JP4640135B2 - ボールねじおよびボールねじ用ナット製造方法 - Google Patents
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Description
なお、ここにおいて「接触点」とは、ボールがねじ軸側の溝内面とナット側の溝内面との間に強く挟まれる状態における接触点を意味し、ボールが自由に移動できる状態において接触する点は含まない。
例えば、前記特許文献1に記載の駒式ボールねじにおいては、後に詳細に説明する理由によって、横断面積徐変部として雌ねじ溝の端部に形成される面取り部における接触点までの半径が、雌ねじ溝の通常部分(面取りが施されていない部分であり、特に必要がない限り単に雌ねじ溝と称する)における半径より大きくなっており、それが滑らかな作動を妨げることが判明した。ナットとねじ軸とが相対回転する際、ボールは面取り部内の途中において、雄ねじ溝との接触点と、面取り部の溝内面との接触点とにおける摩擦力を受けて、換言すれば、それら接触点近傍の雄ねじ溝内面と面取り部内面とに挟まれて、転動させられる状態となる。したがって、これら接触点の半径方向位置が異なれば、ナットとねじ軸との同じ相対回転速度に対するボールの公転速度(移動速度)が異なることとなる。例えば、雌ねじ溝側から連結溝側へボールが移動する場合に、面取り部内における移動速度の方が小さければ、雌ねじ溝内のボールが面取り部内のボールに追いつく。後方のボールが前方のボールに追いつくのであり、後方のボールが前方のボールに接触した後は前方のボールを押すこととなるが、前方のボールは面取り部の溝内面と雄ねじ溝の溝内面との間に強く挟まれているため、移動速度を容易に速めることはできず、両ボールが互いに強く押し付けられた状態で転動することとなって、ボールねじが滑らかに作動しない事態が生じるのである。
内周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雌ねじ溝を有するナット本体、およびそのナット本体に固定され、前記ねじ軸と共同して前記雌ねじ溝の2部分を互いに連結する連結路を形成する連結路形成部材を備えたナットと、
前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝とにより形成される螺旋路と、前記連結路とにより構成される循環路に収容され、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転につれてその循環路内を循環する複数のボールと
を含み、かつ、前記螺旋路を形成する雌ねじ溝と、前記連結路の少なくとも端部を前記ねじ軸との共同で形成するために前記連結路形成部材に形成される連結溝との境界近傍部分が、横断面積が前記雌ねじ溝に近い部分ほど小さくなる横断面積徐変部とされるとともに、その横断面積徐変部の少なくとも前記雌ねじ溝側の部分の横断面形状が、その横断面積徐変部に対する前記ボールの各々の接触点の、前記ナットの半径方向における位置である半径方向位置が、各ボールの前記雌ねじ溝に対する接触点の半径方向位置と同じになる形状とされたことを特徴とするボールねじ。
連結路形成部材は、雄ねじ軸と共同して雄ねじ溝の一部からねじ軸の山を越えて雄ねじ溝の他の一部へ移動させる連結路を形成するものであることが必要である。エンドキャップ式,リターンチューブ式,ガイドプレート式等においては、連結路がねじ軸の複数の山を越えて形成されることが多く、駒式においては1つの山を越えて形成されることが多い。1つの山を越えて形成される連結路は、連結路全体がナットの内周側へ開いた連結溝と雄ねじ軸との共同により形成される場合と、連結路の中央部が閉じたトンネル部として連結路形成部材(多くの場合駒部材)単独で形成される場合とがあるが、後者の場合でも連結路のトンネル部以外はナットの内周側へ開いた連結溝とねじ軸との共同で形成される。エンドキャップ式,リターンチューブ式,ガイドプレート式等においても事情は同じである。
したがって、連結路の雌ねじ溝と連なる端部の形状を考える場合には、連結路がトンネル部を含むトンネル式、あるいはエンドキャップ式,リターンチューブ式,ガイドプレート式等であるか否かを問わず、ナットの内周側へ開いた状態で形成される連結溝の形状を考えればよいことになる。
そして、本発明においては、連結溝と雌ねじ溝との境界近傍部分が横断面積徐変部とされるとともに、その横断面積徐変部の少なくとも雌ねじ溝側の部分の横断面形状が、その横断面積徐変部の溝内面に対するボールの各々の接触点の、ナットの半径方向における位置である半径方向位置が、各ボールの雌ねじ溝に対する接触点の半径方向位置と同じになる形状とされる。横断面積徐変部は、雌ねじ溝側のみに設けられても、連結溝側のみに設けられても、雌ねじ溝側と連結溝側とに跨って設けられてもよい。
いずれにしても、横断面積徐変部との関係においては、連結溝あるいは雌ねじ溝の横断面積徐変部とされた部分はもはや連結溝あるいは雌ねじ溝ではなくなったものとみなし、横断面積徐変部とされていない部分をそれぞれ連結溝および雌ねじ溝と称することとする。
(2)前記横断面積徐変部が、横断面形状が前記雌ねじ溝と同じ寸法のゴシックアーク形状である最端部と、横断面積がその最端部のそれより大きく、前記ボールを隙間を残して収容し得る連結路を前記ねじ軸との共同により形成する深溝部とを滑らかにつなぐものであり、その横断面積徐変部の少なくとも前記最端部に隣接する部分の横断面形状が、前記各ボールのその最端部に隣接する部分への接触点の半径方向位置が前記雌ねじ溝への接触点の半径方向位置と同じになる横断面形状とされた(1)項に記載のボールねじ。
横断面積徐変部の全体を(1)項の条件を満たすものとすることも可能であるが、少なくとも雌ねじ溝に隣接する部分を(1)項の条件を満たすものとすれば本発明の効果が得られる。
(3)前記横断面積徐変部が、前記最端部と同一形状の溝の溝内面に、最端部から前記深溝部に向かうに従って前記最端部と同一形状の溝の幅方向に徐々に深くなる徐変溝が形成された徐変部を含み、前記徐変溝の溝内面の横断面形状の曲率半径が前記各ボールの半径より大きく、かつその徐変溝の溝内面と前記各ボールとの接触点が各ボールの前記雌ねじ溝への接触点と同一の半径方向位置にある(2)項に記載のボールねじ。
最端部と同一形状の溝の溝内面に、最端部から深溝部に向かうに従って最端部と同一形状の溝の幅方向に徐々に深くなる徐変溝を形成すれば、徐変溝の深さが最端部に近づくにつれて徐々に浅くなっても、すなわち徐変部の幅が最端部に近づくにつれて徐々に狭くなっても、その徐変部と各ボールとの接触点の半径方向位置は変わらず、雌ねじ溝とボールとの接触点の半径方向位置と同じに保たれる。
(4)前記徐変溝の溝内面が曲率半径が一定の円弧の集合である(3)項に記載のボールねじ。
徐変溝の溝内面を、曲率半径が徐々に変化する曲線の集合とすることも可能であるが、円弧の集合とすれば形成が容易である。
(5)前記深溝部が、前記徐変溝の溝内面を構成する前記円弧と曲率半径が同じ1つの円弧の集合により溝内面が構成されるものである(4)項に記載のボールねじ。
深溝部を、徐変溝の溝内面を構成する円弧と曲率半径が同じ円弧で構成されるものとすれば、連結溝と横断面積徐変部との接続が容易である。
(6)前記横断面積徐変部が、第1徐変部としての前記徐変部と前記深溝部との間に、前記第1徐変部とは異なる第2徐変部を含み、その第2徐変部が、前記最端部と同一形状の溝の深さが幅方向の成分と深さ方向の成分とを有する方向に深くなる第2徐変溝を有する(4)項または(5)項に記載のボールねじ。
各ボールが横断面積徐変部内を雌ねじ溝に向かって移動するにつれて、まず第2徐変部により第1徐変部へ案内され、第1徐変部内を移動する間に第1徐変部の溝内面と雄ねじ溝の溝内面との間に強く挟まれる状態となり、以後雌ねじ溝に向かって強制的に転動させられる。あるいは逆に、雌ねじ溝内を強制的に転動させられてきた各ボールが、横断面積徐変部に入ってもしばらくは強制的に転動させられ、やがて横断面積徐変部の溝内面と雄ねじ溝の溝内面との間に強く挟まれない状態となる。
(7)前記第2徐変溝が、前記深溝部の溝内面を構成する円弧と曲率半径を同じくする円弧の集合により形成された(6)項に記載のボールねじ。
(8)(1)項ないし(7)項のいずれかに記載のボールねじを含み、さらに、
車体にその車体の幅方向に平行な軸方向に移動可能に保持され、前記ねじ軸を含む転舵ロッドと、
前記車体に保持され、前記ナットを回転駆動する電動モータと
を含むパワーステアリング装置。
本形態のパワーステアリング装置においては、ボールねじが滑らかに作動しない場合に、その円滑ではない回転がステアリングホイール等の操作部に伝達され、運転者に不快感を与える。したがって、パワーステアリング装置用のボールねじは特に円滑に作動することが要求されるが、本発明に従ったボールねじはその要求を満たし得る。
(9)(a)外周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雄ねじ溝を有するねじ軸と、(b)内周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雌ねじ溝を有するナット本体、およびそのナット本体に固定され、前記ねじ軸と共同して前記雌ねじ溝の2部分を互いに連結する連結路を形成する連結路形成部材を備えたナットと、(c)前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝とにより形成される螺旋路と前記連結路とにより構成される循環路に収容され、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転につれてその循環路内を循環する複数のボールとを含むボールねじの前記ナットを製造する方法であって、
前記連結路の前記螺旋路との境界近傍部分を前記雄ねじ軸と共同して形成する連結溝であって横断面積が前記雌ねじ溝の横断面積より大きくされたもの備えた前記連結路形成部材が、前記ナット本体に固定されたナット素材を準備する工程と、
そのナット素材の前記ナット本体の前記ゴシックアーク溝の溝内面を、加工面が前記ボールの半径より大きい曲率半径の凸曲面である加工工具により機械加工する工程と
を含み、その加工工具による機械加工工程が、
(i)前記加工工具を回転させつつ、前記凸曲面を、前記ゴシックアーク溝の、前記連結路と前記螺旋路との境界から設定距離離れた部分の、前記ボールの前記雌ねじ溝への接触点と半径方向位置が同じである点に接触させ、その後、それらナット素材と加工工具とに、加工工具が概して前記ゴシックアーク溝の延びる方向に移動しつつゴシックアーク溝の幅方向に徐々に移動する結果となる相対運動を付与して、ゴシックアーク溝の溝内面に、深さがそのゴシックアーク溝の幅方向に徐々に深くなる第1徐変溝を機械加工により形成する正第1徐変溝加工工程、または(ii)その正第1徐変溝加工工程と加工の進行方向を逆にした逆第1徐変溝加工工程を含むことを特徴とするボールねじ用ナットの製造方法。
上記機械加工は切削加工と研削加工との少なくとも一方を含む。切削加工には、例えば、切刃の回転軌跡がボールの半径より大きい曲率半径の凸曲面となるエンドミルを使用することができ、切刃の回転軌跡が加工面となる。研削加工には、例えば、凸曲面にダイヤモンド砥粒やCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒を固着したダイヤモンド砥石やCBN砥石を使用することができ、砥粒の回転軌跡の集合が加工面となる。
本項の製造方法において、正第1徐変溝加工工程を採用することも、逆徐変溝加工工程を採用することも共に可能である。ただし、徐変溝加工(切削加工の場合特に)の最後にバリが生じることがあり、逆徐変溝加工工程による場合はこのバリが第1徐変溝の溝内面と雌ねじ溝の溝内面との境界に生じてボールの軽快な転動の妨げになる可能性があるのに対し、正第1徐変溝加工工程によれば、バリが生じても、第1徐変溝の溝内面の雌ねじ溝から遠い側の端に生じ、この端においてはボールと溝内面との間に十分な隙間があるため、ボールの軽快な転動が妨げられることはない。この観点からすれば、正第1徐変溝加工工程の方が有利である。
本項の製造方法によれば、前記(3)項に記載のボールねじ用のナットが得られる。
(10)(iii)前記正第1徐変溝加工工程の終了後、前記ナット素材と前記加工工具とに、加工工具が概して前記ゴシックアーク溝の延びる方向に移動しつつゴシックアーク溝の幅方向および深さ方向に徐々に移動する結果となる相対運動を付与して、ゴシックアーク溝の溝内面に、深さがゴシックアーク溝の幅方向と深さ方向との両方に徐々に深くなる第2徐変溝を機械加工により形成する正第2徐変溝加工工程、または(iv)前記逆第1徐変溝加工工程の実行前に、前記正第2徐変溝加工工程とは加工の進行方向を逆にした逆第2徐変溝加工工程を含む(9)項に記載のボールねじ用ナットの製造方法。
本項の製造方法においても、(9)項に関連して説明したのと同じ理由で正第2徐変溝加工工程の方が望ましい。
本項の製造方法によれば前記(6)項に記載のボールねじ用のナットが得られる。
(11)前記加工工具として、前記凸曲面が、前記曲率半径が一定の球面であるものを使用する(9)項または(10)項に記載のボールねじ用ナットの製造方法。
図1に、車両用ステアリングシステムを概略的に示す。本システムは、操作部10と転舵部12とを備えている。操作部10は、操舵操作部材としてのステアリングホイール14,ステアリングシャフト16,センサ18等を備え、転舵部12は、転舵ロッド22,タイロッド24,ステアリングナックル26,転舵アクチュエータ28等を備えている。センサ18はステアリングECU(電子制御装置)32の入力部に接続され、そのステアリングECU32の出力部に転舵アクチュエータ28が接続されている。ステアリングシャフト16は、インタミディエイトシャフト34を介して転舵アクチュエータ28の入力軸36に連結されている。
本実施例においては、連結路102の中央部が、駒部材98に形成された貫通孔108により形成されており、いわゆるトンネル式となっている。連結路102の両端部は、駒部材98に内周側に開いて形成された連結溝110と、雄ねじ溝92との共同で形成される。駒部材98は、図5に示す形状を有する2つの部材98a,98bを合わせて、ナット本体96に形成された嵌合穴に嵌合され、固定される。固定後は一体の駒部材98として機能するため、以後は一体の部材として説明する。
図6に螺旋路104および連結路102におけるボール66と溝内面との関係を概念的に示す。螺旋路104内においては、図の左上に示すように、ボール66が雄ねじ溝92の溝内面と雌ねじ溝94の溝内面との、互いにボール66の直径方向に隔たった2部分によって強く挟まれ、それら2部分とボールとの接触点近傍の部分が僅かに弾性変形して、それら2部分とほぼ90度離れた部分においては溝内面とボール66との間に僅かな隙間が生じた状態となる。これら弾性変形する側と隙間が生じる側とは、ねじ軸62とナット64との加えられる軸方向の力の向きが反転すれば逆になる。
先に説明した特許文献1に記載のボールねじにおいて「後方のボールが前方のボールに追いついて両ボールが互いに強く押し付けられた状態で転動する」という現象が生じるのは、主として、ボールが連結溝側から雌ねじ溝側へ移動する場合である。逆の場合には、面取り部内のボールの移動速度が雌ねじ溝内のボールの移動速度より小さい場合に同様の現象が生じることとなるが、実際にこのような状況になることは少ないのである。したがって、ここでは、ボール66が連結溝110側から雌ねじ溝94側へ移動する場合について説明する。また、雌ねじ溝94の2つの第2徐変溝122が形成された部分を第2徐変部、2つの第1徐変溝120が形成された部分を第1徐変部と総称し、これら徐変溝120,122が形成されていない部分を、これまで通り雌ねじ溝94と称する。また、第1徐変部と第2徐変部とを徐変部と総称する。
ボール66が雄ねじ溝92と雌ねじ溝94との溝内面に挟まれて転動する場合の、雌ねじ溝94のボール66との接触点におけるナット64の周速V1は、図8(a)から明らかなように、次式で表される。
V1=ω・(R+H)・・・・(1)
ただし
ω:ねじ軸62とナット64との相対回転角速度
R:ねじ軸62の軸線とボール66の球心との距離
H:ボール66と雌ねじ溝94の溝内面との接触点とボール66の球心との、ねじ軸62の半径方向における距離
また、ボール66が雄ねじ溝92と雌ねじ溝94との溝内面に挟まれて転動する場合には、図6の左上部分あるいは図9(a)に誇張して示すように、ボール66と両溝内面との2つの接触点間の距離はボール66の直径に等しいため、図8(b)に示すように、ボール66の球心の移動速度V2は次式で表される。
V2=(1/2)・V1・・・・(2)
V3=ω・(R+H′)・・・・(3)
ただし
H′:ボールと徐変部の溝内面との接触点P′とボールの球心との、ねじ軸の軸線に直角な平面内における距離
そして、ボールと徐変部の溝内面との接触点P′が図10の位置になる場合には、ボールは雄ねじ溝の両側の溝内面に強く押し付けられることとなるため、ボールは両側の溝内面との接触点である2点を結ぶ直線L(図10参照。図8(c)においては点Qにおいて図の面と直交する直線)を中心として回転することとなり、図8(d)から明らかなように、ボールの球心の移動速度V4は次式で表される。
V4=V3・H/(H+H′)・・・・(4)
V2−V4=(1/2)・V1−V3・H/(H+H′)=ω・(H′−H)・(R−H)/2(H+H′)
ここにおいて、ω>0,H>0,H′>0,H′>H,R>Hであるから(V2−V4)は正であり、V2>V4である。ボール66が雄ねじ溝92と雌ねじ溝94との溝内面に挟まれて転動する場合にの球心の移動速度(公転速度)V2の方が、徐変溝と雄ねじ溝との溝内面に挟まれて転動する場合の球心の移動速度(公転速度)V4より大きいのである。
それに対して、本実施例のボールねじにおいては、第1徐変部における第1徐変溝120の溝内面とボール66との接触点の半径方向位置と、雌ねじ溝94の溝内面とボール66との接触点の半径方向位置とが同じにされているため、第1徐変部において強制的に転動させられているボール66と雌ねじ溝94内において転動させられているボール66との移動速度(公転速度)が同一であり、後者が前者に追いついて2つのボール66が押しつけられつつ転動するという事態の発生が良好に回避され、ボールねじの滑らかな作動が保証される。
しかし、汎用のボールねじにおいては、ねじ軸62とナット64とにいかなる向きの軸力が作用する状態で使用されるかが不明であり、むしろ状況によって軸力の作用方向が変わることが多い。本実施例の車両用ステアリングシステムにおけるボールねじは正にその例であって、ゴシックアーク形状の雌ねじ溝94の両側の溝内面にそれぞれ第1徐変溝120および第2徐変溝122を形成すべきであり、この態様が本発明の特に望ましい実施例となる。
また、ナット本体96と駒部材98とに跨って形成されたゴシックアーク形状の横断面を有する雌ねじ溝および連結溝の両方に跨って第1,第2徐変溝120,122を形成してもよい。
さらに、第2徐変溝122は第1徐変溝120に比較すれば精度が低くても差し支えないため、予め駒部材98に形成しておき、駒部材98をナット本体96に固定した後に第1徐変溝120のみをナット本体側と駒部材側とに跨る切削加工により形成してもよく、ナット本体側のみ、あるいは駒部材側のみに形成してもよい。
Claims (4)
- 外周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雄ねじ溝を有するねじ軸と、
内周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雌ねじ溝を有するナット本体、およびそのナット本体に固定され、前記ねじ軸と共同して前記雌ねじ溝の2部分を互いに連結する連結路を形成する連結路形成部材を備えたナットと、
前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝とにより形成される螺旋路と、前記連結路とにより構成される循環路に収容され、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転につれてその循環路内を循環する複数のボールと
を含み、かつ、前記螺旋路を形成する雌ねじ溝と、前記連結路の少なくとも端部を前記ねじ軸との共同で形成するために前記連結路形成部材に形成される連結溝との境界近傍部分が、横断面積が前記雌ねじ溝に近い部分ほど小さくなる横断面積徐変部とされるとともに、その横断面積徐変部が、横断面形状が前記雌ねじ溝と同じ寸法のゴシックアーク形状である最端部と、横断面積がその最端部のそれより大きく前記ボールを隙間を残して収容し得る連結路を前記ねじ軸との共同により形成する深溝部との間において、前記最端部に隣接する部分の溝内面に、前記最端部から前記深溝部に向かうに従って前記最端部と同一形状の溝が幅方向に徐々に深くなる徐変溝が形成されてなる幅方向徐変部を含み、前記横断面積徐変部が前記最端部と前記深溝部とを滑らかにつなぐとともに、前記幅方向徐変部への前記各ボールの接触点の半径方向位置が前記雌ねじ溝への前記各ボールの接触点の半径方向位置と同じにされたことを特徴とするボールねじ。 - 前記徐変溝の溝内面が曲率半径が一定の円弧の集合であり、かつ、前記横断面積徐変部が、第1徐変部としての前記幅方向徐変部と前記深溝部との間に、前記第1徐変部とは異なる第2徐変部を含み、その第2徐変部が、前記最端部と同一形状の溝の深さが幅方向の成分と深さ方向の成分とを有する方向に深くなる第2徐変溝を有する請求項1に記載のボールねじ。
- (a)外周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雄ねじ溝を有するねじ軸と、(b)内周面に横断面形状がゴシックアーク形である螺旋状の雌ねじ溝を有するナット本体、およびそのナット本体に固定され、前記ねじ軸と共同して前記雌ねじ溝の2部分を互いに連結する連結路を形成する連結路形成部材を備えたナットと、(c)前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝とにより形成される螺旋路と前記連結路とにより構成される循環路に収容され、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転につれてその循環路内を循環する複数のボールとを含むボールねじの前記ナットを製造する方法であって、
前記連結路の前記螺旋路との境界近傍部分を前記雄ねじ軸と共同して形成する連結溝であって横断面積が前記雌ねじ溝の横断面積より大きくされたものを備えた前記連結路形成部材が、前記ナット本体に固定されたナット素材を準備する工程と、
そのナット素材の前記ナット本体の前記ゴシックアーク溝の溝内面を、加工面が前記ボールの半径より大きい曲率半径の凸曲面である加工工具により機械加工する工程と
を含み、その加工工具による機械加工工程が、
(i)前記加工工具を回転させつつ、前記凸曲面を、前記ゴシックアーク溝の、前記連結路と前記螺旋路との境界から設定距離離れた部分の、前記ボールの前記雌ねじ溝への接触点と半径方向位置が同じである点に接触させ、その後、それらナット素材と加工工具とに、加工工具が概して前記ゴシックアーク溝の延びる方向に移動しつつゴシックアーク溝の幅方向に徐々に移動する結果となる相対運動を付与して、ゴシックアーク溝の溝内面に、深さがそのゴシックアーク溝の幅方向に徐々に深くなる第1徐変溝を機械加工により形成する正第1徐変溝加工工程、または(ii)その正第1徐変溝加工工程と加工の進行方向を逆にした逆第1徐変溝加工工程を含むことを特徴とするボールねじ用ナットの製造方法。 - さらに、(iii)前記正第1徐変溝加工工程の終了後、前記ナット素材と前記加工工具とに、加工工具が概して前記ゴシックアーク溝の延びる方向に移動しつつゴシックアーク溝の幅方向および深さ方向に徐々に移動する結果となる相対運動を付与して、ゴシックアーク溝の溝内面に、深さがゴシックアーク溝の幅方向と深さ方向との両方に徐々に深くなる第2徐変溝を機械加工により形成する正第2徐変溝加工工程、または(iv)前記逆第1徐変溝加工工程の実行前に、前記正第2徐変溝加工工程とは加工の進行方向を逆にした逆第2徐変溝加工工程を含む請求項3に記載のボールねじ用ナットの製造方法。
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