JP4642170B2 - 樹脂組成物および積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)、特定の熱可塑性樹脂及び特定の金属石鹸からなる樹脂組成物および該樹脂組成物を含有する層を含む積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHは、透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
【0003】
そして、かかるEVOHは、上記の用途において、熱可塑性樹脂等とブレンドして用いられることも多い。すなわち、EVOHと熱可塑性樹脂との多層共押出成形にあっては、これらの樹脂に代わってかかるブレンド物を用いたり、或いはEVOH層と熱可塑性樹脂層の間にかかるブレンド物の層を設けたりすることも多い。前者においてはEVOHのガスバリア性と熱可塑性樹脂の機械的強度等の相乗効果や延伸性の向上等を目的としたもので、後者においてはEVOH層と熱可塑性樹脂層の層間接着力の向上等を目的としたものである。
【0004】
しかしながら、かかるブレンド物の相溶性は必ずしも良好ではなく、成形時に相分離や過度の反応を起こして、成形物の外観不良等の問題を起こすことが問題となっている。
【0005】
そこで、かかる相溶性の改善を目的として、EVOHと熱可塑性樹脂のブレンド物に周期律表第1族、2族及び3族から選ばれる金属の酸化物や脂肪酸塩を配合することが提案されている(特開平3−149239号公報、特開平6−212038号公報等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法では、ある程度の改善効果は見られるものの、長時間におよぶ加工時の相溶性の向上については改善の余地があり、更なる改善が望まれるところである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、EVOHと熱可塑性樹脂のブレンド物の相溶性の改善について鋭意研究を重ねた結果、エチレン含有量が20〜60モル%でケン化度が90モル%以上のEVOH(A)、特定の熱可塑性樹脂(B)及び炭素数12〜30の脂肪族モノカルボン酸の1種または2種以上と周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物とを乾式直接法により加熱反応させて得られる下記一般式(1)の金属石鹸(C)からなり、熱可塑性樹脂(B)の配合割合がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)100重量部に対して5〜100重量部である樹脂組成物が、上記の目的に合致することを見出して本発明を完成するに至った。
αMO・M(OOCR)2 ・・・(1)
(但し、αは0.1〜1.0の数字、Mは周期律表第2族の2価の金属、Rは炭素数11〜29の飽和又は不飽和のアルキル基をそれぞれ表す)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明に用いるEVOH(A)は、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のもので、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えると充分なガスバリア性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する。
【0009】
また、該EVOH(A)のメルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)は、特に限定されないが、1〜100g/10分(更には3〜50g/10分)が好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、成形物の機械的強度が不足して好ましくない。
【0010】
該EVOHは(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0011】
また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)としては、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ナイロン変性のアイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン(PP)、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、およびブレンド物或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体、ブレンド物を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどが挙げられる。
【0014】
ポリアミド系樹脂としては、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2、6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4、6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6、6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6、10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6、12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8、6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10、8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6、6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6、6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2、6/6、6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6、6/6、10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6、6/6、10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体あるいはこれらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペートなどが挙げられる。
【0017】
これらの熱可塑性樹脂(B)の中でも、ポリオレフィン系樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ナイロン変性アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン(PP)およびこれらを不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの、ポリアミド系樹脂としては、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6、6)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6、6)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体あるいはこれらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペートなどその他の熱可塑性樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマーおよびその変性物が、比較的EVOHとの相溶性に劣る或いは過度の反応を引き起こすため、本発明の作用効果が顕著に見られる。
【0018】
また、本発明に用いられる金属石鹸(C)は、下記一般式(1)で表されるものである。
αMO・M(OOCR)2 ・・・ (1)
(但し、αは0.1〜1.0の数字、Mは周期律表第2族の2価の金属、
Rは炭素数11〜29の飽和又は不飽和のアルキル基をそれぞれ表す)
すなわち、炭素数12〜30の脂肪族モノカルボン酸の1種または2種以上(C1)と周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物(C2)とを乾式直接法により加熱反応させて得られたもので、更には炭素数12〜30の脂肪族モノカルボン酸の1種または2種以上(C1)に周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物(C2)を反応当量以上に過剰に反応させたものが好適に用いられる。
【0019】
かかる炭素数12〜30の脂肪族モノカルボン酸(C1)としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギン酸、ヘプタデシル酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレイン酸、モンタン酸、イソステアリン酸等が挙げられ、また、これらの一部を脂肪族モノカルボン酸以外のカルボン酸又はジカルボン酸に置き換えたものでもよい。
【0020】
また、周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物(C2)としては、アルカリ土類金属や亜鉛族金属等の酸化物や水酸化物が用いられ、好適にはマグネシウム、カルシウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物が用いられる。
【0021】
金属石鹸(C)を得るにあたっては、上記の如く(C1)と(C2)とを乾式直接法により加熱反応させて得られたもので、具体的には(C1)を120〜140℃に加熱し、これに(C2)を加え、全量入れ終わった後160〜180℃に温度を上げ20〜30分攪拌を続けると、溶解して透明な金属石鹸(C)が得られるものであり、本発明では、この反応時に(C1)に(C2)を反応当量以上に過剰に反応させたものが好適に用いられる。すなわち、金属石鹸(C)の金属含有量が対応する当量より0.1〜1.0モル(更には0.1〜0.8モル)過剰に含有するようにすることが好ましく、かかる過剰モル数が0.1モル未満では、本発明の効果を十分に得ることが難しく、逆に1.0モルを越えると未反応の(C2)が、金属石鹸(C)の中に残存するので好ましくない。また、金属石鹸の製造方法として、乾式直接法の他に湿式沈殿法があるが、この湿式沈殿法では、水中で反応を行うため、反応温度に限度があり、金属含有量が反応当量より0.1モル以上過剰の本発明金属石鹸(C)を得ることは難しい。
【0022】
本発明の樹脂組成物は上記の如きEVOH(A)、熱可塑性樹脂(B)及び金属石鹸(C)を配合してなるもので、熱可塑性樹脂(B)の配合割合は、EVOH(A)100重量部に対して5〜100重量部であり、更には10〜60重量部、特には20〜50重量部であることが好ましく、かかる配合割合が5重量部未満では、目的とする機械的強度等の相乗効果や延伸性の向上等の物性改善が不充分となり、逆に100重量部を越えるとガスバリア性不充分となって好ましくない。また、金属石鹸(C)の配合割合は、EVOH(A)100重量部に対して0.005〜1重量部(更には0.007〜0.5重量部、特には0.01〜0.4重量部)であることが好ましく、かかる配合割合が0.005重量部未満ではロングラン性が不充分となり、逆に1重量部を越えると成形時の臭気、成形物の着色が著しくなって好ましくない。
【0023】
本発明の樹脂組成物を得るには、上記の(A)〜(C)をブレンドすれば良く、特に限定されないが、▲1▼(A)及び(B)を溶融混練した後に(C)を外部添加する方法、▲2▼(A)〜(C)を一括で混合した後に溶融混練する方法、▲3▼(A)に(C)を含有させた後に(B)を溶融混練する方法、▲4▼(A)及び(B)の両方にそれぞれ(C)を含有させた後に両者を溶融混練する方法、等を挙げることができ、好適には▲1▼の方法が採用されうる。
【0024】
かくして本発明の樹脂組成物が得られるのであるが、該樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、抗菌剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤などの添加剤や熱可塑性樹脂以外の樹脂などを配合することも可能である。特に、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤等を添加することも効果的である。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、EVOHとして構造や分子量等の異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、又酸成分(酢酸、リン酸、ホウ酸等)を添加することも可能である。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、長時間成形時の相溶性に優れ、成形物の用途に用いることができ、例えば溶融成形等によりペレット、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することもでき、かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物は、単層として用いることができるが、積層体として用いることも有用で、具体的には該樹脂組成物の層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層等を積層して積層体として用いることが有用である。
【0028】
該積層体を製造するに当たっては、該樹脂組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該樹脂組成物のフィルムやシートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該樹脂組成物を溶融押出する方法、該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法等が挙げられ、必要に応じて層間には変性ポリオレフィン系樹脂等の接着性樹脂が介される。更には該樹脂組成物のフィルムやシートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。
【0029】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、およびブレンド物或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体、ブレンド物を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族又は脂肪族ポリケトン、ポリアルコール等が挙げられる。EVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PET、PENが好ましく用いられる。
【0030】
更に、本発明の樹脂組成物から一旦フィルムやシート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0031】
積層体の層構成は、本発明の樹脂組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0032】
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善するためには加熱延伸処理を施すことも好ましい。ここで加熱延伸処理とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブローなどにより、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、フィルム状に均一に成形する操作を意味し、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラや偏肉、デラミ等の生じない、ガスバリア性に優れた延伸成形物が得られる。
【0033】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0034】
延伸が終了した後、次いで熱固定を行うことも好ましい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
【0035】
また、生肉、加工肉、チーズ等の熱収縮包装用途に用いる場合には、延伸後の熱固定は行わずに製品フィルムとし、上記の生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納した後、50〜130℃、好ましくは70〜120℃で、2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装をする。
【0036】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0037】
上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
【0039】
実施例1
〔金属石鹸(C)の製造〕
ステアリン酸(NV=200)100gを130℃に加熱し、攪拌しながら酸化亜鉛16.76gを徐々に加えた後、温度を150℃に上げ、20分間攪拌を続けて溶解すると、透明な亜鉛含有量11.86重量%,融点130℃の 0.15ZnO・Zn(C1735COO)2で表される酸化亜鉛として0.15モル過剰な塩基性ステアリン酸亜鉛(B)を得た。参考までに、このステアリン酸のNVに対応する酸化亜鉛で当量反応させて得たZn(C1735COO)2で表される正塩(ノルマル塩)のステアリン酸亜鉛の亜鉛含有量は10.47重量%,融点は123℃であった
【0040】
エチレン含有量35モル%、ケン化度99.7モル%、MI10g/10分(210℃,2160g荷重)のペレット状のEVOH(A)100部に、MI1.9g/10分(JIS K6760準拠)、密度0.924g/cm3、融点124℃のペレット状のLLDPE(B)10部及び上記で得られた塩基性ステアリン酸亜鉛(C)0.01部を配合し、30mmφ二軸押出機(L/D=28)により再ペレット化を行い本発明の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の長時間成形時における相溶性の評価を以下の要領で行った。
【0041】
(長時間成形時における相溶性)
得られた樹脂組成物を用いて、下記の条件で単軸押出機で12時間製膜を行った後、15時間温調を停止(空冷)してダイ温度を室温まで下げた後、同一設定温度(下記の押出温度)で2時間の再加熱を行って、再度、同一樹脂組成物にて同様に製膜を行った。
【0042】
[単軸押出機による製膜条件]
Figure 0004642170
上記で製膜で得られたフィルムの単位面積(10cm×10cm)に発生する直径0.2mm以上のゲルの個数を調べて、以下の通り評価した。尚、再立ち上げ直後はゲルが多数発生しており、再立ち上げ後5分後から5分ごとにフィルムをサンプリングしてゲルの発生個数が10個以内になるまでの時間を調べた。
○ −−− 再立上げ後30分未満でゲルが10個以内となった
△ −−− 再立上げ後30分以上60分未満でゲルが10個以内となった
× −−− ゲルが10個以内になるのに、再立上げ後60分以上を要した
【0045】
実施例
実施例1において、LLDPE(B)に変えて、MI1.9g/10分(JISK6758に準拠)、密度0.90g/cm3 のペレット状のPP(B)15部を使用した以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0047】
実施例
実施例1において、LLDPE(B)に変えて、密度1.14g/cm3 、融点215℃のペレット状のナイロン−6(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバミッド1022C6」)(B)5部を使用した以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0048】
実施例
実施例1において、LLDPE(B)に変えて、MI1.3g/10分(210℃、2160g荷重)、密度1.00g/cm3 、融点85及び197℃のペレット状のナイロン変性アイオノマー(B)10部を使用した以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0050】
実施例
実施例1において、金属石鹸(C)の配合量を0.1部とした以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0052】
実施例
実施例1において、EVOH(A)として、エチレン含有量45モル%、ケン化度99.7モル%、MI10g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOHを用いた以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0053】
実施例
3種5層共押出しTダイフィルム製膜装置を用い、実施例1で得た樹脂組成物、熱可塑性樹脂〔ポリプロピレン、MI(JISK6758に準拠)が2.4g/10分〕、接着性樹脂〔変性ポリオレフィン系樹脂、三菱化学社製「MODIC−APP523」、MI(JISK6758に準拠)が2.5g/10分〕にて、熱可塑性樹脂層(20μm)/接着性樹脂層(5μm)/樹脂組成物層(5μm)/接着性樹脂層(5μm)/熱可塑性樹脂層(25μm)の構成の積層体を得た。この積層体に関し、上記の長時間成形における相溶性の評価を行った。
【0055】
比較例1
実施例1において、金属石鹸(C)を配合しなかった以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0056】
比較例2
実施例1において、金属石鹸(C)に変えてステアリン酸マグネシウムを用いた以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
【0057】
【表1】
長時間成形時における相溶性
実施例1 ○
〃 2 ○
〃 3 ○
〃 4 △
〃 5 ○
〃 6 ○
〃 7 ○
比較例1 ×
〃 2 ×
【0058】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、EVOHと特定の熱可塑性樹脂のブレンド物に更に特定の金属石鹸を含有しているため、EVOHと特定の熱可塑性樹脂が相溶性に優れるため、長時間におよぶ成形性等が良好で、各種溶融成形物に有用で、積層体としても有用で、本発明の樹脂組成物の成形物や該樹脂組成物を用いた積層体は、食品や医薬品、農薬品、工業薬品包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、容器等の用途に非常に有用である。

Claims (4)

  1. エチレン含有量が20〜60モル%でケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂(B)及び炭素数12〜30の脂肪族モノカルボン酸の1種または2種以上と周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物とを乾式直接法により加熱反応させて得られる下記一般式(1)の金属石鹸(C)からなり、熱可塑性樹脂(B)の配合割合がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)100重量部に対して5〜100重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
    αMO・M(OOCR)・・・(1)
    (但し、αは0.1〜1.0の数字、Mは周期律表第2族の2価の金属、Rは炭素数11〜29の飽和又は不飽和のアルキル基をそれぞれ表す)
  2. 金属石鹸(C)の配合割合がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)100重量部に対して0.005〜1重量部であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 金属石鹸(C)中の金属含有量が対応する当量より0.1〜1.0モル過剰に含有することを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜いずれか記載の樹脂組成物を含有する層を少なくとも1層含むことを特徴とする積層体。
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