JP4648023B2 - ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法 - Google Patents

ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4648023B2
JP4648023B2 JP2005032067A JP2005032067A JP4648023B2 JP 4648023 B2 JP4648023 B2 JP 4648023B2 JP 2005032067 A JP2005032067 A JP 2005032067A JP 2005032067 A JP2005032067 A JP 2005032067A JP 4648023 B2 JP4648023 B2 JP 4648023B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
species
scab
rrna gene
pcr
primer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005032067A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006217828A (ja
Inventor
洋一 鎌形
秀幸 玉木
雅弘 田川
信也 蔵田
章 馬目
修 小山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Nippon Steel Kankyo Engineering Co Ltd
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Nippon Steel Kankyo Engineering Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST, Nippon Steel Kankyo Engineering Co Ltd filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2005032067A priority Critical patent/JP4648023B2/ja
Publication of JP2006217828A publication Critical patent/JP2006217828A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4648023B2 publication Critical patent/JP4648023B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、ジャガイモそうか病原因菌種のゲノムDNA増幅のための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法に関する。詳しくは、ジャガイモそうか病原因菌種の一種若しくは同時に複数菌についてのゲノムDNAを増幅するための新規プライマー対であり、及びジャガイモそうか病原因菌種を、一種若しくは同時に複数菌について、種レベルで迅速・簡便にかつ特異的に検出・識別(タイピング)する方法に関する。例えば、培養されたそうか病菌種の一種若しくは同時に複数菌種の簡易同定や、ジャガイモの病斑組織を対象として遺伝子レベルでそうか病原因菌種を、一種若しくは同時に複数菌種について、検出・識別する遺伝子診断技術として、更にジャガイモ畑土壌を対象として遺伝子レベルでそうか病原因菌種を、一種若しくは同時に複数菌種についての存在の有無及び存在種の検出・識別を可能とする遺伝子診断技術として応用することができる。
ジャガイモそうか病はジャガイモ塊茎表面に暗褐色の直径1cm程度のコルク化した病班が現れるジャガイモの病気である。そうか病の発症したジャガイモは、見た目の悪さとともにデンプンの含量・質が低下するために、食用・加工用ともに市場価値は著しく低下する。その経済的損失はジャガイモ生産者にとって極めて深刻である。更に、そうか病は極めて防除の困難な病害の一つに数えられており、我が国のみならず、北米諸国、英国、フランス、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、イスラエル、インド、韓国等、ほとんどのジャガイモ栽培地域において報告がなされ、世界的に問題となっている(非特許文献1)。
そうか病はStreptomyces属に属する数種の病原細菌種によって引き起こされることが知られているが(非特許文献2及び3)、日本においてはStreptomyces scabiei(以下、S. scabieiという。)、Streptomyces acidiscabiei(以下、S. acidiscabieiという。)、Streptomyces turgidiscabiei(以下、S. turgidiscabieiという。)の3種が主な原因菌種として報告されている(非特許文献4)。
前述の通り、そうか病は防除の極めて困難な植物病害として知られているが、本病害の防除を図る上で、その原因菌となるStreptomyces属細菌種の土壌及びジャガイモ組織における生態解明を図る必要性が指摘されている。特に、土壌中において原因菌種の存在の有無を明らかにする検出技術、更に原因菌種を特定する識別技術は、そうか病菌の生態解明を図る上で根本的かつ必須の技術である。それと同時に、実際のジャガイモ畑のそうか病土壌診断技術としての実用性を有するものである。即ち、畑土壌におけるそうか病菌の存在の有無を明らかにすることでそうか病発症ポテンシャルを把握できる。又、原因菌を特定できればその原因菌種にあわせた防除対策を実施することが可能となる。
(従来の検出・識別手法)
現在までに、そうか病菌種の検出・識別法として、(i)病原細菌種間の基質利用性の違いに基づいた識別法(非特許文献5)、(ii)血清学的手法による識別法(前記非特許文献1及び非特許文献6)及び(iii)PCR(polymerase chain reaction)を用いた検出・識別法(前記非特許文献1及び6)が提案されている。
(i)基質利用性の違いに基づいた識別法は、先ずそうか病菌種を選択的に分離・培養し、その後、糖類等の基質の利用性の違いに基づいて、原因菌種の識別を行なう方法である。本手法は、先ず第一に分離・培養作業が必要なため多大な労力と時間がかかるという欠点がある。更に、分離培養操作には専門的知識と経験に基づいた技術が必要である。従って、土壌診断のような多くのサンプル数に対応するタイピング技術としては実用性に乏しい。
(ii)血清学的手法による識別法は、それぞれのそうか病菌種に対する抗体を作製し、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)等の手法でそうか病菌種を識別する方法である。本手法は質の良い抗体が作製できれば、精度、感度ともに高い識別手法となりうる。本手法は識別技術としての優位性はあるものの、そうか病菌の検出のためには分離・培養操作を必要としており、前述したように、多大な労力と時間がかかる手法であり、土壌診断への応用は困難である。
(iii)PCRを用いた検出・識別法は、そうか病菌種のゲノムDNA塩基配列の違いに対するプライマー塩基配列の一致、不一致の結果がDNA断片の増幅につながるもので、検出感度は高く、プライマーの配列次第で特異的検出が可能となる。PCRを用いた手法の最大のメリットは、土壌試料から直接抽出したDNAを鋳型としてそうか病菌種を検出・識別できる点である。つまり、そうか病菌種の分離・培養操作を介さないため、他の方法に比べ大幅な時間の短縮が可能となる。又、コストの面では、プライマーの配列やPCR反応の条件が決定できれば、その後のコストは比較的安く、多量のサンプルにも対応可能である。
これまでに、PCRを用いたそうか病菌種の検出・識別手法について、幾つかの報告がなされている。既往の手法は、3種のそうか病菌種(S. scabiei、S. acidiscabiei、S. turgidiscabiei)をそれぞれ特異的に検出できるPCR用オリゴヌクレオチドプライマー対(計3対)を設計し、それぞれのプライマー対毎に独立したPCR反応を1回(one running)ずつ、合計3回行なった後、アガロースゲル電気泳動を行い、増幅されたDNA断片の有無から、試料中のそうか病菌の存在の有無及び存在種の特定を行なうものである(前記非特許文献1及び6、非特許文献7)。
本手法は、上記の(i)及び(ii)の手法に比べればはるかに時間と労力を削減でき、実用に耐えうるものであるが、1試料につき3回のPCR反応が必要である点については、コスト的にも簡便性・迅速性の観点からも問題である。更に、既存のプライマー配列は公共データベース上にて公開されている遺伝子配列情報と照らし合わせても、その特異性(信頼性)に大きな問題があることを現在の発明中の調査で明らかにした。
即ち、PCR用のプライマー対について幾つかの問題点として以下のような点を挙げることができる。
1)個々のプライマー配列のTm(melting temperature:融解温度)が大きく異なるため、一反応PCRによる検出・識別が不可能である。
2)S. scabieiを検出するためのフォワードプライマーが、S. scabieiに分類される細菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列とハイブリダイズしない場合がある。
3)S. acidiscabieiを検出するためのフォワードプライマーが、S. acidiscabieiに分類される細菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列にハイブリダイズしない場合がある。
4)S. acidiscabieiを検出するためのリバースプライマーがS. scabieiとS. acidiscabieiの両方の16S rRNA遺伝子の塩基配列にハイブリダイズする。
5)S. turgidiscabieiを検出するためのリバースプライマーは、系統分類学的に別種として再分類されたS. reticuliscabiei(前記非特許文献5)のITS領域遺伝子の塩基配列にもハイブリダイズする。
6)土壌試料からS. acidiscabieiの検出を行った場合、S. acidiscabieiのDNAに由来しない非特異的DNA増幅断片が多数検出される(前記非特許文献7)。
実用レベルでのそうか病菌種の特異的迅速タイピング技術の確立のためにはこれらの問題点を解決することが必要不可欠である。
田中文夫:北海道立農業試験場報告(2000)、第96号、pp.1−66 Lambert, D. H. et al.,: Int J Syst Bacteriol (1989), 39, pp.387-392 Miyajima, K. et al., Int J Syst Bacteriol (1998), 48, pp.495-502 Kobayashi K., Proceedings of the International Potato Scab Symposium (IPSS 2004), pp.161-181 Bouchek-Mechiche K. et al., Res Microbiol (1998), vol. 149, pp.653-663 田中文夫、土と微生物(2003)、vol. 58、pp.69-77 Barrera, V. A. et al., Proceedings of the International Potato Scab Symposium (IPSS 2004), pp.279-283 Song J. et al., Int J Syst Evol Microbiol (2004), vol. 54, pp.203-209
前述のように、これまでに提案されてきたジャガイモそうか病菌種の特異的検出・識別法のうち、(i)病原細菌種間の基質利用性の違いに基づいた識別法及び(ii)血清学的手法による識別法は、分離・培養操作を介した手法であり多大な労力と時間がかかるため、土壌診断等への応用は極めて困難である。又、(iii)PCRを用いた検出・識別法は実用に耐えうる手法として期待できるが、既存のPCR用プライマーはその特異性自体に問題があることに加え、3種のそうか病菌種のタイピングのために3回(three runnings)の独立したPCR反応が必要であり、簡便性、迅速性、コストの面で問題がある。
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的はジャガイモそうか病の原因細菌種を正確に検出・識別するためのPCR用プライマー対、及び当該プラマーを用いた特異的検出・識別技術(タイピング技術)、更にタイピング技術の迅速化、簡便化及び低コスト化に資する方法を提供することである。
即ち、本発明は、
1)ジャガイモそうか病菌種S. scabieiの16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用フォワードプライマー(Sca−F)と、当該菌種のITS領域に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用リバースプライマー(Sca−R)からなる新規なプライマー対、
Sca−F:cggtggccya acccgtaag (5'→3') (y:t/u又はc)
Sca−R:ttccacaccc acaaggggta gt (5'→3')
2)そうか病菌種S. acidiscabieiの16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子増幅のためのPCR用フォワードプライマー(Aci−F)と、当該菌種の16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子増幅のためのPCR用リバースプライマー(Aci−R)からなる新規なプライマー対、
Aci−F:atatcactyc tgcctgcatg g (5'→3') (y:t/u又はc)
Aci−R:cctaccgaac tctagcctgc (5'→3')
3)そうか病菌種S. turgidiscabieiの16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用フォワードプライマー(Tur−F)と、当該菌種のITS領域に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用リバースプライマー(Tur−R)からなる新規なプライマー対、
Tur−F:cggaaacatc cagagatggg tg (5'→3')
Tur−R:cttcaccgct tccctcatcg (5'→3')
4)そうか病菌種S. scabiei、S. acidiscabiei、及びS. turgidiscabieiの少なくとも一菌種のゲノムDNA(16S rRNA遺伝子からITS領域を含む。)含有物又はそれからの抽出物及び/又は精製物からなる一つの系に、前記1)、2)及び3)に記載のプライマー対の少なくとも一対を添加し、一菌種のゲノムDNA若しくは同時に複数菌種のゲノムDNAについて、核酸増幅反応を行うことを特徴とするそうか病菌種のゲノムDNAの新規増幅方法、
5)ゲノムDNA含有物が、ジャガイモをはじめとする根菜類栽培の畑土壌、ジャガイモをはじめとする根菜類の塊茎若しくは葉の病斑組織、そうか病菌株の培養物の何れかである前記4)に記載のそうか病菌種のゲノムDNAの新規増幅方法、
6)核酸増幅反応方法がPCR方法である前記4)又は5)に記載のそうか病菌種のゲノムDNAの新規増幅方法、
7)前記4)又は5)に記載の核酸増幅反応を1回行い、得た増幅産物について、分子サイズ分析の結果に基づいて、そうか病菌種S. scabiei、S. acidiscabiei、及びS. turgidiscabieiからなる群の一菌種若しくは同時に複数の菌種を検出・識別することを特徴とするそうか病菌種の検出・識別方法、
を提供する。
本発明の一対若しくは複数対のPCR用プライマーを用いてPCRを行うと、1回(one running)で一種若しくは同時に複数種のそうか病菌種のゲノムDNAを検出可能なレベルまで同時に増幅できる。よって、そうか病菌種の検出・識別が、従来より、格段に簡便・容易・安価に、かつ短時間にできるようになった。
本発明を具体的に説明する前に、本発明で使用する用語を定義する。
本発明において使用する技術用語は、特別に断りがない限り、分子生物学、遺伝子工学、植物病理学の分野において現在使用されているものと同じ意味を有する。
“プライマー”とは、遺伝子増幅用(PCR用)オリゴヌクレオチドプライマーのことをいう。そしてフォワードプライマー(forward primer)、リバース(reverse primer)プライマーからなる。プライマー対とは、この両者の対をいう。
“1回”、“2回”のPCRを行うなどの表現における“回”とは、runningの意味である。そして、1回のPCRにおいては、少なくとも1サイクル(cycle)以上のPCRからなっている。
“オリゴヌクレオチドプライマー”の“オリゴヌクレオチド”とは、一本鎖のオリゴヌクレオチドで、デオキシ体、リボキシ体、又はキメラ体で出来ているものである。
“ITS領域”とは“16S-23S内部転写スペーサー(internal transcribed spacer:ITS)領域”を意味するものとする。
“ハイブリダイズする”とは、ある一本鎖の核酸分子がそれに相補的な一本鎖の核酸分子と熱力学的に結合し二本鎖になることであり、プライマーがハイブリダイズするとは、標的核酸若しくは標的塩基配列、又は標的遺伝子中のプライマー配列に相補的な塩基配列に特異的に結合することを意味する。
“そうか病”は、ジャガイモそうか病を意味するものとする。
“特異的”とは菌種特有という意味である。
“分析する”とは、定性分析の他に、定量分析をも意味するものとする。
本発明の第一は、表1に記載のそうか病菌種の16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ表1に記載の塩基配列を有する、当該菌種のゲノムDNA増幅のためのPCR用フォワードプライマーと、当該菌種の16S rRNA遺伝子またはITS領域に特異的にハイブリダイズし、かつ表1に記載の塩基配列を有する、当該菌種のゲノムDNA増幅のためのPCR用リバースプライマーからなる新規なプライマー対である。
S. scabiei菌種については、フォワードプライマー(forward primer)がSca−F、リバースプライマー(reverse primer)がSca−Rなる名称が与えられている。
同様に、S. acidiscabiei菌種については、Aci−F及びAci−R、又、S. turgidiscabiei菌種については、Tur−F及びTur−Rなる名称が与えられている。
これらのプライマー対は、一種若しくは同時に複数のそうか病菌種、好ましくは表1に記載の3菌種の16S rRNA遺伝子及びITS領域間のゲノムDNAを核酸増幅方法、好ましくはPCR方法を用いて特異的に増幅できるものである。
上記のプライマーにより増幅されるゲノムDNA断片は、表1に記載されている通りである。又、GC含量、Tm値も表1に記載されているものである。
又、本発明のプライマーは、定量的PCR用のプライマーとして以外に、更にFISH(fluorescence in situ hybridization)法及びメンブレンハイブリダイゼーション法等の核酸ハイブリダイゼーション技術に基づいたそうか病菌検出用プローブとして利用可能である。
(プライマーの設計・作製)
本発明では、既存のプライマー対(前記非特許文献1及び7)では不可能であった一反応PCRによるジャガイモそうか病菌種S. scabiei、S. acidiscabiei及びS. turgidiscabieiの特異的検出・識別を可能とする新規なプライマー対を設計・作製した(表1)。特に、本発明のプライマー対は、前記した従来のプライマー対の問題点を解決しており、従来のものとは明確に異なる新規なプライマー対である。
即ち、本発明において新たに設計したオリゴヌクレオチドプライマーセットは、
・一反応PCRによる検出・識別
・S. scabieiを正確に検出
・S. acidiscabieiを正確に検出
・S. turgidiscabieiを正確に検出
・土壌試料を用いた場合でも、S. acidiscabieiを検出するプライマーセット(Aci−F及びAci−R)は非特異的なDNA断片の増幅を抑制(実施例参照)
することを可能とした。
本発明の第二は、前記のプライマーを用いて、前記菌種の前記遺伝子を増幅し、増幅産物の分子サイズを分析する方法である。
先ず、前記菌種の少なくとも一菌種のゲノムDNA(16S rRNA遺伝子若しくは16S rRNA遺伝子からITS領域間を含む。)含有物からなる一つの系に、前記三種類のプライマー対の少なくとも一対を添加し、一菌種のゲノムDNA若しくは同時に複数菌種のゲノムDNAについて、核酸増幅反応を行う。
前記ゲノムDNA含有物として、ジャガイモをはじめとする根菜類栽培の畑土壌、ジャガイモをはじめとする根菜類の塊茎若しくは葉の病斑組織、そうか病菌株の培養物の何れをも用いることが出来る。これらのゲノムDNA含有物をそのまま用いてもよいのであるが、好適には、通常の公知の方法で、前記のゲノムDNA含有物からゲノムDNAを抽出及び/又は精製して用いるのがよい。具体的には以下の実施例等で示した。
本発明に使用される遺伝子増幅方法は、特に限定されるものではないが、PCR方法が好適である。反応条件は公知の通常のものでよい。また、使用される核酸増幅酵素も通常の公知のものでよい。好適な条件は以下に示した。しかし、本発明はこれらの条件に限定されるものではない。
前記の核酸増幅方法で得られた増幅産物の分子サイズを分析することにより、本発明の目的、即ち、そうか病菌種の識別が可能となる。この分析は、通常・公知の方法でよい。好適には、電気泳動、キャピラリー電気泳動などを使用すればよい。それらを行う条件は、通常の公知の条件でよい。具体的な例は、実施例に示した。
更に、本発明方法は、次の手順からなる、内部標準遺伝子(制限酵素切断部位が挿入されている。)を用いたT-RFLP(Terminal restriction fragment length polymorphism)分析によるそうか病菌種の存在量を測定する方法でもある。
1)前記の本発明のプライマー対の少なくとも一方の5'末端部(5'末端を含む。)に蛍光標識したプライマー対を用いて、前記内部標準遺伝子とそうか病菌種のゲノムDNAとを競合的に前記のPCR方法で増幅する。
2)増幅産物を制限酵素処理する。
3)得られた末端断片の多型を、遺伝子解析システムを用いて分析する。
4)得られた結果に基づいて、一菌種若しくは同時に複数の菌種を検出・識別すると同時に得られた蛍光の変化量からそれぞれの制限酵素処理断片量を定量する。
5)当該定量値からそうか病菌種の存在量を決める。
そうか病菌種の遺伝子タイピング用プライマー対の設計方法を以下に記す。3種類のそうか病菌種(S. scabiei、S. acidiscabiei、S. turgidiscabiei)の遺伝子配列は、近年の系統分類学的解析結果(前記非特許文献8)に基づき、公共データベースGenBank(http:/www.ncbi.nim.nih.gov)上で公開されているそれらの16S rRNA遺伝子と16S-23S ITS領域の遺伝子配列を収集した(表2)。収集したDNA配列をATGCソフトウェア(バージョン3:GENETYX社製)を用いたアライメント配列比較により、各そうか病菌種の16S rRNA遺伝子及び16S-23S ITS領域の塩基配列に特異的な領域を探索・特定した。ここで特異的とは、あるそうか病菌種のもつDNA塩基配列が他の近縁なそうか病菌種のもつ同等な部位のDNA塩基配列に対して異なっていることを意味する。各そうか病菌種に対してそれぞれ特異的領域の中でプライマー対に適した配列を探した。一般的に、PCR用プライマー対に適した配列とは、各配列の長さが5〜25ヌクレオチドであり、好ましくは17〜23ヌクレオチド程度からなり、目的のそうか病菌種のDNA塩基配列にはハイブリダイズするが、その他の生物のDNA塩基配列には両プライマーがハイブリダイズしない塩基配列を持つもののことである。
本発明において設計したプライマー対を表1に示した。公共データベースBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用いたDNA塩基配列相同性検索により、各プライマー対は検出対象とするそうか病菌種以外には完全に一致するDNA配列が存在しないことを確認した。さらに、各そうか病菌種に対応する各プライマー配列は、他の2種のそうか病菌種のゲノムDNA配列に対していずれも85%以下の相同性しか示さないことから、その特異性は高いものと考えられる。
2種のそうか病菌種S. scabieiとS. turgidiscabieiについては、16S rRNA遺伝子及び16S-23S ITS領域の両方のDNA配列上の特異的領域をプライマー対の設計に利用した。又、S. acidiscabieiについては、16S rRNA遺伝子配列中の2箇所の特異的領域をプライマー設計に利用した。
S. scabieiに対するフォワードプライマーはS. scabiei標準菌株の16S rRNA遺伝子配列(Accession No. AB026199)の1421−1439 bpにハイブリダイズし(Sca−Fと命名する)、リバースプライマーは同様にITS領域(Accession No. AB026199)の1672−1651 bpにハイブリダイズする(Sca−Rと命名する)。このプライマー対を用いて、S. scabieiのゲノムDNAを鋳型にしたPCRを実施した場合、プライマー対に挟まれた領域(1421−1672 bpの領域:252 bp)が特異的に増幅される。ただし、いくつかのS. scabiei細菌株は、上記のITS(Accession No. AB026199)とは長さの異なるITS塩基配列を有するものが存在する。このタイプのITS塩基配列を持つ細菌株由来のゲノムDNAを鋳型として、上記のプライマー対でPCRを行うと、理論上、252 bpではなく261 bpのDNA断片が増幅される(表1)。
S. acidiscabieiに対するフォワードプライマーはS. acidiscabiei標準菌株の16S rRNA遺伝子配列(Accession No. AB026220)の172−192 bpに一致し(Aci−Fと命名する)、reverseプライマーは639−620 bpにハイブリダイズする(Aci−Rと命名する)。従って、理論上、PCRにより468 bpのDNA断片が増幅される(表1)。
S. turgidiscabieiに対するフォワードプライマーはS. turgidiscabiei標準菌株の16S rRNA遺伝子配列(Accession No. AB026221)の978−999 bpにハイブリダイズし(Tur−Fと命名する)、リバースプライマーはITS領域(Accession No. AB026221)の1700−1681 bpにハイブリダイズする(Tur−Rと命名する)。従って、理論上、PCRにより723 bpのDNA断片が特異的に増幅される(表1)。
このように、本発明の三種のプライマー対によりそうか病菌種特異的に増幅されるDNA断片の長さは、各プライマー対により異なっている(S. scabiei由来の増幅断片長:252 bp、S. acidiscabiei由来の増幅断片長:468 bp、S. turgidiscabiei由来の増幅断片長:723 bp)。従って、これらのDNA断片はDNA分子サイズの分析により、明確に識別できる。
本発明においては、DNA分子サイズの分析には、2%のアガロースゲル(タカラバイオ社製)を用いた電気泳動、キャピラリー電気泳動等を用いるのが好適である。
又、本発明において設計した各6種のプライマー配列は、同一かつ1回のPCR反応で適切なアニーリングが可能なTm(融解温度)となるように設計した。
(本発明におけるそうか病菌種の遺伝子タイピングの定義)
本発明により設計した一種若しくは三種のプライマー対を用いたそうか病菌種の遺伝子タイピングとは、1回のPCR反応を行った後、1回(1レーン)のアガロース等のゲルを用いた電気泳動法或いはキャピラリーを用いた電気泳動法等により、異なる長さのDNA増幅断片を分離・検出することによって、試料中におけるそうか病菌種の存在の有無を判定するとともに、そうか病菌種を識別・特定することである。
本発明により、従来は少なくとも3回のPCR反応ならびに3レーンを使用した電気泳動が必要であったところを、1回のPCR反応ならびに1レーンのみを使用した電気泳動によりそうか病菌種の検出・識別が可能となるが、このことは検出・識別(タイピング)の迅速化ならびに簡便化につながり、同時にPCR反応に必要な高価な酵素やその他の試薬、器具の使用量を単純に三分の一に低減できることから低コスト化にも寄与する。
(1回のPCR反応によるそうか病菌種の遺伝子タイピング条件の最適化)
1回のPCR反応によるそうか病菌株の遺伝子タイピングを適切に実施するため、反応条件の最適化を行なった。
使用したそうか病菌株はStreptomyces scabiei OBM-1株、Streptomyces acidiscabiei ATCC49003T株及びStreptomyces turgidiscabiei ATCC700248T株である。S. scabiei OBM-1株は長崎畑土壌から分離培養されたそうか病菌種であるが、その16S rRNA遺伝子配列が公共データベースに公開されているStreptomyces scabieiの配列と100%一致することを確認している。
細菌からのDNA抽出法は種々の方法があり、どの方法も好適に本発明に利用出来る。本発明においては、それらの中のFast Prep instrument(Q-BIOgene)を用いる手法を用いた。
3種類のそうか病菌種S. scabiei、S. acidiscabiei、S. turgidiscabieiをGYM培地(以下のものを1Lの脱イオン水に溶かし、最終的にpH7.3の1Lの水溶液とする;グルコース4g、Yeast extract(Becton Dickinson社製)4g、Malt extract(Becton Dickinson社製)10g)にて30℃、2日間振盪培養後、遠心処理(8,000rpm、5分間)により集菌した。得た菌体を滅菌水に懸濁・洗浄し、再度遠心集菌後、2mlチューブ(アシスト社製)に菌体を移した。Proteinase K(1mg/ml)を40μl、BL buffer(以下のものを併記の濃度になるよう混合:Tris−HCl pH8.0、4.0mM;EDTA(Ethylenediamine tetraacetic acid)、1mM;Tween 20、1%;Nonidet P40、0.5%)を200μl、25% SDS(sodium dodecyl sulfate)を20μl加えて混合した。更に5M NaClを60μl、フェノールクロロホルム溶液(フェノール:クロロホルム:イソミルアルコール=25:24:1)を400μl加え、細胞破砕用ガラスビーズ(0.1mm径)0.5gを溶液に加えた。チューブをFast Prep instrumentにセットし、強度5.5で20秒間の振動を加え、菌体を破砕した。その後、15,000rpm、5分間遠心処理し、ゲノムDNAを含む上清画分を別のチューブに移した。上清画分に対して再びフェノールクロロホルム溶液を加え混合した後、15,000rpm、5分間の遠心分離を行い、上清画分を別のチューブ移し、そうか病菌ゲノムDNA抽出の操作を完了した。
更に、そうか病菌ゲノムDNA溶液をRNaseA(終濃度10μg/ml)で処理し、その後フェノールクロロホルム処理により、残存RNAを除いた。本精製DNA溶液に1/10量の3M酢酸ナトリウム水溶液と2.5倍量のエタノールを加え、−70℃にて20分間静置後、15,000rpmで15分間遠心操作を行い、そうか病菌ゲノムDNAを沈殿させた。沈殿DNAを70%エタノールで洗浄し、真空下で乾燥後、500μlの純水に溶解させた。
各そうか病菌種のゲノムDNA溶液は純水で10μg/mlになるように調整し、それらを単独で、若しくは混合したものを適宜希釈し、PCR反応の鋳型DNAとして用いた。
タイピングPCR反応条件の最適化を行なうため、3菌種のそうか病菌ゲノムDNAの等量混合溶液を鋳型(テンプレート)として、又、3種類のプライマー対を等量ずつ混合した溶液(各10nmol/mlの各プライマー溶液を混合したもの。以後プライマーセット混合溶液とする)を調整した。これらの混合鋳型DNA溶液ならびにプライマーセット混合溶液を用いてPCRを行い、最適なアガロースゲル電気泳動結果となる条件を検討した。ここで最適なアガロースゲル電気泳動結果とは、3種類のそうか病菌種由来のバンドが同等の濃さで検出でき、かつ3種類のそうか病菌種に由来しない非特異的増幅DNA断片が現れないことを意味する。
PCR条件の最適化のため検討した項目は、1)そうか病菌ゲノムDNA鋳型の濃度、2)プライマーセット混合溶液の濃度、3)PCR反応のサイクル数、4)アニーリング温度、5)PCR反応溶液のバッファー組成、の5項目である。尚、最適条件の判明した項目に関しては、以後のPCRにおいてその最適条件を用いて他の項目の最適化を図った。
上記1)〜4)の項目については常法により検討した。項目5)については、通常詳細に検討するものではないが、本発明手法の最適化にあたり極めて重要な要素であったことから、詳細に述べる。PCR反応溶液のバッファー組成はAmpliTaq Gold DNA Polymerase, 6 x 250 units with Buffer I (Applied Biosystems社製)に添付されているGeneAmp 10×PCR Bufferの組成と同等のものを調整し、含有塩濃度の検討を行った。GeneAmp 10×PCR Bufferに含まれている塩はMgCl2とKClの2種類である。終濃度はMgCl2が1.5mM、KClが50mMであるため、その周辺の濃度で先ず4段階の濃度を設定した。MgCl2に関しては1.0、1.5、2.0、2.5mMの4段階、KClに関しては25、50、75、100mMの4段階を設定し、全ての組み合わせ(16通り)の塩濃度のバッファーを調整し、最適なバッファー組成について検討した。その後、KClについては10mM刻みで更に細かく条件検討した。
以下に各項目毎の検討結果を示す。
1)そうか病菌ゲノムDNA鋳型の最適濃度は、終濃度で5ng/mlであった。これは20μlのPCR反応溶液に対して、0.1μg/mlの鋳型DNA混合溶液を1μl加えた条件に相当する。
2)プライマーセット混合溶液の濃度は20μlのPCR反応溶液に対して、プライマーセット混合溶液(各10nmol/ml)を1.6μl加えた条件が最適であった。
3)PCRのサイクル数は35サイクルが最適であった。
4)アニーリング温度は64.0℃が最適であった。
5)PCRバッファー溶液に含まれる塩の最適濃度は、終濃度でMgCl2が2.0mM、KClは25mMであった。
以上の結果を踏まえ、本発明のプライマー対を用いたPCR反応の最適条件は以下のようにまとめられる。
1チューブのPCR反応溶液量(表3)は20μlで行う。純水13.3μlに対して10×PCRバッファーは組成(150mM Tris−HCl pH8.0、20mM MgCl2、250mM KCl)のものを2μl添加し、dNTP混合溶液(dATP、dGTP、dCTP、dTTPを2mMずつ含む(市販のもの:例Applied Biosystems社製))を2μl添加する。プライマーセット混合溶液(各10nmol/mlプライマー溶液を混合)は1.6μl、鋳型DNA溶液(0.1μg/ml)は1μl添加する。AmpliTaq Gold DNA Polymerase溶液(Applied Biosystems社製)は0.1μl添加する。
PCR反応はiCycler(Bio−Rad)によって温度制御を行なう。温度制御の条件は、95℃、9分間の予備加熱により、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼの活性化ならびにゲノムDNAの変性反応に続いて、35サイクルの増幅サイクル(95℃の変性を60秒間、プライマーのアニーリングを64℃にて30秒間、DNAの伸長反応を72℃にて60秒間)を行い、最後に72℃で3分間のDNA伸長反応を行う。反応終了後は4℃にて保温し、その後の電気泳動による解析に供す。
尚、本発明の適用にあたっては、上述以外の機器、試薬ならびに反応条件に限定されるものではない。
以下に本発明の実施例を具体的に示すが、本発明の適用はここに限定されるものではない。
実施例1.そうか病菌種のゲノムDNAを鋳型とした遺伝子タイピングの実施例
そうか病菌種より抽出したゲノムDNAに対する本発明技術(遺伝子タイピング技術)の適用例を示す。
先ず、従来の方法と同様に、3回の独立したPCR反応(1種のそうか病菌種のゲノムDNAを鋳型とし、1種のプライマー対を用いたPCRを3回行なうこと)により、それぞれのそうか病菌種をそれぞれ検出する実験を試みた(図1のレーン1〜3及び表4参照)。PCR反応の条件は、前述の最適条件とした。PCR反応終了後、反応液3μlを2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動槽はミニゲル泳動層i−mupid J(コスモバイオ)を用い、100V、25分間の電気泳動の後、エチジウムブロマイド溶液中にゲルを浸し、15分間染色を行った。染色後のゲルは紫外線照射によりバンドの有無及び位置を確認した(図1)。その結果、S. scabieiのゲノムDNAを鋳型とし、Sca−F及びSca−RによるPCR検出を行なったところ、予想サイズの増幅断片(252 又は 261 bp)が確認された(図1のレーン1)。同様に、S. acidiscabiei及びS. turgidiscabieiについても、それぞれのゲノムDNAを鋳型とし、それぞれに特異的なプライマー対(Aci−FとAci−Rの対及びTur−FとTur−Rの対)によるPCR検出を試みたところ、予想サイズの増幅断片(468 bp及び723 bp)を確認した(図1のレーン2及び3)。
次に、前記3種のプライマー対を混合したプライマーセットを用いて、1回のPCR反応による遺伝子タイピング技術の適用を試みた(表4及び図1のレーン4〜10)。ここでは、試料中にそれぞれ1種のそうか病菌種のゲノムDNAが存在する場合(表4及び図1のレーン4〜6)、試料中に2種のそうか病菌種のゲノムDNAが存在する場合(表4及び図1のレーン7〜9)、更に試料中に3種全てのそうか病菌種が存在する場合(表4及び図1のレーン10)の実験を行なった。その結果、いずれの場合においても、試料中に存在するそうか病菌種由来のDNAが、予想された断片サイズで増幅されていることが確認された(図1のレーン4〜10)。
この結果は、本発明の遺伝子タイピング技術の適用により、1回のPCR反応により、試料中に存在するそうか病菌種の検出・識別が可能であることを実証するものである。
尚、本手法は培養されたそうか病菌の簡易同定のみならず、培養された放線菌がそうか病菌であるかどうかの判別等にも適用可能である。
実施例2.遺伝子診断実施例:土壌、ジャガイモ組織からの検出
本発明の1回の反応PCRによる遺伝子タイピング技術がジャガイモ畑土壌ならびにジャガイモ病斑組織を対象とした遺伝子診断法として適用可能かどうかについて検証した。
土壌試料ならびにジャガイモ試料は、日本におけるジャガイモ生産量1位の北海道及び2位の長崎県において採取したものをそれぞれ用いた(図2の説明参照)。
土壌試料やジャガイモ病班部組織からのDNA抽出はFast DNA SPIN kit for soil(Q-BIOgene社製)を用い、同キットの標準プロトコルに従って実施した。土壌試料は約0.4g、ジャガイモ病班組織は約0.3gからDNA抽出を行い、最終的に50μlのDNA抽出溶液を得た。DNA抽出溶液は100倍に希釈し、タイピングPCR用のテンプレート溶液として用いた。尚、土壌やジャガイモ組織からのDNA抽出手法として既に多くの手法が開発されており、本発明技術の適用にあたっては、上述のDNA抽出法に限定されるものではない。
PCRサイクル数を除いて、PCR反応溶液組成ならびに反応条件は前記と同様とした。本実験において抽出したDNA溶液中にはそうか病菌種に由来するテンプレートDNA量が少ないことを考慮し、PCRの増幅サイクル数を35サイクルから40サイクルに増やした。
(図2の説明)
長崎、北海道網走を含む3箇所のジャガイモ畑土壌試料とジャガイモ病班組織より抽出したDNAに対して、本発明技術に基づく遺伝子診断を行った結果である。
レーン1:長崎じゃがいも畑Aの土壌試料
レーン2:北海道網走じゃがいも畑Bの土壌試料
レーン3:北海道網走じゃがいも畑Cの土壌試料
レーン4:長崎じゃがいも畑Aのジャガイモ病班組織試料
レーン5:北海道網走じゃがいも畑Bのジャガイモ病班組織試料
レーン6:北海道網走じゃがいも畑Cのジャガイモ病班組織試料
レーン7:ポジティブコントロール(3種のそうか病菌種のゲノムDNAの等量混合試料)
土壌及びジャガイモ組織より抽出したDNAを鋳型として用い、本発明技術に基づくそうか病菌種の遺伝子タイピングを試みた(図2)。その結果、土壌試料から抽出したDNA溶液をテンプレートとして用いた場合でも、S. turgidiscabiei単独、若しくはS. acidiscabieiとS. turgidiscabieiの両菌種に由来すると考えられる増幅DNA断片が、そのサイズの違いから明確に検出・識別可能であった(図2のレーン1〜3)。又、ジャガイモ病班組織から抽出したDNAをテンプレートとして用いた場合にも、同様に、S. turgidiscabiei単独、若しくはS. acidiscabieiとS. turgidiscabieiの両菌種由来の増幅DNA断片が、そのサイズの違いからはっきりと識別可能であった(図2のレーン4〜6)。
以上の結果は、1試料あたり1回のPCR反応及び1レーンの電気泳動により、土壌試料ならびにジャガイモ組織におけるそうか病菌の検出ならびに存在種の識別が可能であることを実証するものである。このことは同時に、本発明の遺伝子タイピング技術に基づき、迅速、簡便かつ低コストなそうか病遺伝子診断が可能であることを明確にするものである。
尚、本発明技術は、ジャガイモ畑土壌及びジャガイモ組織に限定されるものではなく、様々な環境試料及び農作物組織に適用されうる。
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーセットならびに最適反応条件を用いることにより、純粋培養されたそうか病菌種の同定はもとより、ジャガイモ組織(特に病斑部位)及び土壌等の環境試料中におけるそうか病菌種の特異的かつ高感度な検出・識別が可能となり、同時に、従来の手法に比べ迅速化、簡便化、低コスト化を実現しうる。
3種類のそうか病菌種のゲノムDNAをテンプレートとした遺伝子タイピングの結果(各レーンの説明は表4を参照のこと)。 環境試料より抽出したDNAに対するそうか病菌種遺伝子タイピング結果。

Claims (5)

  1. ジャガイモそうか病(以下、単にそうか病という。)菌種Streptomyces scabieiの16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子から16S-23S内部転写スペーサー(internal transcribed spacer:ITS)領域(以下、単にITS領域という。)間を増幅するためのPCR用フォワードプライマー(Sca−F)と、当該菌種のITS領域に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用リバースプライマー(Sca−R)からなるプライマー対
    そうか病菌種Streptomyces acidiscabieiの16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子増幅のためのPCR用フォワードプライマー(Aci−F)と、当該菌種の16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子増幅のためのPCR用リバースプライマー(Aci−R)からなるプライマー対、並びに、
    そうか病菌種Streptomyces turgidiscabieiの16S rRNA遺伝子に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用フォワードプライマー(Tur−F)と、当該菌種のITS領域に特異的にハイブリダイズし、かつ下記の塩基配列を有する、当該菌種の16S rRNA遺伝子からITS領域間を増幅するためのPCR用リバースプライマー(Tur−R)からなるプライマー対からなるそうか病菌種の遺伝子タイピング用オリゴヌクレオチドプライマーセット
    Sca−F:cggtggccya acccgtaag (5'→3') (y:t/u又はc)
    Sca−R:ttccacaccc acaaggggta gt (5'→3')
    Aci−F:atatcactyc tgcctgcatg g (5'→3') (y:t/u又はc)
    Aci−R:cctaccgaac tctagcctgc (5'→3')
    Tur−F:cggaaacatc cagagatggg tg (5'→3')
    Tur−R:cttcaccgct tccctcatcg (5'→3')
  2. そうか病菌種Streptomyces scabiei、Streptomyces acidiscabiei、及びStreptomyces turgidiscabieiの少なくとも一菌種のゲノムDNA(16S rRNA遺伝子若しくは16S rRNA遺伝子からITS領域間を含む。)含有物又はそれからの抽出物及び/又は精製物からなる一つの系に、請求項1に記載のプライマーセットを添加し、一菌種のゲノムDNA若しくは同時に複数菌種のゲノムDNAについて、核酸増幅反応を行うことを特徴とするそうか病菌種のゲノムDNAの増幅方法。
  3. ゲノムDNA含有物が、ジャガイモをはじめとする根菜類栽培の畑土壌、ジャガイモをはじめとする根菜類の塊茎若しくは葉の病斑組織、そうか病菌株の培養物の何れかである請求項に記載のそうか病菌種のゲノムDNAの増幅方法。
  4. 核酸増幅反応方法がPCR方法である請求項又はに記載のそうか病菌種のゲノムDNAの増幅方法。
  5. 請求項又はに記載の核酸増幅反応を行い、得た増幅産物の分子サイズ分析の結果に基づいて、そうか病菌種Streptomyces scabiei、Streptomyces acidiscabiei、及びStreptomyces turgidiscabieiからなる群の一菌種若しくは同時に複数の菌種を検出・識別することを特徴とするそうか病菌種の検出・識別方法。
JP2005032067A 2005-02-08 2005-02-08 ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法 Expired - Fee Related JP4648023B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005032067A JP4648023B2 (ja) 2005-02-08 2005-02-08 ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005032067A JP4648023B2 (ja) 2005-02-08 2005-02-08 ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006217828A JP2006217828A (ja) 2006-08-24
JP4648023B2 true JP4648023B2 (ja) 2011-03-09

Family

ID=36980545

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005032067A Expired - Fee Related JP4648023B2 (ja) 2005-02-08 2005-02-08 ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4648023B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5294241B2 (ja) * 2007-12-06 2013-09-18 独立行政法人産業技術総合研究所 そうか病防御用微生物製剤
JP5550060B2 (ja) * 2008-10-03 2014-07-16 独立行政法人産業技術総合研究所 そうか病病原菌種のpcr定量用試薬キット
CN110317895B (zh) * 2019-06-19 2023-07-14 许昌学院 一种用于检测红薯源成分的lamp引物组及其应用

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006217828A (ja) 2006-08-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Cocolin et al. Molecular detection and identification of Brettanomyces/Dekkera bruxellensis and Brettanomyces/Dekkera anomalus in spoiled wines
Cardinale et al. Comparison of different primer sets for use in automated ribosomal intergenic spacer analysis of complex bacterial communities
Böhm et al. Real‐time quantitative PCR: DNA determination in isolated spores of the mycorrhizal fungus Glomus mosseae and monitoring of Phytophthora infestans and Phytophthora citricola in their respective host plants
JP5196854B2 (ja) プローブセット、プローブ担体及び検査方法
Mirhendi et al. Differentiation of Candida glabrata, C. nivariensis and C. bracarensis based on fragment length polymorphism of ITS1 and ITS2 and restriction fragment length polymorphism of ITS and D1/D2 regions in rDNA
Kong et al. secA1 gene sequence polymorphisms for species identification of Nocardia species and recognition of intraspecies genetic diversity
US20140220578A1 (en) Amplification of trp1 for specific detection of phytophthora ramorum
Weller et al. Detection of root mat associated Agrobacterium strains from plant material and other sample types by post‐enrichment TaqMan PCR
KR20140007575A (ko) 십자화과 흑부병원균의 검출용 프라이머 세트 및 이를 이용한 검출 방법
JP4648023B2 (ja) ジャガイモそうか病原因菌種の16SrRNA遺伝子若しくは16SrRNA遺伝子からITS領域間を増幅するための新規プライマー対、及びそれらを用いたジャガイモそうか病原因菌種の検出・識別方法
CN102057055B (zh) 分支杆菌的快速检测
Galetto et al. Real-time PCR diagnosis and quantification of phytoplasmas
CN105567800A (zh) 一种真菌种属pcr鉴定方法
CN109680087A (zh) 一种甘蔗白叶病植原体和白条黄单胞菌的双重pcr检测方法及其引物组
CN105925710A (zh) 一种谷子粒黑穗病菌快速检测方法
JP4022045B2 (ja) 細菌検出のための遺伝子及びそれを用いた検出法
CN112176080B (zh) 特异性检测剑麻紫色卷叶病植原体的巢式pcr引物组、试剂盒及检测方法
KR102147340B1 (ko) Ganoderma 속 미생물 검출 및 뿌리 썩음병 진단을 위한 조성물 및 이를 이용한 방법
KR101695059B1 (ko) 케피어 발효유 내 미생물 그룹별 정량적인 실시간 중합효소 연쇄반응 분석용 조성물 및 그 분석방법
KR102492587B1 (ko) Ganoderma 속 미생물 검출 및 뿌리 썩음병 진단을 위한 조성물 및 이를 이용한 방법
JP2552787B2 (ja) 結核菌の特異的検出法
KR101334850B1 (ko) 버크홀데리아 글루메 검출용 프라이머 세트 및 이를 이용한 검출 방법
CN109266768A (zh) 一种用于鉴别近缘微生物的核苷酸片段的筛选方法
KR102147327B1 (ko) Ganoderma 속 미생물 검출 및 뿌리 썩음병 진단을 위한 조성물 및 이를 이용한 방법
US20020086313A1 (en) Application of bioinformatics for direct study of unculturable microorganisms

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080130

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20080130

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100831

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101029

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101124

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101209

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131217

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4648023

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131217

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131217

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees