JP4634552B2 - 不溶性分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法及び不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液 - Google Patents

不溶性分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法及び不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液、殊にエタノールで抽出したプロポリス抽出原液中の不溶成分を分離除去し、安定で安全性の高い不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法及び不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロポリスは、ミツバチが種々の植物から集めてきた樹木の粘液性の樹脂と蜂が分泌する体液とが混ざって作り出された樹脂状(ヤニ状)の物質であり、蜜ヤニともよばれる。プロポリスには、フラボノイドなどを含む有効成分の他に、一般的に樹脂、ニカワ質が50〜55%、ロウ分が25〜40%含まれている。
プロポリスには、ローヤルゼリーのような栄養成分、例えば、糖質、蛋白質、ビタミン、ミネラルなどはほとんど含まれていないが、その代わり、薬理作用を有する化学物質を数多く含んでいる。このため、プロポリスは、抗菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用、局所麻酔作用、免疫調整作用などを有する物質として注目されている。これら作用は、プロポリスに含まれるフラボノイドや芳香族カルボン酸、芳香族アルデヒドなど種々の成分により奏されると考えられている。
【0003】
このプロポリスはうまみ成分を有していないため、そのまま服用されることはほとんどなく、各種の加工が行なわれ、プロポリス加工品やプロポリス派生品として、一般に流通されている。加工の際には、通常プロポリスからフラボノイドなどを含む有効成分が抽出されるが(プロポリス抽出液)、抽出に際しては、エタノール又はエタノール・精製水混液が主に抽出液(溶媒)として使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、溶媒にエタノール(又はエタノール・精製水混液)を使用すると、ロウ分のように飲みにくさの原因となる成分、あるいは樹脂やニカワ質などの効果的でない成分も溶媒中に溶け出してしまう。従って、「無差別抽出」がなされたプロポリス抽出液が一般的に利用されている。
また、ロウ分、樹脂、ニカワ質は、本質的には不溶成分であり、これらがプロポリス抽出液加工時、濃度や温度の加減により加工装置の配管内や容器壁などに付着してこびりついてしまうことが多々ある。この付着した不溶成分の処理は困難で、プロポリスの加工を容易でなくしている。さらに、製品貯蔵中にも不溶成分が容器に付着してしまうなどの問題がある。従って、プロポリス抽出液の濃度、ひいては有効成分の濃度を高めることは容易なことではない。このため、乳化剤や界面活性剤を添加して樹脂などを乳化分散させ、加工時などにおける取り扱いを容易にしたプロポリス抽出液加工製品もある。
【0005】
しかしながら、樹脂、ニカワ質、ロウ分を含むプロポリス抽出液は、過去にアレルギー湿疹の発現の報告もあり、健康補助食品(健康食品)、化粧品、香粧品などとして利用するには安全性の面での難がある。
また、特開平5−59391号公報などには、超臨界状態のCOを利用して精製したプロポリス抽出液が記載されているが、超臨界抽出では高圧ガスを取り扱わなければならいという管理面での問題、およびコスト面での問題がある。さらに、超臨界抽出では目的の成分を充分に抽出することができないという問題点もある。
本発明は、かかる問題点を解消し、飲み易くて安全で、しかも取り扱いが容易な不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法及び精製プロポリス抽出液を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、エタノール抽出プロポリスに含まれる不溶成分である樹脂、ニカワ質、ロウ分を除去し、有効成分のみを抽出するため、種々の実験を行なった。そして、所定のゲルを充填したカラムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィを行なうことにより、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の不溶成分を除去したプロポリス抽出液の製造方法は、(1) プロポリスをエタノールで抽出したプロポリス抽出原液を、所定のゲルを充填したカラムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ装置に注入する工程、(2) 前記注入された前記プロポリス抽出原液中の各成分を、エタノールを溶離液として前記カラムにより分離する工程、(3) 前記工程により分離され前記カラムより溶出した溶出液のうち、所定時間後に溶出するものを、不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液として回収する工程、を含むことを特徴とする(請求項1)。これによれば、分子の大きさの違いによりエタノール(又はエタノール・精製水混液)で抽出したプロポリス抽出原液中に含まれる各成分の分離を行なうことができる。すなわち、小さな分子よりなる成分はその大きさが小さいため、ゲルが持つ細孔中に深く浸透してカラムに長く保持される。一方、大きな分子よりなる成分はその大きさが大きいため、前記細孔中に深く浸透することができず、カラムに保持される時間は短い。本発明においては、プロポリス中のロウ分や樹脂分などの不溶成分は大きな分子よりなるため、カラムから早く溶出する。一方、フラボノイドなどの有効成分は小さな分子よりなるため、カラムに長く保持されて溶出までに時間がかかる。従って、プロポリス抽出原液中の各成分は、カラムに保持される保持時間(リテンションタイム)で分離され、サイズの大きな分子から順にカラムから溶出する。従って、所定時間後にカラムから溶出する溶出液を回収することにより、不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液を得ることができる。
また、請求項1においては、所定のゲルが、全多孔性のハイドロオキシエチルメタクリレイトに化学結合によりジオール基を導入した粒状のゲル、ジオール基を導入した粒状の多孔性シリカゲル、ジオール基を導入したポリスチレン系の粒状のゲル、および、ジオール基を導入したメチルメタクリレイトよりなる粒状のゲルのうちの少なくとも一つまたは複数からなるゲルであることを特徴とする。従って、試料負荷量が大きいという特長があり、理論段高さが小さく効率のよいカラムを構成することができる。さらに、ジオール基をゲルに導入することにより、ゲルとプロポリス抽出原液中の各成分との相互作用を低く押さえることができ、プロポリス抽出原液中の各成分をより確実に分子の大きさごとに分離することができる。
【0008】
なお、前記ゲルが、ハイドロオキシチエルメタクリレイト(hydroxy ethyl methacrylate)に化学的結合によりジオール基を導入した所定径の全多孔性ゲルであると、当該ゲルは表面のみならず、ゲルの粒子全体が多孔性である。従って、試料負荷量が大きいという特長があり、理論段高さが小さく効率のよいカラムを構成することができる。さらに、ジオール基をゲルに導入することにより、ゲルとプロポリス抽出原液中の各成分との相互作用を低く押さえることができ、プロポリス抽出原液中の各成分をより確実に分子の大きさごとに分離することができる。
【0009】
さらに、本発明は、請求項1に記載の不溶成分を除去したプロポリス抽出液の製造方法により製造された不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液である(請求項2)。
当該不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液は、不溶成分であり、かつ飲みにくさの原因となるロウ分及び効果的でない樹脂分などが除去されているため、服用・飲用に適するとともに加工や製品の取り扱いも容易になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の製造方法に使用されるゲルパーミエーションクロマトグラフ装置のブロック構成図である。図2は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる分離の原理図である。
【0012】
≪ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置の構成および機能の説明≫
本発明の方法に使用されるゲルパーミエーションクロマトグラフ装置A(以下「GPC装置A」という)は、図1に示すように、溶離液槽1、ストックタンク2、送液ポンプ3、自動注入器4、カラム5、カラム恒温槽6・・・などよりなる。
【0013】
溶離液槽1は、溶離液を蓄積する容器である。溶離液は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下「GPC」という)における移動層の役割を果たす。溶離液としては、プロポリス抽出原液中に含まれる各成分や後に説明する固定層たるゲル5bと化学反応を起こさないこと、プロポリス抽出原液中に含まれる各成分を良く溶解することなどの性質が必要である。本発明においては、安全性や使用後の溶離液の取り扱いが容易なことなどを加味して、エタノールが溶離液として使用される。
【0014】
ストックタンク2は、エタノール(又はエタノール・精製水混液)で抽出したプロポリス抽出原液が貯えられる。送液ポンプ3は、溶離液を所定流量でカラム5に送液する。送液ポンプ3には、脈動が少ないこと、精度よく送液できること、流量の調整ができること、耐薬品性を有すること、などが要求される。自動注入器4は、プロポリス抽出液をGPC装置Aに注入する。自動注入器4には、プロポリス抽出原液をGPC装置Aに注入する際にプロポリス抽出原液が逆流しないこと、所定量注入できることなどが要求される。
【0015】
カラム5は、本体たるクロマト管5aとその内部に充填される固定層たるゲル5bにより構成される。クロマト管5aは、耐圧性、耐薬品性に優れた材質が要求されるため、ステンレスなどにより構成される。
【0016】
ゲル5bは、プロポリス抽出原液中に溶解している各成分を分子サイズ(見かけの大きさ)ごとに分離する。ゲル5bはGPC装置Aの要部をなし、多くの細孔を持った網目構造を有している。
なお、GPCは、ゲル5bの細孔に対して、プロポリス抽出原液中に含まれる各成分の保持され方が異なることを利用して成分の分離を行なう。すなわち、図2(a)に示すように、小さな分子Smはゲル5bの細孔に奥深く浸透するため、カラム5を通過するのに時間を要する(保持時間が長い)。一方、大きな分子Lmはゲル5bの細孔に入り込むことができないか、あるいは浅くしか入り込むことができないため、カラム5を通過する時間は短い(保持時間が短い)。その結果、GPCにかけられる試料溶液に含まれる各成分は分子サイズごとに分離され、大きな分子Lmからなる成分から順にカラム5から溶出する(図2(b)参照)。
具体的には、試料溶液たるプロポリス抽出原液のうち、ロウ分、樹脂分、ニカワ質などの不溶成分は大きな分子Lmよりなるため保持時間が短く、早くカラム5から溶出する。一方、フラボノイドなどの有効成分は小さな分子Smよりなるため保持時間が長く、カラム5に長く留まる。
【0017】
GPCに用いるゲル5bは、基本的にはプロポリス抽出原液中に含まれる各成分との相互作用がないようにする。相互作用が生じると、分子サイズによって成分を分離することができなくなるからである。このため、ゲル5bには親水性官能基を導入するのが良い。親水性官能基としては、グリコールやグリシドなどによるジオール基が適している。
【0018】
また、ゲル5bは、その表面のみならず、内部にまで細孔を持つ全多孔性ゲルが適している。全多孔性ゲルは、表面多孔性ゲルに比べて表面積が大きいため、試料負荷量が大きいからである。また、理論段数が小さく効率の良いカラム5を構成することができるからである。ゲル5bの大きさは、直径2〜30μm程度の球状である。ちなみに、ハイドロオキシエチルメタクリレイトに化学結合によりジオール基を導入した30μm径の全多孔性ゲル5bの場合、処理できる分子量範囲は1×102(百)〜1×104(1万)程度である。
ジオール基は、原料を一旦エポキシ化してエポキシ基を導入した後、エポキシ基部分をジオール化することにより導入することができる。この操作には、従来公知の技術を適用することができる。
【0019】
カラム恒温槽6は、カラム5の温度を一定に保つ。カラム5の温度が変化すると保持時間が異なってくるからである。
検出器7は、カラム5から溶出した溶出液中の成分を検出・測定するために設けられる。検出器としては、吸光度検出器や示差屈折計などを使用することができる。吸光度検出器は、化学物質の持つ光吸収を利用する方法で、紫外から可視部に光吸収を有するものに適している。示差屈折計は、カラム5から溶出した溶出液と対照とする溶離液との間の光屈折率差を利用する方法であり、あらゆる化学物質を検出することができる。
検出器7の測定値は、後に説明するシステムコントローラ13に送られ、システムコントローラ13のモニタ及び記録計(図示外)に、図3に示すクロマトグラムとして表示される。
【0020】
流路切換器8は、検出器7を通過した溶出液の流路を切り換える。流路の切り換えは、検出器7の測定値であるクロマトグラムなどに基づいて、システムコントローラ13の指令により行なわれる(図3参照)。
なお、図3のクロマトグラムに示す符号F1は、カラム5から最初の時間帯に溶出する溶出液であり、プロポリス抽出原液中の各成分を含まない溶離液そのものである。符号F2は、次の時間帯にカラム5から溶出する溶出液であり、ロウ分や樹脂分など大きな分子よりなる成分を含み、フラボノイドなどの小さな分子よりなる成分をほとんど含まない。そして、符号F3は、最後の時間帯にカラム5から溶出する溶出液であり、フラボノイドなどの小さな分子よりなる有効成分を含み、ロウ分などの大きな分子よりなる成分をほとんど含まない。
【0021】
廃液槽9は、溶出液F2を廃液として貯蔵する。貯蔵槽10は、溶出液F3を精製プロポリス抽出液として回収し貯蔵する。濃縮器11は、溶出液F3の濃縮を行い、フラボノイドなどの有効成分の濃度を高める。貯蔵槽12は、濃縮器11により濃縮された溶出液F3を濃縮精製プロポリス抽出液として貯蔵する。貯蔵槽10及び貯蔵槽12に貯蔵される精製プロポリス抽出液及び濃縮精製プロポリス抽出液が、本発明の不溶成分を除去したプロポリス抽出液である。
【0022】
次に、各流路を説明する。流路Rは、流路切換器8と溶離液層1を結び、溶出液F1を溶離液として溶離液層1に戻す。流路Wは、流路切換器8と廃液槽9を結び、溶出液F2(廃液)を廃液槽9に導く。流路Nは、流路切換器8と貯蔵槽10とを結び、溶出液F3(精製プロポリス抽出液)を貯蔵槽10に導く。流路Cは、溶出液F3(精製プロポリス抽出液)の濃縮を行う場合に、当該溶出液を濃縮器に導く。そして、流路Sは、濃縮された溶出液F3(濃縮精製プロポリス抽出液)を貯蔵槽12に導く。
【0023】
最後に、システムコントローラ13は、GPC装置Aを統括的に制御する。具体的には、送液ポンプ3の送液量の制御、自動注入器4の注入インターバルの制御、カラム恒温槽6の温度制御、検出器7の測定値に基づいての流路切換器8の流路切り換えなどを行う。
なお、前記した通り、カラム5によるプロポリス抽出原液中の各成分の分離状態は検出器7で測定され、システムコントローラ13のモニタ及び記録計(図示外)に、図3に示すクロマトグラムとして表示される。また、システムコントローラ13は、検出器7の測定値や予め得られているクロマトグラム(図3参照)のパターンに基づいて流路切換器8などを制御する。
【0024】
≪分離方法の説明≫
本発明においては、先ずエタノール又はエタノール・精製水混液で抽出したプロポリス抽出原液を、所定のゲル5bを充填したカラム5を用いたGPC装置Aに注入する(図1参照)。注入量は、溶離液の流量やゲル5bの種類、カラム5のサイズなどにより適宜決定される。
なお、注入されるプロポリス抽出原液は、エタノール又はエタノール・精製水混液中に適当な大きさにしたプロポリス原塊を投入して攪拌などすることにより調製される。前記したとおり、エタノールなどによる抽出は無差別抽出であるため、プロポリス抽出原液には、フラボノイドなどの薬理作用を有する成分の他、ロウ分のように飲みにくさの原因となる成分や樹脂やニカワ質などの効果的でない成分が含まれている(いずれも不溶成分)。ちなみに、本発明は、このプロポリス抽出原液中の不溶成分を除去すること及び有効成分の濃度を高めることを目的とする。
【0025】
注入されたプロポリス抽出原液は、溶離液の流れに従ってカラム5に達する。
カラム5にはゲル5bが充填されており、このゲル5bが前記説明した原理によりプロポリス抽出原液中の各成分を分子サイズごとに分離する(図2(b)参照)。本発明の場合、大きな分子Lmからなる不溶成分は早くカラム5から溶出し、小さな分子Smからなる有効成分はゲル5bの細孔の奥深くまでは入り込むため不溶成分よりも遅くカラム5から溶出する。
【0026】
プロポリス抽出原液注入後、カラム5からどのような順序で各成分が溶出するのかを、図3を用いて説明する。なお、図3は、本発明の製造方法による不溶成分分離時のクロマトグラムである。
(1) 先ず、最初の時間帯にカラム5から溶出する溶出液F1は、溶離液そのものである。この溶出液F1は、溶離液として再使用可能であるため、流路切換器8により流路Rを通って溶離液槽1に戻すことができる。なお、GPC装置Aには、カラムを安定(平衡化)させるため、プロポリス抽出原液注入に先立って、溶離液が一定流量で流されている。
【0027】
(2) 次の時間帯は、不溶成分を含む溶出液F2が溶出する。不溶成分を含む溶出液F3は廃液として、流路切換器8により流路Wを通って廃液層9に貯えられる。廃液は、蒸留などの処理により溶離液として再使用することも可能である。
【0028】
(3) そして、最後の時間帯は、フラボノイドなどの有効成分を含む溶出液F3が溶出する。有効成分を含む溶出液F3は、精製プロポリス抽出液として、流路切換器8により、流路Nを通って貯蔵槽10に貯えられる。また、精製プロポリス抽出液は濃縮を目的として、流路切換器8により流路Cを通って濃縮器11に導かれて濃縮される。濃縮液は、濃縮精製プロポリス抽出液として貯蔵槽12に貯えられる。精製プロポリス抽出液及び濃縮精製プロポリス抽出液は、健康補助食品や化粧品などへの加工用に供される。
【0029】
ちなみに、流路切換器8による流路の切り換えは、溶離液の組成、溶離液の流量、カラム5のサイズ、ゲル5bの種類、カラム恒温槽6の温度などの条件が一定ならば、各成分の溶出時間帯(保持時間)は常に一定になるので、タイマにより切り換えることができる。また、検出器7の測定値に基づき切り換えることもできる。
【0030】
なお、フラボノイドなどの有効成分を含む溶出液F3が溶出した後にカラム5から溶出する溶出液は、溶離液そのものになる。この溶出液は再使用するため流路切換器8により流路Rを通って溶離液槽1に戻すことができる。
【0031】
GPC装置Aは、一のプロポリス抽出原液の注入が終わった後は、次のプロポリス抽出原液の注入を行ない、順次注入→分離→回収というサイクルを繰り返すことができる。この際、一のサイクルの注入と次のサイクルの注入との間隔(注入インターバル)が短いと、一のサイクルの有効成分を含む溶出液F3と次のサイクルの不溶成分を含む溶出液F2とが一緒になって混合して出てきてしまうので、注入インターバルには注意する必要がある。ちなみに、注入インターバルが長くなると処理能力が劣ることになる。
GPC装置Aは、カラム5を複数設け、かつ自動注入器4からの注入流路を切り換えることができるようにして、複数系統のクロマト操作を平行して行なうシステムとしてもよい。機器の共有化を図りながら注入インターバルを短縮することができ、処理能力を高めることができるからである。
【0032】
【実施例】
次に、実施例に基づき、さらに本発明を詳細に説明する(図1など参照)。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
≪実施例1≫
本実施例では、GPC装置Aには、内径80mm、長さ1500mmのカラム5を使用した。カラム5は、35℃に温度設定されたカラム恒温槽6に装着される。なお、カラム5には、全多孔性のハイドロオキシエチルメタクリレイトに化学結合によりジオール基を導入した30μmのゲル5bが充填されている。検出器6は、示差屈折計検出器を使用した。
【0033】
プロポリス抽出原液の注入に先立って、まず、GPC装置Aを平衡化させるため、送液ポンプ3により溶離液槽1から溶離液を350ml/分の流量でカラム5に送液しつづける。カラム恒温槽6の温度や送液ポンプ3による流量はシステムコントローラ13により制御される。この時の溶離液の流れは、溶離液槽1→送液ポンプ3→カラム5→検出器7→流路切換器8→流路R→溶離液槽1の順であり、溶離液はリサイクルして使用される。
この操作を15〜20分程度行ないGPC装置Aを平衡化する。平衡化の完了は、検出器7の測定値によってシステムコントローラ13が判断し、システムコントローラ13のモニタ(図示外)に表示される。
【0034】
平衡化が完了すると、ストックタンク2に貯えられたプロポリス抽出原液が、自動注入器4によりGPC装置Aの系内に自動注入される。注入量は、150mlである。注入されたプロポリス抽出原液は、溶離液と共にカラム5に達し、カラム5内で分子サイズに基づいて成分ごとに分離される。この分離の原理は既に説明した通りである。
【0035】
分離状態は検出器7で測定され、この測定値に基づいてシステムコントローラ13が流路切換器8に指令を出し、溶出液F3を精製プロポリス抽出液として貯蔵槽10に回収した。なお、システムコントローラ13の指令により、溶出液F1は溶離液槽1に戻し、溶出液F2は廃液槽9に導いた。
【0036】
そして、貯蔵槽10に採取された精製プロポリス抽出液を再度自動注入器4によりGPC装置Aに注入し、不溶成分が分離除去されているかを確認した。この際のクロマトグラムを図4に示すが、不溶成分は97%が分離除去されていた。
【0037】
ここで、不溶成分の除去の程度を比較するために簡単な試験を行なった。すなわち、本発明による精製プロポリス抽出液と市販のプロポリス抽出液をそれぞれスポイトに取り(ともにエタノール抽出液)、充分な量の水を入れたビーカ中にそれぞれ滴下した。両者の濃度はともに20w/v%で同じである。そして、水の表面に形成された不溶成分の膜などをポリスチレン製の棒ですくい取り、この量を計測した。表面に不溶成分の膜が形成されるのは、水中に滴下されることによりエタノールの濃度が低下し、今までエタノールに溶解していた成分が不溶化するからである。
結果は、本発明の精製プロポリス抽出液の場合は、ほとんど不溶成分の膜が形成されず測定できなかった。一方、市販のプロポリス抽出液の場合は、顕著に不溶成分の膜を張り、その量は、前記20w/v%の20wに対して40〜50%の量であった。
このように、本発明によれば、プロポリス原液中の不溶成分をほとんど除去することができる。したがって、本発明の精製プロポリス抽出液は、二次加工に際してその取り扱いが極めて容易なものとなる。
【0038】
なお、本実施例1は、全多孔性ハイドロオキシエチルメタクリレイトに化学結合によりジオール基を導入したゲル5bについてのものであるが、本発明は、必ずしもこのゲル5bに限定されるものでなく、これ以外のゲル、例えば、それぞれジオール基を導入した多孔性シリカゲル、ポリスチレン系のゲルやメチルメタクリレイトよりなるゲルによっても不溶成分を分離(除去)することもできる。ただし、不溶成分と有効成分とを分離する分離能は、全多孔性ハイドロオキシエチルメタクリレイトに化学結合によりジオール基を導入したゲルが最も優れている。
【0039】
≪実施例2≫
実施例1で製造したロウ分などの不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液と不溶成分未処理のプロポリス抽出原液について、安全性試験として48時間クローズドパッチテストによるヒト皮膚一次刺激試験を行った。試験には、ワセリンにそれぞれプロポリス抽出液を混合して、2種類の15%配合ワセリン軟膏を調製し使用した。対照には、ワセリンをそのまま使用した。試験の被験者は20名である。
【0040】
試験の結果は、図5に示す表から解るように、プロポリス抽出原液と本発明による精製プロポリス抽出液とで、明らかに差がでていることが確認できた。なお、図5(b)に示す表は、図5(a)に示す表のデータを加工したものである。
【0041】
【発明の効果】
以上、本発明の不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法によれば、確実に、プロポリス抽出原液中に含まれるロウ分、ニカワ質、樹脂分などの不溶成分と、フラボノイドなどの有効成分とを分離することができる。したがって、良好な品質の不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液を製造することができる。
また、請求項2記載のゲル5bによれば、GPC装置Aの処理能力を上昇させることができる。
そして、本発明の不溶成分を除去した精製プロポリスは、健康補助食品などプロポリス加工品の製造の際などに、加工装置の管壁に不溶成分である樹脂分などが付着することがなく、プロポリス加工品やプロポリス派生品の製造が容易になる。また、精製プロポリス貯蔵に際しても貯蔵容器の壁に樹脂分などが付着することがない。
さらに、本発明の不溶成分を除去した精製プロポリスは、皮膚に対する刺激も低いため安全性を高めることができた。このことからも、健康食品、化粧品、香粧品などへの応用がより広く可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法に使用されるゲルパーミエーションクロマトグラフ装置のブロック構成図である。
【図2】 ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる分離の原理図である。(a)はゲルによる分離の原理を示す図であり、(b)は分離状態を経時的に示す図である。
【図3】 本発明の製造方法による不溶成分分離時のクロマトグラムである。
【図4】 本発明の不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液のクロマトグラムである。
【図5】 本発明の不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液のクローズドパッチテストによるヒト皮膚一次刺激試験の結果を示す表である。(a)はクローズドパッチテスト結果を示す表であり、(b)は平均評価点を示す表である。
【符号の説明】
1 溶離液槽
2 ストックタンク
3 送液ポンプ
4 自動注入器
5 カラム
5a・・クロマト管
5b・・ゲル
6 カラム恒温槽
7 検出器
8 流路切換器
9 廃液槽
10 貯蔵槽(精製プロポリス抽出液用)
11 濃縮器
12 貯蔵槽(濃縮精製プロポリス抽出液用)
13 システムコントローラ
A ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置(GPC装置)
R,W,N,C,S ・・ 流路
Lm 大きな分子(ロウ分などの不溶成分)
Sm 小さな分子(フラボノイドなどの有効成分)
F1,F2,F3 ・・ 溶出液

Claims (2)

  1. プロポリスをエタノールで抽出したプロポリス抽出原液を、所定のゲルを充填したカラムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ装置に注入する工程、
    前記注入された前記プロポリス抽出原液を、ロウ分、ニカワ質、樹脂を不溶成分として含む部分と前記不溶成分を含まない部分とに、エタノールを溶離液として前記カラムにより分離する工程、
    前記工程により分離されて前記カラムより溶出した溶出液のうち、前記不溶成分が含まれた部分の後に溶出する前記不溶成分が含まれていない部分の溶出液を、不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液として回収する工程、
    を含むことにより不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液を製造する製造方法において、
    前記所定のゲルが、全多孔性のハイドロオキシエチルメタクリレイトに化学結合によりジオール基を導入した粒状のゲル、ジオール基を導入した粒状の多孔性シリカゲル、ジオール基を導入したポリスチレン系の粒状のゲル、および、ジオール基を導入したメチルメタクリレイトよりなる粒状のゲルのうちの少なくとも一つまたは複数からなるゲルであることを特徴とする不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法。
  2. 請求項1に記載の不溶成分を除去したプロポリス抽出液の製造方法により製造された不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液。
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