)、ドット形成動作(S30)、搬送動作(S40)、排紙判断(S50)、排紙処理(S60)、及び印刷終了判断(S70)を有している。以下、各動作について、簡単に説明する。
印刷命令の受信動作(S10)は、コンピュータ110からの印刷命令を受信する動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60はインタフェース部61を介して印刷命令を受信する。給紙動作(S20)は、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60は、搬送モータ22を駆動するなどして、給紙ローラ21や搬送ローラ23を回転させる。ドット形成動作(S30)は、用紙Sにドットを形成するための動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60は、キャリッジモータ31を駆動したり、駆動信号生成回路70やヘッド41に対して制御信号を出力したりする。これにより、ヘッド41の移動中にノズルNzからインクが吐出され、用紙Sにドットが形成される。搬送動作(S40)は、用紙Sを搬送方向へ移動させる動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60は、搬送モータ22を駆動して搬送ローラ23を回転させる。この搬送動作により、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置に、ドットを形成することができる。排紙判断(S50)は、印刷対象となっている用紙Sに対する排出の要否を判断する動作である。この判断は、例えば、印刷データの有無に基づき、プリンタ側コントローラ60によって行われる。排紙処理(S60)は、用紙Sを排出させる処理であり、先程の排紙判断で「排紙する」と判断されたことを条件に行われる。この場合、プリンタ側コントローラ60は、排紙ローラ25を回転させることで、印刷済みの用紙Sを外部に排出させる。印刷終了判断(S70)は、印刷を続行するか否かの判断である。この判断も、プリンタ側コントローラ60によって行われる。
===検査回路===
<検査回路85を設けた理由について>
ところで、以上の説明は、プリンタ1の構成を説明することを目的としており、理想的な状態を前提にしている。しかし、実際にプリンタ1を動作させた場合には、対応する第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7の組が同時にデータ[1]を示す可能性がある。具体的には、ドット無しの画素データSIに対応する第1選択データq0と第2選択データq4の組、小ドットの画素データSIに対応する第1選択データq1と第2選択データq5の組、中ドットの画素データSIに対応する第1選択データq2と第2選択データq6の組、及び、大ドットの画素データSIに対応する第1選択データq3と第2選択データq7の組の少なくとも1組が、同時にデータ[1]を示す可能性がある。
このような現象は、主にノイズによって生じると考えられる。例えば、転送用クロックCLKにノイズが重なった場合には、各選択データq0〜q7が正規のレジスタRGとは異なるレジスタRGに記憶されることがある。また、各選択データq0〜q7にノイズが重なってしまった場合には、選択データq0〜q7の内容が書き換えられてしまう可能性もある。このような場合には、対応する第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7の組が同時にデータ[1]を示す可能性がある。そして、対応する第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7の組が同時にデータ[1]を示した場合には、第1スイッチ86Aと第2スイッチ86Bとが同時にオン状態になる。ここで、図12は、第1スイッチ86Aと第2スイッチ86Bとが同時にオンされた状態を模式的に説明する図である。図12に示すように、第1スイッチ86Aと第2スイッチ86Bが同時にオン状態になった状態において、第1駆動信号COM_Aの電圧と第2駆動信号COM_Bの電圧とに差があると、この電圧の差により、予定されていない電流Iが流れる。この現象は、このノズルだけで起こるのではなく、同一の画素データをもつ他のノズルでも同時に起こる(最悪、全ノズルで起こる)。そして、この予定されていない電流Iの合計は、駆動信号生成部70A,70Bの許容電流値を超えるなどの悪影響を及ぼす可能性がある。
そこで、本実施形態では、このような悪影響を防止するため、検査回路85を設けている。この検査回路85は、データ検査部に相当し、データ出力部としての制御ロジック84に接続され、制御ロジック84から出力された第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7を検査する。そして、検査回路85は、第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7に異常がなければ、これらの第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7を、検査済み第1選択データq0d〜q3d及び検査済み第2選択データq4d〜q7dとしてそのまま出力する。一方、検査回路85は、第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7が、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示す場合(つまり異常を示す場合)に、それまで出力していた検査済み第1選択データq0d〜q3d及び検査済み第2選択データq4d〜q7dを継続して出力する。ここで、継続して出力される検査済み第1選択データq0d〜q3d及び検査済み第2選択データq4d〜q7dは、既に検査回路85によって検査されたものである。言い換えれば、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示さない正常な選択データである。従って、この検査回路85を設けることにより、第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7に問題があった場合には、これらの第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7に代えて、検査済み第1選択データq0d〜q3d及び検査済み第2選択データq4d〜q7dが継続して出力される。その結果、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの素子への同時印加が確実に防止される。
<検査回路85の構成について>
まず、検査回路85の構成について説明する。ここで、図13は検査回路85の構成を説明するブロック図である。図13に示すように、検査回路85は、データ判断部851と、結果記憶部852と、結果出力部853と、データ選択部854とを有している。データ判断部851は、制御ロジック84から出力された第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7に対する判断を行う部分である。すなわち、これらの第1選択データq0〜q3及び第2選択データq4〜q7が、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示すか否かを判断する部分である。結果記憶部852は、判断結果記憶部に相当し、データ判断部851での判断結果を記憶する部分である。結果出力部853は、データ判断部851での判断結果、及び、結果記憶部852に記憶されている判断結果を出力する部分である。データ選択部854は、選択出力部に相当し、データ判断部851から出力される判断結果、若しくは、結果記憶部852に記憶された判断結果の何れかが、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示す場合に、それまで出力していた検査済み第1選択データq0d〜q3dと検査済み第2選択データq4d〜q7dとを選択して出力する部分である。以下、各部について詳細に説明する。
<データ判断部851について>
まず、データ判断部851について詳細に説明する。ここで、図14は検査回路85の具体例を説明する図である。図15Aは、データ判断部851の具体的な構成を説明する図である。図15Bは、データ判断部851が有するナンドゲート851a〜851dの動作を説明する真理値表である。図15Cは、データ判断部851が有するナンドゲート851eの動作を説明する真理値表である。これらの図に示すように、データ判断部851は、5つのナンドゲート851a〜851eを有している。これらのナンドゲート851a〜851eは、その機能に基づいて2種類に分けることができる。具体的には、ナンドゲート851a〜851dと、ナンドゲート851eとに分けることができる。
ナンドゲート851a〜851dは、対応する第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7同士を比較するためのものである。すなわち、ナンドゲート851aは、2つの入力端子と1つの出力端子とを有する。そして、ナンドゲート851aは、ドット無しの第1選択データq0と第2選択データq4とを比較し、これらの第1選択データq0と第2選択データq4の両方が駆動信号COMの印加を示すデータ[1]の場合に、その旨を示すデータ[0]を出力する。一方、その他の場合には、ナンドゲート851aはデータ[1]を出力する。そして、ナンドゲート851b〜851dも同様である。すなわち、ナンドゲート851bは、小ドットの第1選択データq1と第2選択データq5とを比較し、これらの第1選択データq1と第2選択データq5の両方が駆動信号COMの印加を示すデータ[1]の場合に、その旨を示すデータ[0]を出力する。同様に、ナンドゲート851cは、中ドットの第1選択データq2と第2選択データq6とを比較し、ナンドゲート851dは、大ドットの第1選択データq3と第2選択データq7とを比較する。
ナンドゲート851eは、ナンドゲート851a〜851dの比較結果を出力するためのものである。すなわち、ナンドゲート851eは、4つの入力端子と1つの出力端子を有し、入力端子のそれぞれには、ナンドゲート851a〜851dからの出力OA〜ODが入力される。このため、ナンドゲート851eの出力OEは、ナンドゲート851aの出力OA〜ナンドゲート851dの出力ODのいずれか1つでもデータ[0]であれば、データ[1]となる。つまり、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bの同時印加を示す異常なものであれば、データ[1]となる。また、この出力OEは、ナンドゲート851aの出力OA〜ナンドゲート851dの出力ODが全てデータ[1]であれば、つまり、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bの同時印加を示すものがない正常なものであれば、データ[0]となる。従って、このナンドゲート851eは、第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7の組に関し、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bをピエゾ素子417へ同時に印加させる組の有無を示す判断結果を出力するものといえる。
<結果記憶部852について>
次に、結果記憶部852について説明する。図14に示すように、結果記憶部852は、第1駆動信号COM_A用の第1記憶回路852aと、第2駆動信号COM_B用の第2記憶回路852bとを有する。
第1記憶回路852aは、結果出力部853からの出力を記憶する回路であって、第1駆動信号COM_A用の第1タイミングパルスが入力される毎に記憶を更新する回路である。本実施形態の第1記憶回路852aはD−FF回路によって構成され、その出力は結果出力部853に入力されている。ここで、第1タイミングパルスとは、第1選択データの更新タイミングを定めるためのパルスであり、ラッチ信号LATのラッチパルスと、第1チェンジ信号CH_Aのチェンジパルスが相当する。具体的に説明すると、第1チェンジ信号CH_Aはインバータ群855の第1インバータ855aにより反転され、ラッチ信号LATはインバータ群855の第3インバータ855cにより反転されている。そして、反転されたラッチ信号LATと反転された第1チェンジ信号CH_Aの論理積をアンドゲート856Aに演算させて、第1記憶回路852aのクロック端子に入力している。
ここで、図16は、アンドゲート856A,856Bの動作を説明するタイミングチャートである。すなわち、ラッチ信号LAT、第1チェンジ信号CH_A、及び第2チェンジ信号CH_Bと、これらの信号の反転出力(第1インバータ855a〜第3インバータ855cの出力)と、アンドゲート856A,856Bの出力の関係を説明するタイミングチャートである。この図に示すように、アンドゲート856Aの出力(演算結果)は、ラッチ信号LATと第1チェンジ信号CH_Aとが共にLレベルの場合にHレベルとなり、ラッチパルスやチェンジパルスが出力されている期間においてLレベルとなる。従って、アンドゲート856Aの出力は、ラッチパルスやチェンジパルスの前側エッジのタイミングでHレベルからLレベルに立ち下がり、後側エッジのタイミングでLレベルからHレベルに立ち上がる。そして、第1記憶回路852aは、クロック端子に入力されたパルスの正エッジで動作するので、ラッチパルスやチェンジパルスの後側エッジのタイミングで、結果記憶部852からの出力を記憶する。
第2記憶回路852bもまた、結果出力部853の出力を記憶する回路である。この第2記憶回路852bは、第2駆動信号COM_B用の第2タイミングパルスが入力される毎に記憶内容を更新する。この第2記憶回路852bも、第1記憶回路852aと同様にD−FF回路によって構成されており、その出力は結果出力部853に入力されている。ここで、第2タイミングパルスとは、第2選択データの更新タイミングを定めるためのパルスである。具体的に説明すると、第2チェンジ信号CH_Bはインバータ群855の第2インバータ855bにより反転され、ラッチ信号LATは前述したように第3インバータ855cにより反転されている。そして、反転されたラッチ信号LATと反転された第2チェンジ信号CH_Bの論理積をアンドゲート856Bに演算させて、第2記憶回路852bのクロック端子に入力している。従って、図16に示すように、アンドゲート856Bの出力も、ラッチパルスやチェンジパルスの前側エッジのタイミングでHレベルからLレベルに立ち下がり、後側エッジのタイミングでLレベルからHレベルに立ち上がる。そして、第2記憶回路852bは、クロック端子に入力されたパルスの正エッジで動作するので、ラッチパルスやチェンジパルスの後側エッジのタイミングで、結果記憶部852からの出力を記憶する。
そして、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、ラッチパルスが入力される毎にリセットされる。本実施形態では、反転されたラッチ信号LATが第1記憶回路852aのリセット端子及び第2記憶回路852bのリセット端子に入力されている。そして、これらの第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、リセット端子に入力されたパルスの負エッジでリセットされるので、ラッチパルスの前側エッジのタイミングでリセットされる。従って、ラッチパルスは、特定タイミングパルスに相当する。なお、第1記憶回路852aおよび第2記憶回路852bのリセットが解除されるのは、ラッチパルスの後側エッジのタイミングであり、前述のように、第1記憶回路852aおよび第2記憶回路852bのクロックが動くのとほぼ同時であるが、アンドゲート856A、Bの伝播遅延により、リセットが解除された後にクロック入力されるので、確実にラッチされる。
ところで、第1記憶回路852aの出力と第2記憶回路852bの出力が入力される結果出力部853は、データ判断部851からの判断結果も入力されており、いずれかの入力がデータ[1]を示す場合にデータ[1]を出力するものである(後述する)。このため、データ判断部851からの判断結果がデータ[1]になると、第1記憶回路852aは、ラッチパルス若しくは第1チェンジ信号CH_Aのチェンジパルスにおける後側エッジのタイミングで、このデータ[1]を記憶して結果出力部853へ出力する。同様に、第2記憶回路852bは、ラッチパルス若しくは第2チェンジ信号CH_Bのチェンジパルスにおける後側エッジのタイミングで、このデータ[1]を記憶して結果出力部853へ出力する。従って、データ判断部851から出力がデータ[1]になり、引き続き、第1記憶回路852aおよび第2記憶回路852bの出力がデータ[1]になると、その後結果出力部853の出力は、データ判断部851からの出力に拘わらず、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bが共にリセットされるまで、データ[1]となる。言い換えれば、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bをピエゾ素子417へ同時に印加させる選択データの組がある旨をデータ判断部851が判断した場合には、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bが共にリセットされるまで、結果出力部853からの出力はデータ[1]のままとなる。
<結果出力部853について>
次に、結果出力部853について説明する。図14に示すように、結果出力部853は、ノアゲート853aと、インバータ853bとを有する。ノアゲート853aは、3つの入力端子と1つの出力端子とを有している。そして、このノアゲート853aには、データ判断部851からの判断結果と、第1記憶回路852aからの出力と、第2記憶回路852bからの出力とが入力されている。また、ノアゲート853aの出力は、インバータ853bに入力されている。従って、結果出力部853からの出力、つまり、インバータ853bからの出力は、データ判断部851からの判断結果と、第1記憶回路852aからの出力と、第2記憶回路852bからの出力のいずれか1つでもデータ[1]であれば、データ[1]となる。
<データ選択部854について>
次に、データ選択部854について説明する。このデータ選択部854は、2チャンネルのマルチプレクサ854aと、記憶回路854bと、アンドゲート854cとから構成される。そして、マルチプレクサ854aと記憶回路854bの組は、検査済み選択データq0d〜q7dのそれぞれに対応させて設けられる。従って、データ選択部854は、検査済み選択データq0d用のブロックBK(q0d)から検査済み選択データq7d用のブロックBK(q7d)までの8個のブロックBKを有している。
マルチプレクサ854aは、切り替えスイッチに相当する。このマルチプレクサ854aの一方の入力端子には制御ロジック84からの選択データq0〜q7が入力され、他方の入力端子には記憶回路854bからの出力、すなわち、既に出力されている検査済み選択データq0d〜q7dが入力される。そして、このマルチプレクサ854aは、結果出力部853から出力されるデータが[0]の場合には、制御ロジック84からの選択データq0〜q7を出力し、結果出力部853から出力されるデータが[1]の場合、すなわち、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示す異常な場合には、既に出力されている検査済み選択データq0d〜q7dを出力する。具体的に説明すると、ブロックBK(q0d)が有するマルチプレクサ854aは、結果出力部853からの出力がデータ[0]の場合に選択データq0を出力する。一方、結果出力部853からの出力がデータ[1]の場合に検査済み選択データq0dを出力する。同様に、ブロックBK(q1d)が有するマルチプレクサ854aは、選択データq1と検査済み選択データq1dのいずれかを出力する。そして、他のブロックBKも同様であり、ブロックBK(q7d)が有するマルチプレクサ854aは、選択データq7と検査済み選択データq7dのいずれかを出力する。
記憶回路854bは、記憶出力部に相当する。そして、本実施形態の記憶回路854bは、D−FF回路によって構成されている。この記憶回路854bの入力端子には、マルチプレクサ854aからの出力が入力されている。また、記憶回路854bのクロック端子には、ラッチ信号LATのラッチパルスと、第1チェンジ信号CH_Aのチェンジパルス若しくは第2チェンジ信号CH_Bのチェンジパルスとに基づくタイミングパルスが入力される。すなわち前述したアンドゲート856Aからの出力が、ブロックBK(q0d)〜BK(q3d)が有する記憶回路854bのクロック端子に入力され、アンドゲート856Bからの出力が、ブロックBK(q4d)〜BK(q7d)が有する記憶回路854bのクロック端子に入力されている。そして、ブロックBK(q0d)〜BK(q7d)が有する各記憶回路854bは、パルスの正エッジで動作するので、ラッチパルスとチェンジパルスの後側エッジのタイミングで記憶が更新される。
<検査回路85の動作について>
次に、以上の構成を有する検査回路85の動作について説明する。ここで、図17は、プリンタ1の動作例を説明するための図である。具体的には、選択データ[0]が記憶されるはずの制御ロジック84のレジスタRG(Q7,G21)に、選択データ[1]が記憶されてしまった場合の動作例を説明する図である。なお、この動作例では、タイミングt1で始まる繰り返し周期Tにて選択データq0〜q7が異常となり、直前の繰り返し周期T、及び、次の繰り返し周期Tの選択データq0〜q7は正常である。すなわち、タイミングt1で始まる繰り返し周期T用の選択データq0〜q7を制御ロジック84に転送する際に、ノイズ等によって異常が発生した場合の動作例である。
この動作例において、まず、駆動信号生成回路70は、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bを生成している(駆動信号生成ステップ)。そして、ラッチパルスLAT1の前側エッジのタイミングt1で、制御ロジック84は、グループG11の各レジスタRGに記憶されている選択データと、グループG21の各レジスタRGに記憶されている選択データとを出力する(選択データ出力ステップ)。ここで、レジスタRG(Q7,G21)には、通常はデータ[0]が記憶されるはずであるが、ノイズによってデータ[1]が記憶されている。このため、タイミングt1において、選択データq7はデータ[1]となる。なお、この他の選択データq0〜q6については、正常なデータが出力される。その結果、選択データq7と選択データq3は、ともにデータ[1]となる。
これらの選択データq0〜q7は、検査回路85にて検査される(データ検査ステップ)。選択データq0〜q7は、まず、検査回路85が有するデータ判断部851及びデータ選択部854に入力される。ここで、図15B,図15Cから判るように、データ判断部851のナンドゲート851a〜851cの出力OA〜OCはデータ[1]であるが、ナンドゲート851dの出力ODは、選択データq3と選択データq7がともにデータ[1]であることからデータ[0]になる。これに伴い、ナンドゲート851eの出力OEはデータ[1]となる。すなわち、データ判断部851による判断結果は、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示すデータ[1]となる。
結果出力部853の出力がデータ[1]であることに基づき、データ選択部854が有する各マルチプレクサ854aは、検査済み選択データq0d〜q7dを選択する。これにより、データ選択部854が有する各記憶回路854bの入力端子には、既に出力されている検査済み選択データq0d〜q7dが入力される。具体的には、前の繰り返し周期Tにおける期間T13,T22での検査済み選択データq0d〜q7dが入力される。なお、このタイミングt1において、結果記憶部852が有する第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、ラッチパルスの前側エッジによってリセットされている。
次に、ラッチパルスLAT1の後側エッジのタイミングt2で、データ選択部854の記憶回路854bが動作する。すなわち、タイミングt2で記憶回路854bは、入力端子に入力されている検査済み選択データq0d〜q7dを記憶して出力する。例えば、ブロックBK(q0d)の記憶回路854bは、それまで出力していた検査済み選択データq0dを継続して出力する。また、ブロックBK(q4d)の記憶回路854bも、それまで出力していた検査済み選択データq4dを継続して出力する。そして、他のブロックBKについても同様である。
デコーダ83は、この検査済み選択データq0d〜q7dに基づいて第1スイッチ制御信号SW_Aと第2スイッチ制御信号SW_Bとを出力する。そして、これらの第1スイッチ制御信号SW_A及び第2スイッチ制御信号SW_Bによって第1スイッチ86A及び第2スイッチ86Bが動作し、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への印加が制御される(駆動信号印加ステップ)。ここで、それまで出力されていた検査済み選択データq0d〜q7dは、検査回路85によって検査済みのものである。すなわち、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示さない正常なものである。従って、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの素子への同時印加が確実に防止することができる。
ところで、本実施形態では、同じ階調値(インクの吐出量)の検査済み第1選択データと検査済み第2選択データを出力するブロック対に関し、一方のブロックBKが有する記憶回路854bの反転出力を用いて、他方のブロックBKが有する記憶回路854bの出力をマスクしている。本実施形態では、アンドゲート854cでマスクしている。例えば、ドット無しの階調値では、検査済み第1選択データq0dを出力するブロックBK(q0d)と、検査済み第2選択データq4dを出力するブロックBK(q4d)とが対応する。そして、本実施形態では、一方のブロックBK(q0d)が有する記憶回路854bの反転出力(QN)と他方のブロックBK(q4d)の記憶回路854bの出力(Q)がアンドゲート854cに入力されアンドゲート854cの出力が検査済み第2選択データq4dとして出力される。
ここで、ブロックBK(q0d)から検査済み第1選択データq0dとしてデータ[1]が出力されている場合、記憶回路854bの反転出力(QN)はデータ[0]となる。そして、この反転出力[0]を入力とするアンドゲート854cの出力すなわち検査済み第2選択データq4dは、ブロックBK(q4d)の記憶回路854bの値によらず、常にデータ[0]となる。つまり、ブロックBK(q0d)からの検査済み第1選択データq0dがデータ[1]である場合には、ブロックBK(q4d)からの検査済み第2選択データq4dは強制的にデータ[0]となる。その結果、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとが同時にピエゾ素子417へ印加されてしまう不具合を防止することができる。なお、この機能は、例えば、電源投入時など、選択データq0〜q7が不定の場合に有効である。
また、このタイミングt2では、ラッチパルスの後側エッジにより、結果記憶部852の第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、結果出力部853の出力を記憶する。すなわち、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、結果出力部853が出力している異常を示すデータ[1]を記憶する。前述したように、これらの第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bの記憶内容は結果出力部853へ出力されるので、以後の更新タイミングで第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7とが正常に戻ったとしても、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bがリセットされるまでは、結果出力部853からの出力は異常を示すデータ[1]となる。
次に、第1チェンジ信号CH_AのチェンジパルスCH11が出力される。このチェンジパルスCH11の前側エッジのタイミングt3において、制御ロジック84は、グループG12の各レジスタRGに記憶されている選択データを出力する。すなわち、第1選択データq0〜q3が更新される。そして、更新された第1選択データq0〜q3と更新されていない第2選択データq4〜q7とが、データ判断部851及びデータ選択部854に入力される。このとき、全ての選択データq0〜q7は正常なものになっている。このため、データ判断部851のナンドゲート851a〜851dの出力OA〜ODはいずれもデータ[1]となる。その結果、データ判断部851による判断結果は、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を示さない(つまり正常な状態を示す)、データ[0]となる。この判断結果は、結果出力部853に出力される。ここで、前述したように、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bからは、異常を示すデータ[1]が出力されている。このため、結果出力部853からの出力はデータ[1]となる。その結果、データ選択部854が有する各マルチプレクサ854aは、検査済み選択データq0d〜q7dを選択する。これにより、データ選択部854が有する各記憶回路854bの入力端子には、既に出力されている検査済み選択データq0d〜q7dが入力される。
次に、チェンジパルスCH11の後側エッジのタイミングt4で、データ選択部854の記憶回路854bが動作する。すなわち、タイミングt4で記憶回路854bは、入力端子に入力されている検査済み選択データq0d〜q7dを記憶して出力する。つまり、それまで出力していた検査済み選択データq0d〜q7dが継続的に出力される。前述したように、これらの検査済み選択データq0d〜q7dは、検査回路85によって検査済みのものであり、正常なものである。従って、このタイミングt4でも、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの素子への同時印加を確実に防止することができる。
次に、第1チェンジ信号CH_AのチェンジパルスCH12及び第2チェンジ信号CH_BのチェンジパルスCH21が同時に出力される。これらのチェンジパルスCH12,CH21に伴う動作は、チェンジパルスCH11が出力された場合の動作と同様である。要するに、データ判断部851による判断結果は正常を示している(データ[0])が、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bの出力が異常を示している(データ[1])ため、結果出力部853からの出力も異常を示す(データ[1])。これに伴い、それまで出力していた検査済み選択データq0d〜q7dが継続的に出力される。
次に、ラッチパルスLAT2の前側エッジのタイミングt11で、制御ロジック84のマルチプレクサMX0〜MX7は、グループG11の各レジスタRGに記憶されている選択データと、グループG21の各レジスタRGに記憶されている選択データとを選択する。これにより、制御ロジック84からは、選択データq0〜q7が出力される。ここで出力される選択データq0〜q7は正常な選択データである。これは、直前の繰り返し周期Tの間に(さらに詳しく述べれば、チェンジパルスCH22の後側エッジのタイミングからタイミングt11の間に)、制御ロジック84の各レジスタRGに記憶される選択データが更新されているためである。従って、このタイミングt11において、データ判断部851から出力される判断結果は、正常を示すデータ[0]となる。また、このタイミングt1において、結果記憶部852が有する第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、ラッチパルスの前側エッジによってリセットされる。このため、第1記憶回路852aからの出力、及び、第2記憶回路852bからの出力も、ともに正常を示すデータ[0]となる。そして、結果出力部853に入力されるデータ判断部851の判断結果、第1記憶回路852aからの出力、及び、第2記憶回路852bからの出力が何れもデータ[0]となることから、結果出力部853からの出力も正常を示すデータ[0]となる。結果出力部853の出力がデータ[0]であることに基づき、データ選択部854が有する各マルチプレクサ854aは、制御ロジック84からの選択データq0〜q7を選択する。すなわち、データ選択部854が有する各記憶回路854bの入力端子には、これらの選択データq0〜q7が入力される。
次に、ラッチパルスLAT2の後側エッジのタイミングt12で、データ選択部854の記憶回路854bが動作する。すなわち、タイミングt12で記憶回路854bは、入力端子に入力されている選択データq0〜q7を記憶し、検査済み選択データq0d〜q7dとして出力する。例えば、ブロックBK(q0d)の記憶回路854bはデータ[0]を出力し、ブロックBK(q4d)の記憶回路854bもデータ[0]を出力する。また、ブロックBK(q3d)の記憶回路854bはデータ[1]を出力し、ブロックBK(q7d)の記憶回路854bはデータ[0]を出力する。そして、ここで出力される検査済み選択データは検査回路85によって検査済みのものであり、正常なものである。従って、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの素子への同時印加を確実に防止することができる。
このような構成により、本実施形態のプリンタ1では、制御ロジック84に記憶される選択データが、ノイズ等によって異常なものとなってしまった場合には、それまで出力していた検査済み第1選択データと検査済み第2選択データとが継続して出力される。これにより、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子417への同時印加を有効に防止することができる。また、この制御は、ラッチパルスやタイミングパルスにおける前側エッジのタイミングと後側エッジのタイミングを基準にして行われている。すなわち、前側エッジのタイミングで制御ロジック84からの選択データq0〜q7の判断が行われ、後側エッジのタイミングで判断結果に基づく選択が行われている。このように、1つのパルスの前側エッジと後側エッジを利用しているので制御の効率がよい。また、制御のタイミングを適切に定めることもできる。例えば、データ判断部851による判断動作とデータ選択部854による選択動作について、これらの順序を確実に定めることができる。さらに、比較対象となる第1選択データq0〜q3,第2選択データq4〜q7の組は、同じ階調値のものである。このため、適切な判断を行わせることができる。
ところで、前述したタイミングt4では、データ判断部851からの判断結果は正常であるにも拘わらず、それまで出力していた検査済み選択データq0d〜q7dを出力するように構成されていた。その理由は、タイミングt4は、第1駆動信号COM_Aだけに設定された切り替えタイミングだからである。すなわち、このタイミングt4で、選択データq0〜q7に基づく新たな検査済み選択データq0d〜q7dによる制御に切り替えてしまうと、ピエゾ素子417の電位が急激に変化し、ピエゾ素子417に過度な負担を掛けてしまったりする。
例えば、大ドットの画素データSIが設定されていた場合、タイミングt4までの期間において、検査済み第2選択データq7dはデータ[1]となる。このため、この画素データSIに対応するピエゾ素子417には第2駆動信号COM_Bが印加される。そして、タイミングt4で新たな検査済み選択データに切り替えてしまうと、新たな検査済み第1選択データq3dはデータ[1]であるため(すなわち、制御ロジック84からの選択データq3がそのまま検査済み選択データq3dとなるため)、タイミングt4からは第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417へ印加される。ここで、図9に示すように、タイミングt4において、第2駆動信号COM_Bの電圧V(t4)は第1駆動信号COM_Aの電圧(中間電圧VC)よりも低い。このため、ピエゾ素子417は、電圧V(t4)に対応する電位から中間電圧VCに対応する電位まで急激に充電される。その結果、ピエゾ素子417に過度な負担を掛けてしまう。
この点に関し、本実施形態では、データ判断部851の判断結果が異常を示すデータ[1]であった場合には、このデータを第1記憶回路852aと第2記憶回路852bに記憶させている。この構成により、第1選択データq0〜q3と第2選択データq4〜q7に関し、一方だけの更新タイミングでこれらの選択データq0〜q7が正常に戻ったとしても、それまで出力されていた検査済み第1選択データq0d〜q3dと検査済み第2選択データq4d〜q7dを継続して出力させることができる。
そして、ラッチパルスのタイミングで、第1記憶回路852aと第2記憶回路852bとをリセットしているので、ピエゾ素子417の急激な電位変化を確実に防止することができる。すなわち、ラッチパルスのタイミングは、画素データSI(階調値)を更新するタイミングである。言い換えれば、ピエゾ素子417に印加される駆動信号COMを、第1駆動信号COM_Aから第2駆動信号COM_Bへと、或いはその逆へと切り替え得るタイミングである。それ故に、ラッチパルスのタイミングにおいて、第1駆動信号COM_Aの電圧と第2駆動信号COM_Bの電圧は揃えられている。従って、新たな検査済み選択データq0d〜q7dに制御を切り替えることで、ピエゾ素子417に印加される駆動信号COMが切り替わったとしても、急激な電位の変化は生じ難い。その結果、新たな検査済み第1選択データq0d〜q3dと検査済み第2選択データq4d〜q7dに基づく駆動信号COMの印加制御を円滑に行わせることができる。
===第2実施形態===
ところで、前述した第1実施形態では、ラッチパルスのタイミングで第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bをリセットしていた。つまり、新たな検査済み選択データq0d〜q7dによる制御を実行可能に構成していた。ところで、新たな検査済み選択データq0d〜q7dによる制御を実行可能にするタイミングは、ラッチパルスのタイミングに限定されない。すなわち、ピエゾ素子417に印加される駆動信号COMを、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bの一方から他方へ切り替え得るタイミングであればよい。以下、新たな検査済み選択データq0d〜q7dによる制御が実行されるタイミングが異なる第2実施形態について説明する。ここで、図18は、第2実施形態の構成を説明する図である。なお、図示されていない構成は、前述した第1実施形態のものと同様である。
図18に示すように、このプリンタ1では、検査回路85にリセットパルス生成部857を設けている。このリセットパルス生成部857は、アンドゲート857aと、インバータ857bと、アンドゲート857cとを有している。アンドゲート857aは、2つの入力端子と1つの出力端子とを有している。そして、一方の入力端子には第1チェンジ信号CH_Aが入力され、他方の入力端子には第2チェンジ信号CH_Bが入力されている。従って、このアンドゲート857aは、第1チェンジ信号CH_Aと第2チェンジ信号CH_Bが共にHレベルのときに、Hレベルの信号を出力する。言い換えれば、第1チェンジ信号CH_Aのチェンジパルスと第2チェンジ信号CH_Bのチェンジパルスが同時に出力されている期間に亘ってパルスが出力される。そして、このパルスは、ラッチパルスやチェンジパルスといったタイミングパルスの内、同時に出力される第1チェンジ信号CH_AのチェンジパルスCH12と第2チェンジ信号CH_BのチェンジパルスCH21に基づいて生成される(図17を参照。)。このため、これらのチェンジパルスCH12,CH21は、特定タイミングパルスに相当する。
アンドゲート857aの出力はインバータ857bに入力される。従って、このインバータ857bからは、第1チェンジ信号CH_AのチェンジパルスCH12と第2チェンジ信号CH_BのチェンジパルスCH21が同時に出力されている期間に亘ってLレベルとなる反転信号が出力される。つまり、第1チェンジ信号CH_AのチェンジパルスCH12及び第2チェンジ信号CH_BのチェンジパルスCH21における、前側エッジのタイミングでHレベルからLレベルに立ち下がり、後側エッジのタイミングでLレベルからHレベルに立ち上がる信号が出力される。
インバータ857bの出力は、アンドゲート857cの一方の入力端子に入力される。このアンドゲート857cは、2つの入力端子と1つの出力端子とを有する。そして、アンドゲート857cの他方の入力端子には、第3インバータ855cによって反転されたラッチ信号LAT(以下、反転ラッチ信号ともいう。)が入力される。この反転ラッチ信号では、第1実施形態で説明したように、ラッチパルスの前側エッジのタイミングでHレベルからLレベルに立ち下がり、後側エッジのタイミングでLレベルからHレベルに立ち上がる信号が出力される。従って、アンドゲート857cの出力は、ラッチパルスが出力されている期間、及び、第1チェンジ信号CH_AのチェンジパルスCH12及び第2チェンジ信号CH_BのチェンジパルスCH21が同時に出力されている期間に亘ってLレベルとなる信号(便宜上、リセットタイミング信号ともいう。)が出力される。
そして、アンドゲート857cから出力されるリセットタイミング信号は、第1記憶回路852aのリセット端子及び第2記憶回路852bのリセット端子のそれぞれに入力されている。ここで、本実施形態の第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、リセットタイミング信号の[0]レベルでリセットされるものである。このため、第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bは、ラッチパルスの前側エッジのタイミング、及び、チェンジパルスCH12及びチェンジパルスCH21の前側エッジのタイミングでリセットされる。
例えば、図9に示す第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bでは、期間T11の開始タイミング、期間T13(期間T22)の開始タイミングで第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bがリセットされる。そして、これらの第1記憶回路852a及び第2記憶回路852bがリセットされた後は、新たな検査済み選択データq0d〜q7dによる制御が行われる。このように構成しても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタ1を有する印刷システム100について記載されているが、その中には、駆動信号COMの印加方法や液体吐出システム等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<検査回路85について>
前述した各実施形態の検査回路85はあくまで一例である。検査回路85はロジック回路で構成されているため、異なる回路構成であっても同等の動作を行わせることができる。従って、同等の動作を行わせる検査回路85であれば、本発明に含まれる。さらに、ロジック回路を用いずに、CPU62を用いて構成することも可能である。
<駆動信号COMについて>
前述した実施形態では、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bからなる2種類の駆動信号COMを同時に生成するプリンタ1を例に挙げたが、この構成に限定されるものではない。すなわち、3種類以上の駆動信号COMを同時に生成可能なプリンタ1であってもよい。また、前述した第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bも一例であり、他の波形であってもよい。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタ1の実施形態であったので、液体状の染料インク又は顔料インクをノズルNzから吐出させていた。しかし、ノズルNzから吐出させるインクは、液体状であれば、このようなインクに限られるものではない。
<他の応用例について>
また、前述の実施形態では、プリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。