JPH09151131A - 抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症剤 - Google Patents

抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症剤

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JPH09151131A
JPH09151131A JP8246836A JP24683696A JPH09151131A JP H09151131 A JPH09151131 A JP H09151131A JP 8246836 A JP8246836 A JP 8246836A JP 24683696 A JP24683696 A JP 24683696A JP H09151131 A JPH09151131 A JP H09151131A
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JP
Japan
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active ingredient
compound
methicillin
mrsa
staphylococcus aureus
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Application number
JP8246836A
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English (en)
Inventor
Masayuki Nakano
真之 中野
So Aga
創 阿賀
Takashi Shibuya
孝 渋谷
Toshio Miyake
俊雄 三宅
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Original Assignee
Hayashibara Biochemical Laboratories Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 毒性が弱く、かつメチシリン耐性黄色ブドウ
球菌(MRSA)に対して強い抗菌作用を示す化合物を
含有する抗MRSA感染症剤の提供を課題とする。 【解決手段】 本発明のベンゼンプロパノイックアシッ
ド 4−(2−カルボキシエテニル)−2−(3−メチ
ル−2−ブテニル)フェニルエステル又はその塩を有効
成分として含有する抗MRSA感染症剤により解決す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術的分野】本発明は、抗メチシリン耐
性黄色ブドウ球菌感染症剤に関し、詳細には、ベンゼン
プロパノイックアシッド 4−(2−カルボキシエテニ
ル)−2−(3−メチル−2−ブテニル)フェニルエス
テル又はその塩を有効成分として含有する抗メチシリン
耐性黄色ブドウ球菌感染症剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、火傷、切傷、感染症などを治療す
るために、又、手術時の感染を予防するために、ペニシ
リン、メチシリン、ストレプトマイシン、カナマイシン
などの抗生物質が大量に用いられてきた。しかしなが
ら、抗生物質への過度の依存が耐性菌の出現を生み、却
って重篤な耐性菌感染症を発生させている。とりわけ、
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicilli
n−resistantStaphylococcus
aureus、以下、本明細書では特にことわらない
限り、本菌をMRSAと略称する。)感染症は、メチシ
リンをはじめとして各種β−ラクタム系抗生物質が効き
にくく、抗生物質の大量使用を続けてきた病院内でしば
しば発生し、入院中の患者、未熟児、寝たきり老人など
が感染の危険にさらされており、その死亡率の高いこと
も報じられるに及んで、今や大きな社会問題にまで発展
している。
【0003】その治療方法としては、『医学のあゆ
み』、第166巻、第5号、第335乃至339頁(1
993年)に記載されているように、バンコマイシン
(Vancomycin)の投与が知られているもの
の、聴覚や腎臓機能への副作用が知られており、より安
全な治療剤の確立が望まれる。また、この抗生物質に対
する耐性菌の出現も懸念される。このため、より安全性
の高い天然物の抗菌作用が見直されるようになってき
た。抗菌作用を有する天然物は、一般に耐性菌の出現が
稀であり、また、その抗菌作用に比して毒性が低く安心
して使用できるという利点を有している。しかしなが
ら、この天然物に含まれる個々の成分について、MRS
Aに対する抗菌作用まで解明しているものはほとんど見
当たらないのが実情である。
【0004】例えば、本発明者らが、先に、『医学と生
物学』、第124巻、第5号、第205乃至209頁
(1992年)に開示したブラジル産プロポリスの抗菌
作用については、単にプロポリスエキスの一般微生物に
対する抗菌作用を明らかにしているに過ぎず、どの成分
が効いているのかまでは不明であった。
【0005】その後、本発明者らは、特開平6−256
177号公報で開示したように、プロポリスに含まれる
一般微生物に対する抗菌物質を検討し、最も強力な抗菌
作用を有する物質として、3−{4−ヒドロキシ−3,
5−ビス(3−メチル−2−ブテニル)フェニル}−2
−プロペノイックアシッド〔3−{4−Hydroxy
−3,5−bis(3−methyl−2−buten
yl)phenyl}−2−propenoic ac
id〕{以下、本明細書では特にことわらない限り、本
物質を化合物(1)と称する。}を見いだし、2番目に
強い抗菌作用を有する物質として、ベンゼンプロパノイ
ックアシッド 4−(2−カルボキシエテニル)−2−
(3−メチル−2−ブテニル)フェニルエステル{Be
nzenpropanoic acid 4−(2−c
arboxyethenyl)−2−(3−methy
l−2−butenyl)phenyl ester}
{以下、本明細書では特にことわらない限り、本物質を
化合物(2)と称する。}を見いだした。
【0006】しかしながら、MRSA感染症の感染源で
あるMRSAに対する作用については、未検討であっ
た。従って、MRSAに対して強い抗菌作用を有する物
質を探索し、より安全な抗MRSA感染症剤を確立する
ことが強く望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、毒性が低
く、かつMRSAに対して強い抗菌作用を示す化合物を
有効成分とする抗MRSA感染症剤を提供することを課
題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために、プロポリスエキスに含まれる物質の
MRSAに対する抗菌作用に着目し、鋭意研究を続けて
きた。その結果、意外にも、プロポリスエキスに含まれ
る各種成分のうち一般微生物に対して最も強い抗菌作用
を示した化合物(1)はMRSAに対してほとんど抗菌
作用を示さず、一般微生物に対して2番目に強い抗菌作
用を示した化合物(2)のみがMRSAに対して著しく
強力な抗菌作用を有していることを見いだした。本発明
者らは、この新知見に基づいてさらに研究を重ね、化合
物(2)又はその塩を有効成分として含有する抗MRS
A感染症剤を確立した。
【0009】即ち、本発明は以下の要旨を有するもので
ある。 (A)化合物(2)又はその塩を有効成分として含有す
る抗MRSA感染症剤。 (B)化合物(2)又はその塩を有効成分とし、この有
効成分とともに薬学的に許容される担体を含有してなる
抗MRSA感染症剤。 (C)有効成分を0.5w/w%以上含有する前記
(A)又は(B)の抗MRSA感染症剤。 (D)有効成分が、プロポリス由来の化合物(2)又は
その塩である前記(A)、(B)又は(C)の抗MRS
A感染症剤。
【0010】本発明に使用する化合物(2)の塩は、使
用の態様によって薬理学的に許容される塩であって、具
体的には、ナトリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、
亜鉛塩などが例示される。本発明に使用する化合物
(2)又はその塩は、既知の化合物であり、有機化学的
手段によって合成してもよく、又は植物、プロポリスな
ど天然物からの抽出によって調製してもよい。
【0011】天然物から調製する方法としては、例え
ば、本発明者らが先に、特開平6−256177号公報
で開示したプロポリスから調製する方法や、『フィトケ
ミストリー(Phytochemistry)』、第2
5巻、第12号、第2841乃至2855頁(1986
年)に記載されているキク科植物の葉茎から調製する方
法がある。これら天然物から調製する場合には、本発明
の抗MRSA感染症剤に用いられる化合物(2)又はそ
の塩は、必ずしも結晶として単離される必要はなく、そ
れが有効成分としてMRSAに対して抗菌作用を発揮す
る程度の純度に部分精製された、例えばエキスの如きも
のであってもよい。
【0012】上記調製方法として、常法の抽出方法、精
製方法等を適宜用いることができる。例えば、まず原料
であるプロポリスやキク科植物の葉茎などを粉砕し、メ
タノール、エタノールなどのアルコール又はアルコール
水の混合液などの溶媒で抽出し、この抽出液を常法によ
り濃縮する。得られたエキスを、ゲル濾過クロマトグラ
フィー、逆相クロマトグラフィーなどに供することによ
って精製することができる。
【0013】有効成分として、化合物(2)又はその塩
を含有する抗MRSA感染症剤は、MRSAに対して抗
菌作用を発揮できればよく、換言すれば、その作用を発
揮する場面で、その有効成分の最小生育阻止濃度(MI
C)を確保できればよく、その濃度としては通常2乃至
100ppm(MIC2乃至100μg/ml)又はそ
れ以上が好適である。本発明の抗MRSA感染症剤は、
化合物(2)又はその塩をそのまま用いてもよいし、又
は医薬的に許容される担体とともにその有効成分を0.
5w/w%以上、好ましくは、0.5乃至99.5w/
w%、更に好ましくは1.0乃至90w/w%含有させ
て製造すればよい。
【0014】担体としては、無毒の希釈剤、充填剤、そ
の他処方用の公知助剤が適宜用いられる。例えば、カプ
セル剤、粉剤、顆粒剤、錠剤など固形製剤に用いる担体
は、デンプン、マルトース、トレハロース、炭酸カルシ
ウム、リン酸カルシウムなどの賦形剤、アラビアガム、
プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースな
どの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの
滑沢剤などであり、軟膏、坐剤など半固形製剤に用いる
担体は、水溶性基剤、乳化基剤、油脂性基剤などの基剤
であり、注射剤、点滴剤、噴霧剤、点眼剤、点鼻剤など
液剤に用いる担体は、蒸留水、生理食塩水、アルコール
水などである。このようにして作られる本発明の抗MR
SA感染症剤は経口的又は非経口的にヒトを含む動物に
投与され、MRSA感染症の治療用又は予防用に有利に
利用される。
【0015】投与量は、投与経路、投与頻度、症状、体
重、年齢などによって適宜調節することができる。通
常、化合物(2)又はその塩を有効成分として、成人1
日当たり約10乃至2,000mgの範囲の投与が好適
である。以下、本発明を実験で詳細に説明する。
【0016】
【実験1】 〈化合物(1)の調製〉ブラジル産プロポリス原塊15
3.3重量部をトリオブレンダーで粉砕し、酢酸エチル
で抽出した。抽出液にメタノールを加え、生じた沈澱を
遠心分離にて除去した。溶媒を回転蒸発装置にて除き、
メタノールを加えた。再度、生じた沈澱を遠心分離にて
除き、溶媒を回転蒸発装置にて除き、メタノールを加
え、エキスを得た。固形物として、63.9重量部得ら
れた。
【0017】次に、シリカゲル60 G650(片山化
学工業株式会社製)によるカラムクロマトグラフィーを
行った。固形物として35重量部のエキスをチャージ
し、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒でグラジェントを
かけながら溶出した。ヘキサン/酢酸エチル=59/4
1〜57/43で溶出した画分、固形物として2.2重
量部を回収した。
【0018】次に、この画分をセファデックスLH−2
0(ファルマシア製)によるカラムクロマトグラフィー
に供した。溶出液にはメタノールを用いSV0.16で
溶出した。溶出位置1.1容量/担体容量の付近の画分
を濃縮したところ、結晶が析出した。この結晶をヘキサ
ンで洗浄し、標品0.28重量部を得た。
【0019】本標品の理化学的性質を調べた。 (1)融点 95℃ (2)元素分析 測定値 C=75.85% H=8.39% O=1
6.39% 計算値 C=75.97% H=8.05% O=1
5.98% (分子式:C19243) (3)分子量 300.40 (4)紫外線吸収スペクトル メタノールに溶解して紫外線吸収スペクトルを測定し
た。結果を図1に示す。図1から明らかなように、20
4、219、235、313ナノメーターに吸収極大を
持つ。これは、特開昭60−163841号公報に示さ
れる本化合物の値と一致した。 (5)赤外線吸収スペクトル 標品1.5mgと乾燥KBr200mgを混合して錠剤
を作成し赤外線吸収スペクトルを測定した。結果は、図
2に示す。図2から明らかなように、3440cm-1
3000−2500cm-1(br)、1670cm-1
1625cm-1、1595cm-1などに吸収を持つ。こ
れらの値は、特開昭60−163841号公報に示され
る本化合物の値、3440cm-1、2800−2500
cm-1(br)、1680cm-1、1628cm-1、1
599cm-1と一致した。 (6)水素核磁気共鳴分析(1H−NMR) 重クロロホルムに溶解し、500MHzで測定した。以
下の水素22個分のシグナルが見られた。7.69pp
m(1H,d,J=15.9Hz)、7.20ppm
(2H,s)、6.29ppm(1H,d,J=15.
9Hz)、5.31ppm(2H,br t)、3.3
5ppm(4H,br d)、1.79ppm(6H,
s)、1.78ppm(6H,s) この値は、『ケミカル・ファーマシューティカル・ブレ
ティン(Chemical Pharmaceutic
al Bulletin)』、第36巻、第2号、第7
69乃至775頁(1988年)に示しているacet
on−d6 中で測定した本化合物の測定値、7.69p
pm(1H,d,J=17Hz)、7.15ppm(2
H,br s)、6.23ppm(1H,d,J=17
Hz)、5.28ppm(2H,br t)、3.33
ppm(4H,m)、1.78ppm(12H,s)と
一致した。 (7)化学構造 これらの結果から、本化合物を、既知化合物である3−
{4−ヒドロキシ−3,5−ビス(3−メチル−2−ブ
テニル)フェニル}−2−プロペノイック アシッドと
同定した。本化合物の化学構造を化1に示す。
【0020】
【化1】
【0021】
【実験2】 〈化合物(2)の調製〉実験1のシリカゲルカラムクロ
マトグラフィーで得た、ヘキサン/酢酸エチル=55/
45〜52/48で溶出した画分、固形物として2.5
重量部を、実験1と同様にセファデックスLH−20に
よるカラムクロマトグラフィーに供した。溶出位置1.
0容量/担体容量の付近の画分を回収した。さらに逆相
高速液体クロマトグラフィーによる分取を行った。溶離
液にメタノール/水/酢酸=900/100/0.01
を用いた。フラクションを濃縮し、結晶0.058重量
部を得た。
【0022】本標品の理化学的性質を調べた。 (1)融点 99℃ (2)元素分析 測定値 C=75.14% H=6.59% (3)分子量 FD/MS; M/z=364 (分子式はC23244 で、分子量364.44、C=
75.80%、H=6.64%、O=17.56%と計
算された。) (4)紫外線吸収スペクトル メタノールに溶解して紫外線吸収スペクトルを測定し
た。結果を図3に示す。図3から明らかなように、20
8、278ナノメーターに吸収極大を持つ。 (5)赤外線吸収スペクトル 標品1mgと乾燥KBr200mgを混合して錠剤を作
成し赤外線吸収スペクトルを測定した。結果は、図4に
示す。図4から明らかなように、3450cm-1(b
r)、2920cm-1、3100−2800cm-1(b
r)、1750cm-1、1690cm-1、1635cm
-1などに吸収を持つ。 (6)水素核磁気共鳴分析(1H−NMR) 重クロロホルムに溶解し、500MHzで測定した。以
下の水素23個分のシグナルが見られた。7.73pp
m(1H,d,J=16.0Hz)、7.40ppm
(1H,dd)、7.39ppm(1H,s)、7.3
1ppm(2H)、7.27ppm(2H)、7.24
ppm(1H)、6.97ppm(1H,d,J=8.
3Hz)、6.38ppm(1H,d,J=16.0H
z)、5.18ppm(1H,br t,J=7.3,
1.4Hz)、3.14ppm(2H,br d,J=
7.3Hz)、3.09ppm(2H,t,J=7.
8,7.4Hz)、2.92ppm(2H,t,J=
8.0,7.4Hz)、1.75ppm(3H,s)、
1.67ppm(3H,s) この値は、『フィトケミストリー(Phytochem
istry)』、第25巻、第12号、第2841乃至
2855頁(1986年)に示される本化合物のメチル
エステルの測定値、7.63ppm(1H,d,J=1
6Hz)、7.35ppm(1H,dd,J=2,8.
5Hz)、7.34ppm(1H,br s)、7.1
5−7.3ppm(5H,m)、6.93ppm(1
H,d,J=8.5Hz)、6.33ppm(1H,
d,16Hz)、5.17ppm(1H,tqq,J=
7,1Hz)、3.13ppm(2H,br d,J=
7Hz)、3.08ppm(2H,br t)、2.9
1ppm(2H,br t)、1.74ppm(3H,
br s)、1.66ppm(3H,br s)、3.
79ppm(OMe,s)と、メトキシル基のシグナル
を除き一致した。 (7)化学構造 本化合物は、既知化合物であるベンゼンプロパノイック
アシッド4−(2−カルボキシエテニル)−2−(3−
メチル−2−ブテニル)フェニル エステルと同定し
た。本化合物の化学構造を化2に示す。
【0023】
【化2】
【0024】
【実験3】 〈一般微生物に対するプロポリスエキス成分の抗菌作
用〉一般微生物に対するプロポリスエキスに含まれる各
種成分の抗菌作用を『医学と生物学』、第124巻、第
5号、第205乃至209頁(1992年)に記載され
ている方法に準じて調べた。プロポリスエキス成分とし
て化合物(1)、化合物(2)はそれぞれ実験1、実験
2の方法で調製したものを用いた。他の成分は、カフェ
酸、p−クマル酸、ガランギン、ケンフェロール及びケ
ルセチンを用いた。これら成分はいずれも、『フレグラ
ンスジャーナル』、第83号、第29乃至33頁(19
87年)の記載からも明らかなようにプロポリス中に含
まれることの知られているものであるが、本実験では入
手の容易な市販の試薬を用いた。対照として、ブラジル
産プロポリスをエタノール水溶液で抽出した市販のプロ
ポリスエキスを用いた。一般微生物としては、バチルス
・セレウス(Bacillus cereus)IFO
3466、エンテロバクター・アエロゲネス(Ente
robacter aerogenes)IFO332
1、アルスロデルマ・ベンハミアエ(Arthrode
rma benhamiae)JCM1885及びメチ
シリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin
−sensitive Staphylococcus
aureus、以下、本明細書では特にことわらない
限り、本菌をMSSAと略称する。)ATCC6538
Pを用いた。
【0025】抗菌力は、『ケモセラピー(Chemot
herapy)』、第29巻、第1号、第76乃至79
頁(1981年)に記載されている日本化学療法学会の
最小生育阻止濃度(MIC)測定法に準じて測定した。
結果は表1にまとめた。
【0026】
【表1】
【0027】表1の結果から明らかなように、一般微生
物に対する抗菌作用は、化合物(1)が最も強く、これ
に次いで化合物(2)の抗菌作用の強いことが判明し
た。
【0028】
【実験4】 〈MRSAに対するプロポリスエキス成分の抗菌作用〉
実験3の方法に準じて、MRSAに対するプロポリスエ
キスに含まれる各種成分の抗菌作用を調べた。対照とし
て、プロポリスエキスの抗菌作用を同様に調べた。MR
SAとして、公知のスタフィロコッカス・オーレウス
(Staphylococcus aureus)JC
M8702及び岡山市内の病院からメチシリン耐性菌と
して新たに分離し同定された分離菌スタフィロコッカス
・オーレウス(Staphylococcus aur
eus)H−1を用いた。対照のメチシリン感受性菌と
して、実験3に記載しているMSSA(ATCC653
8P)を用いた。更に、対照として市販の抗生物質即
ち、メチシリン、ゲンタミシン及びバンコマイシンを同
様に試験した。結果は表2にまとめた。
【0029】
【表2】
【0030】表2の結果から明らかなように、化合物
(2)は、MRSAに対する抗菌作用が、MSSAの場
合とは全く違って、著しく強い抗菌作用を示し、その強
さはMIC2〜7.8μg/mlでバンコマイシンに匹
敵する程に強力であることが判明した。これに対して、
化合物(1)は、一般微生物であるMSSAに対してM
IC62.5μg/mlの抗菌作用を示すものの、MR
SAの場合には化合物(2)とは逆に抗菌作用がMIC
250μg/mlに低下することが判明した。またプロ
ポリスエキスは、MSSAとMRSAに対する抗菌作用
が、どちらもMIC250μg/mlと比較的低いもの
であった。
【0031】
【実験5】 〈急性毒性〉7週齢のdd系マウスを使用して、実験2
の方法で調製した化合物(2)を経口又は非経口投与し
て急性毒性テストをしたところ、いずれの場合も体重k
g当たり1.0gまで死亡例は見られなかった。従っ
て、化合物(2)の毒性は、極めて低い。
【0032】
【実験6】 〈MRSA感染症の治療〉化合物(2)のMRSA感染
症治療のための50%有効量(ED50)を調べた。7週
齢のdd系マウスを使用して、その腹腔内にMRSA
JCM8702又はMRSA H−1を接種して感染さ
せ、1時間後に、該マウスの筋肉内に実施例6の方法で
得た化合物(2)を含む注射剤を懸濁液にして投与し
た。投与後、7日目のマウス生存数からプロビット法
(probit method)によりED50を求め
た。その結果、化合物(2)のMRSA JCM870
2又はMRSA H−1感染マウスに対するED50は、
体重kg当たりそれぞれ約3mg又は約10mgであっ
た。従って、化合物(2)を含む薬剤は、抗MRSA感
染症剤として好適である。
【0033】以下、本発明の実施例を述べるが、本発明
はこれら記載によって何ら制限されるものではない。
【0034】
【実施例1】 〈液剤〉実験2の方法で得た化合物(2)5重量部に8
0v/v%エタノール95重量部に溶解して、液状の抗
MRSA感染症剤を得た。本品は、そのままでMRSA
感染症治療のための塗り薬として用いることも、更に、
水を含む溶媒に希釈又は懸濁して他の液剤を製造し、こ
れを内服又は噴霧して利用することも有利に実施でき
る。また、賦形剤に吸収させて、顆粒、カプセル、錠剤
などの固形製剤や、軟膏基材などと配合して半固形製剤
を製造することも有利に実施できる。
【0035】
【実施例2】 〈液剤〉実施例1の方法で得た液状の抗MRSA感染症
剤50重量部に5w/w%グリセリン45重量部を混合
し、これを1N−リン酸二ナトリウムでpH7.4に調
製して液状の抗MRSA感染症剤を製造した。本品は、
患部への刺激も少なく、そのままでMRSA感染症治療
のための塗り薬として用いることも、噴霧剤として用い
ることも有利に実施できる。また、実施例1と同様に、
更に希釈して他の液剤を製造することも、賦形剤に吸収
させて固形製剤や半固形製剤を製造することも有利に実
施できる。
【0036】
【実施例3】 〈粉末剤〉実験2の方法で得た化合物(2)2重量部に
80v/v%エタノール9重量部を加え、pH7.0に
中和し、加温して溶解し、これにサイクロデキストリン
粉末8重量部を混合し、減圧乾燥して粉末状の抗MRS
A感染症剤を得た。本品は、このまま、MRSA感染症
治療のための内服薬として用いることも、更に加工して
固形製剤を製造することも有利に実施できる。また、水
を含む溶媒に溶解又は懸濁して液剤を製造することも、
軟膏基材などと配合して半固形製剤を製造することも有
利に実施できる。
【0037】
【実施例4】 〈軟膏〉マルトース粉末500重量部に実施例1の方法
で得た化合物(2)を含有する液状の抗MRSA感染症
剤20重量部及びエタノール33重量部を加えて混合
し、更に10w/w%プルラン水溶液200重量部を加
えて混合し、適度の延び、付着性を示すMRSA感染症
治療のための軟膏を得た。本品は、MRSAに対する抗
菌作用のみならず、マルトースによる細胞へのエネルギ
ー補給作用も発揮することから、治癒期間が短縮され、
創面もきれいに治る。また、切り傷、火傷、口内炎など
外傷治療の促進に利用される。更に、本品をソフトカプ
セルなどに充填、成形し、直腸内、膣内などのMRSA
感染症治療のための坐剤としても有利に利用できる。
【0038】
【実施例5】 〈錠剤〉トレハロース粉末5重量部、ラクトース粉末5
重量部及び実施例3の方法で得た化合物(2)を含有す
る粉末状の抗MRSA感染症剤5重量部を均一に混合
し、常法に従って、直径12mm、20R杵を用いて打
錠し錠剤を得た。本品は、口腔内のMRSA感染症を治
療するための舌下錠として、消化器系のMRSA感染症
を治療するための内服用錠剤などとして有利に利用でき
る。
【0039】
【実施例6】 〈注射剤〉実施例1の方法で得た化合物(2)を含有す
る液状の抗MRSA感染症剤をリン酸二ナトリウムでp
H7.0に中和し、常法に従って、精製濾過してパイロ
ゲンフリーとし、この溶液を20ml容アンプルに化合
物(2)が300mgになるように分注し、これを凍結
乾燥し、封入して注射剤を製造した。本注射剤は所望に
より、他のビタミン、ミネラルなどと混合して用時注射
用蒸留水に溶解又は懸濁して、筋肉又は静脈内に投与で
き、MRSA感染症を治療するための注射剤として有利
に利用できる。
【0040】
【発明の効果】化合物(2)又はその塩は、MRSA感
染症の感染源であるMRSAの生育をよく阻害し、抗M
RSA感染症剤として有利に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物(1)の紫外線吸収スペクトルを示す図
である。
【図2】化合物(1)の赤外線吸収スペクトルを示す図
である。
【図3】化合物(2)の紫外線吸収スペクトルを示す図
である。
【図4】化合物(2)の赤外線吸収スペクトルを示す図
である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ベンゼンプロパノイックアシッド 4−
    (2−カルボキシエテニル)−2−(3−メチル−2−
    ブテニル)フェニルエステル又はその塩を有効成分とし
    て含有する抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症剤。
  2. 【請求項2】 ベンゼンプロパノイックアシッド 4−
    (2−カルボキシエテニル)−2−(3−メチル−2−
    ブテニル)フェニルエステル又はその塩を有効成分と
    し、この有効成分とともに薬学的に許容される担体を含
    有してなる抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症剤。
  3. 【請求項3】 ベンゼンプロパノイックアシッド 4−
    (2−カルボキシエテニル)−2−(3−メチル−2−
    ブテニル)フェニルエステル又はその塩を0.5w/w
    %以上含有する請求項1又は2記載の抗メチシリン耐性
    黄色ブドウ球菌感染症剤。
  4. 【請求項4】 有効成分が、プロポリス由来のベンゼン
    プロパノイックアシッド 4−(2−カルボキシエテニ
    ル)−2−(3−メチル−2−ブテニル)フェニルエス
    テル又はその塩である請求項1、2又は3記載の抗メチ
    シリン耐性黄色ブドウ球菌感染症剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000281581A (ja) * 1999-03-26 2000-10-10 Kokan Yakuhin Kenkyusho:Kk 不溶性分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法及び不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液など
JP2002371032A (ja) * 2001-06-15 2002-12-26 Morikawa Kenkoudou Kk 標準品用3,5−ジプレニル−4−ヒドロキシ桂皮酸およびその製造方法

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JP2000281581A (ja) * 1999-03-26 2000-10-10 Kokan Yakuhin Kenkyusho:Kk 不溶性分を除去した精製プロポリス抽出液の製造方法及び不溶成分を除去した精製プロポリス抽出液など
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