JP4637536B2 - キノコ廃菌床を原料としたバイオマスエタノール - Google Patents

キノコ廃菌床を原料としたバイオマスエタノール Download PDF

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Description

本発明はキノコ栽培後に廃棄物として残る廃菌床中の、エネルギー資源として利用可能な、木質バイオマスを利用してエタノールへ変換する方法に関するものである。
木材成分の約半分を占めるセルロースはグルコースが多数直鎖状に連なったもので、そのままでも紙などに利用できるが、グルコースまで分解する(糖化)ことによりその利用法は広がる。特に注目されているのはグルコースをエタノールに変換することによる液体燃料としての利用である。
しかしながら木材のセルロースはリグニンなどに囲まれており単離し難く、セルロース自身も難分解性であるという点でその利用が制限されていた。そのため古くは第二次世界大戦前より様々な分解(糖化)法が考えられ、試みられてきた(非特許文献1)。
古くから木材を糖化する方法として知られているのは濃硫酸若しくは希硫酸糖化法である。これは濃硫酸や希硫酸と木材を高温下で反応させることにより、セルロースを加水分解してグルコースを取り出す方法である。この方法でよく知られているのが、濃硫酸法では北海道法、希硫酸法ではショーラー法である(非特許文献2)。またそれが改良された方法として短時間の濃硫酸処理の後に30%程度まで硫酸を希釈して熱をかけて糖化するアルケノール社の方法(非特許文献3、4)などが存在する。
これらの方法は最も簡単に木材からグルコースを取り出すことができる方法として知られているが、反面濃硫酸を用いるため装置の腐食を考慮する必要があり、その素材にかける費用やメンテナンスの費用が大きくなるという問題がある(非特許文献2、5)。
濃硫酸糖化法に代わる方法として考えられているのは、酵素糖化法である。これはセルロースを分解する酵素セルラーゼを用いて濃硫酸糖化法よりも温和な条件でグルコースを得ることを目的としている(非特許文献2、5)。また、セルラーゼ糖化と酵母によるエタノール発酵を同時併用による併行複発酵を行うことで、セルラーゼ類の活性が生じた糖により阻害されることが防がれ、エタノール変換効率が上昇する(非特許文献6)。さらにひとつの容器で二つの反応を同時に行うことができるので、工程を簡略化することができる。しかし、木材中セルロースは前述の通りリグニンなどに囲まれているため、そのままではセルラーゼと反応させても糖化し難い。従って木材に何らかの前処理が必要となる(非特許文献2、5、6)。
酵素糖化法の前処理として考えられている方法にアルカリ法や希硫酸法などが存在する(非特許文献5、7)。アルカリ処理は草本系植物では実績があるものの、木質系植物ではあまり報告がない。一方の希硫酸処理は1%未満の硫酸で木材を処理するものであり、酵素糖化法の前処理としては最も用いられている方法である。しかしながら、高温高圧化での反応を必要としており、またやはり硫酸を用いるということで濃硫酸糖化法と同様に装置の腐食の問題が生じてしまう(非特許文献7)。
薬品を用いない、物理的前処理法として考えられている方法に、蒸煮・爆砕法、電子線照射や粉砕法などがある。蒸煮・爆砕法は木材に高熱の蒸気を吹きかけつつ高圧とし、適当な時間の後、圧を一気に開放することにより木材の組織・細胞を破壊する方法である。この方法は濃硫酸法と並んで実用化が進んでいるが、ヘミセルロース分の回収率(キシロースで回収率65%未満)が低く、将来的にヘミセルロース分も用いるエタノール製造を行う際の障害になると考えられている(非特許文献7)。
電子線照射は実験室での検討が行われているに留まっており、実用化には程遠い。
粉砕法は種々の検討がなされているが、時間やエネルギーがかかり過ぎるという点で木材の前処理として有効ではないとの見解が取られている。現在、粉砕処理は他の前処理(硫酸など)の効率を上げるための粗粉砕(粒径1〜3cm以下)として利用することが多い(非特許文献7)。
一方、マイタケを含むキノコ類の人工栽培では周年空調菌床栽培が一般的となりつつある。菌床栽培では細かく砕いたオガコとキノコの栄養分を混ぜ合わせ、含水率を適宜調節して袋やビンに詰めた培地を作成する。これを滅菌してからキノコ菌糸を植えて適当な条件下で数ヶ月培養し、キノコ菌糸を培地内外に蔓延させた(この状態を菌床と呼ぶ)後、キノコ子実体を形成させる。自然界ではキノコ類が含まれる担子菌類は他の生物と競合せざるを得ずその結果として難分解性の木材を資化しているが、菌床栽培ではその競合が無いためより資化しやすい木材以外の栄養分を使って成長していると考えられている。
実際、マイタケでは木材のβ-グルカン(セルロース)よりも栄養分由来のα-グルカン(TFA可容性グルカン)を優先的に消化することが知られている(非特許文献8)。よって、菌床栽培でキノコを収穫した後に残る菌床(廃菌床)には未利用のオガコ中セルロース分がほとんど無傷のまま残っていると推察される。さらに、培地成分中オガコ重量の割合(水を除く)は、ブナシメジなどが40%程度であるのに対して、マイタケなど一部のキノコでは50〜90%(主に広葉樹)と大部分がオガコである。かかる観点から廃菌床、特にマイタケ等培地成分の大部分がオガコであるキノコの廃菌床は木質系バイオマス資源として有望である。さらにマイタケなどは工場での大規模栽培が行われており、大量にまとめて廃菌床を得ることができる。しかしながら、現在のところ廃菌床の利用はボイラーの熱源などごく一部に限られている。
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本発明は、キノコ廃菌床を利用してエタノールを容易にかつ収率よく得る方法の開発を課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、キノコの工場栽培で大量に排出され、限定的な利用しかできない廃菌床に残っているセルロースを酵素処理により糖、さらにエタノールに変換する際、キノコ廃菌床が木材等に比較して粉砕化し易いこと及び粉砕処理のみによる前処理効果が高いことを知見して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、キノコ廃菌床を粉砕機で粉砕し、酵素による糖化の後微生物によるアルコール発酵を行うか又は酵素による糖化と微生物によるアルコール発酵の併用による併行複発酵を行い、エタノールを得るもので、以下詳述する。
本発明は、
(1)キノコ廃菌床を乾燥機で乾燥させた後、粉砕機を用いて粉砕し、次いで得られた粉砕処理済みキノコ廃菌床を、セルラーゼ糖化によりグルコースを生成させた後グルコースの微生物によるエタノール発酵を行うことを特徴とするキノコ廃菌床のエタノールへの変換方法、
(2)キノコ廃菌床を乾燥機で乾燥させた後、粉砕機を用いて粉砕し、次いで得られた粉砕処理済みキノコ廃菌床を、セルラーゼ糖化と微生物の併用による同時併行複発酵を行うことを特徴とするキノコ廃菌床のエタノールへの変換方法、
(3)粉砕処理済みキノコ廃菌床の70%以上が粒子径90μm以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の変換方法、
(4)粉砕処理済みキノコ廃菌床の90%以上が粒子径90μm以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の変換方法、
(5)キノコ廃菌床がマイタケ廃菌床であることを特徴とする上記(1)乃至(4)に記載の変換方法
に関する。
まず、キノコ廃菌床(ここで言うキノコ廃菌床とは、マイタケ、ブナシメジ、ナメコ、エリンギ及びシイタケなどオガコを含有する培地で袋栽培若しくはビン栽培したキノコの子実体を収穫した後の菌床を指す)を乾燥させる。廃菌床中のオガコの樹種については針葉樹と広葉樹どちらでもかまわないが、広葉樹の方が良い結果が得られる。袋栽培の場合、キノコ廃菌床は通常ブロック状で排出される。まずこれを崩してから乾燥させる。ビン栽培の場合はビン内部の廃菌床を掻き出してから乾燥させる。この時キノコ菌糸体は混入しても良い。
乾燥方法は廃菌床の水分を無くすることができ得る方法であればどのような方法を採っても良いが、送風乾燥機や真空乾燥機などを用いると簡便である。
乾燥させた廃菌床は粉砕機にて粉砕する。本発明者等は種々研究の結果廃菌床を粉砕処理することによりグルコースへの糖化率が向上し、その結果エタノール変換率が向上することを知見した。
そして更に具体的に検討したところ、粉砕後の廃菌床の粒径が90μm以下で、特に、粉砕後の廃菌床の90%以上が90μm以下である場合にグルコースへの糖化率が高まり、その後更なる検討の結果、粉砕後の廃菌床の70%以上が90μm以下である場合でもグルコースへの糖化率は、粉砕しない場合に比べて、向上することを見出した。
廃菌床を粉砕化するに当たってはジェットミル、ローターミル、ボールミル及び揺動ミルその他どの様な粉砕機でも使用可能であるが、粉砕後の廃菌床の70%以上、好ましくは90%以上が粒径90μm以下に出来るものが好ましい。
勿論、粒径が90μm以上にかなり分布する状態に粉砕して、篩を使用して90μm以下に揃えることも可能であり、斯かる場合も本願に包含される。
揺動ミルを使用した場合、効果的であり以下にその例を示す。すなわち、ミル用の容器に容器の1/3容ほどの乾燥廃菌床を入れる。容器としては粉砕機にセットできる大きさの市販のビンなどを用いて良い。材質としてはプロピレンなどのプラスチックでも良いが、最適なものはガラスである。そこに乾燥廃菌床とほぼ同量のメディアを入れる。このメディアはボールミル用のボールを用いる。ボールの材質としてはアルミナやジルコニアなどを用いるが、ジルコニアが適度な硬度を持ち最も有効である。ボール径はなるべく大きなものを用いるのが効果的ではあるが、5mmで良い効果が得られる。
粉砕は振動数、500-700rpmで2時間行う。振動数は機械の性能にもよるができるだけ大きな振動で行うと良い結果が得られる。粉砕時間は2時間以上行っても問題は無いが、2時間粉砕でほぼ求める効果を得ることができる。粉砕処理済み廃菌床の粒径はその90%以上が90μm以下まで小さくなるとその後の糖(やエタノール)への変換が容易となるが、可能な限り粒径を小さくすると良い。
本発明におけるキノコ廃菌床の粉砕処理は、木材等の粉砕処理に比べ、短時間で、しかもエネルギーも少なく簡便に出来経済的である。
粉砕終了後、メディアのボール径より小さな穴の開いた篩やざるなどにミル用容器から粉砕した廃菌床とメディアの混合物を入れ、振るうことで粉砕した廃菌床とメディアを分離する。次の操作で水等の液体に懸濁する場合は、その液体をミル用容器に注ぎ込み、粉砕した廃菌床とメディアの混合物を液体に懸濁してから、篩やざるなどに注ぎ込むと、粉末の飛散が抑えられるために操作が簡便である。
粉砕処理済みキノコ廃菌床はセルラーゼ糖化によるグルコースを生成させた後グルコースの微生物によるエタノール発酵を行なうか、又はセルラーゼ糖化と微生物によるエタノール発酵を併行して同時に行う併行複発酵を行うことによりエタノールに変換する。
特に本発明による粉砕処理済み廃菌床の使用は、セルラーゼ若しくはセルラーゼを主体とする酵素及び酵母とともに培養することにより、セルラーゼによる廃菌床中セルロースのグルコースへの糖化と、そのグルコースを用いて酵母によるエタノール発酵を同時に行う併行複発酵において、グルコースによるセルラーゼ活性阻害が少なくなり、より効果的に発酵が進むことになる。
発酵に用いる酵素は市販品であっても、糸状菌を培養した培養液やそれから精製したものであっても、セルロースをグルコースへ分解できるものであれば良い。酵素の量は廃菌床当り12.5−50FPU(Filter Paper Unit、ろ紙分解活性)となるように加える。酵素の形態が粉末状である場合はpH5.0付近のバッファーに懸濁すると使用しやすい。酵素液は0.45μm以下のフィルターを通して雑菌を除いておくと発酵系への雑菌のコンタミネーションを防ぐことができる。
同じく使用する微生物については、酵母ではSaccharomyces cereviciaeを用いるのが簡便であるので有効であるが、条件に応じて耐塩性のShizosaccharomyces pombeやペントース発酵が可能であるPichia stipitisを用いることができ、また酵母以外ではエタノール発酵が可能な細菌であるZymomonas mobilisなどエタノール発酵が可能である生物ならば、遺伝子組み換えをされたものも含めて何でも使用できる。S. cereviciaeを用いる場合、スラントや凍結などで保存されているものを使用して良いが、市販のパン酵母を用いても良い。パン酵母を用いる場合はその形態が乾燥であれ、生であれ、そのまま発酵系に投入することにより、発酵初期から酵母が高濃度で存在することとなるため効率が良い。スラント等で保存してある状態の酵母を用いる場合は、併行複発酵に用いる前に液体培地を用いて前培養すると酵母の量や活性を上げることができるので望ましい。
前培養に用いる液体培地は1%酵母エキス、2%ペプトン、3%グルコース、pH5.0のような、酵母の培養に適しているものであれば何でも良い。前培養終了後に集菌して使用する。酵母の投入量は終濃度0.1g/l以上であれば問題なく発酵できるが、多ければ前述のように発酵効率が良いとともにコンタミネーションを防ぐことができる。
粉砕処理済みキノコ廃菌床は発酵量に対して適当量加えて良いが、該廃菌床が高濃度になると高粘度となるので発酵初期の攪拌が困難になる。よって、投入する粉砕処理済みキノコ廃菌床の量は攪拌機の能力を考慮してよく攪拌できる量に調整すると良い。
粉砕済みキノコ廃菌床や酵母成長に必要な栄養源を加えた発酵液はオートクレーブにて滅菌する(121℃、15分以上)。滅菌後37℃程度まで冷却し、先に述べた酵素や酵母を投入し、37℃で発酵を開始する。発酵中は嫌気状態にし、攪拌を行うと効率が上がる。こうして1−3日培養を行うことにより、廃菌床中のセルロース分をエタノールに変換することができる。
粉砕処理済みキノコ廃菌床にはキシランなどのヘミセルロース分も失われることなく残っているので、ヘミセルラーゼによるヘミセルロースの分解によりキシロースなどのペントースを中心としたヘミセルロース構成糖類を得ることが可能である。さらにこれらの糖からエタノール発酵ができる微生物(前述のZ. mobilisなど)を利用することにより、エタノール収率を大幅に向上させることも可能である。
本発明のように、キノコ栽培後の廃菌床を再利用することにより、木材を利用する場合に比較して、粉砕処理が短時間で、エネルギーも少なく簡便に出来、経済的であり、しかも緩和な製造条件で、より高い収率でエタノールが得られる。
本発明をより具体的に説明するために、以下に実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
(1)マイタケ廃菌床の粉砕処理
ブナオガコとコーンブランを体積比9:1で混合し、含水率を65%に調整したものをマイタケ栽培培地として作成した。水を除いた重量比はブナオガコが80%、コーンブランが20%となる。それを2.5kgマイタケ栽培用袋に詰めて105℃、2時間滅菌した。冷却後マイタケ菌を植菌して25℃程度で2.5ヶ月培養後16℃程度の部屋に移し、栽培袋上部を切りマイタケ子実体を発生させた。子実体の収穫適期になったら収穫し、廃菌床を得た。
マイタケ廃菌床上部の菌糸塊を取り除いた後、マイタケ廃菌床を崩してよく混ぜた。Drying Ovenを用いて60℃、一晩乾燥させた。
乾燥させたマイタケ廃菌床を100mlのねじ口ビンに40mlほど入れ、さらにメディアとしてほぼ等容の直径5mmのジルコニア製ボール又は直径6mmのアルミナ製ボールを入れた。これを2セット用意し、蓋をしっかりと閉めてから、揺動型ミルにセットした。振動数を67.5Hzに設定し、粉砕を開始した。粉砕時間は2時間とした。粉砕終了後にビンから粉砕廃菌床とメディアの混合物を目開き4.0mmの篩にあけ、振るうことにより、粉砕した廃菌床をメディアから分離した。このようにして粉砕処理済みマイタケ廃菌床を調製した。
(2)マイタケ廃菌床のグルコース変換
50mMクエン酸バッファー中に60FPU/g-バイオマスのセルラーゼ及び1mMアジ化ナトリウムが含まれた酵素液を作成し、10mlを100mgの上記(1)で得た粉砕処理済みマイタケ廃菌床を入れた50ml三角フラスコに分注した。水分が蒸発しないように蓋をし、50℃にて120rpmで振盪をしながら3日間反応させた。反応終了後、必要量をサンプリングし、沸騰湯浴中で5分保持することによりセルラーゼを失活させた。遠心にて不溶分を除いた後に、グルコースセンサーを用いて溶液中のグルコース濃度を求めた。
対照としてマイタケ栽培に用いていないブナオガコを同様に粉砕処理したもの並びに未粉砕のマイタケ廃菌床、オガコを用意し、上記と同様条件による糖化によりできたグルコース収率を比較した。グルコース収率は廃菌床中セルロース含有量を45%、ブナオガコ中セルロース含有量を57%として計算した。その結果を表1に示す。なお、廃菌床1および2はマイタケの収穫日が異なっている。
(3)マイタケ廃菌床のエタノールへの変換(併行複発酵)
エタノール変換は発酵液40mlの系で行った。すなわち、100mlの三角フラスコに30mlの50mMクエン酸−燐酸バッファー(pH5.0)をいれ、そこに4.8g(終濃度12%)の粉砕処理済み廃菌床を混合し、濃燐酸を用いてpHを5.0に調整した。別に10倍濃の0.1%酵母エキス、0.2%ペプトンからなる栄養溶液を作成した。それぞれ121℃、15分オートクレーブし、室温まで冷却した。滅菌した50mMクエン酸−燐酸バッファー(pH5.0)に乾燥酵母を10g/lとなるように加えてよく攪拌し、酵母液とした。また、60FPU分のセルラーゼ粉末を2mlのバッファーに懸濁しセルラーゼ溶液とし、それを0.42μmのフィルターを用いてフィルター滅菌した。
クリーンベンチ内で無菌的に30mlの廃菌床液に4mlの栄養溶液及び酵母液、及び2mlのセルラーゼ溶液を添加して40mlとした。三角フラスコにエタノールで滅菌した発酵栓でふたをし、隙間をパラフィルムでふさいだ。こうして調整したフラスコを37℃のインキュベーターに入れ、120往復の振盪をしながら7日間発酵(培養)させた。
対照として未粉砕のマイタケ廃菌床及びブナオガコについても上記と同様条件でエタノールへの変換を行った。結果を表2に示す。
Figure 0004637536
Figure 0004637536
表1から明らかなように、廃菌床を利用することにより前処理を行わなくても得られたグルコース収率(26.6±2.34%、35.2±4.72%)は前処理をしていないブナオガコ(2.0±0.50%)よりも極端に高くなる。廃菌床を粉砕処理することにより更にグルコース収率が高くなり、得られたグルコース収率は粉砕処理をしない場合と比較して約2.5〜2.7倍となった。ブナオガコも粉砕処理によりグルコース収率が高くなるが、廃菌床ほど多くのグルコースは得られなかった。
また、表2に表したようにエタノール変換においても表1と同様、粉末処理済みマイタケ廃菌床が高い変換率を示した。
(4)粉砕処理済み廃菌床の粒度分布
廃菌床の粒度分布は目開き90、63、32μmの篩を用いて粉砕廃菌床を振り分けた後に、それぞれの重量を測定することにより調べた。
粉砕時間の検討では上記(1)の粉砕条件で、粉砕時間を0.25、0.5、1.0、2.0または4.0時間と変えて粉砕を行い、それぞれを糖化して、グルコース濃度から収率を計算し、比較した。図1にその結果を示す。
図1から分かるように粉砕時間は2時間行うと十分であった。
次に粒度分布と糖化率との関係を検討したところ、粉砕処理前のマイタケ廃菌床では250μm以下の粒度に分布は見られないが、粉砕処理することにより90μm以下が90%以上を占めるようになった。つまり、ここまでの粉砕を行うとグルコースやエタノールへの変換が容易となる。
しかし、図2及び表3から分かるように粒度90μm以下が71%であってもグルコース収率が41.4%であるから、粉砕効果が認められる。
Figure 0004637536
粉砕時間の検討結果を示す図。 粉砕処理済廃菌床の粒度分布が糖化率に及ぼす影響を示す図。

Claims (2)

  1. マイタケ廃菌床を乾燥機で乾燥させた後、粉砕機を用いて粉砕し、次いで得られた粉砕処理済みマイタケ廃菌床を、セルラーゼ糖化によりグルコースを生成させた後グルコースの微生物によるエタノール発酵を行うマイタケ廃菌床のエタノールへの変換方法において、粉砕処理済みマイタケ廃菌床の70%以上が粒子径90μm以下であることを特徴とするマイタケ廃菌床のエタノールへの変換方法。
  2. 粉砕処理済みマイタケ廃菌床の90%以上が粒子径90μm以下であることを特徴とする請求項に記載の変換方法。
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