JP5007998B2 - リグノセルロース系植物材料腐朽物を用いる糖化方法 - Google Patents
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Description
そのような化石資源の減少や地球環境の悪化に対処するために、繰り返して生産が可能な植物を原料に用いてエタノールなどの燃料を製造することが色々行われるようになっており、より実効性の高い技術の開発が強く求められている。
そして、本発明者らは、その際に界面活性剤の添加量は、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して0.5〜5質量部が好ましく、またマンガン塩の添加量はリグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して0.05〜0.5質量部が好ましいことを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
(1)(i)リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合し且つ水分含量を60〜80質量%に調節した混合物に、腐朽菌を接種して腐朽処理を行って、リグノセルロース系植物材料腐朽物を調製し;
(ii)(a)前記(i)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物を含有する水分含量85〜95質量%の固液混合物を調製するか;または、
(b)前記(i)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に、小麦フスマおよび/または末粉を1〜20質量部(乾物換算)の割合で混合すると共に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物と小麦フスマおよび/または末粉を含有する水分含量85〜95質量%の固液混合物を調製し;
(iii)前記(ii)の(A)または(B)で調製した固液混合物を粉砕処理して、リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を調製し;次いで、
(iv)前記(iii)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を糖化酵素で処理して糖を製造する;
ことを特徴とするリグノセルロース系植物材料の糖化方法である。
(2) 前記(i)の腐朽処理を、白色腐朽菌を用いて温度20〜40℃で10〜40日間行う、前記(1)の糖化方法;
(3) 前記(i)の腐朽処理を、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合すると共に加水して水分含量60〜80質量%の混合物にし、当該混合物にpH3〜4の乳酸緩衝液を前記混合物の容量に対して1〜10容量%の割合で添加して温度90〜120℃で1〜5分間加熱処理を行った後に、腐朽菌を接種して行う、前記(1)または(2)の糖化方法;および、
(4) 前記(i)の腐朽処理において、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合した後に摩砕処理してリグノセルロース系植物材料の粒径を1cm以下にしてから水分含量60〜80質量%の混合物に調節する、前記(1)〜(3)のいずれかの糖化方法;
である。
(5) 前記(ii−a)または(ii−b)の固液混合物の調製、前記(iii)の固液混合物の粉砕処理および前記(iv)のリグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物の糖化酵素による処理の少なくとも1つを、界面活性剤および/またはマンガン塩を更に添加して行う前記(1)〜(4)のいずれかの糖化方法;および、
(6) リグノセルロース系植物材料腐朽物100質量部(乾物換算)に対して、界面活性剤を0.5〜5質量部および/またはマンガン塩を0.05〜0.5質量部の割合で添加する前記(5)の糖化方法;
である。
特に、本発明において、腐朽処理して得られるリグノセルロース系植物材料腐朽物に加水して固液混合物を調製するに当たって、小麦フスマおよび/または末粉を加えてリグノセルロース系植物材料腐朽物並びに小麦フスマおよび/または末粉を含有する固液混合物を調製し、それを用いて以後の粉砕処理および糖化酵素による糖化処理を行う場合は、リグノセルロース系植物材料腐朽物の細胞壁の破壊(分解)および損傷がより促進され、糖をさらに高い収率で得ることができる。
また、本発明においては、リグノセルロース系植物材料の腐朽処理を、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を本発明で規定する割合で混合した後に摩砕処理してリグノセルロース系植物材料の粒径を1cm以下にしてから水分含量60〜80質量%に調節した混合に腐朽菌を接種して行うことにより、リグノセルロース系植物材料の糖化率が一層向上する。
本発明において、前記したリグノセルロース系植物材料腐朽物の固液混合物の調製、当該固液混合物の粉砕処理およびそれにより得られるリグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物の糖化酵素による糖化処理の少なくとも1つを、界面活性剤およびマンガン塩から選ばれる少なくとも1種の成分を更に添加して行った場合には、糖を一層高い収率で得ることができる。
さらに、本発明による場合は、リグノセルロース系植物材料の糖化に当たって、酸やアルカリなどの化学薬品による前処理、および蒸煮装置(高温・高圧装置)やエネルギー線照射装置を使用しての前処理を行う必要がないため、前処理に用いた化学薬品の中和処理や除去処理、化学薬品の中和処理によって生じた中和廃棄物の処理やそれによる環境汚染の問題がなく、しかも蒸煮装置やエネルギー照射装置のような高価な前処理装置の設置や、厳密な工程管理の必要がない。
本発明で用いるリグノセルロース系植物材料は、リグニンおよびセルロースを主体成分とする植物材料であればいずれでもよい。
本発明で用いるリグノセルロース系植物材料としては、例えば、木質系材料(木の幹、枝、根、木の葉など)、草本系材料(稲、麦、トウモロコシ、サトウキビ、豆類などの作物や雑草の茎や葉、刈草など)を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、リグノセルロース系植物材料は、腐朽菌による腐朽処理および粉砕処理を容易にするために、予め5cm以下、更には2cm以下、特に1cm以下の寸法のチップなどにしておくことが好ましい。
本発明では、糖化率の向上のために、リグノセルロース系植物材料に腐朽菌を接種して腐朽処理する。
リグノセルロース系植物材料の腐朽処理に用いる腐朽菌としては、リグノセルロース系植物材料中のリグニンを酸性から中性域(pH2.5〜7)の好気的条件下で分解することのできる腐朽菌のいずれもが使用でき、特に限定されない。そのうちでも、本発明では腐朽菌として白色腐朽菌が好ましく用いられ、具体例としては、担子菌:SKM2102株(独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 寄託番号 FERM P−20591)などを挙げることができる。
小麦フスマおよび/または末粉を添加して腐朽処理を行うことで、小麦フスマおよび/または末粉が腐朽菌の栄養分となり、腐朽菌の働きを一層活性化して腐朽化を促進することができる。腐朽処理に当たっては、小麦フスマおよび末粉の一方のみを用いてもよいし、または両方を併用してもよい。そのうちでも、小麦フスマを用いることが、コスト、入手容易性などの点から好ましい。
また、本明細書において、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対する小麦フスマおよび/または末粉の質量(乾物換算)は、小麦フスマおよび/または末粉を135℃で2時間乾燥したときの質量いう。
そのため、リグノセルロース系植物材料の腐朽処理に当たっては、水分含量を上記した範囲内にするために、リグノセルロース系植物材料が元々水分を多く有している場合には外部から加える水の量を少なくし、一方リグノセルロース系植物材料が乾燥していて水分が少ない場合には外部から加える水の量を多くして、リグノセルロース系植物材料における水の含有割合を本発明で規定する上記した範囲に調節すればよい。
その際のpH3〜4の乳酸緩衝液としては、例えば、50%乳酸と50%乳酸ナトリウムの5:3(v/v)混合液などを用いることができる。
腐朽処理の期間は、腐朽菌の種類、リグノセルロース系植物材料の種類、リグノセルロース系植物材料の状態、小麦フスマおよび/または末粉の添加量、水分含量、温度などによって異なり得るが、一般的には10〜40日間、特に15〜30日間行うことが好ましい。
かかる腐朽処理の期間は、上記した従来の腐朽処理期間(2カ月〜半年)に比べて、大幅に短い期間である。
(a) 上記腐朽処理によって調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物を含有する水分含量85〜95質量%(固形分含量15〜5質量%)の固液混合物を調製するか[上記した工程(ii)の(a)];または、
(b) 上記腐朽処理によって調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に、小麦フスマおよび/または末粉を1〜20質量部(乾物換算)、好ましくは5〜15質量部(乾物換算)の割合で混合すると共に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物と小麦フスマおよび/または末粉を含有する水分含量85〜95質量%(固形分含量15〜5質量%)の固液混合物を調製する[上記した工程(ii)の(b)]。
上記(b)を採用した場合には、リグノセルロース系植物材料腐朽物に加えた小麦フスマおよび/または末粉が、細胞壁の破壊(分解)および損傷をより促進し、糖化酵素による糖化反応を促進する。
上記(b)に従ってリグノセルロース系植物材料腐朽物の固液混合物を調製する場合は、小麦フスマおよび末粉の一方のみを用いてもよいし、または両方を併用してもよい。そのうちでも、小麦フスマを用いることが、コスト、入手容易性などの点から好ましい。
リグノセルロース系植物材料腐朽物の固液混合物において、水の含有量が少なすぎても、多すぎても糖化率の向上効果が得られなくなる。また、水の含有量が多すぎると、糖化処理して得られる生成物からの糖の回収に要するエネルギー量が多くなり、エネルギー効率が低下する。
リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物の糖化酵素による糖化処理は、リグノセルロース系植物材料腐朽物に糖化酵素を作用させて糖を製造する従来既知の糖化方法と同様にして行うことができる。
リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物の糖化処理に用いる糖化酵素としては、リグノセルロース系植物材料の糖化処理で従来から用いられているのと同様の糖化酵素を用いることができ、その代表例としてはセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどを挙げることができ、これらの酵素の混合物が好ましく用いられる。
糖化酵素は、既に色々市販されており、具体例としては、例えば、ヤクルト薬品工業社製「オノズカ」、明治製菓社製「メイセラーゼ」などを挙げることができ、市販のものを購入して使用することができる。市販の糖化酵素は、一般にセルラーゼおよびヘミセルラーゼの両方を含んでいるものが多い。
なお、本明細書におけるセルラーゼの「ユニット」とは、FPU(Filter Paper Unit)のことであり、1FPU=1μmol Glucose/minで規定される。
限定されるものではないが、例えば、リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を用いてなる糖化処理液における水分含量およびpHを調整した後、そこに糖化酵素を前記の割合で添加して、30〜80℃の温度で、撹拌下に0.5日〜3日間程度加水分解処理を行うことにより、リグノセルロース系植物材料中に含まれていたセルロースを加水分解させて糖を生成させることができる。
糖化酵素による糖化処理に当たっては、リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物に水を加えてリグノセルロース系植物材料腐朽物の粉砕物(乾物換算)の濃度が0.1〜20質量%、特に0.5〜15質量%の水性懸濁液をつくり、そのpHを4〜5程度に調整して、糖化酵素を用いて糖化処理を行うことが、糖化の円滑な進行などの点から好ましい。
上記で得られた糖を含む反応液を用いてアルコール発酵を行う場合は、従来既知の方法と同様にして行うことができ、何ら制限されない。
また、本発明では、必要に応じて、糖化酵素による糖化処理時にアルコール発酵を同時に行うようにしてもよい。
特に、リグノセルロース系植物材料腐朽物の固液混合物の調製および/またはリグノセルロース系植物材料腐朽物の固液混合物の粉砕処理の段階に、界面活性剤およびマンガン塩の少なくとも一方、好ましくは両方を添加して、リグノセルロース系植物材料腐朽物の固液混合物の粉砕処理を、界面活性剤およびマンガン塩の少なくとも一方、好ましくは両方の存在下で行なうようにすることが、糖化率が一層高くなるので好ましい。
そのうちでも、非イオン系界面活性剤が、他の界面活性剤と併用しやすく、電解質の影響を受けにくいなどの点から好ましく用いられ、その具体例としては、モノラウリル酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを挙げることができる。
そのうちでも、本発明では、硫酸マンガンが、価格、保存性などの点から好ましく用いられる。
また、マンガン塩を添加する場合は、マンガン塩の添加量は、糖化率の向上、コストなどの点から、リグノセルロース系植物材料(リグノセルロース系植物材料腐朽物)100質量部(乾物換算)に対して、0.05〜0.5質量部であることが好ましく、0.1〜0.2質量部であることがより好ましい。
界面活性剤およびマンガン塩の添加量が多すぎると、却って糖化反応を妨げることがあるので好ましくない。
すなわち、腐朽菌によるリグノセルロース系植物材料の腐朽処理によって、リグノセルロース系植物材料の組織の部分的な破壊や脆弱化がなされると共に、小麦フスマ等に含まれる何らかの活性成分および/または界面活性剤およびマンガン塩から選ばれる少なくとも1種の成分が、腐朽化されたリグノセルロース系植物材料腐朽物の粉砕時および/または糖化時、特に粉砕時に、リグノセルロース系植物材料中のリグニンなどの難分解性成分に直接作用して、該難分解成分を多く含む細胞壁や細胞間層の破壊、分解、損傷などを一層促進し、また糖化反応時にも小麦フスマ等に含まれる何らかの活性成分および/または界面活性剤およびマンガン塩から選ばれる少なくとも1種の成分が腐朽処理や粉砕によって分解、損傷などを受けた細胞壁や細胞間層の破壊、分解、損傷などを更に促進することによって、糖化酵素が細胞壁内に存在するセルロース層に到達し易くなって、極めて高い糖化率が得られるものと推測される。
以下の実施例および比較例で用いた杉チップ中の水分含量は次のようにして測定した。
杉チップまたは小麦フスマのW0(g)を採取して、温度135℃の加熱炉に入れて、質量の減少がなくなって一定の質量になるまで加熱乾燥して(約2時間加熱)、そのときの質量(W1)(g)を測定し、下記の数式(1)により杉チップまたは小麦フスマ中の水分含量を求めた。
杉チップ又は小麦フスマの水分含量(質量%)={(W0−W1)/W0}×100 (1)
(1) 担子菌SKM2102(FERM−20591)を、ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬株式会社製「ニッスイ」)を用いて、27℃で15日間培養した。
(2) 杉チップ(径約1cm)(乾物)100質量部に小麦フスマ(水分含量10質量%)(日清製粉社製)20質量部を加えて120℃で5分間滅菌処理した水分含量75質量%の混合物に、上記(1)で培養した担子菌SKM2102(FERM−20591)を接種した。接種は、上記(1)で得られた培養済みのポテトデキストロース寒天培地を、混合物に1質量%の割合で添加することにより行った。腐朽菌の接種後、小型発酵リアクターで、容器温度30℃、通気量500ml/min・Dry・kgの条件にて15日間の腐朽処理を行って、杉チップ腐朽物を得た。
(1) ボールミル(FRITSH社製「P−5型」)にアルミナ製ボール(径2cm)15個を入れ、ボールミルを静止した状態で、調製例1で調製した杉チップ腐朽物(水分含量68.5質量%)4gに対して、調製例1で使用したのと同じ小麦フスマ、界面活性剤[関東化学社製「TWEEN20」(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンよりなる非イオン系界面活性剤)]および硫酸マンガンを下記の表1に示す量で添加した後、水を加えて、杉チップ腐朽物の固液混合物(固形分含量9質量%、水分含量91質量%)をそれぞれ調製した。
(2) 次いで、ボールミルを稼働させて、300rpmの条件下で、ボールミル内の固液混合物を1時間粉砕処理して、杉チップの水性粉砕物をそれぞれ調製した。
糖化率(%)=100−(W3/W2)×100 (2)
式中、
W2=糖化処理に供した杉チップ腐朽物の乾物量=A0−B0−C−D−E
W3=糖化処理後の杉チップ腐朽物の乾物残渣量=A1−B1
A0=糖化に供した試料(固液混合物)の質量
B0=添加した小麦フスマの乾物質量
A1=糖化処理後の固形残渣の乾燥後の質量
B1=糖化処理後の乾燥固形残渣中に含まれる小麦フスマ由来の乾燥固形残渣の質量
C=糖化に供した試料(固液混合物)の水分値から求められる水の質量
D=添加した硫酸マンガンの乾物質量
E=添加した界面活性剤の乾物質量
また、A1(糖化処理後の固形残渣の乾燥後の質量)は、上記(3)で得られた、糖化物を含む反応液を濾過して分離し、固形残渣を135℃で2時間乾燥してその質量(mg)を測定してA1とした。
例えば、糖化処理に供する試料(固液混合物)の水分含量が90質量%で、糖化に供した試料(固液混合物)の質量が5gであれば、Cは4.5gとなる。
実施例5において、界面活性剤および硫酸マンガンを、杉チップ腐朽物の固液混合物の調製時に添加する代わりに、杉チップ腐朽物の固液混合物の粉砕後に添加(杉チップ腐朽物の水性粉砕物の糖化処理の直前に添加)した以外は、実施例5と同様にして杉チップの糖化を行い、実施例5と同様にして糖化率を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1で用いたボールミルに、腐朽処理を行っていない杉チップ4g(水分含有量6質量%、径約1cm)4gおよび水38gを加え、ボールミルを稼働させて、300rpmの条件下でボールミル内の固液混合物を1時間粉砕処理して、杉チップの水性粉砕物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた杉チップの水性粉砕物5g(固形分含量450mg)を反応容器に入れ、そこにBritton−Ribinson緩衝液(pH4.5)を加えて、液のpHを4.5に調整すると共に液中の杉チップ粉砕物の濃度を(杉チップでの乾物換算)を1質量%に調整し、杉チップ粉砕物1g(乾物換算)当たりにつき糖化酵素(ヤクルト薬品工業社製「オノズカ P−1500」)の360U(ユニット)を添加した後、40℃で45時間振とうして酵素反応を行った。次いで実施例1と同様にして糖化率を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
なお、この比較例1における糖化率の算出は、上記の数式(2)において、「杉チップ腐朽物」を「杉チップ」に置き換えて、数式(2)に従って求めた。
特に、実施例2〜6では、杉チップ腐朽物の固液混合物の調製時に小麦フスマを添加したことによって糖化率が35%以上と一層高くなっている。
そのうちでも、杉チップ腐朽物に対して、小麦フスマと共にマンガン塩および/または界面活性剤を配合して固液混合物を調製した後に粉砕を行って得られる水性粉砕物に糖化酵素を接種して糖化処理を行った実施例3〜5では糖化率が40%を超えており、特にマンガン塩(硫酸マンガン)と界面活性剤の両方を杉チップ腐朽物の調製時に配合した実施例5では糖化率が51.7%と極めて高くなっている。
それに対して、杉チップを腐朽化せずに、そのまま用いて杉チップを含有する固液混合物を調製し、それを粉砕した後に糖化酵素により糖化処理を行った比較例1は、糖化率が11.1%と低い。
実施例1の(1)において、杉チップ腐朽物の固液混合物を調製する際の加水量を変えて、以下の表2に示す水分含量を有する杉チップ腐朽物の固液混合物を調製した以外は、実施例1の(1)〜(3)と同様にして、杉チップ腐朽物の糖化をそれぞれ行い、実施例1と同様にして糖化率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
Claims (6)
- (i)リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合し且つ水分含量を60〜80質量%に調節した混合物に、腐朽菌を接種して腐朽処理を行って、リグノセルロース系植物材料腐朽物を調製し;
(ii)(a)前記(i)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物を含有する水分含量85〜95質量%の固液混合物を調製するか;または、
(b)前記(i)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に、小麦フスマおよび/または末粉を1〜20質量部(乾物換算)の割合で混合すると共に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物と小麦フスマおよび/または末粉を含有する水分含量85〜95質量%の固液混合物を調製し;
(iii)前記(ii)の(a)または(b)で調製した固液混合物を粉砕処理して、リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を調製し;次いで、
(iv)前記(iii)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を糖化酵素で処理して糖を製造する;
ことからなるリグノセルロース系植物材料の糖化方法であって、
前記(ii−a)または(ii−b)の固液混合物の調製、前記(iii)の固液混合物の粉砕処理および前記(iv)のリグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物の糖化酵素による処理の少なくとも1つを、界面活性剤および/またはマンガン塩を更に添加して行うことを特徴とするリグノセルロース系植物材料の糖化方法。 - リグノセルロース系植物材料腐朽物100質量部(乾物換算)に対して、界面活性剤を0.5〜5質量部および/またはマンガン塩を0.05〜0.5質量部の割合で添加する請求項1に記載の糖化方法。
- (i)リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合し且つ水分含量を60〜80質量%に調節した混合物に、腐朽菌を接種して腐朽処理を行って、リグノセルロース系植物材料腐朽物を調製し;
(ii)前記(i)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物に、小麦フスマおよび/または末粉を1〜20質量部(乾物換算)の割合で混合すると共に加水して、リグノセルロース系植物材料腐朽物と小麦フスマおよび/または末粉を含有する水分含量85〜95質量%の固液混合物を調製し;
(iii)前記(ii)で調製した固液混合物を粉砕処理して、リグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を調製し;次いで、
(iv)前記(iii)で調製したリグノセルロース系植物材料腐朽物の水性粉砕物を糖化酵素で処理して糖を製造する;
ことを特徴とするリグノセルロース系植物材料の糖化方法。 - 前記(i)の腐朽処理を、白色腐朽菌を用いて温度20〜40℃で10〜40日間行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖化方法。
- 前記(i)の腐朽処理を、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合すると共に加水して水分含量60〜80質量%の混合物にし、当該混合物にpH3〜4の乳酸緩衝液を前記混合物の容量に対して1〜10容量%の割合で添加して温度90〜120℃で1〜5分間加熱処理を行った後に、腐朽菌を接種して行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖化方法。
- 前記(i)の腐朽処理において、リグノセルロース系植物材料100質量部(乾物換算)に対して小麦フスマおよび/または末粉を1〜100質量部(乾物換算)の割合で混合した後に摩砕処理してリグノセルロース系植物材料の粒径を1cm以下にしてから水分含量60〜80質量%の混合物に調節する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖化方法。
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JP2008206401A (ja) | 2008-09-11 |
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