JP4637880B2 - 製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法 - Google Patents

製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法 Download PDF

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Description

本発明は、電気炉などの製鋼工程において生成される還元期の溶融スラグを冷却する際に、スラグの崩壊による粉塵の発生を防止できる製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法に関する。
電気炉製鋼法又はステンレス製鋼法において発生する還元期の溶融スラグ(以下、単に還元期スラグ又は溶融スラグともいう)は、冷却過程において粉化するため、その取り扱い作業中に粉塵が発生していた。
一般に、上記した方法で発生する還元期スラグは、脱硫などに代表される精錬能力を高めるため、塩基度(CaO/SiO)が高くなる傾向がある。このスラグのうち、塩基度が1.5以上のスラグは、トリカルシウムシリケート(3CaO・SiO)とダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO)を含んでいる。
このトリカルシウムシリケートは、冷却過程でダイカルシウムシリケートとライム(CaO)に分解する。
また、ダイカルシウムシリケートは、冷却過程で、約2130℃で液相からα型に、約1450℃でα型からα´型へ相転移し、更に約850℃でα´型からγ型に相転移する。このうち、α´型からγ型への相転移は、ダイカルシウムシリケートの密度が3310kg/mから2970kg/mへと小さくなる膨張変態であるため、体積膨張により粉化現象が生じる。
従来、これらの還元期スラグの処理方法としては、溶滓鍋で運搬されてきた高温の溶滓を滓畠全体に広がるように(展開状に)放流し、空冷させる方法がある。しかし、この方法では、処理に長時間を要するだけでなく、広い場所(畠)を確保しなければならず、更には、屋外で冷却するため強風時に粉化したスラグが発塵するという問題があった。
そこで、処理時間の短縮と、発塵の防止を目的として、例えば、特許文献1には、溶融スラグを地表に配置した傾斜床上に広げて急冷する方法が開示されている。また、特許文献2には、水砕スラグを製造する方法であり、高温スラグを鍋から水砕樋を介して水槽中に投入する方法が開示されている。
詳細には、特許文献1では、ステンレス鋼溶製時に発生する溶融スラグを、その温度が1300℃以下になるまで溶滓鍋中に保持した後、地表に配置した傾斜床上に放流し、この溶融スラグに散水して急冷することで、β型に変態した緻密なスラグに固化させている。
また、特許文献2では、溶融スラグを専用の溶滓鍋に受け取り、この溶融スラグを溶滓鍋から、巾広く噴射された高圧水上に注出して小粒化すると共に、この小粒滓と水の混合物を水槽内に落下させて急速に冷却している。
特開昭63−277541号公報 特開昭63−69735号公報
しかしながら、特許文献1では、1300℃以下の溶滓を傾斜床上に広げて放流した後、この溶融したスラグに散水してスラグを急冷するため、散水された冷却水が溶滓表面上に滞留する。これにより、冷却水が急激に加熱されて沸騰し水蒸気となり、体積が急激に膨張して上昇気流が生じるため、スラグ表面で粉化したスラグがこの上昇気流と共に舞い上がり、環境を悪化させる恐れがある。
また、特許文献2では、溶融スラグを冷却水により急冷するため、スラグ崩壊による発塵の問題が生じないばかりでなく、スラグの冷却場所も不要である。しかし、この処理に際しては、処理装置が必要であり、多額の設備投資とその処理費用がかかって経済的でなく、しかもスラグ量に対する冷却水量が過小の場合には、水蒸気爆発の危険性を伴うという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、還元期の溶融スラグの冷却を、環境に悪影響を与えることなく、経済的かつ安全に実施可能な製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法は、製鋼工程で発生する還元期の溶融したスラグを放冷して600℃以上800℃以下の温度に凝固させた後、該凝固したスラグの上部に、該スラグ1m当たり0.4m/時間以上1.5m/時間以下、かつ該スラグ1トン当たり0.5以上1.4m以下の冷却水を霧状に散水して、該スラグの崩壊による粉塵の発生を防止しながら該スラグを冷却する。
発明に係る製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法において、前記冷却水による散水は、前記凝固したスラグを150mm以上500mm以下の厚みに均して行うことが好ましい。
本発明に係る製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法において、前記放冷は、前記還元期の溶融したスラグを溶滓鍋に受けて冷却した後、該溶滓鍋を冷却ピットに移動させて傾倒して、該スラグを該冷却ピットに排出して行い、前記冷却水による散水は、前記凝固したスラグを水冷ピットに入れて行うことが好ましい。
請求項1〜記載の製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法は、スラグの上部に対して所定量の冷却水を霧状に散水し、スラグの表面を均一に冷却するので、小さな水滴がスラグ表面で気化し、その蒸発熱でスラグの熱を奪うことができる。このため、スラグの冷却効率を高めることができ、冷却時間の短縮が図れる。
また、スラグを凝固させた後に、冷却水を散水しスラグを冷却するため、溶融状態のスラグに冷却水が接触することで起こる冷却水の突沸現象、及び十分に冷却されていないスラグ(例えば、未冷却塊スラグ)が冷却水中に浸漬することで起こるスラグの突沸現象を防止でき、粉塵の発生、及びこれに伴う粉塵の飛散を防止できる。
そして、冷却水を霧状に散水するので、スラグの上方にミストのカーテン(霧で覆われた空間)を形成できる。これにより、スラグの表層部で発生した粉塵を包み込み、また粉塵が飛散した場合には、その粉塵を捕捉して落下させることができるので、粉塵の発生及び飛散を防止できる。
以上のことから、還元期の溶融スラグの冷却を、環境に悪影響を与えることなく、経済的かつ安全に実施できる。
特に、凝固したスラグの温度を規定するので、冷却水による散水の際に、スラグの突沸現象を確実に防止して、粉塵の発生を防止できる。
請求項記載の製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法は、均したスラグの厚みを規定するので、スラグを適切な厚みに調整でき、冷却水による冷却効率を更に高めることができる。
請求項記載の製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法は、水冷ピットに入れたスラグに対して、冷却水による散水を行うので、粉塵が飛散した場合には、冷却水に捕捉されて水冷ピット内に堆積させることができる。このため、全てのスラグは冷却水により浸潤された状態となり、その後の処理作業で粉塵の発生はなく、例えば、スラグの水切り等の処理を行って、スラグの水分量を調整することで、骨材等の二次利用も可能となる。
なお、還元期の溶融したスラグは、スラグの処理を行う際に通常使用する溶滓鍋、冷却ピット、及び水冷ピットを使用して冷却処理するので、多大な設備投資を行うことなく、既存の設備を使用でき経済的である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法の説明図、図2(A)、(B)はそれぞれ同製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法に使用する粉塵発生防止装置の平面図、側断面図、図3は実験に使用した散水式装置の説明図、図4は実験に使用した放流式装置の説明図、図5はスラグ1トン当たりの注水原単位と粉塵濃度との関係を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法は、製鋼工程で発生する還元期の溶融したスラグ(以下、還元期スラグ又は溶融スラグともいう)を放冷して凝固させた後、凝固したスラグ(以下、凝固スラグともいう)10の上部に冷却水を霧状に散水して、凝固スラグ10の崩壊による粉塵の発生を防止しながら凝固スラグ10を冷却する方法である。以下、詳しく説明する。
まず、製鋼工程で発生する溶融スラグを溶滓鍋11に受滓して、鍋内で一定時間(例えば、4〜5時間程度)冷却し、溶融スラグの温度を、例えば、800〜1300℃の範囲内の温度まで下げる。なお、溶融スラグは、例えば、電気炉又はAOD炉から発生したものを使用できる。
次に、鍋運搬車12により、溶滓鍋11を冷却ピット13に移送し、表層部が凝固した状態で、内部が溶融状態となった半凝固スラグ14を、溶滓鍋11を傾倒させることで、溶滓鍋11から冷却ピット13へ排出して放冷する。
半凝固スラグ14を冷却ピット13内で放冷し(例えば、放冷時間、1〜2時間)、その内部が凝固した時点、例えば、スラグの温度が600℃以上1000℃以下となった時点で、この凝固スラグ10を重機(例えば、バックホー)15により水冷ピット16に入れる。
ここで、凝固スラグ10の温度を600℃以上1000℃以下(好ましくは、上限を800℃)とすることで、過剰に冷却時間を要することなく、しかも半凝固スラグ14を確実に凝固することができる。
また、水冷ピット16に入れられる凝固スラグ10は、その厚みが100mm以上500mm以下(好ましくは、下限を150mm、上限を300mm)となるように、均し作業を行う。これにより、凝固スラグ10の冷却効率を十分に高めることができる。
均し作業が終了した直後、凝固スラグ10の上部に対して、図1、図2(A)、(B)に示す水冷ピット16の上部に設けられた複数(1つでもよい)の散水ノズル17により、冷却水を霧状に散水し、ミストカーテン18(霧で覆われた空間)を形成する。
この水冷ピット16は、例えば、深さが2〜5m程度、一辺が3〜10m程度で、平面視して長方形(例えば、正方形、多角形、円形、又は楕円形でもよい)となっている。
また、散水ノズル17は、冷却水を霧状に散水できるものであり、散水ノズル17からの散水範囲が水冷ピット16の開放部を覆うように、本実施の形態では、水冷ピット16の各コーナー部に、それぞれ1台ずつ配置されている。なお、上記した条件を満足できれば、この配置の仕方に限定されない。
そして、散水ノズル17は、冷却水の散水条件(例えば、水冷ピットの大きさ、散水ノズルの設置個数、又は冷却水の噴霧水圧)に応じて、水平方向、斜め上方向、又は斜め下方向に冷却水を噴霧できる。
以上に示した水冷ピット16と散水ノズル17が、粉塵発生防止装置19を構成する。
ここで、冷却水を散水する理由について、散水式冷却(以下、単に散水式ともいう)と放流式冷却(以下、単に放流式ともいう)を比較した小規模実験の結果を用いて説明する。
まず、実験に供したスラグの組成と塩基度(CaO/SiO)を表1に示す。この表1においては、代表的な化学成分量を分析しているため、その合計値が100質量%になっていない。
Figure 0004637880
この散水式の実験には、図3に示す散水式装置20を使用した。この散水式装置20は、前記した粉塵発生防止装置19の実験装置であり、内径560mm、深さ850mmの缶21(水冷ピット16に相当)と、この缶21の上部に取付けられた散水ノズル22(散水ノズル17に相当)とを有している。なお、缶21の内部で発生した粉塵は、缶21の上部に設けられた円筒型のろ紙23を介して吸引ポンプ24により吸収され、その濃度が測定される。
一方、比較例である放流式の実験には、図4に示す放流式装置25を使用した。この放流式装置25は、上記した缶21と同一構成の缶26と、この缶26の上部側壁近傍に、放水口27が真下を向くように取付けられた給水用配管28とを有しており、上記した散水式装置20と同様の手段により、粉塵の濃度を測定できるものである。
実験に際しては、各缶21、26の底部に、それぞれ凝固した1000℃の凝固スラグ29を、厚みが150〜300mmとなるように敷き詰めた後、開閉バルブ30を開き、散水式試験については、冷却水を散水ノズル22により凝固スラグ29の上面に対して均一に15分間散水し、放流式試験については、給水用配管28により缶26の底部に冷却水を放流してその液面を上昇させ、それぞれ発生した粉塵の濃度を測定した。
得られた結果を表2に示す。なお、各実験1〜4は、凝固スラグ量、スラグの厚み、及び冷却水の注水量を、それぞれ変えた結果である。
Figure 0004637880
表2から明らかなように、散水式装置20を使用した場合の粉塵濃度は0.4〜1.45g/mであり、一方、放流式装置25を使用した場合の粉塵濃度は5.9〜36.85g/mであった。このように、散水式装置20を使用した場合は、飛散する粉塵量が少なく、放流式装置25を使用した場合の粉塵量の1/4〜1/25程度であった。
このように、散水式装置20を使用した場合に粉塵濃度を低値にできたのは、凝固スラグ29の上面全体が冷却水により充分に浸潤され、これにより凝固スラグ29の表面で水分が蒸発して凝固スラグ29の熱を奪うことができ、また発生した粉塵をミストカーテンで捕捉して落下させたためだと考えられる。一方、放流式装置25を使用した場合に粉塵濃度が高値になったのは、缶26の底部から水位を上昇させながら高温の凝固スラグ29を冷却するため、水が溜まった状態で水の沸騰と蒸発が同時に生じ(突沸現象)、粉化した粉塵が蒸気と共に舞い上がったためだと考えられる。
この実験により、散水式装置20を使用した場合、即ち粉塵発生防止装置19を使用した場合の有効性を確認できた。
なお、粉塵発生防止装置19の散水ノズル17を使用して冷却水を散水するに際しては、凝固スラグ10に対して、凝固スラグ1m当たり0.4m/時間(m/hr・mとも言う)以上1.5m/時間以下、かつ凝固スラグ1トン当たり0.2m(m/t−スラグとも言う)以上1.4m以下の冷却水を、霧状に散水する。
ここで、凝固スラグ1m当たりの冷却水量(m/時間)を規定した理由について、表2を参照しながら説明する
水式装置の場合、注水量を0.4m/時間以上1.5m/時間以下(好ましくは、下限を0.7m/時間、上限を1.2m/時間)の範囲内に調整することで、粉塵濃度を0.4〜1.45g/mの範囲にでき、放水式装置と比較して大幅に低減できることが分かった。
また、凝固スラグ1トン当たりの冷却水量(m)を規定した理由について、図を参照しながら説明する。なお、図は、前記した散水式装置20により得られた表2に示す注水原単位と粉塵濃度との関係を、グラフ化したものである。
散水式装置(◆)の場合、注水原単位を0.2m以上1.4m以下(好ましくは、下限を0.5m、上限を1.0m の範囲内に調整することで、粉塵濃度を0.4〜1.45g/mの範囲にでき、放水式装置(■)と比較して大幅に低減できることが分かった。
以上のことから、上記した2つの散水条件を満足した冷却水の散水は、粉塵発生防止に有効であることが分かった。
従って、粉塵発生防止装置19を使用し、凝固スラグ10に冷却水を散水して冷却することにより、スラグの突沸現象を防止でき、粉塵の発生、及びこれに伴う粉塵の飛散を防止できる。
また、冷却水を霧状に散水することにより、凝固スラグの表面を均一に冷却しながら、発生する粉を包み込み、かつ飛散した粉塵をミストカーテン18で捕捉して水冷ピット16に降下させることができるので、粉塵の飛散を防止できる。このとき、飛散した粉塵も捕捉されて水冷ピット16内に堆積するため、凝固スラグ10はすべて水により浸潤された状態となり、その後の処理作業で粉塵の発生はなく、水切り等の処理を行って適度な水分量にすることで、骨材等の二次利用もできる。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について、図1、図2(A)、(B)を参照しながら説明する。
まず、製鋼工程のAOD炉(図示しない)で発生した溶融スラグを溶滓鍋11に1チャージ(1回当たり)5トン受滓した後、鍋内で4〜5時間冷却してスラグ温度を800〜1300℃にした。次に、このスラグを鍋運搬車12により冷却ピット13に移送し、溶滓鍋11を傾倒させ、半凝固スラグ14を冷却ピット13に入れて放冷した。なお、この冷却ピット13には、4チャージ分の半凝固スラグ14を20トン移して放冷した。
このように、半凝固スラグ14を放冷した後、内部の溶滓が凝固した時点(放冷時間:1〜2時間、スラグ温度:約600〜1000℃)で、これを重機(バックホー)15で水冷ピット16(一辺:5m×8m、深さ:3m)に移して均し作業を行った。その直後、水冷ピット16のコーナ上部4点から、散水ノズル17による冷却水の霧状散水を行い、凝固スラグ10の表面を均一に冷却しながら、発生する粉を包み込み、かつ飛散する粉塵をミストカーテン18で捕捉し、水冷ピット16に降下させて、粉塵の飛散を防止した。
得られた結果を表3に示す。なお、表3には、散水式の試験結果と共に、放流式の試験結果も合わせて記載している。
Figure 0004637880
表3に示す散水式の試験で使用した凝固スラグ量は20トン、その厚みは平均0.3mであり、冷却水の散水による冷却前のスラグ温度は600〜1000℃であった。
また、散水ノズル17は、広角(噴射角度90度以内)のフラット型(水圧0.2MPa)であり、これを水冷ピット16の4角に設置した。この散水ノズル17を用い、冷却水を250L/分(リットル/分)の水量で20分間散水することにより、合計20mの冷却水を散水した。このとき、冷却水の散水量は、1m/分で20分(即ち、1.5m/hr・m)であり、散水原単位は1.0m/t−スラグであった。
また、放流式の試験には、図(A)、(B)に示す放流式装置31を使用した。この放流式装置31は、粉塵発生防止装置19の水冷ピット16の上部側壁に、放水方向(軸心)が真下に近づくように放水用配管32を斜めに取付けたものである。
この放流式装置31を使用し、水冷ピット16に対して冷却水を下向きに放水し、凝固スラグ10の底部から冷却した。なお、凝固スラグ量、その厚み、及び冷却前のスラグ温度は、前記した散水式の試験と同じである。
また、冷却水の放流量は、1m/分で20分であり、散水式の場合と同様、合計を20mとした。
冷却水の散水、又は放流が終了した後は、スラグ10が300℃に冷却されるまで水冷ピット16内に放置し、冷却時間の経過と共にその温度を測定した。ここで、スラグ10の冷却時間の測定を、スラグ温度が300℃になるまでとしたのは、次工程でのスラグの取り扱いを、安全かつ効率的に実施できる温度が300℃程度だからである。なお、散水式及び放流式のいずれについても、試験は5回ずつ行っており、得られた温度の平均値及びその偏差を、冷却時間ごとに、表3に記載している。
放流式では、冷却時間が6時間のときに突沸現象が発生して、多大な粉塵が発生した(表3中の*1)。この突沸現象は、図に示すように、十分に冷却されていなかった未冷却の塊スラグが、凝固スラグの上部から崩れ落ち、冷却水中に水没して爆裂したためと考えられる。なお、凝固スラグの温度が300℃以下に低下するまで8時間を要した。
一方、散水式では、突沸現象は生じなかった。また、凝固スラグの温度が300℃に低下するまで6時間を要し、放流式よりも2時間短縮できることを確認できた。なお、表3の8時間経過時の凝固スラグの温度が、7時間経過時の凝固スラグの温度より上昇しているのは、凝固スラグ中に塊スラグが残存し、冷却しにくい状態の試験結果が含まれていたことに起因するものと考えられる(表3中の*2)。
なお、散水式については、上記した処理を1ヶ月間行ったが、突沸現象は1度も発生しなかった。一方、放流式については、1ヶ月間に3回の突沸現象が発生した。
このように、水冷ピット16内で300℃まで冷却されたスラグは、約22質量%の水分を含んで泥状になっているため、重機15で水冷ピット16から排出して水切りし、水分を調整して(約14質量%以下)骨材等の用途に供する。この間の作業中は、スラグが水分を含んでいるため、粉塵の発生(飛散)はなかった。
以上のことから、本発明を適用することで、還元期の溶融スラグの冷却を、環境に悪影響を与えることなく、経済的かつ安全に実施できることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
本発明の一実施の形態に係る製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法の説明図である。 (A)、(B)はそれぞれ同製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法に使用する粉塵発生防止装置の平面図、側断面図である。 実験に使用した散水式装置の説明図である。 実験に使用した放流式装置の説明図である スラグ1トン当たりの注水原単位と粉塵濃度との関係を示す説明図である。 (A)、(B)はそれぞれ従来例に係る放流式装置の平面図、側断面図である。 未冷却塊スラグの突沸現象の説明図である。
10:スラグ、11:溶滓鍋、12:鍋運搬車、13:冷却ピット、14:半凝固スラグ、15:重機、16:水冷ピット、17:散水ノズル、18:ミストカーテン、19:粉塵発生防止装置、20:散水式装置、21:缶、22:散水ノズル、23:円筒型のろ紙、24:吸引ポンプ、25:放流式装置、26:缶、27:放水口、28:給水用配管、29:凝固スラグ、30:開閉バルブ、31:放流式装置、32:放水用配管

Claims (3)

  1. 製鋼工程で発生する還元期の溶融したスラグを放冷して600℃以上800℃以下の温度に凝固させた後、該凝固したスラグの上部に、該スラグ1m当たり0.4m/時間以上1.5m/時間以下、かつ該スラグ1トン当たり0.5以上1.4m以下の冷却水を霧状に散水して、該スラグの崩壊による粉塵の発生を防止しながら該スラグを冷却することを特徴とする製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法。
  2. 請求項記載の製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法において、前記冷却水による散水は、前記凝固したスラグを150mm以上500mm以下の厚みに均して行うことを特徴とする製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法。
  3. 請求項1又は2記載の製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法において、前記放冷は、前記還元期の溶融したスラグを溶滓鍋に受けて冷却した後、該溶滓鍋を冷却ピットに移動させて傾倒して、該スラグを該冷却ピットに排出して行い、前記冷却水による散水は、前記凝固したスラグを水冷ピットに入れて行うことを特徴とする製鋼還元期スラグの粉塵発生防止方法。
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