以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッドの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図2は、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッドの構成を示す断面図である。なお、図2は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。また、図2において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。
図1および図2に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1と、この基板1の上に配置されたアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部シールド層3と、この下部シールド層3の上に配置された絶縁膜である下部シールドギャップ膜4と、この下部シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である上部シールドギャップ膜6と、この上部シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第1の上部シールド層7とを備えている。
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面30に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
磁気ヘッドは、更に、第1の上部シールド層7の上に順に配置された非磁性層81および第2の上部シールド層82を備えている。非磁性層81は、アルミナ等の非磁性材料によって形成されている。第2の上部シールド層82は、磁性材料によって形成されている。下部シールド層3から第2の上部シールド層82までの部分は、再生ヘッドを構成する。
磁気ヘッドは、更に、第2の上部シールド層82の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層83と、この絶縁層83の上に配置されたコイル9と、コイル9の巻線間および周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層10と、絶縁層10の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層11とを備えている。コイル9は、平面渦巻き形状をなしている。コイル9および絶縁層10,11の上面は平坦化されている。絶縁層83,11は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層10は、例えばフォトレジストによって形成されている。コイル9は、銅等の導電材料によって形成されている。
磁気ヘッドは、更に、平坦化されたコイル9および絶縁層10,11の上面の上に配置された非磁性材料よりなる収容層12を備えている。収容層12は、上面で開口し、後述する磁極層を収容する溝部12aを有している。収容層12の材料としては、例えば、アルミナ、シリコン酸化物(SiOX)、シリコン酸窒化物(SiON)等の絶縁材料でもよいし、Ru、Ta、Mo、Ti、W、NiCu、NiB、NiP等の非磁性金属材料でもよい。
磁気ヘッドは、更に、非磁性金属材料よりなり、収容層12の上面の上に配置されたマスク層13を備えている。マスク層13は、貫通する開口部13aを有し、この開口部13aの縁は、収容層12の上面における溝部12aの縁の真上に配置されている。マスク層13の材料としては、例えば、Ta、Mo、W、Ti、Ru、Rh、Re、Pt、Pd、Ir、NiCr、NiP、NiB、WSi2、TaSi2、TiSi2、TiN、TiWのいずれかを用いることができる。
図2に示したように、マスク層13は、収容層12の上に順に積層された第1層131および第2層132を有していてもよい。この場合、第2層132の材料としては、第1層131の材料に比べて、後述する非磁性膜14に対する密着性のよい材料が用いられる。例えば、第1層131の材料としてはRuが用いられ、第2層132の材料としてはNiCrが用いられる。
磁気ヘッドは、更に、収容層12の溝部12a内およびマスク層13の開口部13a内に配置された非磁性膜14、研磨停止層15および磁極層16を備えている。非磁性膜14は、溝部12aの表面に接するように配置されている。磁極層16は、溝部12aの表面から離れるように配置されている。非磁性膜14は、溝部12a内において、収容層12と磁極層16の間に挟まれるように配置されている。研磨停止層15は、溝部12a内において、非磁性膜14と磁極層16の間に挟まれるように配置されている。磁極層16は、溝部12aの表面により近い位置に配置された第1層161と、溝部12aの表面からより遠い位置に配置された第2層162とを有している。第2層162は、例えばめっき法によって形成される。この場合、第1層161は、第2層162をめっき法で形成する際に用いられるシード層となる。なお、研磨停止層15と第1層161の一方は省略してもよい。第1層161を省略した場合には、研磨停止層15が、第2層162をめっき法で形成する際に用いられるシード層となる。
非磁性膜14は、非磁性材料によって形成されている。非磁性膜14の材料としては、例えば絶縁材料または半導体材料を用いることができる。非磁性膜14の材料としての絶縁材料としては、例えばアルミナ、シリコン酸化物(SiOX)、シリコン酸窒化物(SiON)のいずれかを用いることができる。非磁性膜14の材料としての半導体材料としては、例えば多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンを用いることができる。
研磨停止層15は、例えば非磁性金属材料によって形成されている。研磨停止層15の材料としては、例えば、マスク層13と同じものを用いることができる。
第1層161と第2層162は、いずれも金属磁性材料によって形成されている。第1層161の材料としては、例えば、CoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第2層162の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、磁極層16の上面の一部の上に配置された非磁性層17を備えている。非磁性層17は、無機絶縁材料よりなる層を含んでいてもよいし、金属材料よりなる層を含んでいてもよい。図2に示した例では、非磁性層17は、金属材料よりなり磁極層16の上面の一部の上に配置された第1層171と、無機絶縁材料よりなり第1層171の上に配置された第2層172とを含んでいる。第1層171を構成する金属材料としては、例えばRu、NiCrまたはNiCuが用いられる。第2層172を構成する無機絶縁材料としては、例えばAl2O3またはシリコン酸化物が用いられる。非磁性層17の形状については、後で詳しく説明する。
磁気ヘッドは、更に、マスク層13、非磁性膜14、研磨停止層15、磁極層16および非磁性層17の上に配置されたギャップ層18を備えている。非磁性層17およびギャップ層18は、磁極層16の上面のうち媒体対向面30から離れた一部分は覆っていない。ギャップ層18の材料は、アルミナ等の絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性金属材料でもよい。
磁気ヘッドは、更に、シールド20を備えている。シールド20は、ギャップ層18の上に配置された第1層20Aと、磁極層16の上面のうち媒体対向面30から離れた一部分の上に配置されたヨーク層20Bと、第1層20Aとヨーク層20Bとを連結する第2層20Cとを有している。第1層20Aと第2層20Cは、いずれも、媒体対向面30に配置された端面を有している。第1層20A、ヨーク層20Bおよび第2層20Cは、いずれも磁性材料によって形成されている。これらの層20A〜20Cの材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、第1層20Aおよびヨーク層20Bの周囲に配置された非磁性層21を備えている。非磁性層21は、例えば、アルミナや塗布ガラス等の無機絶縁材料によって形成されている。あるいは、非磁性層21は、非磁性金属材料よりなる層とその上に配置された絶縁材料よりなる層とで構成されていてもよい。この場合、非磁性金属材料としては、例えば、Ta、Mo、Nb、W、Cr、Ru、NiCu、Pd、Hf等の高融点金属が用いられる。
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層20Bおよび非磁性層21の上面のうち、後述するコイル23が配置される領域の上に配置された絶縁層22と、この絶縁層22の上に配置されたコイル23と、このコイル23を覆うように絶縁層24とを備えている。絶縁層22は、例えばアルミナによって形成されている。コイル23は、平面渦巻き形状をなしている。コイル23の一部は、第2層20Cとヨーク層20Bの間を通過している。コイル23は、銅等の導電材料によって形成されている。絶縁層24は、例えばフォトレジストによって形成されている。磁気ヘッドは、更に、第2層20Cを覆うように配置されたアルミナ等の絶縁材料よりなる保護層25を備えている。コイル9からシールド20の第2層20Cまでの部分は、記録ヘッドを構成する。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面30と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドと記録ヘッドは、基板1の上に積層されている。再生ヘッドは記録媒体の進行方向Tの後側(スライダにおける空気流入端側)に配置され、記録ヘッドは記録媒体の進行方向Tの前側(スライダにおける空気流出端側)に配置されている。
再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面30側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層7と、MR素子5と下部シールド層3との間に配置された下部シールドギャップ膜4と、MR素子5と上部シールド層7との間に配置された上部シールドギャップ膜6とを備えている。
記録ヘッドは、コイル9、収容層12、マスク層13、非磁性膜14、研磨停止層15、磁極層16、非磁性層17、ギャップ層18、シールド20およびコイル23を備えている。コイル9,23は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。なお、コイル9は、記録ヘッドにおける必須の構成要素ではなく、設けられていなくてもよい。また、非磁性膜14は省略してもよい。
磁極層16は、媒体対向面30に配置された端面と、基板1からより遠い上面とを有し、コイル23によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
シールド20は、媒体対向面30に配置された端面を有し、媒体対向面30から離れた位置において磁極層16に連結されている。磁極層16とシールド20のうち、磁極層16の方が基板1に近い位置に配置されている。ギャップ層18は、非磁性材料よりなり、媒体対向面30に配置された端面を有し、磁極層16とシールド20との間に設けられている。
媒体対向面30において、シールド20の端面は、磁極層16の端面に対して、ギャップ層18の厚みによる所定の間隔を開けて記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。ギャップ層18の厚みは、例えば、25〜45nmの範囲内である。コイル23は、磁極層16とシールド20とによって囲まれた空間を通過する部分を含んでいる。
磁極層16は、収容層12の溝部12a内およびマスク層13の開口部13a内に、非磁性膜14および研磨停止層15を介して配置されている。非磁性膜14の厚みは、例えば10〜50nmの範囲内である。しかし、この範囲内に限らず、非磁性膜14の厚みは、トラック幅に応じて任意に設定することができる。研磨停止層15の厚みは、例えば40〜60nmの範囲内である。
磁極層16は、溝部12aの表面に近い位置に配置された第1層161と、溝部12aの表面から遠い位置に配置された第2層162とを有している。第1層161の厚みは、例えば0〜100nmの範囲内である。第1層161の厚みが0というのは、第1層161がない場合である。
シールド20は、ギャップ層18に隣接するように配置された第1層20Aと、磁極層16の上面のうち媒体対向面30から離れた一部分の上に配置されたヨーク層20Bと、第1層20Aとヨーク層20Bとを連結する第2層20Cとを有している。第2層20Cは、絶縁層24によって覆われたコイル23の一部における磁極層16とは反対側に配置された部分を含んでいる。
次に、図3を参照して、磁極層16および非磁性層17の形状について詳しく説明する。図3は、磁極層16および非磁性層17の媒体対向面30の近傍の部分を示す斜視図である。図3に示したように、媒体対向面30に配置された磁極層16の端面は、基板1により近い第1の辺A1と、第1の辺A1とは反対側の第2の辺A2と、第1の辺A1の一端と第2の辺A2の一端とを結ぶ第3の辺A3と、第1の辺A1の他端と第2の辺A2の他端とを結ぶ第4の辺A4とを有している。第2の辺A2は、トラック幅を規定する。媒体対向面30に配置された磁極層16の端面は、第1の辺A1に近づくに従って、すなわち基板1に近づくに従って小さくなる幅を有している。また、第3の辺A3と第4の辺A4がそれぞれ基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、例えば、9°〜15°の範囲内とする。第2の辺A2の長さ、すなわちトラック幅は、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
また、磁極層16の上面は、媒体対向面30に配置された第1の端縁E1とその反対側の第2の端縁E2とを有する第1の部分16T1と、第1の部分16T1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁E2において第1の部分16T1に接続された第2の部分16T2とを有している。第1の端縁E1は、第2の辺A2と一致している。
また、第1の部分16T1の任意の位置の基板1からの距離は、前記任意の位置が媒体対向面30から離れるに従って大きくなっている。第1の部分16T1が媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度は、例えば30〜55°の範囲内である。第2の部分16T2は、実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延在している。磁極層16の下面は、平坦であり、実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延在している。
非磁性層17は、第2の部分16T2の上に配置されている。非磁性層17は、第2の部分16T2に接する下面を有し、この下面は第2の端縁E2に位置する端縁E3を有している。図3に示した例では、非磁性層17は、金属材料よりなり磁極層16の上面の一部の上に配置された第1層171と、無機絶縁材料よりなり第1層171の上に配置された第2層172とを含んでいる。第1層171の厚みは、例えば50〜150nmの範囲内であり、第2層172の厚みは、例えば60〜120nmの範囲内である。なお、非磁性層17は、金属材料よりなる1つの層によって構成されていてもよいし、無機絶縁材料よりなる1つの層によって構成されていてもよい。
非磁性層17は、媒体対向面30に向いた前端面17aと、基板1からより遠い上面17bとを有している。前端面17aと上面17bは、いずれも平面である。本実施の形態では、前端面17aの任意の位置の媒体対向面30からの距離は、前記任意の位置が基板1から離れるに従って大きくなっている。前端面17aが媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度は、例えば45〜75°の範囲内である。
ギャップ層18は、磁極層16の上面のうちの第1の部分16T1と、非磁性層17の前端面17aおよび上面17bを覆うように配置されている。
シールド20の第1層20Aは、ギャップ層18に接する下面を有している。この第1層20Aの下面は、ギャップ層18を介して磁極層16および非磁性層17に対向するように屈曲している。第1層20Aの下面と第2の部分16T2との間隔は、第1層20Aの下面と第1の部分16T1との間隔よりも大きい。
本実施の形態において、スロートハイトTHは、非磁性層17の下面の端縁E3と媒体対向面30との間の距離、すなわち第2の端縁E2と媒体対向面30との間の距離と等しい。スロートハイトTHは、例えば0.1〜0.2μmの範囲内である。
シールド20の第1層20Aのうちの、磁極層16の上方に配置された部分において、媒体対向面30に配置された端面とその反対側の端面との間の最短距離は、例えば0.20〜0.25μmの範囲内である。第1層20Aの厚みは、例えば0.45〜0.85μmの範囲内である。
図4は、磁極層16を示す平面図である。図4に示したように、磁極層16は、媒体対向面30に配置されトラック幅を規定する端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部16Aと、このトラック幅規定部16Aの前記端部に接続され、トラック幅規定部16Aよりも大きな幅を有する幅広部16Bとを含んでいる。トラック幅規定部16Aは、媒体対向面30からの距離に応じて変化しない幅を有している。幅広部16Bの幅は、例えば、トラック幅規定部16Aとの境界位置ではトラック幅規定部16Aの幅と等しく、媒体対向面30から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。本実施の形態では、磁極層16のうち、媒体対向面30に配置された端面から、磁極層16の幅が大きくなり始める位置までの部分を、トラック幅規定部16Aとする。ここで、媒体対向面30に垂直な方向についてのトラック幅規定部16Aの長さをネックハイトNHと呼ぶ。ネックハイトNHは、例えば0.1〜0.3μmの範囲内である。
媒体対向面30に配置されたトラック幅規定部16Aの端面は、基板1に近づくに従って小さくなる幅を有している。収容層12の溝部12aのうち、少なくともトラック幅規定部16Aを収容する部分は、基板1に近づくに従って小さくなる幅を有している。
なお、図3には、媒体対向面30から磁極層16の上面のうちの第1の部分16T1における第2の端縁E2までの距離が、媒体対向面30からトラック幅規定部16Aと幅広部16Bとの境界までの距離すなわちネックハイトNHと等しい例を示している。しかし、媒体対向面30から端縁E2までの距離は、媒体対向面30からトラック幅規定部16Aと幅広部16Bとの境界までの距離すなわちネックハイトNHよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。また、スロートハイトTHは、ネックハイトNHと等しくてもよいし、ネックハイトNHよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
次に、図5ないし図13を参照して、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。図5ないし図13は、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。なお、図5ないし図13では、収容層12よりも基板1側の部分を省略している。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図2に示したように、基板1の上に、絶縁層2、下部シールド層3、下部シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、下部シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、上部シールドギャップ膜6で覆う。次に、上部シールドギャップ膜6の上に、上部シールド層7、非磁性層81、第2の上部シールド層82および絶縁層83を順に形成する。次に、絶縁層83の上に、コイル9および絶縁層10,11を形成する。次に、コイル9および絶縁層10,11の上面を、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって平坦化する。
図5は、次の工程を示す。図5(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の上面を示している。図5(a)および他の図において、記号ABSは、媒体対向面30の目標位置に配置された仮想の面を示している。図5(b)は、図5(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、平坦化されたコイル9および絶縁層10,11の上面の上に、後に溝部12aが形成されることにより収容層12となる非磁性層12Pを形成する。次に、例えばスパッタ法によって、非磁性層12Pの上に、後にマスク層13の第1層131および第2層132となる第1の膜および第2の膜を順に形成する。ここでは、一例として、Ruよりなる厚み60nmの第1の膜と、NiCrよりなる厚み20nmの第2の膜とを形成するものとする。
次に、上記の第2の膜の上に、例えば1.0μmの厚みのフォトレジスト層を形成する。次に、このフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングして、第1および第2の膜に貫通した開口部を形成するためのフォトレジストマスク31を形成する。このフォトレジストマスク31は、後に形成される溝部12aの平面形状に対応した形状の開口部31aを有している。
次に、フォトレジストマスク31を用いて、第1および第2の膜を選択的にエッチングする。これにより、第1の膜は第1層131となり、第2の膜は第2層132となって、貫通した開口部13aを有するマスク層13が形成される。開口部13aは、後に形成される溝部12aの平面形状に対応した形状をなしている。マスク層13は本発明における第1のマスク層に対応し、開口部13aは本発明における第1の開口部に対応する。
第1および第2の膜のエッチングは、例えば、イオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)を用いて行われる。この場合、イオンビームの進行方向が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、例えば0°〜7°の範囲内とする。なお、図5(b)において、符号32は、第1および第2の膜のエッチングによって飛散した物質がフォトレジストマスク31の開口部31aの側壁に付着して形成された付着層を示している。次に、フォトレジストマスク31を除去する。
図6は、次の工程を示す。図6(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の上面を示している。図6(b)は、図6(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、例えば0.7μmの厚みのフォトレジスト層を形成する。次に、このフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングして、マスク層33を形成する。マスク層33は、マスク層13の開口部13aよりも広い貫通する開口部33aを有し、開口部33aから開口部13aが露出するように、マスク層13の上に形成される。マスク層33は本発明における第2のマスク層に対応し、開口部33aは本発明における第2の開口部に対応する。開口部13aの縁と開口部33aの縁との間隔W1は、0.1〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
次に、非磁性層12Pが収容層12になるように、非磁性層12Pに溝部12aを形成する。この溝部12aを形成する工程は、非磁性層12Pに、溝部12aのうちの少なくともトラック幅規定部16Aを収容する部分が形成されるように、反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)によって、非磁性層12Pのうち開口部13aおよび開口部33aから露出する部分をテーパエッチングする工程を含んでいる。溝部12aを形成する工程は、非磁性層12Pをテーパエッチングする工程のみを含んでいてもよい。この場合には、非磁性層12Pをテーパエッチングする工程によって溝部12aが完成する。溝部12aを形成する工程は、非磁性層12Pをテーパエッチングする工程の後で実施される他のエッチング工程を含んでいてもよい。他のエッチング工程としては、例えば、非磁性層12Pをテーパエッチングする工程によって非磁性層12Pに形成された溝のうち、トラック幅規定部16Aを収容する部分以外の部分を更にエッチングして、溝部12aを完成させる工程がある。
次に、マスク層33を除去する。溝部12aが形成されることにより、非磁性層12Pは収容層12となる。マスク層13の開口部13aの縁は、収容層12の上面における溝部12aの縁の真上に配置されている。RIEによって非磁性層12Pをテーパエッチングする工程では、溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の側壁が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度(以下、側壁の傾斜角度という。)が、例えば9°〜15°の範囲内になるようにする。
本実施の形態では、非磁性層12Pがアルミナ(Al2O3)によって形成されている場合には、RIEによって非磁性層12Pをテーパエッチングする工程では、BCl3、Cl2、N2のうち少なくともBCl3とN2を含むエッチングガスを用いる。BCl3とCl2は、非磁性層12Pのエッチングに寄与する主成分である。N2は、非磁性層12Pのエッチング中に、エッチングによって形成される溝の側壁に側壁保護膜を形成するためのガスである。すなわち、アルミナによって構成された非磁性層12Pを、BCl3とN2を含むエッチングガスを用いたRIEによってエッチングすると、アルミナのエッチング反応中に、BN(窒化ホウ素)とAlN(窒化アルミニウム)の少なくとも一方を含む反応生成物が生成される。この反応生成物は、溝の側壁に付着して側壁保護膜を形成する。この側壁保護膜が形成されることにより、非磁性層12Pがテーパエッチングされる。上記エッチングガスにおいて、全流量に対するBCl3、Cl2、N2の流量の割合は、それぞれ、70〜95%、0〜30%、5〜20%であることが好ましい。
ここで、RIEによって非磁性層12Pをテーパエッチングする工程におけるエッチングガス以外の条件の一例を挙げる。この例では、高周波コイルを用いた電磁誘導によりチャンバ内にプラズマを発生させるRIE装置を用い、高周波コイルに供給するソースパワーを1200Wとし、高周波バイアスパワーを25Wとし、チャンバ内の圧力を0.3Paとする。
本実施の形態では、マスク層13の材料は、非磁性層12Pに対するRIEの際のマスク層13のエッチング速度が非磁性層12Pのエッチング速度よりも小さくなるように選定される。
本実施の形態では、RIEによって非磁性層12Pをテーパエッチングする工程では、マスク層13の第2層132のうち、マスク層33の開口部33aから露出する部分はエッチングされてもよいが、マスク層13のうち、マスク層33の開口部33aから露出する部分において、厚み方向の少なくとも一部は残るようにする。なお、マスク層13の第1層131がRuよりなる場合には、上記の条件によるRIEではほとんどエッチングされない。
図7は、次の工程を示す。図7(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の上面を示している。図7(b)は、図7(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。図7(c)は、図7(a)に示した積層体の、7C−7C線の位置における断面を示している。この工程では、マスク層33を除去する。図7に示したように、溝部12aは、磁極層16のトラック幅規定部16Aを収容するための、幅の小さな部分と、磁極層16の幅広部16Bを収容するための、幅の大きな部分とを含んでいる。
図8は、次の工程を示す。図8(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の上面を示している。図8(b)は、図8(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。図8(c)は、変形例における積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、収容層12の溝部12a内およびマスク層13の上に非磁性膜14を形成する。非磁性膜14は、例えば、スパッタ法または化学的気相成長法(以下、CVDと記す。)によって形成される。非磁性膜14の厚みは、精度よく制御することができる。CVDを用いて非磁性膜14を形成する場合には、特に、1原子層毎の成膜を繰り返すCVD、いわゆるアトミックレイヤーCVD(以下、ALCVDと記す。)を用いることが好ましい。この場合には、非磁性膜14の厚みの制御をより精度よく行うことができる。また、ALCVDを用いて非磁性膜14を形成する場合には、非磁性膜14の材料としては、特にアルミナが好ましい。半導体材料を用いて非磁性膜14を形成する場合には、特に、低温(200℃程度)でのALCVDまたは低温での低圧CVDを用いて非磁性膜14を形成することが好ましい。また、非磁性膜14の材料としての半導体材料は、不純物をドープしない多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンであることが好ましい。
次に、例えばスパッタ法またはALCVDによって、非磁性膜14の上に研磨停止層15を形成する。研磨停止層15は、収容層12の溝部12a内にも形成される。研磨停止層15は、後に行われる研磨工程における研磨の停止位置を示す。
次に、研磨停止層15の上に、後に磁極層16の第1層161となる第1の磁性層161Pを形成する。この第1の磁性層161Pは、例えば、スパッタ法またはイオンビームデポジション法によって形成される。スパッタ法によって第1の磁性層161Pを形成する場合には、コリメーションスパッタやロングスロースパッタを用いることが好ましい。なお、前述のように第1層161は省略してもよいので、第1の磁性層161Pは形成しなくてもよい。
次に、第1の磁性層161Pの上に、後に磁極層16の第2層162となる第2の磁性層162Pを形成する。第2の磁性層162Pは、その上面がマスク層13、非磁性膜14および研磨停止層15の各上面よりも上方に配置されるように形成される。この第2の磁性層162Pは、例えばフレームめっき法によって形成される。その際、第1の磁性層161Pは、めっき用の電極として用いられる。研磨停止層15が導電性の材料によって形成されている場合には、研磨停止層15も、めっき用の電極として用いられる。なお、第2の磁性層162Pは、パターニングしていないめっき層を形成した後、このめっき層をエッチングによってパターニングして形成してもよい。
なお、前述のように研磨停止層15は省略してもよいので、研磨停止層15は形成しなくてもよい。図8(c)は、非磁性膜14の上に、研磨停止層15を形成せずに、第1の磁性層161Pと第2の磁性層162Pを順に形成した変形例における積層体を示している。
図9は、次の工程を示す。図9(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の上面を示している。図9(b)は、図9(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、例えばアルミナよりなる、図示しない被覆層を、例えば0.5〜1.2μmの厚みに形成する。次に、例えばCMPによって、研磨停止層15が露出するまで被覆層、第2の磁性層162Pおよび第1の磁性層161Pを研磨する。CMPによって被覆層、第2の磁性層162Pおよび第1の磁性層161Pを研磨する場合には、研磨停止層15が露出した時点で研磨が停止するようなスラリー、例えばアルミナ系のスラリーを用いる。なお、図8(c)に示したように、研磨停止層15を形成しなかった場合には、マスク層13が露出するまで被覆層、第2の磁性層162Pおよび第1の磁性層161Pを研磨する。
図10は、次の工程を示す。図10(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の、媒体対向面および基板に垂直な断面を示している。図10(b)は、図10(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、例えばスパッタ法によって、第1の磁性層161Pおよび第2の磁性層162Pの上面を含む積層体の上面全体の上に、後に一部がエッチングされることによって非磁性層17の第1層171となる第1の膜171Pを形成する。次に、例えばスパッタ法によって、膜171Pの上に、後に一部がエッチングされることによって非磁性層17の第2層172となる第2の膜を形成する。次に、第2の膜の上に、例えば1.0μmの厚みのフォトレジスト層を形成する。次に、このフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングして、第2の膜をパターニングするためのマスク34を形成する。
次に、マスク34を用い、例えばRIEによって、第2の膜の一部をエッチングする。RIEによって第2の膜をエッチングする場合には、エッチングガスとしては、例えば、BCl3、Cl2、CF4を含むものが用いられる。一例として、ここでは、80sccmのBCl3と15sccmのCl2と18sccmのCF4とを含むエッチングガスを用いて、第2の膜をエッチングするものとする。第2の膜は、その一部がエッチングされることにより第2層172となる。この第2の膜の一部をエッチングする工程において、第2層172における面ABSに最も近い端部の近傍に前端面172aが形成される。前端面172aの任意の位置の媒体対向面30からの距離は、前記任意の位置が基板1から離れるに従って大きくなっている。また、前端面172aが媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度は、45°〜75°の範囲内であることが好ましい。前端面172aが媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度は、第2の膜をRIEによってエッチングする際の条件によって制御することができる。次に、マスク34を除去する。
図11は、次の工程を示す。図11(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の、媒体対向面および基板に垂直な断面を示している。図11(b)は、図11(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、第2層172をマスクとして、例えばIBEを用いて第1の膜171Pの一部をエッチングする。これにより、第1の膜171Pは第1層171となり、第1層171と第2層172を有する非磁性層17が形成される。
次に、非磁性層17をマスクとして、例えばIBEを用いて磁性層161P,162Pの一部をエッチングする。以下、このエッチング後の磁性層161P,162Pを、それぞれ磁性層161Q,162Qとする。また、磁性層161Qと磁性層162Qを合わせたものを磁性層160とする。第1の膜171Pのエッチングと磁性層161P,162Pのエッチングは続けて行われる。
磁性層161P,162Pの一部をエッチングする際には、イオンビームの進行方向が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度が45°〜55°の範囲内となり、且つ基板1の上面に垂直な方向に見たときにイオンビームの進行方向が回転するようにする。このようなIBEを行うことにより、磁性層161P,162Pの上面に、磁極層16の上面の第1の部分16T1に対応する傾斜面が形成される。
図12は、次の工程を示す。図12(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の、媒体対向面および基板に垂直な断面を示している。図12(b)は、図12(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、ギャップ層18を形成する。ギャップ層18は、例えば、スパッタ法またはCVDによって形成される。CVDを用いてギャップ層18を形成する場合には、特にALCVDを用いることが好ましい。また、ALCVDを用いてギャップ層18を形成する場合には、ギャップ層18の材料としては、特にアルミナが好ましい。ALCVDを用いて形成されるギャップ層18は、ステップカバレージがよい。従って、ALCVDを用いてギャップ層18を形成することにより、平坦ではない面の上に均質なギャップ層18を形成することができる。
次に、例えばIBEを用いて、非磁性層17およびギャップ層18のうち、媒体対向面30に近い一部分以外の部分を選択的にエッチングする。次に、ギャップ層18の上に第1層20Aを形成すると共に、面ABSから離れた位置において磁性層160の上にヨーク層20Bを形成する。第1層20Aとヨーク層20Bは、フレームめっき法によって形成してもよいし、スパッタ法によって磁性層を形成した後、この磁性層を選択的にエッチングすることによって形成してもよい。
図13は、次の工程を示す。図13(a)は、磁気ヘッドの製造過程における積層体の、媒体対向面および基板に垂直な断面を示している。図13(b)は、図13(a)に示した積層体の、仮想の面ABSにおける断面を示している。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、非磁性層21を形成する。次に、例えばCMPによって、第1層20Aおよびヨーク層20Bが露出するまで非磁性層21を研磨して、第1層20A、ヨーク層20Bおよび非磁性層21の上面を平坦化する。
次に、ヨーク層20Bおよび非磁性層21の上面のうち、コイル23が配置される領域の上に絶縁層22を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、コイル23の少なくとも一部が絶縁層22の上に配置されるように、コイル23を形成する。次に、コイル23を覆うように絶縁層24を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって第2層20Cを形成して、シールド20を完成させる。
次に、図2に示したように、積層体の上面全体を覆うように保護層25を形成する。次に、保護層25の上に配線や端子等を形成し、面ABSの近傍で基板1を切断し、この切断によって形成された面を研磨して媒体対向面30を形成し、更に浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。媒体対向面30が形成されたときに、磁性層161Q,162Qはそれぞれ第1層161、第2層162となり、磁極層16が完成する。本実施の形態において、磁極層16は、収容層12の溝部12a内において収容層12と磁極層16の間に非磁性膜14および研磨停止層15が挟まれるように形成される。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主要な作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッドにおいて、コイル23は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。磁極層16およびシールド20は、コイル23が発生する磁界に対応した磁束を通過させる磁路を形成する。磁極層16は、コイル23によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。シールド20は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が磁極層16に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。
また、本実施の形態では、媒体対向面30において、シールド20の端面は、磁極層16の端面に対して、ギャップ層18による所定の小さな間隔を開けて記録媒体の進行方向Tの前側(スライダにおける空気流出端側)に配置されている。記録媒体に記録されるビットパターンの端部の位置は、媒体対向面30における磁極層16のギャップ層18側の端部の位置によって決まる。シールド20は、磁極層16の媒体対向面30側の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込むことにより、この磁束が記録媒体に達することを阻止する。これにより、記録媒体に既に記録されているビットパターンにおける磁化の方向が上記磁束の影響によって変化することを防止することができる。これにより、本実施の形態によれば、線記録密度を向上させることができる。
また、本実施の形態では、図3に示したように、媒体対向面30に配置された磁極層16の端面すなわちトラック幅規定部16Aの端面は、第1の辺A1に近づくに従って、すなわち基板1に近づくに従って小さくなる幅を有している。これにより、本実施の形態によれば、スキューに起因した問題の発生を防止することができる。
以下、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法の第1および第2の特徴について説明する。まず、第1の特徴は、本実施の形態では、非磁性層12Pがアルミナ(Al2O3)によって形成されている場合に、非磁性層12Pに溝部12aを形成する工程が、BCl3、Cl2、N2のうち少なくともBCl3とN2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、非磁性層12Pをテーパエッチングする工程を含むことである。N2は、非磁性層12Pのエッチング中に、エッチングによって形成される溝の側壁に側壁保護膜を形成するためのガスである。エッチングガスがN2を含むことにより、非磁性層12Pのエッチング中に溝の側壁に側壁保護膜が形成され、これにより、非磁性層12Pがテーパエッチングされる。
ここで、RIEによって非磁性層12Pをテーパエッチングする工程において、エッチングガスがN2を含むことにより、非磁性層12Pがテーパエッチングされることを示す第1の実験の結果について説明する。この第1の実験では、アルミナよりなる非磁性層12Pの上にマスク層13,33を形成してなる5つの試料を作製し、これらの試料に対して、エッチングガスの種類を変えて、RIEによる非磁性層12Pのエッチングを行って、非磁性層12Pに溝部12aを形成した。複数種類のエッチングガスは、いずれもBCl3、Cl2およびN2を含んでいる。複数種類のエッチングガスにおいて、BCl3の流量は80sccmであり、Cl2の流量は15sccmであり、N2の流量は、11sccm、12sccm、13.5sccm、14.5sccm、16sccmの5種類である。また、第1の実験では、ソースパワーを1200Wとし、高周波バイアスパワーを25Wとし、チャンバ内の圧力を0.3Paとした。
第1の実験では、上記のように5つの試料に対して非磁性層12Pのエッチングを行った後、溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の側壁の傾斜角度を測定した。下記の表1と図14に、第1の実験におけるN2の流量(sccm)と側壁の傾斜角度(deg)との関係を示す。
表1および図14から、N2の流量が多くなるほど、側壁の傾斜角度が大きくなることが分かる。このことから、N2は、非磁性層12Pのエッチング中に、エッチングによって形成される溝の側壁に側壁保護膜を形成するためのガスであり、エッチングガスがN2を含むことにより、非磁性層12Pがテーパエッチングされることが分かる。
次に、BCl3、Cl2、N2を含むエッチングガスを用いたRIEによってアルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングする際の、高周波バイアスパワーと、溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の側壁の傾斜角度との関係を調べた第2の実験の結果について説明する。この第2の実験では、アルミナよりなる非磁性層12Pの上にマスク層13,33を形成してなる3つの試料を作製し、これらの試料に対して、高周波バイアスパワーを変えて、RIEによる非磁性層12Pのエッチングを行って、溝部12aを形成した。第2の実験で使用したエッチングガスにおいて、BCl3の流量は80sccmであり、Cl2の流量は15sccmであり、N2の流量は14sccmである。また、第2の実験では、ソースパワーを1200Wとし、高周波バイアスパワーを20W、25W、30Wの3種類とし、チャンバ内の圧力を0.3Paとした。
第2の実験では、上記のように3つの試料に対して非磁性層12Pのエッチングを行った後、溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の側壁の傾斜角度を測定した。下記の表2と図15に、第2の実験における高周波バイアスパワー(W)と側壁の傾斜角度(deg)との関係を示す。
表2および図15から、高周波バイアスパワーが大きくなるほど、側壁の傾斜角度が小さくなることが分かる。第1の実験と第2の実験の結果から、N2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングする場合には、少なくともN2の流量と高周波バイアスパワーによって、溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の側壁の傾斜角度を制御することができることが分かる。
次に、図16および図17を参照して、側壁保護膜を形成するためのガスとしてCF4を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングした場合と、側壁保護膜を形成するためのガスとしてN2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングした場合とにおける、溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の側壁の平坦性の違いについて説明する。図16は、第1の比較例の溝部の形成方法によって形成された溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の形状を概念的に示している。第1の比較例の溝部の形成方法は、側壁保護膜を形成するためのガスとしてCF4を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングする方法である。図17は、本実施の形態における溝部の形成方法、すなわち、側壁保護膜を形成するためのガスとしてN2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングする方法によって形成された溝部12aのうちのトラック幅規定部16Aを収容する部分の形状を概念的に示している。
図16に示したように、側壁保護膜を形成するためのガスとしてCF4を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングした場合には、溝部12aの側壁12bの平坦性が劣る。その原因は、AlF3よりなる側壁保護膜が、比較的厚く、不均一に形成されるためと考えられる。このように溝部12aの側壁12bの平坦性が劣ると、溝部12a内に形成される磁極層16の形状を精度よく制御することができなくなり、その結果、トラック幅を精度よく制御することが難しくなると共に、記録特性を向上させることが難しくなる。
図17に示したように、本実施の形態のように、側壁保護膜を形成するためのガスとしてN2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングした場合には、側壁保護膜を形成するためのガスとしてCF4を含むエッチングガスを用いた場合に比べて、溝部12aの側壁12bの平坦性が向上する。その原因は、N2を含むエッチングガスを用いたRIEによって、アルミナよりなる非磁性層12Pをテーパエッチングした場合には、側壁保護膜として形成されるBN膜やAlN膜が、AlF3膜に比べて、薄く均一に形成されるためと考えられる。また、BN膜やAlN膜は、BCl3、Cl2、N2のうち少なくともBCl3とN2を含むエッチングガスを用いたRIEにおいてエッチングされ難い膜である。そのため、本実施の形態では、溝部12aの側壁12bに側壁保護膜が薄く形成されても、側壁12bの傾斜角度を十分大きくすることが可能である。
このように、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法の第1の特徴によれば、非磁性層12Pがアルミナによって形成されている場合に、RIEによって非磁性層12Pをテーパエッチングする工程において、BCl3、Cl2、N2のうち少なくともBCl3とN2を含むエッチングガスを用いて非磁性層12Pをテーパエッチングすることにより、側壁の平坦性が良好な溝部12aを形成することが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した問題の発生を防止でき且つ記録特性を向上させることのできる磁極層16を精度よく形成することが可能になる。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法の第2の特徴について説明する。第2の特徴は、以下の方法で、非磁性層12Pに溝部12aを形成することである。すなわち、本実施の形態では、まず、図5に示したように、後に溝部12aが形成されることにより収容層12となる非磁性層12Pの上にマスク層13を形成する。このマスク層13は、後に形成される溝部12aの平面形状に対応した形状の貫通する開口部13aを有し、後に行われる非磁性層12Pに対するRIEの際のエッチング速度が非磁性層12Pよりも小さいものである。次に、図6に示したように、マスク層13の上にマスク層33を形成する。このマスク層33は、開口部13aよりも広い貫通する開口部33aを有し、開口部33aから開口部13aが露出するようにマスク層13の上に形成される。次に、非磁性層12Pが収容層12になるように、非磁性層12Pに溝部12aを形成する。この溝部12aを形成する工程は、非磁性層12Pに、溝部12aのうちの少なくともトラック幅規定部16Aを収容する部分が形成されるように、RIEによって、非磁性層12Pのうち開口部13aおよび開口部33aから露出する部分をテーパエッチングする工程を含んでいる。
ここで、図18を参照して、第2の比較例の溝部の形成方法について説明する。図18は、第2の比較例の溝部の形成方法を示す説明図である。図18(a)は、溝部のうちの、磁極層のトラック幅規定部を収容する部分の断面を示している。図18(b)は、溝部のうちの、磁極層の幅広部を収容する部分の断面を示している。
第2の比較例の溝部の形成方法では、まず、非磁性層12Pの上に、後にマスク層13の第1層131および第2層132となる第1の膜および第2の膜を順に形成する。次に、上記の第2の膜の上に、例えば1.0μmの厚みのフォトレジスト層を形成する。次に、このフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングして、収容層12に溝部12aを形成するためのフォトレジストマスク41を形成する。このフォトレジストマスク41は、後に形成される溝部12aの平面形状に対応した形状の開口部41aを有している。次に、フォトレジストマスク41を用い、例えばIBEによって、第1および第2の膜を選択的にエッチングする。これにより、第1の膜は第1層131となり、第2の膜は第2層132となって、貫通した開口部13aを有するマスク層13が形成される。開口部13aは、後に形成される溝部12aの平面形状に対応した形状をなしている。なお、図18において、符号42は、第1および第2の膜のエッチングによって飛散した物質がフォトレジストマスク41の開口部41aの側壁に付着して形成された付着層を示している。第2の比較例の溝部の形成方法では、次に、フォトレジストマスク41およびマスク層13をマスクとして、RIEを用いて、非磁性層12Pをテーパエッチングすることによって、非磁性層12Pに溝部12aを形成する。
第2の比較例の溝部の形成方法では、非磁性層12Pのエッチングの際に使用されるフォトレジストマスク41の開口部41aのうち、磁極層16のトラック幅規定部16Aに対応する部分では、磁極層16の幅広部16Bに対応する部分に比べて、開口部41aの幅が小さい。そのため、溝部12aのうちの、磁極層16のトラック幅規定部16Aを収容する部分では、エッチングガスの供給が十分に行われず、その結果、側壁保護膜の堆積が十分に行われず、側壁の傾斜角度が小さくなる。これに対し、溝部12aのうちの、磁極層16の幅広部16Bを収容する部分では、エッチングガスの供給が十分に行われて、側壁保護膜の堆積も十分に行われて側壁の傾斜角度が大きくなる。
そのため、第2の比較例の溝部の形成方法では、溝部12aのうちの、磁極層16のトラック幅規定部16Aを収容する部分における側壁の傾斜角度が所望の角度になるように、エッチングの条件を設定すると、溝部12aのうちの、磁極層16の幅広部16Bを収容する部分における側壁の傾斜角度が、上記の所望の角度よりも大幅に大きくなる。図18(b)において、破線は、側壁の傾斜角度が所望の角度となるときの側壁の位置を示している。第2の比較例の溝部の形成方法では、例えば、溝部12aのうちの、磁極層16のトラック幅規定部16Aを収容する部分における側壁の傾斜角度が12°になるように、非磁性層12Pのエッチングを行うと、溝部12aのうちの、磁極層16の幅広部16Bを収容する部分における側壁の傾斜角度は17°程度になる。
上述のように、溝部12aのうちの、磁極層16の幅広部16Bを収容する部分における側壁の傾斜角度が所望の角度よりも大幅に大きくなると、磁極層16の幅広部16Bにおいて、磁束の流れる方向に対して垂直な断面の面積が小さくなり、その結果、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。
これに対し、本実施の形態では、図6(b)に示したように、マスク層13の開口部13aよりも広い貫通する開口部33aを有するマスク層33を、開口部33aから開口部13aが露出するようにマスク層13の上に形成する。その後、本実施の形態では、溝部12aのうちの少なくともトラック幅規定部16Aを収容する部分が形成されるように、RIEによって、非磁性層12Pのうち開口部13aおよび開口部33aから露出する部分をテーパエッチングする。本実施の形態によれば、溝部12aのうち、磁極層16の幅広部16Bを収容する部分のみならず、磁極層16のトラック幅規定部16Aを収容する部分においても、エッチングガスの供給が十分に行われる。これにより、本実施の形態によれば、溝部12aのうちの、幅広部16Bを収容する部分における側壁の傾斜角度が所望の角度よりも大幅に大きくなることを防止することができる。本実施の形態では、例えば、溝部12aのうち、トラック幅規定部16Aを収容する部分における側壁の傾斜角度が12°になるように、非磁性層12Pのエッチングを行うと、溝部12aのうち、幅広部16Bを収容する部分における側壁の傾斜角度は13°程度になる。以上のことから、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法の第2の特徴によれば、スキューに起因した問題の発生を防止でき且つ記録特性を向上させることのできる磁極層を精度よく形成することが可能になる。
なお、マスク層33を形成せずに、マスク層13のみをマスクとして、RIEを用いて非磁性層12Pのエッチングを行うと、マスク層13の上面の全面がエッチングされる。そのため、この場合には、マスク層13の上にマスク層33が存在する場合に比べて、マスク層13のエッチングによって飛散する物質の量が非常に多くなり、この物質が溝部12aの側壁に付着して、側壁のプロフィールが劣化する。また、マスク層33を形成せずに、マスク層13のみをマスクとして、RIEを用いて非磁性層12Pのエッチングを行うと、マスク層13の第2層132の全体が除去されてしまい、後に形成される非磁性膜14のマスク層13に対する密着性が低下してしまう。
これに対し、本実施の形態では、RIEを用いて非磁性層12Pのエッチングを行う際に、マスク層13の上面の大部分はマスク層33によって覆われている。そのため、本実施の形態によれば、マスク層13のエッチングによって飛散する物質が溝部12aの側壁に付着して側壁のプロフィールが劣化することを防止することができると共に、後に形成される非磁性膜14のマスク層13に対する密着性が低下することを防止できる。
開口部13aの縁と開口部33aの縁との間隔W1が小さすぎると、溝部12aのうち、磁極層16のトラック幅規定部16Aを収容する部分に、エッチングガスの供給が十分に行われなくなる。開口部13aの縁と開口部33aの縁との間隔W1が大きすぎると、マスク層13のエッチングによって飛散する物質の量が多くなって、この物質が溝部12aの側壁に付着して側壁のプロフィールが劣化すると共に、マスク層13の第2層132がエッチングされる領域の面積が大きくなって、後に形成される非磁性膜14のマスク層13に対する密着性が低下してしまう。これらを考慮すると、開口部13aの縁と開口部33aの縁との間隔W1は、0.1〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
なお、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法の第1の特徴と第2の特徴は、それぞれ単独でも、上述の効果を発揮する。しかし、スキューに起因した問題の発生を防止でき且つ記録特性を向上させることのできる磁極層を精度よく形成する上で、第1の特徴と第2の特徴を併せ持つことがより効果的である。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるその他の作用および効果について説明する。本実施の形態では、磁極層16の上面は、媒体対向面30に配置された第1の端縁E1とその反対側の第2の端縁E2とを有する第1の部分16T1と、第1の部分16T1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁E2において第1の部分16T1に接続された第2の部分16T2とを有している。第1の端縁E1は、磁極層16の端面における、トラック幅を規定する第2の辺A2と一致している。第1の部分16T1の任意の位置の基板1からの距離は、前記任意の位置が媒体対向面30から離れるに従って大きくなっている。このような磁極層16の形状により、本実施の形態によれば、媒体対向面30における磁極層16の厚みを小さくすることによって、スキューに起因した問題の発生を防止でき、且つ磁極層16によって多くの磁束を媒体対向面30まで導くことが可能になることから、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
本実施の形態によれば、媒体対向面30に垂直な方向に見て、媒体対向面30から所定の位置までの領域において磁極層の厚みが一定である場合に比べて、媒体対向面30の近傍において、磁束の流れる方向に対して垂直な磁極層16の断面積が大きくなる。そのため、本実施の形態によれば、媒体対向面30の近傍において、磁極層16に対して、より多くの磁束を通過させることができる。これにより、本実施の形態によれば、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、磁極層16の上面における第2の部分16T2の上に非磁性層17が配置されている。非磁性層17は、第2の部分16T2に接する下面を有し、この下面は第2の端縁E2に位置する端縁E3を有している。第2の端縁E2の位置は、磁気ヘッドの記録特性に影響を与える。そのため、第2の端縁E2の位置を精度よく制御することが重要である。本実施の形態では、磁極層16の上面における第2の部分16T2の上に残る非磁性層17をマスクとして磁性層160をエッチングすることによって、非磁性層17の下面における端縁E3によって、第2の端縁E2の位置が規定される。本実施の形態によれば、非磁性層17の代わりにフォトレジストよりなるマスクを用いて磁性層160をエッチングして第2の端縁E2の位置を規定する場合に比べて、第2の端縁E2の位置を精度よく制御することができる。
また、本実施の形態では、シールド20の第1層20Aは、ギャップ層18に接する下面を有している。この第1層20Aの下面は、ギャップ層18を介して磁極層16および非磁性層17に対向するように屈曲している。第1層20Aの下面と第2の部分16T2との間隔は、第1層20Aの下面と第1の部分16T1との間隔よりも大きい。本実施の形態では、スロートハイトTHは、第1層20Aの媒体対向面30から遠い端部ではなく、非磁性層17の下面の端縁E3の位置によって規定される。従って、第1層20Aの体積を十分に大きくしながら、スロートハイトTHを小さくすることができる。また、スロートハイトTHを規定する端縁E3の位置は、精度よく規定することができる。従って、本実施の形態によれば、小さい値のスロートハイトTHを精度よく制御することができる。これらのことから、本実施の形態によれば、オーバーライト特性を向上させることができると共に、コイル23に流す電流の値が小さくても電流の変化に対する記録磁界の応答速度を大きくすることができる。
ところで、磁極層16では、上面における第2の端縁E2の近傍において、磁極層16からの磁束の漏れが発生しやすい。この漏れた磁束が媒体対向面30に達し、更に媒体対向面30から外部に漏れると、実効的なトラック幅が大きくなったり、スキューに起因した問題が発生したりする。本実施の形態では、シールド20は、第2の端縁E2と媒体対向面30との間に配置された部分を有している。従って、本実施の形態では、磁極層16において第2の端縁E2の近傍から漏れた磁束は、シールド20によって取り込まれる。従って、本実施の形態によれば、磁極層16の途中から漏れた磁束が媒体対向面30から外部に漏れることを防止することができる。
また、本実施の形態では、媒体対向面30の近傍において、磁極層16の上面が屈曲している。これにより、本実施の形態によれば、記録動作後において、磁極層16の媒体対向面30の近傍の部分において、媒体対向面30に垂直な方向の残留磁化が生成されることを抑制することが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、記録動作後における磁極層16の残留磁化に起因して記録媒体に記録されている情報が消去される現象の発生を抑制することが可能になる。
また、本実施の形態では、非磁性材料よりなる収容層12の溝部12a内に、非磁性膜14および研磨停止層15を介して磁極層16が配置される。そのため、磁極層16の幅は溝部12aの幅よりも小さくなる。これにより、溝部12aを容易に形成することが可能になると共に、磁極層16の幅、特にトラック幅を規定するトラック幅規定部16Aの上面の幅を容易に小さくすることが可能になる。従って、本実施の形態によれば、フォトリソグラフィによって形成可能なトラック幅の下限値よりも小さなトラック幅を、容易に実現でき、且つ正確に制御することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施の形態において、平面渦巻き形状のコイル9,23の代わりに、磁極層16を中心にして螺旋状に配置されたコイルを設けてもよい。
また、実施の形態では、基体側に再生ヘッドを形成し、その上に、記録ヘッドを積層した構造の磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。