JP4639487B2 - 薄膜部を有するセンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体プロセスで製造される薄膜部を有するセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体プロセスで製造される薄膜部を有するセンサとして、例えばフローセンサがある。図5は薄膜部を含む部位におけるフローセンサ100の概略断面図である。フローセンサ100では、基板101の表面に絶縁膜や導体膜からなる薄膜層102が形成され、薄膜層102を残して基板101に空洞部103が設けられることにより、空洞部103上に薄膜層102からなる薄膜部104が形成されている。
【0003】
そして、この薄膜部104における導体膜でヒータや測温体等が構成され、薄膜部104の表面における流体の流れによるヒータの放熱量を測温体で検出することにより流量を検出するようになっている。
【0004】
次に、この様なフローセンサ100の製造方法について説明する。まず、基板101の表面に酸化膜や窒化膜からなる絶縁膜を形成し、その後、絶縁膜上に導体膜を形成してパターニングすることにより、ヒータや測温体等を形成する。次に、ヒータや測温体上に絶縁膜を形成する。この様にして薄膜層102を形成する。
【0005】
続いて、ヒータや測温体等が形成された部位に対応する基板101の裏面側から、基板101の表面側に形成された薄膜層102を残して基板101をエッチングすることにより空洞部103を形成する。これにより、空洞部103上の薄膜層102が薄膜部104になる。このエッチングは、KOH溶液やTMAH溶液等のエッチング液を用いて行われ、基板101の面方位に依存した形状の空洞部103が形成される。一般に、空洞部103における基板101に垂直な方向の断面の形状は台形になる。
【0006】
この様に、フローセンサ100では薄膜部104にヒータ等が形成されており、薄膜部104は膜厚が薄いため熱容量が低いことから、ヒータのわずかな放熱量変化を検出することができ、応答性が高くなっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、薄膜部104の表面側から図5中の白抜き矢印で示される圧力が加わって破線の様に薄膜部104が変形すると、薄膜部104の端部Aにおいて応力集中が起こる。従って、一般に薄膜部104では膜厚が薄くて強度が低くなっているため、薄膜部104の端部Aにおいて亀裂が生じ、薄膜部が破壊される恐れがある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、薄膜部の破壊耐圧を向上させることができる薄膜部を有するセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、薄膜部104が破壊される機構についてシミュレーション解析を行って検討した。その結果、薄膜部104の表面側から圧力を加え、その圧力を徐々に大きくしていった場合、基板101の表面と空洞部103における基板101の側壁とのなす角度αが小さい程、薄膜部104の端部Aに生じた応力が大きくなり、薄膜部104が破壊され易くなることが分かった。つまり、薄膜部104の端部において基板101の表面と空洞部103における基板101の側壁とのなす角度αが小さい程、薄膜部104の破壊耐圧が小さいことが分かった。
【0010】
そして、上記従来の製造方法では、基板101の面方位に依存した異方性エッチングのみで空洞部103を形成しており、面方位によって空洞部103の形状が決定されるため、場合によっては空洞部103における基板101の側壁と基板101の表面とのなす角度αが小さくなってしまう。従って、従来の製造方法では薄膜部104の破壊耐圧が小さくなる恐れがあるため、新たな製造方法の開発が望まれる。
【0019】
そこで、請求項1に記載の発明では、基板(1)の表面全面に不純物がドーピングされた不純物層(9)をエピタキシャル成長により形成する工程と、不純物層の上に、絶縁膜の間に導体膜が挟まれてなる薄膜層(8)を形成する薄膜層形成工程と、その後、基板の裏面側から、基板の面方位に依存したエッチングを行って不純物層を露出させ、基板の表面側から薄膜層をエッチングにより部分的に除去して開口部を形成し、不純物層を露出させた後、薄膜層の開口部から不純物層に直接通電し、露出した不純物層を電気化学エッチングにより除去して薄膜層の絶縁膜を露出させ、空洞部(2)を形成することにより、空洞部上に薄膜層からなる薄膜部(3)を形成する薄膜部形成工程とを有することを特徴としている。
【0020】
本発明では、空洞部における基板の表面側を不純物層の電気化学エッチングにより形成しているため、薄膜部の端部において空洞部における基板の側壁と基板の表面とのなす角度を大きくすることができる。従って、薄膜部の破壊耐圧を向上させることができる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1の発明において、基板として、Siからなる<100>基板を使用し、空洞部において基板の<111>面を露出させることを特徴としている。
【0022】
本発明では、請求項1の発明に示す空洞部における基板の側壁と基板の表面とのなす角度が大きくなるような製造方法を採用しているため、比較的入手し易いSiの<100>基板を用いても好適に薄膜部の破壊耐圧を向上させることができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明の様に、請求項1,2に記載の発明における不純物層としてボロンを10 19 /cm 3 程度ドーピングさせてエピタキシャル成長させた層を用いることができる。また、請求項4に記載の発明の様に、請求項1〜3に記載の発明における薄膜部を有するセンサとしてエアフローセンサを適用することができる。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、薄膜部を有するセンサとしての感熱式エアフローセンサ(以下、単にフローセンサという)の製造方法に本発明を適用したものである。以下、図に示す実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態のフローセンサ10の概略断面図である。Si等からなる基板1の表面に導体膜が絶縁膜で挟まれてなる薄膜層が形成され、基板1の裏面側から薄膜層を残す様にして空洞部2が設けられている。そして、この空洞部2上の薄膜層によってダイアフラム構造の薄膜部3が形成されている。
【0027】
薄膜部3においては、導体膜で構成された蛇行状のヒータ4が形成され、このヒータ4の両側のうち、図中の白抜き矢印で示される流体の流れの上流側に導体膜で構成された蛇行状の測温体5が形成されている。また、ヒータ4と測温体5の上流側には、流体の温度を測定するための導体膜で構成された蛇行状の流体温度計6が形成されている。これらの導体膜としては例えばPtからなるものを用いることができる。
【0028】
このようなフローセンサ10では、流体温度計6から得られる流体温度よりも高い温度になるようにヒータ4を駆動する。そして、流体が流れることにより、図の白抜き矢印で示す順流においては、測温体5は熱を奪われて温度が下がり、白抜き矢印の逆方向である逆流では熱が運ばれて温度が上がるため、この測温体5と流体温度計6との温度差から流体の流量および流れ方向が検出される。
【0029】
ここで、温度測定(検出)は、ヒータ4等と同様に導体膜により形成された電極取り出し部7を用いて、流体温度計6および測温体5を形成している導体膜の抵抗値変動を検出することにより行っている。そのため、測温体5を薄膜部3に形成しており薄膜部3は熱容量が小さいことから、測温体5の抵抗値変動を敏感に検出することができ、このフローセンサ10の応答性が高くなる。
【0030】
次に、この様な構成のフローセンサ10の製造方法について、薄膜部3におけるフローセンサ10の概略断面で示す工程図である図2を参照して述べる。
【0031】
〔図2(a)に示す工程〕
まず、基板1を用意する。この基板1としてはSiの<100>基板1を用いる。次に、基板1の表面側に薄膜層8を形成する薄膜層形成工程を行う。この薄膜層形成工程では、基板1の表面に窒化膜と酸化膜を積層して絶縁膜を形成し、その後、絶縁膜上に導体膜としてのPt膜を形成する。そして、このPt膜をパターニングして、図1に示すヒータ4、測温体5、流体温度計6等を形成する。その後、このヒータ4等の上に窒化膜と酸化膜を形成して絶縁膜を形成する。このようにして、絶縁膜の間に導体膜が挟まれてなる薄膜層8を形成する。以上が薄膜層形成工程である。
【0032】
次に、基板1の裏面側からエッチングを行う。基板1の裏面に予め形成しておいた酸化膜のうち、空洞部2を形成する予定の部位を開口してSi基板1の裏面を露出させる。そして、KOH溶液やTMAH溶液等のエッチング液を用いた異方性エッチング(第1のエッチング)を行う(第1のエッチング工程)。この異方性エッチングは基板1の面方位に依存しており、本実施形態では<111>面が露出する。
【0033】
また、この第1のエッチング工程では、基板1の表面側が残るように、基板1の裏面側から基板1の途中までエッチングする。具体的には、基板1の表面側において残される基板1の厚みが10μm以下になるまでエッチングを行う。この基板1の厚みは例えば光学的に測定して制御することができる。この様にして空洞部2を部分的に形成する。ここで、第1のエッチングによってエッチングされる領域の側壁と基板1の表面との成す角度を第1の角度θ1とする。
【0034】
〔図2(b)に示す工程〕
次に、基板1の裏面側一面に酸化膜を形成し、その後、部分的に形成された空洞部2の周囲の基板1のうち、基板1の表面に略平行な面(以下、上底面という)1aに対応する部分が開口するようにレジストを形成する。そして、このレジストをマスクとして酸化膜をエッチングし、基板1における上底面1aを酸化膜から露出させる。
【0035】
その後、酸化膜をマスクとして、ICP(誘導結合プラズマ)エッチング等のRIE(反応性イオンエッチング)を行う(第2のエッチング工程)。このICPエッチング(第2のエッチング)は基板1の面方位に依存しない異方性エッチングであり、イオンの入射角に依存するエッチングである。具体的には、ICPエッチングでは、例えばSF6を主成分とするガスを用いることができる。
【0036】
また、第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程において残された基板1の表面側を薄膜層8に達するまでエッチングして空洞部2を形成する。これにより、空洞部2上に薄膜層8からなる薄膜部3が形成される。
【0037】
また、第2のエッチング工程によってエッチングされる領域における基板1の表面側の側壁と基板1の表面との成す角度を第2の角度θ2とすると、第1の角度θ1よりも第2の角度θ2の方が大きくなっている。具体的には、本実施形態では、第1の角度θ1が54.7度であり、第2の角度θ2が90度となっている。
【0038】
以上、第1及び第2のエッチング工程により空洞部2を形成して薄膜部3を形成する工程を薄膜部形成工程という。この様にして、図1に示すフローセンサ10が完成する。
【0039】
本実施形態では、空洞部2のうち基板1の表面側の部位を基板1の面方位に依存しないエッチングにより形成しており、ICPエッチングを行っているため基板1の表面に対して直角にエッチングを行うことができる。そのため、薄膜部3の端部において空洞部2における基板1の側壁と基板1の表面とのなす角度である第2の角度θ2をほぼ90度にすることができる。従って、薄膜部3の破壊耐圧を向上させることができる。
【0040】
また、面方位に依存した異方性エッチングである第1のエッチングはエッチングレートが速く、基板1の表面に対して略直角な面を形成する異方性エッチングである第2のエッチングはエッチングレートが遅い。従って、本実施形態の様に、第1のエッチングにより空洞部2の大部分を形成し、第2のエッチングにより除去する基板1の厚みを数μm程度(10μm以下)に少なくすることにより、空洞部2を形成するために必要な時間を短くすることができる。
【0041】
また、第2のエッチングではエッチングレートのばらつきを制御する必要があるが、第2のエッチングにより除去する基板1の厚みを少なくしているため、容易にエッチングレートのばらつきを制御することができる。なお、薄膜部3の破壊耐圧を向上させる効果を好適に得るために、第2のエッチングにより除去される基板1の厚みは2μm以上にすると望ましい。
【0042】
また、本実施形態では、比較的入手し易いSiの<100>基板1を用いるようにしている。通常、<100>基板1を用いて面方位に依存する異方性エッチングのみにより空洞部2を形成すると、空洞部2における基板1の側壁面が<111>面となり、薄膜部3の端部において空洞部2における基板1の側壁と基板1の表面とのなす角度が比較的小さくなってしまう。そのため、薄膜部3の端部において薄膜部3が破壊される恐れがある。
【0043】
しかしながら、本実施形態の様に、空洞部2を第1及び第2のエッチングによる2段階のエッチングにより形成することにより、比較的入手し易いSiの<100>基板1を用いても好適に薄膜部3の破壊耐圧を向上させることができる。
【0044】
(第2実施形態)
本実施形態は第1実施形態と比較して第2のエッチング工程が異なる。図3は本実施形態に係るフローセンサ10の製造工程を薄膜部3を含む概略断面図にて示している。以下、主として第1実施形態と異なる部分について述べ、図3中、図2と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
〔図3(a)に示す工程〕
第1実施形態において示した〔図2(a)に示す工程〕と同様に空洞部2を部分的に形成する。
【0046】
〔図3(b)に示す工程〕
基板1の裏面に対して第1実施形態における酸化膜の代わりに窒化膜を形成し、基板1の上底面1aを窒化膜から露出させる。そして、窒化膜をマスクとして等方性エッチング(第2のエッチング)を行うことにより薄膜層8を残して基板1のエッチングを行う(第2のエッチング工程)。この等方性エッチングは、エッチング液としてフッ硝酸を用いたウェットエッチングにより行うことができる。この様にして空洞部2を形成してフローセンサ10を製造することができる。
【0047】
本実施形態でも、第2のエッチングを等方性エッチングで行うことにより、薄膜部3の端部において空洞部2における基板1の側壁と基板1の表面とのなす角度(第2の角度θ2)を90度に近づけることができるため、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0048】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態では基板1を2段階でエッチングすることにより第2の角度θ2を大きくする方法について説明したが、本実施形態では基板1と薄膜層8との間に異なる層を挿入して2段階でエッチングする製造方法について説明する。図4は本実施形態に係るフローセンサ10の製造工程を薄膜部3を含む概略断面図にて示している。以下、主として第1実施形態と異なる部分について述べ、図4中、図2と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
〔図4(a)に示す工程〕
まず、基板1の表面に不純物がドーピングされた不純物層9を形成する(不純物層を形成する工程)。この不純物層9としては、高濃度にB(ボロン)をドーピングさせてエピタキシャル成長させた層を用いることができる。Bの濃度は、例えば1019/cm3程度にすると良い。
【0050】
そして、第1実施形態と同様に薄膜層8を形成した後、基板1の裏面側から面方位に依存したエッチングを行うことにより、不純物層9を露出させて空洞部2を部分的に形成する。
【0051】
また、後述の電気化学エッチングにおいて不純物層9に通電するために、基板1の表面側から薄膜層8をエッチング等により部分的に除去して開口部8aを形成し、不純物層9を露出させる。
【0052】
〔図4(b)に示す工程〕
基板1の表面側における薄膜層8の開口部8aから不純物層9に通電し、部分的に形成された空洞部2において露出した不純物層9を電気化学エッチングにより除去する。これにより、空洞部2が形成され、空洞部2上の薄膜層8が薄膜部3となってフローセンサ10が完成する。
【0053】
この不純物層9の電気化学エッチングは基板1の面方位に依存したエッチングではなく等方性エッチングであるため、本実施形態でも、第2の角度θ2を90度に近づけることができる。従って、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
(他の実施形態)
上記各実施形態ではフローセンサ10の製造方法に本発明を適用したが、フローセンサ以外にも、一般的に基板に半導体プロセスを用いて形成される薄膜部を有するセンサに対して本発明を適用することができ、例えば、赤外線センサや湿度センサ、ガスセンサ等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るフローセンサの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るフローセンサの製造工程を示す概略断面図である。
【図3】第2実施形態に係るフローセンサの製造工程を示す概略断面図である。
【図4】第3実施形態に係るフローセンサの製造工程を示す概略断面図である。
【図5】従来のフローセンサの概略断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…空洞部、3…薄膜部、8…薄膜層、9…不純物層。
Claims (4)
- 基板(1)の表面全面に不純物がドーピングされた不純物層(9)をエピタキシャル成長により形成する工程と、
前記不純物層の上に、絶縁膜の間に導体膜が挟まれてなる薄膜層(8)を形成する薄膜層形成工程と、
その後、前記基板の裏面側から、前記基板の面方位に依存したエッチングを行って前記不純物層を露出させ、前記基板の表面側から前記薄膜層をエッチングにより部分的に除去して開口部を形成し、前記不純物層を露出させた後、前記薄膜層の開口部から前記不純物層に直接通電し、前記露出した不純物層を電気化学エッチングにより除去して前記薄膜層の絶縁膜を露出させ、空洞部(2)を形成することにより、前記空洞部上に前記薄膜層からなる薄膜部(3)を形成する薄膜部形成工程とを有することを特徴とする薄膜部を有するセンサの製造方法。 - 前記基板として、Siからなる<100>基板を使用し、前記空洞部において前記基板の<111>面を露出させることを特徴とする請求項1に記載の薄膜部を有するセンサの製造方法。
- 前記不純物層としてボロンを10 19 /cm 3 程度ドーピングさせてエピタキシャル成長させた層を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜部を有するセンサの製造方法。
- 前記薄膜部を有するセンサは、エアフローセンサとして用いられるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の薄膜部を有するセンサの製造方法。
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