JP4634603B2 - ポリマーのコーティング - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、生物医学的装置のための表面処理技術、そして特にコンタクトレンズなどの眼科用レンズのポリマー性表面の疎水性又は親水性特性を改変する方法に関する。一つの好ましい実施態様においては、本発明は、コンタクトレンズなどの生物医学的装置を、表面の親水性を増大させるために処理する方法に関する。
【0002】
各種の生物医学的用途に使用される多くの装置及び材料では、表面について要求される異なった、別個の特性を有する装置又は材料のバルクについて、ある種の特性が要求される。例えば、コンタクトレンズは、角膜の健康状態を良好に維持するために、レンズを介しての高い酸素透過性を有するのが好ましいが、例外的に高い酸素透過性を代表的に示す材料(例えばポリシロキサン)は、疎水性であり、眼に対して接着する。したがって、コンタクトレンズは、高度に酸素透過性であり疎水性であるコア又はバルク材料と、レンズが眼の上を自由に動くことを可能とする親水性を増大させるために処理又はコーティングされた表面を有することができる。
【0003】
相対的に疎水性であるコンタクトレンズ材料の親水性を変えるために、コンタクトレンズを、プラズマ処理によって処理することができる。高品質なプラズマ処理技術が、WO96/31792号にNicolson et al.によって開示されている。しかし、ある種のプラズマ処理法では、装置への多大な投資が必要とされる。更に、プラズマ処理では、プラズマに曝露する前に、レンズが乾燥している必要がある。したがって、その前の水和又は抽出過程のために湿潤しているレンズを乾燥しなければならず、乾燥装置のコストがかかり、全体的なレンズ製造工程に更に時間がかかる。したがって、ポリマー性生体材料、特にコンタクトレンズなどの眼科用レンズの表面特性を確実かつ永久的に改変するための廉価な方法が求められている。特に好ましい方法は、湿潤したレンズに直接、つまり予備的な乾燥工程を必要とせずに使用することができる方法である。
【0004】
Rubner et al.の米国特許第5,518,767号及び5,536,573号は、p−形のドーピングされた導電性ポリカチオン性ポリマー及びポリアニオン、又は水溶性、非イオン性ポリマーの二重層をガラス基質上に製造する方法を記載している。ガラス基質の広範囲な化学的前処理が、該Rubner特許には記載されている。
【0005】
特許及び文献に記載されている層ごとの高分子電解質(polyelectrode)の沈着法は、一般的に、電子装置の製造、及び堅いガラス基質の処理に関する。重要なことに、その教示により、高度に荷電された、親水性又は疎水性を有する表面を製造して、ポリカチオン性又はポリアニオン性材料をガラス基質に結合させるには、基質の複雑で、時間のかかる前処理が必要であることが示されている。
【0006】
本発明の目的は、ポリマー、特に眼科用レンズを処理して、表面特性を改変する方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、眼科用レンズの製造過程の複雑さを軽減するすることである。
【0008】
本発明の更なる目的は、レンズの優れた酸素透過性と、装着者の眼に位置した際にレンズの自由な動きを可能とする表面上での十分な親水性のバランスの取れたコンタクトレンズを提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、高品質のコンタクトレンズを製造する材料及び人員コストを引き下げることである。
【0010】
本発明の別の更なる目的は、あらかじめ乾燥する工程を必要としない、湿潤した眼科用レンズの表面特性を改変する方法を提供することである。
【0011】
本発明の上記の目的及びその他の利点は、以下の本発明の概要及び詳細な記載より明らかである。
【0012】
本発明の一つの実施態様は、コア材料及び表面コーティングを含むポリマー性装置、好ましくは生物医学的装置である。表面コーティングには、少なくとも1の二層の高分子電解質が含まれる。二重層は、コア材料に結合している第一のポリイオン性材料、及び第一のポリイオン性材料と結合している、第一のポリイオン性材料の電荷とは反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料を含む。
【0013】
本発明のもう一つの実施態様は、コア材料、及び少なくとも1の二層のポリイオン性材料を含む表面コーティングを有する生物医学的装置の製造方法であって、コア材料を第一のポリイオン性材料と接触させることによって該ポリイオン性材料を該コア材料と結合させてコーティングされた生物医学的装置を形成する工程;及び該コーティングされた装置を、該第一のポリイオン性材料の電荷とは反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料と接触させることによって、ポリイオン性の二層を有する生物医学的装置を形成する工程を含む方法である。
【0014】
好ましいコア材料の群は、実質的に表面電荷密度を有しないそれである。好ましい生物医学的装置は、眼科用レンズ、特にコンタクトレンズである。
【0015】
本発明のまた別の実施態様は、物品を支持するための取り付け具(fixture)であって、コア材料の表面上又は近くに分散した多数の(disperse plurality)一時的又は永久的電荷を有するコア材料;及びコア材料に結合している、ポリイオン性材料を含む表面コーティングを含む取り付け具である。
【0016】
本発明の更なる実施態様は、物品を製造するためのモールドであって、コア材料の表面上又は近くに分散した多数の(disperse plurality)一時的又は永久的電荷を有するコア材料;及びコア材料に結合している、ポリイオン性材料を含む表面コーティングを含むモールドである。
【0017】
本発明の別の更なる実施態様は、物品を形成し、物品を製造したモールドからコーティング材料をトランスファーグラフトすることによって、該物品をコーティングする方法であって、(a)ポリイオン性材料のコーティングをモールドに塗布する工程;(b)該モールドに液状成形材料を計量分配する工程;(c)該モールドコーティングを、該モールドから該成形材料に移行させる工程;及び(d)該液状成形材料を硬化(例えば、重合)させることによって、ポリイオン性コーティングを有する固形の成形された物品を形成する工程を含む方法である。
【0018】
本発明のまた別の実施態様は、物品の表面を改変する方法であって、(a)官能基を含むポリイオン性材料のコーティングを物品に塗布する工程;及び(b)コーティングされた物品を、官能基に反応性である材料と接触させることによって材料をポリイオン性コーティングにグラフトさせる工程を含む方法である。
【0019】
本発明の実施態様は、高分子電解質表面処理を有する、眼科用レンズなどの生物医学的装置、及び表面処理を生物医学的装置に適用する方法を包含する。特に好ましい実施態様は、高度に酸素透過性である疎水性コア、及び親水性表面を有するコンタクトレンズである。技術をより明瞭にするために、本発明の詳細を述べる前にある種の語を定義する。
【0020】
本明細書で使用する「生物医学的装置」の語は、生物学的、医学的、又はパーソナルケア用品の業界において使用される広範囲な装置を包含する。生物医学的装置としては、眼科用レンズ、経口浸透性装置及び経皮装置などの薬物送達装置、カテーテル、コンタクトレンズ消毒及び洗浄用容器、胸部インプラント、ステント、人工器官及び組織などが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用する「眼科用レンズ」は、コンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、眼帯、及び人工角膜を意味する。好ましい実施態様では、「眼科用レンズ」は、眼又は涙液と緊密に接触して配置される、視力矯正用コンタクトレンズ(例えば球状、円環状、2焦点)、眼の色を変えるためのコンタクトレンズ、眼科用薬物送達装置、眼組織保護装置(例えば、眼科用治癒促進レンズ)などのレンズを意味する。特に好ましい眼科用レンズは、長期着用コンタクトレンズ、特に視力矯正用長期着用コンタクトレンズである。
【0022】
本明細書で使用される「親水性」は、脂質よりも水とより速やかに会合する物質又はその一部を記載する。本明細書で使用する「親水性表面」は、物品のバルク又はコア材料よりもより親水性である(つまり、より疎油性である)表面を意味する。したがって、親水性表面を有する眼科用レンズは、コアよりもより親水性である表面によって、少なくとも一部囲まれた、ある程度の親水性を有するコア材料を有するレンズを記載する。
【0023】
本明細書で使用される「ポリイオン」又は「ポリイオン性材料」は、高分子電解質、p−及びn−型ドーピング導電性ポリマーを含む、多数の荷電基を含むポリマー材料を意味する。ポリイオン性材料としては、ポリカチオン(正の電荷を有する)及びポリアニオン(負の電荷を有する)の両方が包含される。
【0024】
I.コーティングの過程及び材料
A.コーティング過程
本発明の一つの実施態様は、コア材料、及び少なくとも1の二重層のポリイオン性材料を含む表面コーティングを有する眼科用レンズを製造する方法であって、コアレンズを、第一のポリイオン性材料と接触させることによってポリイオン性材料をコアレンズと結合させて、コーティングされたレンズを成形する工程;及びコーティングされたレンズを、第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料と接触させることによって高分子電解質二重層を有するコンタクトレンズを形成する工程を含む方法である。
【0025】
コーティングの塗布は、多くの方法によって行うことができる。一つのコーティング法の実施態様は、単に浸漬コーティングし、浸漬すすぎをする工程を含む。別のコーティング法の実施態様は、単にスプレーコーティング及びスプレーすすぎする工程を含む。しかし、スプレー−及び浸漬−コーティング及びすすぎの工程を各種に組合わせる多数の選択肢を、当業者であれば計画することができる。
【0026】
浸漬コーティングの選択肢は、コアレンズを、第一のポリイオン性材料の第一の溶液に含浸することによって、第一のポリイオン性材料のコーティングをコアレンズに塗布する工程;レンズをすすぎ溶液に含浸することによってレンズをすすぐ工程;及び場合により該レンズを乾燥する工程を含む。次に、ポリイオン性二重層を形成するために、第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料について、第二のポリイオン性材料を用いてこの過程を繰り返す。
【0027】
この二重層形成の過程は、より厚いレンズコーティングを生産するために複数回繰り返すことができる。二重層の好ましい数は、約5〜20の二重層である。二重層のより好ましい数は、約10〜15の二重層である。20を超える二重層が可能であるが、過度の数の二重層を有するコーティングでは、層剥離が起こり得ることが認められている。
【0028】
各々のコーティングの工程、そしてすすぎの工程の浸漬時間は、多くの因子に応じて変化させることができる。ポリイオン性溶液へのコア材料の浸漬は、好ましくは、約1〜30分間、より好ましくは約2〜20分間、そして最も好ましくは約1〜5分間の間行う。すすぎは、1つの工程で完了させてもよいが、すすぎの工程を多数行うほうが、効率的であることが認められた。約2〜5の工程ですすぎを行うのが好ましく、すすぎ溶液へのそれぞれの浸漬には、約1〜3分間を費やすのが好ましい。
【0029】
コーティングの過程の別の実施態様は、一連のスプレーコーティング技術を含む。この過程は、一般にコアレンズを第一のポリイオン性材料の第一の溶液と接触させることによって、コアレンズに第一のポリイオン性材料のコーティングを塗布する工程;レンズにすすぎ溶液を噴霧することによって、レンズをすすぐ工程;及び場合によりレンズを乾燥する工程を含む。浸漬コーティング法と同様に、スプレーコーティングの過程を、第二のポリイオン性材料で繰り返すこともでき、ここで第二のポリイオン性材料は、第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有する。
【0030】
レンズを溶液(ポリイオン性材料又はすすぎ溶液のいずれか)と接触させることは、各種の方法により行うことができる。例えば、レンズは、両方の溶液に浸漬させてもよい。1つの好適な選択肢は、溶液をスプレー又はミストの形で塗布することである。もちろん、例えば、レンズをポリイオン性材料に浸漬し、次にすすぎ溶液を噴霧するなど、多様な組み合わせを想像することができる。
【0031】
スプレーコーティングの塗布は、公知である多数の方法で行うことができる。例えば、従来のスプレーコーティング設備を用いることができ、つまり液状の物質を、液体の塗布によって、沈着の標的に対して向けられた小直径ノズルを介して噴霧する(これは、昇圧下であってもなくてもよい)。
【0032】
別のスプレーコーティング技術は、米国特許第5,582,348号に開示されているように、超音波のエネルギーを使用することを含み、例えばここで液体は、スプレー形成チップの超音波の振動によって噴霧され、それによってスプレーに変えられる。
【0033】
また別の方法は、静電的なスプレーコーティングであり、ここでは、電荷が液体又は液滴に運ばれて、コーティングの効率を増大させるものであり、この一例が、米国特許第4,993,645号に記載されている。
【0034】
スプレーコーティングのために液体を噴霧する別の方法は、純粋に機械的エネルギーを含むものであり、例えば米国特許第4,923,123号に開示されているように、高速往復運動している要素又は高速回転ディスクに液体を接触させることによる。
【0035】
スプレーコーティングのための微少液滴を調製するためのまた別の方法は、圧電性元素を使用して液体を噴霧することを含む。スプレーコーティング技術の例、及び圧電性元素を使用する装置の例は、米国特許第5,530,465、5,630,793、及び5,624,608号に記載されている。
【0036】
前述した技術のうちあるものは、エアアシスト又は高溶液圧で用いてもよい。更に、2又はそれ以上の技術の組み合わせが、ある物質及び条件については、より有用であることがわかることもある。
【0037】
スプレー塗布の好適な方法は、超音波計量ヘッドに定量ポンプを用いてポリアニオン又はポリカチオン溶液を計量分配することを含む。高分子イオン層を噴霧して、表面液滴を物質表面全体にわたって凝集させる。次に「層」を、しばらくの間相互作用させるか、又は水若しくは食塩水のすすぎ液(又はポリアニオン若しくはポリカチオンを含まないその他の溶液)で速やかにすすいでもよい。
【0038】
当業者であれば、ここで提供される広範囲な教示により、過度の実験を行うことなく、一つ以上のスプレーコーティング法を選択することができるであろう。したがって、本発明は、使用される特定のスプレーコーティング技術に限定されるものではない。
【0039】
B.コーティング材料
1.ポリイオン性材料
好適な第一のポリイオン性材料は、ポリカチオン性材料(すなわちポリマー鎖に沿って複数の正に荷電した基を有するポリマー)である。例えば、ポリカチオン性材料は、以下からなる群から選択することができる:
【0040】
(a)ポリ(塩酸アリルアミン)(PAH)
【0041】
【化1】
Figure 0004634603
【0042】
(b)ポリ(エチレンイミン)(PEI)
【0043】
【化2】
Figure 0004634603
【0044】
(c)ポリ(ビニルベンジルトリアメチルアミン)(PVBT)
【0045】
【化3】
Figure 0004634603
【0046】
(d)ポリアニリン(PAN又はPANI)(p型のドープ)〔又はスルホン化ポリアニリン〕
【0047】
【化4】
Figure 0004634603
【0048】
(e)ポリピロール(PPY)(p−型のドープ)
【0049】
【化5】
Figure 0004634603
【0050】
(f)ポリ(ピリジニウムアセチレン)
【0051】
【化6】
Figure 0004634603
【0052】
好ましい第二のポリイオン性材料は、ポリアニオン性材料(すなわちポリマー鎖に沿って複数の負に荷電した基を有するポリマー)である。例えば、ポリアニオン性材料は、以下からなる群から選択することができる:
(a)ポリメタクリル酸(PMA)
【0053】
【化7】
Figure 0004634603
【0054】
(b)ポリアクリル酸(PAA)
【0055】
【化8】
Figure 0004634603
【0056】
(c)ポリ(チオフェン−3−酢酸)(PTAA)
【0057】
【化9】
Figure 0004634603
【0058】
(d)ポリ(4−スチレンスルホン酸)又はナトリウム ポリ(スチレンスルホナート)(PSS又はSPS)
【0059】
【化10】
Figure 0004634603
【0060】
前述のリストは、例として示すことを目的としており、あますところがないというものではないことは明らかである。当業者であれば、ここに開示、及び教示されていることに基いて、多くのその他の有用なポリイオン性材料を選択することができよう。
【0061】
ポリイオン性材料の分子量は、コーティングの厚さのようなコーティング特性を変えるために変化させることができる。分子量が増大するにつれて、コーティングの厚さは一般に増大する。しかし、分子量が増大するにつれて、取り扱いの困難さも増す。コーティング厚さ、そして材料の取り扱いのバランスをよくするためには、ポリイオン性材料は、好ましくは約10,000〜150,000の数平均分子量を有する。分子量Mnは、より好ましくは約25,000〜約100,000、更により好ましくは75,000〜100,000である。
【0062】
2.ポリアリルアミン
本発明により有用なポリイオン性材料の特に好ましいセットは、少なくとも2000の重量平均分子量を有するポリアリルアミンの誘導体であり、これは、ポリアリルアミンのアミノ基の数に基いて、約1〜99%の式:
【0063】
【化11】
Figure 0004634603
【0064】
〔式中、Rは、ヒドロキシ、C2−C5−アルカノイルオキシ、及びC2−C5−アルキルアミノカルボニルオキシからなる群から選択される、2又はそれ以上の、同一であるか又は異なる置換基により置換されたC2−C6-アルキルである〕の単位を含む。Rは、好ましくは直鎖状のC3−C6−アルキル、より好ましくは直鎖状のC4−C5−アルキル、そして最も好ましくはn−ペンチルであり、これらはいずれも、上述のように置換されている。
【0065】
アルキル基Rの適切な置換基は、−OH、−O−C(O)−R1基、及び/又は−O−C(O)−NH−R1′基であり、ここでR1及びR1′は、互いに独立してC1−C4−アルキル、好ましくはメチル、エチル又はn−若しくはイソ−プロピル、そしてより好ましくはメチル又はエチルである。アルキル基Rの好ましい置換基は、ヒドロキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n−若しくはイソ−ブタノイルオキシ、メチルアミノカルボニルオキシ、又はエチルアミノカルボニルオキシであり、特にヒドロキシ、アセチルオキシ又はプロピオニルオキシであり、そして特にヒドロキシである。
【0066】
本発明の好ましい実施態様は、式(1)の単位(ここでRは、p個の同一又は異なる上記の置換基を有する直鎖状のCp−アルキルであり、そしてpは、2、3、4、5又は6、好ましくは4又は5、そして特に、5である)に関する。Rは、更により好ましくは、部分的に又は完全にアセチル化されていてもよいp個のヒドロキシ基を有するCp−アルキルであり、そして、pは、4又は5、特に5である。特に好ましい基Rは、ヒドロキシ基が部分的に又は完全にアセチル化されている1,2,3,4,5−ペンタヒドロキシ−n−ペンチル又は1,2,3,4,5−ペンタヒドロキシ−n−ペンチルである。
【0067】
本発明のポリマーは、ポリアリルアミンの誘導体であり、これは、ポリアリルアミンのアミノ基の数に基づいて、約1〜99%、好ましくは10〜80%、より好ましくは15〜75%、さらにより好ましくは20〜70%、そして特に40〜60%の式(1)の単位を含む。本発明のポリマーは、好都合には水溶性である。
【0068】
ポリアリルアミンポリマーの好ましい基は、ポリアリルアミンのアミノ基の数に基づいて、少なくとも1%、より好ましくは少なくとも5%、そして最も好ましくは少なくとも10%の式(1a)の単位を含む。
【0069】
ポリアリルアミンポリマーの好ましい基は、例えば2000〜1000000、好ましくは3000〜500000、より好ましくは、5000〜150000、そして特に、7500〜100000の重量平均分子量を有する。
【0070】
ポリアリルアミンポリマーは、それ自体公知の方法で製造することができる。例えば、少なくとも2000の重量平均分子量を有し、上記式(1a)の単位を有するポリアリルアミンを、式:
【0071】
【化12】
Figure 0004634603
【0072】
〔式中、(alk)は、直鎖状又は分岐鎖状のC2−C6−アルキレンであり、(t1+t2+t3)の合計は、少なくとも1であり、そしてR1及びR1′は、上記で定義した通りである〕のラクトンと反応させて、式(1)及び(1a)の単位を有するポリアリルアミンポリマーを得ることができる。
【0073】
ポリアリルアミン及びラクトン間の反応は、それ自体公知の方法で行うことができ、例えば、ポリアリルアミンを、水溶媒質中、約20〜100℃の温度、好ましくは30〜60℃の温度で、ラクトンと反応させる。最終ポリマー中の式(1)の単位の割合は、反応物の化学量論により決定される。式(6)のラクトンは、公知であるか、又は公知の方法に従って製造することができる。t2又はt3が≧1である式(6)の化合物は、例えば式(6)のそれぞれのヒドロキシ化合物を、化合物R1−C(O)X又はR1′−NCOと、当該技術で良く知られた条件下で反応させることによって入手可能である。異なる分子量のポリアリルアミン出発物質は、例えば塩酸塩の形で市販されている。前記塩酸塩は、例えば塩基、例えば水酸化ナトリウム又はカリウム溶液で処理することによって、あらかじめ遊離アミンに変換される。
【0074】
追加の修飾単位を含むポリアリルアミンは、例えば以下の群:
【0075】
【化13】
Figure 0004634603
【0076】
〔式中、Xは、ハロゲン、好ましくは塩素であり、(alk′)は、C1−C12−アルキレンであり、R12は、水素又はC1−C2−アルキル、好ましくは水素又はメチルであり、そしてR3、R4、R5、R5′、R6、及びQ1は、上記で定義した通りである〕由来の1又はそれ以上の異なる化合物を、同時に又は好ましくは連続して、ポリアリルアミン及び式(6)の化合物の反応混合物に加えることによって調製することができる。反応は、例えば水溶液中、室温で、又は例えば25〜60℃の昇温下で進行して、式(2a)の単位〔式(6a)、(6b)又は(6c)の化合物との〕、式(2b)の単位〔式(6d)、(6e)の化合物との〕、式(2c)の単位〔式(6f)の化合物との〕、式(2d)の単位〔式(6g)の化合物との〕、又は式(2e)の単位〔式(6h)、(6i)、(6j)、(6k)の化合物との〕を含むポリマーを得る。
【0077】
【化14】
Figure 0004634603
【0078】
【化15】
Figure 0004634603
【0079】
ポリアリルアミンのアミノ基の式(6)又は(6a)〜(6k)の化合物との反応は、一般的には定量的に進行するため、修飾されたポリマーの構造は、主に、反応に使用された反応物の化学量論により決定される。
【0080】
特に好ましいポリイオン性材料は、式7で示されるようなポリアリルアミングルコノラクトンである。特に好ましいのは、アミノ基の約20〜80%が、デルタ−グルコラクトンと反応して、式7に示す式のR基を形成しているポリアリルアミンである。
【0081】
【化16】
Figure 0004634603
【0082】
好ましい実施態様においては、本発明の表面処理法は、(a)カチオン性PEIのコーティングを塗布する工程、(b)アニオン性PAAのコーティングを塗布する工程、及び(c)ポリアリルアミングルコノラクトンのカチオン性層を塗布する工程を含む。別の好ましい実施態様では、工程(b)及び(c)を複数回、好ましくは約2〜7回、より好ましくは約3〜5回繰り返す。
【0083】
C.コーティングの機能、特性及び理論
ポリイオン性材料の電荷特性とは別に、多種多様なポリイオン性材料が、多種多様な生成物特性を生じるのに有用である。例えば、長期装着コンタクトレンズについては、レンズが、装着者の目の表面に接着するのを阻害するためには、特に好ましいポリイオン性材料は、親水性であるか、又は親水性表面コーティングを生成するそれらである。一般的には生物医学的な適用、そして特に眼科用レンズに有用な別の種類のポリイオン性材料は、抗菌特性を示すそれらである。抗菌性ポリイオン性材料としては、米国特許第3,931,319号(Green et al.)に記載されているような、ポリ第四級アンモニウム化合物が挙げられる(例えば、POLYQUAD(登録商標))。眼科用レンズに有用なまた別の種類のポリイオン性材料は、視界着色剤、虹彩色変更染料、及び紫外線(UV)着色染料など、輻射線吸収特性を有するものである。有用なコーティング材料のまた別の例は、細胞増殖を阻害又は誘導するポリイオン性材料である。細胞増殖阻害物質は、最終的には除去する予定であるが長期間ヒト組織と接触する装置において有用である一方(例えばカテーテル)、細胞増殖誘導性ポリイオン性材料は、永久的なインプラント装置において有用である(例えば、人工角膜)。また別の可能性のある機能的な種類のコーティング材料は、輻射線を吸収するもの、例えば紫外線(UV)遮断剤である。本発明のコーティング法には、そのほかに多数の生物医学的用途があり、当業者であれば、本発明の思想及び範囲からはずれることなく、これらを思い付くことができよう。
【0084】
本発明の方法は、コア材料及び表面コーティングを有する眼科用レンズの生産を可能とするものである。表面コーティングは、少なくとも1層の高分子電解質、そして好ましい実施態様においては、少なくとも1の二重層を含む。二重層は、コア材料に結合した第一のポリイオン性材料、及び第一のポリイオン性材料に結合した、第一のポリイオン性材料の電荷とは反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料を含む。
【0085】
その表面に理論的なイオン性電荷を有していない、又は実質的な量の有効電荷を有していないポリマー材料が、本発明の方法でコーティングすることができることが、予想外に認められた。電子産業における電子部品のポリイオン性材料の溶液への浸漬コーティング法の教示により、荷電されたポリマー材料の適当な接着のためには、高度に荷電された表面(例えばガラス)が必要であることが示されている。しかし、高度に荷電されているわけではないコンタクトレンズの表面、及び理論的電荷密度を実質的に有していない表面でさえも、着用に耐えるコーティングの多重層を沈着させることができることが認められた。レンズ表面に荷電したポリマーを確実に接着させるために、レンズ表面に電荷を発生させるには、予備的な処理(例えばプラズマ)が必要ではないことが、まったく予想外に発見された。
【0086】
したがって、本発明の一実施態様は、あらかじめ表面処理をすることなくコンタクトレンズ(特にシロキサン含有レンズ)の範囲内で表面電荷密度を有するコアレンズ材料をコーティングすることに向けられる。したがって、本発明の一実施態様は、本質的に変えられていない表面電荷密度、つまり電荷密度を増大させるために予め処理を行った材料の表面電荷密度よりも小さい表面電荷密度を有するコアレンズ材料をコーティングすることに向けられる。
【0087】
請求されている発明は、この予想外の結果を支持するために開発された理論に限られないが、ここでは、読者が本発明をより理解するのを可能とするために、理論を提案する。電子部品処理技術により、ポリイオン性コーティング材料の反対に荷電した基を引き付ける高度に正又は負に荷電した表面を得るためには、広範囲な表面準備過程が必要であることが示されている。しかし、眼科用レンズでは、これらの広範囲な前処理過程が不必要であり、実際、荷電していない表面を高度に荷電したポリイオン性種と接触させることによって、荷電していない、又は実質的に荷電していない表面をコーティングすることができることが予想外に認められた。この予想外の知見を考慮すると、コアレンズ材料のようななんらかの材料では、一時的又は永久的分散状態で、非常に少数の電荷が存在し、そして高度に荷電したポリイオン性材料がコアレンズ材料に結合することを可能とするのは、この少数の電荷であると考えられる。
【0088】
提案されている一つの説明は、コアレンズ材料が、その表面に低密度の一時的負電荷を有している一方、ポリカチオン性材料(該表面に結合している)は、ポリマーの主鎖に沿って高密度の永久的正イオンを有しているというものである。非常にわずかな負電荷があり、この電荷は本来一時的である(つまり、特定の位置が、わずかな時間荷電しているのみである)一方、負の電荷の実質的に全部が、ポリカチオン性材料上の正電荷と関連していると考えられる。
【0089】
更に、レンズ表面の一時的又は永久的負の電荷の全体的な数は、経時的には実質的に変化しない、つまり表面上の負の電荷密度は、本質的に一定であるが、その位置は一時的でありえると考えられる。したがって、負の電荷が一時的である、つまり電荷は、表面上では、現れたり、消失したりする一方、電荷の全体的な数は本質的に一定である。予想外の実験結果を考慮すると、もし表面上の負の電荷の位置が一時的であるならば、ポリカチオン性結合強度(つまりコーティングの耐用性)にとって、一時的な特性は問題ではないと理論付けられる。一の負の電荷が消失し、イオン性結合が失われると、別の負の電荷がどこかに現われ、ポリカチオン性材料との別のイオン性結合が形成されるからである。
【0090】
替わりに、レンズポリマーの表面上の電荷は永久的ではあるが、高度に分散性である。電荷密度は、本来永久的であろうと一時的であろうと、理論的には非常に低いにもかかわらず、高分子電解質材料が眼科の用途としては十分な強度でレンズ表面に結合することを可能とするのに、この非常に低い電荷密度が、十分であることが、予想外に認められた。つまり、レンズの以降の洗浄及び殺菌、並びにレンズの装着及び取り扱い、そしてそれに関連する避けがたい表面の摩滅が、本発明の高分子電解質のコーティングに実質的にダメージを及ぼさないのである。
【0091】
しかし、コアレンズポリマーの低い電荷密度を補うために、ポリイオン性コーティング材料の電荷密度は、相対的に高いのが好ましい。
【0092】
ポリイオン性材料の電荷密度は、当該分野で知られた多数の方法のいずれかによって決定することができる。例えば、Streming Zetaポテンシャルによって電荷密度を決定することができる。
【0093】
D.溶液特性と塗布
噴霧又は浸漬溶液の濃度は、関連する特定のポリイオン性材料、所望のコーティングの厚さ、及びその他の多数の因子に応じて変化させることができる。しかし、ポリイオン性材料の相対的に希釈した水溶液を処方することが一般的には好ましい。好ましいポリイオン性材料の濃度は、約0.001〜約0.25重量%、より好ましくは約0.005〜約0.10%、そして最も好ましくは約0.01〜約0.05%である。
【0094】
ポリイオン性材料を高度に荷電した状態で維持するために、希釈したポリイオン性溶液のpHは、約2〜約5、より好ましくは約2.5〜約4.5に維持しなければならない。
【0095】
すすぎ溶液は、好ましくは、コア又は下にあるポリイオン性材料へのポリイオン性材料の結合を高めるために、約2〜約7、より好ましくは約2〜約5、そして更により好ましくは約2.5〜約4.5のpHに緩衝された水溶液である。
【0096】
溶液塗布の間の表面からの過剰のすすぎ溶液の部分的乾燥又は除去は、当該分野で知られている多数の方法で行うことができる。レンズをある期間大気雰囲気下に単に放置することによって、レンズはある程度乾燥させることができるが、緩やかな空気流を表面に送ることによって、乾燥を亢進するのが好ましい。流速は、乾燥する材料の強度、及び材料の機械的固定(fixturing)の関数として調節することができる(つまり、過剰の流速は、レンズを損傷したり、レンズを保持装置から動かしてしまうことがある)。
【0097】
レンズを完全に乾燥してしまう必要はないことに注目すべきである。ここで使用するような「部分的乾燥」の工程は、レンズの乾燥よりはむしろ、レンズ表面に密着した溶液の液滴を除去することを指す。したがって、表面上の水又は溶液の膜が除去される程度にまで乾燥するだけでよい。
【0098】
コーティングの厚さは、塩化ナトリウムなどの一つ又はそれ以上の塩をポリイオン性溶液に加えることによって、調節することができる。好ましい塩濃度は、約0.1〜約2.0重量%である。塩の濃度が上昇するにつれて、高分子電解質は、より球状の立体構造をとる。しかし濃度が高くなりすぎると、高分子電解質は、レンズ表面に、沈着するとしても良好には沈着しない。より好ましい塩濃度は、約0.7〜約1.3重量パーセントである。
【0099】
コーティングの厚さは、ポリイオン性溶液に染料を、例えばメチレンブルー染料を加えることによって、決定することができる。可視光の吸光度の増大は、コーティングの厚さの増大と相関している。更に、コーティングの厚さを測定するために、偏光解析測定法を用いることができる。親水性の表面改変のためには、表面に適用された水の接触角を測定することによって、表面親水性が相対的に示される。接触角が小さくなると、親水性が上昇する。
【0100】
II. 適切な眼科用レンズコア材料
本発明により用いられる眼科用レンズを形成するポリマー材料は、広範囲なポリマー性材料のいずれかであることができる。しかし、材料の好ましい群は、高度に酸素透過性である、フッ素又はシロキサン含有ポリマーなどの材料である。特に、1998年6月2日に Nicolson, et al.に付与された米国特許第5,760,100号に記載されたポリマー材料を例として挙げることができ、この特許の教示を参考のため本明細書に援用する。読者の都合のために、適当な材料の例をここに開示するが、これらに限定されるものではない。
【0101】
A.材料「A」
本発明の眼科用レンズの適当なコア材料の一つの実施態様は、以下のモノマー成分及びマクロマー成分から形成されるコポリマーである:
(a)約5〜約94乾燥重量パーセントの、式:
CP−PAO−DU−ALK−PDMS−ALK−DU−PAO−CP
〔式中、
PDMSは、二価のポリ(二置換シロキサン)であり、
ALKは、少なくとも3の炭素原子を有するアルキレン又はアルキレンオキシ基であり、
DUは、ジウレタン含有基であり、
PAOは、二価のポリオキシアルキレンであり、そして
CPは、アクリラート及びメタクリラートから選択され、
ここで、該マクロマーは、2000〜10,000の数平均分子量を有する〕のセグメントを有するマクロマー;
(b)約5〜約60重量パーセントのメタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン;
(c)約1〜約30重量パーセントのアクリラート又はメタクリラートモノマー;及び
(d)0〜5重量パーセントの架橋剤
(重量パーセントは、ポリマー成分の乾燥重量に基く)。
【0102】
好ましいポリシロキサンマクロマーセグメントは、式:
CP−PAO−DU−ALK−PDMS−ALK−DU−PAO−CP
〔式中、
PDMSは、二価のポリ(二置換シロキサン)であり;
CPは、イソシアナトアルキルアクリラート又はメタクリラート、好ましくはイソシアナトエチルメタクリラートであり(ここで、ウレタン基は、PAO基の末端炭素に結合している);
PAOは、二価のポリオキシアルキレン(置換されていてもよい)であり、好ましくはポリエチレンオキシド、つまり(−CH2−CH2−O−)mCH2CH2−であり(ここでmは、約3〜約44、好ましくは約4〜約24の範囲であることができる);
DUは、ジウレタン、好ましくは環式構造を含むジウレタンであり、
ここでウレタン結合(1)の酸素は、PAO基に結合しており、ウレタン結合(2)の酸素は、ALK基に結合しており;
ALKは、少なくとも3の炭素原子を有するアルキレン又はアルキレンオキシ基、好ましくは3〜6の炭素原子を有する分岐鎖状のアルキレン基又はアルキレンオキシ基、最も好ましくはsec−ブチル(つまり、−CH2CH2CH(CH3)−)基又はエトキシプロポキシ基(例えば、−O−(CH22−O−(CH23−)である〕で定義される。
【0103】
B.材料「B」:ポリシロキサン含有ペルフルオロアルキルエーテル
材料「B」マクロマーは、式(I):
1−(Y)m−(L−X1p−Q−(X1−L)p−(Y)m−P1
〔式中、それぞれのP1は、互いに独立して、遊離ラジカル重合性基であり;
それぞれのYは、互いに独立して、−CONHCOO−、−CONHCONH−、−OCONHCO−、−NHCONHCO−、−NHCO−、−CONH−、−NHCONH−、−COO−、−OCO−、−NHCOO−、又は−OCONH−であり;
m及びpは、互いに独立して、0又は1であり;
それぞれのLは、互いに独立して、20までの炭素原子を有する有機化合物の二価の基であり;
それぞれのX1は、互いに独立して、−NHCO−、−CONH−、−NHCONH−、−COO−、−OCO−、−NHCOO−、又は−OCONH−であり;そして
Qは、セグメント:
(a) −(E)k−Z−CF2−(OCF2x−(OCF2CF2y−OCF2−Z−(E)k
〔式中、x+yは、10〜30の範囲の数であり、
それぞれのZは、互いに独立して、12までの炭素原子を有する二価の基であるか、又はZは、結合であり;
それぞれのEは、互いに独立して、−(OCH2CH2q−であり、ここでqは、0〜2の値を有し、ここで−Z−Eは、配列−Z−(OCH2CH2q−を表し;そして
kは、0又は1である〕;
(b)
【0104】
【化17】
Figure 0004634603
【0105】
〔式中、
nは、5〜100の整数であり;
Alkは、20までの炭素原子を有するアルキレンであり;
基R1、R2、R3及びR4の80〜100%は、互いに独立してアルキルであり、基R1、R2、R3及びR4の0〜20%は、互いに独立してアルケニル、アリール、又はシアノアルキルである〕;及び
(c)X2−R−X2
〔式中、
Rは、20までの炭素原子を有する二価の有機基であり、そして
それぞれのX2は、互いに独立して−NHCO−、−CONH−、−NHCONH−、−COO−、−OCO−、−NHCOO−、又はOCONH−である〕(ただし、Qには、セグメント(a)、(b)及び(c)のそれぞれが少なくとも1存在しなくてはならず、セグメント(a)又は(b)はそれぞれ、セグメント(c)と結合しており、そしてセグメント(c)はそれぞれ、セグメント(a)又は(b)と結合している)
からなる二価のポリマーフラグメントである〕で定義される。
【0106】
ポリマーフラグメントQ中のセグメント(b)の数は、好ましくはセグメント(a)の数よりも大きいか、又は等しい。ポリマーフラグメントQ中のセグメント(a)及び(b)の数の比は、好ましくは3:4、2:3、1:2、又は1:1である。ポリマーフラグメントQ中のセグメント(a)及び(b)の数のモル比は、より好ましくは2:3、1:2、又は1:1である。
【0107】
ポリマーフラグメントQの平均分子量は、約1000〜約20000の範囲、好ましくは約3000〜約15,000の範囲、特に好ましくは約5000〜約12000の範囲内である。
【0108】
ポリマーフラグメントQ中のセグメント(a)及び(b)の合計数は、好ましくは2〜約11の範囲、特に好ましくは2〜約9の範囲、そして特には2〜約7の範囲内である。最少ポリマー単位Qは、好ましくは1のペルフルオロセグメント(a)、1のシロキサンセグメント(b)、及び1のセグメント(c)からなる。
【0109】
C.材料「C」
材料「C」ポリマーは、遊離ヒドロキシル基を含有する重合性マクロマーを重合させることによって形成される。例えば不飽和重合性側鎖を含有する少なくとも1のポリオール成分により誘導されるアミノアルキル化ポリシロキサンから構成されるマクロマーが開示されている。ポリマーは、一方では本発明によるマクロマーから単独重合により調製することができる。更に記載するマクロマーは、1又はそれ以上の親水性及び/又は疎水性コモノマーと混合し、重合させることができる。本発明によるマクロマーの特別な性質は、これらが、架橋された最終生成物中の選択された親水性及び疎水性成分の間の微相(microphase)分離を制御する要素として機能するということである。親水性/疎水性微相分離は、300nm未満の領域内である。マクロマーは、例えば一方ではアクリラートコモノマーと、他方ではポリシロキサンと結合したポリオールの不飽和重合性側鎖の間の相境界において、共有結合により、そして更に可逆的物理的相互作用、例えば水素架橋により架橋させるのが好ましい。これらは、例えば多数のアミド又はウレタン基により形成される。相複合材料中に存在する連続的シロキサン相は、驚くほど高度の酸素に対する透過性をもたらす効果を有する。
【0110】
材料「C」ポリマーは、式(I):
【0111】
【化18】
Figure 0004634603
【0112】
〔式中、
(a)は、ポリシロキサンセグメントであり、
(b)は、少なくとも4のC原子を含むポリオールセグメントであり、
Zは、セグメント(c)又は基X1であり、
(c)は、X2−R−X2と定義され、
ここで、Rは、20までのC原子を有する有機化合物の二価の基であり、それぞれのX2は、互いに独立して少なくとも1のカルボニル基を含有する二価の基であり、
1は、X2と同様であると定義され、そして
(d)は、式(II):
3−L−(Y)k−P1
〔式中、
1は、遊離基により重合され得る基であり;
Y及びX3は、互いに独立して少なくとも1のカルボニル基を含有する二価の基であり;
kは、0又は1であり;そして
Lは、結合であるか、又は有機化合物の20までのC原子を有する二価の基である〕で示される基である〕
の少なくとも1のセグメントを含むマクロマーを重合させることによって形成される。
【0113】
ポリシロキサンセグメント(a)は、式(III):
【0114】
【化19】
Figure 0004634603
【0115】
〔式中、
nは、5〜500の整数であり;
基R1、R2、R3、R4、R5、及びR6の99.8〜25%は、互いに独立してアルキルであり、そして基R1、R2、R3、R4、R5、及びR6の0.2〜75%は、互いに独立して部分的にフッ素化されたアルキル、アミノアルキル、アルケニル、アリール、シアノアルキル、alk−NH−alk−NH2、又はalk−(OCH2m−(OCH2p−OR7であり、
7は、水素又は低級アルキルであり、alkは、アルキレンであり、そして
m及びpは、互いに独立して0〜10の整数であり、1の分子は、少なくとも1の第一級アミノ又はヒドロキシル基を含有する〕
で示される化合物から誘導される。
【0116】
式(iii)のシロキサン中のアルキレンオキシ基−(OCH2CH2m及び−(OCH2pは、リガンドであるalk−(OCH2CH2m−(OCH2p−OR7中にランダムに分布されるか、又は鎖中のブロックとして分布される。
【0117】
ポリシーロキサンセグメント(a)は、セグメント(b)又は別のセグメント(a)と、基Zを介して、合計1〜50回、好ましくは2〜30回、そして特に4〜10回結合され、ここでa−Z−a配列中のZは、常にセグメント(c)に存在する。セグメント(a)における基Zとの結合部位は、水素原子1個を欠いたアミノ又はヒドロキシル基である。
【0118】
D.「材料D」
別の有用なコア材料としては、以下の構造:
【0119】
【化20】
Figure 0004634603
【0120】
〔式中、nは、約5〜約500、好ましくは約20〜200、より好ましくは約20〜100の整数であり;
基R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、低級アルキレン、好ましくはC1−C6アルキレン、より好ましくはC1−C3アルキレンであり、ここで好ましい実施態様においては、R1及びR2、又はR3及びR4における炭素原子の合計数は、4を超え;そしてR5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、低級アルキル、好ましくはC1−C6アルキル、より好ましくはC1−C3アルキルである〕を有するポリ(ジアルキルシロキサン)ジアルコキシアルカノールから形成されるシロキサン含有マクロマーの重合を含む。
【0121】
材料Dマクロマーの一般構造は、以下の通りである:
ACRYLATE−LINK−ALK−O−ALK−PDAS−ALK−O−ALK−LINK−ACRYLATE
〔式中、ACRYLATEは、アクリラート及びメタクリラートから選択され;LINKは、ウレタン及びジウレタン結合から選択され;ALK−O−ALKは、上記の(R1−O−R2又はR3O−R4)において定義したとおりであり、そしてPDASは、ポリ(ジアルキルシロキサン)である〕。
【0122】
例えば、材料Dマクロマーは、イソホロンジイソシアナート、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリラート、及びポリ(ジアルキルシロキサン)ジアルコキシアルカノールを触媒の存在下で反応させることによって調製することができる。
【0123】
III.生物医学的製品
ここで上述したコーティングされた眼科用レンズに加えて、本発明は、生物医学的(例えば、眼科用レンズ)製造環境においても、別の方法で応用することができる。例えば、1又はそれ以上のポリイオン性材料を、コンタクトレンズを製造後貯蔵する眼科的に適合し得る溶液に加えることができる。コンタクトレンズを成形後、レンズを、例えば追加の硬化工程、抽出、検査、及びエッジングなどのいくつかの成形後処理に付すことができる。最終的にレンズは、無菌の、眼科的に適合し得る保存用溶液を含む容器又は包装用容器に入れる。本発明によると、ポリイオン性材料を、滅菌前又は後に、保存溶液に加えることができる。好ましい実施態様においては、ポリイオン性材料を含む保存用溶液を、コンタクトレンズと共にレンズ容器に入れ、容器を密封し、次に容器を滅菌処理(例えば、オートクレーブ処理)に付す。
【0124】
したがって、本発明の実施態様は、コンタクトレンズ及び無菌の眼科的に適合し得る溶液(これは、ポリイオン性材料、張度(tonicity)調節剤(例えば、実質的等張溶液を調製するための塩化ナトリウム)及び水を含有する)を保持する包装を含む眼科用製品である。
【0125】
本発明の別の例の有用性は、材料を生物医学的装置の表面に付着させるための手段を提供することである。より詳細には、本発明の方法は、生物医学的装置上にポリイオン性コーティングを形成するために用いることができ、次に別の材料を、ポリイオン性コーティング上に、多数の方法(官能基を介しての化学反応など)により付着させることができる。
【0126】
例えば、ポリ(エチレンイミン)〔PEI〕コーティングを、コンタクトレンズの表面に、ここに記載した方法により堆積させることができる。アミン官能基を用いて、アミン基と反応性である化学基を有する別の材料(例えばヒアルロン酸)を、PEIコーティングに化学結合させることができる。
【0127】
したがって、本発明のまた別の実施態様は、材料の表面を変える方法であって、官能基を有するポリイオン性コーティングを表面に塗布し、次にポリイオン性コーティングを、本官能基と反応性である基を有する第二のコーティング材料と接触させることによって、基を化学的に反応させ、そして第二のコーティング材料をポリイオン性コーティングと結合させる方法である。この同時処理法の教示により、多数の表面処理法を想像することができるのは明らかであり、このような方法は、本発明の範囲内である。
【0128】
本発明のまた別の実施態様は、眼内レンズの眼への挿入に関する。ここで使用する眼内レンズ(IOL)は、眼の嚢(capsule sac)内の水晶体と置き換わるようにデザインされたレンズ(例えば、白内障の外科治療に使用される)、及び視力矯正のためにデザインされ、眼の後眼房又は前眼房に配置される屈折レンズを包含する。ここで開示されるポリイオン性材料及び方法は、摩擦を減らし、潤滑性を向上するために、インサートガイド、プランジャー、トリガー、及びIOL装置をコーティングするのに使用することができる。潤滑性が向上すると、眼科医が、IOLを眼に挿入しようとする際に困難さを感じることが減るであろう。
【0129】
IV.製造方法
本発明は、生物医学的物品(眼科用レンズ、創傷被覆材、経皮的薬物送達装置、及び同様のポリマーに基く材料など)の製造に、より一般的に使用することができる。
【0130】
例えば、本発明は、製造工程の間の物品を支持する取り付け具を表面処理するのに使用することができる。表面処理は、物品と接触する取り付け具の表面の潤沢性を向上させることによって、付着を減らし、又は物品の取り付け具からの分離を促進するのに有用である。替わりに、表面処理により、物品に対する取り付け具の表面の付着又は吸引が高められ、それによって製造過程における移動又は表示工程の間に、取り付け具に物品を保持するのを助けることができる。表面処理の多数のその他の機能(抗菌活性又は抗汚染など)も、想像することができる。
【0131】
したがって、本発明のもう一つの実施態様は、ポリイオン性材料でコーティングされた物品を支持するための取り付け具である。取り付け具の表面は、材料の表面上又はその近くに一時的又は永久的な多数の電荷を有する材料から形成することができる。ポリイオン性材料は、ここに上述した任意の数の方法を介して接触させることによって表面に付着させることができる。
【0132】
セッティングを製造する際の本発明の別の例の用途は、物品の形をはっきりさせるために用いるモールドのコーティングを包含する。モールドは、重要なことでは物品を成形した後に成形された物品から速やかに離れることなど、多くの目的のためにコーティングすることができる。モールドは、前述の方法のいずれかでコーティングすることができる。したがって、本発明の別の実施態様は、材料の表面上又はその近くに一時的又は永久的な多数の電荷を有する材料、及びコア材料と結合したポリイオン性材料を含む表面コーティングを含む物品を製造するためのモールドである。
【0133】
セッティングを製造する際の本発明の技術を利用するまた別の方法は、ポリイオン性コーティングのトランスファーグラフトと称することもできる。この実施態様では、モールドを上述したようにポリイオン性材料でコーティングするが、液状の成形材料(例えば、重合性材料)を、固形物品の成形のためのモールドに注入する際に、コーティングの少なくとも一部をモールドから移動する。したがって、本発明の別の実施態様は、物品を成形し、物品を製造したモールドからコーティング材料をトランスファーグラフトすることによって物品をコーティングする方法である。この方法は、モールドの少なくとも一部をポリイオン性材料の溶液と接触させることによってポリイオン性材料のコーティングをモールドに塗布し、液状の成形材料をモールドに注入することによって、該液状成形材料を該コーティングと接触させ、モールドのコーティングを、液状の成形材料と、コーティングの少なくとも一部がモールドから成形材料へ移動するのに十分な時間接触させ、そして液状の成形材料を硬化(例えば、紫外線の照射により重合させる)させる工程を含む。
【0134】
これまでの開示により、当業者であれば、本発明を実施することができるであろう。読者に具体的な実施態様及びその利点をより理解させるために、以下の実施例に関する記載が示唆される。
【0135】
実施例1
Nicolson, et al.のWO96/31792、30〜41ページに開示の「材料B」に関する教示に実質的にしたがって、重量パーセントで、50%マクロマー、20%TRIS、29.5%DMA、及び0.5%ダロキュア(Darocur)1173を有する初期重合混合物を用いて、シロキサン含有コンタクトレンズを調製した。コンタクトレンズを摘出し、オートクレーブ処理した。VCA2500XE接触角測定装置(AST, Inc., Boston, MA)で測定した平均(n=20)接触角(Sessle Drop)は、約111であった。結果は、表Aに報告する。
【0136】
実施例2
実施例1で調製したレンズを、以下のようにレイヤー・バイ・レイヤー(LBL)法で表面処理して、レンズの親水性を増大させた。
【0137】
ポリ(塩酸アリルアミン)(Aldrich ChemicalsのMWn50〜60,000)〔PAH〕の希釈した(10-2モル)保存水溶液は、PAH1.3グラムを脱イオン水1400mlに加えることによって調製した。塩酸を滴下により加えることによって、pHを約2.5に調節した。
【0138】
ポリ(アクリル酸)(PolyScienceのMWn50〜60,000)〔PAA〕の希釈した(10-2モル)保存水溶液は、PAA4.03gを脱イオン水1400mlに加えることによって調製した。塩酸を滴下により加えることによって、pHを約4.5に調節した。
【0139】
溶液の濃度は、正に荷電した単位の濃度を、負に荷電した単位の濃度と同一に維持するために選択した。
【0140】
コンタクトレンズをPAH塗布溶液に約15分間浸漬した。PAH溶液から出した後、レンズを、pH2.5に調節した脱イオン水(PAH塗布溶液と同一のpH)の水浴に3回、2分間の間、浸漬した。緩やかな空気流を適用する(ここでは「乾燥」と記載)ことによって、レンズに付着したすすぎ溶液を除去した。
【0141】
次にレンズをPAA溶液に約15分間浸漬し、すすぎ、上述したように乾燥した。
【0142】
コーティング及びすすぎの工程を更に4回繰り返したが、乾燥の工程は、これらのコーティングの工程の間、行わずに済ませた。
【0143】
平均(n=4)接触角は、78であった。結果は、表A及びBに報告する。
【0144】
実施例3
コーティングの耐久性を測定するために、実施例2で処理したコーティングされたレンズを、強イオン性溶液であるCaCl2溶液(9体積パーセント)2mlの滴下による添加により処理した。レンズを緩やかな空気流で乾燥した。
【0145】
平均(n=6)接触角は、72であった。結果は、表Bに報告する。
【0146】
実施例4
実施例1の通りに調製したレンズを、レイヤー・バイ・レイヤー(LBL)法で表面処理して、PAA溶液の塗布及びすすぎ溶液のpHを実施例2の4.5とは反対に2.5とした以外は、実施例2に概略した過程により、親水性を増大させた。
【0147】
平均(n=4)接触角は、65であった。結果を、表A及びBに報告する。
【0148】
実施例5
実施例4で処理したようにしてコーティングしたレンズを、CaCl2溶液2mlを滴下により加えることによって処理した。レンズを緩やかな空気流で乾燥した。
【0149】
平均(n=4)接触角は、76であった。結果は、表Bに報告する。
【0150】
実施例6
実施例1の通りに調製したレンズを、レイヤー・バイ・レイヤー(LBL)法で表面処理して、親水性を増大させた。
【0151】
ポリ(エチレンイミン)(PolyScienceのMWn50〜60,000)〔PEI〕の希釈した(10-2モル)保存水溶液は、PEI2.00グラムを脱イオン水1400mlに加えることによって調製した。塩酸を滴下により加えることによって、pHを約2.5に調節した。
【0152】
希釈PAA溶液は、実施例2のとおりに調製した。塩酸を滴下により加えることによって、pHを約2.5に調節した。
【0153】
実施例2に記載したようにコンタクトレンズをPEI塗布溶液に浸漬し、すすぎ、乾燥し、次いでPAA溶液による同様の処理を行った。
【0154】
コーティング及びすすぎの工程を更に4回繰り返したが、乾燥の工程は、これらのコーティングの工程の間、行わずに済ませた。
【0155】
平均(n=6)接触角は、57であった。結果は、表A及びBに報告する。
【0156】
実施例7
実施例6で処理したようにコーティングしたレンズを、CaCl2溶液2mlを滴下により加えることによって処理した。レンズを緩やかな空気流で乾燥した。
【0157】
平均(n=4)接触角は、77であった。結果は、表Bに報告する。
【0158】
実施例8
実施例1の通りに調製したレンズを、レイヤー・バイ・レイヤー(LBL)法で表面処理して、PAA溶液の塗布及びすすぎ溶液のpHを実施例6の2.5とは反対に4.5とした以外は、実施例6に概略した過程により、親水性を増大させた。
【0159】
平均(n=4)接触角は、72であった。結果は、表A及びBに報告する。
【0160】
実施例9
実施例8で処理したコーティングしたレンズを、CaCl2溶液2mlを滴下により加えることによって処理した。レンズを緩やかな空気流で乾燥した。
【0161】
平均(n=4)接触角は、112であった。結果は、表Bに報告する。
【0162】
【表1】
Figure 0004634603
【0163】
【表2】
Figure 0004634603
【0164】
結果の考察(実施例1〜9)
実施例2、4、6及び8で処理したレンズの接触角を実施例1の処理していないレンズの接触角と比較したところ、表面変性が起きた、又はコーティングが沈着したことが示された(表Aを参照)。更に、処理したレンズではいずれも、接触角が有意に減少しており、表面の親水性が有意に増大したことが証明された。
【0165】
更に、実施例2、4、6及び8でコーティングしたレンズの接触角を、強イオン性溶液に曝された実施例3、5、7及び9で同様に処理されたレンズと比較したところ、実施例8及び9を除いて、接触角がほとんど変化していないことが示された。したがって、表面の変性又はコーティングは、ポリイオン性コーティング材料とコンタクトレンズ表面の間の電荷による吸引を除去すると予想される高度に荷電した溶液の存在下でも、予想外に非常に耐久性である。
【0166】
実施例10
実施例1の通りに調製したレンズを、LBL法により表面処理して、レンズの表面を以下のように官能化した。次に活性種を、LBLコーティングによって付与された官能基を介して、レンズに結合させた。
【0167】
レンズを、前の実施例に記載した方法にほぼしたがって処理した。溶液によるコーティングには、pH3.5のPEI中での第一の浸漬、pH2.5のPAA中での第二の浸漬、そしてpH3.5のPEI中での最後の浸漬を含めた。
【0168】
LBLコーティングの後、レンズをヒアルロン酸の溶液に浸漬した。ヒアルロン酸は、PEIコーティング上の遊離アミン基と反応することによって、ヒアルロン酸はコンタクトレンズの表面に結合すると考えられる。
【0169】
実施例11
実施例1の通りに調製したレンズを、LBL法により表面処理して、レンズの表面を以下のように官能化した。次に活性種を、LBLコーティングによって付与された官能基を介して、レンズに結合させた。
【0170】
レンズを、前の実施例に記載した方法にほぼしたがって処理した。溶液によるコーティングには、PEI(pH3.5)中での第一の浸漬、PAA(pH2.5)中での第二の浸漬、PEI中での第三の浸漬、PAA中での第四の浸漬、そしてPEI中での最後の浸漬を含めた。このようにして2.5二重層構造を形成した。
【0171】
LBLコーティングの後、レンズをヒアルロン酸の溶液に浸漬した。ヒアルロン酸は、最終PEI層上の遊離アミン基と反応することによって、ヒアルロン酸はコンタクトレンズの表面に結合すると考えられる。
【0172】
読者が、過度の実験を要することなく本発明を実施することができるように、ある種の好ましい実施態様と関連して、本発明を詳細に記載した。しかし、当業者であれば、成分及びパラメーターの多くは、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、ある程度まで変更又は修飾することができることを容易に認識できよう。また、読者による本書面の理解を高めるために、標題、見出し、定義などを記載したのであって、本発明の範囲を限定するものと理解してはならない。したがって、本発明に関する知的所有権は、以下の請求項及びその妥当な範囲及びその同等物によってのみ定義される。

Claims (28)

  1. (a)フッ素含有ポリマー材料又はシロキサン含有ポリマー材料であって、シロキサン含有モノマー又はマクロマー及び親水性コモノマーを含む混合物の共重合体である、実質的に荷電していない表面を有するコア材料;並びに
    (b)(b1)表面電荷密度を増加させる処理に事前に付されていないコア材料に結合した第一のポリイオン性材料と、(b2)第一のポリイオン性材料に結合した、第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料とを含む二重層を含む、表面コーティング;
    を含む、コンタクトレンズ。
  2. 第一及び第二のポリイオン性材料のひとつがポリアニオン性材料である、請求項1記載のコンタクトレンズ
  3. 前記表面コーティングが、複数の二重層を含む、請求項2記載のコンタクトレンズ。
  4. 前記表面コーティングが、5〜20の二重層を含む、請求項2又は3記載のコンタクトレンズ。
  5. 前記表面コーティングが、10〜15の二重層を含む、請求項2〜4のいずれか1項記載のコンタクトレンズ。
  6. 第一のポリイオン性材料が、ポリカチオン性材料であり、第二のポリイオン性材料が、ポリアニオン性材料である、請求項2〜5のいずれか1項記載のコンタクトレンズ。
  7. ポリカチオン性材料が、ポリ(塩酸アリルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(ピリジニウムアセチレン)、それらの誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6記載のコンタクトレンズ。
  8. ポリアニオン性材料が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、それらの誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6又は7記載のコンタクトレンズ。
  9. 前記コアが、疎水性であり、前記表面コーティングが、親水性である、請求項2〜のいずれか1項記載のコンタクトレンズ。
  10. 請求項2記載のコンタクトレンズであって、
    前記表面コーティングが、複数の二重層を含み;
    第一のポリイオン性材料が、ポリカチオン性材料であり、かつ第二のポリイオン性材料が、ポリアニオン性材料であり;
    ポリカチオン性材料が、ポリ(塩酸アリルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(ピリジニウムアセチレン)、それらの誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択され;
    ポリアニオン性材料が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、それらの誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択され;そして
    前記コアが、疎水性であり、かつ前記表面コーティングが、親水性である、
    コンタクトレンズ。
  11. ポリイオン性材料の数平均分子量が、25,000〜150,000の間である、請求項2〜1のいずれか1項記載のコンタクトレンズ。
  12. ポリイオン性材料の数平均分子量が、75,000〜100,000の間である、請求項2〜1のいずれか1項記載のコンタクトレンズ。
  13. 実質的に荷電していない表面を有するコア材料からなるコンタクト上に、ポリイオン性材料の少なくとも1の二重層を含む表面コーティングを製造する方法であって、
    (a)表面電荷密度を増加させる処理に事前に付されていないコア材料を、第一のポリイオン性材料と接触させて、該ポリイオン性材料を該コア材料と結合させてコーティングされたレンズを形成する工程;及び
    (b)該コーティングされたレンズを、該第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料と接触させて、高分子電解質二重層を有するレンズを形成する工程
    を含む方法。
  14. (a)コアレンズを第一のポリイオン性材料の第一の溶液に浸漬することによって、第一のポリイオン性材料のコーティングを該レンズに塗布する工程;
    (b)該レンズをすすぎ溶液と接触させることによって、該レンズをすすぐ工程;
    (c)該レンズを、第二のポリイオン性材料の第二の溶液に浸漬することによって、第二のポリイオン性材料のコーティングを該レンズに塗布する(ここで該第二のポリイオン性材料は、第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有している)工程;及び
    (d)該レンズをすすぎ溶液と接触させることによって、該レンズをすすぐ工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  15. 前記レンズを溶液に浸漬することによって、前記の接触の少なくとも1が行われる、請求項1記載の方法。
  16. 溶液を前記レンズに噴霧することによって、前記の接触の少なくとも1が行われる、請求項1記載の方法。
  17. ポリイオン性溶液のpHが、2〜5の間である、請求項1記載の方法。
  18. 前記すすぎ溶液がそれぞれ、前に塗布したポリイオン性溶液のpHから1のpH単位内のpHを有する、請求項1記載の方法。
  19. (a)コアレンズを第一のポリイオン性材料の第一の溶液と接触させることによって、第一のポリイオン性材料のコーティングを該レンズに塗布する工程;
    (b)該レンズをすすぎ溶液と接触させることによって、該レンズをすすぐ工程;
    (c)該レンズを乾燥する工程;
    (d)該レンズを第二のポリイオン性材料の第二の溶液と接触させることによって、第二のポリイオン性材料のコーティングを該レンズに塗布する(ここで該第二のポリイオン性材料は、第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有している)工程;
    (e)該レンズをすすぎ溶液と接触させることによって、該レンズをすすぐ工程;及び
    (f)該レンズを乾燥する工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  20. 前記レンズを溶液に浸漬することによって、前記接触の少なくとも1が行われる、請求項19記載の方法。
  21. 前記レンズに溶液を噴霧することによって、前記の接触の少なくとも1が行われる、請求項19記載の方法。
  22. 前記の方法が、工程(a)〜(f)を5〜20回の間の回数繰り返すことを含む、請求項19記載の方法。
  23. 前記の方法が、工程(a)〜(b)を5〜20回の間の回数繰り返すことを含む、請求項1記載の方法。
  24. 実質的に荷電していない表面を有する、物品の表面を改変する方法であって、
    (a)物品を、第一のポリイオン性材料と接触させて、該ポリイオン性材料を該物品と結合させてコーティングされた物品を形成する工程;
    (b)該コーティングされた物品を、該第一のポリイオン性材料の電荷と反対の電荷を有する第二のポリイオン性材料と接触させて、高分子電解質二重層を有する物品を形成する工程;及び
    (c)コーティングされた物品を、該ポリイオン性材料の該官能基に反応性である基を含むさらなる材料と接触させることによって反応させ、そして該さらなる材料を、工程(a)及び(b)により得られた該ポリイオン性コーティング上にグラフトさせる工程
    を含む方法。
  25. 請求項24記載の方法により得られる、コーティングされたコンタクトレンズ
  26. 工程(a)のポリイオン性材料が、カチオン性ポリイオン性材料であり;
    工程(b)のポリイオン性材料が、アニオン性ポリイオン性材料であり、そしてその方法が追加の工程として
    (c)コンタクトレンズをポリアリルアミングルコノラクトンと接触させることによって、該ポリアリルアミングルコノラクトンを該アニオン性ポリイオン性材料と結合させる工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  27. 工程(b)及び(c)を複数回繰り返す、請求項2記載の方法。
  28. 工程(b)及び(c)を2〜7回繰り返す、請求項2記載の方法。
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