JP4645156B2 - アルキリデンビスアルキルフェノールの製造方法 - Google Patents
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Description
また、アルキリデンビスアルキルフェノールに、さらにアクリル酸などを反応させたアルキリデンビスアルキルフェノールモノエステルについても安定剤として有用な化合物である(特許文献1)。
また、アルキルフェノール、アルデヒド、p-トルエンスルホン酸及び芳香族炭化水素溶媒の存在下に40〜100℃で共沸脱水させながら脱水縮合反応させて、アルキリデンビスアルキルフェノール(III)を製造する方法が、特許文献2の実施例として具体的に記載されている。
そこで、本発明者らが分液時間を短縮するために、硫酸のみを用い、陰イオン系界面活性剤を用いない場合について検討したところ、同じ反応時間では未反応のアルキルフェノールが残存してしまう場合があることが明らかになった。
また、特許文献2の場合には、アルキリデンビスアルキルフェノールを製造する際に、共沸脱水の設備が必要であるという問題があった。
本発明の目的は、陰イオン系界面活性剤を用いることがなくとも未反応のアルキルフェノールの残存量が少なく、分液性に優れ、しかも共沸脱水を必要としないアルキリデンビスアルキルフェノールの製造方法を提供することである。
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立した置換基を示し、R1は炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を示し、R2、R3、R4およびR5は、水素原子または炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を示す。ただし、R3が炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基である場合には、R5は水素原子を示し、R3が水素原子である場合には、R5は炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を示す。)
で表されるアルキルフェノール、式(II)
(式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の直鎖炭化水素基、置換されていてもよい炭素数1〜15の分岐状炭化水素基または水素原子を示す。但し、R6及びR7のいずれか一方が水素原子であれば、他方は、炭素数1〜15の直鎖炭化水素基または炭素数1〜15の分岐状炭化水素基を示す。R6及びR7は、連結していてもよい。)
で表されるカルボニル化合物、及び酸触媒の存在下に脱水縮合反応させて、式(III)
(式中、X1が水酸基である場合は、X2はR1、X3はR2、X4はR3、X5はR4を示し、X3が水酸基である場合は、X2はR1、X1はR2、X5はR4、X4はR5を示す。R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は前記と同じ意味を示す。)
で示されるアルキリデンビスアルキルフェノールを製造する方法において、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸及び2−ナフタレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族スルホン酸と、50〜85重量%の硫酸水溶液とを併用することを特徴とするアルキリデンビスアルキルフェノール(III)の製造方法である。
式(I)において、炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ドデシル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−ヘキセニル基、アリル基、2−フェニルエチル基、フェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基、o−トリル基、p−エチルフェニル基、4−ビフェニル基などが挙げられる。
R6及びR7が連結されたカルボニル化合物とは、炭素数5〜31、好ましくは炭素数5〜12の環状ケトン化合物を意味し、具体的には、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが例示される。
カルボニル化合物(II)の使用量はアルキルフェノール(I)に対し通常、0.4モル倍以上、0.8モル倍以下、好ましくは0.7モル倍以下である。
その使用量はアルキルフェノール(I)に対して通常は0.1重量倍以上100重量倍以下、好ましくは1重量倍以上10重量倍以下程度である。生成物であるアルキリデンビスフェノール(III)の溶解度が高い溶媒では結晶が析出しにくく収率が低下し、溶解度が低いと反応混合物中の結晶を完全に溶解させるために容積効率が悪化するため、かかる溶媒の中でもn−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンが好ましい。さらには溶媒の回収などの生産性を考慮するとn−ヘプタンが特に好ましい。
ここで、芳香族スルホン酸とは、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸及び2−ナフタレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族スルホン酸である。とりわけ、p−トルエンスルホン酸は入手が容易であることから好ましい。
また、芳香族スルホン酸としては結晶水などの水を含有していてもよい。p−トルエンスルホン酸の場合、市販されている一水和物を通常、そのまま、使用する。
硫酸の使用量としては、アルキルフェノール1モルに対し、0.01モル倍以上、好ましくは、0.05モル〜0.5モル程度である。硫酸が0.01モル比以上であると、反応速度が向上する傾向にあることから好ましい。
芳香族スルホン酸の使用量としては、アルキルフェノール1モルに対し、0.001モル倍以上、好ましくは、0.005モル〜0.5モル程度である。芳香族スルホン酸が0.001モル比以上であると、反応速度が向上する傾向にあることから好ましい。
混合の順番としては、炭化水素類溶媒中でアルキルフェノール(I)及びカルボニル化合物(II)を混合した溶液に、硫酸水溶液及び芳香族スルホン酸の混合液を上記温度範囲で混合させたのち、攪拌させる方法;炭化水素類溶媒中でアルキルフェノール(I)、硫酸水溶液及び芳香族スルホン酸の混合した溶液に、カルボニル化合物(II)を上記温度範囲で混合させたのち、攪拌させる方法などが挙げられる。
上記反応において、共沸脱水してもよいが、本発明によれば、共沸脱水することがなくとも、高い収率でアルキリデンビスアルキルフェノール(III)を得ることができる。
本発明の方法によれば、攪拌終了後に、速やかに水層と有機層に分液され、硫酸水溶液は水層として除去することができる。分液速度を向上させるために、水層に食塩、芒硝などの塩を加えたり、有機層に炭化水素溶媒を追加してもよい。
アルキリデンビスアルキルフェノール(III)の結晶は、例えば濾取などの方法により容易に取り出すことができる。また、得られた有機層から溶媒を留去した後、得られた残渣からアルキリデンビスアルキルフェノール(III)を溶媒抽出し、抽出後、溶媒留去することで、アルキリデンビスアルキルフェノール(III)の結晶を得ることができる。取り出されたアルキリデンビスフェノール(III)は、クロマトグラフィーや再結晶などの方法で精製してもよい。
(式中、R8は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基またはフェニル基を表し、Yは水酸基、ハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基又は式(V)
[式(V)中、R8は前記と同じ意味を表す]
で表される基)
に記載のカルボン酸類と反応させることにより、式(VI)
で表されるアルキリデンビスアルキルフェノールモノエステル(VI)を製造すればよい。
窒素雰囲気下の反応容器に、2,4−ジ−t−ペンチルフェノール 115部(0.49mol比)、p−トルエンスルホン酸一水和物1.5部(0.0079mol比)、及び50%硫酸水溶液7.25部(0.075mol比)を混合させた。次いで、30〜45℃に保温しながら、30%アセトアルデヒド−キシレン溶液39.9部(0.27mol比、アセトアルデヒド)を徐々に加えたのち、95℃まで昇温した。昇温後、約95℃に保温しながら5時間攪拌を続けた。
得られた反応生成物にキシレン151部を加え、80℃まで冷却した後、分液させた。分液速度は、66mm/分であった。
分液して得られた有機層中の分析から、1,1'−エチリデンビス(2,6−ジ−tert−ペンチルフェノール)の含有率は92.6%、収率は94.6%であった。
以下、表1に記載のモル比、攪拌温度以外は実施例1と同様にして実施し、結果を実施例1とともに表1にまとめた。なお、分液速度は数字が大きいほど分液が優れる。
実施例1と同様にして得られた有機層を中性になるまで水洗したのち、90〜110℃、約200mmHg(約27kPa)まで共沸脱水した。続いて、得られた溶液にアクリル酸22.0部(0.61mol比)及びトリエチルアミン63.3部(0.62mol比)を仕込み、窒素置換したのち、オキシ塩化リン31.1部(0.20mol比)を滴下し、さらに40℃で1時間保温した。得られた反応溶液を中性になるまで水洗し、キシレンの大部分を減圧留去した。次いで、メタノールを加えることにより結晶を得、濾過、乾燥して2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル]アクリレート(106.6部、0.194mol比、2,4−ジ−t−ペンチルフェノールを基準とする収率79.2%)を得た。
Claims (6)
- 式(I)
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立した置換基を示し、R1は炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を示し、R2、R3、R4およびR5は、水素原子または炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を示す。ただし、R3が炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基である場合には、R5は水素原子を示し、R3が水素原子である場合には、R5は炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を示す。)
で表されるアルキルフェノール、式(II)
(式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の直鎖炭化水素基、置換されていてもよい炭素数1〜15の分岐状炭化水素基または水素原子を示す。但し、R6及びR7のいずれか一方が水素原子であれば、他方は、炭素数1〜15の直鎖炭化水素基または炭素数1〜15の分岐状炭化水素基を示す。R6及びR7は、連結していてもよい。)で表されるカルボニル化合物、及び酸触媒の存在下に脱水縮合反応させて、式(III)
(式中、X1が水酸基である場合は、X2はR1、X3はR2、X4はR3、X5はR4を示し、X3が水酸基である場合は、X2はR1、X1はR2、X5はR4、X4はR5を示す。R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は前記と同じ意味を示す。)
で示されるアルキリデンビスアルキルフェノールを製造する方法において、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸及び2−ナフタレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族スルホン酸と、50〜85重量%の硫酸水溶液とを併用することを特徴とするアルキリデンビスアルキルフェノール(III)の製造方法。 - 脱水縮合の反応温度が40〜100℃であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 脱水縮合反応時に、さらに炭化水素溶媒が存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- カルボニル化合物(II)がアルデヒドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- アルキルフェノール(I)が、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−t−ブチル−2−メチルフェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ペンチル−4−メチルフェノール、4−t−ペンチル−2−メチルフェノール、2−t−ペンチル−6−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ペンチルフェノール、2,6−ジ−t−ペンチルフェノール、2,6−ジイソブチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、4−t−ブチル−2−エチルフェノール、2−t−ブチル−6−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−ベンジルフェノール、2−t−ブチル−4−(m−トリル)フェノール及び2−ベンジル−4,5−ジメチルフェノールからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキルフェノール(I)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって式(III)で示されるアルキリデンビスアルキルフェノールを製造し、次いで、脱水したのち、式(IV)
(式中、R8は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基またはフェニル基を表し、Yは水酸基、ハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基又は式(V)
[式(V)中、R8は前記と同じ意味を表す]
で表される基)
に記載のカルボン酸類と反応させることを特徴とする式(VI)
(式中、X6のいずれか一方が式(V)で表される場合は、他方のX6は水酸基、X2はR1、X7はR2、X4はR3、X5はR4を表す。X7のいずれか一方が式(V)で表される場合は、他方のX7は水酸基、X2はR1、X6はR2、X5はR4、X4はR5を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は前記と同じ意味を表す。)
に記載のアルキリデンビスアルキルフェノールモノエステルの製造方法。
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