JP4639340B2 - 生体有機体の生産方法および培養容器 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞、組織等の生体有機体を生産する方法に関し、詳しくは、液滴中で所定の生体有機体を培養することを包含する方法に関する。
本国際出願は2005年3月30日に出願された日本国特許出願第2005−099509号および2005年8月25日に出願された日本国特許出願第2005−244946号に基づく優先権を主張しており、これら出願の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
いわゆる再生医療を普及させるためには、目的とする細胞や組織を正常な形態・機能を保持した状態で培養する技術の発展が不可欠であり、特に細胞を組織化培養して目的の組織を再現するティッシュエンジニアリング技術の進展が期待されている。
ティッシュエンジニアリング分野における課題の一つとして、目的とする組織や器官に分化(組織化)する機能を維持した状態で細胞(特にES細胞その他の幹細胞)や細胞塊(部分的に組織化した集塊物を包含する。以下同じ。)を立体的に培養(3次元培養)する方法と該方法に使用される培養容器の確立が挙げられる。一般的な2次元培養方法、例えば平坦なペトリディッシュ上で細胞や組織を培養する方法では、培養物が重力を受けて薄いシートのような形状になり易く、3次元環境である生体内で正常に機能させたい組織の培養には適さない。
また、ES細胞(胚性幹細胞)その他の幹細胞の分化(組織化)のメカニズムを解明するうえで幹細胞や細胞塊の培養方法(3次元培養方法)と培養用機器の確立は重要である。特に動物細胞の多くは接着性細胞であるため、従来の方法では浮遊状態で長期間培養することは困難であった。
従来、この種の細胞の3次元培養は、ガラスビーズ、金属片、無機多孔質体のような様々な培養担体を用いて行われている(日本国特許出願公開公報第2004−267562号)。しかしながら、このような担体は、対象とする細胞(組織)の増殖を阻害しないものに制限されることに加え、培養装置の構成を複雑化する要因となる。また、担体を利用した3次元培養法では、担体と培養物とを分離することが難しく、且つ、同一の形態及び機能を有する細胞・組織の大量培養は一般に困難である。
他方、このような担体を使用しない従来の方法として、懸垂液滴法(Hanging
Drop:HD法)が挙げられる。かかるHD法では、培養液が半球状になることによって該培養液中で細胞を接触・凝集させて3次元的細胞塊を形成することができる。しかし、HD法で形成可能な半球状培養液は少量に限られる。また、HD法では慎重な操作が要求され、培養成功率は熟練者でも60%程度に過ぎない。
HD法よりも操作が容易な方法として、適当な表面処理を施して細胞接着性を低下させたU底形状の容器(典型的にはU底マルチウェルプレート)を用いる方法が挙げられる。例えば日本国特許出願公開公報第2004−254622号には、この方法の改良技術の一つとして、ES細胞の培養に適するように工夫されたU底形状の培養容器が記載されている。しかし、このようなU底形状の容器を用いて培養した場合、細胞塊が形成され難く、培養期間も長くなりがち(即ち培養細胞の生育速度が遅い)である。
そこで本発明は、従来の3次元培養技術がかかえる問題を解消すべく創出されたものであり、その目的は簡便に、好ましくは迅速に、所望する性状の生体有機体(細胞、細胞塊、分化後の組織、等)を培養し得る培養容器を提供することである。また、他の目的は、そのような容器を用いて目的の生体有機体を効率よく生産する方法を提供することである。
本発明により提供される一つの方法は、所定成分の培養液から成る液滴中で生体有機体を生産する方法である。この方法は、撥水性表面を有する基材上に非固着状態でほぼ球形状の液滴を配置すること、および、その液滴中で生体有機体を培養することを包含する。
本明細書において「生体有機体」とは、生体を構成する有機体であって、培養可能なものを指す総称である。ヒトその他の動物、植物、微生物から採取された種々の細胞(幹細胞、体細胞、生殖細胞等)、組織(培養中に生じる細胞塊や分化した組織体を含む)はここでいう生体有機体に包含される。
本発明の生産方法では、所定の基材に形成された撥水性表面上に所望する組成(例えば生理食塩水のような緩衝液、pH7付近の培養液)の液滴を配置する。この方法では、液滴を配置する表面が撥水性表面(即ち超撥水性表面)であるため、その液滴はほぼ球形状(好ましくは真球形状)の形態を維持することができる。そして、ここで開示される方法では、その球形状の液滴中で目的の生体有機体である細胞若しくは組織を培養する。ここで開示される生産方法では、球形状液滴が生体有機体である細胞若しくは組織の培養に好適な3次元環境を提供する。これにより、上記のような担体を使用することなく所望する形態(例えば分化後の形態)、機能、フェノタイプ等を維持した生体有機体である細胞若しくは組織を培養及び生産することができる。また、使用する液滴の数を増やすことにより、単純な構成で大量で且つ同一性状の生体有機体(細胞若しくは組織)を生産することができる。
好ましくは、上記液滴の真下部分にガスが供給可能な状態として該液滴中で培養を行う。ガス交換が行われ易い環境下に配置されたほぼ球形状の液滴を培養の場とすることにより、例えば種々の幹細胞(胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、肝幹細胞その他種々の体性幹細胞)の増殖、分化を促進することができる。また、分化誘導後の形態を維持し、所望する性状の細胞塊(クラスター)、組織を得ることができる。例えばここで開示される方法によって、MSC、ES細胞等の幹細胞より軟骨細胞(或いは骨芽細胞)への分化、さらには軟骨組織(或いは骨組織)を形成することができる。
従って、本発明は他の側面として、液滴をほぼ球形状に保ち得る撥水性の表面を有する基材上にほぼ球形状の液滴を形成し、且つ、該液滴の真下部分にガスが供給可能な状態として該液滴中で少なくとも一種の幹細胞を培養すること、および、その液滴中で該幹細胞を分化させること、を包含する幹細胞由来の分化した生体有機体である細胞若しくは組織の生産方法を提供する。好ましい一態様では、幹細胞由来の分化した細胞若しくは組織は軟骨細胞又は軟骨組織である。
ここで開示される方法の好ましい他の一態様では、上記撥水性表面が上記基材の表面に形成された疎水性部分を有する化合物から成る撥水層によって構成されていることを特徴とする。かかる撥水性表面が所定の化合物から構成される撥水層(好ましくは単分子層)であることにより、実際に液滴を配置し得る所定の区域内における撥水性表面(撥水層)をほぼ一定の厚さとし、その撥水性能を均一にすることができる。
ここで開示される方法の好ましい他の一態様では、上記液滴の容積は少なくとも200μLである。液滴の容積を200μL以上(上限は液滴を構成する液の粘性等によって異なり得る。例えば200〜1000μL。)とすることによって、効率よく所望の生体有機体(細胞若しくは組織)を生産することができる。
ここで開示される方法の好ましい他の一態様では、上記液滴中で培養する生体有機体は、少なくとも一種の幹細胞及び/又は該幹細胞から分化した細胞若しくは組織(細胞が凝集した細胞塊の段階のものを含む。)である。この方法では、球形状液滴を培養の場とすることにより、種々の幹細胞(胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、肝幹細胞その他種々の体性幹細胞)の増殖、分化を促進することができる。また、分化誘導後の形態を維持し、所望する性状の細胞塊(クラスター)或いは組織を得ることができる。例えばここで開示される方法によって、MSC、ES細胞等の幹細胞より軟骨細胞(或いは骨芽細胞)への分化、さらには軟骨組織(或いは骨組織)を形成することができる。
従って、本発明は、撥水性表面を有する基材上に非固着状態でほぼ球形状の液滴を配置し、その液滴中で少なくとも一種の幹細胞を培養すること、および、その液滴中で該幹細胞を分化させることを包含する、幹細胞由来の分化した細胞若しくは組織の生産方法を提供する。好ましい一態様では、上記幹細胞由来の分化した細胞若しくは組織は軟骨細胞又は軟骨組織である。
ここで開示される方法は、生産対象の生体有機体である細胞若しくは組織の性状に応じて、種々の態様で液滴培養を行うことができる。好ましい一態様では、液滴を撥水性表面上に静置した状態で生体有機体である細胞若しくは組織を培養することができる。また、好ましい他の一態様では、液滴を撥水性表面上で連続的又は断続的に移動させつつ(典型的には撥水性表面上を転がせつつ又は滑らせつつ)生体有機体である細胞若しくは組織を培養することができる。
また、本発明は、生体有機体である細胞若しくは組織を所定成分の培養液から成る液滴中で生産するために用いられる培養用容器であって、非固着状態でほぼ球形状の液滴を配置可能な撥水性表面により構成された液滴配置部を備える容器を提供する。好ましくは上記液滴が上記液滴配置部の外に流出するのを防ぐために該液滴配置部の周囲に設けられた撥水性表面を備えた周壁又は障壁部をさらに備える。
ここで開示される培養容器は、基材表面が上記撥水性(超撥水性)を備える結果、所望する組成の培養液(例えば生理食塩水のような各種の緩衝液を包含する。)を滴下することにより、ほぼ球形状の液滴を基材上に形成・配置することができる。ほぼ球形状の液滴は生体有機体である細胞若しくは組織の培養に好適な3次元環境を提供する。このため、従来のHD法のように煩雑な操作を行うことなく、簡便に、所望するサイズのほぼ球形状(好ましくは真球形状)の液滴を形成し、その液滴中で所望する生体有機体である細胞若しくは組織の3次元培養を容易に行うことができる。このような容器を用いることによって、ここで開示されるいずれかの生体有機体生産方法を好適に実施することができる。
好ましくは、上記液滴配置部に配置された液滴の真下にガスが供給可能に形成された基材を備え、その基材における少なくとも上記液滴と接触可能な表面は、液滴をほぼ球形状に保ち得る撥水性(即ち超撥水性)を有する。
このような構成によって、基材上に配置されたほぼ球形状の液滴の真下にガス(典型的には空気)を供給する(存在させる)ことができる。従って、従来のU底型マルチウェルプレートを使用した培養とは異なり、所定の位置に配置した液滴の下面(底)からも積極的に液滴(培地)のガス交換を図ることができる。このため、この態様の培養容器によると、ガス交換に優れる環境におかれた液滴中で生体有機体である細胞若しくは組織の増殖又は成長速度を早めることができる。従って、所望する生体有機体(例えば幹細胞由来の細胞塊や組織化片)の生産効率を向上させることができる。
ここで開示される培養容器の好ましい一態様では、上記液滴配置部に配置された液滴の真下にガスを供給可能な通気孔が形成されている。所定の位置に保持された液滴の真下に通気孔が存在することによって、当該液滴のガス交換効率を向上させることができる。
ここで開示される培養容器の好ましい他の一態様では、上記基材には、所定の間隔で配列し且つ上記撥水性の表面を有する複数の突起部が形成されており、上記液滴の真下部分が上記基材から浮いた状態で上記複数の突起部上に該液滴が配置されるように構成されている。上記突起部上に配置され得る液滴の容積が少なくとも100μLであるように構成された培養容器が特に好ましい。
かかるいくつかの突起部で支えた状態(即ち液滴の真下部分が基材から浮いた状態)で液滴を基材上に配置することによって、液滴と容器(基材)との接触面積をより減少させることができる。このため、ガス交換に優れ、生産効率のよい液滴内培養を行うことができる。
ここで開示される培養容器の好ましい他の一態様では、上記基材は、液滴をほぼ球形状に保ち得る撥水性の表面を有するメッシュ部を備えており、そのメッシュ部に上記液滴を配置した際には該液滴の真下部分が該メッシュ部の空隙部分に配置されるように構成されている。
このような撥水性表面を有するメッシュ部上にほぼ球形状の液滴を配置することによって、液滴と容器(基材)との接触面積をより減少させることができる。このため、ガス交換に優れ、生産効率のよい液滴培養を行うことができる。
ここで開示される培養容器の特に好ましい一態様では、上記撥水性表面は、疎水性部分を有する化合物から成る撥水層によって構成されている。撥水性の表面が所定の化合物から構成される撥水層(好ましくは単分子層)であることにより、実際に液滴を配置し得る所定の区域内における撥水性表面(超撥水層)をほぼ一定の厚さとし、その撥水性能を均一にすることができる。
図1は、撥水性表面上に配置されたほぼ球形状の液滴(容量:10,30,40,50,70,90,100,150,200μL)の形態を示す写真である。 図2は、本発明の生体有機体生産方法で用いられる培養用容器(基材)の作製と、その一使用形態を説明する模式図である。 図3は、一つの実施形態に係る培養容器の外形を模式的に示す平面図である。 図4は、図3のIV−IV線断面図である。 図5は、他の一つの実施形態に係る培養容器の外形を模式的に示す平面図である。 図6は、他の一つの実施形態に係る培養容器の外形を模式的に示す斜視図である。 図7は、他の一つの実施形態に係る培養容器の外形を模式的に示す図であり、図7(A)はその平面図、図7(B)はその側面図である。 図8は、他の一つの実施形態に係る培養容器の外形を模式的に示す側面図である。 図9は、一実施例に係る培養用容器(ペトリディッシュ)の外形と、その使用形態(液滴を撥水性表面に配置した状態)を示す写真である。 図10は、一実施例に係る本発明の方法で培養されたヒト間葉系幹細胞から成る細胞塊(クラスター)を示す顕微鏡写真である。 図11は、一実施例に係る本発明の方法で培養されたヒト間葉系幹細胞から分化した軟骨細胞から成る細胞塊(クラスター)を示す顕微鏡写真である。 図12は、一実施例に係る本発明の方法で培養されたヒト間葉系幹細胞から分化した軟骨細胞から成る細胞塊(クラスター)のトリパンブルー染色後の状態を示す顕微鏡写真である。 図13は、一実施例に係る本発明の方法で培養されたヒト間葉系幹細胞から分化した軟骨形成体(軟骨組織)を示す顕微鏡写真である。 図14は、撥水性表面を有さない培養用容器(ペトリディッシュ市販品)で培養されたヒト間葉系幹細胞を示す顕微鏡写真である。 図15は、一実施例に係る本発明の方法でマウスES細胞を培養したときの培養1日目の状態を示す顕微鏡写真である。 図16は、一実施例に係る本発明の方法でマウスES細胞を培養したときの培養2日目の状態を示す顕微鏡写真である。 図17は、一実施例に係る本発明の方法でマウスES細胞を培養したときの培養3日目の状態を示す顕微鏡写真である。 図18は、一実施例に係る本発明の方法でマウスES細胞を培養したときの培養7日目の状態を示す顕微鏡写真である。 図19は、実施例5に係る培養容器に配置された液滴の状態を示す写真である。 図20は、実施例6に係る培養容器に配置された液滴の状態を示す写真である。 図21は、実施例5に係る培養容器(液滴中)でマウスES細胞を培養したときの培養3日目の状態を示す顕微鏡写真である。 図22は、比較例として使用した96マルチウェルプレートのウェル中でマウスES細胞を培養したときの培養3日目の状態を示す顕微鏡写真である。 図23は、実施例8に係る3種類(撥水膜形成時のガス圧条件が異なる)の培養容器(液滴中)でそれぞれマウスES細胞を培養したときの培養1日目及び2日目の状態を示す顕微鏡写真である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、培養容器(基材)の形状、撥水性表面の構成とその形成方法、生体有機体の液滴中での培養方法)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、培養する生体有機体や培地の入手方法若しくは調製方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示される生体有機体生産方法は、所望する生体有機体を培養するのに適当な材質の基材(例えば一般的な合成樹脂製の培養用容器)に形成された撥水性表面上で、ほぼ球形状の液滴を非固着状態(典型的には液滴が撥水性表面に弾かれてほぼ球形状を維持しつつ移動可能な状態である。)で培養することで特徴付けられる方法であり、液滴の組成、或いは生産対象たる生体有機体の種類については特に限定はない。
上述のとおり、ここで開示される方法は、幹細胞の分化を誘導するのに好適な培養方法(3次元培養方法)であり得るため、好適な生体有機体として種々の幹細胞が挙げられる。ヒト由来又は他の哺乳動物(マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、その他家畜動物)由来の胚性幹細胞(ES細胞)、EG幹細胞、体性幹細胞、例えば間葉系幹細胞、造血幹細胞、肝幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞、角膜上皮幹細胞、等が好適である。また、幹細胞以外の細胞も本発明の方法によって所望する性状のまま培養・生産することができる。例えば、間葉系幹細胞から分化される骨格形成細胞(軟骨細胞、骨芽細胞)、筋管細胞、脂肪細胞が好適例として挙げられる。
また、被検体から直接採取した或いは適当な幹細胞から分化させた種々の組織(又は細胞塊)を本発明の方法によって好適に培養・生産することができる。例えば、軟骨組織、骨組織、筋組織、歯周組織、角膜組織、血管組織、或いは何れかの組織になり得る細胞塊が好適例として挙げられる。
本発明を実施する際に用いられる液滴(水滴)は、生体有機体を培養し得る水、緩衝液、種々の培地であり得る。使用する液滴の組成は、細胞培養や組織培養で従来採用されているものであればよく、特別な組成を必要としない。培養(生産)目的の生体有機体に適する組成の培地を適宜選択して用いることができる。また、液滴形成用液には、生体有機体の培養を阻害しない限りにおいて種々の添加物を添加することができる。例えば、各種の養分(ビタミン等の無機成分、血清等の有機成分)の他、分化誘導剤、pH調整剤、防腐剤、粘性制御剤、酸化防止剤、香料、色素、等を添加することができる。
液滴のサイズ(容積)は、その中で培養する生体有機体の性状、液滴を構成する液の物性、撥水性表面を有する基材(培養用容器)の形状或いは撥水性表面の撥水性能、等により異なり得る。100μL以上が適当であり、200μL以上(例えば200〜1000μL)が好ましい。500μL以上(例えば500〜1000μL)で生体有機体を培養すると、生産効率を向上させることができる。
ここで開示される生体有機体生産方法に用いられる培養用容器は、適当な基材(容器本体)とその表面の一部(典型的には周壁に又は障壁部によって包囲された液滴載置部)に形成された撥水性表面とを有することで特徴付けられる容器(例えばペトリディッシュ、マイクロタイタープレート)であり、培養液即ち液滴が載置される部位は、撥水性表面で形成される。基材(容器本体)の材質、サイズ、形状、等は目的に応じて異なり得る。
かかる容器を製造するために用いられる基材(容器本体)としては、細胞を培養するために用いられている従来公知の種々の基材を特に制限なく採用することができる。例えば、基材を構成する材質としては、ガラス、シリコン、セラミックス、金属、及び高分子材料が挙げられる。一般的なシリカガラス製の基材を好適に用いることができる。また、セラミックス、例えば、シリカ、アルミナ又はアパタイト製の基材が好適材料として挙げられる。また、金属、例えば、金、銀、又は銅製の基材が好適材料として挙げられる。また、高分子材料、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリイミド、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びこれらの誘導体製の基材が好適材料として挙げられる。また、これら高分子材料(合成樹脂)製の基材の他、絹フィブロインフィルム製基材を用いてもよい。このような適当な材質から成る基材(容器本体)の少なくとも一部(典型的には液滴を載置する基材上面となり得る部位の全部又は一部)に撥水性表面が形成される。
撥水性表面を基材上に形成する手段は特に限定されず、生体有機体の培養を阻害しない撥水処理剤(例えばフッ素系樹脂皮膜形成剤)を用いて基材表面を撥水処理することができる。接触角(水接触角)は120°以上が適当であり、130°以上が好ましく、140°以上がさらに好ましく、接触角(水接触角)が150°以上(例えば150〜160°)である超撥水性表面の形成が特に好ましい。このような高い接触角が実現される撥水性表面によると通常の培地から成る比較的高容積の液滴(水滴)をほぼ球形状(典型的には真球形状)に保つことができる。尚、接触角は、従来公知の種々の手段によって測定することができる。例えば、蒸留水の静的接触角(例えば液滴直径約2mm)を液滴法により25℃の雰囲気下で接触角計(例えば、協和界面科学株式会社製の「CA‐X150型」)を用いて測定することができる。
図1は、上記測定において蒸留水の静的接触角(液滴直径約2mm)が150°以上である撥水性表面に種々の容量の水を滴下したときの液滴の状態(球形状)を示した写真である。図(写真)から明らかなように、10〜30μLの液滴は、かかる撥水性表面においてほぼ真球形状の形態である。さらに、このようなレベル(上記静的接触角150°以上)の撥水性表面では、例えば100〜200μLといった比較的大容量の液滴であってもほぼ球形状に保つことができる。即ち、図1に示す各容量の液滴はいずれも本明細書における「ほぼ球形状の液滴」に包含される典型例である。
好ましくは、疎水性部分を有する化合物から成る撥水層を基材表面に形成する。これにより、長期にわたって好適な撥水性能を発揮する撥水性表面を基材に導入することができる。そのような化合物から成る単分子層が特に好ましい。
撥水層は、疎水性部分(典型的には疎水性基)を有する従来公知の種々の高分子化合物から形成することができる。例えば、基材に結合可能な官能基と、置換された又は置換されていないアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等(Cの数は1以上、好ましくはCの数が5以上、例えば10〜30のような比較的長い炭素鎖)を有する高分子物質が好適に用いられる。
このようなアルキル(或いはアルケニル又はアルキニル)鎖を有する化合物は、基材表面に結合させた際にそれら鎖間のファンデルワールス力によって容易に高密度及び高配向の単分子層(即ち自己組織化単分子層;self-assembled monolayer)を形成することができる。また、疎水性部分であるアルキル基等(例えば、Cの数が1〜30)の存在により、高い撥水性を発揮し得る。
例えば、基材が、その表面(培養床)にシラノール基を備えたシリコン製である場合、撥水層を形成する化合物としては、比較的鎖長の長い主鎖又は側鎖を有し、メトキシ基のような培養床に結合可能な官能基(好ましくは培養床表面に存在する反応性基と結合する)を有する有機ケイ素化合物が好適である。例えば一般式:C2n+1Si(OC2m+13で示されるアルキルトリアルコキシシラン(好ましくはnが10〜30から選択される何れかの自然数であり、mが1又は2である。)が好適例として挙げられる。
また他の好ましい化合物の例としては、基材に結合可能な官能基と、一部又は全部がフッ素置換されたアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基等を備えた有機化合物が挙げられる。比較的長いアルキル(或いはアルケニル又はアルキニル)鎖を有する化合物は、単分子層を容易に形成し得るため特に好ましい。フッ素の置換率は特に限定されないが、アルキル鎖を構成する水素原子の過半数(例えば70個数%以上の水素原子)又は実質的にほぼ全ての水素原子がフッ素原子で置換されているものが好ましい。例えば、前記一般式で示されるアルキルトリアルコキシシランにおいて、アルキル鎖を構成する水素原子の70個数%以上の水素原子がフッ素に置換されたものが好適である。
基材表面(液滴載置部)に上記のような化合物から成る撥水層を形成する手段としては、従来公知の方法を特に制限なく適用することができる。
典型的には、先ず、基材の表面に対して、化学処理、プラズマ処理、紫外光照射処理等の活性化処理を施して目的の化合物を基材表面に化学的に結合させるための種々の反応性基(表面官能基)を基材表面に導入する。例えば、基材がシリコン等である場合、好ましくは例えば大気中又は減圧条件下で真空紫外光を照射して基材表面を親水化(具体的にはシラノール基即ち水酸基を導入)する。また、酸素を含む雰囲気中で照射処理した場合には、当該紫外光照射により雰囲気酸素から発生したオゾンによって基材表面に残存する有機含有物を除去することができる。次いで、活性化された基材を有機化合物の気相中において処理し、有機化合物を基材上において成長させ、撥水層を形成することができる。
或いは、図2に模式的に示すように、有機化合物から成る原料ガスをプラズマ状態にし、この活性プラズマを利用して、気相中および基材表面での化学反応により薄膜形成を行うプラズマCVD法の採用が好ましい。この方法によると、室温付近の温度で基材102の表面に撥水性表面(超撥水層)104を形成することができる。従って、例えば耐熱性の低い高分子材料(合成樹脂)製の基材(例えばポリスチレン製ペトリディッシュ或いはマルチウェルプレート)102に撥水層104を形成するのに好適である。
撥水層として、有機化合物が所定方向に配向する単分子層を形成することが好ましい。単分子層とすることにより、層の厚さを一定とし、かつ均一な撥水性能を付与することができる。撥水層が単分子層よりも成長した場合には、所望により、過剰に吸着した分子を除去して単分子層に形成することができる。この単分子層形成手段としては、特に限定されず、使用した物質に応じて酸処理、アルカリ処理、水洗処理等を適宜組み合わせて行うことができる。
次に、本発明によって提供される培養用容器の好適な幾つかの実施形態を図面を参照しつつ説明する。
撥水性表面が形成される部分の好ましい一つの形態では、液滴の真下部分に空気その他のガスが供給(即ち存在)可能な空間が形成される。例えば、後述するような、通気孔を基材の一部(液滴配置部)に設けた形態が好ましく、或いは、球形状液滴を支える支持台に相当する突起部を適当な間隔で基材上面に設けた形態が好ましく、或いは、紐状基材で構成されるメッシュ状(メッシュを構成する細孔の大きさは均一でも不均一でもよい)の形態も好ましい。例えば、好適な一実施形態として、図3及び図4に示すような形態の培養容器1が挙げられる。この培養容器1は、ポリスチレン等の合成樹脂製である矩形プレート状基材2を容器本体とする。図示しないが、液滴配置部(即ち基材2の上面)を覆う蓋を備えてもよい。
図3及び図4に示すように、この基材2の上面には、矩形格子状に配列する複数の突起部(障壁部)4が形成されている。図3に示すように、突起部4の頂部は半球状に丸く形成されている。この基材2の上面ならびに突起部(障壁部)4の表面は、後述するような処理によって撥水性(好ましくは水接触角が130°以上、特に好ましくは150°以上の超撥水性)が付与されている。図示されるように、隣接する4つの突起部(障壁部)4に囲まれた基材上面部分(図3に符号7で示す点線部分参照)の中央部分には、それぞれ、矩形プレート状基材2の上面側から下面側へ貫通する通気孔6が形成されている。
以上の構成の結果、本実施形態に係る培養容器1では、隣接する4つの突起部(障壁部)4に囲まれた通気孔6を含む部分が、液滴配置部7を構成する。
即ち、図4に示すように、比較的少ない容量の培養液をかかる液滴配置部7に供給した場合、基材表面の撥水性によって培養液はほぼ球形状の液滴D2を形成し、非固着状態で当該部分に球形状を保ったまま保持される。このとき、液滴D2の直径が隣接する2つの突起部4間の隙間よりも大きければ、液滴配置部7周囲の突起部が障壁部となって当該液滴配置部7から液滴(培養液)が流出するのを防止することができる。液滴D2が接触する可能性のある周囲の基材2表面が全て撥水性であることによって、液滴D2の球形状が変化せずに維持されるからである。
このように、本実施形態に係る培養容器1では、比較的小さいサイズ(即ち、隣接する2つの突起部6間の隙間よりも大きく且つ隣接する4つの突起部(障壁部)4に囲まれた部分よりも小さい直径)の液滴D2を基材表面の所定の位置に安定的に保持することができる。このため、そのような保持部位を多数設けることによって、1つの培養容器1の基材2の表面に、数多くの液滴D2を互いに融合させることなく位置決めし、配置することができる。更に、所定の液滴配置部7に配置された液滴D2の真下に通気孔6が設けてあるため、液滴D2の下部においても良好なガス交換を実現することができる。従って、本実施形態に係る培養容器1を用いることによって、効率よく目的の生体有機体を培養・生産することができる。
なお、通気孔6の開口径は、所望するサイズの液滴の形状が保たれ且つ液滴の真下を含む下面側から良好なガス交換が行われる限り特に限定はないが、通気孔の平均直径は概ね0.1mm〜2mm程度であることが好ましく、0.2mm〜1mm程度であることが特に好ましい。
また、上記構成の本実施形態に係る培養容器1では、隣接する4つの突起部4を支持部として、その上に比較的大きな直径の液滴を保持することができる。
具体的には、図3において点線で示す液滴配置部7の外周を構成する相互に隣接する4つの突起部4の半球状頂部が支持ポイントとなるように、培養液を供給する。このとき、培養液供給量を適当に調整することによって、当該4つの突起部4から成る四角形(図3の符号7で示す点線参照)の対角線上に並ぶ2つの突起部4の間の距離よりも大きい直径の液滴D1を形成することができる。
而して、かかるサイズの液滴D1は、当該4つの突起部4に囲まれた部分(上記液滴配置部7)に入り込むことはできず且つ液滴D1が接触する可能性のある周囲の基材2表面(即ち突起部4の表面)は全て撥水性であることから、結果として、ほぼ球形状を保ったまま図3に示すように、相互に隣接する4つの突起部4の半球状頂部の上で保持される。
このように、本実施形態に係る培養容器1では、比較的大きいサイズ(即ち、隣接する4つの突起部4から成る四角形の対角線上に並ぶ2つの突起部4の間の距離よりも大きい直径)の液滴D2を突起部4上に安定的に配置しておくことができる。このため、そのような突起部4(配置部位)を多数設けることによって、1つの培養容器1の基材2上に、数多くの液滴D1を互いに融合させることなく位置決めし、配置することができる。そして、このような状態で配置すると、液滴D1の真下部分が基材2から浮いた状態(図4参照)となるため液滴D1の下部においても良好なガス交換を実現することができる。
従って、本実施形態に係る培養容器1を用いることによって、効率よく目的の生体有機体を培養・生産することができる。
特に限定するものではないが、上記のような突起部の配列間隔(即ち隣接する2つの突起部間の距離)は、突起部上に概ね50μL以上、好ましくは100μL以上の液滴が配置されるように決定することが生体有機体の生産効率向上の観点から好ましい。例えば、隣接する2つの突起部間の距離は0.1mm〜2mm程度が好ましく、0.2mm〜1mmであることがより好ましい。
なお、突起部4は、上述のような矩形格子状に基材2表面に配列されたものに限られない。例えば、上記実施形態の変更例である図5に示す培養容器10のような配列形態でも同様の効果が得られる。
即ち、図5に示す培養容器10では、矩形プレート状基材12の上面に斜め(菱形)格子状に複数の突起部(障壁部)14が形成されている。図示されるように、隣接する3つの突起部(障壁部)14に囲まれた基材上面部分(図5に符号17で示す点線部分参照)の中央部分に通気孔16が形成されている。この形態の培養容器10では、隣接する3つの突起部(障壁部)14に囲まれた通気孔6を含む部分が、液滴配置部17を構成する。従って、図3及び図4に示す上述の実施形態と同様、比較的少ない容量の培養液をかかる液滴配置部17に供給した場合には、基材表面の撥水性によって培養液はほぼ球形状の液滴(図示せず)を形成し、非固着状態で当該部分に球形状を保ったまま保持される。このとき、液滴の直径が隣接する2つの突起部14間の隙間よりも大きければ、液滴配置部17周囲の突起部14が障壁部となって当該液滴配置部17から液滴(培養液)が流出するのを防止することができる。
一方、本実施形態に係る培養容器10では、隣接する3つの突起部14を支持部として、その上に比較的大きな直径の液滴を保持することができる。即ち、培養液供給量を適当に調整することによって、図5において点線で示す液滴配置部17の外周を構成する相互に隣接する3つの突起部14から成る三角形の隣接する2つの突起部14の間の距離よりも大きい直径の液滴(図示せず)を形成することができる。かかるサイズの液滴は、当該3つの突起部14に囲まれた部分(液滴配置部17)に入り込むことはできず且つ液滴が接触する可能性のある周囲の基材12表面(即ち突起部14の表面)が全て撥水性であると、当該隣接する3つの突起部14の半球状頂部の上で保持することができる。
本発明の培養容器の好適な形態は、上述の図3〜図5に示すような突起部を有するものに限られない。
例えば、図6に示すような、典型的には金属製又は樹脂製のメッシュ形状の基材22から成る培養容器20であってもよい。メッシュ状基材22の表面が本発明の実施に好ましい撥水性を有することによって、メッシュ上に所望するサイズのほぼ球形状の液滴を形成することができる。また、メッシュ状基材22の空隙(細孔)部分に液滴の下部(真下部分)が配置されることによって、液滴の真下を含む下面側からの良好なガス交換を実現することができる。特に限定はないが、メッシュ状基材22の空隙(細孔)部分の開口径(即ちメッシュサイズ)は、上記実施形態の通気孔の平均直径と同様、概ね0.1mm〜2mm程度であることが好ましく、0.2mm〜1mm程度であることが特に好ましい。
液滴を配置する部分がメッシュ状である限り、上記のような基材全体がメッシュ部で構成される必要はなく、基材(容器本体)の一部にメッシュ部を備えておればよい。
例えば、図7の(A)(B)に示すように、液滴を配置するメッシュ部34と、該メッシュ部34の裏面側周縁部に配置された支持台32とから成る基材31を備える培養容器30も本発明によって提供される好適な形態の培養容器である。このような形態であると、メッシュ部34の機械的強度を向上させ得るとともに、メッシュ部34裏面側(支持台32配置側)からメッシュ部34表面(上面)に配置された液滴の下面へのガス供給が良好に行われる。
また、図示していないが、メッシュ表面は図示されるようなフラットであるものに限られない。例えば、エンボス(凹凸)加工を施したものでもよい。メッシュ表面に凹凸があると当該凹部に液滴を配列することができるため、液滴の位置決めや所定位置での保持が容易となる。
或いは、図8に示すような、従来の一般的な培養チューブ形状の基材41であって、少なくとも液滴を配置する底部41aが所望の撥水性を有するメッシュ部である(図示するものはチューブ状基材41全体がメッシュ部で構成されている。)培養容器40も本発明によって提供される好適な形態の培養容器(培養チューブ)である。このような形態であると、取り扱い(特に持ち運び)が容易であり、また、同形状のチューブ状培養容器40を大量に用意することによって、同形状の液滴を同条件で省スペースで大量に培養・生産することができる。
以上、具体例を挙げて説明したが、本発明によって提供される培養容器は、容器本体(基材)の撥水性(超撥水性)表面上に所定の培養液を滴下することによって、ほぼ球形状の液滴が容易に形成される。液滴の形状がほぼ球形状(典型的には図1に示すような球形状)であることより、その液滴中で目的の生体有機体(例えば幹細胞)を3次元培養することができる。このため、かかる液滴中で幹細胞を所望の組織(細胞塊)に分化させることができる。例えば、適当な幹細胞(例えば間葉系幹細胞)から軟骨組織への分化を伴う生体有機体を生産することができる。
従って、ここで開示される生体有機体生産方法では、上述の図2に模式的に示すように、培養用容器(基材)102の撥水性表面104上に所定の培養液を滴下し、ほぼ球形状の液滴106を形成し、その液滴106中で目的の生体有機体(例えば幹細胞)を培養する。また、本発明の方法では、液滴6の形状がほぼ球形状(好ましくは図1に示すように真球形状)であることより、良好な3次元培養空間を提供する。このため、かかる液滴6中で幹細胞を所望の組織(細胞塊)に分化させることができる。ここで開示される方法の好ましい一例として、適当な幹細胞(例えば間葉系幹細胞)から軟骨組織への分化を伴う生体有機体生産方法が挙げられる。
培養条件は特に限定されず、生体有機体(細胞)の性状に応じて適宜選択される。例えば、ヒトを含む哺乳動物細胞又は組織の場合、室温から哺乳動物の体温(即ち、20〜40℃、好適には33〜38℃)程度の温度で静置培養することができる。或いは適当な振とう機108に培養容器(基材)102を配置し、適当な振とう(往復振とう、旋回振とう、等)を与え、連続的又は断続的に液滴を構成する培養液や培養物を流動させながら培養してもよい。また、培地のpH上昇を防止するために、培養雰囲気中のCO濃度をほぼ一定(例えば、3〜10%、特に5%程度)に保持するCOインキュベーター内において培養することが好適である。
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1>
一般的なプラズマCVD法によって、市販の組織培養用ペトリディッシュ(直径3.5cm、ポリスチレン(PS)製)の表面に撥水層(撥水膜)を形成した。なお、撥水層形成用原料としてトリメチルメトキシシラン(TMMOS)を使用した。また、プラズマ励起ガスとしてアルゴン(Ar)を用いた。即ち、容量結合型高周波プラズマ装置のチャンバー内に上記PS製ディッシュを配置した。そして、TMMOSのガス圧:50Pa、Arのガス圧:30Pa(合計80Pa)となるようにこれらをチャンバー内に導入するとともに、マイクロ波出力:300Wで5分間、マイクロ波プラズマを印加した。このときのペトリディッシュのPS表面の温度は50℃以下であった。
以上の処理により、PS製ペトリディッシュの周壁に囲まれた内面には、表面に疎水性基であるメチル基を有する撥水層が形成された。図9に示すように、この撥水性表面に滴下した水滴はほぼ真球形状であった。常法により接触角を測定したところ、150°又はそれ以上の水接触角であることが確認された。次に撥水性表面を有するペトリディッシュに紫外線を30分間照射し、滅菌処理を行った。
上記のようにして得られたペトリディッシュの撥水性表面上でヒト間葉系幹細胞を以下のようにして培養した。即ち、約2.5×10個の間葉系幹細胞を含むMSCGM培地(ヒト間葉系幹細胞用培地:三光純薬株式会社製品)500μLを上記滅菌処理済みペトリディッシュの撥水性表面に滴下し、ほぼ球形状の液滴とした。このディッシュを市販の振とう培養器に載せ、60〜70回/分の往復振とうを行いつつ5%CO雰囲気中、37℃で5日間培養した。
その結果、図10に示すように、液滴中に間葉系幹細胞から成る細胞塊(クラスター)が形成されていた。トリパンブルー染色の結果から、この細胞塊を構成する細胞の生存を確認した。なお、約2.5×10個の間葉系幹細胞を含むMSCGM培地250μL(即ち細胞濃度が2倍)の液滴を同様に培養した場合も同様の大きさの細胞塊が形成されていた。
<実施例2>
実施例1で作製したものと同様のペトリディッシュの撥水性表面上でヒト間葉系幹細胞を振とう培養した。即ち、約2.5×10個の間葉系幹細胞を含む軟骨細胞分化用調整培地(間葉系幹細胞用培地:三光純薬株式会社製品)500μLを上記滅菌処理済みペトリディッシュの撥水性表面に滴下し、ほぼ球形状の液滴とした。このディッシュを市販の振とう培養器に載せ、60〜70回/分の往復振とうを行いつつ5%CO雰囲気中、37℃で5日間培養した。
その結果、図11に示すように、液滴中に間葉系幹細胞から分化した軟骨細胞から成る細胞塊(クラスター)が形成されていた。トリパンブルー染色の結果から、この細胞塊を構成する細胞の生存を確認した(図12)。
<実施例3>
実施例1で作製したものと同様のペトリディッシュの撥水性表面上でヒト間葉系幹細胞を静置培養した。即ち、約2.5×10個の間葉系幹細胞を含む軟骨細胞分化用調整培地(間葉系幹細胞用培地:三光純薬株式会社製品)250μLを上記滅菌処理済みペトリディッシュの撥水性表面に滴下し、ほぼ球形状の液滴とした。このディッシュを5%CO雰囲気中、37℃で10日間培養した。
その結果、図13に示すように、液滴中に間葉系幹細胞から分化し、細胞塊から更に成長した軟骨形成体(軟骨組織)が確認された。最大で約1.5mmの軟骨形成体が確認された。
<比較例1>
上記撥水層(撥水膜)を形成する処理を行うことなく市販のペトリディッシュをそのまま使用して、実施例1と同様の条件でヒト間葉系幹細胞の培養を行った。
その結果、図14に示すように、間葉系幹細胞はペトリディッシュの表面に付着してしまい、培地中に上記各実施例でみられるような細胞塊は存在しなかった。
<実施例4>
実施例1で作製したものと同様のペトリディッシュの撥水性表面上でマウスES細胞を静置培養した。即ち、約1×10〜10個のマウスES細胞を含む市販のES細胞用培地(大日本製薬株式会社製品)500μLを上記滅菌処理済みペトリディッシュの撥水性表面に滴下し、ほぼ球形状の液滴とした。このディッシュを5%CO雰囲気中、37℃で培養した。その結果、図15〜18に示すように、培養1日目で凝集したES細胞の凝集が認められた(図15)。培養2日目及び3日目には直径が100〜150μmの細胞塊(クラスター)を形成した(図16、図17)。そして、培養7日目には細胞塊の直径は約500μmまで成長した(図18)。
<実施例5>
培養容器の基材として、市販のポリスチレン製96マルチウェルプレート(U底96穴マイクロタイタープレート)を用意した。このマルチウェルプレートの裏面(下面)側には、96穴のU底に対応した半球状頂部の突起部が正方格子状に規則的に配列している(図3、図19参照)。この凹凸のある裏面(以下「凹凸面」と略称する。)側に、一般的なプラズマCVD法によって撥水層(撥水膜)を形成した。なお、撥水層形成用原料としてトリメチルメトキシシラン(TMMOS)を使用した。また、プラズマ励起ガスとしてアルゴン(Ar)を用いた。
即ち、容量結合型高周波プラズマ装置のチャンバー内に上記マルチウェルプレートを配置した。そして、TMMOSのガス圧:50Pa、Arのガス圧:30Pa(合計80Pa)となるようにこれらをチャンバー内に導入するとともに、マイクロ波出力:300Wで5分間、マイクロ波プラズマを印加した。このときのマルチウェルプレートの凹凸面の温度は50℃以下であった。
以上の処理により、PS製マルチウェルプレートの凹凸面には、表面に疎水性基であるメチル基を有する撥水層が形成された。図19に示すように、この撥水性表面に滴下した水滴(確認容易のためにクリスタルバイオレット等の色素を含む)はほぼ真球形状であった。常法により接触角を測定したところ、150°又はそれ以上の水接触角であることが確認された。図19から明らかなように、比較的大きな直径の液滴は、隣接する4つの突起部で支持された状態で当該突起部上に配置されていた。次に撥水性表面を有する本実施例の培養容器に紫外線を30分間照射し、滅菌処理を行った。
<実施例6>
培養容器の基材として、市販の茶こしを用意した。図20に示すように、この茶こしは、金属製メッシュ部(網目(間隙)の平均サイズ:約1.5mm)と該メッシュ部の周縁部を保持するセラミック製の環状フレームとを備える。
この金属製メッシュ部に、実施例5と同様の手法によって、撥水層(撥水膜)を形成した。図20に示すように、この撥水性表面に滴下した水滴(色素を含む)はほぼ真球形状であった。常法により接触角を測定したところ、150°又はそれ以上の水接触角であることが確認された。
<実施例7>
上記のようにして得られた実施例5の培養容器を用いてマウスES細胞を以下のようにして培養した。
即ち、約10個のES細胞を含む市販のES細胞用培地(大日本製薬株式会社製品)150μLを上記実施例5の培養容器の突起部上に液滴として配置した。このプレートを5%CO雰囲気中、37℃で3日間培養した。比較対照として、実施例5で用いた市販のポリスチレン製96マルチウェルプレートのU底ウェル内に約10個のES細胞を含む上記ES細胞用培地150μLを注入し、同様の条件で培養した。その結果、図21に示すように、実施例5の培養容器で3日間培養した液滴中には、ES細胞が凝集した直径200μm以上の大きな細胞塊(クラスター)が形成されていた。トリパンブルー染色の結果から、この細胞塊を構成する細胞の生存を確認した。他方、図22に示すように、比較対照としてU底ウェルで培養した培養液中には、直径100μm以下の小さい細胞塊しか認められなかった。以上の結果から、本発明の培養容器を用いることによって、ES細胞等の生体有機体を効率よく生産し得ることが確認された。
<実施例8>
培養容器の基材として、実施例5で使用したものと同じポリスチレン製96マルチウェルプレート(U底96穴マイクロタイタープレート)を用意した。このマルチウェルプレートの裏面(即ち凹凸面)側に、一般的なプラズマCVD法によって撥水層(撥水膜)を形成した。
即ち、容量結合型高周波プラズマ装置のチャンバー内に上記マルチウェルプレートを配置した。本実施例では、撥水層形成用原料としてTMMOSを使用し、プラズマ励起ガスとしてArを用いた。本実施例ではチャンバー内におけるTMMOSのガス圧を全圧(TMMOS+Ar)の30%に設定した。なお、全圧は、60Pa、65Pa又は75Paに設定した。
このようなガス圧(TMMOSとArのモル分率)となるように、混合ガスをチャンバー内に導入するとともに、マイクロ波出力:300Wで5分間、マイクロ波プラズマを印加した。このときのマルチウェルプレートの凹凸面の温度は50℃以下であった。かかる処理によってPS製マルチウェルプレートの凹凸面には、表面に疎水性基であるメチル基を有する撥水層が形成された。撥水性表面の水接触角は150°以上であった。このプレート(培養容器)に紫外線を30分間照射し、滅菌処理を行った。
<実施例9>
上記のようにして得られた実施例8の培養容器を用いてマウスES細胞を以下のようにして培養した。
即ち、約4×10個のES細胞を含む市販のES細胞用培地(大日本製薬株式会社製品)20μLを、実施例8で得た培養容器の凹凸面にある隣接する4つの突起部(障壁部)に囲まれた空間(即ち図4中のD2で示す液滴の位置)に配置した。1プレートあたり6〜10個の液滴を配置した。配置された各液滴はほぼ真球形状を保っており、その液滴の直径は隣接する2つの突起部(障壁部)間の隙間幅よりも大きいため、その位置に安定して保持された。このプレートを5%CO雰囲気中、37℃で3日間培養した。
図23に示すように、上記ガス圧条件(チャンバー内の全圧が60Pa、65Pa又は75Pa)のプラズマCVD法によって撥水性表面を作製したプレートを用いた液滴培養では、いずれも培養時間の経過とともに液滴中のES細胞が順調に増殖し、凝集した直径100μm以上(好適には直径200μm以上)の大きな細胞塊(クラスター)が形成されていた。トリパンブルー染色の結果から、この細胞塊を構成する細胞の生存を確認した。培養3日後、このような細胞塊を予めゼラチンコートしておいたディッシュに移し、適当な培地で分化培養を行ったところ、いずれも胚様体(EB)に成長し、拍動が観察された。
<実施例10>
培養容器の基材として、実施例5で使用したものと同じポリスチレン製96マルチウェルプレート(U底96穴マイクロタイタープレート)を用意した。このマルチウェルプレートの裏面(即ち凹凸面)側に、一般的なプラズマCVD法によって撥水層(撥水膜)を形成した。本実施例では、撥水膜の形成に及ぼすガス圧の影響を調べた。
即ち、チャンバー内におけるTMMOSのガス圧を全圧(TMMOS+Ar)の30%に設定するとともに全圧を(1)95Pa、(2)75Pa、(3)65Paに設定した場合、並びに(4)全圧を75Paと設定し且つArを全圧の30%(従ってTMMOSのガス圧は70%)とした場合について、上記と同様のプラズマCVD法を行い、プレートの裏面(即ち凹凸面)側に撥水層(撥水膜)を形成した。撥水膜形成後、市販の装置を使用して撥水膜の厚さ及び表面粗さ(中心線平均粗さRa及び自乗平均平方根粗さRrms)を計測した。結果を表1に示す。本実施例の結果(表1)から明らかなように、本発明では、表面粗さ(例えばRa)が50nm以上(例えば50〜70nm)であり厚さが200nm以上(例えば200〜300nm)であるような、生体有機体の液滴内培養に適する撥水膜(即ち超撥水性表面)を提供することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
上述したように、本発明によって提供される生体有機体生産方法及び培養用容器は、目的とする組織や器官に分化(組織化)する機能を維持した状態で細胞(特にES細胞その他の幹細胞)及び細胞塊(組織化した胚様体を含む)を好適に培養することができる。従って、本発明によって提供される生体有機体生産方法及び培養用容器は、医療産業上、高い利用価値を有する。

Claims (14)

  1. 所定成分の培養液から成る液滴中で細胞若しくは組織を生産する方法であって、
    撥水性表面を有する基材上に非固着状態でほぼ球形状の液滴を配置すること、および
    前記液滴中で細胞若しくは組織を培養すること、
    を包含し、
    ここで前記液滴中での培養は、該液滴の真下部分にガスが供給可能な状態として行うことを特徴とする、細胞若しくは組織の生産方法。
  2. 前記撥水性表面は、前記基材の表面に形成された疎水性部分を有する化合物から成る撥水層によって構成されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記液滴の容積は少なくとも200μLである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記液滴中で培養する細胞若しくは組織は、少なくとも一種の幹細胞及び/又は該幹細胞から分化した細胞若しくは組織である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記液滴中で少なくとも一種の幹細胞を培養し、該液滴中で該幹細胞を分化させる、請求項4に記載の方法。
  6. 前記幹細胞由来の分化した細胞若しくは組織は、軟骨細胞又は軟骨組織である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記液滴を前記撥水性表面上に静置した状態で細胞若しくは組織を培養する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記液滴を前記撥水性表面上で連続的又は断続的に移動させつつ細胞若しくは組織を培養する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 細胞若しくは組織を所定成分の培養液から成る液滴中で生産するために用いられる培養用容器であって、
    非固着状態でほぼ球形状の液滴を配置可能な撥水性表面により構成された液滴配置部と、
    前記液滴が前記液滴配置部の外に流出するのを防ぐために該液滴配置部の周囲に設けられた撥水性表面を備えた周壁又は障壁部と、
    前記液滴配置部に配置された液滴の真下にガスが供給可能に形成された基材と、
    を備え、
    前記基材における少なくとも前記液滴と接触可能な表面は、液滴をほぼ球形状に保ち得る撥水性を有することを特徴とする、容器。
  10. 前記液滴配置部に配置された液滴の真下にガスを供給可能な通気孔が形成されている、請求項9に記載の容器。
  11. 前記基材には、所定の間隔で配列し且つ前記撥水性表面を有する複数の突起部が形成されており、
    前記液滴の真下部分が前記基材から浮いた状態で、前記複数の突起部上に該液滴が配置されるように構成されている、請求項9に記載の容器。
  12. 前記突起部上に配置され得る液滴の容積は少なくとも100μLである、請求項11に記載の培養容器。
  13. 前記基材は、液滴をほぼ球形状に保ち得る撥水性の表面を有するメッシュ部を備えており、
    そのメッシュ部に前記液滴を配置した際には該液滴の真下部分が該メッシュ部の空隙部分に配置されるように構成されている、請求項9又は10に記載の容器。
  14. 前記撥水性表面は、疎水性部分を有する化合物から成る撥水層によって構成されている、請求項9〜13のいずれかに記載の容器。
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