JP4654558B2 - 誘電体材料および誘電体材料の製造方法 - Google Patents

誘電体材料および誘電体材料の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体材料に関するものであり、特にマイクロ波、ミリ波等の高周波帯域に用いて好適な誘電体材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
誘電体材料は、これまで比誘電率εr(以下、単にεr)あるいは品質係数と共振周波数の積Q・f(以下、単にQ・f)の向上を目的として開発されてきた。ところが、マイクロ波、ミリ波等の高周波帯域に使用される誘電体材料としては、εrが高いよりは、ある所定の低い値を示すことが要求される。したがって、従来開発された誘電体材料は、そのεrが20〜60程度であったため、以上のように高周波帯域用途の誘電体材料としては不向きであった。
【0003】
そのため、最近では高周波帯域用途の誘電体材料の開発が活発になっている。
例えば、特開2000−327412号公報には、実質的にMgOの結晶相およびMgAl24の結晶相のみが析出した高周波用誘電体セラミックス組成物が開示されている。このセラミックス組成物は、9近傍のεrを示し、かつ70000を超えるQ・fを得ることができる優れた材料である。
また、特開2000−247738号公報には、(Y2-xx)Ba(Cu1-yZny)O5(RはYb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Eu及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素)で表される固溶体または、この固溶体のCuの一部または全部をZnで置換した固溶体からなる高周波誘電体磁器組成物が開示されている。この磁器組成物は、比誘電率εrがおよそ15で、210000程度のQ・fが得られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−327412号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】
特開2000−247738号公報(第3頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、低いεrおよび高いQ・fの誘電体材料が開発されている。しかるに、より低いεrにおいて、より高いQ・fを備えた誘電体材料の開発が要求されている。
また、誘電体材料を得る際の焼結温度がより低温であることが、その製造コスト低減のために望ましい。例えば、1400℃以下の温度で焼結が可能であり、かつ低いεrおよび高いQ・fの誘電体材料の開発も望まれている。
そこで本発明は、さらに低いεrであっても高いQ・fを得ることのできる誘電体材料を提供することを課題とする。また本発明は、比較的低温度での焼結によってそのような誘電体材料を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、εrを低くするためにCa2Nb27で示される組成物について検討を行った。その結果、上記組成物のCaを所定量のMgで置換した組成物を焼結した材料のεrが20以下となること、さらにその際のQ・fが10000(GHz)以上となることを確認した。
本発明者等は、当初、この焼結体の結晶相が(MgxCa(1-x)2Nb27であろうと推測していた。ところが、Mgの置換量によって、この焼結体は、Ca2Nb27相、CaNb26相、Mg4Nb29相、Mg5Nb415相およびMgNb26相の5つの結晶相が出現し得ることを知るに到った。さらに、この5つの結晶相のうちで、CaNb26相およびMg4Nb29相の2つの結晶相が出現した焼結体は、εrが低くかつQ・fが高いことを知見した。
【0007】
そこで、CaNb相およびMgNb相のいずれの結晶相がεrおよびQ・fに対して有効であるかを確認するために、CaNb相の単相組織を得るための焼結体およびMgNb相の単相組織を得るための焼結体を作成した。そして、この2つの焼結体についてεrおよびQ・fを測定した。その結果、MgNb相の単相組織を得るために作製した焼結体は、比誘電率εrが13程度と低い値を実現し、しかも、240000を超えるQ・fが得られることを知った。つまり、このような低いεrおよび高いQ・fが、αβという結晶構造に起因するものである。
本発明は以上の知見に基づくものであり、αβ型の結晶相で構成される焼結体からなることを特徴とする誘電体材料を提供する。ただし、αはMg、βはNbおよびTaの1種または2種を示す。
【0009】
以上のαとしてMgを、またβとしてNbを選択したMgNb相で構成される焼結体は、εrが20以下、共振法により8〜11GHzのいずれかの周波数で測定したQ・fが200000(GHz)以上という特性を得ることができる。本発明による焼結体は、1400℃以下、さらには1350℃以下の温度範囲での加熱・保持により緻密化することができる。
【0010】
次に、MgNb中のMgの一部をBaで置換する組成物を焼結すると、MgNb相の他に、Ba(Mg1/3Nb2/3)O相が出現する。そして、MgNb相とBa(Mg1/3Nb2/3)O相とからなる焼結体は、温度特性に優れることが確認できた
したがって本発明は、αβ型の結晶相とA(α 1/3 β 2/3 )O 型の結晶相とで構成される焼結体からなり、A/(α+A)で示されるαとAの組成比が0.25〜0.5625であることを特徴とする誘電体材料を提供する。ただし、αはMg、βはNbおよびTaの1種または2種、AはBa、Sr及びCaの1種又は2種以上を示す。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の誘電体材料をさらに詳細に説明する。
本発明の誘電体材料(第1の誘電体材料)は、α4β29型の結晶相が実質的に主相をなす焼結体から構成される。主相であることの典型例としてα4β29型結晶相の単相組織を掲げることができるが、本発明はこれに限らずα4β29型結晶相が実質的に主相であれば足りる。ここで、実質的に主相であるか否かは、例えばX線回折によってα4β29型の回折強度が最も大きいと認められるか否かによって判断される。
【0014】
αとしては、2価の金属元素、特にアルカリ土類金属元素の1種または2種以上から選択することができるが、本発明では、Mg選択する。
βは5価の金属元素の1種または2種以上から選択される。具体的には、Ta、Nbの1種または2種である。したがって、例えば、Mg Nb 、MgTa の結晶相からなる焼結体が本発明の対象となる。
上の誘電体材料において、αとしてMgを選択し、かつβとしてNbを選択したMgNb相を主相とする焼結体は、後述する実施例に示すように、13程度のεrであって、かつ共振法による測定周波数10GHz近傍において240000を超えるQ・fを得ることができる。
【0015】
また本発明による他の誘電体材料(第2の誘電体材料)は、αβ型の結晶相とA(α 1/3 β 2/3 型の結晶相との2相で構成される焼結体からなる。ここで、αβ型の結晶相とA(α 1/3 β 2/3 型の結晶相との2相が含まれる場合には、X線回折によってαβ型の結晶相の占有率とA(α 1/3 β 2/3 型の結晶相の占有率の合計が他の結晶相よりも大きいと認められるか否かによって判断される
【0016】
第2の誘電体材料のαおよびβは、前述した第1の誘電体材料と同様の元素から選択することができる。
第2の誘電体材料を構成するA(α 1/3 β 2/3 型の結晶相は、ペロフスカイト型結晶構造と呼ばれており、本発明では、AをCa、Sr、Baの1種または2種以上から選択する。
αとしてMgを、AとしてBaを、βとしてNbを選択した場合に、MgNb相とBa(Mg1/3Nb2/3)O相の2相組織からなる焼結体が得られる。この焼結体は、種々の製造条件において、温度特性を−80〜80ppm/K、望ましくは−40〜40ppm/K、さらに望ましくは−20〜20ppm/Kの範囲に規制することができる。そしてこの焼結体の中には、温度特性が0ppm/K近傍でありながら、100000GHz以上のQ・fを得ている。しかもこの焼結体のεrは20近傍とすることができる。
【0017】
次に本発明の誘電体材料を製造する方法について説明する。この製造方法の要旨は、
図1に示されている。以下、図1を参照しつつ順次各工程について説明する。
本発明の第1の誘電体材料を得るための原料粉末として、αCO粉末およびβ粉末を用意する。ここでは、βとしてNbを選択したものとして説明する。
MgCO粉末およびNb粉末は、焼結後にMgNb結晶相が主相、望ましくは単相組織を形成するように配合組成が定められる。本発明では、化学量論組成から若干ずれた配合組成としても構わない。化学量論組成からの若干の組成ずれは工業的生産規模では現実に生じ得るし、また、若干の組成ずれが生じていたとしても、焼結体の組織がMgNb相が実質的に主相、望ましくは単相組織となっていれば、本発明の効果を十分享受することができるからである。
【0018】
以上の原料粉末が以下示す工程を経ることによって、本発明で規定する組織をもった焼結体を得ることができる。なお、ここでは、MgCO3粉末およびNb25粉末を例示したが、最終的に本発明で規定する組織が得られるのであれば、他の組成を有する粉末を原料粉末として用いても良い。例えば、MgCO3粉末の代わりに、MgO粉末あるいはMg(OH)粉末を用いることもできる。また、焼結助剤その他の目的で他の粉末を添加することもできる。各原料粉末の粒径は0.1〜10μmの範囲で適宜選択すればよい。
【0019】
以上の原料粉末を混合する。混合には、ボール・ミル等の公知の混合手段を用いればよい。ボール・ミルの運転条件にも左右されるが、混合運転を10〜20時間程度行なえば均一な混合状態を得ることができる。
混合された原料粉末は、プレス等の手段により所定の形状に成形された後に、仮焼きに供される。仮焼きは、800〜1300℃の温度範囲で行なうことが望ましい。800℃未満では仮焼きの効果を十分に得ることができないためである。一方、1300℃を超えると仮焼き体が硬くなり、後の粉砕工程に時間を要するからである。望ましい仮焼き温度は900〜1250℃、さらに望ましい仮焼き温度は1000〜1150℃である。仮焼きの時間は、1〜5時間の間で適宜選択すればよい。仮焼きの雰囲気は、酸素含有雰囲気、典型的には大気とする。
【0020】
仮焼きの後に、仮焼き体は粉砕される。粉砕には、例えばボール・ミルを用いることができる。粉砕された粉末(以後、完成粉末という)は、プレス等の手段により所定の形状に成形された後に焼結される。なお、完成粉末は、0.1〜20μm程度の平均粒径になるまで行なうことが望ましい。
焼結は、1250〜1500℃の温度範囲で行われる。1250℃未満では焼結が十分進行しないために密度が不十分である。一方、1500℃を超えると、材料が溶融するおそれがあるためである。望ましい焼結温度は1270〜1400℃、さらに望ましい焼結温度は1300〜1370℃である。焼結時間は、焼結温度、材料の組成、完成粉末の粒度等の条件によって適宜定めるが、上記の焼結温度であれば、2〜20時間の範囲で設定される。焼結の雰囲気は、大気中等酸素含有雰囲気であればよいが、酸素雰囲気であることが望ましい。
【0021】
本発明による実施例の説明に入る前に、本発明が完成される過程の実験データをまず示しておく。
(MgxCa(1-x)2Nb27で示される化学式において、xが表1に示す値となるように、原料粉末を配合した。用いた原料粉末は、平均粒径0.3〜1.5μmのMgCO3粉末、CaCO3粉末およびNb25粉末である。この原料粉末をボール・ミルに投入して16時間混合した。
混合された原料粉末を円柱状に成形した後に、仮焼きした。仮焼きの雰囲気は大気とし、1100℃で2時間加熱・保持した。仮焼き後に、仮焼き体をボール・ミルに投入して粉砕を行った。得られた完成粉末の粒径は、0.5〜5μmの範囲内にあった。
完成粉末を成形後、1350℃で4時間保持することにより、焼結体を得た。得られた焼結体について、JIS R 1627(マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法)に準じて、εrおよびQ・f(測定周波数 8.5〜10GHz)を測定した。なお、Q・fは、損失を示すtanδの逆数に共振(測定)周波数を乗じた値である。測定結果を表1に併せて示す。また、xとεrの関係を図2に、xとQ・fの関係を図3に示す。
また、得られた焼結体のいくつかについて、X線回折による結晶相の同定を行った。その結果を図4および図5に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0004654558
【0023】
図2に示すように、εrは、x、つまり(MgxCa(1-x)2Nb27においてCaをMgで置換する量(以下、Mg置換量)が多くなるにつれて低下する傾向にある。したがって、本発明の目的の一つである、低いεrを得るためには、Mg置換量を多くすればよいことがわかる。
一方、図3に示すように、Q・fは、Mg置換量の増加とともに向上するが、0.7(mol比、以下同様)近傍をピークにそれ以上のMg置換量では逆に低下する傾向を示す。したがって、Q・fを確保する上では、Mg置換量を0.4〜0.9、望ましくは0.65〜0.75の範囲とすべきことがわかった。図2に示すように、Mg置換量が0.4〜0.9の範囲ではεrは25以下、さらにMg置換量が0.65〜0.75の範囲ではεrは20以下となる。ここで、図3をも考慮すれば、Mg置換量は、0.4〜0.9、望ましくは0.5〜0.8、さらに望ましくは0.65〜0.75とすべきである。
【0024】
図4は、Mg置換量が
0(組成=Ca2Nb27)、
0.40(組成=(Mg0.40Ca0.602Nb27)、
0.60(組成=(Mg0.60Ca0.402Nb27)、
0.675(組成=(Mg0.675Ca0.3252Nb27
の配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
また、図5は、Mg置換量が
0.70(組成=(Mg0.70Ca0.302Nb27)、
0.725(組成=(Mg0.725Ca0.2752Nb27)、
0.80(組成=(Mg0.80Ca0.202Nb27)、
1.00(組成=Mg2Nb27
の配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
【0025】
図4および図5に基づいて、各焼結体を構成する結晶相を確認した。その結果を図6に示してある。図4〜図6に示すように、Mg置換量が0(組成式=Ca2Nb27)の焼結体はCa2Nb27相のみからなる単相組織であるが、Mg置換量が0.40および0.60の焼結体は、Ca2Nb27相のほかに、CaNb26相およびMg4Nb29相が出現する。図4より、Mg置換量が0.40および0.60の焼結体は、Ca2Nb27相の存在量は少なく、CaNb26相およびMg4Nb29相が主体をなすことがわかる。さらに、Mg置換量が0.675と多い焼結体では、Ca2Nb27相は存在しておらず、CaNb26相およびMg4Nb29相の2相組織となる。さらに、Mg置換量が0.7と多い焼結体では、CaNb26相およびMg4Nb29相の他に、Mg5Nb415相が観察された。さらにまた、Mg置換量が0.725あるいは0.80に増えると、MgNb26相が出現する。そして、置換量が1.0になると、CaNb26相およびMg4Nb29相は消失し、Mg5Nb415相およびMgNb26相の2相組織となる。
【0026】
焼結体を構成する結晶相と、図2を比較検討すると、Ca2Nb27相のみからなる単相組織よりも、さらに他の結晶相が混在することにより、焼結体のεrが低減していることがわかる。また、図3との比較においては、CaNb26相およびMg4Nb29相の2つの結晶相が存在する場合に、高いQ・fが得られていることがわかる。
【0027】
(実施例1)
以上の知見に基づいて、Mg4Nb29相単相からなる焼結体およびCaNb26相単相からなる焼結体を得ることを目的とする実験を行った。その結果を実施例1として以下に示す。
平均粒径0.1μmのMgO粉末を19.4gおよび平均粒径1.5μmのNb23粉末を31.1gを配合して原料粉末を得た。配合は、焼結後において化学量論的にMg4Nb29となるように、その比が定められた。この原料粉末をボール・ミルに投入して16時間湿式混合した。
混合された原料粉末を120℃で24時間乾燥後、200kgf/cm2の圧力でプレスして円柱状(60mmφ)の成形体を得た。この成形体を、仮焼きした。仮焼きの雰囲気は大気とし、1100℃で2時間加熱・保持した。仮焼き後に、仮焼き体をボール・ミルに投入して粉砕を行った後に120℃で24時間乾燥して完成粉末を得た。得られた完成粉末の平均粒径は、0.5〜5μmの範囲内にあった。
完成粉末に有機バインダを加えて造粒、分級した後、2t/cm2の圧力でプレスして円柱状(12mmφ)の成形体を得た。成形後、1300℃、1350℃および1370℃で4時間保持することにより、本発明による焼結体(実施例1)を得た。得られた焼結体について、JIS R 1627に準じて、εrおよびQ・f(測定周波数 8.5〜10GHz)を測定した。測定結果を表2に示すとともに、焼結温度とεrの関係を図7に、また焼結温度とQ・fの関係を図8に示す。
比較例として、平均粒径0.3μmのCaCO3粉末を13.7gおよび平均粒径1.5μmのNb25粉末を36.3gを配合した原料粉末を用いる以外は、以上と同様の工程を経て焼結体(比較例1)を得た。なお、配合は、焼結後において化学量論的にCaNb26となるように、その比が定められた。この比較例1についても、JIS R 1627に準じて、εrおよびQ・f(測定周波数8.5〜10GHz)を測定した。測定結果を表2に示すとともに、焼結温度とεrの関係を図7に、また焼結温度とQ・fの関係を図8に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0004654558
【0029】
表2および図7に示すように、実施例1による焼結体(Mg4Nb29と表示)のεrは、焼結温度に係わらず、約13を示している。これに対して比較例1による焼結体(CaNb26と表示)は、εrが約17を示している。
また、表2および図8に示すように、実施例1による焼結体は、230000GHzあるいは240000GHzを超える高いQ・fを得ることができる。これに対して比較例1による焼結体は、Q・fが60000〜80000GHz程度であり、実施例1による焼結体よりも低い値にあることがわかる。
【0030】
実施例1による焼結体(焼結温度1350℃)の相構成を確認するため、X線回折を行った。その結果を図9に示すが、Mg4Nb29相のみからなる単相組織であることがわかった。
【0031】
(実施例2)
次に、Mg4Nb29のMgの一部をBa、SrおよびCaで置換した組成系の焼結体を作成して、実施例1と同様にεrおよびQ・fを測定するとともに、温度特性(以下、TCF)を測定した。その結果を実施例2として示す。なお、測定に供した焼結体の組成は以下の組成式のy(置換量)を適宜変動させたものである。また、これら焼結体は実施例1と同様の手法(焼結温度は1325℃)で得た。
Ba置換材:(Mg1-yBay4Nb29
Sr置換材:(Mg1-ySry4Nb29
Ca置換材:(Mg1-yCay4Nb29
【0032】
図10にεr、図11にQ・f(測定周波数 8〜11GHz)および図12にTCFの測定結果を示す。また、表3にこれらの測定結果をまとめて示す。なお、TCFは、共振周波数の温度による変化率を、対応する温度の変化分で除した値であり、ここでは、−40〜85℃での共振周波数を測定することにより求めた。
図10に示すように、Ba、SrおよびCaでMgを置換する量が増えるにしたがって、εrは若干であるが大きくなる傾向を示す。Ba、SrおよびCaのいずれで置換する場合であっても、20以下のεrを得るためには、置換量を0.25以下にする必要がある。
また、図11に示すように、Ba、SrおよびCaによるMgの置換によって、Q・fが低下する傾向にある、しかし、BaはSrおよびCaよりもその低下の程度が小さい。
次に、TCFは、図12に示すように、Ba、SrおよびCaによりその変動の傾向が異なっている。その中で、Ba置換材は、その置換量によってTCFが−20〜20ppm/Kの範囲で正の値および負の値を採る。つまり、図12は、Ba置換材は、特定の置換量でTCFが0(ゼロ)になることを示唆している。
【0033】
【表3】
Figure 0004654558
【0034】
以上説明したように、実施例1で示したMg4Nb29系の材料のMgをBa、SrおよびCaの1種または2種以上で置換することにより、εr、Q・fおよびTCFを調整することが可能である。その中で、Ba置換量が0.4375の材料は、1325℃の焼結温度において、TCFが−1.35ppm/K、Q・fが120943GHz、εrが23.93の特性を得ている。
【0035】
実施例2の中で、前述したBa置換材((Mg1-yBay4Nb29) の相構成を確認するため、X線回折を行った。その結果を図13に示す。図13に示すように、Ba置換量が0(y=0.00)の焼結体は、その組織がMg4Nb29のみからなる単相組織となっているのに対して、BaでMgを置換していくと、Ba(Mg1/3Nb2/3)O3の結晶相が現れる。Ba置換量が0.5(y=0.50)の焼結体では、Ba(Mg1/3Nb2/3)O3相がMg4Nb29相よりも顕著となる。これら焼結体は、Mg4Nb29相とBa(Mg1/3Nb2/3)O3相の2相で焼結体の主相を構成している。
【0036】
(実施例3)
(1−x)(Mg4Nb29)+x(Mg4Ta29)の組成となるように平均粒径0.1μmのMgO粉末、平均粒径1.5μmのNb25粉末および平均粒径1.5μmのTa25粉末を配合した後に、実施例1と同様に成形体を得た。この成形体を1350℃、1375℃、1400℃、1450℃および1500℃で焼結して焼結体を得た。得られた焼結体について、JIS R 1627に準じて、εrおよびQ・f(測定周波数 8〜11GHz)を測定した。εrの測定結果を表4および図15に、またQ・fの測定結果を表5および図16に示す。
【0037】
はじめに、εrに対するMg4Nb29とMg4Ta29の配合比の影響についてみると、Mg4Ta29の比率が多くなるとεrが低下することがわかる。したがって、低いεrを得るという本発明の目的に対してNbおよびTaはともに望ましい元素であるが、その中でもTaが最も望ましいということができる。
次に、εrに対する焼結温度の影響についてみると、Mg4Nb29とMg4Ta29の配合比によって異なる結果が得られている。Mg4Ta29の比率が0〜0.7の範囲では焼結温度が高くなるにつれてεrは低くなる。これに対してMg4Ta29の比率が0.7を超えると焼結温度が高くなるのにつれてεrは高くなる。もっとも、Mg4Nb29とMg4Ta29の配合比による影響に比べて焼結温度による影響は小さい。
【0038】
また、Q・fに対するMg4Nb29とMg4Ta29の配合比の影響についてみると、統一した傾向が現れていない。例えば、焼結温度が1350℃の場合Q・fの顕著な変動はないが、焼結温度が1400℃、1450℃と高い場合にはMg4Ta29の比率が多いほどQ・fは高くなる傾向にある。
さらに、Q・fに対する焼結温度の影響についてみると、Mg4Ta29の比率が0〜0.4の範囲では1375℃の焼結温度でQ・fが最も高くなっている。Mg4Ta29の比率が0.4を超えると焼結温度が高くなるにつれて概ねQ・fも高くなる傾向にある。
【0039】
以上のような傾向を示すことが確認されたが、本実施例においては、1350℃程度の焼結温度において、11あるいは11以下程度のεrで230000GHzを超えるQ・f特性を得ることができる。この材料は1400℃を超える焼結温度を選択することにより、Q・fを280000GHz以上の値とすることも可能である。特に、焼結後に化学量論的にMg4Ta29となるように配合組成を定めた焼結体は、1350℃の焼結においてεrが10以下、230000GHzを超えるQ・f特性を得ることができる。また、この焼結体は焼結温度を1400℃程度に上げることにより、10近傍のεrで280000GHzを超えるQ・f特性を得ることができる。
【0040】
以上の焼結体の中で、焼結後に化学量論的にMg4Ta29となるように配合組成を定めた焼結体について、相構成を確認するためにX線回折を行った。その結果、図14に示すように、1350℃、1400℃、1450℃および1500℃のいずれの温度で焼結した焼結体も、Mg4Ta29相が主相をなすことが確認された。
【0041】
【表4】
Figure 0004654558
【0042】
【表5】
Figure 0004654558
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、α4β29型の結晶相が実質的に主相をなす焼結体、代表的には、αとしてMgを、またβとしてNbを選択したMg4Nb29相を主相とする焼結体は、13程度の低いεrでありながら240000GHzを超える高いQ・fを得ることができる。しかもこの特性は、1400℃以下の温度で焼結した材料で得ることができる。
また、βとしてNbに代えてTaを選択した焼結体は、εrを11程度に低減しつつ、280000GHz以上のQ・fを得ることが可能である。
さらに、Mg4Nb29のMgの一部をBaで置換したα4β29型の結晶相とA(B'B”)O3型の結晶相との2相を含む焼結体は、温度特性の向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による誘電体材料を得るための製造プロセスを示す図である。
【図2】 (MgxCa(1-x)2Nb27の配合組成から得た焼結体のxの値とεrの関係を示すグラフである。
【図3】 (MgxCa(1-x)2Nb27の配合組成から得た焼結体のxの値とQ・fの関係を示すグラフである。
【図4】 (MgxCa(1-x)2Nb27の配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
【図5】 (MgxCa(1-x)2Nb27の配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
【図6】 (MgxCa(1-x)2Nb27の配合組成から得た焼結体のxの値と出現する結晶相の関係を示す図である。
【図7】 Mg4Nb29およびCaNb26の配合組成から得た焼結体の焼結温度とεrの関係を示すグラフである。
【図8】 Mg4Nb29およびCaNb26の配合組成から得た焼結体の焼結温度とQ・fの関係を示すグラフである。
【図9】 Mg4Nb29の配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
【図10】 Mg4Nb29のMgの一部をBa、SrおよびCaで置換した配合組成から得た焼結体のεrと当該置換量との関係を示す図である。
【図11】 Mg4Nb29のMgの一部をBa、SrおよびCaで置換した配合組成から得た焼結体のQ・fと当該置換量との関係を示す図である。
【図12】 Mg4Nb29のMgの一部をBa、SrおよびCaで置換した配合組成から得た焼結体の温度特性TCFと当該置換量との関係を示す図である。
【図13】 Mg4Nb29のMgの一部をBa、SrおよびCaで置換した配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
【図14】 Mg4Ta29の配合組成から得た焼結体のX線回折結果を示す図である。
【図15】 (1−x)(Mg4Nb29)+x(Mg4Ta29)の配合組成から得た焼結体のεrとxとの関係を示す図である。
【図16】 (1−x)(Mg4Nb29)+x(Mg4Ta29)の配合組成から得た焼結体のQ・fとxとの関係を示す図である。

Claims (4)

  1. αβ型の結晶相で構成される焼結体からなることを特徴とする誘電体材料。
    ただし、αはMg、βはNbおよびTaの1種または2種を示す。
  2. αβ型の結晶相とA(α1/3β2/3)O型の結晶相とで構成される焼結体からなり、A/(α+A)で示されるαとAの組成比が0.25〜0.5625であることを特徴とする誘電体材料。
    ただし、αはMg、βはNbおよびTaの1種または2種、AはBa、Sr及びCaの1種又は2種以上を示す。
  3. 比誘電率εrが20以下、共振法により8〜11GHzのいずれかの周波数で測定したQ・fが200000(GHz)以上であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体材料。
  4. 温度特性が−20〜20ppm/Kの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の誘電体材料
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