JP2555806B2 - サイホン式洋風便器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はサイホン式洋風便器に係
り、特にサイホンの起動が早くなるようトラップ部の構
成を改良したサイホン式洋風便器に関する。

【０００２】

【従来の技術】第４、５図に従来のサイホン式洋風便器
を示す。第４図はサイホン式洋風便器の縦断面図、第５
図は第４図のＶ−Ｖ線断面図である。

【０００３】便鉢１の上縁部にリム通水路２が周設さ
れ、該リム通水路２の底面には所定間隔をおいて洗浄水
の射水孔３が穿設されている。便鉢１の底部の流出口４
はサイホン式トラップ部（以下、単にトラップ部とい
う。）５に通じている。該トラップ部５の途中には最高
位部６が設けられており、該最高位部６よりも下流側は
ほぼ鉛直方向に立ち下がる立下り部７となっており、該
立下り部７の下流側が排水口８に連通している。この立
下り部７の内周面のうち最高位部６と反対側には凸部９
が設けられている。この凸部９は、第５図に明示される
通り、水平方向に延在する棚状に設けられている。１０
は凸部９と対峙する対面壁を示す。

【０００４】前記リム通水路２へはロータンク（図示
略）内の洗浄水が給水口１１及び水路１２を経て供給さ
れる。周知の通り、このロータンクにはボールタップ等
の給水弁が設けられている。リム通水路２からはゼット
水路１３が分岐し、ゼット孔１４より洗浄水を流出口４
及びトラップ部５へ向けて噴出しうるよう構成されてい
る。

【０００５】かかる構成のサイホン式洋風便器におい
て、ボールタップ等の給水弁が開弁すると、リム通水路
２の射水孔３から便鉢１内に洗浄水が供給されると共
に、ゼット孔１４から洗浄水が噴出され、水がトラップ
部５内に流れ込む。そして、この水は最高位部６をのり
越え、立下り部７を経て排水口９より排水管（図示略）
へ排出される。

【０００６】この排水時に立下り部７内が水で満たされ
ると、サイホン作用が働き、便鉢１内の水が強力に吸引
されて排出されるようになる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上記従来のサイホン式
洋風便器においては、サイホンの起動が遅いという問題
があった。即ち、ボールタップ等の給水弁が開弁し、便
器に洗浄水が供給され始めてからサイホン作用が起動す
るまでに時間が長くかかっていた。

【０００８】このため、従来のサイホン式洋風便器にお
いては、サイホン作用の継続時間が短く、便鉢１内から
の水の吸引排出が不十分になり易かった。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明のサイホン式洋風
便器は、上縁部にリム通水路が設けられた便鉢と、該便
鉢の下部の流出口から便器の前方又は後方へ便鉢の途中
高さまで立ち上がって最高位部に到り、その後立ち下が
っているサイホン式トラップ部と、該トラップ部が連通
した排水口と、を備えたサイホン式洋風便器において、
前記サイホン式トラップ部の立下り部の途中高さの内面
のうち、前記最高位部と反対側の内面に凸部を内周方向
に延設してなり、該凸部は、便器の幅方向の中央部が最
低位となっており、この最低位部分から便器幅方向外方
に向って徐々に高くなっていることを特徴とするもので
ある。

【００１０】

【作用】本発明者らは、上記従来のサイホン式洋風便器
においてサイホンの起動が遅くなる原因について種々検
討を重ねた結果、立下り部７内の水が排水口８に向って
流出し易く、立下り部７内が満水になりにくいためであ
ること；そして、その原因は、対面壁１０の下部付近に
空気が残留し、立下り部７内がなかなか満水にならない
ためであることが分かった。

【００１１】即ち、第４図において、最高位部６をのり
越えた水は、惰性（水の勢い）で凸部９に向って流れ、
そのまま下方に流れ下ってしまい、対面壁１０側にはあ
まり水が流れない。この結果、対面壁１０の下部ではい
つまでも空気が残留しがちとなり、サイホンの起動が遅
れるのである。

【００１２】なお、前記凸部９は、立下り部７の内面を
伝わり落ちてきた水の流れを乱し、立下り部７下部に水
がたまり易くなるようにするために設けられている。と
ころが、従来の凸部では、立下り部７内に水を貯める作
用が弱く、立下り部７内が満水になるまでの時間が長い
ものとなっていた。

【００１３】これに対し、本発明のサイホン式洋風便器
においては、この凸部を便器幅方向の中央側が低くなる
よう、正面視形状がＶ字形又はそれに類似した形状とな
るようにしてある。かかる本発明のサイホン式洋風便器
にあっては、最高位部をのり越えてきた水が凸部の中央
側に集められ、太い集束流を形成する。この集束流は、
凸部の中央付近から対面壁に向って流れ、該対面壁の下
部付近に当る。この結果、対面壁の下部付近も速やかに
水が貯まり、立下り部全体が早期に満水状態となる。こ
のようにして、本発明のサイホン式洋風便器では、サイ
ホンが早期に起動するようになる。

【００１４】

【実施例】第１図は実施例に係るサイホン式洋風便器の
縦断面図、第２、３図は第１図のII−II線、III-III 線
断面図である。

【００１５】本実施例では、凸部９は、第２図の如く便
器の幅方向中央側が低く、該幅方向外方に向って徐々に
高くなっている。符号９ａはこの凸部の中央部分の最低
位箇所を示している。

【００１６】なお、本実施例では、第３図の如く、最高
位部６は便器幅方向において略々同一高さとなってお
り、トラップ部５を上向きに流れてきた水が、水路の中
央部だけでなく両脇部分に沿っても多量に流れるよう構
成されている。その他は従来と同様の構成となってお
り、同一部分に同一符号を付してその説明を省略する。

【００１７】このように構成されたサイホン式洋風便器
にあっては、ボールタップが開弁されると、洗浄水がリ
ム通水路２から射水孔３を経て便鉢１内に流入すると共
に、ゼット水路１３及びゼット孔１４を経て洗浄水が噴
出される。そして、最高位部６をのり越えてきた水が凸
部９の中央部９ａ（最低位部）に集められ、太い集束流
を形成する。この集束流は、凸部９の中央部９ａ付近か
ら矢印Ａの如く対面壁１０に向って流れ、該対面壁１０
の下部付近に当る。この結果、対面壁１０の下部付近も
速やかに水が貯まり、立下り部７全体が早期に満水状態
となる。このようにして、本発明のサイホン式洋風便器
では、サイホンが早期に起動するようになる。

【００１８】第６図は本実施例のサイホン式洋風便器と
第４、５図の従来のサイホン式洋風便器とのサイホン起
動時間の差を示すグラフである。本実施例では、ボール
タップの開弁後約３秒でサイホンが起動し、その後約４
秒間サイホンが継続している。これに対し、従来のサイ
ホン式洋風便器では、ボールタップの開弁後約４秒経過
しなければサイホンが起動せず、サイホン継続時間も約
３秒と短い。即ち、本実施例では、従来に比べ約１．３
倍程度、サイホンの継続時間が長い。

【００１９】上記実施例では、トラップ部５は便鉢１の
後方側に配置されているが、トラップ部５を便鉢１の前
方側に配置しても良い。

【００２０】また、上記実施例はゼット水路１３を設け
ているが、本発明はゼット水路を設けないタイプのサイ
ホン式洋風便器にも適用できる。

【００２１】上記実施例ではロータンクから洗浄水を供
給しているが、フラッシュバルブなど他の給水源から給
水するようにしても良いことは明らかである。

【００２２】

【発明の効果】以上の通り、本発明のサイホン式洋風便
器においては、トラップ部の立下り部全体が早期に満水
状態となるため、サイホンが早期に起動するようにな
る。そして、同一洗浄水量であってもサイホンの継続時
間が著しく長くなり、便鉢内の汚水を強力に且つ長時
間、吸引排出できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例に係るサイホン式洋風便器の縦断面図で
ある。

【図２】第１図のII−II線に沿う縦断面図である。

【図３】第１図のIII-III 線に沿う縦断面図である。

【図４】従来のサイホン式洋風便器の縦断面図である。

【図５】第４図のIV−IV線に沿う縦断面図である。

【図６】サイホン起動時間を示すグラフである。

【符号の説明】

１ 便鉢 ２ リム通水路 ５ トラップ部 ６ 最高位部 ７ 立下り部 ８ 排水口 ９ 凸部 １３ ゼット水路 １４ ゼット孔

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上縁部にリム通水路が設けられた便鉢
   と、 該便鉢の下部の流出口から便器の前方又は後方へ便鉢の
   途中高さまで立ち上がって最高位部に到り、その後立ち
   下がっているサイホン式トラップ部と、 該トラップ部が連通した排水口と、を備えたサイホン式
   洋風便器において、 前記サイホン式トラップ部の立下り部の途中高さの内面
   のうち、前記最高位部と反対側の内面に凸部を内周方向
   に延設してなり、 該凸部は、便器の幅方向の中央部が最低位となってお
   り、この最低位部分から便器幅方向外方に向って徐々に
   高くなっていることを特徴とするサイホン式洋風便器。