JP4638419B2 - 遺伝子変異検出方法及び遺伝子変異検出用キット - Google Patents

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    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6813Hybridisation assays
    • C12Q1/6827Hybridisation assays for detection of mutation or polymorphism

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオインフォマティクス(生命情報科学)分野において特に有用な遺伝子変異検出方法及びその方法を用いた遺伝子変異検出用キットに関し、特に遺伝子配列における一塩基置換等を簡便且つ迅速に検出する遺伝子変異検出方法及び遺伝子変異検出用キットに関する。
【0002】
本出願は、日本国において2004年3月19日に出願された日本特許出願番号2004−080703を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
ヒトゲノム配列が解読された今日の研究目標の1つは、遺伝子の同定、機能の解析、さらに遺伝子発現や機能に影響して個体差を決める遺伝子の多様性である。ここで、核酸塩基配列中の一塩基の違いから生じる遺伝子の個体差のことを一塩基変異と呼ぶ。この一塩基変異の中でも頻度の多い変異のことを一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)と呼び、遺伝子中に点在するSNPが各種疾患と強く関連することが明らかとなっている。
【0004】
現在、SNPを含む遺伝子変異の検出方法としては、制限酵素で切断したDNA断片をゲルにより分離した後、色素でDNA断片を染色・検出するという電気泳動法が挙げられる。この方法は汎用されているものの、分離や染色に必要な時間が長く、迅速性に欠けるという問題があった。
【0005】
また、マイクロアレイ技術によって所定のDNAが微細配列された、いわゆるDNAチップと呼ばれるバイオアッセイ用の集積基板も、遺伝子変異の検出に利用され始めている。このDNAチップは、ガラス基板やシリコン基板上に多種多数のDNAオリゴヌクレオチド鎖やcDNA等が集積されていることから、一度に多数の遺伝子検査が可能であり、臨床検査現場等への適用が期待されている。しかしながら、核酸塩基のミスマッチ形成に由来する二本鎖DNAの安定性を原理とする手法であるため、塩基配列によってはその温度制御が困難であり、さらに放射性物質や蛍光色素を被検体自体に修飾する前処理が必要である等の問題があった。
【0006】
さらに、被検体の増幅と検出を同時に行うリアルタイムPCR法が、核酸増幅法による一段階の迅速な定量測定の技術として、近年普及しつつある。しかしながら、増幅反応における複雑な温度制御、プローブの導入も含めた各遺伝子配列に適用するプライマーの設計が複雑である上に、増幅装置や条件によって結果が異なる場合も少なからずあり、再現性の面においても課題を残している。また、シグナルの経時変化を利用して検出を行うため、若干操作性に欠けるという問題があった。
【0007】
このように、従来の遺伝子変異を検出する技術は、精密な温度制御や煩雑な被検体の前処理が必要である、或いは測定までの時間が長い等の問題があり、簡便且つ迅速に遺伝子検査を行うことが不可能であった。
【0008】
そこで、本件発明者らは、文献「K.Yoshimoto,S.Nishizawa,M.Minagawa and N.Teramae,“Use of Abasic Site−Containing DNA Strands for Nucleobase Recognition in Water”,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,pp.8982−8983」(以下、文献1という。)において、一塩基置換部位を有する一本鎖の標的DNAと、この標的DNAと相補的であり、且つ一塩基置換部位に対応する対応塩基を除いて脱塩基部位(AP site)とした一本鎖の検出用DNAとで二本鎖核酸を形成させ、この二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を有するレセプター分子を添加して一塩基置換部位と水素結合を形成させ、このレセプター分子の蛍光強度変化を測定することにより、一塩基置換を効果的に検出する技術を提案している。
【0009】
この文献1記載の技術は、被検体となる標的DNAのラベル化や熱制御等の煩雑な操作が原則的に不要であるため工程数が非常に少なく、また、原理上二本鎖DNA自体の熱的な安定性に依存しないため、検出までの時間が非常に短時間であり、再現性にも優れている。また、UVランプを用いた目視による確認も可能であるため、特別な設備を持たない状況下においても検出が可能である。
【0010】
しかしながら、この文献1記載の技術では、検出用DNAを蛍光標識する等の化学修飾は必要ないものの、脱塩基部位という特殊な部位を導入する必要があり、これが厳密な意味では化学修飾に相当してしまうという問題があった。また、脱塩基部位を導入するため、検出用DNAを合成する際のコストが高くなるという問題があった。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、標的DNA及び検出用DNAに対する化学修飾を行うことなく、簡便且つ迅速に遺伝子変異を検出する遺伝子変異検出方法及び遺伝子変異検出用キットを提供することを目的とする。
【0012】
上述した目的を達成するために、本発明に係る遺伝子変異検出方法は、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸と、上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸とで、二本鎖核酸を形成する工程と、上記二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を示すレセプターを挿入させ、上記標的塩基と水素結合を形成させる工程と、上記レセプターが挿入された上記二本鎖核酸の蛍光強度を測定する工程とを有する。
【0013】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る遺伝子変異検出用キットは、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸と、水素結合性及び発蛍光性を示し、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで形成された二本鎖核酸に挿入されて上記標的塩基と水素結合を形成するレセプターとを有する。
【0014】
このような遺伝子変異検出方法及び遺伝子変異検出用キットでは、標的核酸と2種類の検出用核酸とで二本鎖核酸を形成することにより二本鎖核酸に意図的にギャップ部位を構築し、この二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を示すレセプターを添加してギャップ部位にレセプターを挿入させ、標的塩基と水素結合を形成させた後、レセプターが挿入された二本鎖核酸の蛍光強度を測定することにより、標的塩基に生じた遺伝子変異を検出する。
【0015】
なお、上記レセプターとしては、例えばナフチリジン誘導体、キノリン誘導体、プテリジン誘導体、クマリン誘導体、インダゾール誘導体、アロキサジン誘導体、或いはアミロライドが使用可能である。
【0016】
ここで、上記レセプターは、基板に固定化されていても構わない。
【0017】
すなわち、上述した目的を達成するために、本発明に係る遺伝子変異検出方法は、水素結合性を示すレセプターが固定化された基板に、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸と上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸とを滴下することにより、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで二本鎖核酸を形成させると共に、上記標的塩基と上記レセプターとで水素結合を形成させる工程と、上記標的塩基と上記レセプターとの結合に基づいて上記標的塩基を識別する工程とを有する。
【0018】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る遺伝子変異検出用キットは、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸と、水素結合性を示し、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで形成された二本鎖核酸に挿入されて上記標的塩基と水素結合を形成するレセプターと、上記レセプターが固定化された基板とを有する。
【0019】
このような遺伝子変異検出方法及び遺伝子変異検出用キットでは、標的核酸と2種類の検出用核酸とで二本鎖核酸を形成することにより二本鎖核酸に意図的にギャップ部位を構築し、水素結合性を示すレセプターが固定化された基板にこの二本鎖核酸を滴下することによりギャップ部位にレセプターを挿入させて標的塩基と水素結合を形成させた後、標的塩基とレセプターとの結合に基づいて標的塩基に生じた遺伝子変異を検出する。この場合、レセプターが発蛍光性を示すものであればレセプターが挿入された二本鎖核酸の蛍光強度変化に基づいて標的塩基を識別することができる。また、標的塩基とレセプターとの結合に基づく表面プラズモン共鳴の信号強度変化、又は水晶振動子の共振周波数変化に基づいて標的塩基を識別することも可能である。
【0020】
また、上記2種類の検出用核酸の一方は、基板に固定化されていても構わない。
【0021】
すなわち、上述した目的を達成するために、本発明に係る遺伝子変異検出方法は、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸のうち一方の検出用核酸が固定化された基板に、上記標的核酸と、他方の検出用核酸と、水素結合性を示すレセプターとを滴下することにより、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで二本鎖核酸を形成させると共に、上記標的塩基と上記レセプターとで水素結合を形成させる工程と、上記標的塩基と上記レセプターとの結合に基づいて上記標的塩基を識別する工程とを有する。
【0022】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る遺伝子変異検出用キットは、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸と、水素結合性を示し、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで形成された二本鎖核酸に挿入されて上記標的塩基と水素結合を形成するレセプターと、2種類の上記検出用核酸の一方が固定化された基板とを有する。
【0023】
このような遺伝子変異検出方法及び遺伝子変異検出用キットでは、2種類の検出用核酸のうち一方の検出用核酸が固定化された基板に、標的核酸と、他方の検出用核酸と、水素結合性を示すレセプターとを滴下することにより、標的核酸と2種類の検出用核酸とで二本鎖核酸を形成させて二本鎖核酸に意図的にギャップ部位を構築し、このギャップ部位にレセプターを挿入させて標的塩基と水素結合を形成させた後、標的塩基とレセプターとの結合に基づいて標的塩基に生じた遺伝子変異を検出する。この場合、レセプターが発蛍光性を示すものであれば、レセプターが挿入された二本鎖核酸の蛍光強度変化に基づいて標的塩基を識別することができる。
【0024】
本発明のさらに他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施例の説明から一層明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1は、本実施の形態における遺伝子変異検出の原理を説明する図である。
図2は、レセプター分子が基板に固定化されている場合の遺伝子変異検出の原理を説明する図である。
図3は、検出用核酸の一方が基板に固定化されている場合の遺伝子変異検出の原理を説明する図である。
図4は、標的塩基がグアニン、シトシンである場合について、AMND添加後の蛍光スペクトルを示す図である。
図5は、標的塩基がグアニン、シトシンである場合について、AMND添加後の蛍光を示す図である。
図6は、標的塩基がグアニン、シトシン、アデニン、チミンである場合について、AMND添加後の蛍光消光効率を示す図である。
図7は、標的塩基がグアニン、シトシン、アデニン、チミンである場合について、DiMe−pteridine添加後の蛍光消光効率を示す図である。
図8は、標的塩基がグアニン、シトシン、アデニン、チミンである場合について、アミロライド添加後の蛍光消光効率を示す図である。
図9は、PCR増幅した標的核酸の標的塩基がグアニン、シトシン、アデニン、チミンである場合について、AMND添加後の蛍光消光効率を示す図である。
図10は、標的塩基がグアニン、シトシン、アデニン、チミンである場合について、AMND−DPAを固定化したセンサーチップのSPR信号強度を示す図である。
図11は、標的塩基がグアニン、シトシン、アデニン、チミンである場合について、AcMND−C5Aを固定化したセンサーチップのSPR信号強度を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一般に、水素結合を利用する核酸塩基認識では、レセプター分子の水素結合様式や数を変化させることで、比較的容易に高い塩基選択性を獲得できる特徴を持つ。この際、完全水溶液中では水素結合形成に基づく認識機能の発現は期待できないため、従来の研究の多くは、クロロホルム中のような無極性溶媒環境下に限定されていたが、溶媒中の核酸が変性、沈殿する要因ともなっていた。
【0027】
そこで、本実施の形態では、図1に概念的に示すように、SNP等に関連する標的塩基11を有する一本鎖の標的核酸10を含む溶液と、標的塩基11を挟む部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸20a,20bを含む溶液とを混合し、標的核酸10と検出用核酸20a,20bとをハイブリダイゼーションさせることで、標的塩基11と対向する部位に意図的にギャップ部位21を構築する。そして、疎水場空間であるこのギャップ部位21に水素結合性を示すレセプター分子30を挿入し、標的塩基11と水素結合を形成させる。
【0028】
このように、疎水場空間であるギャップ部位21に水素結合性を示すレセプター分子30を挿入し、標的塩基11と水素結合を形成させることで、完全水溶液中においても効果的に核酸塩基認識を行い、標的塩基11の変異を検出することができる。
【0029】
また、標的核酸10の複数塩基を挟む部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸20a,20bを含む溶液を用いるようにすれば、複数塩基の変異を検出することができる。この場合、例えば2塩基分をギャップ部位21とすると、このギャップ部位21には2分子のレセプター分子30が挿入される。
【0030】
ここで、本実施の形態で分析可能な標的核酸10としては、例えばヒトを含む哺乳類や植物由来のDNA、cDNA等が挙げられるが、特に限定されず、必要に応じて希釈、濃縮、増幅を行う。
【0031】
また、水素結合性を示すレセプター分子30としては、水素結合部位を有し、発蛍光性を示す試薬が望ましい。具体的には、水素結合部位を少なくとも一段、好ましくは複数段有し、ギャップ部位21に隣接する核酸塩基とスタッキングできるような複素環式芳香族基を有する試薬が望ましい。特に水溶性の試薬が好ましいが、非水溶性の場合には有機溶媒を微量用いることにより、対応が可能である。このようなレセプター分子30としては、例えばナフチリジン誘導体、キノリン誘導体、プテリジン誘導体、クマリン誘導体、インダゾール誘導体、アロキサジン誘導体、或いはアミロライド等が挙げられる。
【0032】
なお、上述の例では、遊離した標的核酸10と遊離した検出用核酸20a,20bとを溶液中で反応させるものとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0033】
例えば、図2に模式的に示すように、リンカー分子41を介してレセプター分子30を基板40に固定化し、この基板40上に標的核酸10及び検出用核酸20a,20bを含む溶液を滴下するようにしても構わない。また、図3に模式的に示すように、リンカー分子41を介して検出用核酸20aを基板40に固定化し、この基板40上に標的核酸10及び検出用核酸20bとレセプター分子30とを含む溶液を滴下するようにしても構わない。
【0034】
このようにして、レセプター分子30又は検出用核酸20aを基板40上に多数集積したセンサーチップ(マイクロアレイ)を作製し、遺伝子変異検出用キットとして用いることで、従来の欠点を克服したハイスループットな検出が可能となる。
【0035】
図2に示す構成の場合、蛍光強度の変化ではなく、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)の信号強度の変化を利用して遺伝子変異を検出することも可能である(例えば文献「Kazuhiko Nakatani,Shinsuke Sando,and Isao Saito,Nat.Biotechnol.,2001,19,pp.51−55」、文献「Akio Kobori,Souta Horie,Hitoshi Suda,Isao Saito,and Kazuhiko Nakatani,J.Am.Chem.Soc.,2004,126,pp.557−562」を参照。)。また、図2に示す構成の場合、水晶振動子の共振周波数の変化を利用して遺伝子変異を検出することも可能である。
【0036】
以下、本発明の具体的な実施例について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【実施例】
【0037】
(第1の実施例)
第1の実施例では、レセプター分子として、以下の化学式に示すようなナフチリジン誘導体である2−アミノ−7−メチル−1,8−ナフチリジン(AMND)を用いた。このAMNDは、文献「E.V.Brown,J.Org.Chem.,Vol.30,p1607,1965」を参考にして、2,6−ジアミノピリジンから合成したものである。
【0038】
【化1】
Figure 0004638419
【0039】
このAMNDは発蛍光性を示し、後述するように、2種類の検出用DNA間のギャップ部位に挿入されたときに標的塩基と相互作用し、標的塩基の違いに基づき蛍光強度が変化するため、蛍光強度を測定することで一塩基置換を検出することができる。特に、このAMNDは標的塩基としてのC(シトシン)と選択的に相互作用するため、C(シトシン)が関与する全ての一塩基置換(C/T,C/G,C/A)を検出することができる。
【0040】
ここで、DNAとAMNDとを混合する際、AMNDは、該AMNDを含有する溶液の形態で混合してもよく、粉末や固形状の形態で混合してもよい。また、蛍光測定は、UVランプを用いて目視で行ってもよく、蛍光分光器、蛍光顕微鏡、デンシトメーター等の機器を用いてもよい。
【0041】
本実施例では、AMNDによる一塩基置換検出(C/G)の効果を検証するために、以下のような23merの標的DNA(配列a)とそれぞれ11merの2種類の検出用DNA(配列b,c)とをモデル配列として準備した。ここで、配列a中、SはG(グアニン)又はC(シトシン)を示す。
(配列a)5’−TCTCCGCACACSTCTCCCCACAC−3’(配列番号1)
(配列b)5’−GTGTGCGGAGA−3’(配列番号2)
(配列c)5’−GTGTGGGGAGA−3’(配列番号3)
【0042】
具体的に、本実施例では、被検体となる600μMの標的DNA溶液(上記配列a)とそれぞれ600μMの2種類の検出用DNA溶液(上記配列b,c)とをそれぞれ25μl、イオン強度調整剤として500mM NaCl溶液を50μl、pH緩衝剤として5mM EDTAを含む50mM カコジル酸ナトリウム溶液を50μl、150μM AMND溶液を50μl混合し、MilliQ水を加えて全量を250μlとした。得られたDNA溶液についてサーマルサイクラーでアニーリング処理を行い、蛍光強度を測定した。蛍光測定には、光路長2mm×10mmの蛍光測定用セルを用いた。
【0043】
標的DNAを加えなかった場合(DNA free)の蛍光スペクトルと、標的DNAの標的塩基SがG(グアニン),C(シトシン)である場合の蛍光スペクトルとを図4に示す。ここで、図4における励起波長は350nmである。図4に示すように、標的塩基SがC(シトシン)である場合に蛍光が著しく消光している。これは、AMNDがギャップ部位に隣接する核酸塩基とスタッキングし、さらに標的塩基(C)との水素結合形成により安定な会合体を形成しているためと考えられる。このように、消光の有無を検出することで、標的塩基YがG(グアニン)であるかC(シトシン)であるかを知ることができる。
【0044】
同じDNA溶液をポリプロピレン製の透明チューブに入れ、励起波長350nmのUVランプを用いて蛍光を目視検出した結果を図5に示す。図5には、標的DNA及び検出用DNAのみが含まれた溶液とAMNDのみが含まれた溶液とをそれぞれ透明チューブに入れた場合の蛍光も併せて示す。図5に示すように、標的塩基SがC(シトシン)である場合に蛍光が著しく消光しており、目視でも確認可能である。
【0045】
(第2の実施例)
第2の実施例では、レセプター分子として第1の実施例と同様のAMNDを用いて、C(シトシン)が関与する全ての一塩基置換検出(C/T,C/G,C/A)への適用性を評価した。
【0046】
本実施例では、AMNDによる一塩基置換検出(C/T,C/G,C/A)の効果を検証するために、以下のような107merの標的DNA(配列d)とそれぞれ15merの検出用DNA(配列e,f)とをモデル配列として準備した。ここで、配列d中、NはG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)を示す。
(配列d)5’−CTATTGTTGGATCATATTCGTCCACAAAATGATTCTGAATTAGCTGTATCGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCANCAGCTCCAACTACCACAAGTTTATATTCAGTC−3’(配列番号4)
(配列e)5’−TGGCGTAGGCAAGAG−3’(配列番号5)
(配列f)5’−TGGTAGTTGGAGCTG−3’(配列番号6)
【0047】
具体的に、本実施例では、被検体となる5μMの標的一本鎖DNA溶液(上記配列d)5μlに、5μMの検出用DNA溶液(上記配列e,f)を5μl添加し、さらにイオン強度調整剤として500mM NaCl溶液を10μl、pH緩衝剤として5mM EDTAを含む50mM カコジル酸ナトリウム溶液を10μl、5μM AMND溶液を5μl添加し、MilliQ水を加えて全量を50μlとした。得られたDNA溶液についてサーマルサイクラーを用いてアニーリング処理を行い、蛍光強度を測定した。蛍光測定には、光路長3mm×3mmの蛍光測定用セルを用いた。
【0048】
標的DNAの標的塩基NがG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)である場合の蛍光消光効率(%)を図6に示す。ここで、蛍光消光効率は、標的DNAが存在しない場合の蛍光強度をFfreeとし、標的DNAが存在する場合の蛍光強度をFobsとしたとき、((Ffree−Fobs)/Ffree)×100で表される。また、図6における励起波長は350nmであり、検出波長は400nmである。図6に示すように、標的塩基NがC(シトシン)である場合にのみ蛍光が著しく消光している。このように、消光の有無を検出することで、標的塩基NがC(シトシン)であるか否かを知ることができる。すなわち、AMNDをレセプター分子として用いることにより、C(シトシン)が関与する全ての一塩基置換検出が可能である。
【0049】
(第3の実施例)
第3の実施例では、レセプター分子として、以下の化学式に示すようなプテリジン誘導体である2−アミノ−6,7−ジメチル−4−ヒドロキシプテリジン(DiMe−pteridine)を用いた。
【0050】
【化2】
Figure 0004638419
【0051】
このDiMe−pteridineは発蛍光性を示し、後述するように、2種類の検出用DNA間のギャップ部位に挿入されたときに標的塩基と相互作用し、標的塩基の違いに基づき蛍光強度が変化するため、蛍光強度を測定することで一塩基置換を検出することができる。特に、このDiMe−pteridineは標的塩基としてのG(グアニン)と選択的に相互作用するため、G(グアニン)が関与する全ての一塩基置換(G/C,G/A,G/T)を検出することができる。
【0052】
本実施例では、DiMe−pteridineによる一塩基置換検出(G/C,G/A,G/T)の効果を検証するために、以下のような23merの標的DNA(配列g)と上述した11merの検出用DNA(配列b)とをモデル配列として準備した。ここで、配列g中、NはG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)を示す。なお、本実施例における配列gは、標的塩基Nの前後の配列が同じであるため、1種類の検出用DNA(配列b)を標的DNA(配列g)に対して2当量加えることで、標的塩基Nと対向する部位にギャップ部位を構築した。
(配列g)5’−TCTCCGCACACNTCTCCGCACAC−3’(配列番号7)
【0053】
具体的に、本実施例では、被検体となる5μMの標的一本鎖DNA溶液(上記配列g)10μlに、10μMの検出用DNA溶液(上記配列b)を10μl添加し、さらにイオン強度調整剤として500mM NaCl溶液を10μl、pH緩衝剤として5mM EDTAを含む50mM カコジル酸ナトリウム溶液を10μl、1μM DiMe−pteridine溶液を5μl添加し、MilliQ水を加えて全量を50μlとした。得られたDNA溶液についてサーマルサイクラーを用いてアニーリング処理を行い、蛍光強度を測定した。蛍光測定には、光路長3mm×3mmの蛍光測定用セルを用いた。
【0054】
標的DNAの標的塩基NがG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)である場合の蛍光消光効率(%)を図7に示す。ここで、図7における励起波長は343nmであり、検出波長は435nmである。図7に示すように、標的塩基NがG(グアニン)である場合にのみ蛍光が著しく消光している。このように、消光の有無を検出することで、標的塩基NがG(グアニン)であるか否かを知ることができる。すなわち、DiMe−pteridineをレセプター分子として用いることにより、G(グアニン)が関与する全ての一塩基置換検出が可能である。
【0055】
(第4の実施例)
第4の実施例では、レセプター分子として、以下の化学式に示すようなアミロライド(N−amidino−3,5−diamino−6−chloropyrazinecarboxamide hydrochloride)を用いた。
【0056】
【化3】
Figure 0004638419
【0057】
このアミロライドは発蛍光性を示し、後述するように、2種類の検出用DNA間のギャップ部位に挿入されたときに標的塩基と相互作用し、標的塩基の違いに基づき蛍光強度が変化するため、蛍光強度を測定することで一塩基置換を検出することができる。特に、このアミロライドは標的塩基としてのT(チミン)と選択的に相互作用するため、T(チミン)が関与する全ての一塩基置換(T/G,T/C,T/A)を検出することができる。
【0058】
本実施例では、アミロライドによる一塩基置換検出(T/G,T/C,T/A)の効果を検証するために、上述した23merの標的DNA(配列g)と上述した11merの検出用DNA(配列b)とをモデル配列として準備した。なお、本実施例においても、1種類の検出用DNA(配列b)を標的DNA(配列g)に対して2当量加えることで、標的塩基Nと対向する部位にギャップ部位を構築した。
【0059】
具体的に、本実施例では、被検体となる5μMの標的一本鎖DNA溶液(上記配列g)10μlに、10μMの検出用DNA溶液(上記配列b)を10μl添加し、さらにイオン強度調整剤として500mM NaCl溶液を10μl、pH緩衝剤として5mM EDTAを含む50mM カコジル酸ナトリウム溶液を10μl、1μM アミロライド溶液を5μl添加し、MilliQ水を加えて全量を50μlとした。得られたDNA溶液についてサーマルサイクラーを用いてアニーリング処理を行い、蛍光強度を測定した。蛍光測定には、光路長3mm×3mmの蛍光測定用セルを用いた。
【0060】
標的DNAの標的塩基NがG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)である場合の蛍光消光効率(%)を図8に示す。ここで、図8における励起波長は361nmであり、検出波長は415nmである。図8に示すように、標的塩基NがT(チミン)である場合にのみ蛍光が著しく消光している。このように、消光の有無を検出することで、標的塩基NがT(チミン)であるか否かを知ることができる。すなわち、アミロライドをレセプター分子として用いることにより、T(チミン)が関与する全ての一塩基置換検出が可能である。
【0061】
(第5の実施例)
第5の実施例では、レセプター分子として第1の実施例と同様のAMNDを用いて、PCR産物への適用性を評価した。
【0062】
本実施例では、AMNDによるPCR産物への適用性を検証するために、上述した107merの標的DNA(配列d)と上述したそれぞれ15merの検出用DNA(配列e,f)とをモデル配列として準備した。
【0063】
ここで、本実施例における標的DNA(配列d)は、K−ras遺伝子のcodon12を含む領域で、以下のようなフォワードプライマー(配列h)及びリバースプライマー(配列i)を用いて、そのアンチセンス鎖を増幅したものである。
(配列h)5’−GACTGAATATAAACTTGTGG−3’(配列番号8)
(配列i)5’−CTATTGTTGGATCATATTCG−3’(配列番号9)
【0064】
PCR溶液は、TaKaRa Taq(タカラバイオ株式会社製)のプロトコルを参考にして調製した。PCR反応溶液の組成は以下の通りである。
フォワードプライマー 20pmol(最終濃度0.2μM)
リバースプライマー 300pmol(最終濃度3.0μM)
標的DNA(配列d) 0.5ng
TaKaRa Taq(DNAポリメラーゼ) 2.5U
10×PCRバッファ 10μl
2.5mM dNTP 8μl
【0065】
これらを0.2ml PCRチューブ中で混合し、さらにオートクレイブ処理したMilliQ水を加えて全量100μlとした。そして、94℃・5分→(94℃・30秒→52℃・30秒→72℃・30秒)×40サイクル→72℃・7分→4℃まで冷却、というプロトコルでPCR反応を行い、標的DNA(配列d)を増幅した。
【0066】
上述したPCR反応を行った後、このPCR反応溶液40μlに、pH緩衝剤(2M カコジル酸ナトリウム、33mM EDTA、pH=7.0)を2.5μl、それぞれ100μMの検出用DNA溶液(上記配列e,f)を2.5μl、1μMのAMND溶液を5μl添加し、全量を50μlとした。得られたDNA溶液について、光路長3mm×3mmの蛍光測定用セルを用いて蛍光強度を測定した。なお、測定温度は5℃である。
【0067】
標的DNAの標的塩基NがG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)である場合の蛍光消光効率(%)を図9に示す。ここで、図9における励起波長は350nmであり、検出波長は400nmである。図9に示すように、標的塩基NがC(シトシン)である場合にのみ蛍光が著しく消光している。このように、消光の有無を検出することで、標的塩基NがC(シトシン)であるか否かを知ることができる。また、本実施例では、DNAポリメラーゼやdNTPなどの除去作業や精密な温度制御などが一切不要であるため、PCR産物の迅速且つ簡便な解析が可能である。
【0068】
(第6の実施例)
第6の実施例では、表面プラズモン共鳴(SPR)法による一塩基置換検出について評価した。レセプター分子としては、以下の化学式に示すようなAMND−DPA(N−(3−Amino−propyl)−N’−(7−methyl−[1,8]naphthyridin−2−yl)−propane−1,3−diamine)を用い、これを金基板上に固定化したセンサーチップ(マイクロアレイ)を作製した。
【0069】
【化4】
Figure 0004638419
【0070】
AMND−DPAは、金基板上に固定化するためにアミノ基を末端に有するアルキル鎖をAMNDの基本骨格に導入したもので、2,6−ジアミノピリジンから合成したものである。このAMND−DPAは、金基板上において2種類の検出用DNAの間のギャップ部位に挿入されたときにC(シトシン)と選択的に相互作用する。この際、標的塩基の違いに基づきSPRの信号強度が変化するため、信号強度を測定することでC(シトシン)が関与する全ての一塩基置換(C/T,C/G,C/A)を検出することができる。
【0071】
本実施例では、AMND−DPAを固定化したセンサーチップによる一塩基置換検出の効果を検証するために、上述した23merの標的DNA(配列g)と上述した11merの検出用DNA(配列b)とをモデル配列として準備した。なお、本実施例においても、1種類の検出用DNA(配列b)を標的DNA(配列g)に対して2当量加えることで、標的塩基Nと対向する部位にギャップ部位を構築した。
【0072】
具体的に、本実施例では、被検体となる25μMの標的DNA溶液(上記配列g)10μlに、20μMの検出用DNA溶液(上記配列b)を20μl添加し、さらにPBS−EPバッファ(0.67M リン酸緩衝溶液、1.5M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P 20、pH=6.4)を加えて全量を500μlとした。さらに、得られたDNA溶液についてサーマルサイクラーを用いてアニーリング処理した。
【0073】
また、センサーチップとしてはセンサーチップCM5(ビアコア株式会社製)を用い、AMND−DPAのセンサーチップへの固定化は、アミンカップリングキット(ビアコア株式会社製)を用いて行った。具体的には、センサーチップCM5に50μlのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)/EDC(N−ethyl−N’−(3−dimethylaminoprpyl)carbodiimide hydrochloride)水溶液をインジェクトし、センサーチップ表面のカルボキシル基をNHSで活性化した。続いて、0.20mg/ml(0.73mM)のAMND−DPA溶液(10mM 酢酸緩衝液で希釈したもの、pH=5.5)をインジェクトし、AMND−DPAを基板上に固定化した。その後、1M エタノールアミン水溶液50μlをインジェクトすることによって、残存する活性NHS基をブロッキングし、さらに8mM NaOH水溶液60μlを用いて基板を洗浄した。
【0074】
標的DNAの標的塩基NがG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)である場合のSPRの信号強度(RU:Response Unit)を図10に示す。ここで、SPR測定に用いたDNA溶液量は90μlであり、これを30μl/分の流速でインジェクトした。図10は、インジェクトの後、180秒後のSPR信号強度を示したものである。なお、AMND−DPAの固定化量は約0.20ng/mmであり、測定温度は5℃である。
【0075】
図10に示すように、標的塩基NがC(シトシン)である場合にSPR信号強度が最大となっている。これは、AMND−DPAがギャップ部位に隣接する核酸塩基とスタッキングし、さらに標的塩基(C)との水素結合形成により安定な会合体を形成し、その結果、金属板表面近傍の誘電率が変化するためと考えられる。このように、SPRの信号強度を検出することで、標的塩基NがC(シトシン)であるか否かを知ることができる。すなわち、AMND−DPAを固定化したセンサーチップを用いることにより、C(シトシン)が関与する全ての一塩基置換検出が可能である。
【0076】
(第7の実施例)
第7の実施例では、第6の実施例と同様に、表面プラズモン共鳴(SPR)法による一塩基置換検出について評価した。レセプター分子としては、以下の化学式に示すようなAcMND−C5A(6−Amino−hexanoic acid(7−methyl−[1,8]naphthyridin−2−yl)−amide)を用い、これを金基板上に固定化したセンサーチップを作製した。
【0077】
【化5】
Figure 0004638419
【0078】
AcMND−C5Aは、金基板上に固定化するためにアミノ基を末端に有するアルキル鎖をAMNDの基本骨格に導入したもので、2,6−ジアミノピリジンから合成したものである。このAcMND−C5Aは、金基板上において2種類の検出用DNAの間のギャップ部位に挿入されたときにG(グアニン)と選択的に相互作用する。この際、標的塩基の違いに基づきSPRの信号強度が変化するため、信号強度を測定することでG(グアニン)が関与する全ての一塩基置換(G/C,G/A,G/T)を検出することができる。
【0079】
本実施例では、AcMND−C5Aを固定化したセンサーチップによる一塩基置換検出の効果を検証するために、上述した23merの標的DNA(配列g)と上述した11merの検出用DNA(配列b)とをモデル配列として準備した。なお、本実施例においても、1種類の検出用DNA(配列b)を標的DNA(配列g)に対して2当量加えることで、標的塩基Nと対向する部位にギャップ部位を構築した。
【0080】
具体的に、本実施例では、被検体となる200μMの標的DNA溶液(上記配列g)5μlに、400μMの検出用DNA溶液(上記配列b)を5μl添加し、さらにPBS−EPバッファ(0.67M リン酸緩衝溶液、1.5M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P 20、pH=6.4)を加えて全量を500μlとした。さらに、得られたDNA溶液についてサーマルサイクラーを用いてアニーリング処理した。
【0081】
また、センサーチップとしてはセンサーチップCM5(ビアコア株式会社製)を用い、AcMND−C5Aのセンサーチップへの固定化は、アミンカップリングキット(ビアコア株式会社製)を用いて行った。具体的には、センサーチップCM5に50μlのNHS/EDC水溶液をインジェクトし、センサーチップ表面のカルボキシル基をNHSで活性化した。続いて、1.0mg/ml(3.7mM)のAcMND−C5A溶液(10mM 酢酸緩衝液で希釈したもの、pH=5.5)をインジェクトし、AcMND−C5Aを基板上に固定化した。その後、1M エタノールアミン水溶液50μlをインジェクトすることによって、残存する活性NHS基をブロッキングし、さらに8mM NaOH水溶液60μlを用いて基板を洗浄した。
【0082】
標的DNAの標的塩基NがG(グアニン),C(シトシン),A(アデニン)又はT(チミン)である場合のSPRの信号強度(RU:Response Unit)を図11に示す。ここで、SPR測定に用いたDNA溶液量は60μlであり、これを20μl/分の流速でインジェクトした。図11は、インジェクトの後、180秒後のSPR信号強度を示したものである。なお、AcMND−C5Aの固定化量は約1.6ng/mmであり、測定温度は5℃である。
【0083】
図11に示すように、標的塩基NがG(グアニン)である場合にSPR信号強度が最大となっている。これは、AcMND−C5Aがギャップ部位に隣接する核酸塩基とスタッキングし、さらに標的塩基(G)との水素結合形成により安定な会合体を形成し、その結果、金属板表面近傍の誘電率が変化するためと考えられる。このように、SPRの信号強度を検出することで、標的塩基NがG(グアニン)であるか否かを知ることができる。すなわち、AcMND−C5Aを固定化したセンサーチップを用いることにより、G(グアニン)が関与する全ての一塩基置換検出が可能である。
【0084】
以上、具体的な実施例からも分かるように、本実施の形態における遺伝子変異検出方法によれば、連続した1以上の塩基からなる標的塩基11を有する一本鎖の標的核酸10と、この標的塩基11を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸20a,20bとで二本鎖核酸を形成し、この二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を示すレセプター分子30を添加して標的塩基11と水素結合を形成させ、レセプター分子30と結合した二本鎖核酸の蛍光強度を測定することにより、一塩基置換等の遺伝子変異を効果的に検出することができる。
【0085】
特に、被検体となる標的核酸10のラベル化や熱制御等の煩雑な操作が不要であるため工程数が非常に少なく、また、原理上二本鎖DNA自体の熱的な安定性に依存しないため、検出までの時間が非常に短時間であり、再現性にも優れている。また、UVランプを用いた目視による確認も可能であるため、特別な設備を持たない状況下においても検出が可能である。
【0086】
さらに、レセプター分子30又は検出用核酸20aを基板上に多数集積したセンサーチップ(マイクロアレイ)を作製し、遺伝子変異検出用キットとして用いることで、従来の欠点を克服したハイスループットな検出が可能となる。
【0087】
なお、上述した実施の形態では、標的塩基を挟む2種類の部分配列と相補的な2種類の検出用核酸と標的核酸とをハイブリダイゼーションさせることで、意図的にギャップ部位を導入したが、このギャップ部位は、DNAの修復過程にも生じることが知られている(文献「Erling Seeberg,Lars Eide and Magnar Bjoras,Trend.Biochem.Sci.,1995,20(10),pp.391−397」を参照。)。そこで、図2に示したようにレセプター分子が固定化された基板に二本鎖DNA溶液を滴下して反応させることで、DNAの損傷の有無を検出することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
上述した本発明によれば、標的核酸と2種類の検出用核酸とで二本鎖核酸を形成して標的塩基と対向する位置にギャップ部位を構築し、このギャップ部位に挿入されたレセプターと標的塩基とで水素結合を形成させることにより、標的塩基に生じた一塩基置換等の遺伝子変異を効果的に検出することができる。
【0089】
また、レセプター又は2種類の検出用核酸の一方を基板上に固定化し、遺伝子変異検出用キットとして用いることで、従来の欠点を克服したハイスループットな検出が可能となる。

Claims (11)

  1. 塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸と、上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸とで、二本鎖核酸を形成する工程と、
    上記二本鎖核酸に水素結合性及び発蛍光性を示すレセプターを挿入させ、上記標的塩基と水素結合を形成させる工程と、
    上記レセプターが挿入された上記二本鎖核酸の蛍光強度を測定する工程と
    を有することを特徴とする遺伝子変異検出方法。
  2. 上記レセプターは、複素環式芳香族基を有し、上記標的塩基との水素結合形成及び該レセプターに隣接する塩基とのスタッキング相互作用により安定化されることで、上記標的塩基と対を形成することを特徴とする請求の範囲第1項記載の遺伝子変異検出方法。
  3. 上記レセプターは、ナフチリジン誘導体、キノリン誘導体、プテリジン誘導体、クマリン誘導体、インダゾール誘導体、アロキサジン誘導体及びアミロライドからなる群の少なくとも1つであることを特徴とする請求の範囲第2項記載の遺伝子変異検出方法。
  4. 塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸と、
    水素結合性及び発蛍光性を示し、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで形成された二本鎖核酸に挿入されて上記標的塩基と水素結合を形成するレセプターと
    を有することを特徴とする遺伝子変異検出用キット。
  5. 水素結合性を示すレセプターが固定化された基板に、塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸と、上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸とを滴下することにより、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで二本鎖核酸を形成させると共に、上記標的塩基と上記レセプターとで水素結合を形成させる工程と、
    上記標的塩基と上記レセプターとの結合に基づいて上記標的塩基を識別する工程と
    を有することを特徴とする遺伝子変異検出方法。
  6. 上記レセプターは発蛍光性を示すものであり、上記レセプターが挿入された上記二本鎖核酸の蛍光強度変化に基づいて上記標的塩基を識別することを特徴とする請求の範囲第5項記載の遺伝子変異検出方法。
  7. 上記標的塩基と上記レセプターとの結合に基づく表面プラズモン共鳴の信号強度変化、又は水晶振動子の共振周波数変化に基づいて上記標的塩基を識別することを特徴とする請求の範囲第5項記載の遺伝子変異検出方法。
  8. 塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸と、
    水素結合性を示し、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで形成された二本鎖核酸に挿入されて上記標的塩基と水素結合を形成するレセプターと、
    上記レセプターが固定化された基板と
    を有することを特徴とする遺伝子変異検出用キット。
  9. 塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸のうち一方の検出用核酸が固定化された基板に、上記標的核酸と、他方の検出用核酸と、水素結合性を示すレセプターとを滴下することにより、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで二本鎖核酸を形成させると共に、上記標的塩基と上記レセプターとで水素結合を形成させる工程と、
    上記標的塩基と上記レセプターとの結合に基づいて上記標的塩基を識別する工程と
    を有することを特徴とする遺伝子変異検出方法。
  10. 上記レセプターは発蛍光性を示すものであり、上記レセプターが挿入された上記二本鎖核酸の蛍光強度変化に基づいて上記標的塩基を識別することを特徴とする請求の範囲第9項記載の遺伝子変異検出方法。
  11. 塩基からなる標的塩基を有する一本鎖の標的核酸における上記標的塩基を挟む2種類の部分配列について相補的な2種類の一本鎖の検出用核酸と、
    水素結合性を示し、上記標的核酸と2種類の上記検出用核酸とで形成された二本鎖核酸に挿入されて上記標的塩基と水素結合を形成するレセプターと、
    2種類の上記検出用核酸の一方が固定化された基板と
    を有することを特徴とする遺伝子変異検出用キット。
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