近年、デジタル変復調技術の開発が進み、無線通信やテレビ放送において高速大容量のデジタル信号伝送が実現している。デジタル信号を伝送するための手段として搬送波信号を用いる変調技術が一般的に知られている。
このような変調技術の変調の種類としては、振幅を変化させることによって変調を行う振幅変調(ASK : Amplitude Shift Keying)、位相を変化させることによって変調を行う位相変調(PSK : Phase Shift Keying)、周波数を変化させることによって変調を行う周波数変調(FSK : Frequency Shift Keying)、位相と振幅の両方を変化させることによって変調を行う直交振幅変調(QAM : Quadrature Amplitude Modulation)、伝送すべきデータを分解して複数の周波数成分に割り当て、直交性を利用して複数の搬送波を周波数軸上で密に並べることにより狭帯域での伝送を実現した直交周波数分割多重変調(OFDM : Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などが挙げられる。
このような変調技術により変調された搬送波信号(変調信号)S(t)は、例えば直交変調方式の場合、一般的に下記式(1)のように表すことができる。ここで、D(t)は変調を行う前の原信号である。また、fは変調に用いる搬送波の周波数を表し、tは時間を表す。
S(t)=D(t)×cos(2πft)+D(t)×sin(2πft) ・・・(1)
ここで、搬送波信号中の同相信号(同相成分)及び直交信号(直交成分)を、それぞれI(t)及びQ(t)とした場合、I(t)及びQ(t)は下記式(2)及び(3)のように表される。
I(t)=D(t) ×cos(2πft) ・・・(2)
Q(t)=D(t) ×sin(2πft) ・・・(3)
このため、上記式(1)は下記式(4)のように書き直すことができる。
S(t)=I(t)+Q(t) ・・・(4)
一方、復調においては、搬送波信号S(t)に対して下記式(5)及び(6)に示される演算処理を施すことにより、同相信号I(t)及び直交信号Q(t)を得ることができる。
I(t)=S(t) ×cos(2πft) ・・・(5)
Q(t)=S(t) ×sin(2πft) ・・・(6)
このような復調によって得られた信号中には、原理的に周波数fの整数倍の周波数(2×f、3×f、4×f、・・・)の高調波成分が含まれることになるため、必要な周波数帯域の信号(データ)を取得するために低域通過フィルタが復調装置側に必要となる。
図8に、下記特許文献1にも示されているような、従来の復調装置の概略構成を示す。図示されない送信装置にて直交変調が施された信号は、復調装置のアンテナ、ダウンコンバータ、アナログ/デジタル変換器(全て不図示)等を介してミキサ入力端子101に供給される。尚、上記のアナログ/デジタル変換器への入力信号は、例えば上記式(1)によって表される。
102は、復調を行うべきデータ(入力信号)をミキサ入力端子101にて受けるミキサ部である。ミキサ部102は、発振器103、位相変換器104、同相信号用乗算器105及び直交信号用乗算器106を有して構成される。
発振器103は、必要な周波数を有する搬送波を生成し(搬送波を再生し)、生成した搬送波信号を出力する。同相信号用乗算器105は、ミキサ入力端子101にて受けた入力信号と生成された搬送波信号との乗算を行うことによって同相信号を得る。位相変換器104は、発振器103からの搬送波信号の位相をπ/2だけ回転させ、直交信号用乗算器106に出力する。直交信号用乗算器106は、ミキサ入力端子101にて受けた入力信号と位相変換器104の出力信号との乗算を行うことによって直交信号を得る。
同相信号用低域通過フィルタ109aは、同相信号用乗算器105から出力される同相信号の高域周波数成分を低減し、同相信号用出力端子110から帯域が制限された同相信号(同相信号成分)を出力する。直交信号用低域通過フィルタ109bは、直交信号用乗算器106から出力される直交信号の高域周波数成分を低減し、直交信号用出力端子111から帯域が制限された直交信号(直交信号成分)を出力する。
次に、ミキサ部102の機能を実現するための信号処理の原理を、図9を参照して説明する。位相変調においては、信号の時間変化を単位円上の角度θにて表現する。図9を参照しても分かるように、θが0、π/2、π、3π/2のとき、cosθは夫々1、0、−1、0となり、sinθは夫々0、1、0、−1となる。つまり、或る時刻おける信号の余弦(cos)を取ることにより該信号の同相成分を抽出することができ、正弦(sin)を取ることにより該信号の直交成分を抽出することができる。
デジタル信号処理においては、2進数で表現可能な値である「0」及び「1」で信号を表すことができれば処理が簡単になるため、一般的にはθとして0、π/2、π及び3π/2の4つの角度に着目し、θの正弦及び余弦の値を「0」または「1」に限定した乗算処理法がよく用いられる。つまり、θ=0のときには(sinθ、cosθ)=(0、1)となり、θ=π/2のときには(sinθ、cosθ)=(1、0)となり、θ=πのときには(sinθ、cosθ)=(0、−1)となり、θ=3π/2のときには(sinθ、cosθ)=(−1、0)となることを利用し、マルチプレクサによってミキサ部を構成する。このような乗算処理法に基づくミキサ部は、複雑な乗算演算回路を用いる必要がなく、回路規模の削減に寄与するものとして一般的に利用されている。
図10及び図11に、上記の乗算処理法に基づく従来の復調装置のミキサ部の構成例を示す。ミキサ入力端子118a及び118bへの入力信号は、図8のミキサ入力端子101への入力信号と同じである。図10及び図11において、同一の部分には同一の符号を付している。
図10を用いて余弦を演算する場合の手法について説明する。余弦演算の対象となるデータはミキサ入力端子118aからミキサ部に入る。マルチプレクサ114aは、4入力のマルチプレクサとなっている。カウンタ115は、θがπ/2進むごとにカウント値を増加させる2ビットの4進アップカウンタである。カウント値はループ状に0〜3の値をとる。即ちθがπ/2進むごとに、0、1、2、3、0、1、2、3、0、・・・の順番でカウント値は更新される。また、0、1、2、3のカウント値は、それぞれ0、π/2、π、3π/2のθに対応している。
まず、ミキサ入力端子118aに与えられた入力データを、マルチプレクサ114aの0番目の入力端子に与える。これは、入力データにcos(0)=1を乗算したことに対応する。また、ミキサ入力端子118aに与えられた入力データを、インバータ112を介してマルチプレクサ114aの2番目の入力端子に与える。これは、入力データにcos(π)=−1を乗算したことに対応する。マルチプレクサ114aの1番目及び3番目の入力端子には、常に「0」の値を供給する。これは、それぞれ、入力データにcos(π/2)=0及びcos(3π/2)=0を乗算したことに対応する。
カウンタ115の2ビットのカウント値は、マルチプレクサ114aの選択制御端子に供給される。マルチプレクサ114aは、供給されたカウント値に従い、4つの入力端子にて受けた信号を順次切り替えて出力端子116から出力する。これにより、ミキサ入力端子118aへの入力データ(入力信号)に、乗算係数としての1、0、−1、0、・・・を順次、乗算する演算処理を実現する。
図11を用いて正弦を演算する場合の手法について説明する。正弦演算の対象となるデータはミキサ入力端子118bからミキサ部に入る。マルチプレクサ114bは、4入力のマルチプレクサとなっている。
まず、ミキサ入力端子118bに与えられた入力データを、マルチプレクサ114bの1番目の入力端子に与える。これは、入力データにsin(π/2)=1を乗算したことに対応する。また、ミキサ入力端子118bに与えられた入力データを、インバータ113を介してマルチプレクサ114bの3番目の入力端子に与える。これは、入力データにsin(3π/2)=−1を乗算したことに対応する。マルチプレクサ114bの0番目及び2番目の入力端子には、常に「0」の値を供給する。これは、それぞれ、入力データにsin(0)=0及びsin(π)=0を乗算したことに対応する。
カウンタ115の2ビットのカウント値は、マルチプレクサ114bの選択制御端子に供給される。マルチプレクサ114bは、供給されたカウント値に従い、4つの入力端子にて受けた信号を順次切り替えて出力端子117から出力する。これにより、ミキサ入力端子118bへの入力データ(入力信号)に、乗算係数としての0、1、0、−1、・・・を順次、乗算する演算処理を実現する。
上記のようにミキサ部を構成することにより、図10の出力端子116からは離散時間信号として下記数列式(7a)にて表される同相信号列In(t)が出力され、図11の出力端子117からは離散時間信号として下記数列式(7b)にて表される直交信号列Qn(t)が出力される。
In(t)={I0,0,I1,0,I2,0,I3,・・・・} ・・・(7a)
Qn(t)={0,Q0,0,Q1,0,Q2,0,・・・・} ・・・(7b)
同相信号列In(t)は、上記式(5)にて表現される同相信号I(t)を離散時間信号の数列として表記したものであり、直交信号列Qn(t)は、上記式(6)にて表現される直交信号Q(t)を離散時間信号の数列として表記したものである。ここで、I0、I1、I2、I3、・・・は、θ=0またはπに対応する有意な同相信号の値(同相成分)を示し、Q0、Q1、Q2、・・・は、θ=π/2または3π/2に対応する有意な直交信号の値(直交成分)を示す。同相信号列In(t)に含まれるゼロの値は同相信号の値として意味を有さず、直交信号列Qn(t)に含まれるゼロの値は直交信号の値として意味を有さない。
図12に、図10及び図11のミキサ部の後段の夫々に設けられる、従来の復調装置における低域通過フィルタ(図8の109a及び109bに対応)の構成を示す。従来の低域通過フィルタは、図12に示す如く、例えばタップ数が7個の7次のFIR(Finite Impulse Response)型低域通過フィルタとなっている。
図12の低域通過フィルタは、フィルタ入力端子121と、互いに直列に接続された6つのフリップフロップからなるシフトレジスタ122と、乗算器群123と、6つの加算器から成る加算器群124と、フィルタ出力端子125と、を備えて構成される。乗算器群123は、初段のフリップフロップへの入力データ(入力信号)と6つのフリップフロップの各出力データ(出力信号)に所定のタップ係数を乗算する7つの乗算器にて構成される。
図10のミキサ部の後段に設けられる低域通過フィルタのフィルタ入力端子121には、図10の出力端子116からの信号が与えられる。図11のミキサ部の後段に設けられる低域通過フィルタのフィルタ入力端子121には、図11の出力端子117からの信号が与えられる。
フィルタ入力端子121に与えられた信号は、シフトレジスタ122により、1単位時間が経過するごとに後段のフリップフロップに送られる。シフトレジスタ122によって保持される値は、原則として1単位時間が経過するごとに変化する。各時刻のシフトレジスタ122の保持値に対して、乗算器群123によるタップ係数(フィルタ係数)の乗算を行い、全ての乗算結果を加算器群124を用いて足し合わせてフィルタ出力端子125から出力する。これらの演算処理を行うことによりフィルタ機能が実現される。尚、1単位時間は、θがπ/2だけ進む時間に等しく、また、シフトレジスタ122を構成するフリップフリップの1クロック分の時間に等しい。
ここで、低域通過フィルタに与えられる同相信号列In(t)及び直交信号列Qn(t)のデータ構成について考える。任意の時刻t=0において、同相信号列In(t)及び直交信号列Qn(t)が、それぞれ下記数列式(8a)及び(8b)にて表されているものとする。
In(t)={I0,0,I1,0,I2,0,I3,・・・・} ・・・(8a)
Qn(t)={0,Q0,0,Q1,0,Q2,0,・・・・} ・・・(8b)
時刻が1単位時間分すすみt=1となると、同相信号列In(t)及び直交信号列Qn(t)は、それぞれ下記数列式(9a)及び(9b)のようになる。
In(t)={0,I1,0,I2,0,I3,0,・・・・} ・・・(9a)
Qn(t)={Q0,0,Q1,0,Q2,0,Q3・・・・} ・・・(9b)
更に時刻が1単位時間分すすみt=2となると、同相信号列In(t)及び直交信号列Qn(t)は、それぞれ下記数列式(10a)及び(10b)のようになる。
In(t)={I1,0,I2,0,I3,0,I4・・・・} ・・・(10a)
Qn(t)={0,Q1,0,Q2,0,Q3,0・・・・} ・・・(10b)
このように、低域通過フィルタに与えられる同相信号列In(t)及び直交信号列Qn(t)は、1単位時間分のずれを持ちながら、それぞれが有意な値とゼロとを交互に配列した構成となっている。
低域通過フィルタは、1単位時間ごとにゼロが補間された入力信号列(In(t)またはQn(t))を受けてフィルタ演算処理を行い、有意な値が連続する信号列を出力する。即ち、図10のミキサ部の後段に設けられる低域通過フィルタは、有意な値が連続する同相信号列{I0’,I1’,I2’,I3’,I4’,I5’,I6’,・・・・}を出力し、図11のミキサ部の後段に設けられる低域通過フィルタは、有意な値が連続する直交信号列{Q0’,Q1’,Q2’,Q3’,Q4’,Q5’,Q6’,・・・・}を出力する。
尚、下記特許文献1には、2種の信号を直交変調によりデジタル伝送する方式の送信回路を備えたデジタル信号伝送装置において、前記送信回路が、デジタル信号処理により前記2種の信号を直交変調するデジタル直交変調回路と、前記信号の一方の帯域を制限する第1の非巡回型デジタルLPFと、前記信号の他方の帯域を制限する第2の非巡回型デジタルLPFとを有し、前記第1と第2の非巡回型デジタルLPFが、それぞれのタップ数が互いに1タップ異なり、それぞれ対称なタップ係数値を有するデジタルLPFで構成されていることを特徴とするデジタル信号伝送装置が開示されている。
以下、本発明の実施形態につき具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る復調装置(デジタル復調装置)の全体的構成を示す図である。
図1の復調装置は、直交変調を用いて伝達すべき情報を無線伝送する伝送システムに用いられる。図示されない送信装置にて直交変調が施された信号は、復調装置のアンテナ、ダウンコンバータ、アナログ/デジタル変換器(全て不図示)等を介してミキサ入力端子1に供給される。尚、上記のアナログ/デジタル変換器への入力信号は、例えば上記式(1)によって表される。
2は、復調を行うべきデータ(入力信号)をミキサ入力端子1にて受けるミキサ部である。ミキサ部2は、発振器3、位相変換器4、同相信号用乗算器5、直交信号用乗算器6、選択信号発生器7及びマルチプレクサ(MUX)8を有して構成される。
発振器3は、必要な周波数を有する搬送波を生成し(搬送波を再生し)、生成した搬送波信号を出力する。同相信号用乗算器5は、ミキサ入力端子1にて受けた入力信号と発振器3からの搬送波信号との乗算を行うことによって同相信号を得る。位相変換器4は、発振器3からの搬送波信号の位相をπ/2だけ回転させ、直交信号用乗算器6に出力する。直交信号用乗算器6は、ミキサ入力端子1にて受けた入力信号と位相変換器4の出力信号との乗算を行うことによって直交信号を得る。
選択信号発生器7は、発振器3からの搬送波信号(搬送波信号に応じたクロック信号)を受けて、同相信号と直交信号との選別にかかわる選択信号をマルチプレクサ8及び低域通過フィルタ9に供給する。マルチプレクサ8は、選択信号発生器7から供給される選択信号に応じ、同相信号用乗算器5の出力信号と直交信号用乗算器6の出力信号とを単位時間ごとに切り替えて出力する。
低域通過フィルタ(LPF)9は、選択信号発生器7から供給される選択信号に応じて内蔵する2系統の信号処理回路を交互に切り替えることにより、高域周波数成分を低減した同相信号(同相信号成分)を同相信号出力端子(同相成分用出力端子)10から出力するとともに、高域周波数成分を低減した直交信号(直交信号成分)を直交信号出力端子(直交成分用出力端子)11から出力する。
図2に、本実施形態に係る復調装置のミキサ部の構成例を示す。図2のミキサ部は、ミキサ入力端子18、インバータ12及び13、マルチプレクサ14、カウンタ15、ミキサ出力端子16並びに同相/直交判定信号出力端子17(以下、判定信号出力端子17という)とを有して構成される。
図2のミキサ部は、図1のミキサ部2の機能を実現するための一構成例であり、ミキサ入力端子18への入力信号は、図1のミキサ入力端子1への入力信号と同じである。また、ミキサ入力端子18への入力信号は、図10及び図11のミキサ入力端子118a及び118bへの入力信号と同じであると仮定し、図10等の説明に用いた同相信号列In(t)及び直交信号列Qn(t)を構成する値I0、I1やQ0、Q1等を用いて、図2のミキサ部の動作説明を行う。
図2のミキサ部は、図9を用いて上述した、θの正弦及び余弦の値を「0」または「1」に限定する上記乗算処理法を利用するものである。位相変調においては、信号の時間変化を単位円上の角度θにて表現する。θが0、π/2、π、3π/2のとき、cosθは夫々1、0、−1、0となる一方、sinθは夫々0、1、0、−1となる。従って、図2のミキサ部への入力データ(入力信号)に余弦演算を施して(即ち、cosθを乗じて)有意な値を得るタイミングにおいては、正弦演算の結果はゼロとなり、一方、図2のミキサ部への入力データ(入力信号)に正弦演算を施して(即ち、sinθを乗じて)有意な値を得るタイミングにおいては、余弦演算の結果はゼロとなる。
この原理を利用し、図2のミキサ部では、余弦演算の結果がゼロとなるタイミングにて正弦演算を行うとともに、正弦演算の結果がゼロとなるタイミングにて余弦演算を行うことにより、正弦演算の有意な結果と余弦演算の有意な結果を時系列で(時分割で)同一の出力端子から得る。
図2において、余弦演算及び正弦演算の対象となるミキサ部への入力データ(入力信号)は、ミキサ入力端子18からミキサ部に入る。マルチプレクサ14は、入力端子(入力部)IN0、IN1、IN2及びIN3を有する4入力のマルチプレクサである。
カウンタ15は、θがπ/2進むごとにカウント値を増加させる2ビットの4進アップカウンタである。ここで、θがπ/2だけ進む時間を、1単位時間とする。カウント値はループ状に0〜3の値をとる。即ちθがπ/2進むごとに、0、1、2、3、0、1、2、3、0、・・・の順番でカウント値は更新される。また、0、1、2、3のカウント値は、それぞれ0、π/2、π、3π/2のθに対応している。
まず、0番目の入力端子IN0は、ミキサ入力端子18に直接接続され、ミキサ入力端子18への入力データ(入力信号)をそのまま受ける。これは、入力データにcos(0)=1を乗算したことに対応する。1番目の入力端子IN1も、ミキサ入力端子18に直接接続され、ミキサ入力端子18への入力データをそのまま受ける。これは、入力データにsin(π/2)=1を乗算したことに対応する。
2番目の入力端子IN2は、インバータ12を介してミキサ入力端子18に接続される。即ち、入力端子IN2は、ミキサ入力端子18への入力データを反転したデータを受ける。これは、入力データにcos(π)=−1を乗算したことに対応する。3番目の入力端子IN3は、インバータ13を介してミキサ入力端子18に接続される。即ち、入力端子IN3も、ミキサ入力端子18への入力データを反転したデータを受ける。これは、入力データにsin(3π/2)=−1を乗算したことに対応する。
カウンタ15の2ビットのカウント値は、マルチプレクサ14の選択制御端子に供給される。マルチプレクサ14は、供給されたカウント値に従い、4つの入力端子IN0〜IN3にて受けた信号を順次切り替えてミキサ出力端子16から出力する。具体的には、カウント値が0、1、2、3のとき、それぞれ入力端子IN0、IN1、IN2、IN3へ供給される信号をミキサ出力端子16から出力する。
これにより、ミキサ入力端子18への入力データ(入力信号)に、乗算係数としての1、1、−1、−1、・・・を順次、乗算する演算処理を実現する。この結果、ミキサ出力端子16からは、I0、Q0、I1、Q1、I2、Q2、・・・といったように、ゼロ値を省略した形で有意な値を持つ同相信号(同相信号成分)と有意な値を持つ直交信号(直交信号成分)が時系列で交互に配列して出力されることになる。
言い換えるならば、同一のミキサ出力端子16から、同相信号の値が無意義な値となるタイミングにおいて有意な値を持つ直交信号を出力し、直交信号の値が無意義な値となるタイミングにおいて有意な値を持つ同相信号を出力する。今の例の場合、「無意義な値」として「0」を想定しているが、「無意義な値」として「1」を採用することも可能である。
また、同相信号を得る場合には余弦演算を行うことになるが、θ=0の時はcosθ=1であり、ミキサ入力端子18への入力がそのまま出力に反映されることになる。つまり、θ=0の時、ミキサ出力端子16からは同相信号の正論理出力が得られることになる。また、θ=πの時はcosθ=−1であり、ミキサ入力端子18への入力の反転信号が出力に反映されることになる。つまり、θ=πの時、ミキサ出力端子16からは同相信号の負論理出力が得られることになる。直交信号を得る場合には正弦演算を行うことになるが、上記と同様に考えると、θ=π/2の時、ミキサ出力端子16からは直交信号の正論理出力が得られ、θ=3π/2の時、ミキサ出力端子16からは直交信号の負論理出力が得られることになる。
従って、同相信号の正論理出力、直交信号の正論理出力、同相信号の負論理出力、直交信号の負論理出力が、時系列で(時分割で)、順次ミキサ出力端子16から得られる、と表現することもできる。
また、カウンタ15のカウント値は2ビットのデジタル値によって表現されるが、判定信号出力端子17からは、カウンタ15のカウント値の下位1ビットを表す信号が同相/直交判定信号として出力される。上述の説明から明らかなように、カウンタ15から出力されるカウント値の下位1ビットが「0」のときは(カウンタ値が10進数表記で0または2のときは)ミキサ出力端子16から同相信号(同相信号成分)が出力され、カウンタ15から出力されるカウント値の下位1ビットが「1」のときは(カウンタ値が10進数表記で1または3のときは)ミキサ出力端子16から直交信号(直交信号成分)が出力される。
このため、判定信号出力端子17から出力される同相/直交判定信号を参照することにより、現在ミキサ出力端子16から出力されている信号が、同相信号(同相信号成分)であるのか或いは直交信号(直交信号成分)であるのかを判別することができる。
次に、図2のミキサ部の後段に設けられる低域通過フィルタ(図1の低域通過フィルタ9に対応)の構成を図3に示す。図3では、タップ数が7個の7次のFIR(Finite Impulse Response)型低域通過フィルタを例示している。
図3の低域通過フィルタは、フィルタ入力端子21と、互いに直列に接続された6つのフリップフロップ(遅延素子)22a、22b、22c、22d、22e及び22fからなるシフトレジスタ22と、乗算器群23と、3つの加算器24a、24b及び24cから成る第1合算器(偶数番目データ処理用加算器群)24と、2つの加算器25a及び25bから成る第2合算器(奇数番目データ処理用加算器群)25と、図2の判定信号出力端子17からの同相/直交判定信号を受ける判定信号入力端子26と、同相成分選択用マルチプレクサ(同相信号選択器)27と、直交成分選択用マルチプレクサ(直交信号選択器)28と、同相成分用出力端子29と、直交成分用出力端子30と、を有して構成される。
フィルタ入力端子21と初段のフリップフロップ22aのデータ入力端子との間と、フリップフロップ22a〜22fの各データ入力端子−データ出力端子間と、フリップフロップ22fのデータ出力端子に、タップを設ける。乗算器群23は、初段のフリップフロップ22aへの入力データ(入力信号)に所定のタップ係数を乗算し、その乗算結果(乗算して得られた値)を出力する乗算器23aと、フリップフロップ22a、22b、22c、22d、22e及び22fの出力データ(出力信号)に、それぞれ所定のタップ係数を乗算し、その乗算結果を出力する乗算器23b、23c、23d、23e、23f及び23gと、から成る。
フィルタ入力端子21には、図2のミキサ出力端子16からの信号が与えられる。フィルタ入力端子21に与えられた信号は、シフトレジスタ22により、1単位時間が経過するごとに後段のフリップフロップに送られる。シフトレジスタ22によって保持される値は、原則として1単位時間が経過するごとに変化する。尚、1単位時間は、シフトレジスタ22を構成するフリップフリップの1クロック分の時間に等しい。
各時刻のシフトレジスタ22の保持値(フリップフロップ22aへの入力データを含む)に対して、乗算器群23によるタップ係数(フィルタ係数)の乗算を行い、第1合算器24が乗算器23a、23c、23e及び23gの各乗算結果を合算し(全て足し合わせ)、且つ、第2合算器25が乗算器23b、23d及び23fの各乗算結果を合算するにより、同相信号成分及び直交信号成分の夫々に対するフィルタ機能を実現する。
第1合算器24の合算結果(合算によって得られた値)は、同相成分選択用マルチプレクサ(以下、同相用マルチプレクサという)27及び直交成分選択用マルチプレクサ(以下、直交用マルチプレクサという)28の夫々の第1入力端子に与えられ、第2合算器25の合算結果は、同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の夫々の第2入力端子に与えられる。
同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の選択制御端子には、判定信号入力端子26からの同相/直交判定信号が供給される。
そして、フィルタ入力端子21に同相信号成分(I0、I1、I2、I3、・・・)が供給されているタイミングにおいては、同相/直交判定信号は「0」となっており、その「0」の同相/直交判定信号を受けたとき、同相用マルチプレクサ27は第1入力端子に供給されている第1合算器24の合算結果を同相成分用出力端子29から出力する一方、直交用マルチプレクサ28は第2入力端子に供給されている第2合算器25の合算結果を直交成分用出力端子30から出力する。
逆に、フィルタ入力端子21に直交信号成分(Q0、Q1、Q2、Q3、・・・)が供給されているタイミングにおいては、同相/直交判定信号は「1」となっており、その「1」の同相/直交判定信号を受けたとき、同相用マルチプレクサ27は第2入力端子に供給されている第2合算器25の合算結果を同相成分用出力端子29から出力する一方、直交用マルチプレクサ28は第1入力端子に供給されている第1合算器24の合算結果を直交成分用出力端子30から出力する。
上記のように低域通過フィルタを構成することにより、同相成分用出力端子29から高調波成分が除去された後の同相信号が出力され、直交成分用出力端子30から高調波成分が除去された後の直交信号が出力されることになるが、この低域通過フィルタの動作について図4〜図6を参照して更に説明を加える。
まず、図4を用いて同相信号(同相信号成分)と直交信号(直交信号成分)の分離方法について詳細に説明する。図4は、図3の回路図中に、シフトレジスタ22の出力信号値を説明のために追加記載した図である。図4の回路図は、基本的に図3の回路図と同じものであり、図4において図3と同一の部分には同一の符号を付してある。
シフトレジスタ22の出力信号値(以下、「レジスタ出力信号値」という)は、初段のフリップフロップ22aへの入力信号値とフリップフロップ22a〜22fの各出力信号値とから構成される。即ち、レジスタ出力信号値は、各タップに表れる合計7つの値から構成される。
或る時刻t=0(位相の角度θは仮に0πとする)において、レジスタ出力信号値は、時間の古い側(フリップフロップ22f側)から順番にI0、Q0、I1、Q1、I2、Q2、I3となっているとする。すると、1単位時間分の時間が進んだ時刻t=1(位相の角度θは仮にπ/2とする)においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にQ0、I1、Q1、I2、Q2、I3、Q3となる。同様に、更に1単位時間分の時間が進んだ時刻t=2(位相の角度θは仮にπとする)においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にI1、Q1、I2、Q2、I3、Q3、I4となり、また更に1単位時間分の時間が進んだ時刻t=3(位相の角度θは仮に3π/2とする)においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にQ1、I2、Q2、I3、Q3、I4、Q4となる。
即ち、各タップには、有意な同相信号の値(同相成分)I0、I1、I2、I3、・・・と、有意な直交信号の値(直交成分)Q0、Q1、Q2、Q3、・・・が交互に出現し、ゼロ値に対する処理は省略されていることになる。
時刻t=0においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にI0、Q0、I1、Q1、I2、Q2、I3となっているので、タップ係数を乗算後のI0、I1、I2及びI3が第1合算器24にて合算され(全て足し合わされ)、タップ係数を乗算後のQ0、Q1及びQ2が第2合算器25にて合算される。そして、判定信号入力端子26から供給される同相/直交判定信号との関係における同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の上述の選択動作から明らかなように、時刻t=0においては、同相信号成分に関わる第1合算器24の合算結果が同相成分用出力端子29から出力され、直交信号成分に関わる第2合算器25の合算結果が直交成分用出力端子30から出力される。
今、乗算器23a、23b、23c、23d、23e、23f及び23gの乗算に用いられるタップ係数を、夫々、k0、k1、k2、k3、k2、k1及びk0とすると、時刻t=0において、同相成分用出力端子29から出力される同相出力値I(0)及び直交成分用出力端子30から出力される直交出力値Q(0)は、下記のように表される。
I(0)=k0・I0+k2・I1+k2・I2+k0・I3
=k0(I0+I3)+k2(I1+I2)
Q(0)=k1・Q0+k3・Q1+k1・Q2
=k1(Q0+Q2)+k3・Q1
1単位時間分の時間が進んだ時刻t=1においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にQ0、I1、Q1、I2、Q2、I3、Q3となっているので、タップ係数を乗算後のI1、I2及びI3が第2合算器25にて合算され、タップ係数を乗算後のQ0、Q1、Q2及びQ3が第1合算器24にて合算される。そして、上記の同相/直交判定信号に基づく選択動作により、時刻t=1においては、同相信号成分に関わる第2合算器25の合算結果が同相成分用出力端子29から出力され、直交信号成分に関わる第1合算器24の合算結果が直交成分用出力端子30から出力される。
時刻t=1において、同相成分用出力端子29から出力される同相出力値I(1)及び直交成分用出力端子30から出力される直交出力値Q(1)は、下記のように表される。
I(1)=k1・I1+k3・I2+k1・I3
=k1(I1+I3)+k3・I2
Q(1)=k0・Q0+k2・Q1+k2・Q2+k0・Q3
=k0(Q0+Q3)+k2(Q1+Q2)
更に1単位時間分の時間が進んだ時刻t=2においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にI1、Q1、I2、Q2、I3、Q3、I4となっているので、タップ係数を乗算後のI1、I2、I3及びI4が第1合算器24にて合算され、タップ係数を乗算後のQ1、Q2及びQ3が第2合算器25にて合算される。そして、上記の同相/直交判定信号に基づく選択動作により、時刻t=2においては、同相信号成分に関わる第1合算器24の合算結果が同相成分用出力端子29から出力され、直交信号成分に関わる第2合算器25の合算結果が直交成分用出力端子30から出力される。
時刻t=2において、同相成分用出力端子29から出力される同相出力値I(2)及び直交成分用出力端子30から出力される直交出力値Q(2)は、下記のように表される。
I(2)=k0・I1+k2・I2+k2・I3+k0・I4
=k0(I1+I4)+k2(I2+I3)
Q(2)=k1・Q1+k3・Q2+k1・Q3
=k1(Q1+Q3)+k3・Q2
更に1単位時間分の時間が進んだ時刻t=3においては、レジスタ出力信号値は、時間の古い側から順番にQ1、I2、Q2、I3、Q3、I4、Q4となっているので、タップ係数を乗算後のI2、I3及びI4が第2合算器25にて合算され、タップ係数を乗算後のQ1、Q2、Q3及びQ4が第1合算器24にて合算される。そして、上記の同相/直交判定信号に基づく選択動作により、時刻t=3においては、同相信号成分に関わる第2合算器25の合算結果が同相成分用出力端子29から出力され、直交信号成分に関わる第1合算器24の合算結果が直交成分用出力端子30から出力される。
時刻t=3において、同相成分用出力端子29から出力される同相出力値I(3)及び直交成分用出力端子30から出力される直交出力値Q(3)は、下記のように表される。
I(3)=k1・I2+k3・I3+k1・I4
=k1(I2+I4)+k3・I3
Q(3)=k0・Q1+k2・Q2+k2・Q3+k0・Q4
=k0(Q1+Q4)+k2(Q2+Q3)
以下、時刻t=4、5、6、7・・・においても、時刻t=0〜3と同様の動作が行われる。
上記のように、同相/直交判定信号に基づいて第1合算器24の合算結果と第2合算器25の合算結果を交互に同相信号と直交信号に対応させ、同相信号に関わる合算結果を常に同相成分用出力端子29から出力させるとともに、直交信号に関わる合算結果を常に直交成分用出力端子30から出力させる。これにより、従来技術では2つの低域通過フィルタを用いて行っていた同相信号と直交信号の双方に対する高調波成分の除去を、単一の低域通過フィルタにて実現することが可能となり、回路規模の削減及び低消費電力化が実現される。また、低域通過フィルタにおける同相信号と直交信号の分離は、単なるマルチプレクサ(27及び28)によって実現されるため、分離に伴う回路規模増加は僅かである。
続いて、図3の低域通過フィルタの回路図の一部を抜粋した図5及び図6を用いて、本実施形態に係る低域通過フィルタにおける信号処理過程を説明する。
まず、時刻t=0における信号の状態を図5に示す。図4にも示したt=0におけるレジスタ出力信号値を、同相成分と直交成分に分けて考えることにする。そうすると、t=0において、レジスタ出力信号値はI0、Q0、I1、Q1、I2、Q2、I3となっているが、同相成分にのみ着目するとレジスタ出力信号値はI0、0、I1、0、I2、0、I3となっているのと等価であり(図5の数値群60参照)、直交成分にのみ着目するとレジスタ出力信号値は0、Q0、0、Q1、0、Q2、0となっているのと等価である(図5の数値群61参照)。
このことから、時刻t=0において、同相成分用出力端子29から出力される同相出力値I(0)及び直交成分用出力端子30から出力される直交出力値Q(0)は、下記のように表されるのである。
I(0)=k0・I0+k1・0+k2・I1+k3・0+k2・I2+k1・0+
k0・I3
=k0・I0+k2・I1+k2・I2+k0・I3
=k0(I0+I3)+k2(I1+I2)
Q(0)=k0・0+k1・Q0+k2・0+k3・Q1+k2・0+k1・Q2+
k0・0
=k1・Q0+k3・Q1+k1・Q2
=k1(Q0+Q2)+k3・Q1
尚、図5においては、同相成分の処理を太実線で示し、直交成分の処理を細実線で示している。時刻t=0においては、I0、I1、I2及びI3が同相成分についての有効データであり、タップ係数k0及びk2を用いた該有効データについての各乗算結果の合算が第1合算器24から出力される。また、時刻t=0においては、Q0、Q1及びQ2が直交成分についての有効データであり、タップ係数k1及びk3を用いた該有効データについての各乗算結果の合算が第2合算器25から出力される。
次に、時刻t=1における信号の状態を図6に示す。図4にも示したt=1におけるレジスタ出力信号値を、同相成分と直交成分に分けて考えることにする。そうすると、t=1において、レジスタ出力信号値はQ0、I1、Q1、I2、Q2、I3、Q3となっているが、同相成分にのみ着目するとレジスタ出力信号値は0、I1、0、I2、0、I3、0となっているのと等価であり(図6の数値群62参照)、直交成分にのみ着目するとレジスタ出力信号値はQ0、0、Q1、0、Q2、0、Q3となっているのと等価である(図6の数値群63参照)。
このことから、時刻t=1において、同相成分用出力端子29から出力される同相出力値I(1)及び直交成分用出力端子30から出力される直交出力値Q(1)は、下記のように表されるのである。
I(1)=k0・0+k1・I1+k2・0+k3・I2+k2・0+k1・I3+
k0・0
=k1・I1+k3・I2+k1・I3
=k1(I1+I3)+k3・I2
Q(1)=k0・Q0+k1・0+k2・Q1+k3・0+k2・Q2+k1・0+
k0・Q3
=k0・Q0+k2・Q1+k2・Q2+k0・Q3
=k0(Q0+Q3)+k2(Q1+Q2)
尚、図6においても、同相成分の処理を太実線で示し、直交成分の処理を細実線で示している。時刻t=1においては、I1、I2及びI3が同相成分についての有効データであり、タップ係数k1及びk3を用いた該有効データについての各乗算結果の合算が第2合算器25から出力される。また、時刻t=1においては、Q0、Q1、Q2及びQ3が直交成分についての有効データであり、タップ係数k0及びk2を用いた該有効データについての各乗算結果の合算が第1合算器24から出力される。
また、図4等にも示しているように、一般的にFIR型低域通過フィルタにおいては、各タップに対するタップ係数が中央のタップを中心として鏡像対称の関係にある。そこで、この関係を利用して乗算器の数を削減するべく、乗算処理より先に加算処理を先に行うようにしてもよい。つまり、図3の低域通過フィルタの代わりに図7の低域通過フィルタを用いるようにしてもよい。図7に、タップ数が7個の7次のFIR型低域通過フィルタを例示している。
図7の低域通過フィルタは、フィルタ入力端子21と、互いに直列に接続された6つのフリップフロップ22a〜22fからなるシフトレジスタ22と、3つの加算器31a、31b及び31cから成る前置加算器群31と、4つの乗算器33a、33b、33c及び33dから成る乗算器群33と、第1合算器(第1加算器)34と、第2合算器(第2加算器)35と、図2の判定信号出力端子17からの同相/直交判定信号を受ける判定信号入力端子26と、同相成分選択用マルチプレクサ(同相信号選択器)27と、直交成分選択用マルチプレクサ(直交信号選択器)28と、同相成分用出力端子29と、直交成分用出力端子30と、を有して構成される。図7において、図3と同一の部分には同一の符号を付しており、同一の部分の重複する説明を省略する。
図3(及び図4)における低域通過フィルタには7つのタップが設けられているのに対して、タップ係数はk0、k1、k2及びk3の4種類しかない。このため、タップ係数k0にて乗算される2つの信号値を加算器31cにて足し合わせ、その後に乗算器33dを用いて乗算処理を行うことで、乗算器の数を削減している。タップ係数k1、k2を用いる乗算器についても同様である。
具体的には、乗算器31aはフリップフロップ22bと22dの各出力信号値を加算し、乗算器31bはフリップフロップ22aと22eの各出力信号値を加算し、乗算器31cはフリップフロップ22aへの入力信号値とフリップフロップ22fの出力信号値を加算する。つまり、6個のフリップフロップの各出力の中心(フリップフロップ22cの出力端子)に対して対称関係にあるタップの信号を、3個の加算器31a〜31cを用いて夫々足し合わせる。
乗算器33aはフリップフロップ22cの出力信号値とタップ係数k3とを乗算し、乗算器33bは加算器31aの加算結果とタップ係数k2とを乗算し、乗算器33cは加算器31bの加算結果とタップ係数k1とを乗算し、乗算器33dは加算器31cの加算結果とタップ係数k0とを乗算する。
第1合算器34は、乗算器33b及び33dの各乗算結果(各乗算によって得られた値)を足し合わせる。第2合算器35は、乗算器33a及び33cの各乗算結果を足し合わせる。シフトレジスタ22を構成する3段目のフリップフロップ22c側から見て、乗算器33a、33b、33c及び33dは、夫々、0番目の乗算器、1番目の乗算器、2番目の乗算器及び3番目の乗算器と呼ぶことができる。
第1合算器34の合算結果(加算結果)は、同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の夫々の第1入力端子に与えられ、第2合算器35の合算結果(加算結果)は、同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の夫々の第2入力端子に与えられる。同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の選択制御端子には、判定信号入力端子26からの同相/直交判定信号が供給される。
このため、レジスタ出力信号値が時間の古い側から順番にI0、Q0、I1、Q1、I2、Q2、I3となっているタイミング等、同相信号成分にタップ係数k0及びk2を乗算し且つ直交信号成分にタップ係数k1及びk3を乗算するタイミング(例えば、上述の時刻t=0)においては、同相/直交判定信号に基づく同相用マルチプレクサ27及び直交用マルチプレクサ28の上述の選択動作から明らかなように、同相信号成分に関わる第1合算器34の合算結果(加算結果)が同相成分用出力端子29から出力され、直交信号成分に関わる第2合算器35の合算結果(加算結果)が直交成分用出力端子30から出力される。
また、レジスタ出力信号値が時間の古い側から順番にQ0、I1、Q1、I2、Q2、I3、Q3となっているタイミング等、同相信号成分にタップ係数k1及びk3を乗算し且つ直交信号成分にタップ係数k0及びk2を乗算するタイミング(例えば、上述の時刻t=1)においては、同相信号成分に関わる第2合算器35の合算結果(加算結果)が同相成分用出力端子29から出力され、直交信号成分に関わる第1合算器34の合算結果(加算結果)が直交成分用出力端子30から出力される。
<<変形等>>
上述の実施形態では、7つのタップを有するFIR型低域通過フィルタを例示したが、このフィルタにおけるタップ数は、勿論7以外であってもよい。
また、低域通過フィルタにのみ着目して実施形態を説明したが、ミキサ部の後段に設けられるフィルタとして高域通過フィルタ、帯域通過フィルタまたは帯域阻止フィルタを採用するようにしてもよい。つまり、上述の実施形態の説明文中の「低域通過フィルタ」を、高域通過フィルタ、帯域通過フィルタまたは帯域阻止フィルタに読み替えても良い(但し、フィルタとしての機能は勿論互いに異なる)。高域通過フィルタ、帯域通過フィルタまたは帯域阻止フィルタも、タップ係数を適切に変更することにより、図3や図7の回路構成にて実現することができる。但し、ミキサ部の後段に低域通過フィルタを設けることは必須であるため、高域通過フィルタ等は低域通過フィルタと組み合わせて使用される。
尚、帯域通過フィルタや帯域阻止フィルタは、低域通過フィルタと高域通過フィルタを組み合わせることによっても構成可能である。また、アプリケーションによっては、フィルタの通過帯域を不連続の複数帯域とする場合もある。例えば、790MHz〜820MHz(メガヘルツ)と840MHz〜870MHzを通過帯域とする場合もある。この場合は、例えば、790MHz〜870MHzの周波数成分を通過させる帯域通過フィルタと、820MHz〜840MHzの周波数成分の通過を阻止する帯域阻止フィルタを組み合わせるとよい。