JP4638281B2 - 検出センサ、振動子 - Google Patents
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Description
また、空気の粘性などによる振動エネルギー損失の小さい振動のさせ方(振動モード)を用いることにより、空気中においても極めてQ値(Quality Factor)の高い振動を振動子に起こさせることが可能になり、これにより精度良く周波数の変動を観測することができるようになってきた。
また、味覚や嗅覚を与える分子を、水晶発振器の表面に形成した脂質二重膜に吸着させ、この質量変化を測定する技術も提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
また、非特許文献2に記載の技術においては、分子の吸着能が高い脂質二重膜が使われているが、この膜は水分の存在が必須であり、ドライな雰囲気では利用が制限される。また水晶は自由なマイクロ加工が困難であり、またシリコンとの集積化が困難等の課題がある。これらの理由から感度を上げるには更なる工夫が必要である。
fo=α/t
で表される。ここで、α:周波数を決める定数、t:水晶振動子の厚さである。このように、QCMセンサの振動周波数はその膜厚と逆比例に関係があるため、膜厚を十分に薄くすることが出来ない。すなわちQCMセンサでは、検出する微小質量と振動子の等価質量の比を向上させるには限界があることを意味している。
また、例えば物質の量を検出するセンサを構成する場合、目的の物質以外の他の物質が振動子に付着すると、検出精度が低下してしまうことになる。したがって、センサを使用する環境に関わらず、高精度な検出が行えるセンサが求められている、という課題もある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、高感度化、小型化、低価格化、高精度化を図ることのできる検出センサ、振動子を提供することを目的とする。
駆動部は、振動子を挟んで検出部に対向する位置に配置することができる。
また、振動子と駆動部と検出部を複数組備えることもできる。
振動子は、単結晶シリコンで構成することができる。
このような振動子は、後述の数1〜数3のいずれか一つを満たすように振動する。
ここで、物質が、振動子の表面に付着するようにしてもよい。また、振動子に、物質を吸着する吸着部材を備えるようにしてもよい。この場合、吸着部材は、振動子と別体とすることもできるし、振動子と一体的に設けることも可能である。
このような検出センサにおいては、振動子に質量を有した物質が付着すると、その質量の影響を受けて振動子の振動数等の振動特性が変化する。したがって、検出部では、振動子の振動を電気的にモニタリングすることで、物質の検出を行うことができる。この場合、物質の検出とは、振動子への物質の付着の有無だけでなく、振動子への物質の付着量を検出することもできる。これにより、従来に無いディスク型の検出センサを実現することができる。
また、ここでいうポリマーのナノファイバー化とは、様々な分子に対する吸着特性が異なるポリマーの吸着能を飛躍的に挙げるため、ポリマーを数ナノメートル〜数百ミクロンメートルの大きさ(長さ)の繊維状にするものをいう。
このような振動子と基準振動子においては、逆相の振動が生じるように双方を結線することで、振動子の振動の変化を容易に検出できる。
この場合、振動子本体は、外周部を自由端としても良いし、固定端としても良い。固定端とする場合、駆動電極および検出電極は、振動子本体の表面に、間隔を隔てて対向するよう設けるのが好ましい。これにより、振動子本体と駆動電極および検出電極との静電結合を面で行うことができ、結合容量を高めることができる。
この場合、検出部は、少なくとも一対の振動子間において、物質が付着したときの振動子の振動周波数の差の変化を検出することで、振動子に対する物質の付着を検出することができる。
また、少なくとも一対の振動子のうちの一つを、物質が付着しない基準振動子とし、検出部では、振動子に物質が付着したときの、基準振動子の振動を基準とした振動子の振動の変化を検出することで、振動子に対する物質の付着を検出することもできる。
このような振動子は、カンチレバー状等とすることもできるが、ディスク状とするのが好ましい。
また、小型で安定な高感度な家庭用や個人用のガスセンサや、携帯性に優れる使い捨て型で空気中などに浮遊する有害物質の検出等の用途にも、本発明の検出センサや振動子を用いることも考えられる。さらにこれ以外の用途に対しても、本発明の検出センサや振動子の利用を妨げるものではない。
図1は、本実施の形態におけるセンサ(検出センサ)10の基本的な構成を説明するための図である。
この図1に示すセンサ10は、ディスク状で、全体として円形、矩形、あるいは適宜他の形状を有し、質量を有した分子等の検出対象物が付着すると振動周波数が変化するディスク型振動子(振動子)20と、ディスク型振動子20における振動特性の変化を検出する検出部30と、を備えている。
ディスク型振動子20において、その外周が固定されていない(Free)な状態でのディスク型振動子20の振動数を決める周波数関数と、その振動の形を示すモード関数は、以下のように決められることができ、これらはディスク型振動子20の厚みには無関係である。
すなわち、開放端条件におけるディスク型振動子20の振動周波数(周波数関数)や振動姿態(モード関数)は、円柱座標(r, θ, z)を用いた解析により、以下の通りとなる。なおAはdilatation(拡張・縮小方向)の振幅、Bはrotation(回転方向)の振幅である。
ディスク型振動子20に生じる振動には、(a)ラジアルモード(径方向にのみ振動するモード)、(b)タンジェンタルモード(Tangential Mode:径方向に直交する軸方向にのみ振動するモード)、(c)コンパウンドモード(径方向の振動および径方向に直交する軸方向の振動が複合したモード)、の3通りがある。
ラジアルモードの場合、周波数関数、モード関数は、以下の通りとなる。
また上式を書き換えることにより、等価質量Mreがmreだけ増えたときの振動周波数は次式で表すことができる。
本実施の形態におけるディスク型振動子20Aは、例えばSiによって形成され、支持部20aのみが固定された状態で、残る外周部が自由端となるように支持されている。
このディスク型振動子20Aの近傍には、駆動電極(駆動部)21と、検出電極22とが設けられている。
駆動電極21、検出電極22は、ディスク型振動子20Aに対し、所定の電圧を印加したときに、静電結合が生じるよう、微小の間隙を隔てて配置されている。図1に示したような構成においては、ディスク型振動子20Aを半径方向に振動させるラジアルモードとする。ラジアルモードは、空気の粘性による影響が小さく、高いQ値(Quality factor)が得やすい。
このようなディスク型振動子20Aを効率良く駆動するためにはディスク型振動子20Aと駆動電極21の間を、例えば100nm以下といった極めて狭い間隙として、結合容量を大きくすることが必要である。
また、ディスク型振動子20Aは、いわゆるSi単結晶を構造材料として用い、MEMS技術によって製造することができることから、Si半導体と同一チップ内にセンサ10を組み込んで作ることも可能となる。
このような凹凸や溝は、ディスク型振動子20Aの表面全体に形成しても良いが、その一部のみに形成するようにしても良い。その場合、ディスク型振動子20Aにおいて生じる振動の振幅が大きくなるような箇所に凹凸や溝を形成するのが好ましい。
さて、上記においては、ディスク型振動子20Aを、外周が固定されていない状態の例を挙げたが、外周を固定する構造とすることもできる。なお、センサ10全体としての構成は、上記第一の実施形態と同様であるので、ディスク型振動子20Bのみを中心として説明を行い、他の構成については説明を省略する。
図3に示すように、固定端型のディスク型振動子20Bは、絶縁性を有したSiからなる基板23上に、駆動電極(駆動部)24、検出電極25が設けられ、さらにその上に絶縁体26を介し、Si層27が積層された構成を有している。ここで、図2および図3に示すように、絶縁体26には、円形あるいは矩形状の開口部26aが形成されており、これによってSi層27は開口部26aの部分において振動子本体28として振動できるようになっている。この場合も、Si層27の表面には、検出対象の分子等の付着効率を高めるため、凹凸、溝29等を形成するのが好ましい。
これら駆動電極24、検出電極25は、n=2のコンパウンドモードの振動を用いる場合、図4に示すように、駆動電極24、検出電極25をそれぞれ略扇状として、二対設けるのが良い。また、n=1のコンパウンドモードの振動を用いる場合には、駆動電極24、検出電極25をそれぞれ半円状とし、これらを一対設けるのが良い。
外周が固定された固定端条件の振動の場合にも、振動子本体28の振動には、上記第一の実施形態におけるディスク型振動子20Aと同様、n=0のラジアルモードやタンジェンタルモード、n≧1のコンパウンドモードが存在するが、外周部を固定したディスク型振動子20Bに対し、駆動電極21、検出電極22を略平行に設けた上記構成においては、コンパウンドモードを使うのが好ましい。この場合、Q値も開放端条件の場合と同等の性能が得られる
しかも、振動子本体28と駆動電極24、検出電極25は、互いに略平行に配置された面を介して静電結合することができる。これにより、結合容量を大きくすることができ、駆動・検出効率をさらに高めることが可能となる。
また、このようなディスク型振動子20Bをユニット化した場合、駆動電極24、検出電極25はSi層27の背面側に隠すことができる。上記第一の実施形態で示した開放端方式のディスク型振動子20Aにおいては、必要な静電結合量を確保するためにディスク型振動子20Aと、駆動電極21、検出電極22との間に、極めて狭い間隙(例えば100nm程度以下)を設けることが必要である。このような構造のため、微小質量を有した物質や埃等がこの狭い間隙に入り込み、測定が不能となる事態が発生する可能性がある。これに対し、ディスク型振動子20Bは、駆動電極24、検出電極25を背面側に配置できるので、このような問題が発生するのを回避できる。また、外部にはSi層27が露出するのみとなり、センサ10を、デザイン性に優れたものとすることが可能となる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態として、二つのディスク型振動子20C、20Dを静電結合して構成するセンサ10について説明する。
図5に示すように、センサ10は、二つのディスク型振動子20C、20Dを静電結合して備える。ここで、ディスク型振動子20C、20Dとしては、上記第一の実施形態のディスク型振動子20Aと同様のものを例に挙げるが、もちろん第二の実施形態のディスク型振動子20Bを用いることもできる。
このようなセンサ10では、二つのディスク型振動子20C、20Dを用い、ディスク型振動子20C、20Dのそれぞれに固有の振動周波数と、二つのディスク型振動子20C、20D間の静電結合が作用することにより変化した周波数との周波数差が、ディスク型振動子20C、20Dの表面に付着した微小質量によって変化する現象を用いる。
ところで、二つのディスク型振動子20C、20Dを静電結合させるためには、二つのディスク型振動子20C、20Dを接近させて重ね合わせれば良い。また、二つのディスク型振動子20C、20Dを、静電結合電極を介して結合させるようにしても良い。この場合、上式(15)は、次式となる。
さて、式(13)、(14)より、ω0とω1の差:Δωは、次式のようになる。
この時の周波数スペクトラムは、図6に示すように、異なる二つの周波数にピークを持つ周波数スペクトラムとなる。このような静電結合型のディスク型振動子20C、20Dを、差動増幅器40の帰還回路に用いて発信機を構成したとき、二つの振動周波数ω0、ω1で発信する様に増幅器を動作させた場合には、差動増幅器40の発信動作が非線形動作であることから、最も非線形が強い2次の非線形成分だけを考慮しても、ω0、ω1、ω0−ω1、2ω0、2ω1、の5つの周波数スペクトラムが観測される。
この周波数スペクトラムの一つとして、振動周波数の差Δω=ω0−ω1を直接観測することができ、この振動周波数の差Δωは、適当な低域フィルタを使えば単独で抽出することが容易に可能である。すなわち、微小質量の付着によって生じる二つの周波数と、その差をダイレクトに観測することが可能であり、簡易に高感度な質量検出を行うことが可能となる。しかも振動周波数の差Δωは、周波数そのものが低くなっており、高周波的回路としての処理が容易になるメリットもある。
次に、本発明のさらに他の実施の形態として、二つのディスク型振動子20E、20Fを用い、片方のディスク型振動子20Fにのみ質量を付着させる構成のセンサ10について説明する。
図7に示すように、センサ10は、二つのディスク型振動子20E、20Fを並列に備えている。ディスク型振動子20E、20Fは、それぞれn=2のコンパウンドモード、いわゆるワイングラスモード(Wine-Glass Mode)で振動するように設けられている。
ワイングラスモードで振動するディスク型振動子20E、20Fにおいては、駆動電極21と検出電極22を合わせて合計4つの結合電極があるが、ディスク型振動子20E、20Fは、互いに隣り合う電極に対応する部位において、互いに逆位相で振動し、向かい合う電極に対応する部位では同相で振動する。したがって、一方のディスク型振動子20Eでは、駆動電極21から入力された信号と同相の信号を取出し、他方のディスク型振動子20Fからは逆相の信号を取り出せるように、図6に示すように結線する。これにより、検出部30では、一方のディスク型振動子20Eから生じる振動周波数と、他方のディスク型振動子20Fから生ずる振動周波数の、二つの周波数がスペクトラムとして観測される。
(a)Flexural mode(前記Radial modeに対応)
(b)Extensional mode(前記Tangential modeに対応)
(c)Compound mode(前記Compound modeに対応)
となる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
Claims (17)
- 質量を有した物質の付着または吸着により振動特性が変化するディスク状の振動子と、
前記振動子の外周部のうち少なくとも一部を支持する支持部と、
静電結合によって、前記振動子の外周側から前記振動子をその径方向または/および径方向に直交する軸方向に振動させる駆動部と、
前記振動子の外周側から前記振動子における振動の変化を静電結合によって検出することで、前記物質を検出する検出部と、を備えることを特徴とする検出センサ。 - 前記駆動部は、前記振動子を挟んで前記検出部に対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の検出センサ。
- 前記振動子と前記駆動部と前記検出部を複数組備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の検出センサ。
- 前記振動子は、単結晶シリコンで構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検出センサ。
- 前記振動子は、その表面に前記物質が付着することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検出センサ。
- 前記振動子は、前記物質を吸着する吸着部材を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の検出センサ。
- 前記振動子の表面の少なくとも一部に、凹凸または溝が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の検出センサ。
- 前記検出部は、前記振動子に付着した前記物質の量を検出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の検出センサ。
- 前記物質が特定の分子、あるいは特定の特性または特徴を有する複数種の分子であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の検出センサ。
- 前記振動子が複数設けられ、一方の前記振動子と他方の前記振動子は互いに静電結合する構成とされ、
前記検出部は、一方の前記振動子と他方の前記振動子に前記物質が付着したときの振動周波数の差の変化を検出することで、前記振動子に対する前記物質の付着を検出することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の検出センサ。 - 前記振動子と並列して、前記物質が付着しない基準振動子が設けられ、
前記検出部は、前記振動子に前記物質が付着したときの、前記基準振動子の振動を基準とした前記振動子の振動の変化を検出することで、前記振動子に対する前記物質の付着を検出することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の検出センサ。 - 前記振動子と前記基準振動子は、逆相の振動が生じることを特徴とする請求項12に記載の検出センサ。
- 質量を有した物質の付着を検出するための振動子であって、
振動子本体と、
前記振動子本体の外周部のうち少なくとも一部を支持する支持部と、
前記振動子本体に対して間隙を隔てて設けられ、前記振動子本体に電圧を加えて静電結合によって振動させる駆動電極と、
前記振動子本体に対して間隙を隔てて設けられ、前記振動子本体の振動による電圧の変化を静電結合によって検出する検出電極と、を備え、
前記駆動電極および前記検出電極は、前記振動子本体と間隔を隔てて対向するよう設けられていることを特徴とすることを特徴とする振動子。 - 前記振動子本体は、外周部が自由端とされていることを特徴とする請求項14に記載の振動子。
- 前記振動子本体は、外周部が固定端とされていることを特徴とする請求項14に記載の振動子。
- 前記振動子本体はディスク状であることを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の振動子。
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