JP4650777B2 - 水洗便器 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水洗便器に関し、具体的には便鉢内に洗浄水を貯留させてなる溜水部を備えたものに適用される技術であって、使用時において便器に汚物が落ちる際に発生する溜水飛沫の跳ね返りを防止することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
一般に水洗便器には、その排出部を水封するため、便鉢内に洗浄水を貯留させて溜水部が形成されている。そして、このような水洗便器のうち、サイホン式便器・サイホンボルテックス式便器・サイホンジェット式便器等にあっては、溜水部を大きく形成してあるのが普通である。これらの便器は、溜水部が大きいため、便鉢に汚物が付着しにくく、また、臭気の発散が抑えられるという利点を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溜水部の表面積が広く且つ溜水面が上方に位置するので、便器の使用時に飛沫が上方へ跳ね返って使用者の身体にかかったり、トイレの床を濡らしたりするという問題が有る。
このような問題を解消するために、例えば特開平8−296267号に示されるように、水深の最深部を40mm以下に設定する方法が提案されている。しかしながらかかる方法では常時水深が40mm以下であるために、溜水の蒸発による流水量の減少や排出管からの圧力変動を受けた際に封水切れを起こす危険があることが懸念される。
本発明は前記従来の問題点に鑑み、広い溜水部を有する便器であっても、使用時に飛沫が上方へ跳ね返るおそれを無くすことのできる手段を提供するものである。本発明が採用する手段の特徴とするところは、排便時に便鉢内の溜水を低下させることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明にかかる水洗便器においては、水洗便器の溜水面低下させることにより、溜水の水深を浅くし、溜水面と便座との距離を大きくする。
これにより、汚物が水面に落下した際に生じる飛沫の発生を低減するとともに、跳ね返って使用者の身体にかかることを抑えることができる。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、便鉢内の溜水が流出する開口部と開口部で溜水の流出量を調整する調整部と調整部を制御する制御部とからなる。
これにより、便鉢内の溜水を外部に排出させ溜水面を低下できるとともに、排出させる水量を調整することができる。溜水面が低下することにより汚物が水面に落下した際に生じる飛沫の発生を低減するとともに、跳ね返って使用者の身体にかかることを抑えることができる。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、流出する溜水を貯留するタンクを備える。
これにより、流出した溜水をそのまま流し去るのではなく再利用することが可能になる。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、便器前部が上昇するように便器自体を傾斜させる便器傾斜手段と便器傾斜手段の動作を制御する制御部とからなる。
これにより、便鉢内の溜水を外部に排出させ溜水面を低下できるとともに、排出させる水量を調整することができる。溜水面が低下することにより汚物が水面に落下した際に生じる飛沫の発生を低減するとともに、跳ね返って使用者の身体にかかることを抑えることができる。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、洗浄機構がトラップ排水路を駆動させる可動排出部であり、駆動手段と駆動手段の動作を制御する制御部を備え、駆動開始の信号により溜水を外部に排出し溜水面を低下させる。
これにより、便鉢内の溜水を外部に排出させ溜水面を低下できるとともに、排出させる水量を調整することができる。溜水面が低下することにより汚物が水面に落下した際に生じる飛沫の発生を低減するとともに、跳ね返って使用者の身体にかかることを抑えることができる。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、洗浄機構の一部を駆動させて溜水面を低下させる。
これにより、便鉢内の溜水を外部に排出させ溜水面を低下できるとともに、排出させる水量を調整することができる。溜水面が低下することにより汚物が水面に落下した際に生じる飛沫の発生を低減するとともに、跳ね返って使用者の身体にかかることを抑えることができる。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、溜水面低下手段を起動させる人体検知センサーを備える。
これにより、非使用時には封水深を確保でき、使用者のトイレブースへの入室や着座の際に自動的に溜水面を低下することができるようになる。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、便鉢とトラップ排水路間の空気連通防止手段をトラップ入り口に備える。
これにより、溜水面がトラップ入り口上端面以下に低下した場合においても、排出側からの下水臭等の悪臭の進入を防ぐことができる。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、溜水を溜水面低下前の位置に復帰させる供給機構がある
これにより、溜水面低下により露出した便鉢面を再度水没させることにより付着した汚物を剥離させるとともに、サイホンを引き起こすための溜水高さの確保ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を説明する。図1は本発明に係る水洗便器の断面図である。
図1に示すように、水洗便器本体1は、溜水を貯留する便鉢2と、一端が便鉢2の底部に連通し、他端が図示しない外部排出管に接続したリバースタイプのSトラップ3とを備えている。さらに便鉢2には開口部11が設置されており、弁体12を経由してタンク10に接続されている。弁体12には弁体駆動手段13が設置されており、弁体駆動手段13により弁体12の開閉動作がなされる。また弁体駆動手段13には制御部14が接続されており、制御部14からの信号により弁体駆動手段13が動作される。制御部14はスイッチ15と連動している。
【0014】
本実施例に係る水洗便器の流水面低下動作を説明する。
便器利用者が、スイッチ15を操作すると、制御部14から弁体駆動手段13に信号が送られ弁体駆動手段13は弁体12の開動作をおこなう。弁体12が開となることで、便鉢2に貯留されていた溜水は開口部11から流出し、弁体12を通りタンク10に流れ込む。弁体12の開度を調整することで流出量を調整することができる。所定時間経過後制御部14から弁体駆動手段13に信号が送られ弁体駆動手段13は弁体12の閉動作をおこなう。このような一連の動作により便鉢2内に貯留された溜水の溜水量が減少し、溜水面が低下する。便器利用者の排便時には溜水面が低下しているために、飛沫が上方へ跳ね返るおそれを無くすことができる。
【0015】
次にまた別の実施例を示す。図2は本発明に係る水洗便器の断面図である。
図2に示すように、水洗便器本体1は、溜水を貯留する便鉢2と、一端が便鉢2の底部に連通し、他端が図示しない外部排出管に接続したリバースタイプのSトラップ3とを備えている。さらに便器傾斜手段20を備え、便器傾斜手段20には制御部14が接続されており、制御部14からの信号により便器傾斜手段20が動作する。制御部14は人体検知センサー19と連動している。
【0016】
本実施例に係る水洗便器の流水面低下動作を説明する。
便器利用者が便器に接近すると、人体検知センサー19が便器利用者の接近を感知し、制御部14から便器傾斜手段20に信号が送られ便器傾斜手段20が伸張し、便器前部4が上昇するように便器自体を傾斜させる。これにより便鉢2に貯留していた溜水がトラップ3から外部に排出される。便器傾斜手段20の伸張長さを調整することにより排出量を調整することができる。所定時間経過後制御部14から便器傾斜手段20に信号が送られ便器傾斜手段20が収縮し、便器傾斜を終了する。このような一連の動作により便鉢2内に貯留された溜水の溜水量が減少し、溜水面が低下する。便器利用者の排便時には溜水面が低下しているために、飛沫が上方へ跳ね返るおそれを無くすことができる。
【0017】
次にまた別の実施例を示す。図3は本発明に係る水洗便器の断面図である。
図3に示すように、水洗便器本体1は、溜水を貯留する便鉢2と、一端が便鉢2の底部に連通し、他端が図示しない外部排出管に接続した可動式トラップ5と可動式トラップ5を駆動するトラップ駆動部6とを備えている。さらにトラップ駆動部6には制御部14が接続されており、制御部14からの信号によりトラップ駆動部6が動作する。制御部14は人体検知センサー19と連動している。
【0018】
本実施例に係る水洗便器の流水面低下動作を説明する。
便器利用者が便器に接近すると、人体検知センサー19から制御部14に信号が送られトラップ駆動部6が可動トラップ5を下げるように駆動を開始する。可動トラップ5が完全に下がると溜水がすべて排出してしまうため、あらかじめ決められていた位置で駆動が終了するように制御部14から駆動停止信号がトラップ駆動部6に送られる。このような一連の動作によりボール面2内に貯留された溜水量が減少し、溜水面が低下する。便器利用者の排便時には溜水面が低下しているために、飛沫が上方へ跳ね返るおそれを無くすことができる。
【0019】
次にまた別の実施例を示す。図4は本発明に係る水洗便器の断面図である。
図4に示すように、水洗便器本体1は、溜水を貯留する便鉢2と、一端が便鉢2の底部に連通し、他端が図示しない外部排出管に接続したリバースタイプのSトラップ3と、バルブユニット7とを備えている。バルブユニット7は給水配管8に接続している。バルブユニット7から供給される洗浄水は、ゼット配管21を通りトラップ3の入り口に向けて洗浄水を吐出するように設置されたゼット孔22から吐出されるとともに、リム配管23を通りリム24から吐出される。バルブユニット7は人体検知センサー19と連動している。トラップ入口上面にはゴム製の連通防止膜25が設置されている。
図5に洗浄において使用される吐水シーケンスを示す。
【0020】
本実施例に係る水洗便器の流水面低下動作を説明する。
便器利用者が便器に接近すると、人体検知センサー19からバルブユニット7に信号が送られ図6に示す溜水面低下用の吐水シーケンスに応じて吐水が行われる。この動作によりボール面2内に貯留された溜水量が減少し、溜水面が低下する。サイホンが発生し溜水が強力に排出されると溜水面がトラップ入口上端面以下に低下し、便鉢2とトラップ3の間の水封が破れ空気が連通するおそれが生じる。連通防止膜25により空気連通を防止する。便器利用者の排便時には溜水面が低下しているために、飛沫が上方へ跳ね返るおそれを無くすことができる。
便器利用者が排便終了後に便器から離れると、人体検知センサー19からバルブユニット7に信号が送られ、リムからの吐水により溜水に水が供給され溜水を溜水面低下前の位置に復帰させる。その後に図5に示した吐水シーケンスにより吐水が行われ洗浄が実施される。
【0021】
【発明の効果】
上記説明から分かるように、本発明に係る水洗便器においては、広い溜水部を有する便器であっても、使用時に飛沫が上方へ跳ね返るおそれを無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る水洗便器の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る水洗便器の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る水洗便器の断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る水洗便器の断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る通常洗浄における吐水シーケンス図である。
【図6】本発明の実施例に係る溜水面低下における吐水シーケンス図である。
【符号の説明】
1…水洗便器本体
2…便鉢
3…トラップ
4…便器前部
5…可動式トラップ
6…トラップ駆動部
7…バルブユニット
8…給水配管
9…トラップ入口
10…タンク
11…開口部
12…弁体
13…弁体駆動手段
14…制御部
15…スイッチ
19…人体検知センサー
20…便器傾斜手段
21…ゼット配管
22…ゼット孔
23…リム配管
24…リム
25…連通防止膜

Claims (5)

  1. 便鉢と、該便鉢に連通するトラップ排水路と、該便鉢内に形成される溜水の洗浄機構と、該洗浄機構の非駆動時に溜水面を低下させる溜水面低下手段と、使用者のトイレブースへの入室または着座を検知して、前記溜水面低下手段を起動させる人体検知センサーと、を具備した水洗便器において、
    前記溜水面低下手段は、前記便鉢内の溜水が流出する開口部と、該開口部で溜水の流出量を調整する調整部と、該調整部を制御する制御部と、からなることを特徴とする水洗便器。
  2. 前記溜水面低下手段に、流出する溜水を貯留するタンクを備えることを特徴とする請求項1記載の水洗便器。
  3. 便鉢と、該便鉢に連通するトラップ排水路と、該便鉢内に形成される溜水の洗浄機構と、該洗浄機構の非駆動時に溜水面を低下させる溜水面低下手段と、使用者のトイレブースへの入室または着座を検知して、前記溜水面低下手段を起動させる人体検知センサーと、を具備した水洗便器において、
    前記溜水面低下手段は、トラップ排水路の可動排出部と、該可動排出部を駆動するための駆動手段と、該駆動手段の動作を制御する制御部と、からなることを特徴とする水洗便器。
  4. 前記便鉢と前記トラップ排水路間の空気連通防止手段を、前記トラップ排水路入口に備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水洗便器。
  5. 前記溜水面低下手段によって低下させた溜水面を溜水面低下前の位置に復帰させる供給機構を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の水洗便器。
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