JP5083984B2 - 検出センサ、振動子 - Google Patents
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また近年、燃料電池の開発が盛んに行われている。燃料電池は水素を用いるため、水素ステーションや、燃料電池を使用する車両や装置、機器等において、水素の漏れが無いか監視するのが好ましい。このような用途にも、上記センサは適用できる。
上記用途以外にも、特定種の分子を吸着することで、その吸着の有無あるいは吸着量を検出するセンサは、例えば食物の鮮度や成分分析、快適空間を提供・維持するための環境制御、さらには、人体等、生体の状態検知等に用いることが考えられる。
こうした従来のカンチレバーの共振周波数変化を用いてガス検知をする方法においては、センサ自体を、微細加工技術で製作する大きさ数十〜数百μmのカンチレバーで構成することができる。したがって、センサの小型化が可能であり、また前述のように振動Q値も高くできる特徴があるので、小型化、高感度化の面で優れた構成であると言える。
圧電層を形成する圧電材料としては、Pb(鉛)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタニウム)を含む原料から形成した、いわゆる強誘電体薄膜が注目されている。
ここで、カンチレバー表面には、強誘電体薄膜からなる圧電層や電極層が設けられている。これら圧電層や電極層は、それ自体が減衰を有し、カンチレバーの振動エネルギにロスが生じる。その結果、カンチレバーのQ値の低下を招き、センサとしての感度の低下につながる。この点において、現状の技術には改善の余地がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、より高感度化を図ることのできる検出センサ、振動子を提供することを目的とする。
このような検出センサにおいては、アクチュエータを振動させると、アクチュエータの振動が連結部材を介して振動子に伝達され、これによって振動子を駆動することができる。このようにして、振動子とは別体に設けたアクチュエータで振動子を振動させることで、従来のように振動子の表面に圧電材料からなる圧電層や駆動電極等を設ける必要がなくなる。その結果、振動子の振動特性が阻害されることなく、高い振動特性で振動子を駆動することができる。
これにより、より高い感度での検出が可能となる。
より高い感度での検出のため、さらに、振動子の端部と、検出子を、それぞれ櫛歯状に形成し、互いに間隔を隔てた状態で噛み合うように配置するのが好ましい。
つまりアクチュエータを、振動子と同様のカンチレバー式とするのである。
このような振動子は、前記したような検出センサの他、振動子の振動特性の変化をモニタリングすることで行える様々な用途に用いることが可能である。
また、検出部は、振動子の少なくとも一方の端部と、端部に間隔を隔てて対向する検出子との間の静電容量を検出することで、振動子における振動の変化を高感度に検出できる。
その結果、振動子およびこれを用いた検出センサを高感度なものとすることができる。また、同等の感度であれば従来よりもはるかに小型な検出センサ、振動子を実現することができる。
図1は、本実施の形態における検出センサ10の構成を説明するための図である。
この図1に示すように、検出センサ10は、検知対象となる特定種の分子(以下、単に分子と称する)を吸着することで、ガスや匂い等の存在(発生)の有無、あるいはその濃度の検出を行うものである。この検出センサ10は、分子を吸着する吸着部20を備えた振動子30と、振動子30を駆動するアクチュエータ(アクチュエータ本体)40と、吸着部20への分子の吸着を検出する検出部50とから構成されている。これら振動子30、アクチュエータ40、検出部50は、シリコン系材料からなる基板60に、MEMS技術を用いることによって形成されている。
この振動子30は、平面視長方形状で、基板60を構成するシリコン系材料、特に好ましくは単結晶シリコンから形成されている。振動子30の寸法の一例を挙げると、厚さは2〜5μm、長さは30〜1000μm、幅は10〜300μmとするのが好ましい。
吸着部20は、無機系材料や、有機系材料からなる膜によって形成することができる。吸着部20を構成する無機系材料とすれば、代表的なものに二酸化チタン(TiO2)があり、吸着効率を高めるために二酸化チタンを多孔体状とするのが好ましい。そして、この吸着部20を、振動子30の上面を覆うように形成するのが好ましい。吸着部20を構成する有機系材料としては、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリアクリルアミン、ポリジメチルシロキサン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリブタジエン、ポリスチレン重合体等のあらゆる高分子等がある。この吸着部20では、特定種の分子、あるいは特定の特性または特徴を有する複数種の分子のみを吸着する、分子に対する選択性を有したものとすることができ、その選択性は、高分子を形成する官能基や、架橋の状態等の様々な要素で決まると考えられる。
各アクチュエータ40は、振動子30と同様、一端が固定端40a、他端が自由端40bとされたカンチレバー状をなしている。ここで、アクチュエータ40は、固定端40aと自由端40bを結ぶ軸線が、振動子30の長手方向にほぼ直交する方向に一致するように設けられている。
圧電層44を形成する圧電材料としては、Pb、Zr、Tiを含む原料から形成した、いわゆる強誘電体薄膜が注目されている。より詳しくは、圧電層44は、Pb、Zr、Tiを含む材料(以下、これをPZT材料と称することがある)から形成され、これが結晶化した状態で、例えば500nm〜2μm程度の厚さに形成されている。この圧電層44は、例えば一層当たり100〜130nmの薄膜を複数層積層することで、上記の厚さを実現することができる。
このような材料としては、例えば、Pbペロブスカイト二成分・三成分系強誘電体セラミックス、非鉛系ペロブスカイト構造強誘電体セラミックス、BaTiO3(チタン酸バリウム)セラミックス、KNbO3(ニオブ酸カリウム)−NaNbO3系強誘電体セラミックス、(Bi1/2Na1/2)TiO3系強誘電体セラミックス、タングステン・ブロンズ型強誘電体セラミックス、(Ba1−xSrx)2NaNb5O15[BSNN]、BaNa1−xBix/3Nb5O15[BNBN]、ビスマス層状構造強誘電体と粒子配向型強誘電体セラミックス、ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)等を用いることができる。
また、PZT材料以外にも、ZnO(酸化亜鉛)や、AlN(窒化アルミニウム)等を圧電層44に用いても良い。
ここで、アクチュエータ40の自由端40bは、振動子30に対し、所定のクリアランスを隔てて対向している。アクチュエータ40や振動子30が振動するときには、アクチュエータ40や振動子30の表面近傍には、アクチュエータ40や振動子30に接触する雰囲気(空気)との間で生じる摩擦により境界層が存在する。前記のクリアランスを境界層の厚さよりも大きく設定することで、アクチュエータ40と振動子30の挙動が境界層によって互いに影響を受けないようにするのが好ましい。
なお、この矯正ビーム49は、アクチュエータ40に反りが生じていても問題にならないような反り量である場合や、アクチュエータ40の反りを抑えることができた場合には、これを省略することも可能である。
このようにして、振動子30は、振動子30とは別に設けられたアクチュエータ40によって駆動されるのである。このとき、振動子30上の吸着部20に質量を有した物質が付着すると、その質量の影響を受けて振動子30の振動数が変化する。
ここで、図4は、アクチュエータ40に静的な駆動力を与えたときの、アクチュエータ40および振動子30の挙動の解析結果である。なお、アクチュエータ40および振動子30の挙動は、S1〜S9の9段階の変位で示した(S1が最小、S9が最大であり、濃色であるほど変位が大きい。)。この図4に示すように、振動子30は、1次モードにおいて、連結ビーム70A、70Bによって支持された中間部から、両端部30a、30bの自由端に行くにしたがいその変位が大きくなっていることがわかる。
また、図4に示すように、2次モードにおいて、連結ビーム70A、70Bによって支持された中間部と、両端部30a、30bの自由端との中間部において、その変位が最も大きくなっていることが分かる。
また、櫛歯状部50A、50Bを櫛歯状とした静電容量式の検出部50を用いることで、高感度な検出が行える。
このようにして、検出センサ10をより高感度なものとすることができる。また、同等の感度であれば従来よりもはるかに小型な検出センサ10を実現することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
Claims (8)
- 梁状で、その長手方向の中間部において、幅方向両側で支持され、質量を有した物質の付着または吸着により振動特性が変化する振動子と、
前記振動子の近傍に設けられて、設定された振動特性で振動するアクチュエータと、
前記アクチュエータと前記振動子の前記中間部を連結することで前記振動子を支持するとともに、前記アクチュエータの振動を前記振動子に伝達することで前記振動子を振動させる連結部材と、
前記振動子における振動の変化を検出することで、前記物質を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出センサ。 - 前記検出部は、前記振動子の少なくとも一方の端部と、前記端部に間隔を隔てて対向する検出子との間の静電容量を検出することで、前記振動子における振動の変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出センサ。
- 前記振動子の前記端部と、前記検出子は、それぞれ櫛歯状に形成され、互いに間隔を隔てた状態で噛み合うように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の検出センサ。
- 前記アクチュエータは、一端部または両端部が固定された梁状のアクチュエータ本体と、
前記アクチュエータ本体に振動を生じさせるために前記アクチュエータ本体の表面に設けられ、圧電材料からなる圧電層と、
前記アクチュエータ本体の表面に設けられ、前記圧電層に電圧を印加する駆動電極と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の検出センサ。 - 前記圧電層に内在する残留応力による前記アクチュエータ本体の反りを矯正するための矯正部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の検出センサ。
- 前記検出部は、前記振動子に付着した前記物質の量を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の検出センサ。
- 前記物質が特定の分子、あるいは特定の特性または特徴を有する複数種の分子であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の検出センサ。
- 梁状で、その長手方向の中間部において、幅方向両側で支持され、質量を有した物質の付着または吸着により振動特性が変化する振動子と、
前記振動子の近傍に設けられて、設定された振動特性で振動するアクチュエータと、
前記アクチュエータと前記振動子の前記中間部を連結することで前記振動子を支持するとともに、前記アクチュエータの振動を前記振動子に伝達することで前記振動子を振動させる連結部材と、
を備えることを特徴とする振動子。
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